魔導師会は順調に準備を進めて、明朝を決戦の時と決めていた。
既に準備は整っており、反逆同盟からの不意の襲撃にも対応出来る様にしている。
魔導師達は夜も寝ずの番を立て、心構えは戦闘状態だった。
事が起こったのは、真夜中の北の時。
その頃、レノックも親衛隊と共に寝ずの番をしていた。
親衛隊員は予てより気になる事があって尋ねる。

 「レノック殿、お休みになっては如何ですか?」

 「いや、平気だよ」

 「……何時、お休みになっています?」

 「何時も休んでいるけど?
  今だって休んでいる様な物じゃないか」

今一つ噛み合わない回答をするレノックに、親衛隊員は一拍置いて強い口調で言った。

 「私が聞いているのは、『眠らなくて大丈夫ですか?』と言う事です。
  ここ数日、私はレノック殿が眠っている所を見ていません」

 「ははは、何を今更。
  僕は一度だって、君達に眠っている姿を見せた事は無いぞ」

 「えっ」

レノックの言う通り、これまでも親衛隊員は彼が眠っている所を見た事が無かった。
しかし、宿に泊まったりしていれば、その間は休んでいる物と思うのが普通だ。