>>911の内容

食堂車に関しては、まとまった話は宇都宮照信さんの書いたものくらいしか読んだことがないのだが、宇都宮さんが働いていた中でも

1.車内で下拵えから調理まで → 2.セントラルキッチンで作ったものを車内で調理 → 3.セントラルキッチンで調理したものを車内で加熱

という変化があったらしい。1から2に移行したのが恐らく1980年台後半あたりではないかと思う。
この年代あたりでファミレスが増え始めているので、そのあたりのシステムを取り入れたであろうことは推測できる。
2から3に移行したのがいつなのかははっきりしないのだが、九州ブルートレインで朝食バイキングを取り入れたあたりではないかと思う。
つまり「出来合いのものを並べて取っていってもらう」となると、その方がいろいろ楽だろうからである。

当然ながら、1と2の間にはできたものには差があり、2と3の間にはさらに大きな差がある。
2までなら人によっては気にしないが、3になると誰でもはっきり違いがわかる程度には質が落ちる気はする。
ただ、当然ながら1のレベルだと手間も相当かかるし、コスト面や設備面でも大変だとは思う。
そこで限界を感じたあたりが撤退のタイミングだったのかも知れない、とは思う。

ところで、設備面という観点からだと、これまた面倒な話が出てくる。まあ家庭の台所レベルの設備では無理だろうから、
食堂車ともなればそれなりの設備があるんじゃないかと思いそうだが、実際そうでもないかも知れない。
これはファミレスで働いたことがある人からみた視点だが、食堂車の設備はファミレスより狭い。
100系新幹線の168形でやっと同じくらいの空間があるかどうか。たぶん牛丼チェーン店のキッチンくらいしかないんじゃないかな。
そんな感じだから、1つの電気レンジで揚げ物をやった後に油をしまってフライパンで肉を焼いて、
肉が焼けたらまた別の鍋を出して…とかやっていたと、宇都宮さんが書いていた記憶。

帝国ホテルや都ホテルが撤退したのは、もちろん採算面もあるだろうけれど「この設備と営業形態では、質的に満足できるものが出せない」
というのもあったんじゃないかと。

また、北斗星やトワイライトやカシオペアが予約制にしたのも、「その時々で違うオーダーが入る」形態ではまともなものが出せず、
「予め予約されたものを順番に調理する」形態にしないと無理があったからではないかという気がする。
さっき出した1987年のセマウル号の食堂車の写真でも「韓国は食堂車にグリドル板があるのか」と思ったんだよね。
ハンバーグやステーキなどの焼きものについてはずいぶん楽そうな気がする。
中国の食堂車なんか、幅も長さも余裕があるし、厨房設備は日本の食堂車よりは充実していそう。

まあ、食堂車に何を期待するかによっても変わってくる部分はある。
「車内で食事が提供できることが重要で、メニューがどうこうと思わない」のだったら、とりあえず町食堂的なメニューでも構わないわけだ。
「せっかく食堂車に乗るんだからちゃんとしたものを」というハレの要素が加わって来ると、まあなかなか…。
松屋のキッチン設備でフルコースディナーを出すにはどうやればいいかというレベルの話が
(ちなみに松屋は焼きものメニューが多いのでグリドル板があるから例に出しただけですので念のため)
設備に合わせて楽になるように料理の質が下がってしまったというのはあるかも知れない。
本来ならキッチン設備改善提案をすべきだったんだろうなぁ、とは。