スルトの計画を聞かされたサタナルキクリティアは詰まらなそうな顔で言う。

 「話は終わりか?」

自分の予知は外れないのだと彼は自分に言い聞かせて、心の平静を保った。

 「ああ」

 「何故、私に話した?」

 「それが予知魔法使いの義務なのだ。
  私が予知魔法使いであり続ける為には、予知の正しさを知る者が居なくてはならない。
  事が終わった後で、全て計画通りだと言われも困ろう?」

 「それは確かに。
  しかし、私は思うのだ。
  その話こそ私を欺く為の嘘では無いか?
  真実だと言う保証が、どこにある?」

サタナルキクリティアの疑問に対するスルトの答えは、実に堂々とした物だった。

 「どこにも無いが、信じて貰わねばならぬ。
  私はマトラ様に指揮権を委ねられている」

だが、サタナルキクリティアは人差し指を立て、嫌らしい笑みを浮かべる。

 「投資詐欺の話を知っているか?
  詐欺師が『大豆<ファナハバ>』の先物相場を利用して、金持ちに投資詐欺の話を持ち掛けた。
  私は市場の裏情報を知っている。
  1000万MG預けてくれれば、1週間後に倍にして返すと。
  騙された人物は警察に、詐欺師の予想が5日連続で的中したので信じてしまったと語った。
  警察が調べた所、同じ様な被害者が他に10人は居た。
  詐欺師は一体どうやって予言を的中させたのだろうか?」


※:大豆に相当する作物。
  ダード、ダド豆、ファナ豆とも言う。
  豆には他に、ハバ豆、バガ豆、野豆、黒豆、鞘豆等がある。
  豆を表す一般名詞は「ハバ」。