【TRPG】ブレイブ&モンスターズ! [無断転載禁止]©2ch.net
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
――「ブレイブ&モンスターズ!」とは?
遡ること二年前、某大手ゲーム会社からリリースされたスマートフォン向けソーシャルゲーム。
リリース直後から国内外で絶大な支持を集め、その人気は社会現象にまで発展した。
ゲーム内容は、位置情報によって現れる様々なモンスターを捕まえ、育成し、広大な世界を冒険する本格RPGの体を成しながら、
対人戦の要素も取り入れており、その駆け引きの奥深さなどは、まるで戦略ゲームのようだとも言われている。
プレイヤーは「スペルカード」や「ユニットカード」から構成される、20枚のデッキを互いに用意。
それらを自在に駆使して、パートナーモンスターをサポートしながら、熱いアクティブタイムバトルを制するのだ!
世界中に存在する、数多のライバル達と出会い、闘い、進化する――
それこそが、ブレイブ&モンスターズ! 通称「ブレモン」なのである!!
そして、あの日――それは虚構(ゲーム)から、真実(リアル)へと姿を変えた。
========================
ジャンル:スマホゲーム×異世界ファンタジー
コンセプト:スマホゲームの世界に転移して大冒険!
期間(目安):特になし
GM:なし
決定リール:マナーを守った上で可
○日ルール:一週間
版権・越境:なし
敵役参加:あり
避難所の有無:なし
======================== 自治スレ見てきたけどその議論見つからなかった
どこでやってんの?
荒しまがいな嫌がらせではなく、議論の場に誘導してや >>184
え?わたし?
わたしの髪の色は、ごらんの通りのナチュラルカラー!黒だよ黒。
たまには気分を変えて、校則に違反しない程度にブリーチしてみようかなーとか。
カラー変えてみようかなー、なーんて考えちゃったりもするんだけど。
でもねぇ……。
どこかの誰かさんが、黒髪がいいって言うもんですから〜?
わたしとしては、そのリクエストに応えましょう!みたいな……ね。
ってことで!答えになったかな? 唇をなぞる液体の感触
それは、乾いた砂漠で過ごした為に罅割れかけていたメルトの唇に潤いを与える
水分を求める身体は、無意識にもかかわらずその液体を求め……桃色の唇は小さく開き、流れ込んできたそれをゆっくりと嚥下する
「はい……これは……桃の天然の……」
そして、その行動に反応したメルトの意識が覚醒し、目を開く――すると、その眼前には【見慣れない見知った光景】が広がっていた
まるで王宮の様な豪奢な意匠が施された、けれど王宮とは思えない細長く狭い形状
窓から入り込む光を内部で屈折させ幾何学的で美しい模様を描く、神秘的な灯り
それを目にしたメルトは、寝ぼけ眼を擦りながら無意識に口を開く
「……知ってる天井です……運営は列車移動のスキップの実装を――――って、ここどこですか!?」
そして叫ぶ。己が目にしている光景が何百回と見た魔法機関車の室内グラフィックであり、尚且つ
それが画面越しではない肉眼で捕えた物である事を自覚した瞬間、メルトは勢いよく上体を起こそうとし
「ちょっ、うあっ、そして痛いですっ!?」
枕にしていたものが柔らかな人間の腿であった為に、耐性を崩し床へと転がり落ちる事となった
起きて早々に騒々しいメルトであったが、それでもなんとか起き上がり、ぶつけた額ごと片目を隠している前髪を抑えつつ、キョロキョロと周囲を見渡してみる
するとそこには……メルト自身を除いて5人もの人間が存在していた
学ランを羽織った、ウルフカットの高校生らしき少年
先までメルトに膝を貸してくれていたと思わしき、芯の強そうな瞳が印象的なサイドテールの少女
芯が傷んでそうな皺の多いスーツが印象的な、今まさにどこかへ向かわんとしている中……青年
落ち着いた雰囲気。そしてツナギとタンクトップと長靴という、都心では見かけない衣装に目が行ってしまう少女
オッドアイと長い髪が印象的な――――ゲームプレイ中に何度も目撃したモンスターに酷似した少女
見知ったバーチャル世界に酷似した見知らぬ世界で、見知らぬ人物達と遭遇したメルトは、一瞬で身体を石像の如く硬直させると
暫くしてからそのままジリジリと動き、一同と一つ分離れた座席へ移動し、身を隠してしまう
……仕方がない、といえばそうだろう
なにせ、このメルトという少女は小学校からの登校拒否児童なのである
対面での会話や画面越しのチャットであればまだしも、いきなり生身の人間の前に晒されて、まともな反応を期待する方が酷な話だ
だがそれでも、混乱にかまけて状況を無視する程に、メルトは純粋ではない
何とか情報を集めるべく聞き耳を立てて見れば
>「この列車、トイレある?」
>「さて、色々お話を聞きながら、デッキ編成でもしよかしらねえ」
>「そうね。話せば長くなる……と言いたいところだけど、わたしもそのすべてを把握しているわけじゃない。
わたしにわかる範囲の話でよければ、ミョウジンがトイレから戻ってきてから話すわ。
詳しい話は、『王』から話していただけることになっているから、それを待って頂戴。
……あと、ユーザーフレンドリーとかクソゲーとかは……恥ずかしながら、よく分からない。ごめんなさい」
>「自己紹介が遅れたわね。
> 私はウィズリィ。忘却の森に住まう魔女術の少女の一人、『森の魔女』ウィズリィよ。
> ……まあ、ウィズリィと呼んでくれればいいわ」
トイレはどうでもいいとして。大事な事なので二回言うが、トイレはどうでもいいとして
聞こえて来たのは、まるでゲームで遊んでいるプレイヤーとイベントを進行するNPCの様な会話
……それだけを聞いて、そして見れば、コスプレ会場か運営の企画したリアイベかとでも思いかねない状況ではあるのだが、砂漠をベルゼブブに追われ続けたメルト自身のリアル過ぎる体験がその可能性を否定する
そうなると、現実にしては悪夢の様ではあるが、今メルトの置かれている状況は……
(考えたくありませんが、あんな蠅の化物が地球に居る訳がありません。そうすると、多分というか、やはりここは……地球ではないんでしょうか) 困惑しながらも認めざるを得ない可能性
というよりも、メルト自身の脳に異常が有る訳でないのならば、現状それ以外に説明のしようがない
となれば、眼前の少年少女達は……メルト自身が倒れた時に周囲に人がいなかった以上、恐らくは、【駅】でメルトが遠目に見たベルゼブブと戦闘していた者達であるのだろう
そして、自身が気絶していた以上、ここまで運んできたのも眼前の彼等にちがいない
混乱する頭を無理やりに働かせ、何とか思考をそこまで持ってきたメルトは、
「あ、あのっ!!……ど、どうも。私はPL名【メタルしめじ】です。、ええと、皆様が私をここまで連れてきてくださったのでしょうか……?
もしそうなら、ありがとうございます……それで……《私は新参でとても弱いので》この訳が判らない状況に着いていけそうにありません
なので……なので、寄生みたいで申し訳ないのですが、暫くの間皆様に同行させて頂きたいのですが……」
自己紹介やら懇願やらの混じった言葉を吐き出して、体を椅子に隠したまま頭を下げた
……勿論、これは本当に恐怖に怯えきっての言動ではない。いや、恐怖もあるにはあるが、今のメルトの思考の半分以上を占めるのは【眼前の人物たちをどう利用し、生き残るか】というもの
もしも、現在自分が置かれている環境が【ブレイブ&モンスターズ!】に酷似した世界であるというのであれば、自分が気絶する前に目撃した「あの」レトロスケルトンをパートナーに据えた、
アイテム増殖バグ用のゴミ編成で生き残れる筈がないと。そう考えての打算的行為であった
最も――初心者であると自称したにも関わらず、会話に【新参】【寄生】といった初心者が使用しないワードが会話の所々に入っている辺り、
詰めが甘いというか、対人コミュ力が圧倒的に不足しているメルトであった
【明神がトイレに行っている間に、起き抜けに初心者を装って寄生依頼】 >>ウィズリィさん
【質問なんですが、『運転手』についての概要って何か考えてますか?
それともこちらで勝手に設定しちゃってもいいんでしょうか?】 >真一君
【特に決めていませんー。好きに設定しちゃってください!】 便乗!
>>真ちゃん
【妹さんのお名前を教えてください!】 >>189
【了解です! では、こちらで考えた設定を使わせて貰いますね】
>>190
【名前は『雪奈(ゆきな)』で、年齢は真一たちの一つ下って感じでお願いします!】 ハイパーウンコ支援してるアホがいるスレはここか?
俺が代わりにウンコしたるわ
おう 真一はグラドの背の上に乗ったまま、ゆっくりと荒野へ降下する。
死闘で火照った体を冷ます夜風の感触が、妙に心地良く思えた。
「あれは、魔法機関車か……?」
そして、戦いの終わりを告げるゴングのように鳴り響く警笛の方に目をくれると、遥か彼方まで続くレールの上を汽車が走って来ていた。
一昔前の蒸気機関車を連想させる、レトロな外観でありながら、荘厳さも併せ持った豪奢な装飾。
あれは、ブレモンのプレイヤーなら誰もが知っている乗り物――魔法機関車に他ならなかった。
汽車が疾駆する様を眺めつつ、地上に足を着けたグラドの背から、真一はひょいと飛び降りる。
それから真一が優しくグラドの頭を撫でてやると、グラドは嬉しそうに鼻先を擦り付けてきた。
「お前にも、随分無茶させちまったな。……ありがとよ、相棒。あとはゆっくり休んでてくれ」
真一はスマホを操作して〈召喚解除(アンサモン)〉のボタンをタップする。
すると、召喚時と同様に眩い光がスマホから放たれ、グラドはその中に消えて行った。
ゲーム内の仕様と同じなら、このように休ませておけば時間経過と共にグラドの体力も回復する筈であった。
>「……真ちゃん」
真一とグラドがそんなやり取りをしていると、こちらへ歩いてくるなゆたの姿が目に入った。
激しく肩を持ち上げているその様子を見れば、なゆたが激怒しているのは明らかだった。
「――痛っ!!」
そして、なゆたが振り下ろしたゲンコツを頭に食らい、真一は思わず声を上げる。
――いや、実際には藁人形がダメージを肩代わりしてくれたおかげで痛みは感じなかったのだが、条件反射でそう叫んだ。
>「なんなのよ、今の戦いは!? どこの世界にパートナーモンスターと一緒に戦うマスターがいるのよ!
あの炎精王の剣も! 限界突破も! モンスター用のスペルカードなんだから!
あんたいつからモンスターになったのよ!? わたしはモンスターを幼馴染に持った覚えはないっ!」
>「まだ、ここがどんな場所なのかもわかんないんだよ!? やられて、ゲームオーバーになるだけならいい。
ゲーム続行不可になって、この世界から元の世界に戻れるなら、わたしだってすぐにそうするよ。
でも、そうなるとは限らない! モンスターに傷つけられたら、本当に怪我をして! 死んじゃうかもしれないんだよ!?
そうなったらどうするの!?」
なゆたは矢継ぎ早にお小言を繰り出すが、そう言われると真一にも言い返したいことはあった。
何故真一があんな戦い方をしたのかと言えば――それは、グラドを護るためだ。
まだレベルの低いグラドが、あの蝿の群れと単騎で打ち合ったのならば、恐らくなゆたがコンボを決める時間も稼げなかっただろう。
自分のプレイヤーとしての未熟さを理解しているからこそ、真一はグラドと共に戦い、力を合わせることを選んだのだ。
実際それは功を奏した部分もあると思っている。
真一はそう主張しようと口を開きかけたが、そこでなゆたの瞳に涙が滲むのを見て、思わず「うっ」と息を詰まらせる。 >「……心配、させないでよ……。あんたにもしものことがあったら、わたし……。
あんたの家族に、なんて説明すればいいのよ……!?」
>「テンションが上がっちゃったのはわかるけど、もう二度とあんな無茶なことはしないでね!
じゃないとぉ〜……真ちゃんの好きなハンバーグ、もう作ってあげないから!
わかった!? 『はい』は!?」
女に泣かれると弱いのは、あらゆる男の性というやつだ。
真一は気不味そうに目を逸らしながら、右手の人差し指で頬を掻いた。
「……まぁ、なんだ。お前に心配させちまったのは悪かったよ。
もうあんな無茶はしない――とは言えねーけど、お前と一緒に元の世界に帰るまで、絶対に死なないってのは約束する。
……その、お前が作ったハンバーグを食えなくなっちまうのも困るしな」
真一はそう言いながら、両目に涙を浮かべるなゆたの頭を、右手でポンポン叩く。
しかし、その後になゆたが小声でぼそぼそと何かを言っていたのは、ラノベのような難聴スキルを発動して聞き逃した。
>「真ちゃん、この子も連れて行こう。ここに置き去りにはできないよ」
――と、二人がそんな痴話喧嘩を繰り広げたあと、不意にプラットホームで倒れている人影を見付けた。
どうやら中学生くらいの子供のようであり、その服装や隣に付き添っているパートナーらしきモンスターを見れば、恐らくは彼女も真一たちと同じく、現実世界から飛ばされてきた人間なのであろう。
「……息はあるし、気絶してるだけみたいだな。勿論ここに置いていくわけにもいかねーし、一緒に連れてくとするか」
真一は倒れている少女の下に手を差し入れて持ち上げる。
見るからに小柄な少女ではあるが、こうして抱き抱えてみると、驚くほど体重が軽いのが分かった。
>「うふふ、真ちゃんゆぅんやねえ。
こんな可愛い彼女を泣かしたらあかへんよ〜」
>「見させてもらったけど〜真ちゃんとなゆちゃんて結構好対照なパートナーやデッキ構成みたいやん?
一緒に肩を並べて戦う事は出来ても、うちがしよったみたいにフォローや守ってあげる事は難しいやろうからぁ辛いと思うんよ
うちが出来るからと言ってあまり助け過ぎても、なゆちゃん彼女としての立場もあらへんやろうしねぇ
そういうところ、ちゃ〜んと汲んであげるんが、色男ゆうものやよ〜」
そんな一幕の後、真一となゆたが魔法機関車の方に足を進めると、誰かが二人に話し掛けて来た。
彼女の声を聞いて、真一はすぐにピンと来る。
先程のベルゼブブとの戦闘の際、イシュタルという名のスケアクロウを従えて、自分たちをサポートしてくれたプレイヤーで間違いないだろう。
「ん、その声は……アンタがスケアクロウのマスターか!
さっきは助かったぜ、ありがとな! ……って、いや、俺とあいつは彼氏とか彼女とか、そういうのではないから!」
挨拶もそこそこにして、何やら好き勝手なことを言ってくるみのりに対し、真一は慌てて手を振って否定する。
そんな様子を見て、みのりは相変わらずニヤニヤと笑みを携えたまま、一足先に魔法機関車へと乗り込んでいってしまった。 >「えーと……、こんばんは?」
>「……こんばんは。メロという子は知らないけれど……ええ、この乗り物が『王』の迎えよ」
そんなこんなでようやく魔法機関車に乗り込むと、中には既に先客らしき少女が居た。
しかしながら、彼女はこれまで出会って来た何人かとは違い、現実世界の人間ではないようだった。
魔女さながらのローブを纏い、黒髪とオッドアイの双眸を持つその姿は、真一もゲームの中で見たことがある。
あれは――“魔女術の少女(ガール・ウィッチクラフティ)”というブレモンのモンスターだ。
その愛らしい容貌などで人気があり、真一がブレモンを通じて話すようになったクラスメイトの小林君(キモオタ)も、パートナーとして愛用していた記憶がある。
>「ナユに、シンイチ、それにミノリね。それから……」
>「俺は……『明神』とでも呼んでくれ。本名プレイは好きじゃないんだ」
「なゆが言ってた通り、俺は赤城真一だ。……そっちのアンタも! さっき俺たちを援護してくれたリーマンだろ?
あの時はおかげで助かったぜ。これからよろしくな!」
各々が自己紹介を始めたのに割って入りつつ、ベルゼブブ戦で共闘したリーマンにも声を掛ける。
あの戦いの後、勝手に先走ってベルゼブブを捕獲しようとしていた点と、この世界で何故か本名を隠すのは少しだけ引っ掛かったが、あまり細かいことを気にし続ける性格でもない。
真一は快活な笑顔を見せながら、明神に向けて親指を立てた。
>「向かう先は王都よ。王都キングヒル……偉大なる『王』のおひざ元ね。
食事と寝床は提供されるはずよ。贅を尽くした、とまではいかないけれど料理人は全力を尽くすはず。
個人の嗜好に合うかまでは保証しないけど。あと、トイレはあっち」
軽く挨拶を済ませると、明神はトイレの方へ飛んで行ってしまったが、魔女術の少女との問答は続く。
王都キングヒル――とは、このアルフヘイムの覇権国家である“アルメリア王国”の都だ。
ゲーム内ではプレイヤー達が最初期に訪れるステージだが、ここが赭色の荒野ならば、地理的にはアルメリアの最果てだ。
この魔法機関車に乗っても、王都に着くまでにしばらく掛かりそうだということは理解した。 >「まずは、道すがら事情を説明してもらえるかしら?それから――あなたのことをなんて呼べばいいのかも、ね」
>「そうね。話せば長くなる……と言いたいところだけど、わたしもそのすべてを把握しているわけじゃない。
わたしにわかる範囲の話でよければ、ミョウジンがトイレから戻ってきてから話すわ。
詳しい話は、『王』から話していただけることになっているから、それを待って頂戴。
……あと、ユーザーフレンドリーとかクソゲーとかは……恥ずかしながら、よく分からない。ごめんなさい」
なゆたの相変わらずなマシンガンクエスチョンで、相手も若干たじろいでいたが、聞きたいことは大体言ってくれた。
しかし、どうやらこの案内者も、スノウフェアリーのメロと同じくそこまで深い事情を知っているわけではないらしい。
結局のところ、真一たちがここへ連れて来られた理由も、元の世界に帰るための手段も、王都へ行かないことには分からないようだった。
>「ちょっ、うあっ、そして痛いですっ!?」
そんな最中、真一が魔法機関車まで運び、なゆたが膝の上で寝かせていた少女が目を覚まして座席から転げ落ちた。
真一となゆたが「あっ」と声を上げる間もなく、少女はそそくさと隣の席に身を隠してしまう。
>「あ、あのっ!!……ど、どうも。私はPL名【メタルしめじ】です。、ええと、皆様が私をここまで連れてきてくださったのでしょうか……?
もしそうなら、ありがとうございます……それで……《私は新参でとても弱いので》この訳が判らない状況に着いていけそうにありません
なので……なので、寄生みたいで申し訳ないのですが、暫くの間皆様に同行させて頂きたいのですが……」
そして、一通りの会話が終わったのを見計らい、少女は再び姿を表した。
「言われなくても、お前みたいな子供をこんな場所に置いてくつもりなんてねーよ。
お前は必ず、俺たちが元の世界に連れ帰ってやるから心配すんな! これからよろしく頼むぜ、しめ子!」
即興で変なニックネームを付けて呼ぶ辺りは真一らしいが、ともかくこれで顔合わせは済んだ。
五人の人間と、一人のモンスター。総勢六人の奇妙なパーティではあるものの、右も左も分からぬ異世界を生き延びるためには、この面子で力を合わせなければならない。
真一は気を引き締めながら、あらためて一人ひとりの顔に目を落とす。
『……皆様、ご挨拶は済みましたでしょうカ?
初めましテ。ワタシはこの汽車の車掌兼運転士を務めさせて頂く“ボノ”と申しまス。
ご覧の通り人形の身ではありますが、必ずや皆様を王都までお連れしますので、今後ともよろしくお願い致しまス』
――その時、車両の前の方から、一体の人形がこちらへと歩いて来た。
と言っても、それはただの人形ではなく“ブリキの兵隊”というブレモンのモンスターだ。
戦闘力は低いが、特定エリアにしか出現しないため地味にレア度は高く、滑稽な可愛げのある容貌も相まって、マニアの間では奇妙な人気がある。
「――よし、それじゃあ早速出発しようか! 目指すは王都だ。こんなところで、いつまでも立ち止まってられないぜ!」
真一の号令に従い、ボノは一礼するとさっと踵を返して、車両の先頭へと消えて行った。
そして、魔法機関車は再び夜空に向けて、一際甲高い警笛を放つ。
車輪はカラカラと音を鳴らしながら回転し、ゆっくりと線路を前進し始める。
かくして、少年たちはこの異世界で出会い、長い旅路の第一歩を踏み出した。
――これは後に“勇者(ブレイブ)”と呼ばれる彼らと、その守護者が紡ぎ出す、勇気と友情の物語のプロローグであった。
第一章「旅立ちの夜」
完
【これにて、第一章完結です!
ひとまずお疲れ様でした。まだまだ先は長くなると思いますが、今後ともお付き合いして貰えると嬉しいです。
この後に次章の導入を投下する予定なので、もう少々お待ち下さい】 【なゆたPLでございます。
第一章が終わり、これからというところに水を差すようで、大変心苦しいのですが。
このたびは私の軽率な行動で、スレの皆様に多大なるご迷惑をおかけしてしまいました。
慎んでお詫びをさせて頂きます。
私たちが折角みんなで楽しいことをしているのに、くだらない茶々を入れて妨害する行為。
それがどうしても、どうしても許せなくて、衝動的にこんな愚かな行為に走ってしまいました。
これが許される行為であるとはもちろん思っておりませんし、我ながらなんて短慮だったのだろうと思います。
完全に無視するか、もしくはきちんと抗議するかすればよかったのですが、荒らしにそんなことをしても無駄と思い。
目には目を、の精神でこちらも荒らし行為に踏み切ってしまいました。
本当に、スレの皆さまにはお詫びの言葉もありません。申し訳ありません。
このような行為をする人間がいては、皆様も楽しく遊ぶことはできないと思います。
何より、私自身自らのやった行為が情けなく、皆様に顔向けすることが出来ません。
幸い、たくさんの方が参加されていますので、私がいなくなってもスレに影響はないかと思います。
ですので、大変残念ですが、私はこれにておいとまをさせて頂こうと思います。
なゆたについては、幸い章の区切りということで、勝手ながらGM様預かりということにして頂き、
何らかの理由によってキングヒルに残留ということにして頂ければ大変ありがたいです。
本当に、申し訳ございませんでした。
ブレイブ&モンスターズの世界が今後も盛り上がることを祈念致しております。
なゆたPL 拝】 >>198
【……えっ!?
いきなり何を言ってるのか意味が分からなかったので、他スレでIDを探して理解しました。
まぁ、本音言うとなゆたさんが相手と同レベルのことをしてるのはショックでしたが、
気持ちはよく分かりますし、ムカついていたのは私も同じです。
ただ、正直向こうがどうなろうと、別にどうでもいいというか……わざわざ荒らしに行くのって無駄な労力だと思うんですよね。
そんなことに時間を割くよりも、こっちはこっちで楽しむことに全力捧げた方が良いんじゃないかなーというのが私の考えでした。
ともあれ、あなたが誰に対して謝罪したいのか分からないのですが、
私や他の参加者さんに謝りたいというのであれば、今後もスレに残って頂けるのが一番効果あると思います。
もしもブレモンのスレ自体に飽きたなら仕方ないのですけど、
そうでないなら是非ともヒロインを続けて欲しいのですが、如何でしょうか?】
そこはいったん辞表受理して別キャラででもいつでも帰ってきて下さい、が正解じゃないか
周囲は気にしてないとしても本人が気まずい思いをするからな >>200
【勿論なゆたさん自身の気まずさとか、周囲から批判を受けるかもしれないということは理解してます。
しかし、そういった諸々を分かった上で、それでも私はなゆたさんの擁護側に回るので、
「崇月院なゆた」に残って欲しいという意思を表明したつもりでした。
ちょっと今から仕事なので、しばらく返信はできないかと思いますが、
こちらの考えは分かって貰えると嬉しいです】 【状況把握
このスレの参加者ではないけど、関係者としてコメント
こちらの気持ちとしては一切不問、真一君に同意
ですが、それでは収まらないでしょうから、罰として向こう一ヶ月参加スレ以外のあらゆるスレを閲覧しない(ウォチ板も)
その上で現在参加中のスレに参加継続する
苦しいとは思いますが罰として受け入れてください
そして責めるも謝罪も同様に蒸し返さず蒸し返されても目に写さない、触れないこと
それで決着とし受け入れてもらえれば有難い
一ファンの読者より】 【他のスレのことは知ったこっちゃないし調べるつもりもないのでここで知った情報だけでコメントします。
私個人としては、このままなゆたちゃんが抜けて続けるより同僚として一緒にプレイ出来たほうが百倍楽しいと思うんで残って欲しいですね。
明神とモンデンキントの因縁も未消化のままじゃ滅茶苦茶勿体無いと思いますし。
あとはまぁ、これ言っていいのか分かんないんですけど、嫌な思いをしたのは私じゃないんで明日には一連のゴタゴタ全部忘れる予定です。
以上の理由から合理的帰結としてなゆたちゃん残留に一票。】 >>202
あーあ、お前みたいな厨がいるからだよ
なゆたは真面目に見切りをつけて抜けておいた方がいいよ
陰湿なのに粘着される もはや名無しで擁護してるのが泣けるわ。
終わりだよ、ハイパーウンコさん。 【全力で調査完了!
つまり長期間TRPGスレ全般に粘着してた例の荒らしの正体が判明して、その荒らしが謝罪も無く逃走!
更には新スレを立てて知らぬ存ぜぬで乗り切ろうとしたから深夜の勢いでついムシャクシャしてやった!
今は後悔もしてるし反省してるという訳ですね!
うん!賞賛とか肯定とかをするつもりはさらっさらありませんが
ぶっちゃけあの荒らしは鬱陶しかったから理解は出来ますな!
とりあえず、今の時点で嫌な思いをしたのは例の荒らしだけなので気にせず参加継続しましょうよ!
というか、ソシャゲ玄人のなゆたさんが居ないと私は色々困りますので!
謝罪というなら是非参加継続をしてくださいお願いします!】 【こんばんはー
まあ、語りだすと長くなっちゃうので手短に
なゆたさんがの自責の念も危惧している事もそれが現実のものとなっても全て了承します
その上で
第二章もよろしくね!
元々荒らされているのですし、今更理由づけ如き一つ増えても変わりません
それよりもなゆたさんを失う方が痛いのでね
大見栄切ってしまった手前また戻りにくいとは思いますが、それを押してこちらの手を取ってくださいな】 >>207
それ言っちゃダメなんだよ
アグリッピナは確定じゃないんだからさ 【注意:以下の発言には自己中心的かつ身勝手な内容が多数含まれます。
そう言った発言に免疫のない方は読み飛ばし推奨。】
【なゆたちゃんPLさんの発言を読んで、正直ちょっとほっとしました。
荒らしはスルーは鉄則。ですが、それはつまり同僚が荒らしをどう思っているか分からないって事でもあるわけで。
今回の荒らしに直にびしびしぶっ叩かれた(明確な証拠はないですが、同一人物でしょう。多分)身としては、ちょっと不安だったところもありました。
同僚の皆さんはこの荒らしをどう思っているのか。明言はしてないが同調してるのではないか。むしろ同僚の誰かがこの荒らしなのでは?
叩きを口実に撤退しようか、ちょっと悩みました。最終的にはスルーしてレスを返せたのは皆さんご存知の通りですが、正直大分ギリギリでした。
そんな中、なゆたちゃんPLさんは荒らしに怒っていてくれた。怒りのあまりルール無視な行いに出てしまうほどに。
もちろん私個人をかばった訳ではないとは思いますが、それでも大分救われました。
大分長文になったので、最後に一言。
なゆたちゃんPLさん、ありがとうございました。
できれば、これからも一緒に遊べれば嬉しいです。】 >>なゆたさん
【皆の意見が出揃ったようなので、あらためて。
私は細かいことなんてどうでもいいんで、それでもなゆたさんと一緒に続けたいと言いましたが、
見ての通り、これはメンバーの総意でもあります。
TRPGは仕事でも何でもない遊びなので、あなたがしたくないことを強要はできませんが、
もしもやり直したい気持ちが残っているのなら、もう一度こちらの手を取ってみませんか?
このままやめてしまうよりも、きっといい結果にしてみせるってことは約束します。
一応区切りは必要なので、今から三日間だけ待ちます。
その間に返事を頂けなかった場合は、残念ながら次章を開始させて頂きます。
……ってわけで。
いつまでもつまんねーこと言ってないで、さっさと行こうぜ、なゆ!】
0198 崇月院なゆた ◆uymDMygpKE 2017/10/20 02:13:14
【なゆたPLでございます。 
第一章が終わり、これからというところに水を差すようで、大変心苦しいのですが。 
このたびは私の軽率な行動で、スレの皆様に多大なるご迷惑をおかけしてしまいました。 
慎んでお詫びをさせて頂きます。 
私たちが折角みんなで楽しいことをしているのに、くだらない茶々を入れて妨害する行為。 
それがどうしても、どうしても許せなくて、衝動的にこんな愚かな行為に走ってしまいました。 
これが許される行為であるとはもちろん思っておりませんし、我ながらなんて短慮だったのだろうと思います。 
完全に無視するか、もしくはきちんと抗議するかすればよかったのですが、荒らしにそんなことをしても無駄と思い。 
目には目を、の精神でこちらも荒らし行為に踏み切ってしまいました。 
本当に、スレの皆さまにはお詫びの言葉もありません。申し訳ありません。 
 
このような行為をする人間がいては、皆様も楽しく遊ぶことはできないと思います。 
何より、私自身自らのやった行為が情けなく、皆様に顔向けすることが出来ません。 
幸い、たくさんの方が参加されていますので、私がいなくなってもスレに影響はないかと思います。
ですので、大変残念ですが、私はこれにておいとまをさせて頂こうと思います。 
なゆたについては、幸い章の区切りということで、勝手ながらGM様預かりということにして頂き、 
何らかの理由によってキングヒルに残留ということにして頂ければ大変ありがたいです。 
本当に、申し訳ございませんでした。 
ブレイブ&モンスターズの世界が今後も盛り上がることを祈念致しております。 
なゆたPL 拝】 このスレしか見ていない方もいると思うので
なゆたさんはこれ以上迷惑をかけられないということで引退の決断をされたようです。
今後のこのスレの発展を願っておられました。
引退される方が痛手、と皆さんが言っているのは分かっていると思います
引き止めてくれたことに感謝もしていると思います
でも防波堤無く名無しが来る環境ではきっと彼女自身が耐えられないんじゃないかと
悪く思わないでやってくれると嬉しいな、というのが私の身勝手な願いです
一名無しより 【なゆたPLでございます。
大変申しわけございません。先日からスレを見るまいと、すべて消しておりました。
ただただ自分の愚かな行動が許せなくて。それに何より、皆さんに叱責されるのが怖くて。
目と耳を塞いでいました。
けれども、私のスレの方にて名無しの方にご忠告頂き、これも罰だろうと思ってスレを拝見したところ、
皆様からとても温かなお言葉を頂き、意外であると同時に改めて、こんな素晴らしい方々にご迷惑をお掛けしたのだと。
自らの短絡的な行いに、慙愧に堪えない思いです。
私は許されないことをしました。
でも。詳しいことは別の場所に書いたのですが、ルール違反だと分かっていても許せなかったのです。
こいつさえいなくなれば、TRPGは平和になる。そう思いました。
みんなが楽しくやっているのに、それをメチャクチャにしようとする荒らしが許せなかった。
ウィズリィさんを叩き出そうとする行為に対して、知らんぷりできなかった。
相手が尻尾を出したなら、なおさら。
本当に私は愚かでした。
皆さん、こんな私を引き留めて下さって、ありがとうございます。
温かなお言葉の数々、本当にありがたいです。
もし私が復帰すれば、荒らしは嵩にかかって攻撃してくることでしょう。
皆さんにはお見苦しいものをお目にかけることになると思います。
でも。もし、それでも宜しければ。前向きに検討させてください。
私は自分のスレを持っています。まずはそちらの方々にお伺いを立てたいと思います。
それまでお待ち頂けますでしょうか。
順番は、私を一番最後にして頂ければ……。私の順番が回ってくるまでをリミットと、よく考えたいと思います。
本当に皆さん、ご迷惑をおかけして申し訳ありません。
どうか、私の我侭をお許し下さい。
なゆたPL 拝】 >>215
【お返事を頂けて良かったです!
では、とりあえずなゆたさんを6番目に変更という形で対応させて貰いますね。
こちらも近日中に新章の導入を投下しますので、もう少々お待ちください。
また、私自身があまり荒らしを気にしないタイプなので、そこまで重く考えてはいなかったのですが、
それによってスレを辞めるところまで思い詰めてしまう方がいるのならば、別板に移籍することも検討しようと思っています。
ですので、他の方々もこれからは辛くなる前に相談してください。
それと一応ですが、今後のために避難所も立てておきました。
SS投下などでもいいので、ご自由にお使いください!】
【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!in避難所
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/3274/1508770829/ >>215
【よかった……なによりも、よかった……
スレを見るのも辛かった事は察するに余りありますが、それでもこうしてスレを見て、私たちの声がなゆたさんに届いたことが何よりも嬉しいです
正味な話、名も知らぬだれに何を言われるより、共に楽しむ同僚が苦しみ本意でない事でスレを離れていくのが一番つらいですから
なゆたさんの気持ちは判りますし、同じ意見を持っております
>>208に書いた通り、なゆたさんの危惧する事も承知しておりますし、それを了承したうえで言葉をかけさせてもらっております
おそらくなゆたさんも、自分が叩かれているのであれば知らんぷりもできたでしょう
ですが自分以外の、今回はウィズリィさんでしたが、同僚を狙って叩かれる
ウィズリィさんがどれだけ苦しんでいるか、それすら推し量れず、声をかける事も出来ない状況が辛かったのだと思います
というか、私がそういう状態でしたから
ですので、もし今後なゆたさんに限らず叩かれるようでしたら一声叩かれている同僚の方にかけさせてもらいたいですね
無視する事が最良なのかもしれませんが、同僚間の疎通が出来ず不安になってしまうくらいなら、と思うのです
ま、ともかく、今はゆっくり心落ち着けてくださいな
そして落ち着いたらまた共にブレモンを楽しみましょ〜
お待ちしておりますわ】 >>215
頼むから消えて
あなたの犯した罪はずっと残るから
その傲慢さと陰湿さが不愉快だから >>215
【あなたに残ってくれる意志があるのならこんなに嬉しいことはありません。改めて歓迎出来ることを祈っています。
今回の件は私にとっても荒らしとの向き合い方を考えさせられる出来事でした。
荒らしはスルーが鉄則、これは確かに正しいことです。しかし、ターゲットにされた同僚さんには掛けられる言葉があったんじゃないかとも思いました。
ウィズリィさん、何も庇えなくてすみません。私はあなたの味方です。あなたが荒らしの暴言に負けず続けてくれて本当に良かった。私達を信じてくれてありがとう。
もっと早く、ちゃんと伝えるべきでした。
だから、なゆたさんの行動を大っぴらに褒めるわけには行きませんが、正直よく言ってくれた!って気分です。
ただ大っぴらには言えないので、まずは荒らし問題抜きで一緒に遊んでて楽しい同僚としてのなゆたさんの帰還を楽しみにしています】 悪意をもってやったことだからな
この人が、って感じ 今回の件の問題は、それなりのベテランGMが報復荒らしで、更には立ったスレを軒並み潰しにかかっていた荒らしと同じ口調だったこと。
もう信用できないというか、この板が怖いんだよね。。。 汽車の窓際で頬杖をつきながら、真一は朝焼けで黄金色に染まった景色を眺めていた。
共に乗り合わせた他の仲間たちは、未だぐっすりと夢の中だ。
流石に昨日は皆も疲れ切っていたようで、魔法機関車に乗ってから小一時間ほど話し合いをしたあと、全員すぐに眠りに落ちてしまった。
真一は元々早起きなタイプなので、こうしていち早く目覚め、一人で物思いに耽っていたのだ。
どういうわけか、この異世界に飛ばされてしまい、初日はとにかく目の前の事態に対処するので精一杯だった。
しかし、一晩眠って冴えた脳裏に浮かぶのは――やはり、あちらの世界に残してきた、家族や友人たちのことであった。
家族には特に心配を掛けてしまっているだろうし、妹の雪奈が泣いている姿など考えると、どうしても胸が痛む。
一刻も早く、元の世界に帰らねばならない……と、思う。
自分自身のことだけではない。なゆたの両親だって今頃は気が気でない筈だし、他のメンバーにも、帰りを待っている人がいるだろう。
必ず全員を連れ帰ると、真一は断固たる決意を誓う。
世界の危機だか何だか知らないが、勝手にこんなところへ呼び付けた“王”とやらは、一発ブン殴ってやらねば気が済まない思いだった。
「……ん、故障か?」
――と、そこで不意に魔法機関車はガタンと音を立て、その場で進行を止めてしまった。
今の振動によって仲間たちも目を覚ましたらしく、一体何事かと眠い目を擦っている。
「おい、何があった? まさか、もう到着したってわけじゃねーよな?」
真一は手元の伝声管を取り上げ、運転室にいる筈の車掌へと声を掛ける。
すると、しばらくしてからまたボノが姿を見せ、車両の前の方からこちらへと歩いてきた。
ボノは申し訳なさそうな表情を浮かべながら――ブリキのくせにそんな顔をしているのは滑稽だが――おずおずと、こう切り出した。
『その、大変申し訳ありませン……燃料切れでございまス。
王都からこちら、今まで休みなく走り続けていたものでしテ……』
ボノは相変わらずの微妙なカタコトで、とんでもないことを言ってのける。
王の迎えだとか名乗っていたくせに、呆れた手際の悪さであった。
「は!? おいおい、燃料切れって……そういやこいつは何で動いてるんだ? 水と石炭?」
『いえ、魔法機関車ですのデ。あくまでも動力は魔力でス。
魔力の結晶体である“クリスタル”を焚べれば、また動かすことができるのですガ……』
見た目が蒸気機関車っぽかったので、真一はそう尋ねてみたが、どうやら違うらしい。
ボノが言ったクリスタルとは――ブレモンのゲーム内においては、リアルマネーを課金したりデイリーミッションをクリアすることによって手に入り、ガチャを回すなどに使うことができる、ソシャゲ特有のアレである。
ボノの話によるとこの魔法機関車は、クリスタルを炉に焚べることで魔力を供給しているようであった。 「んー、仕方ねーな。クリスタルなら俺も少しは蓄えがあった筈だし、分けてやるよ。
……って、あれ。俺のクリスタル、こんなに少なかったか!?」
真一は自分のスマホを取り出し、画面に表示されたクリスタルの量を見て驚愕する。
なゆたやみのりのような重課金勢ではないが、真一も日頃からクエストやデイリーミッションで得たクリスタルを貯めていたので、それなりの余裕はある筈だった。
しかし、今映し出されている数値は、自分が思っていた半分以下だったのだ。
『皆さんの持っている“魔法の板”も、魔力によって動いているのではないのでしょうカ?
それならバ、使用する度にクリスタルを消費してしまうのも仕方ないと思いますガ……』
そう続けるボノの言葉を聞いて、真一はピンと来る。
この世界に来てからずっと、スマホのバッテリー残量は気になっていた。
今の状況でスマホが使えなくなることは死活問題であり、かと言って充電する方法もありそうにない。
どうやって電池を手に入れようか考えていたものの、何故かスマホのバッテリー表示は100%のままで、減少する様子は一切なかった。
既に常識外れの世界観なんだし、そういう便利な仕様になったのだろうと納得していたが、そこまで都合のいい代物ではないようだ。
つまり、この世界におけるスマホとは――まさしく魔法のアイテムなのだ。
であるため、電力ではなく魔力によって動作する。
そして、魔力を供給するためには、その結晶体であるクリスタルが必要となる。
非常に分かりやすい理屈だったが、だとすればクリスタルの残量は生命の危機に関わる。
昨日は大分スマホを使ってしまったが、この勢いでクリスタルが消費されていくとなれば、他の奴らだって長くは保たないだろう。
何とか追加購入できないかと試してみるも、やはり向こうの世界とはリンクしていないようで、クレジットカードもウェブマネーも利用できなかった。
「こりゃ、かなりやべーな……何とかクリスタルをかき集めないと、王都に行くどころじゃなくなっちまうぞ」
真一が頭を抱えていると、そこで不意にスマホがピロンと通知音を鳴らした。
電波の飛んでいないアルフヘイムでスマホが反応するとすれば、ブレモン関係に他ならない。
慌ててスマホの画面を見てみると、そこには新着クエストが一件追加されていた。
そして、その内容とは――
「“ローウェルの指輪”を手に入れろ。報酬は……クリスタル9999個だって!?」
ローウェルの指輪とは、ブレモンの作中では有名な“大賢者ローウェル”の遺物である。
大変希少な激レアアイテムであり、やり込んでいるプレイヤーでさえ、ほとんどお目にかかったことがない程だ。
かなり難易度が高そうなクエストなのは間違いないが、それにしても――この報酬量。
通常のクエストなどで手に入るクリスタルが3〜5個程度ということを考えれば、あまりにも破格の量だということが分かるだろう。
真一は更に画面をタップして、クエストの詳細を見る。
そこには一枚のマップと、恐らくは指輪の在り処を示しているのであろう光点が表示されていた。
地図の指し示す場所は“鉱山都市ガンダラ”。
アルメリアの金脈とも称される街であり、現在の地点からならば、歩いても半日は掛からない筈だ。
そして、真一はニッと笑いながら、スマホの画面を仲間たちに見せる。
「――どうやら、次の目的地が決まったみたいだぜ」
【第二章開始!
既に話した通り順番変更になりますので、次レスは明神さんからお願いします!】 やらないほうがいいよ
きっと悪い狐さんがハイパーウンコ召喚しちゃうよ 名前:ザ・グレート・ウンコ/The Great U.N.C.O. 年齢:17歳
性別:ヒミツ
身長:255cm
体重:ヒミツ
スリーサイズ:55-155-255
種族:ウンコ
職業:ウン高校生
性格:ウンコ好き かわいいもの好き キツネ嫌い
特技:ウンコ全般
容姿の特徴・風貌:
肩甲骨までの長いウンコをシュシュして左側に纏めたウンコと、頭頂部のウンコ
気の強そうなつり目がちの整ったウンコ、学校指定のウンコ
簡単なキャラ解説:
赤城真一の自宅の隣に住むウンコ。
学校ではウンコで通っており、生徒会室でウンコをしていることもあり教師の受けはウンコ。
成績優秀、運動神経も人並み以上のウンコで学校ではウンコの「ウ」の字も出さない。
「ブレイブ&モンスターズ!」に関しても、なんとなくウンコ勢……
と思いきや、実は実家でのウンコ代のすべてを「ブレイブ&モンスターズ!」につぎ込むウンコ。
ウンコなので限りはあるものの同年代のプレイヤーより遥かにウンコ。
なゆたに「ブレイブ&モンスターズ!」を勧めた張本人。
実家は寺。「ウンコ」という名前で幼い頃からかわれたのが心の傷になっており、周囲には「ザ・グレートウンコ」と呼ばせている。
成績優秀だが肝心なところでウンコな、いわゆる荒らしのなゆたキラー。
【パートナーモンスター】
ニックネーム:クソリン
モンスター名:ウンコマン
特技・能力:変幻自在の身体、耐久力に優れる
容姿の特徴・風貌:
普段は255センチ程度のウンコ色で楕円形のウンコ
硬さは普通のウンコ程度だが、命令によってダイヤモンド並みに硬化することも可能
簡単なキャラ解説:
「ブレイブ&モンスターズ!」のマスコットキャラ。
ぷよぷよしたボディとつぶらなウンコで人気。レア度は最高レベルだが、実はウンコ。
ウンコのえげつないデッキのコンボによって、舐めプしてくるなゆたを狩りまくる日々。
【使用デッキ】
・スペルカード
「形態変化・硬化(ウンコ・ハード)」×2 ……瞬間的に硬くなる。
「形態変化・軟化(ウンコ・ソフト)」×2 ……瞬間的に軟らかくなる。
「形態変化・液状化(ウンコ・リクイファクション)」×1 ……瞬間的に液体化する。
「糞散布(ヴェノムダスター)」×1 ……ウンコを振りまき対象に継続ダメージを与える。
「分裂(ディヴィジョン・セル)」×3 ……瞬間的に二対のウンコに分裂する。重ねがけで更に倍々で増える。水フィールドだと更に倍
「再生糞(リジェネレーション)」×2 ……なゆたに継続ウンコ効果を与える。
「麻痺糞(バイオトキシック)」×1 ……なゆたを麻痺させしばらく行動不能にする。
「限界突破(ウンコドライブ)」×1 ……魔力のウンコを纏い、身体能力を大幅に向上させる。
「鈍化(スロウモーション)」×1 ……対象の素早さを著しく下げる。
「融合(ウンコフユジオン)」×1 ……なゆたと合体して荒らしになる。
「糞回復(クソヒーリング)」×1 ……対象の傷を癒やす。
「浄化(ピュリフィケーション)」×1 ……浄化されて消える。
・ユニットカード
「命たゆたう原初の糞(オリジン・ビリーフ)」×2 ……フィールドが糞属性に変化する。
「排泄大移動(エクソダス)」×1 ……とにかく大量のウンコを召喚する。 「糞・糞・糞」と書かれたタイトルの怪文書を読み上げる。みんなドン引きだ。
そしてザ・グレートはウンコを撒き散らしはじめた。
【第二章開幕ウンコが全員を襲う】 ウンコは荒らしを探していた。その名は「崇月院なゆた」。この板を荒らす鬼才である。
ちなみに「鬼才」というのは本人の自演による弁で、あちこちで自分は天才で板を動かしていると自称しているらしい。
ウンコはなゆたを鎮圧するか、それとも一体化するか悩んだ。
ウーーーーーーーン…
コ。
【ここで他の皆さんに質問 なゆたをどうすればいいか? 名無しも歓迎します】 >「向かう先は王都よ。王都キングヒル……偉大なる『王』のおひざ元ね。
食事と寝床は提供されるはずよ。贅を尽くした、とまではいかないけれど料理人は全力を尽くすはず。
個人の嗜好に合うかまでは保証しないけど。あと、トイレはあっち」
「マジ?サンキューちょっとお花摘みに行って来るね」
ウィズリィとかなんとか名乗った魔女術の少女は、俺の質問に過不足なく答えてくれた。
そういうわけで俺は満を持して3番(隠語)に入ることにする。
括約筋に俺の持てる全ての力を注ぎ込みながら、ヒョコヒョコ歩きで客室を出た。
……それにしても、『王』か。
蝿の王だの炎精王だの石油王だの、この世界王様多すぎじゃね?
今更ノーマルな王が出てきたところでなんも畏敬できねーわ。
こういうフレーバー設定のガバガバ具合もザ・ソシャゲって感じで大変ノーグッドですね。
トイレまでの通路には窓があって、そこから外の景色を眺めることが出来た。
超高速で流れていく荒野。列車の進行方向にキングヒルがあるらしいけど、今んとこまだ地平線の向こう側だ。
にしても全然揺れねーなこの機関車。昔明治村でSL乗ったことあるけど結構ガタガタ言ってたのにな。
トイレ、トイレは何処……あそこか。うへっちゃんと男女で分けてある。妙なとこだけ現代的で笑うわ。
「この便座……大理石だと……!?」
ようやく再会できたお便所ちゃんはやはりというかなんというかすげえ豪華な造りになっていた。
形状は一般的な洋式便器だけど、なんとまぁ総大理石製だ。石の中にアンモナイトが浮いてやがる。
ケツに触るとこまで石で作ってどうすんの。ぜってー冷たいじゃんこれ。便座カバーくれー付けようぜマジでさぁ。
そんなこんなでおそらく生涯最高に美しい環境で俺は用を足した。
いっぱい出た。
「ただいまー自己紹介タイム終わった?」
懸念を一つさっぱり洗い流せて上機嫌の俺は、鼻歌交じりに客室に戻る。
するとなにやら真ちゃんが揉めていた。相手は俺の知らない新キャラだ。車掌っぽい服来てるし車掌なんだろ多分。
「そういや、列車止まってないか?こんな荒野のど真ん中で……」
真ちゃんと車掌の会話はまさにその件についてだったらしい。
曰く、燃料切れで当車両の運行がストップしたとかなんとか……マジで?
「なんで帰りの燃料積んでねーのよ。特攻隊じゃねえんだからさぁ」
どこの世界に片道分の燃料でお迎えに上がる使者がおんねん。
なに?キングヒルの懐事情ってそんな逼迫してんの?賓客に歩いて王都まで来いってか。
車掌が言うには、魔法機関車はクリスタルで動くらしい。
俺達に自腹を切れっていう行間を真ちゃんは読んだらしく、自分のスマホを手繰る。
>「んー、仕方ねーな。クリスタルなら俺も少しは蓄えがあった筈だし、分けてやるよ。
……って、あれ。俺のクリスタル、こんなに少なかったか!?」
猛烈に嫌な予感がして、俺もスマホのアプリを開いた。
プレイヤープロフィール画面の、所持クリスタルの数が……激減している!
自慢じゃねーけど俺はガチャとか回さない人だからクリスタルの貯蓄にはちょっとした自信があった。
それこそ、ブレモン史上最大のアプデにして悪名高き200連ガチャを余裕で回せるくらいには。
それが、まるで初心者のビギナーボーナス貰ったまま引退しましたみたいな数にまで減ってやがるのだ。
>『皆さんの持っている“魔法の板”も、魔力によって動いているのではないのでしょうカ?
それならバ、使用する度にクリスタルを消費してしまうのも仕方ないと思いますガ……』
「だからそういう仕様はよお!もっと早く告知しろっつーんだよクソゲーがよぉ!」 俺、オモクソスマホ構いまくっちゃったよ!荒野に一人でいるときクッソ暇だったからね!!
なにせ無人の荒野じゃ歩きスマホを咎めるのはサンドワームとコカトリスぐらいなもんだ。
そして絡んでくるそいつらは暴力で黙らせられる。世はまさに世紀末。イカれた時代にようこそ。
そういうさあ!死活問題に関わるような重要案件はさあ!パッチノートに書いとこうぜ、なあ!
>「こりゃ、かなりやべーな……何とかクリスタルをかき集めないと、王都に行くどころじゃなくなっちまうぞ」
「インベントリの水も食料も取り出せなくなっちまったら、俺達は今度こそ飢え死にだな……」
どころかスペルもサモンも使えないんじゃクソ雑魚コカトリスにもボコられかねないのが俺達生身の人間だ。
今のうちに真ちゃんに媚売っとくか?あいつ適当な棒でも持たせときゃ肉壁くらいにはなるだろ。
と、スマホに着信だ。当たり前のように圏外だし、ブレモンアプリの通知だな。
フラグの達成による新規クエスト受注のお知らせだ。
>「“ローウェルの指輪”を手に入れろ。報酬は……クリスタル9999個だって!?」
「なんだそのサービス末期みてーなインフレ具合は……」
9999個て。達成にリアル時間で一週間かかる超高難度クエストの最高報酬が確かクリスタル20個だったはずだ。
いや実際消費量から見た需要に対する供給って意味では釣り合い取れてるけどさぁ……運営さんはバランスとか考えない人?
クエスト詳細にはマップが付属されていた。ここから徒歩で半日行ったところにある……鉱山都市ガンダラ。
ガンダラはいわゆる素材掘りの聖地で、ポチポチ連打してるだけで金策になるから俺もよく利用していた。
大体業者のBotが走り回ってるからその辺のモンスター引っ張ってきてMPKしたりとアトラクションも豊富だ。
>「――どうやら、次の目的地が決まったみたいだぜ」
「向かう先に異論はないよ、真一君。だがここからまた半日歩き詰めというのはかなりしんどい。
俺や君は問題なくとも、ここには女の子もいるんだ。レッドラの背中に何人か乗せられないか」
先のベルゼブブ戦を見る限りでは、人間を乗せられるようなサイズのパートナーはレッドラだけだった。
スケアクロウに機動性は望めないし、皮鎧やスライムは論外。女子中学生はそもそもこいつプレイヤーなの?
「ウィズリィちゃんや、何か便利な乗り物とか借りられないか。魔女の箒とかそういうの、あるだろ?」
ブレモンのゲーム上では基本的に魔法機関車と飛空艇がプレイヤーの移動手段になるわけだが、
流石にこの世界で自転車とか騎馬的なポジションの道具がまったく発展しなかったとは考えにくい。
アルフヘイムの住人であらせられるところのウィズリィえもんがなんか良い感じの魔法道具出してくんねーかな。
……それから。
『ローウェルの指輪』を入手するこのクエスト、肝心の指輪がどうなるかクエスト概要だけじゃ分からない。
つまり、キーフラグとなる指輪は全員のインベントリに行き渡るのか、PTの代表者が一つだけ入手できるのかだ。
言うまでもなくローウェルの指輪は超クソレアアイテム。ベルゼブブ捕獲は失敗に終わったが、こいつは絶対に取り逃がせねえ。
もしも指輪がPTに一つしか手に入らないシステムだったら……今度こそ、出し抜く算段を付けねえとな。
【半日歩くのしんどいとゴネはじめる最年長】 そうだな、出し抜く算段をつけねえとな……ウンコを
ブボボボボボ……!!!!
『ローウェルの指輪』を入手するこのクエスト、肝心の指輪がどうなるかクエスト概要だけじゃ分からない。
つまり、キーフラグとなる指輪は全員のウンコを摘便し、確認しなくてはならないのだ!!
ブレモンのシステムやべえ、マジやべえ!!
【半日歩くのがしんどそうな最年長に「命たゆたう原初の糞」を発動】 >>233
一晩経ってるはずだぞ
よく読んだ方がいい こっちだった
>>233
そうだゾ
しっかり読んどけや 農家の朝は早い
夜明けとともに作業が始まるため、まだ薄暗いうちに起きて朝の準備を終える
そんな生活が染み付いているみのりは自然と目が覚めたが、ここは既にブレモンの世界。
もう起きる必要もないと起き上がらずに横になっていた。
が、魔法機関車が不意に停止するのを受けてそうも言っていられなくなる。
他の面々も起き上がってくるんい合わせ、みのりも体を起こす。
車掌のボノによると燃料切れだとか。
この魔法機関車の燃料は魔力の結晶体であるクリスタル。
ブレモンではミッションクリアーするなり課金で買うなりして入手できるもので珍しくもない。
珍しくもないのではあるが雲行きは急速に怪しくなる。
真一が驚きの声を上げ、明神の表情からも同様なのであろう。
この世界ではスマホは魔法のアイテム
すなわちスマホの動力もまたクリスタルであるという事だ。
この先王都に向かうにしても、スマホで各々がパートナーを呼ぶなりカードを使うにしてもクリスタルの消耗がネックになる。
補充しようにもクリスタル購入はできない様子。
クリスタルの補充は……スマホに舞い込む新着クエストだけが頼りなのだ。
ローウェルの指輪入手……報酬クリスタル9999個
降ってわいたようなそのクエストにもはや選択の余地はない。
というところまで話が進み、ようやくみのりが動き出した
「あらあら、燃料がないとはうっかり屋さんやねえ。
丁度破格のクエストも舞い込んで来はったことやし、真ちゃんの言う通りこのクエストでクリスタル手に入れへんとねえ
ふふふ、ローウェルの指輪のクエストって初めてやし、楽しみやわぁ」
微笑みながら真一の意見に同意する
正直な話、みのりはクリスタルについて心配はしていない。
確かに目減りはしていた。
していたのだが、それでも伊達に石油王と言われるほど課金をしているわけではないのだ。
デイリークエストや他クエストをほとんどしておらず、報酬によるクリスタル入手など片手で数えるくらいしかないのだが。
おそらく現時点にあってみのりのクリスタルは他のメンバーの持つクリスタルを合計した数よりはるかに多いだろう。
それを放出すれば、魔法機関車は再び息を吹き返し、おそらくは王都までたどり着ける。
だがあえてみのりはそれを言わない。
どれだけのレアアイテムであろうが、ガチャを絞られていようが、『お金さえかければ出るのであればそれは手に入れられるってじょとでしょう?』という感覚でゲームをしてきたのだ
だが、課金要素を打ち切られ、現実的な生活と仕事による束縛も受けない。
みのりにとって、この状況は初めて本当の意味でブレモンというゲームを楽しめている状況と言えるのだから。
「報酬9999なんて、さぞかし難しいクエストなんやろねえ。
協力し合わなクリアーでけへんやろうし、ちょいと皆さん今のうちに見たってぇな
お互い手の内知ってた方が連携しやすいやろ?
昨夜デッキ再構築もしましてん
特にうちのイシュタルは珍しいから皆さんどういうのか知らへんやろでねえ。」
総言葉を添えてスマホを差し出すと、そこにはスケアクロウのデータとデッキ一覧が表示されていた。 ニックネーム:イシュタル
モンスター名:スケアクロウ
特技・能力:防御力は無いに等しく機動力も低いが、HPと回復力は全モンスターでもトップクラスであり耐久度は高い
ダメージ反射を主体とするバインドコンボに適しているため拠点防衛には無類の強さを誇る
また、探知能力も高く、一定範囲内をテリトリーと定めるとテリトリー内の情報把握能力が高まる
150センチほどの案山子
顔はカボチャに目鼻を書き込み、眼深にとんがり帽子を被っている
案山子あり藁の体で何やら蔦が絡み付いている
やたらと目立つようで、MOBの注目を集めやすい
『不協響鳴(ルーピ―ノイズ)』……耳障りな声で嘲笑い周囲のヘイトを強烈に集める
『機能美の極致(ボルテックスエイジ)』……目玉風船に廃棄CDを吊り下げたものが爆竹の破裂音をまき散らしながら飛び出る。ダメージ無し
『長男豚の作品(イミテーションズ)』……藁を組み替え編み直すことで形を変える。なお機能は変わらない
簡単なキャラ解説:
スマホ向けアンチウィルスソフト会社とのコラボ企画で、グッズフルコンプリート(総額15万円)&アンチウイルス契約者へのプレゼントキャンペーンで契約者に送られる特典モンスター
聖域(田畑)の守護者と銘打たれているが、石油王のコレクターズアイテムの象徴的な存在として見られている
ニックネームイシュタルはメソポタミアの豊穣神から
【使用デッキ】
・スペルカード
○「肥沃なる氾濫(ポロロッカ)」×1 ……フィールド上を洪水が押し流し、与えたダメージ分回復
○「灰燼豊土(ヤキハタ)」×1 ……フィールド上を業火が包み、与えたダメージ分回復
○●「浄化(ピュリフィケーション)」×2 ……対象の状態異常を治す。
○○「中回復(ミドルヒーリング)」×2 ……対象の傷を中程度癒やす。高回復に回復量は劣るが素早い使用が可能
○「地脈同化(レイライアクセス)」×1 ……地脈の力を吸い上げ高い継続回復するがその場から動けなくなる
○「我伝引吸(オールイン)」×1 ……1ターンPTのダメージを肩代わりする
○「来春の種籾(リボーンシード)」×1 ……致命のダメージを負ってもHP1残して復活できる。デッキに複数入れられない
○○○「愛染赤糸(イクタマヨリヒメ)」*3……対象とパートナーモンスターを赤い位置で繋ぎ、一定期間離れられないようにする
・ユニットカード
○○「雨乞いの儀式(ライテイライライ)」×2 ……雨を降らせてフィールドを水属性に変化させる
●○「太陽の恵み(テルテルツルシ)」×2 ……太陽を照らせてフィールドを火属性に変化させる
○「荊の城(スリーピングビューティー)」×1……荊の城を出現させる。荊に触れたものは睡眠状態に
○「防風林(グレートプレーンズ)」×1……林立する樹を出現させる。風属性や衝撃波を軽減
●○「囮の藁人形(スケープゴートルーレット)」×2 ……5体の藁人形を出現させる。身代わりとなり攻撃を受け、内1体は他の藁人形を受けた累積ダメージを反射する
●「収穫祭の鎌(サクリファイスハーベスト)」×1 ……攻撃力0の鎌。累積ダメージがそのまま攻撃力になる 「ゲームとは違うし、ゆっくり回復カード切れるように待ってられなさそうやから高回復を中回復に代えてみたわ〜
他にもいろいろ、ゲームのシステムだけでは収まらへんところがあるみたいやしねえ。
スケアクロウのグラフィックのフレーバー程度やと思うてた蔦についた実も食べられたりしはったし、相違点は色々ありそうやねえ」
ブレモンを始めてデッキ構築を考えたり、レアアイテム当たってはしゃいだり。
そんなブレモンが一番楽しい時期の初心者のようにみのりは浮かれてしまっているのだ。
初めてのクエスト、しかもゲームではなく実体験できるとあれば尚更だ。
しかし、そんなみのりとは対照的に、現実的に物事を見るのが明神であった。
現在地点から目的地である鉱山都市ガンダラまでは徒歩で半日かからない程度。
とはいえ、半日歩きづめたら体力の消耗も激しい、と。
確かに農作業で鍛え持久力に自信のあるみのりとて、長距離歩くのに不向きな長靴のまま半日あるけばかなり厳しいだろう。
更に言えばメルトはどう見ても運動に向くとは思えない
「ほうやねえ、確かにこれでは歩くの向かれへんし、しめじちゃんみたいな子を半日も歩かせるのはねえ……」
うーんと唸っていると明神がみのりの琴線を鷲掴みをする突破口を開くのだ
>「ウィズリィちゃんや、何か便利な乗り物とか借りられないか。魔女の箒とかそういうの、あるだろ?」
「あらあら、あらあら、そうやねえ。
魔法のじゅうたんがあらはったらみんなで乗れるしええんやなぁい?
どのみち現地ガイド役がおってくれるとありがたいわ〜」
明神に乗っかり期待に満ちた目ででウィズリィを見つめるのであった。
【うなるほどのクリスタルを隠して冒険にウキウキ】
【デッキ披露】
【ウィズリィにマジックアイテムとガイドを期待】 糞・糞・糞
この怪文書が撒かれると、同時に周囲からは糞とホモの大群が押し寄せてきた。
五穀みのりのデッキ
・スペルカード
○「肥沃なる氾濫(ポロロッカ)」×1 ……フィールド上を洪水が押し流し、与えたダメージ分回復
○「灰燼豊土(ヤキハタ)」×1 ……フィールド上を業火が包み、与えたダメージ分回復
○●「浄化(ピュリフィケーション)」×2 ……対象の状態異常を治す。
○○「中回復(ミドルヒーリング)」×2 ……対象の傷を中程度癒やす。高回復に回復量は劣るが素早い使用が可能
○「地脈同化(レイライアクセス)」×1 ……地脈の力を吸い上げ高い継続回復するがその場から動けなくなる
○「我伝引吸(オールイン)」×1 ……1ターンPTのダメージを肩代わりする
○「来春の種籾(リボーンシード)」×1 ……致命のダメージを負ってもHP1残して復活できる。デッキに複数入れられない
○○○「愛染赤糸(イクタマヨリヒメ)」*3……対象とパートナーモンスターを赤い位置で繋ぎ、一定期間離れられないようにする
・ユニットカード
○○「雨乞いの儀式(ライテイライライ)」×2 ……雨を降らせてフィールドを水属性に変化させる
●○「太陽の恵み(テルテルツルシ)」×2 ……太陽を照らせてフィールドを火属性に変化させる
○「荊の城(スリーピングビューティー)」×1……荊の城を出現させる。荊に触れたものは睡眠状態に
○「防風林(グレートプレーンズ)」×1……林立する樹を出現させる。風属性や衝撃波を軽減
●○「囮の藁人形(スケープゴートルーレット)」×2 ……5体の藁人形を出現させる。身代わりとなり攻撃を受け、内1体は他の藁人形を受けた累積ダメージを反射する
●「収穫祭の鎌(サクリファイスハーベスト)」×1 ……攻撃力0の鎌。累積ダメージがそのまま攻撃力になる
を丸パクリし、
「糞まみれのペースト(ウンコ・ペースト)」×1 ……攻撃力0の。累積ダメージがそのままウンコになる
を発動。あたりはウンコに包まれる
…… >>239
一晩中気張ってたんやな
「せや、せや、一晩中気張ってたんや!」
糞をきばっていたグレートウンコは、
あたりに糞を撒き散らす。
キツネのマークの札をばら撒き、「アイ・アム・レジェンド・ウンコ」と叫ぶ
そしてなゆたは糞の加護に包まれた……… >>244
お前フィッチャーだろ
文書くと正体バレるぞ 従士はムロアジと自分が関わったスレ以外全部に無差別攻撃してるし、狐の弁解でそれ認めてるもんな
そのうちティターニアも粘着ウンコされそう >>249
お前が消えろっつの
ハイパーウンコなゆた 魔女ってラテカスなんだろ?
3スレも掛け持ちしてたら遅れて当然だわ
迷惑だからさっさと消えろよ ラテと従士=狐糞に繋がりがあるのも事実
ゴミ同士仲良くしろよ 大人は勝手だ。
「……ウィズリィ、お前は本気なのか? 本気で、『王都』に行こうと?」
「ウィズリィ、あなたが勉強を頑張っているのは知っているわ。でも、だからと言って無理な事はあるのよ」
「『王』が何と言おうと、ウィズリィ、お前が未熟なのは変わりない。
私達はお前を大切に育てなければいけない責務がある」
大人は勝手だ。
大切に育てるだなんて、いつまでも子ども扱いして。
わたしだって、魔法は十分使えるし、『王』も認めてくれている。
わたしは立派な『森の魔女』。大人の手助けなんていらない……!
ガタン!
「ん……え……?」
突然の振動に、大人たちの姿が掻き消え、目の前には魔法機関車内の光景が戻ってくる。
……どうやら、うたた寝をしていたようだ。
窓から外を見ると、どうやら魔法機関車は止まっているらしい。
はて、どういう事だろう。『王都』についたわけでもないようだが……。
シンイチが伝声管を通じて呼びかけると、運転手であるボノが出てきた。
そして、とんでもないことを告げたのだ。
>『その、大変申し訳ありませン……燃料切れでございまス。
> 王都からこちら、今まで休みなく走り続けていたものでしテ……』
「……」
めまいがした。
「必要分のクリスタルを用意していなかったの?
確かにクリスタルは希少だけれど、今回の迎えの目的地と、必要な魔力は分かっていたはずでしょう?」
自然に口調がきつくなる。
今回の迎えが失敗でもしようものなら、それは『王』の威信を傷つける事にもなりかねないのだ。
だが、ボノから返ってきたのは意外な言葉だった。
『いエ。必要分のクリスタルは、確かに積んできた筈でございまス。
それはワタシ自ら、出発前に確認しておりましタ。
ただ……どういう訳か、クリスタルが予想より早く減ってしまっていたのでございまス』
「……つまり、魔法機関車の燃費が悪くなった、という事?」
『いいエ。炉にくべていない筈のクリスタルが、どこかに消えてしまったのでス』
「…………」
つまり、クリスタル泥棒がどこかにいるという事だろうか。
思わずシンイチたち5人を見渡すが……すぐに考え直す。
「(彼らだって、魔法機関車が『王都』につかなければ困るのは一緒のはず……軽々にそんな行為をするとも思えない)」
完全に疑いが晴れたわけではないが、動機は薄いと言えるだろう。
とはいえ、彼らにもクリスタルが貴重品であるのは変わらないようだ。
彼らが持っている“魔法の板”……魔法を扱うための一種の発動具となっているそれも、クリスタルを動力源としているようであった。
実は、その辺りの事情はわたしも一緒である。 「……ブック、クリスタルの備蓄量はどう? 余裕はある?」
言葉と共にブック……わたしの相棒である生きる本、『原初の百科事典(オリジン・エンサイクロペディア)』が飛んできて
(比喩ではなく、文字通り飛行してきた)、ページを開き示す。
そこに記された数字を見て、わたしは顔を曇らせた。
「ぎりぎりかしら……こんな事になるならもっと貯めこんでおくべきだったわ」
ブックのような『リビングブック族』のモンスターは、日々の食べ物を必要としない代わりにクリスタルによる魔力を食事とする。
それをため込むことで、スペルや魔法の行使の支援を行う事が出来るのだ。
つまり、シンイチ達にとっての“魔法の板”が、わたしにとってのブックなのだ、と言えるかもしれない。
もちろん、ブックはわたしの契約モンスターでもあるため、一概に対応するとも言い切れないのだが……。
「……困ったわね。まさか、空からクリスタルが降ってくるような事があるわけも……」
ピロンッ♪ 聞いたことのない音が、わたしの言葉を遮る。
どうやら“魔法の板”が一斉に音を鳴らしたらしい。シンイチ達がそれを覗きこむ。……そして。
>「“ローウェルの指輪”を手に入れろ。報酬は……クリスタル9999個だって!?」
「……は?」
思わずぽかん、と口を開けてしまう。
なによそれは。どこの誰がそんないい加減な量のクリスタルを出してくれるというのか。
そもそもその“魔法の板”、どこからそういう話を受信してくるの?
神託? 神託なの?
どうやらシンイチ達はその話の信ぴょう性を欠片も疑っていないらしく、即座にそれを受けて相談し始めた。
それだけならいいのだが、わたしにも話が容赦なく振られる。
>「ウィズリィちゃんや、何か便利な乗り物とか借りられないか。魔女の箒とかそういうの、あるだろ?」
>「あらあら、あらあら、そうやねえ。
>魔法のじゅうたんがあらはったらみんなで乗れるしええんやなぁい?
>どのみち現地ガイド役がおってくれるとありがたいわ〜」
「……ええと」
こほん、と咳払いをして、答える。
「残念ながら、そういうのはないわね。
魔女の箒は、私個人の飛行魔法の補助をするものだから、複数人での使用には不向きだし。
魔法のじゅうたんは、『アルフライラ連邦』の方の高級マジックアイテム。あちらの王族でもなければ持ってないわ。
……ただ、そうね」
ブックに視線をやると、即座にスペルカードが1枚、具現化され私の手の中に納まる。
「其疾如風(コマンド・ウインド)。味方に空を飛ぶ力を与えるスペルよ。
これを使えば、それほど疲れもなく目的地……鉱山都市ガンダラまでつけるんじゃないかしら。
魔力のリチャージも、ブックのスキルのおかげでそれほど負担にはならないしね」
必要事項を伝えると、皆を見渡す。
「何か事前に準備があるならしておいて頂戴。
準備ができ次第、スペルを使って飛ぶことにするから。
……あと、その話は本当に信用できるのよね?」
【ウィズリィ:スペルを用意して飛んでいく事を示唆】
【クリスタル泥棒?:存在不確定】 質問、雑談いいかい?
なゆたが出したウンコは
誰が片付ける予定なん? >>269
俺が食ってるから大丈夫だよ
ウンコモシャッ!!モシャッッッ!!!! (……。)
赤茶けた荒野の中を、少年少女と青年を乗せて列車は進む。
(困りました。やるせない程に眠れません)
規則的な振動を与えてくる列車の中で同行する他の面々が微睡む中、されどメルトは一向に眠りに就く事が出来なかった。
目を瞑ってじっとしてようが羊をカウントしようが、一切眠れない。その理由は単純だ
(ええ、寝過ぎです分かってます。そもそも私、気絶を含めたらずっと寝続けてたみたいなものですし)
ベルゼブブに追われて疲れて眠り。自分で呼んだらしいレトロスケルトンに驚いて気絶し。
つまりは一日中眠っていた様な状態のメルトが、このタイミングで眠れる訳が無かったのである。
……だがそれでも、空気を呼んで眠っているポーズだけは取っていた成果が出たのか、ようやく眠気を覚え始めたのだが
「そわぁっ!?」
その貴重な眠気は、唐突に訪れた列車の振動とそれに伴う座席からの落下により、彼方へと消え去る事となった
>「……ん、故障か?」
「うぐぐ……こ、故障? 誰か線路に石でも置いたんでしょうか?」
真一の言葉を聞いてメルトが強かに打った頭を摩りながら窓を見れば、列車は静止してしまっている。
だが、事故というには車体に大きな損壊はなく、別に原因がありそうだ。
>「そういや、列車止まってないか?こんな荒野のど真ん中で……」
>『その、大変申し訳ありませン……燃料切れでございまス。
>王都からこちら、今まで休みなく走り続けていたものでしテ……』
そして案の定。判明した列車が止まった原因は、単なる燃料不足であった。
それだけであれば、予備の燃料か何かでどうにでもなりそうなものであったが、問題は
>『いえ、魔法機関車ですのデ。あくまでも動力は魔力でス。
>魔力の結晶体である“クリスタル”を焚べれば、また動かすことができるのですガ……』
この列車の動力源が、クリスタル(課金要素)であった事だろう。
>「なんで帰りの燃料積んでねーのよ。特攻隊じゃねえんだからさぁ」
>『いエ。必要分のクリスタルは、確かに積んできた筈でございまス。
>それはワタシ自ら、出発前に確認しておりましタ。
>ただ……どういう訳か、クリスタルが予想より早く減ってしまっていたのでございまス』
>「……つまり、魔法機関車の燃費が悪くなった、という事?」
>『いいエ。炉にくべていない筈のクリスタルが、どこかに消えてしまったのでス』
>「…………」
「……な、何故こちらを見るんでしょう。私、ずっと此処に居ましたよ。アレですよ。車掌さんがガチャで使い込んだとかじゃないんですか?」
移動用の燃料(課金要素)が消失した事で向けられたウィズリィの視線に対して、
メルトは無実であるにも関わらず必要以上に過敏に反応して、視線を逸らしつつ車掌へと責任を擦り付けようとする。
この辺りの対人能力の低さは、半引きこもり故のサガか。
「そもそも、そもそもです!石(クリスタル)で周回用のスタミナ回復するのは情弱…………って!掲示板に書いてありました、確か。私よく判らないですけど」
そして更に、問われてもいないのに言い訳を始め、その途中で初心者設定だった事を思い出し慌てて取り繕うメルト。
幸いだったのは、そんなメルトの言葉など誰も聞いてはいなかった事であろう。
何故なら、燃料枯渇の続報として更にとんでもない問題が発生していたからだ。 >「んー、仕方ねーな。クリスタルなら俺も少しは蓄えがあった筈だし、分けてやるよ。
>……って、あれ。俺のクリスタル、こんなに少なかったか!?」
>『皆さんの持っている“魔法の板”も、魔力によって動いているのではないのでしょうカ?
>それならバ、使用する度にクリスタルを消費してしまうのも仕方ないと思いますガ……』
>「だからそういう仕様はよお!もっと早く告知しろっつーんだよクソゲーがよぉ!」
クリスタルの激減。
真一と、妙に長いトイレタイムを終えた明神の驚愕の声を聞いたメルトは、
反射的に自身のスマートフォンを取り出し、プロフィール画面を開く。するとそこには
クリスタル:4
「……何か知りませんがクリスタルが超減りました!運営!侘び石はよ!」
混乱し、思わず侘び石(ゲーム進行上の不具合やアップデートの際に配られるクリスタル)を要求する声を上げてしまうメルト。だが、それも仕方ないと言えるだろう。
佐藤メルトはバグを利用したチートやアカウントやアイテムの売買によるRMT(リアルマネートレード)といった、規約違反をさんざんに繰り返していた悪質プレイヤーであり、
カード増殖バグで増やす為にレアカードを購入した事で目減りはしたものの、相応の量のクリスタルを有していたのだ。
五穀みのり程とまでは言わずとも、微課金を鼻で笑える額のクリスタルを有していたのである。
それが、ガチャを回すどころかスタミナ回復すら不可能な残量まで激減していれば混乱するのは必定
更に、特に明神や真一達の様に戦闘行為を行ったという訳でもないのだから混乱の倍率はドンである
>「インベントリの水も食料も取り出せなくなっちまったら、俺達は今度こそ飢え死にだな……」
「ううっ、垢BANされる様な証拠は残してないのに……。運営は金の為にユーザーを絞る拝金主義者です……」
不安を煽る様な明神の言葉を聞いた事で更に混乱し、頭を抱えるメルト。
だがその時。まるで救済措置とでも言わんばかりに鳴り響く、新着クエスト発生の効果音。
>「“ローウェルの指輪”を手に入れろ。報酬は……クリスタル9999個だって!?」
>「あらあら、燃料がないとはうっかり屋さんやねえ。
>丁度破格のクエストも舞い込んで来はったことやし、真ちゃんの言う通りこのクエストでクリスタル手に入れへんとねえ
>ふふふ、ローウェルの指輪のクエストって初めてやし、楽しみやわぁ」
>「なんだそのサービス末期みてーなインフレ具合は……」
「っ、賢者シリーズをクエストで出すとか運営ご乱心ですか!?」
真一達の言葉を聞いてメッセージを閲覧したメルトは、驚愕に片目を見開く。
9999個の石もそうだが、それよりもローウェルの指輪を入手出来るというのはクエストとしては破格過ぎる。
何せこのローウェルの遺物……性能が異様に高い事もさることながら、何よりも『ゲーム内存在上限個数限定』のアイテムなのである
プレイヤー1人に対してではない。全プレイヤーに対しての上限個数限定だ。
当然ながら、所有者はそのアイテムを手放す事は無い為、表のトレードは勿論、裏のRMTにも出回る事は滅多に無く
メルトが唯一オークションで見かけた時は、それこそ高級車が買える程の値が付いていた。
(……これは、是非欲しいです)
降って沸いた激レアアイテムに対し、ゴクリと生唾を飲み込むメルト。
幸運な事にBotと海外業者が大量に沸く街【鉱山都市ガンダラ】は、同じ穴の貉であるメルトの熟知している都市だ。
仮に指輪がイベントのクリアボーナスでなくとも、欺き騙して出し抜いて指輪を手に入れる算段は十分に立つ。
手に入れた指輪は自身で使っても良いし、交渉次第では先程眺め見た、どれだけ実弾(リアルマネー)をつぎ込んだのか
課金額が判らない程のスケアクロウデッキを持つみのりに売りさばいても構わない。
……と、物欲センサーが振り切れそうな打算をしていたメルトであるが >「向かう先に異論はないよ、真一君。だがここからまた半日歩き詰めというのはかなりしんどい。
>俺や君は問題なくとも、ここには女の子もいるんだ。レッドラの背中に何人か乗せられないか」
>「ほうやねえ、確かにこれでは歩くの向かれへんし、しめじちゃんみたいな子を半日も歩かせるのはねえ……」
「え? あっ」
そこで、現在の状況がゲームでは無く現実である事を思い出す。
そう。ゲーム内では自分の庭の様に縦横無尽に駆け回れたフィールドも、今は自身の体一つで散策しなければならないのだ。
自身の細い腕と、日焼けしていないインドア風に白い肌を交互に眺めたメルトは、最後に画面に表示された4つしかないクリスタルを確認して
>「其疾如風(コマンド・ウインド)。味方に空を飛ぶ力を与えるスペルよ。
>これを使えば、それほど疲れもなく目的地……鉱山都市ガンダラまでつけるんじゃないかしら。
>魔力のリチャージも、ブックのスキルのおかげでそれほど負担にはならないしね」
「あ……あの。飛ぶ前にですね……私、クリスタルが無くて……どなたか貸してください、お願いします……。
あと!あと、その……ガンダラに付いたら、どなたか傍に居てくれませんでしょうか……?」
打算が破綻し、野垂れ死にの予感を覚えたメルトは、遠くの激レアアイテムよりも、目先の生存の為に
己の寄生先とクリスタル(活動資金)の無心を行う事を始めた。
【クリスタル残4。物欲センサー動かしてる場合じゃない】
【急募:石と寄生先(クレクレ厨)】 ボットン弁護士が叫ぶ!
ハイパーウンコを呼んでくれ、なゆた! そろそろ、夕飯の支度をしなければならない。
父親は坊主の癖に金無垢の腕時計を嵌めてブガッティを乗り回すような超俗物だが、三度の食事はきっちり家で食べる。
毎日決まった時間になゆたが食事の支度をし、食卓の前でスタンバイしていなければ、途端に機嫌が悪くなるのだ。
崇月院家では三度の食事の時間は何があっても変わることはない。従ってなゆたもスケジュールをそれに合わせている。
買い物は既に済ませた。父と、自分と、それから真一。その妹の雪奈の分。
赤城家と崇月院家は共に母親がおらず、両家の母親的役割はなゆたがほぼ一手に引き受けている。
……尤も、真一は母親と死別しているが、なゆたの場合は単なる離婚なので母親とは定期的に会っているのだが。
とまれ、なゆたの中では真一と雪奈の分の食事を作るのは日常の一部となっている。
――今日はクリームシチューにしようかな。
そんなことを、ぼんやり考える。
今度の土曜日には、溜まっている洗濯をしよう。本堂の掃除は毎日しているけれど、本尊はしばらく磨いていないのでそれもやりたい。
そういえば、生徒会の仕事もやり残したことがある。頼りない生徒会長には任せておけない。
じきに中間テストの範囲も発表されるだろう。学年10位内はキープしておきたいので、勉強もする必要がある。
真一の赤点を回避させるため、家庭教師めいたこともしなければなるまい。
やることは山積している。それを順番に、着実にこなしてゆこう。
……しかし、それらに着手する前にやることがある。それは――
「ひゃぁぅっ!?」
ガクン!と突然起こった震動によって、なゆたは頓狂な声を上げて目を覚ました。
どうやら、機関車に揺られながら眠り込んでしまっていたらしい。
突然ワケのわからない(ゲーム的には知悉しているが)世界に放り出され、立て続けにバトルをさせられたのだ。
疲労して眠ってしまうというのも無理からぬことだろう。
しかし、てっきり王都キングヒルへ行くとばかり思っていた魔法機関車が停止している。――到着した、という訳ではないらしい。
>その、大変申し訳ありませン……燃料切れでございまス。
王都からこちら、今まで休みなく走り続けていたものでしテ……
魔法機関車の運転手を務めるブリキの兵隊、ボノがそんなことを言ってくる。
クリスタルがない、と慌てる一行。なゆたもスマホの液晶画面に視線を落とし、クリスタル(通称『石』)の残量をチェックした。
……やはり、減っている。
なゆたは18歳未満のため、基本的に月々の課金は5000円まで!と自らを戒めている。
が、少しでも魅力的なガチャやキャンペーンが開催されると、ついつい「おぉっと手が滑った!」と課金してしまう。
何せ金無垢の腕時計を嵌めブガッティを乗り回す住職のいる寺の一人娘だ。豪農(?)のみのりほどではないにせよ経済力はある。
従って、基本的に手持ちの石に不自由したことはなかったのだが――
「……ふーむ。これはちょっと、死活問題ね」
制服の短いプリーツスカートから伸びる、白いニーハイソックスに包んだ脚を組み替え、顎に右手を添えて唸る。
実際、今も10連ガチャを10回程度回すくらいの予備がある……にはある。
とはいえ、目減りしているのは事実だ。資源が有限である以上、いつかは枯渇してしまう。
どこかで減った分の石を補充する必要がある。
「…………」
スマホを操作し、『ショップ』のアイコンをタップする。
『クリスタルを購入する』をタップ。――が、いつもは出てくるはずの課金確認のポップアップが出ない。
やはり、課金などという安易な方法ではこの世界ではクリスタルを手に入れることはできない、ということらしい。
で、あれば―― 次善の策を講じようと思ったそのとき、手の中のスマホが小さく通知音を鳴らした。
スマホの左上に小さくブレモンのアイコンが現れ、新たなお知らせが届いたことを知らせてくる。
それを確認し、なゆたは思わず目を見開いた。あと二度見した。
新着クエスト――鉱山都市ガンダラで“ローウェルの指輪”を手に入れろ。
>報酬は……クリスタル9999個だって!?」
>なんだそのサービス末期みてーなインフレ具合は……
>ふふふ、ローウェルの指輪のクエストって初めてやし、楽しみやわぁ
>……は?
>っ、賢者シリーズをクエストで出すとか運営ご乱心ですか!?
それを見た他のプレイヤー(うちひとりは魔物)の反応は様々だったが、一様に驚きに満ちているというところだけは共通している。
が、それも無理のないことであろう。何せ、クエスト報酬は個数限定の超超超レアアイテム。
おまけに石9999個進呈と来れば、明神やメルトの「末期」「ご乱心」という感想も致し方ない。
単細胞の真一は報酬に一も二もなく飛びつくだろう。
心からゲームを楽しんでいます、という風情にはんなりなみのりも、このクエストも楽しもうとするだろう。
しかし。
――絶 対 無 理 。
なゆたの頭には、『QUEST FAILED』の文字しか出てこなかった。
大賢者ローウェル。
かつてキングヒルの王に代々使えた偉大な賢者で、この世界の1/3の魔法を編み出した――と(設定には)ある。
その魔術と知識へ向ける貪欲さは異常、偏執的でさえあり、アルフヘイムだけでは飽き足らず。
ついには闇の世界ニヴルヘイムの深奥にまで至ったという。
そんなアルフヘイムでは知らぬ者のいない大賢者ローウェルが、己の魔力の粋と叡智とを封じたと言われる指輪。
その指輪を嵌めた瞬間、牛馬ですらたちどころに高位魔法言語を喋り世の理を改編する魔法を使い出すという。
尤もそれは設定上の話で、ゲーム上でどんな働きをするのかまではなゆたは知らない。
いや、この中の誰も知るまい。何故なら、ローウェルの指輪はほとんど実在が疑われるようなレベルのアイテム。
攻略wikiにさえ実際の効果が記されていない、幻の存在なのだから。
むろん、ランカーのなゆたでさえお目にかかったことはない。
ただし。
なゆたはかつて一度だけ、ローウェルの指輪が手に入る『かもしれない』クエストにマルチで参加したことがある。
クエスト『転輾(のたう)つ者たちの廟』。
正規のストーリーをクリアした後で出てくる超高難度クエストのひとつである。
ストーリーモードのラスボス級が雑魚として群れで襲ってくるクエストで、ソロではまず攻略不可能と言われている。
なゆたはたまたまフォーラムに立てられていたメンバー募集のスレッドで名乗りを上げ、パーティーに加わった。
そして、その廟所の最下層で待ち構えていたボスが――誰あろう、大賢者ローウェルその人。
禁断の叡智を手に入れ、不死の魔物と化した大賢者の成れの果てだったのである。
ローウェルはとにかくバフとデバフを多用してくるイヤらしい敵で、なゆたのパーティーは散々翻弄され全滅した。
なお、その際の他のメンバーはベルゼブブ、メタトロン、バアル、カイザードラゴンなど、軒並みレイドボス級。
そんな選りすぐりのパーティーでさえ敵わなかったバケモノ、それが大賢者ローウェルなのだ。
ローウェルの指輪が手に入り、なおかつクリスタルが9999個も貰える。
そんなムシのいいクエストがホイホイ達成できるレベルで転がっているわけがない。
おいしいアイテムと報酬には、それなりの難度が付いて回るものだ。
もし目先の報酬に欲が眩んで、ローウェルご本人とご対面……などということになったら――
――うん、無理。無理無理無理、160%無理!
なゆたは断言した。
ここで今一度、魔法機関車内にいるメンバーとパートナーを見てみよう。
真一のレッドドラゴン。レア度は高いものの、育成がまだまだ。
まして搦め手をまったく考えない猪武者の戦い方では、ローウェルに指一本触れられず撃墜されるのがオチだ。 明神のリビングレザーアーマー。
マスターの明神自体は手慣れたプレイヤーだろうと思うが、いかんせんリビングレザーアーマー自体が心許なすぎる。
スルメであるという事実はまったく否定しないし評価もするが、超高難度に連れていけるモンスターではない。
みのりのスケアクロウ。
これは役に立つ。例えローウェルとの対決になったとしても、自分の役割をきっちりこなしてくれるだろう。
しかし、スケアクロウ単体では火力は出せない。メインアタッカーがいてこそ光るモンスターなので、単品ではどうしようもない。
ウィズリィと原初の百科事典。
こちらはまだ未知数だ。モンスターとしては、いずれも育てれば強力な魔法を使いこなすというのはわかっている。
が、現状彼女たちがどれほどの強さなのかまではわからない。大賢者に勝るレベルとは考えづらかった。
しめじとレトロスケルトン。
……………………う、うん。
そして、自分とスライム。
ポヨリンは種族の限界を遥かに突破して鍛えてある。属性有利なら、タイマンでドラゴンを屠れる自信もある。
ただ、ひとりでは無理だ。ローウェル討伐にはパーティーの力が、それも緻密な計算とチームワークがなければいけない。
ベルゼブブを倒せたこと自体、奇跡のようなものである。急造メンバーで大賢者を仕留められるとは到底思えない――が。
>――どうやら、次の目的地が決まったみたいだぜ
案の定と言うべきか、真一はもうやる気らしい。
これについてはもう分かり切っていたことなので、特に驚かない。が、言うべきことは言っておこうと思う。
>向かう先に異論はないよ、真一君。
明神も異論はないらしい。それより交通の足の方が気になっているようだ。
確かに、徒歩での移動は時間もかかるし、何よりモンスターとのエンカウントの危険がある。よけいな消耗は避けるべきだ。
さすが年長だけあって年下への気配りが出来ている、となゆたは単純に感心した。
>お互い手の内知ってた方が連携しやすいやろ?
みのりに至っては、自らの手の内まで明かしている。
ブレモンの楽しみ方は人それぞれだ。気の合う仲間とパーティープレイする者もいれば、ソロに徹する者もいる。
他のプレイヤーは味方になる場合もあれば、敵になる場合もある。
そんな中、自分のデッキというのは命綱となりうる。よってプレイヤーは通常、滅多にデッキ編成を他人に見せないのだ。
「み、みのりさん!そんな、軽々しく自分のデッキを――」
思わず、慌ててみのりのスマホの液晶画面を手のひらで隠そうとする。
とはいえ、敢えて手の内を見せるというのは彼女がそれだけ皆を信用している、もしくはしようとしていることの証拠だ。
そんな彼女の心を自分が無碍にするのは筋違いだと、なゆたはすぐに手を下ろした。
「……えと。あとで、わたしのデッキも見せますね。信頼の証として」
自分の非礼を詫び、それから小声でみのりに言う。ガンダラへ行く道すがら、みのりには自分のデッキを公開しようと決める。
>其疾如風(コマンド・ウインド)。味方に空を飛ぶ力を与えるスペルよ。
そして、明神に質問されたウィズリィが空飛ぶ箒や絨毯の代わりに提示したのは、飛行の魔法。
空を飛ぶなんて体験は当然未体験だ。いかにも異世界といった提案に心が躍ったが、こほん、と空咳を打って平静を装う。
>……あと、その話は本当に信用できるのよね?
「それについては、心配ないと思うわ。基本、通知がウソをつくなんてことはないし。そんなの本気で運営に問い合わせ案件だもの。
第一……この通知はわたしたちを導いている気がする。わたしたちが進むべき道へ」
この世界に運営なんているわけがない。ということは、この通知を皆のスマホへ送っているのはいったい誰なのだろう?
神か。悪魔か。それとももっと得体の知れない何かか―― 「……で。みんな、ちょっといいかしら?」
皆の意見がガンダラへ行くということで固まりかけたそのとき、徐に車内の全員に対して言う。
「ガンダラへ行くっていうこと自体は、わたしも賛成よ。というか、それしか選択肢はないみたいだしね」
ウィズリィの飛行魔法でキングヒルまで行き、石よこせ! と王に直訴するという方法もあったが、それは言わない。
「ただし、ローウェルの指輪のクエストについては、すぐに飛びつかない方がいいと思う」
そう前置きして、先程考えたその根拠を説明する。
ひとつ、ローウェルの指輪は実在さえ疑われるレベルの超絶激レアアイテム。そう簡単に手に入るとは思えない。
ひとつ、通常のクエスト報酬が石3〜5個。クリアに1週間かかる最高難度クエストの報酬が石20個。それに対する9999個。
ひとつ、自分はかつてローウェルの指輪を手に入れようとして盛大にコケた。
ひとつ、もしローウェル本人と戦う羽目になったら、どうひっくり返ってもこのメンバーでは勝てない。
……とはいえ、このクエストが〇周年記念キャンペーンばりのボーナスクエストだという可能性もないわけではない。
気休めにもならないかもしれないが、一応そちらの説明もしておく。
根拠としては、かつてなゆたがコテンパンにされたローウェルの住処『転輾つ者たちの廟』はガンダラとは違う地域にある。
第一、クエスト名が違う。報酬が一緒の別クエスト、という線もあるかもしれない。
「だから。まずガンダラへ行ってみて、クエストの内容をよく確認してからチャレンジするかどうか決めましょ。
無理だと思ったらやめる。勿体ないと思うけど……命の方が大切、だもの」
そう、自分たちが現在いるのは単なるゲーム画面ではない。
疲労もすれば腹も減る。眠気もあるし、トイレにだって行きたくなる――現実の世界なのだ。
ゲームで死んでも『クエスト失敗』と言われて悔しい思いをするだけだが、ここではそれだけで終わる保証はない。
本当に死ぬ可能性だって充分にあるのだ。
そもそも、新着クエストの通知が来たからと言ってそれを絶対に受けなければいけないという決まりはない。
ガンダラは素材掘りの聖地であり、クエストそっちのけでツルハシ片手に日々掘削作業に明け暮れるプレイヤーも少なくない。
初心者から熟練者まで多くのプレイヤーがおり、クエストの数も多い。
リスキーな石9999個クエは早々に諦めて、もっと堅実に石10個くらいのクエストを多くこなしていくという方法もあるのだ。
こちらは王都へ行くだけの魔法機関車の燃料と、自分たちのスマホのバッテリー分を確保できればいいのだから。
ローウェルの指輪はプレイヤー垂涎の品だが、なゆたはその入手に対して執着がほとんどない。
元々スライムを極限まで鍛えているような片寄ったプレイヤーである。レアリティにはさして価値を見出していないのだった。
「特に、真ちゃん。敵は強ければ強いほど燃える! な〜んて言うのは厳禁だから!
ここから先はパーティープレイよ。真ちゃんの身勝手な行動で、みんなが危険に晒されるの。
自分のせいで全滅! なんてイヤでしょ?」
ぴしり、と真一の鼻先に人差し指を突き付ける。
「ま……真ちゃんもそろそろソロプレイじゃなくて、マルチの楽しさを覚えるべきって思ってたから。
これはいい機会かもね……だから、ちゃんとみんなのことを考えなくちゃダメよ」
いつも真一のブレーキ役となってきたなゆたである。その立ち位置は異世界へ転移しても変わらない。
自分ひとりならいくらでも真一に合わせられるが、これからはそうはいかない。
マルチで大切なのは譲り合いの心だ。真一もそれを知っていい、と思う。
「……もちろん、それはわたし個人の意見だから。どうしてもこのクエをやりたいって言うなら、それも正当な意見だと思うけど、ね」
とにもかくにも、ガンダラへ行ってみてから決めることだ。当座の拠点も確保したいし、食べ物やベッドも恋しい。
自分の準備はとっくにできている。今すぐ飛んでも構わない、となゆたはウィズリィを見た。
……しかし。 >あ……あの。飛ぶ前にですね……私、クリスタルが無くて……どなたか貸してください、お願いします……。
あと!あと、その……ガンダラに付いたら、どなたか傍に居てくれませんでしょうか……?
不意に、それまで捕獲された栗鼠のように隅の方にいた少女――メルトが切羽詰まったような声を上げた。
大なり小なり経験者らしい他のメンバーと違い、この少女だけは正真正銘の初心者……のように、なゆたには見えた。
少なくとも、彼女の言動を疑うようなことはしなかった。
よもや自分より年下の少女が日常的に不正行為を繰り返す悪徳プレイヤーだとは夢にも思わない。
よって今の言動に対しても、
――そうだよね。真ちゃんがいたわたしと違って、こんなところにひとりで放り出されて。不安に決まってるよね。
と考え、多少の怪しい言動もまったく疑問に思うことはなかった。
スマホの液晶画面をなぞり、フレンド画面を開く。
「わたしでよければ、あげるよ。まだ石には余裕があるから――。しめじちゃん、ID教えてくれる? フレンドになろう」
フレンドになればプレゼントボックスで石の譲渡ができる。
また、フレンド間では相手のステータスも確認できる。レベルとランキングも表示されるので、こちらの実力もわかることだろう。
とりあえず、クリスタルを20個ほどメルトへプレゼントしておく。
「ここにいる人たちは、みんなしめじちゃんのことをひとりになんてしないと思うけれど。
でも、不安だって言うのはよくわかるから。一緒にいよう? 大丈夫! わたし、こう見えて結構強いし!」
メルトに視線を合わせ、にっこり笑って右手を差し伸べる。一緒に手をつないで歩こうか――そんな仕草。
真一の妹、雪奈とは姉妹のように育ったなゆただ。面倒見がよく、年下のために骨を折ることを苦と思わない。
また、現在はすっかりやらなくなってしまったが、小学校卒業まではなゆたも赤城家で剣道を嗜んでいた。
全国大会で名を馳せた真一には遠く及ばないが、同年代の女子高生に比べれば動ける方である。
「ポヨリン、いいわね? イザってときはわたしより、しめじちゃんを守ってあげて」
『ぽよっ!』
ポヨリンにメルトのボディガードを任せると、ポヨリンは眉間を引き締め気合の入った(?)表情でぽよんと跳ねた。
それから、メルトの胸にぽよよんと飛び込んでゆく。
「――さて……。わたしは準備いいわよ、ウィズリィ。いざ、鉱山都市ガンダラへ!!」
メルトの望み通り傍らに立つと、ウィズリィに対して告げる。
全員の準備が整ったなら、さっそく飛翔の魔法でガンダラへと飛ぶことになるだろうか。
まるでアメリカの西部開拓時代のように、ゴールドラッシュに湧く鉱山都市。
誰も彼もが一獲千金を求めて素材を掘り、鉱山に出没するモンスターを狩りに赴く。
素材に、金(石)に、モンスター。何かを手に入れたいと欲するなら、ガンダラほどお誂え向きの場所はない。
明神たちの例に漏れず、ゲームではなゆたも嫌と言うほど世話になった場所だが、実際に向かうその地は果たしてどんな所なのだろう。
ぐっと拳を握って逸る心を押さえつけながら、なゆたはウィズリィが魔法を唱えるのを待った。
【みのりにだけデッキ公開】
【指輪クエに対しては懐疑的かつ及び腰。慎重論を主張】
【メルトの希望を承諾。少々のクリスタルを譲渡】 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています