【TRPG】ブレイブ&モンスターズ! [無断転載禁止]©2ch.net
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
――「ブレイブ&モンスターズ!」とは?
遡ること二年前、某大手ゲーム会社からリリースされたスマートフォン向けソーシャルゲーム。
リリース直後から国内外で絶大な支持を集め、その人気は社会現象にまで発展した。
ゲーム内容は、位置情報によって現れる様々なモンスターを捕まえ、育成し、広大な世界を冒険する本格RPGの体を成しながら、
対人戦の要素も取り入れており、その駆け引きの奥深さなどは、まるで戦略ゲームのようだとも言われている。
プレイヤーは「スペルカード」や「ユニットカード」から構成される、20枚のデッキを互いに用意。
それらを自在に駆使して、パートナーモンスターをサポートしながら、熱いアクティブタイムバトルを制するのだ!
世界中に存在する、数多のライバル達と出会い、闘い、進化する――
それこそが、ブレイブ&モンスターズ! 通称「ブレモン」なのである!!
そして、あの日――それは虚構(ゲーム)から、真実(リアル)へと姿を変えた。
========================
ジャンル:スマホゲーム×異世界ファンタジー
コンセプト:スマホゲームの世界に転移して大冒険!
期間(目安):特になし
GM:なし
決定リール:マナーを守った上で可
○日ルール:一週間
版権・越境:なし
敵役参加:あり
避難所の有無:なし
======================== 【キャラクターテンプレ】
名前:
年齢:
性別:
身長:
体重:
スリーサイズ:
種族:
職業:
性格:
特技:
容姿の特徴・風貌:
簡単なキャラ解説:
【パートナーモンスター】
ニックネーム:
モンスター名:
特技・能力:
容姿の特徴・風貌:
簡単なキャラ解説:
【使用デッキ】
合計20枚のカードによって構成される。
「スペルカード」は、使用すると魔法効果を発動。
「ユニットカード」は、使用すると武器や障害物などのオブジェクトを召喚する。
カードは一度使用すると秘められた魔力を失い、再び使うためには丸一日の魔力充填期間を必要とする。
同名カードは、デッキに3枚まで入れることができる。 【キャラクターテンプレ】
名前:赤城真一/Shinichi Akagi
年齢:17歳
性別:男
身長:174cm
体重:66kg
スリーサイズ:細身だが筋肉質
種族:人間
職業:高校生
性格:熱血、健康不良少年
特技:剣道、バイクの運転
容姿の特徴・風貌:ウルフカットの黒髪、濃い茶色の双眸。服装は赤いTシャツの上から学ランを羽織っている。
簡単なキャラ解説:
日本の湘南で生まれ育った高校二年生。
中学時代は地元で名の知れた不良少年だったが、高校に進学してからは比較的更正した。
実家が剣道道場を営んでおり、剣道の腕前は全国大会にも出場したことがある程。
高校進学と同時にアルバイトを始め、貯めた給料でバイクを購入した(ホンダのホーネット250)。
バイクに乗るのが趣味だったが、最近は友人の勧めで始めた「ブレイブ&モンスターズ!」にも熱中している。
【パートナーモンスター】
ニックネーム:グラド
モンスター名:レッドドラゴン
特技・能力:頑強な爪や牙を使った格闘戦、炎のブレス、高速飛行
容姿の特徴・風貌:全身を覆う赤い鱗と、左右一対の翼、琥珀の二本角を持つ中型のドラゴン。
簡単なキャラ解説:
「竜の谷」に生息する火竜であり、韻竜と呼ばれる貴重な古代種の末裔。
まだ幼生なので、成体に比べるとサイズは大きくないが、韻竜に相応しい高度な知能と戦闘力を誇る。
【使用デッキ】
・スペルカード
「火の玉(ファイアボール)」×3 ……対象に向かって火球を放つ。
「火球連弾(マシンガンファイア)」×2 ……無数の小火球を放つ。
「炎の壁(フレイムウォール)」×2 ……眼前に炎の壁を生成する。
「燃え盛る嵐(バーニングストーム)」×1 ……強力な炎の嵐を繰り出す。
「大爆発(ビッグバン)」×1 ……特大の火球を生成して放つ。
「陽炎(ヒートヘイズ)」×1 ……陽炎によって幻影を作る。
「火炎推進(アフターバーナー)」×3 ……自身の後方に炎を噴射し、高速移動する。
「限界突破(オーバードライブ)」×1 ……魔力のオーラを纏い、身体能力を大幅に向上させる。
「漆黒の爪(ブラッククロウ)」×1 ……パートナーの爪や牙などに、漆黒の気を纏わせて硬化させる。
「高回復(ハイヒーリング)」×2 ……対象の傷を癒やす。
「浄化(ピュリフィケーション)」×1 ……対象の状態異常を治す。
・ユニットカード
「炎精王の剣(ソード・オブ・サラマンダー)」×1 ……炎属性の魔剣を召喚する。
「トランプ騎士団」×1 ……剣、盾、杖、銃を持った4体の騎士人形を召喚する。 見上げる空の左半分には、燃えるように鮮やかな紅が広がり、もう片方は暗い海の底のように、冷たい蒼で染まっている。
――月は東に、日は西に。
そんな言葉を体現している美しい光景だったが、その空の下に取り残された少年――赤城真一には、とても景色に見惚れている場合ではない理由があった。
「……おいおい、ここは一体どこなんだ?」
彼はほんの小一時間ほど前まで、日本の湘南に住む平凡な高校生だった。
中学の頃は少しばかりやんちゃをし過ぎたせいで、悪目立ちしてしまったこともあったが、ただそれだけだ。
毎日地元の高校へ通い、放課後はバイク屋のアルバイトに精を出す、ごく一般的な高校生。
そして、彼は今日も江ノ電に乗り、帰路についている最中だった筈。なのだが――
「寝過ごしてどっか遠くの駅まで来ちまったのか? いや、それにしても、江ノ電の沿線にこんな場所なんてなかった筈だけど……」
真一が気付いた時、そこは見知らぬ線路の上だった。
足元には、ところどころ崩れたレール。
付近には、古いステーション……のように見えなくもない廃墟。
そして、地平の彼方まで広がっている、見渡す限りの荒野。
最初は寝過ごして遠くまで来てしまったのかと思ったが、こんな駅は江ノ電の沿線上には存在しない。
そもそも、ここが日本なのかどうかさえも怪しい。
真一は眉間の辺りを指でつまみ、必死に記憶を辿ってみるが、それらしい心当たりは全くなかった。
思い出せることといえば、いつも通り授業を終え、帰りの電車の中で「ブレイブ&モンスターズ!」の対戦でもしようかと、アプリを立ち上げたくらいだ。
その後、唐突に真一の記憶は途切れ、いつの間にやらこの場所に立っていた。
しかし、吹き付ける風の感触や、砂の匂いはまさしくリアルそのものであり、白昼夢の中に迷い込んでしまったということも考えにくい。
ならば、ここは一体どこなんだろうか? 自分は何故、こんな場所にいるのだろうか?
とりあえず誰かと連絡を取ろうとスマホを起動してみるが、電波は圏外でアンテナ一つ立っていない。
真一は仕方なく近くの廃墟へと足を進め、手掛かりになるものでも見付からないかと探索を試みようとする。
だが、その直後、廃墟の壁を突き破って、何かが砂地の下から躍り出た。
真一の前に現れた“それ”は、俄には信じがたい姿形をしていた。
「サンドワーム……! ウソだろ!?」
それは真一も熱中している「ブレモン」に登場する、サンドワームという種族名の大蛇であった。
このような荒野や砂漠を生息地としており、全身は甲殻類みたいに頑強な皮膚で覆われている。
そのため、物理攻撃に対して高い防御力を誇り、強力な猛毒も持ち合わせているので、かなり厄介なモンスターとして知られている。
――しかし、それはあくまでもゲームの中の話だった筈だ。 『シャアアアアアーッ!!』
サンドワームは巨大な口から涎を垂らしながら、眼下に捉えた真一を獲物と見定める。
これが現実なのか、夢なのかなど、こうなってしまってはどうでもいい。
思考よりも先に動物的な恐怖に襲われた真一は、文字通り脱兎の如くその場から逃げ出した。
「冗談じゃねえ、何だってんだ一体!!」
真一は日本人高校生としては、かなり足が速い部類の少年だったが、それでもサンドワームと比較すれば相手にならない。
サンドワームは砂地の上を這って進み、瞬く間に彼我の距離を詰める。
自身のすぐ背後に迫る吐息の感触で、最早ここまでと真一が歯を食いしばった瞬間、不意にポケットに入れたスマホが振動を始めた。
『もー、何やってんだよ! 早くキミのパートナーを召喚して!!』
そして、真一はスマホの振動と同時に何者かの声を聞いた。
――いや、それは「聞いた」というよりは、もっと脳内へ直接響き渡るような声だったのだが、声の主が誰かを気にする余裕などありはしない。
ともかく、その指示通りに慌ててスマホを取り出すと、画面上には何故かブレモンのアプリが起動されていた。
ブレモンはオンラインゲームなので、電波の入らない場所ではログインすらできない筈なのだが、それを見た真一には何か確信じみた予感があった。
真一は縋るような思いでスマホを操作し、画面に表示された〈召喚(サモン)〉のボタンをタップする。
――その瞬間、強烈な閃光がスマホから迸り、真一の眼前に“何か”が現れた。
それは炎を帯びた右腕を振り被り、鋭い一撃でサンドワームの巨体を吹き飛ばす。
「……まさかお前、グラドなのか?」
真一の眼前に立つそれは、全身に真紅の鱗を纏い、頭部には琥珀の二本角。
そして、背には一対の翼を有する、レッドドラゴンの姿そのものであった。
こうして、この異世界で真一とグラドは邂逅を果たす。
しかし、彼らの出会いは、後に二つの世界を揺るがすことになる、勇気と友情の物語の始まりに過ぎなかった。
【参加者募集中!】 質問
そちらのキャラの関係者でも構いませんか?
幼馴染的な 名前:崇月院なゆた/Nayuta Suugetuin
年齢:17歳
性別:女
身長:163cm
体重:ヒミツ
スリーサイズ:83-59-85
種族:人間
職業:高校生
性格:世話好き かわいいもの好き 負けず嫌い
特技:家事全般
容姿の特徴・風貌:
肩甲骨までの長いストレートヘアをシュシュで左側に纏めたサイドテールと、頭頂部のアホ毛
気の強そうなつり目がちの整った顔立ち、学校指定のセーラー服
簡単なキャラ解説:
赤城真一の自宅の隣に住む幼馴染。
学校では優等生で通っており、生徒会で副会長をしていることもあり教師の受けは上々。
成績優秀、運動神経も人並み以上で学校ではゲームの「げ」の字も出さない。
「ブレイブ&モンスターズ!」に関しても、なんとなく暇潰しで始めたエンジョイ勢……
と思いきや、実は実家でのバイト代のすべてを「ブレイブ&モンスターズ!」につぎ込むガッチガチのガチ勢。
学生なので限りはあるものの同年代のプレイヤーより遥かに重課金している。
赤城真一に「ブレイブ&モンスターズ!」を勧めた張本人。
実家は寺。「なゆた」という名前で幼い頃からかわれたのが心の傷になっており、周囲には「なゆ」と呼ばせている。
成績優秀だが肝心なところで抜けている、いわゆるポンコツ属性持ち。
【パートナーモンスター】
ニックネーム:ポヨリン
モンスター名:スライム
特技・能力:変幻自在の身体、耐久力に優れる
容姿の特徴・風貌:
普段は60センチ程度の水色で楕円形の物体
硬さは通常グミキャンディー程度だが、命令によってゲル状になったり硬化することも可能
簡単なキャラ解説:
「ブレイブ&モンスターズ!」のマスコットキャラにして序盤のザコキャラ。
ぷよぷよしたボディとつぶらな瞳で人気。レア度は最低レベルだが、実は鍛えると強い。
なゆたのえげつないデッキのコンボによって、低レアだからと舐めプしてくるプレイヤーを狩りまくる日々。
【使用デッキ】
・スペルカード
「形態変化・硬化(メタモルフォシス・ハード)」×2 ……瞬間的に硬くなる。
「形態変化・軟化(メタモルフォシス・ソフト)」×2 ……瞬間的に軟らかくなる。
「形態変化・液状化(メタモルフォシス・リクイファクション)」×1 ……瞬間的に液体化する。
「毒散布(ヴェノムダスター)」×1 ……毒を振りまき対象に継続ダメージを与える。
「分裂(ディヴィジョン・セル)」×3 ……瞬間的に二対に分裂する。重ねがけで更に倍々で増える。水フィールドだと更に倍
「再生(リジェネレーション)」×2 ……パートナーに継続回復効果を与える。
「麻痺毒(バイオトキシック)」×1 ……対象を麻痺させしばらく行動不能にする。
「限界突破(オーバードライブ)」×1 ……魔力のオーラを纏い、身体能力を大幅に向上させる。
「鈍化(スロウモーション)」×1 ……対象の素早さを著しく下げる。
「融合(フュージョン)」×1 ……合体する。
「高回復(ハイヒーリング)」×1 ……対象の傷を癒やす。
「浄化(ピュリフィケーション)」×1 ……対象の状態異常を治す。
・ユニットカード
「命たゆたう原初の海(オリジン・ビリーフ)」×2 ……フィールドが水属性に変化する。
「民族大移動(エクソダス)」×1 ……とにかく大量のスライムを召喚する。 >>8
こんな感じで。修正希望箇所等ございましたら仰って下さい。 >>10
「THEヒロイン」という感じで、とても魅力的なキャラだと思います
特に問題などはないですので、導入文の投下をお願いします! 「誰か一人」が来なくなって、続行不可能とか言い出さなければいいんですけどねェ〜〜〜〜 ゲームとしてのブレイブ&モンスターズ!って元ネタがあるの? 違う違う
名前の欄って本名/ゲーム内でのハンドルネームなんでしょ
ハンネの部分はアルファベットだけなのかって聞きたいのよ あ、単なるよみがなとしてアルファベット入れてるだけ?
なら勘違いスマソ >>14
元ネタなどは特にないです
「ブレイブ&モンスターズ!」という架空のソシャゲが大流行しているって世界観の話です
>>15
分かりにくかったら申し訳ないのですが、漢字の読み方をローマ字表記しているだけなのでハンドルネームはないです
あくまでも生身の人間が転移する話なので、基本はキャラの本名での参加となりますが、訳あって実名を隠しているという設定ならアリです >>6です。
>>11
ありがとうございます。
また質問なのですが、学校やブレモンのシステムなどは捏造してもよろしいのでしょうか?
何か弄られると困る設定などあれば仰って頂けるとありがたいです。 >>20
設定については敢えて空白にしている部分も多いので、こちらが明記している箇所以外は好きに弄って頂いて構わないです
各々で設定を出し合って世界観を作るというのも、面白いところだと思いますし キャラシート見てて思ったけど種族の欄はいらない気がした
人間以外書きようがないし >>23
転移した人間ではなく、現地人(ゲーム世界の住人)を使いたいという場合も許可しようと思っていたので、一応種族欄は設けてありますね 「……どこ? ここ……」
どこまでも続く、見渡す限りの荒野。
生命という生命のすべてが死に絶えたようにも見える、荒涼たる光景の中に立ち尽くし、崇月院なゆたは呆然と呟いた。
なゆたは湘南にある隼ヶ峰(はやぶさがみね)高校の生徒会で、副会長を務めている。
今日も人当たりのよさと生真面目さだけが長所の生徒会長とふたり、放課後の生徒会室で資料整理に追われていたのだ。
時刻が午後五時を回り、生徒会長が帰宅すると、なゆたは生徒会室でひとりになったのをいいことに、スマートフォンを取り出した。
帰る前にちょっとだけ、今や世間で知らない者のいない大人気ソーシャルゲーム「ブレイブ&モンスターズ!」をしようと思ったのだ。
――が。
スマートフォンの液晶画面をタップし、ブレモンのアイコンに触れてアプリを起動させた瞬間――
なゆたの身体は隼ヶ峰高校の生徒会室ではなく、見たこともない荒野に投げ出されていたのだった。
「……はぁー……」
ぽかんとした間の抜けた表情のまま、スマートフォンを右手に握りしめたなゆたは息を吐く。
ひゅうう……と乾いた風が頬を擽り、シュシュで纏めたサイドテールと制服の短いプリーツスカートを揺らしてゆく。
いかにも気の強そうな眼差し以外は概ね整っている、まずまず美人と言っていい顔立ちの少女であるが、今は呆然自失といった表情だ。
ほんの数瞬前まで見慣れた生徒会室の中にいたというのに、一瞬で荒野のど真ん中に放り出されては無理もない。
はっと我に返ると、まず白いニーハイに包んだ太股をギュッとつねる。
「痛った!」
痛い。――紛れもない現実である。第一、白昼夢など見るほど耄碌してはいない。ピチピチ(死語)の17歳だ。
ならば、これはいったいどういうことなのか?
ふと、足許にレールが敷いてあることに気付く。錆びつき、もう長い間使用されていないであろう線路だ。
線路は前方にずっと続いており、その果てに何やら人工の建築物のようなものが見える。
周囲には他にランドマークになりそうなものはない。あるのは乾いた大地と、美しくもどこか不吉に見える紅蒼の空だけだ。
スマートフォンは圏外。これでは救助も呼べない。
「……なんなのよ、もう……! 意味がわかんない!」
ここがどこかもわからない。ブレモンのアプリも起動できない。
早く帰ってログインしなきゃ、デイリーログインボーナスをもらいそびれちゃう――。
そんなどこか呑気なことを考えながら、なゆたはとりあえず建築物らしきものの方向へ歩き出した。
ここに突っ立っていてもしょうがない。まずは行動、トライアンドエラーである。
と、その瞬間、遠くに見える目的地から突然何かが飛び出すのが見えた。
人間を一呑みにしてしまうくらいの大きさの長虫。それが、同じく遠くに見える人のような影に向かってゆく。
なゆたは瞠目した。もちろん、現代日本での生活においてそんな生物に遭遇したことなどかつてない。
「な……、なに? あれ……!?」
もちろん、なゆたの独語に答えを与える者などいない。
しかし、なゆたの相手をしようと出現した者ならば、いた。
なゆたの前方の柔らかい砂地が不意に隆起し、ざざざ……と音を立てて、巨大なロープ状の生物が現れる。
それはたった今遠くの建築物に出現したものと同じ、見たこともない異形の長虫だった。 いや、見たことがないというのは誤りである。
なゆたはこの怪物を見たことがある。見たことがあるどころか、『見慣れている』。
それは大人気ソーシャルゲーム「ブレイブ&モンスターズ!」のモンスター、サンドワームだった。
「サ、サササ、サンド……ワーム……!」
これは夢か、幻か。どちらにしてもリアルすぎる。
キシャアアーッ! とどこからか耳障りな叫び声を上げ、サンドワームが襲い掛かってくる。
節くれだった胴体の先端にぽっかり空いている巨大な口が、なゆたを養分にしようと迫る。
なゆたは間一髪危ういところで避けると、こけつまろびつ駆け出した。
「な、なんなのよ、なんなのよ、なんなのよーっ!」
必死で走るものの、脚がもつれてうまく行かない。一方のサンドワームはここがホームグラウンドとばかりに距離を詰めてくる。
挙句なゆたはほんの小さな地面の凹凸に足を取られ、どっと前のめりに転倒した。
「……ぅ、う……ぁ……」
サンドワームが涎を垂らしながらにじり寄ってくる。なゆたは絶望に蒼褪めた。
こんなワケのわからないところで、ゲームの敵キャラなんかに喰い殺されるなんて。
まだ、捕まえてないレアキャラが沢山いるのに。アイテム合成してないのに。マンスリースコアランキング更新してないのに。
こんなトコロで、死んじゃうなんて――。
そのとき。
『もー、何やってんだよ! 早くキミのパートナーを召喚して!!』
声が、聴こえた。
「……へっ?」
思わず頓狂な声を出してしまう。
見れば、ずっと硬く握りしめていたスマホの液晶画面が明滅している。
液晶画面いっぱいに、手塩にかけて育て上げたパートナーモンスターが映し出されている。
『ここから出して!』と言わんばかりに、ぽよん、ぽよん、と飛び跳ねている。
圏外でネットに繋がらないときは、タイトル画面を見ることさえできないはずなのに――。
自らの置かれた状況も忘れ、なゆたは液晶画面に語りかける。
「……出せ、って。そう言ってるの?」
ぽよん、ぽよん。
「そんなことが……できるの? あなたは、ゲームでしょ?」
ぽよん、ぽよよん。
「……信じても……いいの?」
ぽよよんっ、ぽよんっ。
「わかった。わかったよ……あなたを信じるよ。それなら!」
荒唐無稽なことを考えているのは、わかってる。そんなバカなことなんてない、ということも。
でも、それをやらずにはいられない。 「おいで! ――ポヨリン!!」
なゆたはパートナーの名を呼ぶと、大きく右手を振って左手に持ったスマホに表示された〈召喚(サモン)〉のボタンをタップした。
その、途端。
『ぽよぽよ、ぽよよん、ぽよよよよ〜〜〜んっ!!!』
スマホが眩い光を放ち、液晶画面が不意に盛り上がる。
と、そこからぼよんっ!と弾き出されるように、60センチ程度の水色の球体が飛び出してきた。
白目のない黒くてくりくりした双眸と、愛嬌のある口。つるつるすべすべ、ぷにぷにの身体。
シンプル極まりない顔立ちは、某太鼓ゲームのキャラクターのそれに酷似しているかもしれない。
なゆたの召喚に応じて出現したのは、「ブレイブ&モンスターズ!」の看板キャラにしてマスコット的存在。
初めて冒険に出たプレイヤーの九割九分九厘が初陣の相手にする、基本中の基本モンスター。
スライム、だった。
「……で……、出た……」
なゆたは驚愕するしかない。
出現したスライム、なゆたがポヨリンと名付けたパートナーモンスターは、サンドワームと真っ向から対峙した。
なお、相変わらずぽよぽよと小さなジャンプを繰り返している。
ポヨリンとサンドワームが対峙している、その光景。
それにも、なゆたは見覚えがあった。
(……これ。ゲームと一緒だ……。わたしがいつもやってる、「ブレイブ&モンスターズ!」の画面と……!)
いまだにここがどこなのかわからないし、自分がなぜいるのかもわからない。
こんなバケモノがいる理由も不明だし、ゲームキャラクターであるはずのポヨリンが実際に現れたのも意味不明だ。
だが。
(……ゲームなら……勝てる!!)
それだけは、ハッキリしている。
握りしめたスマートフォンが輝く。見れば、いつもの見慣れたバトルコマンドが表示されている。
なゆたが得意としているスペルカードのデッキが展開され、選ばれるのを待っている。
で、あれば。
あわや虫のエサかと思っていたが、俄然心に余裕が生まれてきた。
「西関東エリア・ランキングベスト20を舐めんじゃないわよ! この……コモン素材風情が!!!」
素早くスペルカードの一枚ををタップし、ポヨリンに指示を送る。
自分の十数倍もの長さ、大きさを誇るサンドワームを前にしても臆することなく、ポヨリンは強く地面を弾いて跳躍した。 「やっぱり『サンドワームの甲殻』しかドロップしないか。この素材はダブついてるからスルーね……」
絶命したサンドワームを調べながら、小さく息をつく。
サンドワームは甲殻による高い防御力を誇り、猛毒をも有するモンスターということで危険視されている。
が、それは「ブレイブ&モンスターズ!」を始めてそう日が経っていないプレイヤーの話である。
二年前、このゲームがリリースされる前から事前登録しており、今も湯水のように課金しているプレイヤーからすれば雑魚でしかない。
実際なゆたもポヨリンもピンピンしている。重課金者にしてランカーの面目躍如である。
「おいで! ポヨリン!」
『ぽよぽよ! ぽっよよよ〜んっ!』
なゆたが大きく両手を広げると、ポヨリンは大きくジャンプしてなゆたの胸に飛び込んできた。
画面を見てイメージしていた通り、すべすべでぷにぷにの素敵な触り心地だ。
実体化と、マスターに抱擁される喜びを現すように、ポヨリンが頬擦りをしてくる。
なゆたはしばらく犬でも相手にするようにポヨリンとじゃれ合った。
「さて。ポヨリンのお蔭で、身の安全は保障されたわけだけど」
それから、気を取り直して現状を整理する。
サンドワームとポヨリンが出現し、スペルカードが使えたということは、ここは「ブレイブ&モンスターズ!」の中なのだろうか?
最近はVRもだいぶ進歩してきたが、ヘッドセットなどつけた覚えはないし、第一こんなにリアルではあるまい。
といって病気や幻覚の類とも思えない。健康優良児のなゆたである。
結局、何もわからないということだ。はぁ、と一度息をつく。
「結局、あそこへ行くしかないってわけね……」
遠くに見える、崩れかけた建築物に視線を向ける。
そういえば先程、サンドワームに襲撃された人影を見たような気がした。もし、その人が事情を知っているならしめたものである。
逆に危険な存在であったとしても、ポヨリンがいれば安心であろう。
西関東エリアのマンスリースコアランキングでは、20位を下回ったことのないなゆたである。
抱いていたポヨリンを下ろすと、ふたたび歩き始める。
まずは、一人(と一匹)旅を解消するため。協力者を募るため。
一緒に、物語を紡いでゆくために。
【一路廃墟へ】 >>19
ありがと
デッキの種類や効果は全部オリジナルなのね それは、まるでお伽噺のような光景だった。
真一の眼前で対峙する、紅蓮の飛竜と甲殻虫。
しかし、グラドの纏う熱気が、敵から感じられる確かな殺意が――この光景が、夢でも幻でもないことを証明している。
『グルルルルルルッ……』
グラドは口の端から炎の吐息を漏らしながら、低い唸り声を上げて、サンドワームを睨み付ける。
先程は鋭い鉤爪で一閃されたサンドワームであったが、よく見てみれば大したダメージを負っているようにも思えない。
ゲームの中では、サンドワームは物理攻撃に強い耐性を持っているモンスターだった。
だとすれば、こいつを倒すには一体どうすればいいか――
『ほらほら、パートナーが力を発揮するためには、キミの協力が不可欠だよ? 早く指示を出さないと!』
――と、そこでもう一度、さっきの声が頭の中に響いた。
相変わらず耳から入るのではなく、直接脳内を刺激されるような不思議な感覚だったが、言っていることは理解できる。
そして、真一は握り締めたスマホに再び目を落とすと、画面上にはまさしくゲーム通りのバトルコマンドが表示されていた。
あの時は〈召喚(サモン)〉のボタンをタップし、グラドを喚ぶことができた。
ならば、こいつはどうだろうか――
「食らいやがれ――〈火の玉(ファイアボール)〉!!」
真一はスマホを操作して、スペルカードをプレイする。
すると、次の瞬間には虚空に火球が現れ、サンドワームの胴体を穿ち貫いた。 【キャラクターテンプレ】
名前:うんちぶりぶり大明神(本名:瀧本)
年齢:25
性別:男
身長:175
体重:58
スリーサイズ:肥満ではないが筋肉もついてない
種族:人間
職業:会社員(総務課)
性格:卑屈だけど声は大きい
特技:運営を煽るためだけのクソコラ編集技術
容姿の特徴・風貌:毛羽立ったオールバックによれよれのスーツ
簡単なキャラ解説:
今月の残業時間が80を超えた社畜。ただし残業理由は仕事量ではなくソシャゲに夢中なため。
『ブレイブ&モンスターズ!』を長らくプレイしているが、ガチ勢ではなく課金も少額。
主な活動場所はゲーム内ではなくフォーラムやツイッターの公式アカウント。
重箱の隅を突くようなクソリプや批判スレッドを毎日大量に立てる古式ゆかしきフォーラム戦士。
仕事中も暇を見つけてはフォーラムで暴れまわり、既に3回アカウントを凍結されている。
何度BANされてもめげずに似たようなアカウント名で運営や信者と大論戦を繰り広げていたため、
ゲーム内では悪い意味で『明神』の名前が有名になった晒しスレの常連。
批判のためだけにゲームの仕様に精通し、多分ガチ勢より詳しい(自慢)。
【パートナーモンスター】
ニックネーム:ヤマシタ
モンスター名:リビングレザーアーマー
特技・能力:剣、槍、弓、杖など多彩な武器とそのスキルを扱うことができる
回復力が高く、破壊されても別の鎧に憑依することで復帰が可能
容姿の特徴・風貌:
つやつやしたハードレザー製の全身鎧。兜の中身はどどめ色の靄が入っている。
その靄の中から付属部品である様々な武器を取り出したりしまったりする。
簡単なキャラ解説:
死者の怨念が取り付いて魔物と化したいわゆる『動く鎧』。
その中でも最下級のモンスターで、材質も鋼鉄ではなく序盤に買える革製の鎧。
材質相応のみじめな防御力のため序盤の冒険者の稼ぎどころとして愛される悲しき存在。
しかし軽さゆえに前衛・後衛問わず『誰でも着れる』という特性は、取り憑く怨念を選ばないということであり、
育成すれば職業適正を問わない多彩なスキルを覚えるスルメのような持ち味の魔物である。
フレンドのいない明神はこのソロ性能の高さに目を付けて重用していた。
ちなみにニックネームは明神の職場の上司(怖い)。
【使用デッキ】
・スペルカード
「工業油脂(クラフターズワックス)」×3 ……ねばねばした油を撒き散らす。時間経過で硬質化するため乱発すると他人に迷惑
「終末の軋み(アポカリプスノイズ)」×1 ……騒音を立てて敵の集中力を奪う。普通にうるさいので他人に迷惑
「幽体化(エクトプラズム)」×2 ……自分の肉体から幽体離脱する。その間本体は無防備。攻撃力はないが目障りなので迷惑
「迷霧(ラビリンスミスト)」×3 ……濃い霧を散布して、範囲内にいる全ての者の視界を奪う。本当に迷惑
「黎明の剣(トワイライトエッジ)」×2 ……パートナーの武器に光属性のオーラを纏わせ攻撃力上昇
「万華鏡(ミラージュプリズム)」×1 ……対象の分身を3つ出現させる。分身は対象の半分のステータスで自律行動可能
「座標転換(テレトレード)」×2 ……指定した2つの物体の位置を入れ替える
「濃縮荷重(テトラグラビトン)」×2 ……一定範囲にかかる重力を二倍に引き上げる
・ユニットカード
「武具創成(クラフトワークス)」×2 ……任意の武器か防具を複数生成する。他人も装備可能
「奈落開孔(アビスクルセイド)」×2 ……近付く者を引きずり込む亜空間の入り口を生成。閉じると出られない
【参加希望です。所用につきすぐには参加できないけど近々参加したいと思ってます】 『キシャアアアアアアッー……!!』
火球を受けたサンドワームは、おかしくなったように身悶えしながら、壮絶な絶叫を轟かせる。
幾ら全身を甲殻で覆われているといっても、所詮は芋虫なのだ。
物理には耐性があっても、こういった炎属性の攻撃には滅法弱いのが弱点である。
そして、怒り狂ったサンドワームは、獰猛な牙を思い切り見せ付けながら、凄まじい勢いでグラドに躍り掛かる。
だが、飛竜のスピードを以てすれば、そんな攻撃など止まっているようなものだった。
「飛び上がって躱せ、グラド! そのまま反転して……ドラゴンブレスでトドメだ!!」
真一の指示を受けたグラドは、その場で飛翔してサンドワームの体当たりを回避。
更に上空でクルッと身を翻すと、今度は下方の敵を目掛けて、口から猛烈な炎のブレスを吐き掛けた。
――これぞレッドドラゴンと称するべき、必殺の一撃。
弱点の炎を全身に浴びたサンドワームは、しばらく断末魔の雄叫びを上げ続け、やがて身動き一つすらしなくなった。
「ふぅー、何とか片付いたみたいだな。……ん、何だこりゃ?」
九死に一生を得た真一が思わず息を吐いていたら、スマホが「ピロッ」と音を鳴らした。
その画面上には、ドロップアイテムを入手したことを意味する文面が表示されており、律儀にもこういうところまでゲームの中と同じだった。
結局ここがどこなのか、何故自分がこんな場所にいるのか、謎は全く解消されないままだ。
唯一の手掛かりになりそうなスマホとにらめっこをしていると、上空からゆっくりと降りてきたグラドが、真一に対して嬉しそうに鼻を擦り付けてくる。
「……ああ、そうだな。お前のおかげで命拾いしたよ。サンキューな、グラド」
真一はそんなグラドの頭を優しく撫で付け、それに応じるようにグラドは尻尾を揺らす。
こうして見ていると、つい先程まで勇敢に戦っていたレッドドラゴンと同じだとは思えないくらいだ。
しかし、彼らの間に存在する確かな絆が、やはりこの竜は自分の相棒であることを示している。
「にしても、結局ここがどこかなのかは分からんし、やっぱあの廃墟を調べてみるしかねーのかなぁ。
……って、あれはひょっとして人じゃないか? おーい、そこのアンタ! ちょっと待ってくれー!!」
思い悩むも妙案が浮かばず、最初に考えていた通り廃墟の散策へ踏み出そうとする真一。
だが、そこで不意にこちらへ歩いて来る人影のようなものを見付け、両手を大きく振りながら呼び掛けた。
右も左も分からない、こんな状況なのだ。
遠くを歩いているどこかの誰かが、少しでも情報を持っている人間ならばいいのだが――さて、どうだろうか。
【戦闘を終え、廃墟に向かって来る人影を呼び止める】 >>34
【歓迎します! 投下はいつでも大丈夫なので、お待ちしております】 やるならやるで完走するまでやれよなー
>>1くんなりきり板にいた頃から途中で放り投げてるでしょ? ユニットカードは2種類って決まっているの?
カードの名前は漢字(カタカナ)て決まっているの? >>41
>>2のテンプレみる限りでは2種類みたいですね
名前については言及されてないようなので、参加者の裁量かと >>42
も少し詳しくお願い
>>2には
>合計20枚
>同名カードは、デッキに3枚
このくらいしか構成条件がないけど、他にもあった? >>41
【それらの決まりは特にないですね。
合計20枚、同じカードは3枚までというルールだけです】 なんかもう自演自分で認めてるな
このスレ色々臭えわ >>46
お前には一体何が見えてるの?
いい加減死ねよキチガイ >>2のテンプレにはスペルカードとユニットカードの説明しかないのですよ
だから他のカードというのは無いのかと思うよ
しかし>>45で決まりはないと言うことなので、スペルカードやユニットカード以外もありなんかな ありなんかなじゃなくてさ
何で名無しがまるで既に参加者のような言い方してるの?
キャラの酉付けて書き込めや自演カス
それとももうID変わったから無理なのかな? 「……なるほどね」
ポヨリンとふたり、荒野を歩きながら、なゆたは右手を顎先に添え得心したように呟いた。
この地に放り出された直後はあまりの突拍子ない事態に混乱し、頭がうまく働かなかったが、だいぶ落ち着いてきた。
それを踏まえて考えると、この場所がどこなのかということがおのずと分かってくる。
「ブレイブ&モンスターズ!」は、GPS機能を用い実際にフィールドワークすることで様々なモンスターをゲットする。
実際の地点地点によって捕獲できるモンスターは異なり、プレイヤーは実地でそれを確認していく。
その際の画面はスマホのカメラ機能を使い実際の景色を投影したものと、バーチャル空間を表示したものを選択できる。
なゆたはリアリティ重視で、普段は現実世界の景色を背景に設定していたのだが――
「……これって。バーチャルモードの景色……だよね」
バーチャルモードでは、現実世界の地名の代わりに場所ごとにいかにもゲームらしい名前の地名がつけられている。
記憶によれば、ここは確か『赭色(そほいろ)の荒野』……だっただろうか。
豊かな生命を育む緑がすべて死に絶え、ただ毒を持つ長虫だけが生息するという赤土の地。
難易度としては、中級以上のプレイヤーが腕試しで来るような場所だ。
むろん、重課金プレイヤーであるなゆたにとってはとっくに狩り尽くし、掘り尽くした場所なのだが。
「まぁ、場所はわかったとして。問題は、どうしてわたしがここにいるのかってことよね」
位置情報がはっきりしただけで、自分が生徒会室から一瞬でここへ連れてこられたことに関しては、やはり何もわからない。
いずれにせよ先へ進むしかないということだ。
『ぽよぽよ……ぽよ〜ん?』
ふと、傍らのポヨリンが鳴き声をあげる。
見れば、シンプルな顔にどこか心配げな表情を浮かべ、なゆたのことを見上げている。
基本的に知能がないに等しいと言われているスライムだが、ポヨリンはなゆたがすべての財と時間を注ぎ込んだ特別製だ。
ステータスはカンスト、スキルマ、挙句に限界突破とやれることはすべてやってある。
当然、INTも高い。――あくまでスライムにしては、だが。
「心配してくれてるの? ありがと、ポヨリン」
屈み込み、にっこり笑ってポヨリンの頭を撫でる。……頭しかないのだが。
一人旅であれば不安に押し潰されそうになっていただろうが、ポヨリンがいてくれるなら心細くはない。
どんなレアモンスターを捕獲しても図鑑を充実させるだけで育成はせず、ポヨリンだけに尽くしてきたなゆたである。
その絆は生半可なことでは壊れはしない。
「大丈夫! ポヨリンのおかげで、わたしは元気いっぱいだよ! さあ――行こう! この世界の謎を解かなくちゃ!」
『ぽよっ! ぽよよ〜ん!』
勢いをつけて立ち上がり、ぐっとガッツポーズをしてから、廃墟の方を指差す。
ポヨリンもやる気充分らしく、ふんすふんす! と鼻息(?)を荒くしている。
一人と一匹は、地面に敷かれた壊れた線路をたどって廃墟へと近付いていった。 「……あれは……」
廃墟に先客がいる。なゆたは右手で額に庇を作り、目を眇めて注視した。
人だ。やはり、先ほど人がサンドワームに襲われているように見えたのは見間違いではなかったらしい。
現在サンドワームの姿がない辺り、きっと自分と同じようにモンスターを召喚して窮地を脱したのだろう。
その証拠に、人影の傍らに真紅のドラゴンが寄り添っているのが見える。
レッドドラゴン。レアキャラだ。竜の谷というエリアに棲む、強力なモンスターである。
最初期に回せるガチャでもごく低確率で排出されるらしく、リセマラをする輩は多いが、出たという報告は滅多にない。
そんなレアキャラを持っているプレイヤーといえば……。
「んっ? んんん? ……んんんんん〜〜〜〜っ???」
どこかで見たことのある学校の制服と、どこかで見たことのあるウルフカット。
学ランの胸元から覗く、赤いシャツ――。
>あれはひょっとして人じゃないか? おーい、そこのアンタ! ちょっと待ってくれー!!
「う……、うわ――――っ!! 真ちゃあ〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!」
聞き覚えのある、いや、聞き間違えようのない声がこちらへ向けて投げかけられる。
なゆたは思わず両手を大きく上げ、ぶんぶんと振って叫んだ。ついでにポヨリンよろしくぴょんぴょん跳ねる。
相手は幼馴染の赤城真一に間違いない。お隣同士、親の代から家族ぐるみの付き合いをしてきた間柄だ。
彼が中学時代、荒れに荒れていた頃は少しだけ付き合いも疎遠になっていたが、今はその関係も修復されている。
なゆたは息せき切って真一へ駆け寄った。
「真ちゃんもこっち来てたんだ! あ〜……でも当然か! でもまさか、ここで真ちゃんに会えるなんて!
よかった〜〜〜〜〜〜!!!」
なゆたは嬉しそうに駆け寄ると、ためつすがめつ真一の全身を見た。紛れもない本物だ。
「ねえ、真ちゃん! 真ちゃんはどうしてこんなところへ飛ばされちゃったのかわかる?
わたしは生徒会室でアプリ起動させたら、いつの間にかここにいたんだ。で、サンドワームに襲われて、
でも絶体絶命ってときにこのポヨリンが助けてくれて、あー、ここはブレモンの世界なんだなーって。
けど、どうやってわたしがここへ来たのかは全然わからなくて――」
知った顔と会えた嬉しさからか、マシンガンのようにまくしたてる。
それからしばらく、とりあえずの情報交換をするものの、やはり結果は『わからん』という一点しかなかった。
廃墟の崩れた壁に腰掛け、白いニーハイソックスに包んだ両脚を交互にぱたぱたさせながら、なゆたは眉をしかめる。
「んー……やっぱり、真ちゃんにもわかんないか……。手詰まりだなぁ」
はー、と小さく息をつき、ポヨリンに視線を向ける。
ポヨリンは最初いかついレッドドラゴンのグラドを警戒していたが、少し経つとすっかり慣れたのか足元に纏わりついている。
敵意のないモンスターに対しては人懐っこい性格なのだ。 「じゃあ〜……とりあえず、この廃墟調べてみる?」
ひょいっと壁から下り、両足で地面を踏みしめる。短めのプリーツスカートの裾がひらりと躍る。
廃墟を調べれば、もしかしたら誰か他にも自分たちと同じ境遇の人間を発見できるかもしれない。
ブレモンにはギルドやコミュニティがあり、フレンド機能もついている。助け合いは大事だ。
自分と真一だけではまだ戦力として心もとない、という意識もある。
自分とポヨリンのタッグなら大抵の相手に負けないという自負はあるが、念には念を入れておく必要がある。
体力が兆単位もあるレイドボスなどに出られた日には、いくら自分たちでもとても太刀打ちできないからだ。
加えて……
「っと、その前に。真ちゃん、デッキ見せて」
何を思ったか、不意に右手を突き出す。スマホをよこせ、と言っているのだ。
真一から半ば無理やりスマホを取り上げると、液晶画面をフリックしてスペルカードを確認する。
そして、ため息をつく。
「スペルカード、攻撃系ばっかりじゃん……。そりゃ派手だし手っ取り早いけどさぁ……。
でも、全部単発の攻撃スペルだし、それじゃコンボが続かないよ?
ブレモンはタクティクス! 戦術が大事なんだから! それ、わたし口すっぱくして教えたよね?
レッドドラゴンは最強クラスのモンスターだけど、性能だけに頼ってちゃ上は目指せないよーって!」
人のデッキにダメ出しする始末。基本世話焼きというか、お節介な性分である。
重課金プレイヤーの自分と違い、ブレモン初心者の真一はまだまだ戦い方に粗が多い、と思っている。
加えてこんな状況だ。悠長に真一が上達するのを待ってはいられない。
「っても、今はデッキ再構築してる時間はないし、まずは安全な場所を確保しなくちゃね。
さ、行こ! 廃墟探検へ!」
真一にスマホを返すと、廃墟探検なんて小学校のころ以来だね、などと呑気に言う。
ポヨリンを抱き上げて胸にぎゅっとかかえ込むと、なゆたは楽しそうに笑った。
【一緒に廃墟探検?】 ついさっきまでは東と西の最果てで相対し、空模様を二分していた月と太陽であったが、
サンドワームから逃げ回っているうちに、いつの間にやら夕日は沈みかけ、夜の帳が下りて来ていた。
ただでさえ見知らぬ場所で右往左往しているというのに、こんな状況で夜を明かすなどたまったものじゃない。
そこでようやく自分以外の人影を見付け、両手を振り回しながら呼び掛ける真一だが、彼の声に応じたのは予想外の人物だった。
>「う……、うわ――――っ!! 真ちゃあ〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!」
「おーい! ……って、お前……なゆ!?」
それは、真一の隣の家に住む少女――崇月院なゆたであった。
真一となゆたの関係は、幼少期を更に飛び越えて親の代から続く、いわゆる幼馴染だ。
真一は幼い頃に母親を病気で亡くしているため、このなゆたが母に代わり、真一と妹の夕食を作りに来てくれることなども珍しくない。
まさに、家族ぐるみの腐れ縁。そのなゆたと、よもやこんな場所で出くわすとは思っていなかった。
>「ねえ、真ちゃん! 真ちゃんはどうしてこんなところへ飛ばされちゃったのかわかる?
わたしは生徒会室でアプリ起動させたら、いつの間にかここにいたんだ。で、サンドワームに襲われて、
でも絶体絶命ってときにこのポヨリンが助けてくれて、あー、ここはブレモンの世界なんだなーって。
けど、どうやってわたしがここへ来たのかは全然わからなくて――」
真一は「だからいい加減、真ちゃんはやめろって!」などとツッコミつつ、矢継ぎ早に捲し立てるなゆたと問答を交わす。
と言っても、正直こちらもロクな情報を持っているわけではない。
分かることと言えば、このスマホを――正確にはブレモンのアプリを使って、グラドを喚び出したり、スペルカードを発動できたというくらいだ。
「しかし、ここがゲームの世界だって? んなこと言われても信じられるか……って言いたいところだけど、実際にこいつらを見ちまった後だからなぁ」
真一は首をクイッと動かし、傍でじゃれついているグラドとポヨリンの方に視線を向ける。
足元のスライムに纏わり付かれ、グラドは何やら困ったような表情を浮かべていた。
>「じゃあ〜……とりあえず、この廃墟調べてみる?」
「ああ、そうだな。そろそろ完全に日が暮れちまいそうだし、最悪でも野宿できそうな所くらいは確保しといた方がいい。
こういう場所の夜って、かなり冷え込むんだろ?」
なゆたのスカートがヒラっと捲れそうになるのを見て、思わず目を背けつつ、人差し指で頬を掻きながら返答する。
真一はあまり学校の勉強に熱心な方ではないが、放射冷却という言葉は覚えていた。
こんな風に日差しが強く、乾燥しているような土地では、夜になると急激に大地が溜め込んだ熱エネルギーを吐き出してしまうというやつだ。
>「っと、その前に。真ちゃん、デッキ見せて」
さて、話も纏まりようやく廃墟探索へ繰り出そうとしたところで、なゆたがこんなことを言ってきた。
>「スペルカード、攻撃系ばっかりじゃん……。そりゃ派手だし手っ取り早いけどさぁ……。
でも、全部単発の攻撃スペルだし、それじゃコンボが続かないよ?
ブレモンはタクティクス! 戦術が大事なんだから! それ、わたし口すっぱくして教えたよね?
レッドドラゴンは最強クラスのモンスターだけど、性能だけに頼ってちゃ上は目指せないよーって!」
「むっ……まーた、そんなこと言いやがって。
だから攻めて攻めまくるのが、俺とグラドの戦い方なんだって! ……見とけよ、いつかこれでギタギタにしてやるからな」
なゆたに勧められてブレモンを始めた真一だったが、それからというもの、何かにつけてこういうダメ出しをされるのだ。
まあ、未だになゆたと対戦して、まともに勝てた試しがないのだから仕方ない。
真一はレッドドラゴンという超レアを引き当てたにも関わらず、何度なゆたと対戦しても、最弱の筈のスライムに翻弄されてしまう。
無限に増えまくるスライムを殲滅するため、〈燃え盛る嵐(バーニングストーム)〉などの上級スペルを入れてみたりもしたが、これまで有効に使えたことはなかった。
いつかはなゆたとポヨリンを圧倒してやりたいと思っているが、今のところは言われるがままになっておくしかないだろう。 >「っても、今はデッキ再構築してる時間はないし、まずは安全な場所を確保しなくちゃね。
さ、行こ! 廃墟探検へ!」
そして、場所は移り変わり廃墟の中へ。
内部には当然灯りなどは点いていないが、いい具合に天井が崩れて月の光が差し込んでいるので、全く視界が利かないわけでもなかった。
ちなみにグラドは幼生といえどドラゴンなので、サイズ的に連れてくることができなかったため、建物の外で待機させている。
「……ここは、やっぱ駅なんだな。つっても、しばらく使われた形跡はなさそうだけど」
外から見た印象通り、やはりここが駅であるということは、中に入ってすぐに分かった。
と言っても、日本で使われているそれとは大分構造も違い、一見すると豪華な西洋風の館などに見えなくもない。
「この先が、外で見たレールに繋がってんのか。って、あれ……」
『おーい、こっちだよー! 早く早くー!』
廃墟の奥まで進み、ホームのような空間を調べていた時、何かその先に朧気な光が灯っているのが見えた。
その直後、またしても脳内に響く不思議な“声”。
真一は一度振り返り、なゆたと目配せを交わしたあと、足早に光の差す方へと進む。
そして、ホームの先端部まで出ると、そこには何者かが手摺りに腰掛け、二人の姿を見据えていた。
『やーやー! まったく、待ちくたびれたよ。ボクはスノウフェアリーのメロ。
ボクらみたいな種族にとって、ここは本当に暑苦しいんだから勘弁して欲しいよね』
その正体は、白銀の髪と白い肌を持つ小柄な妖精――スノウフェアリーだった。
本来は雪原などに登場する筈の種族が、何故こんなところいるのかも気になるが、今はそれどころではない。
彼女こそ、ここへ訪れてから何度も真一に語りかけて来た声の主だったのだ。
メロと名乗ったスノウフェアリーは、夜空を照らす月光を背景に、ニコニコと満足げな笑みを浮かべていた。
【廃墟の中でNPC登場。ちなみにNPCの扱いは自由にしようと思いますので、他の方が操作してもOKです】 >>41>>48
【質問の意図を勘違いしてたら申し訳ないのですが、「ユニットカード」を2種類しか入れちゃいけないという決まりはないです。
しかし、カードの種別は「スペルカード」と「ユニットカード」の2つです】 イマイチ「スペルガード」と「ユニットカード」が判らんので質問
スペルカードはプレイヤーの能力の手札
直接攻撃したり、回復したり
基本単発
ユニットカードはアイテムやフィールド操作、モンスター召喚?
アイテムやフィールド操作は永続?
モンスターはパートナー以外も使える?
たとえばパートナーモンスターとしてグラドを出して、ユニットカードでレッドドラゴン2体、スライム1体だすとかもアリ? >>57
【スペルについては、攻撃したり回復したり、その他補助など……魔法効果全般という認識であってます。
ユニットカードの定義については、正直なところそこまで厳密に設定しているわけではないのですが、
とりあえず武器を出したり、建物を作ったり、何らかのオブジェクトを創造するカード全般はユニットという感じで。
効果時間は、戦闘中は持続する程度の認識でいいかと。
また、ユニットでモンスターを出すことは、「パートナーの補助程度で」なら可にしようと思います。
あくまでもパートナーモンスターを戦わせるのがメインなので、
その例ならレッドドラゴンを2体出すのはNGですが、グラドを助ける竜騎士の召喚はOKなど。
ぶっちゃけ今の段階では、まだ設定も固まりきっていないので、ある程度スレの流れや雰囲気で変更するかもしれません。
参加者さんの用意した設定などは大体許容したいと思ってるので、また質問があれば聞いてください】 >>57
コテつけようか
お前の存在が
不自然オブ不自然 なぜ名無しをそこまで嫌うのか
病気?
別に参加しないなら不自然だろうが気にすんな 名無しも参加者も全部一人の自演に見えてるらしいからな
ガチの病人に触れるな スマホって充電とかどうなってんの?
無限バッテリー? だから名無しで質問するなっての
罪もないPLが疑われるんだぞ 私が不自然に思う点は元ヤンで比較的更生した人間が
はたしてホンダのホーネット250なんか買うのだろうか?
という点だけです パートナーモンスターの知能指数ってどのくらい?
今追いついたけど、レッドドラゴンもスライムも犬猫程度な感じだけど
1)会話可能なのかどうか
2)ゲームの世界の知識があるのか
3)実世界の知識はあるのか
4)自分がゲームキャラであることを自覚しているのか
5)スペルカードやユニットカードの知識があるか >>64
【スマホのエネルギー問題については、ストーリーに絡めるつもりなので近いうちに劇中で触れます】
>>71
【知能指数は個体差があると思いますが、プレイやーの言葉が分かる程度には頭がいい筈です。
例えばレッドドラゴンは声帯の関係で人語を話せませんが、人の言うことは完璧に理解してます。
劇中で登場させたスノウフェアリーのように、人語を話せるモンスターもいます。
2〜5についてはストーリーに関係する部分なので、今の段階では何とも言えないのですが、
異世界側の住人は基本的に「ブレイブ&モンスターズ!」というゲームの知識はないです。
また、プレイヤーたちが別世界からやって来た人間だということも、大半の者は知りません】 >>72
ありがとね
人語は解するのはOK
プレイヤーとの連携はカードの知識がないと難しいでしょうし
プレイヤーの指示に従う、絆があるのはなんで?って話になりますし
データではなく生物としてのモンスターの立ち位置は物語の根幹部分に関わってくる部分ですものね
ここはパートナーモンスターは人語を解する犬猫レベルにしておいた方が良さそうですね
設定がしっかりして来たら後付で進化なりで知能指数上げてもいいですから 真一と話しているうちにすっかり日は落ち、夜になってしまった。
懐中電灯もなしに廃墟の中へ踏み入るなど自殺行為のようにも思えたが、予想に反して廃墟の中は意外と明るい。
天井の崩れた部分が明かり窓の役目を果たし、差し込む月の光が要所要所を照らしている。
とはいえ、暗いことには変わりない。先行する真一の後ろについて、ポヨリンを抱きしめながらおっかなびっくり歩く。
「し……真ちゃん、あんまり早く先に行かないで……。足元危ないんだから……。
やっぱり、グラちゃん連れてきた方がよかったんじゃない……?」
ポヨリンをぎゅっと胸に抱き、きょろきょろしながら言う。
もしグラドがいたなら、炎を吐いて周囲を明るく照らすことも可能だっただろう。
とはいえ、グラドのサイズでは翼が邪魔して廃墟の入口をくぐることが困難だったため、仕方ないのだが。
「ポヨリンに発光スキルを付与するべきかしら……」
そんなことを言う。ポヨリンの強化に余念のないなゆたである。
>「……ここは、やっぱ駅なんだな。つっても、しばらく使われた形跡はなさそうだけど」
「でも、こんな駅見たことないよ。ブレモンの世界にもあったかどうか……。わたしたちの住む世界にも、もちろんなかったし」
よく海外の映画などで描写されるメトロの構造に、それはよく似ている。
どこかゴシックな佇まいの壁や柱は、だいぶ古い時代のものだろう。こんなところに誰かがいるとは思えないが――
>『おーい、こっちだよー! 早く早くー!』
「ひゃああああああっ!?」
ホームに降り立ち、前方にぽんやり輝く光を見つけたと同時、突然脳内に響いた声に甲高い悲鳴を上げる。
思わずぎゅーっと強くポヨリンを抱きしめてしまい、ポヨリンもついでに『ぴきーっ!』と悲鳴を上げる。
声は、サンドワームとの戦いのときにも聞こえたもの。ポヨリンを召喚するようにと指示してきたもの。
とすれば、何か手がかりを持っているかもしれない。
なんとか腰を抜かさず踏みとどまり、真一とアイコンタクトする。
いずれにせよ、こちらには進むしか選択肢がないのだ。
ホームの先端に向かうにつれ、おぼろげだった光が強くなってゆく。
そして、ホームの端。これ以上は線路を降りて進むしかないというところで。
>『やーやー! まったく、待ちくたびれたよ。ボクはスノウフェアリーのメロ。
ボクらみたいな種族にとって、ここは本当に暑苦しいんだから勘弁して欲しいよね』
手すりに腰掛けたスノウフェアリーが、真一となゆた(とポヨリン)を待ち受けていた。 スノウフェアリー。
この荒野エリアとは真反対の雪原エリアに出没するモンスターだ。
知能が高く、人語を解する。魔法を得意とし、鍛え上げれば氷雪系の強力な魔法を多様に使いこなす。
総じていたずら好きだが、心優しい者も多く一概に悪とは言えない。
倒すとたまに氷雪属性モンスターの強化素材『雪のかけら』をドロップする。
「……アンコモン……」
真一の背後で、ボソリと呟く。
アンコモンとはブレモンのモンスターやアイテムの等級である。
スノウフェアリーはレア度的に下から二番目のアンコモン。つまり別段珍しくはないということだ。
もちろんなゆたは捕獲済みである。なお、図鑑目当てで捕らえただけで育成はしていない。
ともあれ、このスノウフェアリーが自分たちにモンスター召喚の方法を教え、ここへ導いたのは間違いない。
……であれば。
「メロ、とか言ったわね。ひょっとして、あなたがわたしたちをこの世界に呼び寄せたの?」
ニコニコと笑っているメロに、ずいと一歩踏み出して訊ねる。
「どういうこと? ここはブレモンの世界ってこと? どうして、ゲームの世界の中にわたしたちが入っちゃったの?
何が狙いなの? ここから出るにはどうすればいいの? あなたはわたしたちを元の世界に帰せるの?
この辺に村とか街とか、安全に寝泊りできる場所はない? このままデイリーログインボーナス継続切れちゃわない?
運営に問い合わせた方がいい? あとこの辺でレアモンスター狩れる狩場とかない?」
真一と再会したときと同じマシンガントークだ。息つく暇もなく、一気にメロへとまくし立てる。
最後のあたりに変な質問が混ざっているのはご愛敬である。
「さあ、わたしの質問に答えてちょうだい。こっちはさっさと帰らなくちゃ、夕飯の支度とか色々あるんだから。
本当のことを隠したり、ウソを言ったりはしないでね。もし、そんなことをしたら――」
そう言って、胸の前で拳をボキボキと鳴らしてみせる。
「――狩る。わよ?」
本気だ。もしもメロが自分たちにとって有害な存在であるなら、躊躇いなく潰す気でいる。
ポヨリンもぽよんぽよんと跳ねながら、きゅぴーん! と剣呑に目を輝かせている。
「さ。ってことで、あなたの知ってること。一切合財話して?」
九割脅しの文言を告げながら、なゆたはにっこり笑って小首を傾げた。
【脅迫という名の情報収集】 荒野を冷ややかに照らす青白い月の下で、濡れた布を引き裂くような嬌声が耳朶を打つ。
叫びの主は、巨大な鶏の頭とトカゲの体躯をもった禍々しい造形の生物。
荒野を徘徊しては不運な旅人をその毒爪で縊り殺す危険なモンスター、『コカトリス』だ。
その声帯から発せられる雄叫びは獲物を狩り殺した快哉ではなく、断末魔に近かった。
「うるせえよ。時間考えろ時間」
普通に耳障りだったので俺はトドメを刺した。
といっても手を下すのは俺じゃなく、傍で長弓に矢を番える俺の"しもべ"だ。
革製の鎧で全身を武装した鎧武者にも見えるが、実際のところ武者ではなく鎧そのもの。
鎧に怨霊が憑依して生まれた生ける鎧と呼ばれる魔物の中でも、最低級に位置する『リビングレザーアーマー』だ。
革鎧が撃ち放つ矢によって既に無数の貫傷を作っていたコカトリスは、最後の一撃を頭部に受けて絶命した。
ピコン!と場違いな電子音と共に俺の手の中にあるスマホにリザルトが表示される。
EXPバーを微動させる僅かな経験値と、インベントリに入るドロップアイテムは――
「コカトリスの肉。ちっ、またノーマル素材かよ」
一回レアドロの霜降り肉をゲットして焼いて喰ったときの感動が忘れられずに、俺はコカトリスを狩り続けていた。
コカトリスは毒持ちの厄介なモンスターだが、安定して狩れる小ワザってのが存在する。
代表的なのが今俺がやってるような、奴の攻撃の届かない位置から一方的に遠距離攻撃しまくるいわゆる高台ハメだ。
荒野に点在する破壊された建物の上に安地を発見して以来、俺はここを拠点として不毛なモンスター狩りに励んでいた。
なぜかと言えば、食料が全然見つからなかったからである。
「おら、料理しとけヤマシタ」
ドロップしたての肉をインベントリから出して、指示を待っていたヤマシタ(革鎧のニックネーム)に放る。
ヤマシタは無言でそれを受け取ると、鎧の中からナイフを取り出して黙々と調理を開始した。
リビングレザーアーマーは戦闘力こそ低い低級モンスターだが、革鎧が装備可能なあらゆる職業のスキルを使うことができる。
狩人の持つ野外調理のスキルは俺の乏しい食糧事情にいくばくかの潤いをもたらした。
下処理を施した肉を一口サイズに切り分けて、一列に串を通して焚き火で炙るだけの野趣溢れる簡単調理。
荒野の植物モンスター、デザートローズの触手は毒棘さえ取り除けば強靭な串として使える。
肉の脂が溶けてブジュブジュいい出したら、その辺で拾った岩塩を削って味付けして『コカトリスの焼き鳥』は完成だ。
一口齧れば溜息が出る。
硬くて筋張ってて変な臭みがある上に全体的に生焼けと生ゴミみたいな焼き鳥の味にだ。
クソ不味い……俺料理とかしたことねーから気づかなかったけど、臭み消しってすげえ大事だったんだな……。
ネギかショウガみたいな香味野菜か、胡椒とかの香辛料が欲しい。
胡椒一粒が金一粒だった時代の価値観が今ならよく分かる。
こんな食生活続けてたら遠からず病気になっちまうよ。
「何やってんだろうな俺……」
今度は自分の状況の過酷さに溜息が出た。
いつものように会社のトイレでサボりつつ、ブレモンの公式フォーラムで信者相手にレスバトルを繰り広げていた俺は、
気付けばケツ丸出しで荒野のど真ん中に放り出されていた。
その時立ててたスレッドのタイトルまで鮮明に思い出せる。
『ブレモンはクソ、育成要素は死んでて課金スペルを買って殴るだけのゲーム』、確かこんなスレタイだったはずだ。
10分くらい気合入れて書いた長文を投稿しようと送信ボタンを押した瞬間、不意にトイレが真っ暗になった。
座ってた便座の感覚がなくなって、代わりに砂が尻に触れて変な声が出た。
今思い返しても、スレッド立てる前にケツ拭いておいたのが不幸中の幸いと言うほかない……。 これが白昼夢や精神的な疾患の類でないのなら、俺がウンコしてる間に核戦争でも起きて全てが滅んだか。
あるいは度重なる荒らし行為にキレたブレモンの運営が超法規的措置で俺を秘密裏に拉致したかのどっちかだ。
まさかゲームの中に取り込まれたなんて、そんな一昔前のライトノベルみてーな展開はねえだろう。
荒野の中でブレモンのモンスターに襲われて、変な声に導かれるままにサモンに成功するまでは、そう思ってた。
認めねばなるまい。
俺は今、何の因果かソーシャルゲーム『ブレイブ&モンスターズ』の世界の中にいる。
夢なら別に覚めなくても良い。クソつまらん現実世界の不毛な伝票整理で一生を終えるよりかは楽しい夢だ。
ただ、この世界に向き合うスタンスを決めた俺に、もうひとつ厄介な問題が立ちはだかった。
腹が減った。
そして、メシがねえ。
RPGでもあるこのゲームには食料系のアイテムが存在こそするが、実情はほとんどフレーバー要素に近い。
スマホの向こう側で俺の代わりに動き回るキャラクターたちが、空腹で死ぬことはない。
まあ多分ゲームの演出上不要なシーンはカットしてるだけで、本当はなんかしら食ってんだろうけど、システムに反映はされない。
食料は不毛なお使いクエストのお届け物とか、一時的なステータス効果をもたらす、実用度の低いアイテム群だ。
貴重なインベントリ枠を食料系に割くプレイヤーはほとんどいなくて、俺もその例に漏れなかった。
僅かに持ってたパン(HP微上昇効果。味は雑巾みたいだった)は早々に食い切っちまって、
この草もろくに生えてないような荒野には食べられる野菜や木の実の類も望めない。
モンスターに食い殺されるよりも餓死の方が心配になるって始末だ。
早々に訪れた食糧危機に、俺が選んだ生きる道は……モンスターを狩って喰う、原始人みたいな狩猟生活だった。
『モンスターの肉』系アイテムは主に換金素材としてそこそこの確率でドロップする。
おそらくは魔物を狩って路銀に変えて旅をする、冒険者のロールプレイとして実装されたアイテムだろう。
そのままじゃ喰えたもんじゃないが、煮るなり焼くなりすれば当面の栄養源にはなるようだった。
幸い水は十分に確保できている。
エンカウント率を下げるアイテム『聖水』は実用度が高く、俺も常に限界までインベントリに詰め込んでいた。
なんか変な塩味がついてて明らか飲用に適した味じゃなかったが、まともな湧き水もない荒野で贅沢は言えねえ。
とまれかくまれ、今の主食はコカトリスの肉。いい加減腹壊すんじゃねえかとビクビクしている。
……どっかに街の一つもありゃいいんだが。
安全を確保した上で見て回れる範囲を検分した結果、ここがブレモン世界で言うところの『赭色の荒野』だってことは分かった。
だが中級者以上推奨のこのフィールドに、カジュアル勢の俺はあまり土地勘がない。
どっちに向かえば都市にたどり着けるかもわからない。そもそもNPCとか居るのかこの世界?
道標になりそうなのは、荒野を横断するようにずっと先まで続いているレールだった。
……地道に歩くしかないか。
どの道ここにずっといたってジリ貧になるばかりだ。
『赭色の荒野』に出現するコモン敵くらいなら俺でも狩れるが、確かここには時間帯限定でPOPするレア敵がいた。
上級者でも苦戦するボス級の魔物に遭遇した時、今度こそ俺が生き延びられる保証もない。
とっとと安全地帯を見つけてこの先のことを考えよう。
串を綺麗に洗ってインベントリに納めた俺は、レールの向こうに見える巨大な建造物へ向かって歩き始めた。
物言わぬ死者の鎧、リビングレザーアーマーと共に。
【とりあえず導入をば。そっちの情報共有が終わったくらいのタイミングで乱入したいと思ってます
明神は基本ゲス野郎なので敵対します】 【それから質問なんですが、真ちゃんとなゆたちゃんのゲーム上のプレイヤーネームを教えてほしいです。
明神はテンプレの通りです】 名前:五穀 みのり(プレイヤーネーム:五穀豊穣)
年齢:18歳
性別:女
身長:165cm
体重:50kg(四捨五入)
スリーサイズ:87−60−88
種族:人間
職業:農業
性格:ドライ
特技:農作業、トラクターの運転
容姿の特徴・風貌:おっとりのした表情、茶髪ギブソンタック、ツナギの作業服と長靴
簡単なキャラ解説:
とある田舎の専業農家の後継ぎ娘、農業高校卒業後、家業を継ぐ
農作業で鍛えられた肉体は頑強にして壮健、持久力に優れる
代々続く農家であり己の立場に納得もしているが、周囲が青春を謳歌している中で男に縁のない農作業を続ける不満もあり
手間のかかるギブソンタックの髪型を保っているのはその反発心の表れ
大きな農家であり、かなり裕福
お金には困っていないが農作業は過酷であり、むしろ使い道がないのでどんどんブレモン!への課金量が増える
ただし農作業の間に遊ぶ程度なので、プレイングやコンボ構築の試行錯誤の為の時間は圧倒的に少ない。
故にレアカードが揃い戦闘力は高くともランキングに乗ってくることはなかった
「欲しいカード?出るまで買えばよろしいですやろ?
出現率1%って事は100回買えば必ず手に入るのであるわけやし、運任せよりわかりやすくてよっぽどええやないの」
【パートナーモンスター】
ニックネーム:イシュタル
モンスター名:スケアクロウ
特技・能力:防御能力が高く、回復・強化に優れる
150センチほどの案山子
顔はカボチャに目鼻を書き込み、眼深にとんがり帽子を被っている
案山子で所詮は藁の体で機動力や防御力は低い
しかし探知能力が高く、HPや回復力が高い
ダメージ反射を主体とするバインドコンボに適しているため拠点防衛には無類の強さを誇る
簡単なキャラ解説:
スマホ向けアンチウィルスソフト会社とのコラボ企画で、グッズフルコンプリート(総額15万円)&アンチウイルス契約者へのプレゼントキャンペーンで契約者に送られる特典モンスター
聖域(田畑)の守護者と銘打たれているが、石油王のコレクターズアイテムの象徴的な存在として見られている
ニックネームイシュタルはメソポタミアの豊穣神から
【使用デッキ】
・スペルカード
「肥沃なる氾濫(ポロロッカ)」×2 ……フィールド上を洪水が押し流し、与えたダメージ分回復
「灰燼豊土(ヤキハタ)」×2 ……フィールド上を業火が包み、与えたダメージ分回復
「浄化(ピュリフィケーション)」×3 ……対象の状態異常を治す。
「高回復(ハイヒーリング)」×2 ……対象の傷を癒やす。
「地脈同化(レイライアクセス)」×1 ……地脈の力を吸い上げ継続回復
「威嚇結界(フィアプレッシャー)」×1 ……範囲内の敵の攻撃力をダウンさせる
「来春の種籾(リボーンシード)」×1 ……致命のダメージを負ってもHP1残して復活できる
・ユニットカード
「雨乞いの儀式(ライテイライライ)」×2 ……雨を降らせてフィールドを水属性に変化させる
「太陽の恵み(テルテルツルシ)」×2 ……太陽を照らせてフィールドを火属性に変化させる
「荊の城(スリーピングビューティー)」×1……荊の城を出現させる。荊に触れたものは睡眠状態に
「防風林(グレートプレーンズ)」×1……林立する樹を出現させる。風属性や衝撃波を軽減
「囮の藁人形(スケープゴートルーレット)」×1 ……5体の藁人形を出現させる。身代わりとなり攻撃を受け、内1体は他の藁人形を受けた累積ダメージを反射する
「収穫祭の鎌(サクリファイスハーベスト)」×1 ……攻撃力0の鎌。累積ダメージがそのまま攻撃力になる 色々と質問させてもらい、ようやくキャラ完成
まだわかっていない部分が多いので、要説明部分や修正点ありましたらどうぞ
導入はまたその後で >「メロ、とか言ったわね。ひょっとして、あなたがわたしたちをこの世界に呼び寄せたの?」
>「どういうこと? ここはブレモンの世界ってこと? どうして、ゲームの世界の中にわたしたちが入っちゃったの?
何が狙いなの? ここから出るにはどうすればいいの? あなたはわたしたちを元の世界に帰せるの?
この辺に村とか街とか、安全に寝泊りできる場所はない? このままデイリーログインボーナス継続切れちゃわない?
運営に問い合わせた方がいい? あとこの辺でレアモンスター狩れる狩場とかない?」
>「さ。ってことで、あなたの知ってること。一切合財話して?」
『ちょ、ちょ、ちょっ……! やだなぁ、もう。こんなに愛らしいボクを脅かさないでよ〜。
そんな風に怖い顔してたら、せっかくの美人さんが台無しだよ?』
相対していきなり脅しに掛かってきたなゆたの形相に、流石のメロも笑顔を引き攣らせながら、胸の前でブンブンと両手を振る。
しかし、なゆたは説教をする時など、たまにこういった様子になることは知っていたが、この剣幕には真一も若干引いていた。
中学時代は「テメーどこ中だよ?」が口癖だった男がたじろぐのだから、中々のヤンキーっぷりである。
「おいおい、いきなりビビらせ過ぎだろ……
だけど、なゆが聞いたことを知りたいってのは俺も同じだ。わざわざ呼び付けたくらいなんだから、教えてくれる気はあるんだろうな?」
真一はなゆたを宥めつつも、メロに対しての質問は後押しする。
その問いを聞いて、メロは「こほん」と芝居じみた咳払いをしてから、ぷらぷらと泳がせていた両足を組み直す。
『もちろん。キミたちに会うために、わざわざこんな辺境の場所まで来たんだからね。
と言っても、ボクはただの使いっ走りだから、何もかも答えられるというわけではないんだけれど』
そんな前置きをしたあと、更にメロはこう続ける。
『もう気付いてるかとは思うけど、ここはキミたちが住んでいたそれとは別の世界――“アルフヘイム”なんだ。
そりゃ大昔は神様同士で戦ったり、様々な国が出来たり滅んだり、色んなことがあったらしいけどね。
ここ数百年くらいは特に大きな戦争もなくて、皆が平和に暮らしていたんだよ』
アルフヘイムとは「ブレイブ&モンスターズ!」の主な舞台となっている異世界の総称だ。
ちなみに作中では魔界と呼ばれている“ニヴルヘイム”と表裏一体の構造になっており、両者の神々が大喧嘩をした結果、世界がそういう形に区切られたという歴史設定がある。
『だけど、最近“とある異変”が起こって、この世界の生態系とか、国境なんかが滅茶苦茶になっちゃってさ。
ご覧の通りボクたちは何百年も平和ボケしてたから、自分らだけで戦うこともできなくて、にっちもさっちも行かなくなっちゃったんだよ』
一旦メロは言葉を区切り、両手をポンと打ってみせる。
『そ・こ・で! ボクたちの王様が、キミたちに目を付けたんだよ!
ボクも詳しいことは知らないんだけど、キミらの世界の住人はその“魔法の板”を使って、モンスターを自在に操る戦いのエキスパートなんだろう?
実際に見てみるまでは半信半疑だったけど、二人の技はもう見事だったよ!
何もないところからパッとモンスターを召喚して、すごい魔法も使いこなして……そっちの世界では、さぞや魔法技術が発展しているんだろうねぇ』
メロは腕を組みつつ、先程の戦いをしみじみと思い出す。
だが、そこでなゆたの質問とは、若干の食い違いがあることに引っ掛かるだろう。
メロはあくまでも、ゲームという概念のことは知らないのだ。
彼女にとって、ここは異世界アルフヘイム。そしてブレモンのプレイヤーは、モンスターを巧みに操る魔法使い。
それが彼女の認識なのである。 『……というわけで、まずキミたちにはこの国の王様に会って欲しいんだけど――って、あれ?』
メロがそこまで話し終えたあと、不意に上空から何か異音が聞こえてきたことに気付く。
ブブブブブ……と、不快な印象を受ける重低音は、徐々にこちらの方へと近付いてきているようだった。
「こりゃ、一体何の音だ? 虫の羽音っぽくも聞こえるけど……」
『あーらら。まったく“蝿の王”とは、つくづくツイてないね。
にしてもこんな果ての地にまで、あんな奴が現れるなんて、これも侵食の影響なのかな……』
メロは何やら不穏なことを呟きつつ、腰掛けていた手摺りからさっと飛び降りて、空中へと舞い上がる。
『ともかく! もうちょっとしたら、この駅に迎えが来る筈だから、そいつに乗って王様まで会いに来てよ。
あと、上にいる“あいつ”は多分襲って来ると思うけど、キミたちみたいな魔法使いならきっと大丈夫!
頑張って、コロっとやっつけちゃってね〜!』
などと極めて無責任なことを言ってのけながら、メロはそのままヒラヒラとどこかへ飛んで行ってしまった。
「お、おい……ちょっと待てって! あいつって一体誰のことだよ!? それに、他にも聞きたいことが――」
『グルルルルルルルッ……!!』
真一はメロを呼び止めようと手を伸ばすが、その瞬間、外で待機させていたグラドが獰猛な唸り声を上げ始める。
そのただならぬ様子に、慌ててホームから身を乗り出してみると、グラドは上空にいる“敵”の姿を見据え牙を向いていた。
そして、その“敵”の正体とは――
「……おいおい、あれはひょっとしてベルゼブブって奴じゃねーか?
かなりレアなモンスターだった筈だけど、何だってこんなところに!」
夜天から襲来する敵は、巨大な蝿の姿をしたモンスター――ベルゼブブだった。
蝿の形はしているものの、中身は上級悪魔であり、レア度に比例してステータスも非常に高い。
しかも厄介なことに、ベルゼブブは自身の周囲に“デスフライ”という蝿型モンスターまでも大量に引き連れていた。
このまま通り過ぎ去ってくれないだろうかという期待も虚しく、無数の蝿たちは既に眼下の獲物を見定めていた。
そして、まるで夜空が落ちてくるかのような勢いで、荒野に向けての急降下を開始する。
「ちっ、やるしかねーってわけか。……上等だ。行くぜ、グラドッ!!」
真一はホームから飛び降り、ポケットから取り出したスマホを握り締める。
それに呼応するかの如く、グラドは両翼を広げて雄叫びを放ち、月下の戦いは火蓋を切って落とされた。
【簡単な舞台説明&序章のボスキャラ登場】 >>78
【特に捻りもないのですが、真一のプレイヤーネームは「シン」ってことで。
あらためまして、よろしくお願いします!】
>>80
【歓迎します! 修正点なども見当たらないので、そのまま待機お願いします。
ちょっとお待たせしてしまって申し訳ないのですが、とりあえずレス順は「真一」→「なゆた」→「明神」→「みのり」を維持するという形で】 >>78 明神さん
【よろしくお願いします! 導入で笑わせて頂きました!
なゆたのプレイヤーネームは『モンデンキント』です。
フォーラムやスレではそちら様と幾度となくレスバトルを繰り返した仲かもしれません。
こちらフォーラムやスレでは淡々としたレスをするため、中の人は男性と思われている可能性大。
捏造上等で!】
>>80 みのりさん
【歓迎します! よろしくお願いします。
重課金勢のこちらを上回る廃課金勢ですね……。
絡むのを楽しみにしています!】
>>83 真一さん
【順番、了解しました。できるだけ早めに取りかかろうと思います。
かなり好き勝手に設定など書いてしまいましたが、もしご都合悪いようでしたらスルーか修正をよろしくお願いします】 モンスターを仲間に出来る条件ってどんなんなの?
カードに封じ込めたり屈服させたりすんの? >>79
【×特技・能力:防御能力が高く、回復・強化に優れる
○特技・能力:耐久力が高く、回復・強化に優れる
あれこれ書き直してたので、修正忘れしてました
藁なので防御力・回避能力が低くどんどん攻撃食らうけど、HPと回復力が高いので倒れにくいという事で
>>83
【ありがとうございます。順番の件了解しました】
>>84
【よろしくよしなに〜
廃課金ではありますが、プレイ時間の短さもありフォーラムやスレは基本参戦しないし見る時間もないのでブレモン!の知識量では圧倒されそうですわ〜
どういった接触になるか、今から楽しみです】 >>85
【それも劇中で明かそうかと思っていたのですが、基本的にはポケモンみたいなイメージですね。
野良モンスターのHPを死なない程度に削った上で、〈捕獲(キャッチ)〉というコマンドを使うと一定確率でゲットできます。
その他、ガチャを回したり、イベントなどの報酬として入手できることもあります】 >おいおい、いきなりビビらせ過ぎだろ……
「……だって」
こちらを窘めてくる真一の言葉に、ぷう、と頬を膨らませる。
アニメやマンガの登場人物のように、どことも知れない場所の誰ともわからない者を無条件に信じることなんてできない。
それに、相手は自分たちを問答無用でこの異世界に引きずり込んだかもしれない輩だ。
疑ってかかることは大事である。
床にポヨリンを下ろし、いつでもメロを狩りにいけるポジションをキープしながら、彼女の話を聞く。
>もう気付いてるかとは思うけど、ここはキミたちが住んでいたそれとは別の世界――“アルフヘイム”なんだ。
「……アルフヘイム……。やっぱり、ここはブレモンの世界ってわけね」
メロの告げた言葉は、自分にとっても聞き覚えのあるもの。
光の世界アルフヘイムと、闇の世界ニヴルヘイム。
かつて和合していたふたつの世界は光の神々と闇の神々の戦いによって分断され、それが今なお続いているという。
その設定はゲームを最初にDLするとき、『Now Downloading……』の一文と共に画面に表示されるので、皆が知っているだろう。
しかし、そこからが問題だった。
>だけど、最近“とある異変”が起こって、この世界の生態系とか、国境なんかが滅茶苦茶になっちゃってさ。
ご覧の通りボクたちは何百年も平和ボケしてたから、自分らだけで戦うこともできなくて、にっちもさっちも行かなくなっちゃったんだよ
「新しいイベントってことね? いいじゃない。
最近はストーリーモードも粗方やり尽くして、素材集め周回しかやることなかったのよね。
でも、そんなイベントを開催するなんて告知、公式にあったかしら? 毎日チェックしてるのに……」
運営め……これは詫び石案件だわ……などとブツブツ言っている。
いまだにゲームだと思い込んでいるなゆたである。
>そ・こ・で! ボクたちの王様が、キミたちに目を付けたんだよ!
ボクも詳しいことは知らないんだけど、キミらの世界の住人はその“魔法の板”を使って、モンスターを自在に操る戦いのエキスパートなんだろう?
「……ふぅん……あなたたちの王さまって言うと――」
ブレモンに精通しており、有志による攻略Wikiの編集も手がけているなゆたである。当然、彼女らの王についても知識がある。
その王が、自分たちをこの世界へいざなった張本人なのだという。
とは言うものの、もちろん言われたことを鵜呑みにはしない。そもそも王に人をゲームの世界へいざなう力などないはずだ。
話の腰を折るのもなんなので、そういう設定なのねと自分を納得させる。
>実際に見てみるまでは半信半疑だったけど、二人の技はもう見事だったよ!
何もないところからパッとモンスターを召喚して、すごい魔法も使いこなして……そっちの世界では、さぞや魔法技術が発展しているんだろうねぇ
「あー……うん、まぁ……。そういうことになる……のかな? アハハ……」
わたしたちはこのゲームのプレイヤーで、あなたたちはゲームキャラ。なんて、言っても通じないに違いあるまい。
ゲームのキャラクターにツッコミを入れたところで仕方ない。なゆたは曖昧な愛想笑いを浮かべた。 >……というわけで、まずキミたちにはこの国の王様に会って欲しいんだけど――って、あれ?
「ふむ。そこなら当面の衣食住は確保できそうね……って、結局しばらくは戻れないのかしら。
困るなぁ……明日、生徒会の役員会議があるのに……。え、なに?」
後頭部をぽりぽり掻いて、仕方なさそうに眉をしかめる。
と、不意に聞こえてきた耳障りな異音に、なゆたはきょろきょろと辺りを見回した。
それはよく夏場に耳にする、眠っていると耳元に飛んでくる蚊の羽音を、数百倍に増幅させたような――
>あーらら。まったく“蝿の王”とは、つくづくツイてないね。
にしてもこんな果ての地にまで、あんな奴が現れるなんて、これも侵食の影響なのかな……
>ともかく! もうちょっとしたら、この駅に迎えが来る筈だから、そいつに乗って王様まで会いに来てよ。
あと、上にいる“あいつ”は多分襲って来ると思うけど、キミたちみたいな魔法使いならきっと大丈夫!
頑張って、コロっとやっつけちゃってね〜!
「ち、ちょっとぉ! 待ちなさいよ、そんなこと勝手に――!」
こちらが何か言う暇もなく、メロはさっさと飛んでいってしまった。無責任なことこの上ない。
駅の外にいるグラドがうなり声を上げているのが聞こえる。何者かが近づいているのだ。
そして、月光の差し込む廃墟の崩れた天井から視界に飛び込んできたのは。
ちょっとした乗用車くらいはありそうな、巨大なハエのモンスターだった。
>……おいおい、あれはひょっとしてベルゼブブって奴じゃねーか?
かなりレアなモンスターだった筈だけど、何だってこんなところに!
「ベ……、ベルゼブブぅ!? ちょっ……冗談でしょ!?」
真一の言葉に驚愕する。
ベルゼブブ。ニヴルヘイム産の上級悪魔と呼ばれるレアモンスターの一体だ。
巨体に似合わぬ速度で自在に空を飛び回り、体当たりや酸の唾液、上級スペルなどで攻撃を仕掛けてくる難敵である。
デスフライという自らの眷属を常に従え、デスフライの群れを縦横無尽に操っての戦闘も得意とする。
生命力、攻撃力、防御力もきわめて高い。間違いなく初心者お断りのモンスターである。
倒すと稀に風属性モンスターの強化レア素材『蝿王の翅』をドロップすることがある。
「よりにもよって……! 厄介な相手ね!」
ポヨリンを自分の前方に配置し、身構える。
確かに、このエリアでは夜になると時間限定でベルゼブブが出現するというのは有名な話だ。
しかし、どう考えても今はこちらに分が悪い。
倒せない相手ではないが、ポヨリンとベルゼブブでは水と風、属性不利である。
今までもベルゼブブを狩る際、なゆたはフレンドとパーティーを組んで戦っていた。
しかし――今の仲間は真一しかいない。
真一のグラドとベルゼブブでは火と風でグラド有利だが、決定的なレベルの差というものがある。
初心者で遮二無二突っ込むことしか出来ない真一では、返り討ちに遭うのがオチだ。 「真ちゃん! ここは無理しないで、この駅の壁を盾にしながら戦って!
まずはデスフライから片付けて、徐々にベルゼブブの体力を――」
>ちっ、やるしかねーってわけか。……上等だ。行くぜ、グラドッ!!
「っておーいっ!? 人の話ィ!!」
こちらの話を聞きもせずに突っ走っていってしまった真一に突っ込む。
「ああもう! この……単細胞おばかーっ!!」
苛立ち紛れに叫ぶ。けれど、真一が直情径行なのは今に始まったことではない。
それこそ物心つく前から、自分は真一のそんな猪武者な行動の尻拭いをしてきたのだ。
今更何を言ったところで始まらない。と思えば、なゆたはすぐにスマホの液晶画面をタップした。
「誰でもいい! 誰か……誰か! 近くにいて!!」
なゆたが開いたのは、ポヨリンの戦闘コマンドでもスペルカードデッキでもない。
開いたのは『フレンド一覧』。
「ブレイブ&モンスターズ!」は戦闘の際、ソロで戦うかパーティーで戦うかを選択できる。
パーティーで戦う場合、GPS機能を使い自分の近くにいる他のプレイヤーを招待し、一緒に戦えるのだ。
一度共闘した相手にはフレンド申請することができ、互いの位置情報などを把握することもできる。
「――いた!!」
フレンド一覧の画面に、数人のプレイヤー名が表示される。
半分はかつて共闘し、フレンド申請して承認された知り合いのプレイヤー。
もう半分は見知らぬ他人、たまたまこの近くにいるらしい野良。
なんの戦術もなく突っ込んでいく真一とふたりでは、敗色は濃厚である。ポヨリンは無事でも、グラドは無事では済むまい。
この状況を打破するには、フレンドの力を借りるしかない。
「お願い――、応えて! わたしたちと一緒に戦って!」
建物の外では、グラドが大量のデスフライと、そしてその首魁ベルゼブブと熾烈な戦いを繰り広げている。
が、多勢に無勢だ。レベル上げの充分でないグラドがそう長持ちするとは思えない。
グラドが力尽きる前に、――誰か!
なゆたは祈るような思いで、フレンドのプレイヤー名をタップした。
【劣勢と見てフレンド募集。既に申請済みでも野良でもOKです】 『ブレモン』はクソゲーだ。
強いモンスターを手に入れようと思ったら重課金かリセマラは必須だし、
変に流行りに乗ったGPS連動機能のせいで都心と地方の在住者で入手できるゲーム内資源に格差がある。
丹精込めて育てた歴戦のパートナーよりもガキの小遣いで買える強力スペルの方が大抵の場合強いし、
肝心のレアモンスターはガチ勢どものマウントの取り合いの種にしかなってねえ。
なにより――
「俺のような善良プレイヤーをこんな意味不明世界に放り出しやがる……」
砂漠に棲息する大型モンスター、"初心者殺し"の異名をとるサンドワームが亜空間の穴に引きずり込まれていくのを眺めながら、
俺は誰に聞かせるでもなく吐き捨てた。いやマジで危なかった。思わずカード使っちまった。
『奈落開孔(アビスクルセイド)』。亜空間を開き、近付く者を区別なく飲み込む強力なユニットだ。
マジで区別なく吸い込まれてくから使い所を誤ると自分もやべえ諸刃の剣だが、サンドワームの巨体が良い遮蔽になった。
こんなところで貴重なカードを使うハメになるのは想定外だった。
この世界に降り立って間もない頃にもう一枚、『工業油脂』のスペルを使ってる。
デッキを確認してみたら、まだ『工業油脂』のリキャストは出来てなくて、使用不可のマークが付いたままだった。
ブレモンの設定通りだとすれば、カードのリキャストにはリアル時間で丸一日かかる。
安全なねぐらも確保できてない今の状況でカードを使い切るのは即ち死を意味していた。
「こういう不親切なところもクソゲーだっつうんだよなぁ、ヤマシタ」
俺のあとを無言で追従する革鎧は、やっぱり何も答えやしない。
俺はこの件について半年くらい前からフォーラムで改善案を提示してんだけど、公式の返答は『検討中』の一辺倒。
論戦を挑んできた信者達いわく、こういう部分に戦略性を見出してこそのゲーマーらしいけど、
カードの使用制限にリアル時間を使うってシステムは露骨にゲーム寿命を水増ししようとする魂胆が見え見えだよなあ?
この制限のせいでレベリングがいつまで経っても捗らず、パートナー単体で戦える狩場を廃人共が占領し始める始末だ。
リアルの方で経験値効率の良い敵の湧き場に廃人が溜まってんの見たことあるけど、炊き出し会場にしか見えねーよアレ。
おっと、話が逸れまくってるうちに目的地が近づいてきた。
果てしなく続くレールの先に、巨大な構造物が聳え立っていた。
レールがその中に引き込まれてるから多分これは駅なんだろう。
比較対象のない荒涼とした原野の風景のせいで距離感狂ってたけど、こりゃマジででけえ建物だ。
東京駅みたいな瀟洒なデザインの洋館。まさにファンタジー世界の駅って感じだった。
……ただ、このクソでかい駅にも、人の気配はない。
生活感のかけらも残ってない、あちこち風化が始まってる、こいつは形容しようもない『廃墟』だった。
荒野マップにはよくあるフレーバー建築だ。雨風凌ぐ以上の居住性は期待できそうにもない。
いやマジでどうすんだコレ。このままだと俺こんな色気もねー場所で干からびて死ぬの?
思わず頭を抱えた俺の耳に、猛獣の唸り声みたいな低い音が聞こえてきた。
「ヤマシタ!」
咄嗟に革鎧に俺を庇わせる。だが刻一刻と大きくなる音に反して俺の目には何も移らない。
いかにも洋風建築って感じの石畳の上で、荒野の砂粒が震えていた。
「反響……してんのか?ってことはこの音は、駅の中からか……!」
危機との対面を避けられたことで俺の頭もようやく回転してきた。
唸り声に思えたこの音。実際多分これ、羽音だ。クソでけえハエがぶんぶん飛び回ってるみたいな音。
その羽音の主に、俺は思い当たりがあった。
荒野に時間限定でPOPするレアモンスター、"蝿の王"『ベルゼブブ』。
そいつが駅の中で湧いているんだ。 ここで俺の脳裏に二択の天秤が出現する。
つまりは逃げるか、戦うかだ。
ぶっちゃけヤマシタのステータスじゃあのクラスのモンスターには太刀打ちできねえ。
カードを上手く使えばやれないこともないだろうが、多分総力戦になる。デッキは空っぽになるだろう。
この状況でカードを使い切っちまうのはその後のリスクを考えるとかなりアホな選択だ。
そしてベルゼブブが俺の存在をまだ認識していない以上、そっとここを離れれば逃げ切るのは容易い。
――だけど、ベルゼブブ、超欲しい!!
カジュアル勢にはなかなかお目にかかれないクソレアモンスターだ。
中級者以上しか彷徨けないこの荒野で、しかもごく僅かな時間にランダムな範囲にポップするレイドボス。
必然的に時間の有り余ってる廃人が、しかも徒党を組んで連携を取らなけりゃ戦うこともできない仕様だ。
その希少性から、ヤフオクなりメルカリなりで売っぱらえばリアルマネーでも10万は下らない金銭的な価値もある。
そんな垂涎級のモンスターが、今、目の前に居るってのに……逃げる理由がゲーマーにあるか?
ねえよ。ねえだろ。ねえっつってんだろ!!!
一応、一応だが勝算もある。
この状況はスマホの中の画一化されたシステムとは違う。
俺が荒野でコカトリスを高台ハメできたように、アクションゲーじみた『地形』の概念が存在する。
遮蔽物をつかって隠れつつ遠距離から弓でチクチク攻撃し続ければ、勝てるんじゃねえの?
この際多少カードを切ったって良い。ベルゼブブにはそれだけの価値がある。
奴を……捕獲する!
そのとき、俺のスマホがブルった。
ベルゼブブに気取られないようマナーモードにしてたけど、こいつはブレモンアプリの通知音だ。
なんだこりゃ……フレンド申請?
ブレモンの対人要素はプレイヤー間でのバトルの他に、ベルゼブブのようなレイド級を相手にする際の共闘というシステムがある。
まあ俺フレンドとかいねーから詳しく知らねえんだけどな。
共闘するフレンドはいないが、俺のフレンドリストには名前がいっぱいだ。
フレンドになると、相手がどこにいるのかとか、どんなクエストの最中なのかが一目で分かる。
つまり、いつでも相手のところへ行って対戦を申し込めるようになってるわけだ。
下手にフレンドになっちまうと、四六時中対戦を申し込まれて非常にめんどくさい事態になることもある。
故に俺のような敵の多いプレイヤーにとって、フレンドリストとは敵対リストに等しい。
そしてフレンド申請という行為は――宣戦布告なのだ。
「上等だ……!でもちょっと待っててね今忙しいから」
俺は申請を送ってきた相手の名前も見ずに承認して、そのままマップを表示した。
革鎧を引き連れて、駅の構内を疾走する。
リビングレザーアーマーに金属部品が使われてなかったのは僥倖と言うほかねえ。
板金鎧はガチャガチャうっせーからな。
……あれ、待てよ。
今のフレンド申請、どこから送られてきた?
フォーラムでレスバした相手からゲーム内で申請送られてくることなんざ日常茶飯事だが、そもそもここは圏外だ。
外界――現実世界(?)から申請が送られてくるなんてことはあり得ない。
いやあり得ないとか言い出したらこの状況がそもそもあり得ねーんだけどそれは置いといて。
「まさか……」
そのまさかが、羽音の源まで辿り着いた俺の目に実証として飛び込んできた。
天井が砕け、夜空の見える駅のホーム。上空に飛び交う無数の眷属と、王者とばかりに君臨する蝿の王ベルゼブブ。
その複眼が敵対の視線を送る先に、二つの人影があった。 男と女。同じくらいの年頃の、似たようなデザインの制服を着た……多分高校生だろう。
女子高生と男子高校生が、それぞれスマホを手に、パートナーと共にベルゼブブと対峙していた。
この絵面を見てこいつらがこの世界の原住民だと結びつける間抜けはいないだろう。
「いたのか……俺の他にも、この世界に放り出されたプレイヤーが……!」 その時俺の胸に過ぎった感情は、ようやう人を見つけた安堵なんかじゃあなかった。
――先を越された!
奴らがいつからこの世界に居るのか知らねーが、ベルゼブブと既に交戦を開始しちまっている。
やめろ、そいつは俺のもんだ。
ヤマシタに高校生たちへ弓を引かせようとして、どうにか思いとどまった。
三竦みになるのは悪手だ。そもそも連中は二人、俺は一人、数の上でも形勢は不利。
このままベルゼブブと敵対しつつ足を引っ張り合っても良くて双方共倒れ、悪けりゃ俺だけがぶっ殺されるだけだ。
何より、駅のホームはだだっ広い空間になっていて身を隠せるような遮蔽物がない。
これじゃハメ殺しも出来やしねえ。
ここは……一時的に高校生共に味方をしよう。
共闘してベルゼブブの体力が十分に減れば、俺が抜け駆けして奴を捕獲する。
そして戦いの中で連中の手札を観察し、闇討ちの手順を整える。
なんなら捕まえたてほやほやのベルゼブブでフルボッコにしてやるぜ。
「おーい君たち!大丈夫か!?俺も助太刀するぞ!」
俺はいかにも高校生たちの加勢として馳せ参じた善良なプレイヤーを装って声をかけた。
まずは信用を勝ち取る。そのためにはこっちも身銭を切ってやらねえとな。
「デスフライが残っているうちはベルゼブブに防御上昇のバフが付く!先に眷属から落とすんだ!俺が隙を作ろう!」
スマホをたぐり、デッキから一枚のスペルカードを選択。
貴重な貴重な一枚だ。うまく機能してくれよ……。
「『工業油脂(クラフターズワックス)』――プレイ!」
スペルの効果が発動し、デスフライ達のはるか上空から、大量の液体が雨となって降り注ぐ。
強い粘性を持ったワックスだ。薄羽によって飛行するデスフライ達がこれを浴びれば、羽を動かせなくなり地に落ちる。
クソハエどものクソ鬱陶しい機動性が大幅に落ちるはずだ。
そして既にデスフライ達と交戦しているあのドラゴンの主ならピンと来るだろう。
降り注ぐワックスが、引火性の高い――『油』であることに。
【ベルゼブブ戦に乱入、スペルを使って油を降らせて支援】 【真ちゃん、なゆたちゃん、みのりさん、改めてよろしくおねがいします】
【フレンド申請を受けましたが、今後やりたいことの為にモンデンキント氏の名前までは確認してません。
ふつーにブレモン世界に巻き込まれた哀れな一般プレイヤーだと思って侮ってます】 >>82>>92>>97
>「お願い――、応えて! わたしたちと一緒に戦って!」
なゆたの悲痛な叫びにも似た願いは近くにいたプレイヤーに届いたようだ
様々な思惑は交錯するも、同じくこの世界に転送された者たちがホームに集う
>「おーい君たち!大丈夫か!?俺も助太刀するぞ!」
明神が声をかけた少し後、何かがなゆたの足元をぽんぽんと叩いていることに気付くだろう。
見れば30センチほどの藁人形が足元にまとわりついている
「はぁ〜い、こっちもいてるよ〜」
藁人形から発せられた声と同時に背後から肩に手をかけられる。
振り向けば五穀みのりが笑みを讃えて手を上げ挨拶をするだろう。
穏やかな表情としっかり纏められたギブソンダックの髪
上着部分をはだけ腰の部分で結んだツナギと黒いタンクトップであらわになる上半身のライン
そして長靴というどことなく場違いな格好ではあるが、各々が事情に関係なくこの世界に送り込まれたという事を表していた
「初めまして〜。2.3回やけど共闘したことのある五穀豊穣こと五穀みのりよ〜よろしくねぇ。
それにしても、スライムつこてトッププレイヤー張ってはるモンデキントさんがこんなかわいらしい女の子とは驚きやわ〜」
現在の状況を把握していないかのような和やかな挨拶とともに、自身の体によじ登りまとわりつく藁人形を指して、先ほどの種明かしをする。
「囮の藁人形(スケープゴートルーレット)」で呼び出される五体の藁人形はダメージ計算がリンクし、累積ダメージとして蓄えられる。
ゲームデータではそれだけなのだが、こちらの世界ではそのリンクが他にも適用されないだろうかとやってみたらトランシーバーのような機能も果たしたという事だった。
地形を利用した戦術然り、ゲームの設定やフレーバーに実際の機能との誤差や利用法による応用の幅が随分と広がっているようであった。
そこまで説明し、ようやくホームへと顔を向ける
「それで、あっちの男の子がモンデキントさんの彼氏さんかしらぁ?
まあ……いうのもあれやけど、結構なアホの子やねえ」
呆れるように苦笑いを浮かべ、肩を竦めて見せる
その意味はなゆたにも伝わるだろう、といより、なゆたが一番身をもって感じているであろうから
飛行する多数の敵を前に自分の身を晒してレッドドラゴンと共に戦っているのだ。
ゲームでは画面の外から指示を出すだけであるが、今は違う。
危険に晒される同じ場所に立っているのだから。
「ほやけどまぁ、アホな子ほどかわええともいうし、しゃぁないわなぁ」
戦う真一を見ながらクスリと笑い、藁人形を一体掴みスマホのように耳に充てた その頃、上空を舞うベルゼブブとその眷属のデスフライ
唸りを上げ飛び回り、グラドと戦いを繰り広げているのだが、数が多すぎる
しかもその攻撃に晒されるのは、モンスターであるグラドだけではなく、その場にいる生物全て。
すなわち当然真一も攻撃対象である。
上空から襲いかかるデスフライの攻撃、躱しきれぬその一撃を確かに真一は受けた
のではあるが、衝撃は来ないだろう。
偶然?人間だから?
いや違う、確かに真一にデスフライの攻撃は命中したのだが、そのダメージを腰あたりにしがみついている藁人形が引き受けたのであった。
みのりが放った藁人形が二体、真一の腰あたりにまとわりついている、
二度目の攻撃を受けたところで、一撃目のダメージを引き受けぼろぼろになっていた藁人形がはじけ飛んだ
更なる猛攻が続く中でそれは降り注ぐ
>「『工業油脂(クラフターズワックス)』――プレイ!」
明神の発動したスペルによって周囲に粘性の高いワックスが降り注ぎ、それにまみれたデスフライの羽根は機能を失い地に落ちていく。
もしその範囲に真一がおり、効果が及ぶとしてもワックスにまみれる事はない。
判りに残った一体の藁人形がその効果を引き受けているのだから
「あらあら、あのお兄さんもやりよるねえ。デスフライを油で叩き落しはったわ
もう十分やろけど、せっかくやし私もいかせてもらおうかしらぁ」
ホームの状況を見ながらスマホを取り出し、イシュタルを召喚
それと同時にスペルカード「地脈同化(レイライアクセス)」を発動。
飛び出したイシュタルはホーム中央に突き刺さり、耳障りな笑い声をあげた。
その姿はまさに案山子であり、その性質上周囲の注目を浴びやすく、攻撃の的になりやすいのだ。
ただでさえ攻撃の的になりやすい上にさらに挑発するような笑い声が響き渡るとそれに反応し、地に落ちたデスフライが一斉にイシュタルに群がり攻撃を浴びせかける。
数の暴力かくたるや。
藁の体で防御力が低い事もあり、あっという間にズタボロにされていくのだが、切り裂かれた場所が即座に再生していく。
地脈同化(レイライアクセス)は地脈に接続する為に移動不可になるがその分高い継続回復力を誇る
更に伊達に石油王のコレクションと言われるわけではなく、HPと回復力の高さはプレイヤーの使用できるモンスターの中でもトップクラス
ダメージ10:回復8の割合ではあるが、高いHPの為、たかられてもまだしばらくは持ちこたえられるのだった。
「はぁ〜い、こんばんは
共闘させてもろてる五穀豊穣云います〜
うちのイシュタルが油まみれのデスフライさんをひとまとめにしている状況やし、焼いちゃってぇくださいねえ
もろとも焼かれても死なひん程度のHPと回復力はありますよって、お気になさらず〜」
真一の腰にへばりついた藁人形を通し、みのりの声が届く
ゲームとこちらの世界との差異の把握
それがみのりの狙いであった。
ゲームは範囲攻撃を使っても味方はその対象から除外され、敵だけにダメージや効果が及ぶ。
だがこの世界では?
みのりのデッキには範囲スペルが多く、この点は早めに把握すべきところなのだから。
それにもう一つ。
アホの子と称した真一にこのままベルゼブブを倒せるとは思っていない。
現在回復しながらダメージを食らい続けているのはそのためだ。
みのりのデッキは食らったダメージを反射するバインドデッキ
累積ダメージが増えるほどに強力な攻撃を放てる
効果から除外されデスフライだけ倒せるのならそれもよし、もろとも焼かれるならばそれはイシュタルの攻撃力上昇に繋がるのでそちらもまたよしなのだから。 >「ああもう! この……単細胞おばかーっ!!」
遥か後方からなゆたの叫び声が耳に入るが、この男にとって、そんなことは知ったこっちゃなかった。
喧嘩は先手必勝。考えるよりも先に体が動くのが、赤城真一という人間なのである。
「心配すんな、なゆ。俺は生まれてから一度もハエに負けたことはねえ!」
などという、謎理論から導き出された自信を引っさげて、真一は勢い良くグラドの背に飛び乗る。
「さぁ、行くぜ――〈炎精王の剣(ソード・オブ・サラマンダー)〉!!」
そこで真一はスマホを操作し、一枚のユニットカードをプレイする。
行使されたのは〈炎精王の剣(ソード・オブ・サラマンダー)〉。
刀身に炎を纏ったロングソードを召喚するカードであり、通常はパートナーモンスターに装備させて攻撃力アップを図るのだが、真一はそれを自らの手で握り締めた。
そして、グラドは真一を背に乗せたまま上昇し、蝿の王の軍勢に飛び掛かる。
先刻戦ったサンドワームと同様、ベルゼブブとデスフライはこちらにとって相性の良い敵ではあるものの、それにしても多勢に無勢。
瞬く間に無残な死体を晒すことになるだろうと思われていたが、その予想に反し、彼らは獅子奮迅の活躍を見せる。
真一とグラドの戦い方は、さながら竜騎士を彷彿とさせた。
遠くのデスフライにはグラドがドラゴンブレスを浴びせ、間合いの中に入られた敵は、真一が剣を振り翳して叩き落とす。
――伊達に物心付いた頃から、剣道をやってきたわけではない。
初めて握った得物とは思えないほど、真一は炎の魔剣を巧みに操り、次々とデスフライを撃墜する。
慣れない魔法を遠距離からチマチマ撃つよりも、こうやって前線で暴れる方が、余程自分の性に合っていると感じた。
「ちっ、次から次へとキリがないな。何とかデカいのを叩き込みてーところだが……」
このように奮闘する真一とグラドであったが、それでも未だ、敵に対して有効打を与えることができているとは言い難かった。
落としても落としても、デスフライの群れは続々と現れ、神風特攻のように襲い来る。
纏めて炎スペルで焼き払うことができればいいのだが、こう散らばられてしまっては、一網打尽にするのも困難だろう。
そして、遂に躱しきれなくなったデスフライの一体が、真一の腹部に直撃した。
次いで訪れるであろう激痛に備え、真一は歯を食いしばったが、意外にも痛みは感じない。
恐る恐る腹部に目を落とすと、そこには奇妙な藁人形が纏わり付いていた。
「な、なんだこいつ……お前が身代わりになってくれたのか?」
藁人形は返事の代わりにもう一度攻撃を受け、そのまま弾け飛んでしまった。 >「おーい君たち!大丈夫か!?俺も助太刀するぞ!」
>「デスフライが残っているうちはベルゼブブに防御上昇のバフが付く!先に眷属から落とすんだ!俺が隙を作ろう!」
そんなやり取りがあった直後、いずこから知らない男の声が聞こえてきた。
最初はまたメロのようなモンスターかと思ったが、声の発せられる方を見やると、そこにはサラリーマン風の男がいた。
あの服装と、片手に握られたスマートフォン。
あれは真一やなゆたと同じく、現実世界からやって来た人間と見て間違いないだろう。
「なんだよ、居たんじゃねーか! 俺たちの他にも……!」
>「『工業油脂(クラフターズワックス)』――プレイ!」
期待していなかった増援の登場に安堵するのも束の間、見知らぬ男はスペルカードを発動して、蝿の群れに大量の油を落とす。
油が羽に染み付いて、身動きを取りにくくなったデスフライたちは、ゆらゆらと地上へ滑降して行く。
その直後、何処からともなく飛び出してきた案山子型のモンスター――スケアクロウがフィールドの中央に突き刺さり、けたたましい笑い声をあげ始めた。
>「はぁ〜い、こんばんは
共闘させてもろてる五穀豊穣云います〜
うちのイシュタルが油まみれのデスフライさんをひとまとめにしている状況やし、焼いちゃってぇくださいねえ
もろとも焼かれても死なひん程度のHPと回復力はありますよって、お気になさらず〜」
そんな最中、いつの間にか真一の腰にくっ付いていたもう一体の藁人形が、若い女の声を発した。
状況を全て理解できているわけではないが、真一となゆたを援護する人間が、少なくとも二人以上現れたのは分かった。
スケアクロウ――イシュタルというニックネームなのだろう――の笑いに挑発されたデスフライは、目論見通りに一箇所へと密集し始める。
「どこの誰だか知らねーが、恩に着るぜ! チャンスだ、グラド。一気にカタをつけるぞ!!」
真一の呼び掛けに、グラドは唸り声を一つ返し、ダンゴ状態になったデスフライの方へと向かう。
先程までは鬱陶しく散らばっていたこいつらだけれど、今の状況ならば――
「纏めて薙ぎ払え……〈燃え盛る嵐(バーニングストーム)〉!!」
そして真一が撃ち放ったのは、炎属性の上級スペルであった。
荒野に現れた炎の風が、ぐるぐると渦を巻いて竜巻となり、デスフライの群れを呑み込む。
――ただでさえ弱点属性の上に、この密集形態。
更に、デスフライの体に先程の油が染み込んでいることもあり、それは絶大な威力を発揮した。
デスフライたちは断末魔の大合唱を轟かせ、そのほとんどが一撃で灰燼と化す。
これでようやく厄介な小バエ共の鎧は、引き剥がすことができたというわけだ。 『ギギギギギ……』
しかし、デスフライを統べる蝿の王――ベルゼブブは、その攻撃を受けて尚健在だった。
自身を取り巻く眷属を盾代わりにして、炎の嵐が過ぎ去るのを待ちながら、両脚を擦り合わせて不協和音を鳴らしていた。
そして、炎が消えて視界がクリアになった直後、ベルゼブブは猛然と飛び出した。
「なっ、速い……!?」
一瞬で最高速度に達したベルゼブブは勢いのままに突撃し、グラドに強烈な体当たりを浴びせる。
グラドは寸でのところで身を捩り、何とかその直撃を食らうことは避けたものの、体を掠めて体勢を崩してしまう。
それを好機と見たベルゼブブは、こちらへと酸の唾液を吐き飛ばし、更なる追撃を見舞った。
「やべえっ……〈炎の壁(フレイムウォール)〉!!」
真一は咄嗟の判断でスペルを発動し、炎の壁でその攻撃を防御した。
ここまでどうにか凌いではいるが、流石に真一の額にも、一筋の冷や汗が流れ落ちる。
そんな一方、真一とグラドを視界に捉えたまま、ベルゼブブは上空を旋回して最初に倒すべき相手を選定していた。
対多勢の戦いにおいて、弱そうな敵から仕留めるのは定石である。
竜族のレッドドラゴン。鬼のような耐久力を持つスケアクロウ。スライムは一見雑魚だが、レベルの高さは直感で分かっている。
順々に敵の姿を一瞥し、ベルゼブブがターゲットに選んだのは――リビングレザーアーマーだった。
『ギギギッ……!!』
ベルゼブブは再び前脚を擦り合わせた後、鳥が威嚇するみたいに、背中の羽を広げて見せる。
そして次の瞬間、ベルゼブブ周辺の夜天が揺らぎ、衝撃となって降り注いだ。
〈闇の波動(ダークネスウェーブ)〉と呼ばれている、闇属性の上級スペルだ。
高位の悪魔であるベルゼブブは、そのステータスの高さだけではなく、こういった強力な魔法までも使いこなすのだ。
防御力に劣るリビングレザーアーマーがまともにこれを受ければ、当然無事では済まないだろう。
【炎の嵐でデスフライ殲滅。
ベルゼブブは最初のターゲットを明神&ヤマシタに定めて攻撃開始】 【キャラクターテンプレ】
名前:“知恵の魔女”ウィズリィ(Wizly)
年齢: 14歳
性別: 女
身長: 151cm
体重: 41kg
スリーサイズ:81-57-80
種族:魔女術の少女族(ガール・ウィッチクラフティ)
職業:森の魔女
性格:無口で物静かだが、必要である時には押しが強い。
特技: 本の速読
容姿の特徴・風貌:色白な肌、流れるような長い黒髪は腰辺りで無造作にリボンで結んでいる。瞳は紫と黄金のオッドアイ。ゆったりした黒いローブ状の服を好む。
簡単なキャラ解説:
アルフヘイムとニヴルヘイムの狭間に広がる「忘却の森」出身の一族(ブレモンではモンスターの一種)の一人。
アルフヘイムを襲った「とある困った事態」に際し、おろおろする大人たちを他所にウィズリィは逆に興奮を隠せずにいた。
「……伝説は本当だったのね……異世界から現れる魔物使い達……!」
窮状を救ってもらえると喜んだこと自体は本当である。
ただ、ウィズリィが極端な実践主義者だったことが吉と出るか凶と出るか……。
後、運動は基本的に苦手だぞ。大丈夫か。
【パートナーモンスター】
ニックネーム: ブック
モンスター名: 原初の百科事典(オリジンエンサイクロペディア)
特技・能力:
◎知識の源流(ナレッジオリジン):数多くの事柄についての知識を有する。また、現地の民であるウィズリィが(外部からやってきた人々と同様に)スペルを使用できるのは彼のおかげである。
◎知の避難所(ナレッジへイブン):契約者のデッキのカードを4枚まで格納することができる。それらのカードはスペルやユニットの効果の対象にならないほか、魔力充填速度が倍になる。
◎小さな知の片鱗(ピースオブナレッジ):基本4属性(地水火風)の中位魔法までを使用可能。
容姿の特徴・風貌: 1辺30〜40cmほどの豪奢な装丁の百科事典。外見的にはそれ以上でも以下でもない。自律して飛んでいるのは少々驚きに値するかもしれないが。
簡単なキャラ解説: 忘却の森のほど近く、世界図書館マップに出現する『リビングブック族』のうちの1種類。ウィズリィが連れているのは、その中でも中堅辺りに位置する個体である。
付き合いは相当に長く、出会った時に比べてその能力は何倍にも高まっている。
【使用デッキ】
・スペルカード
「知彼知己(ウォッチユーイフミーキャン)」×3……敵1体の情報を一通り解析する。相手がデッキを所有しているならデッキリストも分かる。
「多算勝(コマンド・リピート)」×3……魔力充填期間中のカード1枚を使用可能状態に復帰させる。
「其疾如風(コマンド・ウインド)」×1……範囲付与。味方全員に飛行能力を付与する。速度は全力疾走のさらに倍程度。
「其徐如林(コマンド・ウッズ)」×1……範囲内の使用可能な全てのカードを、使用に10分ほどの魔力充填期間を必要とする状態に移行させる。また、すでに魔力充填中なら加算する。
「侵掠如火(コマンド・ファイア)」×1……強力な炎の嵐を繰り出す。「燃え盛る嵐」の同系再販。
「不動如山(コマンド・マウンテン)」×1……既に起動しているユニットカード、スペルカード1枚の効果を打ち消す。
「難知如陰(コマンド・シャドウ)」×1……敵1人のデッキからカード1枚を選び、選んだカードを使用不可能状態にする。
「動如雷震(コマンド・サンダー)」×1……雷撃を召喚し、範囲攻撃を行う。威力は高いが隙が多め。
ユニットカード
「忘却殺しの杖(ハードメモラライズ)」×3……発動時、スペルカードを1枚指定し同時に使用する。この杖を振うと指定したカードの効果を幾度も使う事が出来る。
ただし、杖は10分程度で壊れる。
「魔に触れぬ誓いの槍」×2……非常に高い攻撃力を持つ槍。ただし、槍の視界内で(先端に目が付いている。グロい)カードが使用された場合、即座に召喚は解除される。
「城塞」×3……その名の通り、石造りの非常に堅牢な城塞を作り出す。 面白そうだったので登録させていただきました。今後ともよろしくお願いしまーす。
何かまずいところとか聞きたい点とかあったら言ってください! >「心配すんな、なゆ。俺は生まれてから一度もハエに負けたことはねえ!」
「サイズと状況を見てからものを言え――――――!!!!」
ツッコんだ。基本的に真一と一緒のときはツッコミ役に回るなゆたである。
確かに普通のハエに負ける人間はいないだろう。手でパチンと叩くだけで仕留められる。
けれども、今目の前にいる蝿は乗用車よりも巨大なバケモノで、しかも闇の世界産の上級悪魔。
翅に刻印されたドクロと交差した骨のマークが、やけに禍々しく浮かび上がって見える。
こんなモンスターとまともに戦っては、こちらが間違いなくパチンと叩かれて終わってしまう。
が、そんな全力のツッコミも功を奏さず、真一はヒラリとグラドの背に乗ると勢い込んで蝿の群れに向かっていってしまった。
手綱も何もなく、乗馬や何かの経験もないのに、ぶっつけ本番でドラゴンの背に跨って剣を振るなど言語道断だ。
……というのに、その言語道断をあっさりとやってのけている。
呆気に取られたなゆたはしばし我が身の状況も忘れ、ポカーンと口を半開きにして立ち尽くしてしまった。
いくらゲームの世界だからって、ムチャクチャだわ。これ。
そんなことを考えるも、いつまでもボーッとしてはいられない。いくら真一とグラドが奮闘していると言っても、ベルゼブブには勝てない。
眷属のデスフライを伴っているときのベルゼブブには、常に強力なバフがかかっている。
状態異常耐性、防御力上昇、継続HP回復、そして眷属の召喚。
デスフライが場に一匹でも残っている限り、ベルゼブブは無限に眷属を召喚できる。
そんなデスフライを残したままベルゼブブを倒すというのは、上級者でも至難の業。
トロフィー獲得条件に『デスフライを残したままベルゼブブを狩る』という項目があるくらいなのだ。
中には無限湧きするデスフライを狩ってレベルとスキル上げをする猛者もいるが、今はそんな悠長なことなど言っていられない。
「く……ポヨリン、わたしたちも行くよ!『形態変化・硬化(メタモルフォシス・ハード)』!!」
『ぽよっ!!』
なゆたはスマホの液晶画面を手繰ると、スペルカードを一枚選択した。
『形態変化・硬化(メタモルフォシス・ハード)』。自分のパートナーを瞬間的に硬化させるスペル。
スライムに対して発動させれば、スライムとしての弾性を保持したまま鋼のような硬さを得ることが可能になる。
単純に攻撃力と防御力の強化が望めるスペルである。
ポヨリンの体色が鮮やかな水色から鈍色に変化し、光沢を帯びる。
なゆたの編成したデッキ内の「ぽよぽよ☆カーニバルコンボ(なゆた命名)」は、決まれば必殺。
不測の事態におけるリカバリー能力にも優れた強力なコンボだが、コンボという特性上成立に若干の時間がかかる。
なゆたは早速次のスペルカードを発動させようとしたが――
「まだ、時間が……!」
スマホの液晶画面に横一本、青いゲージが表示されており、それが徐々に伸びていっている。
「ブレイブ&モンスターズ!」はターン性ではなく、アクティブタイムバトルを採用している。
プレイヤーと相手とで交互に行動するのではなく、ゲージが満タンになった者から行動できるというシステムだ。
よって、すぐには次のスペルカードを使うことができない。なゆたは歯噛みした。
「もーっ! 肝心なところでゲームっぽいー!!」
しかし、地団駄を踏んだところで仕方ない。矢継ぎ早のカード発動は不可能なのだ。
こちらのコンボが成立するまで、果たして真一とグラドは持ち堪えられるのか――。
なゆたは祈るような気持ちで、飛翔するグラドと真一を見上げた。
しかし、そんなとき。
「おーい君たち!大丈夫か!?俺も助太刀するぞ!」
声が、聞こえた。 >「デスフライが残っているうちはベルゼブブに防御上昇のバフが付く!先に眷属から落とすんだ!俺が隙を作ろう!」
見れば、サラリーマン風の男とリビングレザーアーマーがこちらへと向かってきている。
先程神頼みとばかりに送信したフレンド募集の通知に、応えてくれたプレイヤーがいたのだ。
自分と真一がいる以上、他のプレイヤーもいるはず。
そう思っての行動がまんまと図に当たった、というわけだ。
「ありがとう! お願いします!」
サラリーマン風の男に感謝の言葉を告げる。今は、この男が何者かなどということは後回しだ。
パートナーのリビングレザーアーマーはレアリティもスライムとどっこいのメジャーなモンスターであり、能力もお粗末なものだ。
が、人型という強力なアドバンテージを有しており極めて汎用性が高い。
器用貧乏の評価は否めないが、多様なスキルを習得できることもあり、伸びしろの大きさから玄人向けとされるモンスターである。
強力なレイドボスであるベルゼブブとの戦いに名乗りを上げるくらいだ。少なくとも初心者ではあるまい。
にわかに現れた援軍にホッとした――のも束の間。
不意に、何かがポンポンと脛のあたりを叩いている。
なゆたは足許に視線を向けた。そして
「――――ひ」
驚きのあまり、喉の奥にものの詰まったような声を漏らしてしまった。
いつの間にかなゆたの足許に小さな藁人形がおり、それが自らの意志を持つかのように動いている。
>「はぁ〜い、こっちもいてるよ〜」
藁人形が喋り出す。まさに恐怖だ。以前観たホラー映画にこんなのがいたような……なんて、妙なことを考える。
かと思いきや、今度は足許でなく肩にかけられる手。なゆたはびくぅっ! と全身を強張らせた。
しかし、恐る恐る振り返った視線の先に立っていたのは、にこやかな笑みを浮かべた女性だった。
歳の頃は自分と同じか、少しだけ上くらいだろうか。
農作業の最中です的な出で立ちがどことなく場違いだったが、彼女もまたブレモンのプレイヤーなのは間違いなかった。
>「初めまして〜。2.3回やけど共闘したことのある五穀豊穣こと五穀みのりよ〜よろしくねぇ。
それにしても、スライムつこてトッププレイヤー張ってはるモンデキントさんがこんなかわいらしい女の子とは驚きやわ〜」
「ふ……ふえっ!? ご、五穀豊穣さんって、あのスケアクロウの……?」
はんなり。という感じのみのりを失礼にも指差して、頓狂な声を出してしまう。
多数のプレイヤーとフレンド登録しているなゆただが、五穀豊穣というプレイヤーネームについては特によく覚えている。
課金者にはランクがあり、月に数百円、多くて数千円程度の課金者を微課金勢。
月にウン万円を惜しみなく注ぎ込む重課金勢、さらにその上を行く廃課金勢。
そして。
その廃課金の壁さえ超えた課金者を、プレイヤーたちは尊敬とやっかみ、そして少しの侮蔑を込めてこう呼ぶのだ。
『石油王』と――。
彼女のパートナーモンスター・スケアクロウは、そのみすぼらしい(?)外見と相反した、紛れもない石油王の証だった。
事前登録からブレモンを続けてきたなゆただが、スケアクロウ持ちと遭遇したことは二度しかない。そのうちの一人がみのりだ。
もちろん、なゆたの方から共闘を持ちかけフレンド申請したことは言うまでもない。
「あっ! モ、モンデンキントの崇月院なゆたです! はじめまして、いつもお世話になってます!」
こんな状況ではじめましての挨拶もないものだが、ぺこりと頭を下げて言っておく。
彼女のデッキはかつて共闘した際に見たことがある。自在にヘイトコントロールし累積ダメージを増してゆくバインドデッキだ。
数の暴力に訴える系のなゆたのデッキでは、少々相性が悪い。何にせよその実力は折り紙付きだ。
リビングレザーアーマーといい、誰でもいいからとランダムに募集したにも拘らず、強力な助っ人が来たものである。 >「それで、あっちの男の子がモンデキントさんの彼氏さんかしらぁ?
まあ……いうのもあれやけど、結構なアホの子やねえ」
「かっ、かかかか彼氏っ!? ちちち、違います!! 真ちゃんとは生まれたときからの付き合いで、単なる幼なじみで!
いっつもわたしが尻ぬぐいしてて、全然そんな、彼氏とか彼女とかじゃないですからぁぁぁ!!」
みのりの何気ない一言で、滑稽なほどうろたえる。大袈裟に両手をバタバタさせて全力否定の方向だ。
が、アホの子という点は反論しない。本来パートナーを戦わせるブレモンというゲームで、自分も戦うとは何事か。
ゲームのコンセプトに全力で抗っている。これは垢BAN案件ではないか、とさえ思う始末だった。
>「ほやけどまぁ、アホな子ほどかわええともいうし、しゃぁないわなぁ」
「かわいくないですよう!? いやまぁ、わたしがいないとしょーがないなーっていう部分はありますけど。
……って、そんなこと言ってる場合じゃなかった!」
みのりのペースにすっかり巻き込まれてしまっていたが、やっと我に返る。
空では真一とグラドが無数のデスフライにたかられていたが、なぜか被弾している様子はない。
みのりの差し向けた藁人形がダメージを肩代わりしているのだ。
>「『工業油脂(クラフターズワックス)』――プレイ!」
さらに、サラリーマン風の男の発動させたスペルカードにより、空から大量の鼻を突く臭いの液体が降り注ぐ。
工業油脂の雨をその翅に浴びたデスフライの群れは、面白いようにボトボトと地面に墜落した。
『工業油脂(クラフターズワックス)』は極めて高い可燃性を持つ油であり、容易に発火する。
ベルゼブブ討伐のセオリーであるデスフライ狩りには、もっとも有効なスペルのひとつである。
>「あらあら、あのお兄さんもやりよるねえ。デスフライを油で叩き落しはったわ
もう十分やろけど、せっかくやし私もいかせてもらおうかしらぁ」
さらに、みのりが自らのパートナーモンスターを召喚する。
スケアクロウ。ごくごく一部の限られたプレイヤー(経済的な意味で)のみが手にできる超レアモンスター。
それが出現すると同時、なんとも言えない不快な高笑いを始める。
スケアクロウの笑い声はエネミーのヘイトを一気に上昇させ、自らに向ける能力を持っている。
そうしてスケアクロウがエネミーの攻撃を一手に引き受け、他のプレイヤーが本命を集中攻撃するというのがパーティープレイの定石だ。
以前共闘したときも、みのりのヘイトコントロールには随分助けられた記憶がある。
「五穀さん、ナイス! あとでプレゼントボックスにアイテム贈っときますね! 回復系の!」
このころには、なゆたのATBゲージも溜まっている。さっそくなゆたは二枚目のスペルカードを手繰った。
「『分裂(ディヴィジョン・セル)』! 発動!!」
スペルを発動させると同時、鈍色に輝くポヨリンの姿が俄かにぐにゃりと歪む。
かと思えば、一匹だったポヨリンはまるでプラナリアか何かのように二匹に分裂した。
スペル『分裂(ディヴィジョン・セル)』の強みは、バフを維持したままモンスターの数を増やせるという点にある。
バフ効果をすべて打ち消す類のデバフスペルを喰らうと一匹に戻ってしまうが、基本バトル終了まで増えたままなのも強い。
>「纏めて薙ぎ払え……〈燃え盛る嵐(バーニングストーム)〉!!」
地面に墜落してスケアクロウに群がっていたデスフライへ、真一がスペルカードを発動させる。
途端に発生した炎の渦が、可燃性の油脂をたっぷりと浴びた蝿の群れを蹂躙する。
デスフライたちは瞬く間に燃え上がり、黒く澱んだ塵と化した。 「真ちゃんったら、考えなしにあんな大技使っちゃって……」
『工業油脂(クラフターズワックス)』に着火するには、ほんの僅かな火で充分事足りる。
真一のデッキなら、最弱の『火の玉(ファイアボール)』でも油を浴びたデスフライを充分殲滅できたのだ。
いや、むしろグラドのブレスでも発火しただろう。スペルを使う必要さえなかった。
その辺りのコストをまったく考えず、派手なことばかりやりたがる辺り、真ちゃんはまだまだ……と肩を竦めるなゆたであった。
デスフライは全滅した。あとは首魁のベルゼブブを始末するだけである。
デスフライのバフが消滅し、ベルゼブブは大幅に弱体化している。――とはいえ、油断は禁物だ。
相手は腐っても上級悪魔、レイドボスである。
ここからベルゼブブの猛攻に押し返され、全滅したパーティーも数多くいるのだ。
>『ギギギギギ……』
ベルゼブブは形勢不利と見たか、一度体当たりと酸の唾液を見舞っただけで真一グラドペアとの戦いを避けた。
また、ヘイトコントロールをしているスケアクロウにも見向きもしない。本能に屈さない高い知能を有する証拠である。
そんなベルゼブブがフィールドにいる四人と五体の中で最初に目を付けたのは、貧相な革鎧の人型モンスター。
>『ギギギッ……!!』
蝿の王の巨大な半透明の翅。そこに刻印された髑髏マークが不気味に輝く。翅が激しく振動する。
黒色の衝撃波、『闇の波動(ダークネスウェーブ)』。デスフライを失った後のベルゼブブのメイン武器のひとつだ。
指向性を持った衝撃波の威力は強大で、充分に育成したレアモンスターすらしばしば一撃で撃破されるほど。
サラリーマンの相棒であるリビングレザーアーマーがどれほど育っているのか確認はしなかったが、直撃は危険である。
何らかの防御系スペルカードを持っているのならいいのだが――。
しかし、なゆたはサラリーマンの対応を待ちはしなかった。
「ポヨリンA! 『しっぷうじんらい』!」
『ぽよよっ!!』
スキル『しっぷうじんらい』。
バトルの際、必ず相手から先制を取ることができるスキルである。
分裂したポヨリンAはスライムらしからぬ電光石火のスピードで跳ね飛ぶと、ベルゼブブとヤマシタの間に割り込んだ。
『闇の波動(ダークネスウェーブ)』がヤマシタの盾となって飛び出したポヨリンを直撃する。
『ぴき―――――っ!!』
闇色の衝撃波をまともに受けたポヨリンはぼよんっ、ぼよっ、と地面を数回バウンドしてひっくり返った。
……けれど、生きている。目を回しているだけだ。
一番最初に付与したバフ『形態変化・硬化(メタモルフォシス・ハード)』と、レベルマスキルマの恩恵である。
そして。
「ポヨリンB! 『てっけんせいさい』!!」
『ぽっよ……よよよ〜〜〜んっ!!』
分裂したもう一匹のポヨリン、ポヨリンBが、衝撃波を放った直後のベルゼブブの側面に回り込む。
グミキャンディーのような楕円形だったポヨリンBの姿が、瞬く間に巨大な右拳に変化する。
スキル『てっけんせいさい』。攻撃力を倍増させる格闘スキルだ。
『形態変化・硬化(メタモルフォシス・ハード)』によって上乗せした破壊力で、ポヨリンBは力の限りベルゼブブをぶん殴った。
鋼の拳がフック気味にベルゼブブの柔らかい腹部に突き刺さり、ドゴォ!!という重いSEが轟く。
そして頭上に表示される『CRITICAL!!』の文字。
ギエエエエーッ!と悲鳴を上げて仰け反る蝿の王。一定のダメージを与えると、ベルゼブブはスタン状態になる。
絶好の反撃のチャンスだ。
【殴。】 >>93
これはわたしが答える流れなのかな……?
ええと、すみませんーっ!ノリで書いてただけで何も考えてませんーっ!
ただ、基本的にアルフヘイム産のモンスターが光属性で、ニヴルヘイム産のモンスターが闇属性で。
その中でそれぞれ地、水、火、風の属性があるのかな、とか……。
例えばポヨリンだと【光−水】で、ベルゼブブは【闇−風】みたいな。
あ!わたしがそう考えてるだけなんで、公式じゃないんでーっ! >>107
【歓迎します! レス順はみのりさんの後になりますので、もう少々お待ちください】
>>93>>112
【属性や種族に関しては、ノリで設定してもいいと思ってたんですが、暫定的に決めときましょうか。
基本四属性は火→風→土→水→火の関係で、光と闇は有利不利の相性無し。
悪魔や死霊などは闇属性、精霊や天使などは光属性も付与されていることが多い。
とりあえずこんなイメージでお願いします】
【キャラクターテンプレ】
名前:佐藤メルト(プレイヤーネーム:メタルしめじ)
年齢:14歳
性別:女
身長:138cm
体重:35kg
スリーサイズ:B60 W47 H62
種族:人間
職業:中学生
性格:慇懃無礼、ネット弁慶
特技:ゲームのバグ探し
容姿の特徴・風貌:肩までの長さの黒髪。右側の額から頬にかけて大きな傷跡があるのを前髪で隠している
簡単なキャラ解説:ごく普通の少女であったが、小学生の時に不良同士の喧嘩に巻き込まれて顔に傷を負って以来、不登校となった
家に居る間は「ブレイブ&モンスターズ!」を延々とプレイしている無課金廃プレイヤー
そのプレイスタイルは極めて悪質であり、外部サイトを利用してのシャークトレードまがいの行為やRMT、
バグを利用したアイテム入手、マクロを使用したキャラ育成など、規約違反を複数に渡り行っている
メルトがこの世界を訪れた時は、最近見つけたカード増殖バグを行っている最中であった為、産廃カードの所有率が非常に高い
【パートナーモンスター】
ニックネーム: ゾウショク
モンスター名: レトロスケルトン
特技・能力:一部の属性を除く魔法攻撃に対する耐性が極めて高い反面、物理攻撃に対しては非常に脆い
容姿の特徴・風貌:人間の白骨の様な姿。頭蓋骨に魔法陣が彫り込まれている
簡単なキャラ解説:
無念の死を遂げた屍が魔力の影響を受ける事により動き出した。所謂アンデット
チュートリアルの道中に出現するコモンモンスターであり、脆く弱い
ドロップアイテムも『骨の欠片』だけなので倒しても何一つ旨味がなく、プレイヤー達には見向きもされない。
尚、初期装備では倒す為に2撃が必要になる為、速度が命のリセマラ勢に蛇蝎の如く嫌われている
本体は頭蓋骨
【使用デッキ】
・スペルカード
「腐肉喰らい(スカベンジャー)」×1 …… モンスター撃破時のアイテムドロップ率に×1.5の補正が掛かる。
「死線拡大(デッドハザード)」×2 …… 対象に『状態異常:アンデット』を付与する
「生存戦略(タクティクス)」×1 …… 敵味方問わず、範囲内のモンスターに対して回復効果(大)
「骨折り損(デッドラック)」×3 …… 『状態異常:アンデット』のモンスターが致命のダメージを負った際、HP1の状態で踏み止まる
「愚鈍な指揮官(ジェネラルフール)」×2 …… 所持するアイテムを3つ破棄する事で、スペルカード1枚の効果発動を遅延する
「感染拡大(パンデミック)」×1 …… 敵味方問わず、効果範囲内のモンスターの状態異常耐性を戦闘終了までの間半減する
「携帯食(カロリーブロック) ×1 …… 使用後、戦闘終了まで毎ターンHP回復(極小)
「病原体(レトロウイルス)」×1 …… 1ターンの間、対象の状態異常耐性を半減する
「勇者の軌跡」×2 …… HPが1割以下の状態でのみ使用可能。対象の状態異常を全て解除し、更に、戦闘終了まで運以外の全ステータスが毎ターン上昇する
尚、HPが2割以上になるとステータスの上昇は停止する
・ユニットカード
「骨の塊」×2 …… アイテム『骨の欠片』を持つ場合のみ使用可能。骨の欠片を3つ入手する。
「戦場跡地」×1 …… フィールドから継続的にオールドスケルトンが湧き出る様になる。特定のフィールドにおいては湧き出るスケルトンの種類が変化する
「血色塔」×1 …… 赤く発光する塔を産み出す。塔が破壊されるか、一定時間が経過するまで範囲内のプレイヤーとモンスターは全ての色が赤色と黒色でしか認識出来なくなる 僭越ながら参加希望です
テンプレはこの様な形で宜しいでしょうか? >>117
だから、反応せずにスルーすればいいだろっつの
小学生かよお前 >>115
【参加歓迎します!
レス順は6番目になりますので、少々お待ち下さい】 俺の放った油の雨音が、クソうっとおしいコバエ共の羽音を上書きする。
薄っぺらな羽にべっとりと付着した油の重みで、ハエ達はゆっくりと高度を下げつつあった。
「やべーな、散開し始めやがった」
眷属たちが油にまみれたのを見て、ベルゼブブの触覚が蠢き、指示を出している。
それに従ってデスフライの群れはお互いに距離をとり、一網打尽を防ぐシフトを取り始めた。
着火コンボを警戒した――?ベルゼブブの戦闘AIにそんなアルゴリズムはなかったはずだ。
まるで生きているかのような――思考しているかのような挙動じゃねえか。
「クソ、とっとと着火を――マジかよあいつ」
肝心の着火役、レッドドラゴンの使い手である男子高校生は、あろうことかドラゴンの背に乗って飛翔していた。
その手に剣を握ってデスフライの群れの中を飛び回り、すれ違いざまに斬撃を見舞ってる。
炎精王の剣自分で振るう奴初めて見たわ。
あいつだけなんか世界観違わない?
ていうかおもくそデスフライにタゲられてるけど死ぬんじゃねえのアイツ。
助けに行くか、行かざるべきか。
俺が逡巡している間に、駅のホームに更に飛び出す影があった。
ホームのど真ん中に出現したのは……カカシ。人間大のサイズで、頭に被ったカボチャの奥に生命の光を感じる。
新手の魔物――じゃねえ!ありゃ『スケアクロウ』、野生じゃ絶対に出逢うことのないモンスターだ。
課金者の中でも更に他者の追随を許さぬ額を支払った者に与えられる称号――『石油王』。
スケアクロウはそんな石油王だけが手にすることのできる、高額課金特典なのだ。
「あのコラボ金払った奴いたんだ……」
スケアクロウって確か、グッズのフルコンに加えて胡散臭いウイルス対策ソフトの契約までしなきゃならねえ、
情弱一本釣りみてーな特典配布条件だったはずだ。一回試算してみたけど俺の月給軽く吹っ飛ぶ額だぜアレ。
一体どこのアホが二ケタ万円このクソゲーに費やしたのか、その間抜け面を見てみてえ。うぷぷ。
高校生二人組はそれぞれレッドドラゴンとスライム(笑)だから違うとして――
「……あいつか」
女子高生の後ろにいつの間にかもう一人現れていた。
ツナギにタンクトップと、いかにも農作業の最中に飛ばされてきましたって格好の女。
まあ俺もウンコの最中に飛ばされたクチだからアレだけど。
あれが『石油王』?なんか若くない?農家ってそんな儲かるの?
この戦いが終わったら俺、脱サラしようかな……。
さて、戦場に闖入したスケアクロウだったが、カカシらしくその場を動こうとしない。
代わりに耳に障るケタケタ笑いがホームに響き渡り、デスフライ共の目がそっちに向いた。
群れのど真ん中で剣振り回してる馬鹿を放置して、一斉にスケアクロウへと襲いかかる。
……すげえ、一発で全部のタゲ取りやがった。
回復力に優れる耐久型のスケアクロウは、こうやって敵のヘイトを一身に集めて耐えまくるタンク的な運用に向く。
回復上昇のスペルも組み合わせれば、他のPTメンバーが完全フリーで長時間火力を発揮できるって寸法だ。
そしてデスフライ共のヘイトを集中させたおかげで、奴らが一箇所にまとまってる。
「……今だ!」
>「纏めて薙ぎ払え……〈燃え盛る嵐(バーニングストーム)〉!!」
「いやブレス吐けよブレス。何のためのドラゴンだよ」
俺の届くわけもない突っ込みも虚しく、ドラゴン乗りはスペルを発動。
着火するには無駄にでかい炎の嵐がデスフライ共を呑み込み、一瞬で消し炭へと変えた。
だが結果オーライだ。ククク……せいぜい上級スペル無駄打ちしてろ。それで有利になるのはこの俺だ。 俺は油断なく他にデスフライの生き残りがいないことを確認。
これがゲームならデスフライのバフ欄を見りゃ一発で判別出来るんだが、俺の目には禍々しい蝿の王のご尊顔しか映らねえ。
……よしよし、デスフライは全滅したな。
ベルゼブブ本体も巻き添えにしてやれるかと思ったが、敵もやっぱりアルゴリズムの奴隷ってわけじゃないらしい。
巧妙に防御態勢をとって、着火コンボを耐え抜いてやがった。
だが所詮お山の大将、手下がいなくなりゃ奴は砂の上の城に過ぎねえ。このPTなら削りきれる。
「ヤマシタ、『月天弓』」
上空でレッドドラゴンと一騎討ちを始めたベルゼブブ目掛けて、ヤマシタが矢を射掛ける。
『月天弓』は元々弓系武器に備わってる飛行特効を更に倍加させて撃つ弓使いのスキルだ。
しかしこれ、誤射したらどうなるんだろうな。
ゲーム上はオートターゲットだから味方に射撃が当たることないんだけど。
と、しばらく援護射撃を続けていると、レッドラがベルゼブブに弾き飛ばされて距離を離す。
それを契機として、ベルゼブブの複眼がこっちに向いた。
あれ?もしかしてヘイトこっち向いてね?
自問に自答するより早く、ベルゼブブが俺とヤマシタ目掛けて何らかのスペルの詠唱を始めた!
「タゲ剥がれてんじゃねーかクソタンク!!」
なにやってんすか石油王さんヘイト取るのやくめでしょはやくして!
だが一旦スペルの詠唱に入ったモンスターがターゲットを変えることはない。
やべーのは、この辺に身を隠すような遮蔽物は一切ねーってことだ!
あの挙動は確か『闇の波動』、馬鹿みてーな超威力の前にリビングレザーアーマーなんざ紙だ。
なんぼバフ使ったところでバフごと消し飛ぶだろう。
……なーんてな。
デスフライが全滅した時点で、ベルゼブブが『闇の波動』を使ってくるなんてことは予想済みだった。
なんで分かったかって?Wikiに書いてあったからだよ!!
廃人の先駆者共が何匹もパートナーを使い潰して得た情報の殆どは、攻略Wikiで共有されている。
こうしたレイドボスの討伐に参加する時は予習しておくのが前提とされるほどだ。
俺の方にタゲ跳ねてんのはちょっと予想外だったが、正味問題はねえ。
ククク……闇の波動を無力化するスペルもちゃあんと用意済みよぉ!
>「ポヨリンA! 『しっぷうじんらい』!」>『ぽよよっ!!』
しかし、俺がスペルを選び終えるよりも女子高生の反応の方が早かった。
パートナーのスライム――ポヨリンとかいう捻りのないネーミングのそいつが、猛然とこっちに走ってくる。
「ぐええ!」
何らかのスキルの影響か、どちゃクソ素早いスライムがヤマシタを直撃し、跳ね飛ばす。
そんで跳ねられたヤマシタは俺にぶち当たって、一人と一体仲良く荒野の上を転がった。
「なにすんだ軟体生物!」
受け身とか一般リーマンの俺にとれるはずもなくて、悪態と咳込みを交互にしている間に、闇の波動の詠唱が終わった。
オイオイオイ死ぬわ俺――と恐怖よりも先に諦めが来る中で、ポヨリンが波動に飛び込んで行くのが見えた。
それ意味あるぅ?スライム如きが肉壁になったってスライムごと掻き消されるだけだろ!?
>『ぴき―――――っ!!』
だが俺の絶望的な予測に反して、スライムは健闘した。
スライムの真芯を捉えた波動は、あろうことかスライムを貫通できずにそのまま威力を使い果たしたのだ。
一方波動を直撃したポヨリンが目を回しながら俺の傍を跳ね転がる。
えっマジで?なんで生きてんのこいつ。
俺はおそるおそるそのぷるんとしているであろう表面を指で突付いた。突き指した。 「こ、このスライム……硬い!」
いやマジでクソ硬え!なにこれどういう鍛え方したらこうなんの。
なんぼスペルで支援したところで、スライムが相殺できる威力じゃねえだろ闇の波動って!
……これはアレか、愛の為せる業なのか。
むかーしポケモンがまだ全盛期だった頃、嫁ポケとか言って弱いポケモンを愛で運用すんの流行ったもんな。
そういう趣味ビルドを否定するつもりは一切ないが、ここまで極まってるといっそ引くわ。明神ドン引きですぅ。
とは言え、助けられたのは確かだ。そこは感謝するほかあるまい。
なにせスペル一回分温存が出来た。馬鹿め……自分の首を締めているとも知らずに……!
「おきろポヨリンA、お前の飼い主が頑張ってんぞ」
失神しているスライムの頬(?)をペチペチ叩きながら、俺も立ち上がる。
大技を放ったあとの硬直はしっかり再現しているらしく、ベルゼブブからの追撃は来ない。
畳み掛けるなら今がチャンスだ。
>「ポヨリンB! 『てっけんせいさい』!!」
女子高生もそいつを理解しているらしく、ポヨリンBとかいうこれまた安直なネーミングのスライムをけしかけている。
うおっ、殴った!スライムが拳の形に変形してベルゼブブを殴り飛ばした!クリティカルだ!
防御力だけじゃなくて攻撃力も振りまくってんのか……愛のちからってすげー。
「捕獲は……まだ出来ねえか」
スマホの捕獲コマンドはまだ使用可能状態になってなかった。
ある程度HPを減らさないと捕獲自体不可能って仕様は、相手の残り体力を推し量る指標になる。
まだまだベルゼブブ君元気いっぱいってことっすね。
仕方ねえ、せっかく温存できたことだしもう一枚くらいカード切ってやろうじゃねえの。
「ヤマシタ、『曳光弾』」
革鎧の射掛ける矢に、線香花火のような光が灯る。
光る矢は空を切って飛び、スタン中のベルゼブブの肩に突き刺さった。
弓使いのスキル、『曳光弾』。矢や弾に魔力の光を灯し、着弾した敵はあらゆる攻撃が当たりやすくなる。
ゲームのシステム上では『着弾対象をターゲットとした全ての攻撃に命中補正』とかいうややこしい仕様だが、
この戦いにおいてはもっと分かりやすい効果を見込むことができる。
「『迷霧(ラビリンスミスト)』――プレイ!」
スペル発動、ベルゼブブを中心に乳白色の濃い霧が発生し、奴の複眼から視界を奪う。
同時に味方の視界も奪ってしまうというクソ迷惑な仕様だが、正味問題はねえ。
霧越しにもはっきりとわかる、突き刺さった曳光弾の光がベルゼブブの居場所を教えてくれる。
「迷霧の中にいる敵はクリティカル発生率が上がる!畳み掛けるぞ!」
ヤマシタ『乱れ打ち』スキルで矢の雨を降らせながら、俺は声を上げた。
このまま順調に削れて、捕獲可能になった瞬間、コマンドを実行してやるぜ。
【迷霧のスペルでベルゼブブの視界を奪いつつ、曳光弾で味方からは丸見えにする支援】 【ウィズリィちゃん、メルトちゃん、よろしくです!!!!!】 >>106
【こんばんはーよろしくお願いします
ウィズリィさんはブレモン内のモンスターということで
ゲームだと同一モンスターは同じグラフィックですが、ウィズリィさんはゲームグラフィックと同じでパッと見で「魔女術の少女族だ」って判りますでしょか?】
>>107
【こんばんはーよろしくお願いします
実はソシャゲってツムツムくらいしかやったことないので勉強になります。
リセマラとかシャークトレードって初めて知りましたわ
登場シーンに服装などの描写を入れていただけるとありがたい〜
キャラクターが見てわかる部分なので絡み所にもなりやすいのでよろしくですわー】
【色々増えてきそうなのでメモ代わり】
【基本四属性】
火→風→土→水→火
光と闇は相性なし
スケアクロウは光‐土て感じやね
【ディレイ】
アクティブタイムバトルでターン制ではなくゲージが満タンになると行動ができる
カードの出せるスピード制限
●強力なカードほど出すのに時間がかかる?
●カードの種類関係なくディレイが発生?
【フレンドリーファイアー】
今回のような着火による延焼など、物理現象については敵味方区別なく
スペルカードによる魔法現象については
1)敵味方区別なく
2)フレンド登録し共闘状態だと効果なし
というようにカードによって効果範囲を個別に決めていこうかという感じで考えております
状況:廃墟状態の駅
ホームにてベルゼバブと戦闘中
ベルゼブブ:眷属全滅、真一に牽制、明神に狙いを定め闇の波動発動
:ぽよりんAに間に入られ受けられる
:ぽよりんBの鉄拳制裁によりスタン状態に
:曳光弾+迷霧でベルゼブブ中心に濃霧発生も洩光弾により攻撃は当てられ易い
真一:上空、グラド騎乗、炎精王の剣装備
:【燃え盛る嵐】にて着火コンボ達成しデスフライ全滅
:ベルゼブブの唾液を【ファイアーウォール】にて防御
なゆた:ぽよりん分裂・ぽよりんA山下の盾となって闇の波動を受ける
:ぽよりんB・鉄拳制裁にて攻撃、スタン状態に
明神:石油王みのりを見て、死亡フラグを立てる
:着々とベルゼブブ確保にむけ戦略を立てる
:ベルゼブブの命中低下、味方の命中上昇状態にする
:乱れ打ちで矢の雨を降らせる
【修正点などありましたら教えてやってくださいな
レスは明日にでも投下しますのでしばしお待ちを】 >>125
【よろしくお願いしまーす。
ウィズリィはパーソナリティとして一般的な魔女術の少女族から離れてるわけではないので、見た目で分かると思います。
あと、多分スマホの画面を見るとモンスター名が表示されたりとかそういう何がしかはあるのではないかと。】
【それと、うっかり何枚かのカードのルビを振り忘れていたので、ここで追記しておきます】
「魔に触れぬ誓いの槍」→「「魔に触れぬ誓いの槍(ブリューナク)」
「城塞」→「城塞(フォートレス)」 「……あれは……」
廃墟に先客がいる。なゆたは右手で額に庇を作り、目を眇めて注視した。
人だ。やはり、先ほど人がサンドワームに襲われているように見えたのは見間違いではなかったらしい。
現在サンドワームの姿がない辺り、きっと自分と同じようにモンスターを召喚して窮地を脱したのだろう。
その証拠に、人影の傍らに真紅のドラゴンが寄り添っているのが見える。
レッドドラゴン。レアキャラだ。竜の谷というエリアに棲む、強力なモンスターである。
最初期に回せるガチャでもごく低確率で排出されるらしく、リセマラをする輩は多いが、出たという報告は滅多にない。
そんなレアキャラを持っているプレイヤーといえば……。
「んっ? んんん? ……んんんんん〜〜〜〜っ???」
どこかで見たことのある学校の制服と、どこかで見たことのあるウルフカット。
学ランの胸元から覗く、赤いシャツ――。
>あれはひょっとして人じゃないか? おーい、そこのアンタ! ちょっと待ってくれー!!
「う……、うわ――――っ!! 真ちゃあ〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!」
聞き覚えのある、いや、聞き間違えようのない声がこちらへ向けて投げかけられる。
なゆたは思わず両手を大きく上げ、ぶんぶんと振って叫んだ。ついでにポヨリンよろしくぴょんぴょん跳ねる。
相手は幼馴染の赤城真一に間違いない。お隣同士、親の代から家族ぐるみの付き合いをしてきた間柄だ。
彼が中学時代、荒れに荒れていた頃は少しだけ付き合いも疎遠になっていたが、今はその関係も修復されている。
なゆたは息せき切って真一へ駆け寄った。
「真ちゃんもこっち来てたんだ! あ〜……でも当然か! でもまさか、ここで真ちゃんに会えるなんて!
よかった〜〜〜〜〜〜!!!」
なゆたは嬉しそうに駆け寄ると、ためつすがめつ真一の全身を見た。紛れもない本物だ。
「ねえ、真ちゃん! 真ちゃんはどうしてこんなところへ飛ばされちゃったのかわかる?
わたしは生徒会室でアプリ起動させたら、いつの間にかここにいたんだ。で、サンドワームに襲われて、
でも絶体絶命ってときにこのポヨリンが助けてくれて、あー、ここはブレモンの世界なんだなーって。
けど、どうやってわたしがここへ来たのかは全然わからなくて――」
知った顔と会えた嬉しさからか、マシンガンのようにまくしたてる。
それからしばらく、とりあえずの情報交換をするものの、やはり結果は『わからん』という一点しかなかった。
廃墟の崩れた壁に腰掛け、白いニーハイソックスに包んだ両脚を交互にぱたぱたさせながら、なゆたは眉をしかめる。
「んー……やっぱり、真ちゃんにもわかんないか……。手詰まりだなぁ」
はー、と小さく息をつき、ポヨリンに視線を向ける。
ポヨリンは最初いかついレッドドラゴンのグラドを警戒していたが、少し経つとすっかり慣れたのか足元に纏わりついている。
敵意のないモンスターに対しては人懐っこい性格なのだ。 >「五穀さん、ナイス! あとでプレゼントボックスにアイテム贈っときますね! 回復系の!」
「はいな、おおきにさん。でもみのりでええよ〜」
なゆたの言葉に応えながら返事を返し、戦況を見守るみのり
ゲームではない、実際に目の前で繰り広げられる戦いに緊張はしていたが、戦いそのものはゲームと同じように順調に進んでいる。
それゆえに緊張よりも楽しさの方が若干上回っており、こうして余裕をもって眺めていることができたのだった
そして何より、最もみのりを楽しませているのが真一となゆたであった
>「纏めて薙ぎ払え……〈燃え盛る嵐(バーニングストーム)〉!!」
>「真ちゃんったら、考えなしにあんな大技使っちゃって……」
油まみれになり密集したデスフライに、上級スペルを使っての着火
なゆただけでなく、離れた明神もシンクロしたかのようにツッコミを入れてしまう所業なんだが
「ふふふ、元気があってええやないの、かぁいらしいわ〜」
と、みのりは面白そうに笑いをもらすのであった。
元よりグラドに騎乗して戦うなどという行動に出ている時点で、真一に対する評価は戦略的、理論的な行動は期待できない、となっている
故に今更着火にわざわざ上級スペルを繰り出しても驚きも呆れもしない。
それよりも、先ほどのやり取りからのなゆたの反応がかわいく思えてしまうのだ。
(世話焼き女房と、まだお子様な男の子って感じかしらぁ?
甘酸っぱいわ〜
こういうの見ていると、ついついつつきたくなっちゃうのは悪い癖やねえ)
などと思いを馳せるゆたの目に映るのは紅蓮に染まる駅のホーム
炎に包まれたデスフライは、身を焼かれながらもイシュタルへの攻撃を続けている
そしてイシュタルもまた燃え盛りながらデスフライへの攻撃を続けている。
スケアクロウのイシュタルはトップクラスのHPと回復力を誇るが、反面防御力や回避そして攻撃力はないに等しい
例えデスフライ相手であってもダメージは一桁あるかどうか
それでも攻撃を続けるのは、ダメージが狙いなのではなく被ダメージが狙いだからだ。
攻撃をする瞬間というのは攻撃をされやすく、最も脆い瞬間である。
そう、ともすればカウンターを受けるからだ
本来ならば避けるべき事態であるが、バインドを目的とするイシュタルにとっては累積ダメージを上積みする為の戦略であった。。
更に炎がデスフライだけでなくイシュタルも焼いているのは幸運だったといえよう。
これならばあと一つ大きな攻撃を食らえばベルゼブブですら倒しきるまでにダメージは累積されるだろうから。
しかし、その思惑は大きく外れることになる。
眷属を盾に紅蓮の炎を凌いだベルゼブブが真一に牽制の唾液を飛ばし、狙いをリビングレザーアーマーのヤマシタに定め、闇の波動を発動したのだ。
「はうぅ〜、タゲが外れてもうだわ〜おかしいなぁ」
ベルゼブブの思いがけない行動に驚きの声とともにあたりを見回す みのりのバインドデッキは累積ダメージを跳ね返す事を旨としている
【累積】というところがポイントであり、回復しながらダメージを食らい続ける事でどんどん強力な攻撃力を蓄えていけるのだ。
その強力さに注目されがちだが、この戦略の本当の要所はヘイトコントロールにある。
ダメージ【反射】であるから、そもそもダメージを食らわなければいけない
エネミーが複数いるプレイヤーの中で誰に攻撃をするかはランダムではなくヘイト値によって決定されるのだ。
ヘイト、すなわち憎しみ
判りやすく言えば一番ムカつく奴を殴り倒す!というものだ
ヘイトにも様々な種類があり、ヘイト値をためやすい順に
近接ヘイト:パーソナルスペースに入られるとイライラするよね
視覚ヘイト:目につく奴にイライラ、目立つ奴は特にイライラ
ダメージヘイト:殴られれば殴り返す、基本ですよね
回復ヘイト:せっかく殴ったのに回復されたら台無しって怒るよね
デバフヘイト:邪魔されるとうっとおしいよね、まずこいつから排除しようってなるよね
挑発ヘイト:イラつかせるためだけの技術で他に何の影響もないけどとにかくイラつかせるよ
エネミーによって優先順位が変わるものもあるが、基本的にこういった要素で決定づけられる。
他にも、イラつきまぎれに何か蹴飛ばそうとした時、硬そうなレンガより空き缶の方を蹴るように、属性や防御力などの弱いものを優先的に攻撃をする傾向がある。
逆にムカつく相手を殴ってすっきりするように、ダメージを与えられることでヘイト値が低下したらい、他にもヘイトカットのスキルやスペルはあるのだが、ここでは割愛
このような要素を加味してみのりのバインドデッキはイシュタルをパートナーにすることで絶大な効果を誇っていたのだ。
敵のど真ん中に出現し近接ヘイトを獲得
案山子という視覚的に注目されやすい特性で視覚ヘイトを獲得
持ち前の回復力と「地脈同化(レイライアクセス)」による継続回復効果
そして最初に響き渡った笑い声は挑発効果のあるイシュタルのスキル『不協響鳴(ルーピ―ノイズ)』
更に低防御力と属性による不利
これだけのヘイト獲得手段を講じていれば、被ダメージによるヘイト低下も問題なくベルゼブブのターゲットを固定し続けられるはずであった。
にもかかわらずターゲットがヤマシタに移ったのは、ブルゼブブに指示を送った者がいるのかと周囲を見まわさずにはいられなかったのだ。
だがあたりにそれらしい人物はいなさそうで、ふぅと、一息ついて視線を戦場へと戻す。
指示されていないのであれば、生物としてのベルゼブブの知性という事なのであろう。
ならば知性を掻き消すほどのヘイト稼ぎか、他の戦略を考えねばならない、と感じつつ目の前の戦いに集中する。 みのりが思いを巡らせている間に戦いは佳境に入っていた
なゆたのコンボが発動し、闇の波動は防がれ、ベルゼブブはスタン状態に。
そこへ畳みかけるようにヤマシタの矢が叩き込まれている。
「闇の波動欲しかったけど、全部が全部ゲーム通りとはいかへんわねえ。
まだ足りひんやろけど頃合いという事で〜収穫祭の鎌(サクリファイスハーベスト)」
スペルが発動し、イシュタルの手に巨大な黄金の両手持ちの鎌が現れる。
鎌を握りしめイシュタルがベルゼブブに向かい進みだす
移動した時点で継続回復の地脈同化(レイライアクセス)の効果を放棄する事になる
既に十分回復しているのと、もはやここから先回復の必要がない、すなわち決着をつける事を表していた。
後はベルゼブブの動きを封じ確実に当てるために荊の城(スリーピングビューティー)を用意していたのだが、明神とヤマシタがそれを不要としてくれた。
ベルゼブブを中心に濃い霧が発生しているが、曳光弾により命中補正がかかり動きを封じる必要がなくなっていたのだ。
「ほんにやりよるねえ。おおきにさん〜それでは行かせてもらいますえ〜」
明神に声をかけた直後、イシュタルが飛びその大鎌を振るう!
クリティカル状態でのデスフライの総攻撃を受け、更に燃え盛る炎にまかれた累積ダメージがクリティカル状態でベルゼブブを直撃したのだ。
大きく切り裂かれ、体液をまき散らしながもベルゼブブは死ななかった。
「はぁ〜やっぱり闇の波動分足りひんわねえ。
まあしゃあないし、なゆたちゃんの彼氏君に花持たせてあげましょか〜」
ぽよりんコンボにヤマシタの乱れ打ち、そしてイシュタルの累積ダメージ反射はベルゼブブに大ダメージを負わせた。
HP残量的には瀕死状態で、捕獲コマンドも使用可能となっている状態であろう。
だがそれでもベルゼブブはレイドボスなのだ。
残量的には1割を切っているが総数が膨大なため、1割であってもそれなりの数値になっているはず。
そして次を託す真一だが、みのりの中ではかなりの低評価。
例え属性的に相性がよい炎属性のレッドドラゴンを使っているとはいえ、このままトドメを任せてベルゼブブを沈めきれるとは考えていないので
「あのお兄さんのおかげで温存できたスペルカード一枚分サービスですえ〜
太陽の恵み(テルテルツルシ)!
さて、効果はフィールドを火属性にするスペルでおすし、あとはおきばりやす」
みのりの声は藁人形を通じて真一に届くであろう
スペルカードが発動し、夜空に目映い光球が出現し、当たりを照らし出す。
効果はフィールドを火属性にし、火属性のモンスターやスペル、スキルの強化をもたらすのであった
【累積ダメージ反射にてベルゼブブを攻撃、大ダメージを与える】
【フィールドを火属性に変えて支援】 >>126
【ありがとうございましたー
どんな接触になるのか、楽しみにしておりますよー】 次の人
遅れるなら遅れる、抜けるなら抜けるで
ちゃんと合図出してね
後ろがつかえてる
社会はそんなに甘くないよ 大人は勝手だ。
「ウィズリィ、お酒を飲んではだめだ。大人になってからにしなさい」
「ウィズリィ、あなた、そんな難しい本を読んでいるの? 子供らしく絵本でも読んでいればいいのに」
「ウィズリィ、言っただろう? これは苦みの分かる大人の味で、お前にはまだ早いって」
大人は勝手だ。
「ウィズリィ、お前は子供なんだから向こうに行っていなさい。私たちは大事な話があるんだ」
「ウィズリィ、あなたが背伸びしたがる歳なのは分かるわ。でも、これは大人のお仕事なの」
「ウィズリィ、このバカ娘! 聞き分けがないにも限度がある! 次にこんな事をしたらお前をタンスにしまってしまうからな!」
大人は勝手だ。自分勝手だ。
誰もかれもが自分の権威と既得権益を守るためだけに動いている。
かつて読んだとある物語では、大人たちはみんな死んで、少年少女が国の最後の希望、というような筋だった。
……本当にそうなってしまえばいいと思った事も、一度や二度ではない。
「ウィズリィ」
声が響く。他の誰の声とも違う、厳かなトーン。
そして、声とともに、わたしの眼前に現れる、一つの人影。
『王』だ。わたしは思わず居住まいを正した。
「ウィズリィ。我が敬愛する森の魔女よ。教えておくれ……私の国は、あとどのぐらいもつ?」
不確定要素が多すぎてまともな計算もはばかられるところだったが、概算では現状維持でよくて5年。おそらく実際はその半分以下。
そう伝えると、『王』は悲しそうな顔になった。
「ありがとう。……辛い言葉を言わせてしまったね。すまない」
首を振って応える。単なる事実を伝える事に、辛い事なんてないから。
「いや、それでも謝らせてほしい。これから私は君に、この質問とは比較にならないぐらい過酷な仕打ちを強いるのだから。
ウィズリィ、我が敬愛する魔女よ」
『王』がそう言った瞬間、気が遠くなっていく感覚に襲われる。視界がぼやけ、『王』の姿が薄れていく。
言葉に答える事も出来ないまま、わたしの視界は完全に暗闇に呑まれていった。
最後に、『王』の言葉だけが響く。
「私は、君に……」 「……夢……?」
どうやら、少々うたた寝をしてしまっていたらしい。二、三回まばたきをして、寝ぼけ眼をまぶたから追い払う。
真っ先に視界に映るのは、シンプルな装飾ながら設えの良い革張りの椅子。
私が今現在座っている(そして眠っていた)椅子とほぼ同じデザインのそれは、現在は空席である。
もちろん、そこに『王』が座っているという事は……座っていたという事も、ない。
私が『王』とあの会話をしたのは、もう2日は前の事になるのだから。
「……ふむ」
軽く体を動かし、少々のこわばりをほぐす。
この感触からするとそう長くは眠っていなかったようだが、さて。
「ブック」
わたしの最高の相棒である、本の姿をした魔物の名を呼ぶ。
言わずとも傍に控えていたのだろう。彼……彼女かもしれないが、性差のない種族に対しては無意味な呼称だ……は、即座に私の目の前に飛んできた。
「わたしが『これ』に乗ってからどれぐらい経っているかしら」
分かる?などと確認する必要はない。彼に分からないことなどないのだから。
今回も、彼は即座に回答する。
彼のページがひとりでに開き、その上に円状に小さな火の玉が12個並ぶ。
彼が知る知識の一つ、日の出から次の日の出までを24分割する、時の表記方法。
12個の火の玉のうち、二つの色が赤から青に変わった。……2単位分寝ていたという事だろう。
「思ったより疲れていたようね……しかも、それでまだ到着していないなんて。
『これ』の乗り心地は悪くないけれど、時間がかかるのは考え物ね」
いいながらわたしは立ち上がり、『これ』の内部を見渡す。
わたしが座っていたのと同じ椅子が、いくつも向かい合うように配置されている。
それほど高くない天井からは、小ぶりながら悪くない趣味のシャンデリアが下がり、室内を照らす。
ある一点に目をつぶれば、ここは王宮の応接室だ、と言っても通るかもしれない。
部屋の端にある窓からの景色が、流れるように通り過ぎていく事さえ、気にしなければ。
「……慣れないわ」
同意する、とでもいうように、ブックが火の玉を消し、自らを閉じた。
* * *
種を明かそう。『これ』とは、わたしの『王』が用意した乗り物なのだ。
魔法機関車、と『王』は呼んでいた。線路、というあらかじめ用意した鉄の道にそって、大量の荷物や人員を運搬できるからくりなのだという。
普段は『王』自らが乗り込み、あちこちに視察に赴くのだそうだ。
まさかそれにわたし(とブック)が乗る事になるとは夢にも思っていなかったが、この程度で驚いていては始まらない。
わたしがこれから魔法機関車で迎えに行くのは、博識であるわたしやブックでも一度も遭遇したことのない相手だという。
『異邦の魔物使い(ブレイブ)』と呼ばれる彼らを迎えに行く事が、さしあたってわたしがこなすべき任務なのだ。
そう、あくまでさしあたっての。
「……君に世界を救ってほしい、か。まったく、買いかぶられるのも考え物ね」
あの日の『王』の言葉を思い返す。
わたしが対応するべき最大級の謎。
世界の危機。
実感はない……が、いずれ嫌でも湧いてくるだろう。 気が付けば、窓の外の景色はいつのまにかすっかり赤茶けた荒野になっていた。
『赭色(そほいろ)の荒野』だ。つまり。目的地は近い。
何事もなければよい、という期待は早々に裏切られた。
夜空に太陽が浮いている。スペルの効果だ。
夜を昼にしようという斬新なリフォームを試みたバカがいるのでなければ、おそらく何らかの戦闘行為が行われているのであろう。
見れば、緩やかなカーブの先に見える建物の周囲で、何か大きなものが飛び回っている。
モンスターだ。敵か味方か通りすがりか、までは判別しきれないが、いずれにせよ邪魔だ。
いざとなれば、わたしも対応できるだけのスペルは貯蔵しているが……まずは穏健な策を取るべきだろう。
つまり……。
部屋の隅に用意されていた伝声管を開き、声をかける。
「運転手、聞こえるわね。目的地の方に障害物が多数あるわ。
最悪わたしが対応するけれど、まずは注意勧告をお願い」
しばらく後。
魔法機関車の警笛が『赭色の荒野』に響き渡った。
【ウィズリィ&ブック:魔法機関車内で到着待ち】
【魔法機関車運転手(詳細不明):警笛を鳴らす】 【お待たせしましたー。遅くなってごめんなさい!】
【ウィズリィ視点で出しようがないので書かなかったのですが、文中に出てきた『王』はスノウフェアリーが言っていた王様と同一人物のつもりです。
もちろん確定事項ではないのでひっくり返しても構いません】
【次はメルトさんでしょうか。よろしくお願いします!】 青白い蛍光灯の明かりに照らされたマンションの一室。
赤いランドセルを背負った少女が、連続ドラマを眺めながらソファに横になっている母親の背に、何事かを語りかけている
顔をくしゃくしゃにして涙を流しつつ声を紡ぐその様子と、泥の跡の様な物が付着したままの服装から、恐らくは少女の身に学校で何事か……良からぬ事があったのだろう
えづきながら語る少女。その訴えかけに、けれど母親は適当な相槌とドラマの滑稽な場面への笑い声で答えている
そのやり取りは数分の間に渡り続いたが
「それで……あのね。お母さん、今日、学校に行ったら友達に……笑われたの。お化けみたいだって」
「ああっ、もう!なによ、さっきからうるさいわね!ドラマが聞こえないでしょ!?」
ドラマがコマーシャルに入った瞬間に、怒りで顔を歪めた母親の怒鳴り声で中断する事となった
大声を向けられた少女はビクリを身を竦めたが、それでも母親に縋り付きたかったのであろう。再度口を開こうとするが
「でも、お母さ――」
「さっさとその汚れた服洗濯機に入れて自分の部屋に戻りなさい!汚いのはその【顔の傷痕】だけにしてよ!!」
……返されたのは怒声。少女の心は、母親の娯楽への興味により封殺されてしまった
先程まで滂沱の如く流していた涙も、まるで水源が枯渇したかの様にピタリと止まり、呆然としたまま浴室の洗面台の前まで歩を進め、少女は洗面所に設置された姿見に映った自分自身を眺め見る
肩までの長さの黒髪に、少し赤みがかった色の瞳。日焼けしていない白い肌
そこには、いつも見慣れた少女自身の姿が写っているが……ただ一つ。少女が【事件】の前と後で変わってしまった物があった
それは、長く伸ばした前髪で隠した、右顔
その上を縦断する醜い切傷の跡
右手で前髪を掻き揚げながらその傷跡を眺め見た少女は、小さく、泣き出しそうな歪んだ笑みを浮かべ……
――――……・・ 「う、ぁ――――な、何事です!?」
突如として響いた轟音
爆轟の如きそれを耳に入れた少女――【佐藤メルト】は驚愕の声をあげつつ飛び起きる事となった
「ま、また……! 地震ですか?ガス爆発ですか!?」
慌てて寝かせていた体を持ち上げるメルトだが、そんな事はお構いなしとばかりに先程彼女を叩き起こした轟音は断続的に続いている
混乱したまま周囲を見渡すも、そこは先ほどまで自身が見ていた青白い微睡の世界ではなく、目に写るのは、所々崩れた石壁により囲まれた見知らぬ部屋
当然の如くメルトもランドセルなど背負ってはおらず、着ている服は黒色のパーカーと同色のスキニー
そして「ラーメンライス」と筆文字でプリントされた白の謎インナー……彼女が中学校に通える年齢になってから愛用している部屋着であった
夢と現の境を振り切れぬまま、暫しの間、継続して鳴り響く轟音や爆音に振り回され、手を振って見たり蹲ってみたりと混乱を続けていたメルトであるが、
ふと、自身が現在潜んでいる部屋……線路が通る廃墟の中に有る、例えるのであれば駅長室とでもいうべきその場所の、崩れた壁の隙間から飛び込んできた風景を見て
空に座する蠅の王【ベルゼブブ】の姿によって、ようやく混乱を振り解く事に成功した
「……うわ、思い出しました……最悪、です。やっぱり夢じゃなかったんですね、コレ」
そして思い出す
自身が突如としてこの赤錆色の世界に放り出された事を
自身がプレイをしていた【ブレイブ&モンスターズ!】に登場する魔物、蠅の王【ベルゼブブ】に酷似した怪物に追われていた事を 遡る事数時間前。ある事情により、登校拒否の半引きこもりと化していた彼女がこの世界に落とされたのは締め切った自室で【ブレイブ&モンスターズ!】をプレイしていた時の事であった
ゲームのストーリーモードを進めたり素材集めをする訳でもなく、最弱レベルの雑魚モンスターであるレトロスケルトンをパートナーに、業者すら未発見のバグを利用したハイレベルのレアカードの増殖を行っている最中
一度目の増殖を成功させたそのタイミングで、瞬きをした瞬間に世界が切り替わっていた
切り替わり、目と鼻の先程の距離に眼前に蠅の王【ベルゼブブ】が鎮座していた
至近距離に高レベルのモンスター……昨今の糞ゲーですらあまり見ない、本来であれば致命的である状況の中でメルトが生き延びる事が出来たのは、殆ど奇跡といっていいだろう
まかりなりにも一日の殆どの時間をブレイブ&モンスターズにつぎ込む廃人と言って良い程の経験を積んでいた事で、ベルゼブブのモーションに対し異様な速度で反応、回避行動ができた事
回避した先が、赤い砂に塗れた急斜面であり、そこを転がりながら滑り落ちる事で、一時的にベルゼブブとの距離を取る事に成功した事
その二つの要因が、辛くもメルトの命を救った
当然の事ながら【近接ヘイト、視覚ヘイト、挑発ヘイト】この三つを完全に満たしたメルトをベルゼブブは獲物と定め、執拗に追跡を行ってきたが……運良くベルゼブブに殺される事無く、
逃げて逃げて逃げて、追跡を逃れ、廃墟の駅に逃げ込んだ事で事で気が緩み、そのまま意識を失い――――そして冒頭へ至ったという訳である
……つまり、真一達がここでベルゼブブに遭遇したのは、メルトが図らずもトレイン(モンスターを引きつけて他者に擦り付ける行為)を行った成果であるとも言えるのだが、それは誰が知る所でもない
「それにしても、さっきから響いてるこの轟音……戦闘音でしょうか? ――あっ。今の炎は確か【燃え盛る嵐】のエフェクトですね。なんか思った以上に物凄く燃えてる気もしますが」
一度大きく深呼吸をして、再度壁の隙間からベルゼブブの様子を眺め見るメルトだが、彼女はそこでベルゼブブの様子がおかしい事に気付いた
メルトを追跡していた時は泰然自若とした様子を崩さなかったベルゼブブが、殴られたかの様にふら付き、かと思えば突如としてその身が燃え上がったりしているのだ
暫く観察して、その炎の形状がスペルカードの一つと酷似している事を思い出したメルトは、
次いで現れた乳白色の霧とその中で輝く線香花火の様な発光を見て、ベルゼブブが【プレイヤー】と戦闘している事を確信する
これまで状況の掴めない中で逃げる事に精いっぱいだったメルトは、自分以外の他者の存在を感じた事でホッと息を吐こうとし……
けれど、直ぐに【プレイヤー】が友好的な人間とは限らないと思い至り頭を横に振った
ただ……それでも何もしない事は不安なのだろう、メルトは駅長室から恐る恐る歩み出て、
廃駅のホームの朽ちた看板の影から戦闘の様子を眺め見ていたが……そこでふと、彼女は己の懐に入っているスマートフォンの存在を思い出した
気を紛らわす手慰みなのだろう。ポケットに入れてあったスマホを取り出すと、
特に深く考えず、画面を良く確認する事も無く、何故かログイン出来ているブレイブ&モンスターズの『召喚』ボタンを作業的に押し 『カタタタカタカタ』
「……うぇえええええええええ!?」
眩い光と共に現れた、ガイコツ標本の様なモンスター
【レトロスケルトン】を至近距離で見る事となり奇妙な声を上げた
そして、そのタイミングで追撃とばかりに響き渡る大音量の【警笛】
限界まで張りつめた緊張のなか、視覚と聴覚の双方に奇襲を受けたメルトは
「……きゅう」
数歩ふら付きながら歩いてから、廃駅のプラットホームのど真ん中で、再度その意識のブレーカーを落とした
夜空に輝く眩い光球に照らされたレトロスケルトン……メルトがパートナーとして選択していたそのモンスターは、
未だ続く戦闘と、情けなく倒れた自身のパートナーを中身のない虚空の目で見比べて、
まるで困った人間の様に骨しかない指で頭蓋骨をポリポリと掻いた
【トレインしたり覗いたりのあげくに、特に何も成し遂げる事無く、誰かと遭遇する前に気絶】 青白い燐光を放つ満月の下で、蝿の王との激闘は続く。
一瞬の攻防の後、素早くグラドと距離を取ったベルゼブブが次に狙ったのは、こちらに向けて矢を射かけるリビングレザーアーマーだった。
真一はゲーム内でベルゼブブと戦ったことはなかったが、広げた羽を震わせるその挙動には、ピンと来るものがあった。
「――闇魔法か! おい、そこのアンタ。さっさと逃げろ!!」
真一は下方から援護するサラリーマン風の男に、慌てて声を掛ける。
先程はその助けによって、デスフライの群れを一掃することができたものの、彼のパートナーは脆弱な革鎧の亡霊だ。
金属製の鎧を纏ったリビングアーマーと比べれば、防御性能も遥かに劣り、ベルゼブブのスペルをまともに受けてしまえばひとたまりもないだろう。
>「ポヨリンA! 『しっぷうじんらい』!」
>『ぽよよっ!!』
しかし、そんな真一の心配をよそに、彼らの前に立ちはだかったのは、なゆたのポヨリンだった。
一見ただのスライムだが、なゆたの異様なやり込みによって鍛えられたその強靭さは、真一もよく知っている。
ポヨリンは〈闇の波動(ダークネスウェーブ)〉の直撃を貰って吹き飛ばされるも、何とか耐え切ったようであった。
>「ポヨリンB! 『てっけんせいさい』!!」
>『ぽっよ……よよよ〜〜〜んっ!!』
更に分裂したもう一匹のポヨリンが、衝撃波を放って隙ができたベルゼブブを狙う。
スライムが拳の姿に変化する様は、こうしてリアルで見ると中々不気味だったが、攻撃力はお墨付きだ。
強烈な鉄拳がベルゼブブの横っ腹を見舞い、敵の巨体をぶっ飛ばす。
「よっしゃ、流石ポヨリンだぜ!」
間近でその一撃を見た真一は、思わず拳を握ってガッツポーズを決める。
いつもは煮え湯を飲まされ続けている相手だが、こうして味方として戦う分には、これほど頼りになる奴らも中々いない。 >「迷霧の中にいる敵はクリティカル発生率が上がる!畳み掛けるぞ!」
>「闇の波動欲しかったけど、全部が全部ゲーム通りとはいかへんわねえ。
まだ足りひんやろけど頃合いという事で〜収穫祭の鎌(サクリファイスハーベスト)」
だが、他の仲間たちも、なゆたとポヨリンに負けず劣らずの活躍を見せた。
ベルゼブブのメインターゲットに定められていたサラリーマンらは、ベルゼブブの体に光の矢を突き刺しつつ、スペルで濃霧を発生させる。
そして、その援護を受けたイシュタルは、先程まで回復に徹していた構えを解いて、今度は両手に大鎌を握る。
ユニットカードの〈収穫祭の鎌(サクリファイスハーベスト)〉。
今まで自分が受けたダメージを攻撃力に変換する武器であり、あれだけデスフライの的にされていたことを考えると、その火力の程は計り知れないだろう。
>「ほんにやりよるねえ。おおきにさん〜それでは行かせてもらいますえ〜」
イシュタルは大鎌を振り抜き、ベルゼブブの胴体を見事に斬り裂いた。
真一もこれで決着がついたものかと思ったが、これだけの攻撃を立て続けに受けて尚、ベルゼブブは健在だった。
「まだ息があるのかよ。……思ってたよりも、随分タフな野郎じゃねーか」
やがて濃霧は晴れ始め、徐々に視界がクリアになる。
ベルゼブブは腹から体液を溢しながら、相変わらずその両脚を擦り合わせて不協和音を鳴らしていた。
然しものベルゼブブといえど、もはや息も絶え絶え。このまま畳み掛けることができるだろうと真一が身構えたその時、不意にベルゼブブの周囲を紫色の光が覆い始めた。
――蝿の王の異名は、伊達ではない。
ベルゼブブはこうして瀕死の状態まで追い込むと、俗に言う「バーサク状態」へ変貌するのだ。
闇の魔力を纏ったベルゼブブは、その高度な知性を失う代わり、あらゆるステータスを大幅に上昇させて暴れ始める。
残り体力的には〈捕獲(キャッチ)〉のコマンドを実行することも可能なのだが、今のままではまず捕獲に成功することもない。
更に攻撃を与えてバーサクを解除するか、或いは状態異常にさせて、身動きを封じるなどの工夫が必要になる。
>「あのお兄さんのおかげで温存できたスペルカード一枚分サービスですえ〜
太陽の恵み(テルテルツルシ)!
さて、効果はフィールドを火属性にするスペルでおすし、あとはおきばりやす」
「よし、任せとけ! ……って言いたいところだけど、何かヤバそうな雰囲気だ。油断すんなよ、グラド!」
先程、五穀豊穣と名乗ったイシュタルの主人は、藁人形を通して真一に声を掛ける。
そして、彼女が行使したユニットカードによって、夜空に太陽が昇った刹那、最後の戦いが幕を開けた。 「――〈火球連弾(マシンガンファイア)〉!!」
まずは手始めに、真一は牽制とばかりに一枚のカードをプレイする。
小さな火球の礫を無数に放つスペルであり、一発一発の攻撃力は低いものの、このように弾幕を張るには非常に優秀な効果を持つ。
――だが、バーサク状態に入って運動能力を高めたベルゼブブは、それらの攻撃を容易く回避し続けた。
「くっ、なんつー速さだよ……! グラド、ドラゴンブレスだ!!」
回避機動を取りつつ、ベルゼブブは複眼をこちらに向けて狙いを定め、再び闇の波動を解き放った。
グラドは自身のスキルである〈ドラゴンブレス〉を以てそれを迎え撃ち、両者の攻撃は虚空でぶつかり合って相殺される。
〈太陽の恵み(テルテルツルシ)〉の効果によって、こちらの火力も上がっていたため、威力負けすることはなかったが、敵に命中しなければ意味がない。
そのようにして、繰り返し撃ち出される真一とグラドの攻撃を、ベルゼブブは立て続けに躱し、自身は酸の唾液と闇の波動で応戦する。
幾度にも渡る攻防は、互いに致命打を与えるに至らず、空中戦は更に凄烈の様相を呈した。
「このままじゃ埒が明かねえ。なんとか、あいつの動きを止めねーと……」
しかしながら、そう呟いた真一の脳内には、敵の意表を突くための“ある作戦”があった。
それはかなりデンジャラスな賭けでもあったが、既に意は決している。真一はグラドの頭に顔を近付け、その内容を耳打ちした。
グラドは驚きに一度目を見開くも、その直後に腹を括ったようで、対峙するベルゼブブを鋭い眼光で見据える。
『グァアアアアアアッ――――!!』
そして、グラドは激しい咆哮を上げながら、ベルゼブブを目掛けて突っ込んだ。
理性を失っているベルゼブブは、その雄叫びに挑発されるがままに羽を開き、こちらを迎え撃つ構えを取る。
突進するグラドと、それを迎撃するベルゼブブ。互いの体当たりが炸裂し、両者は共に倒れたかのように見えた。
――だが、蹌踉めくグラドの背の上には、既に真一はいなかった。
今の衝突で振り落とされただけのようにも思えるが、そういうわけではない。
「――貰ったぜ。真上がガラ空きなんだよ、ハエ野郎!!」
そう叫んだ真一の姿は、ベルゼブブの死角――その直上にあった。
ぶつかり合う寸前、真一は〈限界突破(オーバードライブ)〉のスペルを発動して身体能力を底上げし、グラドの背を踏み台に跳び上がっていたのだ。
パートナーの突撃を囮に使い、自分自身が飛矢となる捨て身の作戦。
しかし、あまりにも無謀に思えるその行動は、完全にベルゼブブの虚を突いた。
真一は裂帛の気合と共に剣を振り下ろし、唐竹の剣戟でベルゼブブの左翼を斬り落とす。
ようやく届いたその一撃を受け、ベルゼブブは悲痛な叫び声を響かせながら崩れ落ちた。
「今だ! ブチかませ、グラドッ!!」
更にダメ押しとばかりに、グラドは〈ドラゴンクロー〉のスキルを発動。
右腕に炎を纏わせ、自慢の鉤爪を渾身の力でベルゼブブの顔面に叩き付けた。
真一とグラドのダブルアタックが炸裂し、遂に決着の時は訪れる。
ベルゼブブの周囲を取り巻いていた紫色の魔力は消え去り、そのまま荒野へと墜落していく。
やがてHPが尽きるのは明らかだったが、完全に息絶える直前――バーサク状態が解除されたこの瞬間に捕獲を試みれば、或いは成功する可能性もあるかもしれない。
そして、同様に落下する真一をグラドが背でキャッチした直後――この荒野を切り裂くように、けたたましい警笛が鳴り響く。
異世界の少年たちを「王都キングヒル」へと導く“迎え”が到着した合図であった。
【真一とグラドのコンビ攻撃が決まりベルゼブブ撃破。
ちなみに汽車に乗って移動するシーンでこの章を締める予定なので、そのつもりで準備お願いします】 【>>真ちゃん殿
今のうちにベルゼブブの捕獲が成功したかどうかの判定だけ貰ってよかですか
次のターンで書く内容がガッツリ変わってくるゆえ】 >>148
【明神さんの捕獲コマンドが成功するか、先に判定して欲しいということでしょうか?
それならばこのスレは基本的に非GM制なので、そちらの判断で成否を決めてもらって大丈夫です!】 >>151
【了解でんがな
ほなこのレスのタイムスタンプの末尾が偶数から成功、奇数なら失敗で】 >>153 明神さん
【残念!では失敗ということでこちらも対応させて頂きますね。投下は月曜の予定なので少々お待ちくださいませ】 スライム、リビングレザーアーマー、スケアクロウ、そしてレッドドラゴンの波状攻撃によって、ベルゼブブが墜ちていく。
急造チームではあったが、近距離アタッカー二体にタンク、遠距離アタッカーと、編成的にはまずまずだ。
あとはヒーラーでもいれば、より一層強いパーティーになるだろう。
何よりこの異世界に放り出され、右も左もわからない状態でレイドボスに遭遇するという絶体絶命の危機。
それを乗り切ったというのは、まさに奇跡としか言いようがない。
……と。
(……あれは……キャプチャーの……)
どどう、と赤色の土煙を上げて荒野に墜落したベルゼブブへ向けて放たれた、一条の光。
それはモンスターを捕獲するときに見られる光のエフェクトだった。
ダメージを与えて弱ったモンスターは捕獲できる。――たとえ、それが強大な力を持つレイドボスだったとしても。
普通のゲームならNPC専属であろうモンスターをも捕獲できるというのが、このブレイブ&モンスターズ!のウリである。
光の飛んできた方向を見ると、サラリーマンがいるのが見えた。間違いなくあの男性が捕獲を試みたのだろう。
……しかし、その光は一瞬ベルゼブブを取り巻くも、すぐにパッとかき消えてしまった。捕獲失敗のサインだ。
なゆたはその時点で、サラリーマンに軽い不信感を覚える。
通常、多人数のプレイヤーが参加するパーティープレイにおいてモンスターの捕獲はご法度とされている。
なぜなら、モンスターは分け合うことができない。
素材収集目的の討伐の場合は、討伐した時点でドロップアイテムが全員に行きわたるが、捕獲は違う。
一人が捕獲に成功すると、他のプレイヤーは経験値以外は何も貰えず終わるのである。
よって、特定のモンスターを捕獲しようとする場合はフレンド募集の時点で『○○捕獲希望』とメッセージを出すのが普通だった。
もしそうでないとしても、最低限『これ捕獲してもいいですか?』と一声掛けるのがマナーであろう。
学校で生徒会副会長を務める真面目さからか、ネットマナーにもうるさいなゆたであった。
ともかく、サラリーマンはベルゼブブ捕獲に失敗した。
捕獲自体に回数制限はない。もう少し弱らせて、次のATBゲージが溜まったときにリトライすることも可能だ。
真一とグラドはもうベルゼブブには見向きもしていない。既に戦いには勝った、と思っているのだろう。
真一らしい詰めの甘さだが、なゆたはそれを許さなかった。
「ポヨリンAアーンドB! 『スパイラルずつき』!」
『ぽよよよっ!』
地面に墜落し息も絶え絶えのベルゼブブへ、分裂した二体のポヨリンが突っ込んでゆく。
かと思えばポヨリン達は加速をつけて跳躍し、まるで弾丸のような形状になってきりもみ回転しながらベルゼブブを攻撃した。
エネミーの防御力を無視してダメージを与える、貫通属性持ちのスキル――スパイラルずつき。
硬化のスペルはまだ切れていない。銃弾めいた形になった鋼のスライム二体が、蝿の王の胴体を貫通する。
蝿の王はギョォォォォォ……と断末魔の悲鳴を上げながら、今度こそ動かなくなった。
と同時、戦闘に参加していた各人のスマホにドロップアイテムの報告表示が出る。
風属性モンスター育成のレアアイテム、『蝿王の翅』だ。 戦闘が終了した瞬間、けたたましい汽笛の音が鼓膜を震わせる。
見れば、廃墟とばかり思っていた駅のホームに一両の列車が近付いてきている。
魔法機関車――ブレイブ&モンスターズに出てくる、メジャーな交通手段のひとつだ。
ストーリーモードでは、飛空船を手に入れるまでこの魔法機関車でほうぼうを旅することになる。
「あれが、メロの言ってた迎えってことね……」
戦闘を終えてスペルカードとスキルの効果が切れ、一体に戻ったポヨリンを胸に抱き上げると、そう呟く。
メロの言っていた『王』とは、王都キングヒルに君臨するあの王のことで間違いないだろう。
ゲーム内では最序盤に出会う相手だ。もちろん、ストーリーモードをプレイした者なら全員知っているはず。
こんなミミズとハエしかいない荒野に突っ立っていても仕方ない。次の行き先は決まった、が――。
「みのりさん! ホントに助かっちゃいました、ありがとうございます!
まさか、こんなところでフレンドの方に会えるなんて!すごくすごく嬉しいです!」
まずは、共闘してくれたフレンドにお礼を言うのが筋であろう。すぐになゆたはみのりに向き直ると、深々と頭を下げた。
「改めて、崇月院なゆたです。崇月院の月を取って、月の子(モンデンキント)って。
でも、ここじゃ本名の方がいいですね。わたしのことは、なゆって呼んでください」
快く共闘に応じてくれ、なおかつ人当たりもいい。決して悪い人ではなさそうだ。
かつてスケアクロウを見たときは、どんだけ金満なプレイヤーなのよと思ったが、認識を改める。
「あそこのレッドドラゴンに乗ってるおバカが、赤城真一。えと……さっきも言った通り、わたしの幼馴染で。
ホント、ムチャクチャな戦い方で……。ド初心者なんです、みっともないところお見せしてお恥ずかしい……」
パートナーモンスターと一緒にエネミーと戦うばかりか、自分にバフを掛けるなど聞いたこともない。
軽く彼の方を指差して紹介すると、なゆたはまたみのりに対しぺこぺこと頭を下げた。
「……で。わたしたちは、さっきスノウフェアリーにあの機関車に乗れって。
そう言われたものですから、これから乗ろうと思うんですが……。
みのりさん、よかったらご一緒しませんか? 仲間は一人でも多い方が心強いですし」
彼女は信用できる。それがなゆたの下した結論であった。
寺の一人娘という出自もあってか、基本的に性善説を採用しているなゆたである。
以前からフレンドとして共闘しているという繋がりもある。
そして。
「お兄さんも! ありがとうございます!」
みのりから視線を外し、やや離れたところにいるサラリーマンの方を見る。大きく手を振ると、なゆたはお礼を言った。
共闘してくれたのはありがたいし、スペルカードで援護してくれたのも助かったのは事実だ。
独断でベルゼブブの捕獲を試みた先ほどの行動がどうも引っかかるが、それもたまたまかもしれない。
空気の読めないプレイヤーはどこにでもいる。いちいち目くじらを立てていてはきりがない。
それより、今はやはり味方を一人でも確保しておく必要がある。
急造でも上級レイドボスのベルゼブブを撃退したパーティーだ。この先もこの面子なら大抵の苦難は乗り越えられるだろう、と思う。 やがて真一とグラドが降りてくると、なゆたは肩を怒らせて彼の方へ歩いて行った。
そして、真一の顔に自らの顔を近づけると、む。とその目を見つめる。
「……真ちゃん」
と、その直後。なゆたは徐に右拳を握り込むと、ごちん。と真一の脳天にゲンコツを落とした。
「なんなのよ、今の戦いは!? どこの世界にパートナーモンスターと一緒に戦うマスターがいるのよ!
あの炎精王の剣も! 限界突破も! モンスター用のスペルカードなんだから!
あんたいつからモンスターになったのよ!? わたしはモンスターを幼馴染に持った覚えはないっ!」
途端に嵐のようなお小言を開始する。
「まだ、ここがどんな場所なのかもわかんないんだよ!? やられて、ゲームオーバーになるだけならいい。
ゲーム続行不可になって、この世界から元の世界に戻れるなら、わたしだってすぐにそうするよ。
でも、そうなるとは限らない! モンスターに傷つけられたら、本当に怪我をして! 死んじゃうかもしれないんだよ!?
そうなったらどうするの!?」
矢継ぎ早にまくしたてるうち、なゆたの大きな瞳に涙がにじんでゆく。
「……心配、させないでよ……。あんたにもしものことがあったら、わたし……。
あんたの家族に、なんて説明すればいいのよ……!?」
制服の袖でぐいっと乱暴に目元を拭うと、なゆたはもう一度真一を睨みつけた。
そして、右手の人差し指をびしぃっ! と真一の鼻先に突きつける。
「テンションが上がっちゃったのはわかるけど、もう二度とあんな無茶なことはしないでね!
じゃないとぉ〜……真ちゃんの好きなハンバーグ、もう作ってあげないから!
わかった!? 『はい』は!?」
ぴしゃりと言い放つ。それで言いたいことは言ったらしく、なゆたは一旦矛を収めた。
「……ま、まあ、グラちゃんに乗って戦う姿は、その……ちょっぴり、カッコよかった、けど」
腕組みし、そっぽを向きながらぽそぽそと零す。
「さ! お迎えも来たし、このフィールドには用はないわ。早く魔法機関車に乗ろう!」
一旦倒したレイドボスは日が変わらない限りリスポンすることはないが、サンドワームは無尽蔵に湧く。
スペルカードを使って消耗している現在、度重なる戦闘は避けたい。なゆたは真一の手を引き、プラットホームへ行こうとした。
そして、停車している魔法機関車に乗り込もうとしたとき――
「……あれ?」
いつのまに現れたのか、プラットホームの中央で倒れている少女を見つけたのだった。 「ひょっとして、あの子もわたしたちと同じプレイヤー?」
中学生くらいの背格好の少女が倒れているのを見て、なゆたは顔をしかめた。
というのも、少女のすぐ近くにレトロスケルトンがぼんやりと突っ立ってるのを認めたからである。
通常のエンカウントモンスターなら、とっくに少女に襲いかかっているはずだ。
また、レトロスケルトンが少女を襲い殺害し終わった後だとしたら、とっくにその場を離れているはずである。
たまに執拗に死体蹴りしてくるエネミーもいるが、基本モンスターはヘイトがなくなるとターゲットから離れる。
少女のそばを離れず、かといって攻撃するそぶりもない。
それはつまり、このレトロスケルトンが敵ではないということの証左に他ならない。
スライムやリビングレザーアーマーと並ぶザコ敵で、なおかつそれらほどの伸び代もない、正真正銘のザコモンスターだ。
何より可愛くない(なゆた的価値観で)。
そんな箸にも棒にもかからないモンスターをパートナーにしている辺り、相当な物好きか初心者か。
ともかく、捨て置くことは出来ない。なゆたは少女に駆け寄った。
「……目立った怪我はないみたいね……」
少女を抱き起し、その身体の様子を確かめる。恐らく気絶しているだけだろう。
こんな奇妙きわまる世界に着の身着のままで放り出されたのだ、それも致し方ない。
いち早く状況を理解したなゆたや、理解どころかモンスターとの共闘さえやってのけた真一の方がおかしいのである。
「真ちゃん、この子も連れて行こう。ここに置き去りにはできないよ」
巨大なハエとミミズののさばる荒野に少女をひとり置いていくなどという非人道的行為は、なゆたにはできない。
強力なパートナーモンスターがいるなら話は別だが、レトロスケルトンではサンドワームに一撃で粉砕されるのは目に見えている。
真一を振り仰いで告げると、ついでに少女のことを抱きかかえていくように、とも言う。
「よしっ! じゃあ、行きましょう!」
『ぽよっ!』
真一とみのり、そしてサラリーマンに言うと、なゆたは機関車に乗り込んだ。
ポヨリンもぽよん、と一度跳ね、意気揚々と客車に入る。
そして。
「んっ?」
テレビで観た王宮の応接間もかくや、というような豪奢な客室に入ると、等間隔に並んだ席に座っている小柄な人影が目に入った。 座っていたのは、ゆったりしたローブに身を包んだいかにもな魔法少女風の出で立ちの女の子だった。
その姿には見覚えがある。主にアルフヘイムとニヴルヘイムの狭間『忘却の森』エリアに出没するモンスター。
『魔女術の少女(ガール・ウィッチクラフティ)』だ。
知能が高く、その名の通り豊富な魔法を使いこなす。見た目の可愛さから、パートナーにしているプレイヤーも多い。
この少女もメロと同じ、王の使いということなのだろうか。
「えーと……、こんばんは?」
なゆたは率先して声をかけた。往々にして、こういう場合はエリア内のキャラクターに声をかけるとイベントが進むものだ。
「この魔法機関車が、メロの言ってた王さまのお迎え……ってことでいいのかしら?
わたしたち、アルフヘイムは初めてだから。右も左もわからなくて……。
あ、わたしの名前は崇月院なゆた。なゆって呼んでね。
こっちの無愛想なのが赤城真一。こちらの女の人が五穀みのりさん。あとは、えーっと……」
サラリーマンとプラットホームに倒れていた少女のことは、よくわからないのでお茶を濁す。
「とにかく、メロの言ったとおり王さまに会えってことなら、こっちもそのつもりよ。
わたしたちは元の世界へ帰りたいの。あなたたちの王さまなら、きっとその方法も知ってるはず……よね?
いや、絶対知ってるはず。直接的な方法は知らなくとも、そのヒントくらいは知ってるはずよ、絶対!
でないとユーザーフレンドリーじゃないクソゲーってフォーラムでまたアンチに叩かれちゃう!
ってことで――」
自分の意見を一気にまくし立てる。
そして機関車の二人掛けになっている席の窓際に腰を下ろすと、気絶している方の少女を自身の隣に横たわらせ、膝枕する。
「真ちゃんはそっち。また何かあったとき、すっ飛んでいかれると困るから」
真一に対し、自分と向かい合う形の席を指差して、座れ、と言う。
「まずは、道すがら事情を説明してもらえるかしら?それから――あなたのことをなんて呼べばいいのかも、ね」
魔女術の少女の名前を訊ねると、なゆたはにっこり笑った。
まだ、魔法機関車は出発しそうにない。その間、ここにいる人間たちの情報交換や自己紹介もできるだろう。
【メルトちゃんを保護。魔法機関車に乗り込みウィズリィちゃんと接触、情報収集開始。
なんか一気にやっちゃいましたが……。とにかくウィズリィちゃん、メルトちゃん、よろしくお願いします!】 名前:アディーム 
年齢:25 
性別:男 
身長:180 
体重:120 
スリーサイズ:筋肉質ではあるが痩身 
種族:人間 
職業:探索人 
性格:朗らかで押しに弱い 
能力:宿主 
武器:呪いの拳銃デュランダル 
防具:アラブ的民族衣装、ヤモリブーツ、丸サングラス 
所持品:弾、市松人形、食料など 
旅の目的:寄生生物や憑依体の解除法を見つけ出す
容姿の特徴・風貌:褐色の肌にドレッドヘア、アラブ系の彫の深い顔立ち唇厚め、筋肉質な体、丸サングラスをつけていて目の色や視線は追えない 
筋肉質ではあるが健康的とはとても見えず、痩せこけているという印象を受けるだろう 
アラブ系民族衣装を軍用と思しきブーツを着こなすアラブ紳士、ちなみにクーフィーヤ(アラブの帽子的布)はつけておらず 
簡単なキャラ解説:朗らかで押しに弱いお人よしなトレジャーハンター、だった。 
しかしその性格と、怪しげな場所に足を踏み入れる職業、そして稀に見る引き寄せ体質だったのがアディームの不幸の始まりだった 
行く先々で様々なトラブルに巻き込まれ、厄介事を押し付けられる(物理 
結果、骨髄に「液体金属スライム」、頭部「ドレッドヘアに見える寄生生物」、背中に「人面相」、腰には「呪われた拳銃デュランダル」、左手には「市松人形」の入った桐箱を抱える羽目に 
各種寄生生物、憑依体はアディームから生命エネルギーを吸い取り続けている 
本来は巨躯巨漢だったが今やすっかり痩せこけ、いくら食べても追いつかない状態になっており、持久力に乏しい 
宿主を死なせないようにするためか、寄生生物や憑依体は戦闘においてアディームに協力的であり、高い戦闘力を発揮する 
アディーム自身はこの状況から解放されるために解除法を探っているが、いまだ見つからず 
市松人形に導かれ入った廃墟の地下室からこの世界に迷い込む 
(参加が確定。よろしくお願いします。導入は後日) 【こんばんは
ひと段落つきそうなところでちょっと先のお話ですが
現在スマホの機能は召喚・スペル行使ですが、幕間にてデッキ編成は可能なのでしょうか?
ガチャ引くなりスペルカード変えるなりの他の機能面どうなるんだろうかなというところで】 >>161
【デッキ編成は可能ですが「使用済カード」を交換した場合、制限時間も引き継ぐというルールにしようかなーと思ってました。
あとはマップを見たり、入手したアイテムを出し入れしたり……なども可能です。
ガチャは回してもいいですが、現実世界とネット接続されていないので、リアルマネーを課金するのは不可です。
ちなみに、次章に入ってすぐストーリーで触れようと思っているのですが、
ゲーム内資源をスマホのエネルギー問題などに絡めるつもりなので、多分ガチャを引く余裕は出ないです】 対ベルゼブブ包囲網は着実に奴を追い込みつつあった。
いや実際ダメージレートすげえことになってんな。クリティカル連発でハエがスタンし続けてる。
ほとんど反撃出来てなくていっそ可哀想になってくるわ。
>「ほんにやりよるねえ。おおきにさん〜それでは行かせてもらいますえ〜」
相変わらずレッドラと一緒にハエと殴り合ってる男子高校生と、
最弱クソモンスのスライムでベルゼブブ相手に防戦一方を強いてる女子高生もやべーけど、石油王も伊達に廃課金してねーなアレ。
レイド級モンスターってのは残りHPの割合によって攻撃パターン(フェーズ)が変化するアルゴリズムになってる。
カカシ使いの石油王は、ベルゼブブが攻撃モーションに入った瞬間を狙って蓄積反射の特大ダメージをぶちかました。
HPをがっつり削られたベルゼブブは、次の攻撃パターンに以降する為に現在の攻撃モーションを解除させられるわけだ。
モーション強制解除で発生する硬直の間に更にHPを削られて、またパターン移行に伴うモーション解除。
「無限ループって怖くね?」
敵の行動パターンの熟知と、いっそ過剰なまでの火力の両方があって初めて成立するハメ殺しの一つ、『フェーズ飛ばし』だ。
普通は廃人PTが入念なタイムラインの打ち合わせのうえでやるレイド狩りの手法だが、この即席PTでお目にかかれるとは思わなんだ。
ダメージレートをある程度任意で調節できるバインド系のデッキでも、PTの火力を完全に信頼出来なきゃムリだろう。
あいつらフレンドかなんかなの?もしかしてこの場で野良なのって俺だけだったりするぅ?
「……そろそろか」
スマホをチラ見すれば、捕獲コマンドが使用可能を示す点灯状態にあった。
ベルゼブブのHPが1割切ってる。捕獲自体は実行可能だが、成功するかどうかはモンスターの状態次第だ。
当然、HPが1割丸々残ってるよりも0.1割まで削れた方が成功し易いし、状態異常もそこに加味される。
コマンドのリキャストタイムも考慮すれば、捕獲を行えるチャンスは一度か二度くらいってとこか。
そろそろ『濃霧』の効果も切れる。HPの減少は緩やかになるだろうし、しっかり機会を吟味しねーとな。
「あ、やべっ」
晴れつつある濃霧の向こうに再び姿を現したベルゼブブは、なんか毒々しい紫色のオーラを纏っていた。
バーサク入ってんじゃん。物理攻撃しかしなくなる代わりに各種ステータスにアホみたいな超補正がかかるバフだ。
上昇するステータスには、『捕獲難易度』も入ってる。つまりほぼほぼ捕まらねえってことだ。
そして何より問題なのは――
「当たらねえ!」
ヤマシタの射掛ける矢はおろか、男子高校生が至近距離で放ったスペルすら躱し切る圧倒的回避補正!
これはもう純粋にステータスの格差で、必中効果の付いた攻撃以外殆ど失敗するハイパークソチート技なのだ。
PT構成や残ってるスペルによってはこのまま詰みも有り得る。神ゲーかよ。
そんでもって間の悪いことに、俺の残存スペルで必中の魔法は……皆無!神ゲーだったわ。
宵闇に包まれた荒野に明星の如く輝く光球は、おそらくフィールド効果カードの影響だ。
ツルツルテルシだったか、炎属性の威力を底上げするカード、発動したのは多分石油王だろう。
男子高校生を支援して決着を付けさせるつもりらしい。すげー苦戦してんだけどアイツ大丈夫なの。
>『グァアアアアアアッ――――!!』
バーサク状態のベルゼブブに防戦を強いられていたレッドラが、一際大きく吠えた。
スケアクロウのヘイト上昇スキルを見よう見真似でパクったのか、ハエのタゲがレッドラに集中する。
いやここで更にヘイト重ねてどうするつもりだよ!どう考えてもプレイヤーごと捻り潰されるパターンだろ!
空中で闇と炎を纏った二つの影が激突する。オイオイオイ死んだわアイツ。
俺はおそらく繰り広げられるであろう一方的な虐殺を予感して目を伏せた。そんでもっかい見た。
ベルゼブブが勝利の雄叫びを上げなかったからだ。 「……アイツ、どこ行った?」
レッドラの背にしがみついてたはずの男子高校生がいない。空中でもみ合いになるうち振り落とされたか?
――いや違う!ツルツルテルシの逆光に紛れるように、ヤツは上空に高く飛び上がっていた!
その手に握る炎精王の剣で、自由落下の勢いそのままに、ベルゼブブの片翼を裁ち落とす!
パートナーの吶喊に呼応するように、レッドラもまた炎の爪でハエのもう片翼を引き裂いた。
完全に虚を突かれ深手を負ったベルゼブブが彗星のように落下していく!
「マジかよあいつ……マジかよ!」
レッドラの咆哮を布石にした、身体強化スペルを使っての単身ダイブ。
そしてフィールド魔法のオブジェクトさえも目眩ましに利用する圧倒的リアルファイトのセンス。
やっぱあいつだけ世界観違うって!そういうゲームじゃねーからこれ!
……っと、いかんいかん。つい実況に夢中になり過ぎた。
ベルゼブブは最早最終フェーズを通り越すレベルで削られてバーサクも解除されている。
地面に激突したダメージでそのまま討伐完了しちまいそうだ。
前にも後にも、チャンスは今しかねえ!
「『捕獲<キャプチャー>』!」
温存していたATBゲージを使い、俺は捕獲コマンドを実行した。
モンスターを隷属させる光、プレイヤー達の間で『洗脳ビーム』とか俗称されてる光条がベルゼブブに直撃する。
光が拘束具となってモンスターをガッチリ巻き取れれば捕獲成功――途中で弾ければ失敗という分かりやすいエフェクトだ。
ベルゼブブに巻き付いた光は、自由落下するハエの身体をぐるぐる巻きにしたが、地面に激突した衝撃でばらばらに弾け飛んだ。
「クソ、失敗か!」
流石にレイド級ともなると洗脳ビーム一発だけじゃ隷属させられないらしい。
ちょっと前にYouTubeに上がってた動画では、拘束スペルでガッチガチに固めたベルゼブブを5回ぐらいビームぶち当てて捕獲してた。
幸いにもベルゼブブはHPミリで生きてるようだし、もう一回ぐらい捕獲コマンドを実行できるはずだ。
ATBゲージの蓄積具合が遅くてイライラする。はやく溜まれはやく溜まれはやく溜まれ……!
>「ポヨリンAアーンドB! 『スパイラルずつき』!」
「あっ馬鹿!やめろ!やめてお願いマジで!」
しかし無慈悲にも、女子高生のスライムが二匹一緒に死に体のベルゼブブに殺到する。
闇の波動にも耐えきるアホみたいな硬さの物体が二つ、蝿の王の胴体に風穴を開け……討伐完了のリザルトがスマホに表示された。
「ほぎゃああああ!?」
絶望のあまり変な声が出ちゃった。
あ、あの女……!俺が捕獲ビーム撃ったの見た上でベルゼブブにトドメを刺しやがった!
つまりこいつは明確な捕獲妨害だ!!晒しスレ直行案件だぞ!!!
まあ確かに事前に何の取り決めもなく抜け駆けで捕獲しようとしたのは俺の方だ。
しかしそれはこの際棚に上げる!俺は誰よりも自分に甘い男!
あの女子高生野郎……絶対許さねえ……!
スライムなんか育ててる趣味勢のクセして狡猾な嫌がらせをしやがってぇ……!
「大人の陰湿さを思い知らせてやる……ヤマシタ!」
革鎧は暫く逡巡するかのように押し黙ったあと、無言で弓に矢を番えた。
あの女のスマホを射抜く。頼るべきものを失ったこの世界で干からびて行くがいい……!
だがヤマシタが矢の先を女子高生に向ける前に、ホームを揺るがすような音が轟いた。 「うおっなんだこりゃ……汽笛?」
ヤマシタが弓を放り出して剣を抜き、俺とホームとの間に割って入る。
俺はそれを右手で制した。この汽笛は知ってる。つーかこのゲームのプレイヤーならみんな聞き覚えがある。
エリア同士を繋ぐアルフヘイムの交通大動脈、魔法機関車だ。
多くの初心者プレイヤーを危険地帯へと送り出し、そのうちもっと便利な飛空船に取って代わられて埃を被る哀しい乗り物。
ベルゼブブとやり合った後にこんなこと言うのもなんだけど、ホントにここってブレモンの世界なんだな……。 「……ってことは、こっから脱出できるってことか!?」
魔法機関車があり、それを運行してるNPCの組織がある。
そいつはつまり、俺達の放り出されたこの荒野の外に、まともな宿と飯の食える街が存在するってことに他ならない。
俺達のような『漂流者』を回収する出迎え、とも言えるのかもしれない。
もうコカトリスの生焼け肉で食いつながなくてもいいのか!
にわかに立ち上がった希望の存在に、女子高生に対する怒りも忘れて俺は密かに小躍りした。
>「お兄さんも! ありがとうございます!」
と、なんか向こうで石油王とワイキャイしてた女子高生がこっちに向かって手を振った。
チッ……なにがありがとうだこの女……ぜってー晒してやっからな憶えとけよ。
「……ああ、皆無事で良かった」
本音をひた隠して建前で喋るのは社畜の得意技だ。
『瀧川君トイレの時間長くない?』と課長に言われた時も俺はこのスキルでどうにか誤魔化すことに成功した。
まあ翌日も長時間トイレでサボって、そのままこの世界に来たわけだけれども。
再び今度は男子高校生とワイキャイやり出した女子高生を尻目に、俺はとっとと魔法機関車に乗り込むことにした。
「うおお……客室ってこんなんなってたのか」
多くのプレイヤーは魔法機関車に移動コマンドとして以上の価値を見出していない。
俺もその類で、こうしてじっくり内装を見るのは初めてだった。
なんつーか無駄に豪華だな。やっぱプレイヤーって設定的にはすげえ高待遇だったりすんのかね。
「ん、先客か」
客室の奥に一つ、人影があった。
古典的な魔女が来てそうな黒のローブに、対照的な色白の肌、黒髪にオッドアイの少女。
なんか見たことあるなと思ったらこいつ、ブレモンのモンスターじゃねーか。
『魔女術の少女』。けっこーレアでその見た目からコアな人気を誇る、言わば売れ線のモンスターでもある。
思わずヤマシタを呼びそうになったが、少女に敵意はないらしかった。NPCとして配置されてる感じか?
>「えーと……、こんばんは?」
いつの間にか客室に入ってきていた女子高生が魔女術の少女に声を掛ける。
後ろには男子高校生と石油王と……なんかもう一人いるんだけど!
泡吹いて気絶してる女子中学生と思しき少女を、男子高校生が抱きかかえていた。
どこで拾ってきたんだよこんなの……もといた場所に返さなくて大丈夫?なんか変なフラグ立たない?
>「この魔法機関車が、メロの言ってた王さまのお迎え……ってことでいいのかしら?
わたしたち、アルフヘイムは初めてだから。右も左もわからなくて……。
あ、わたしの名前は崇月院なゆた。なゆって呼んでね。
こっちの無愛想なのが赤城真一。こちらの女の人が五穀みのりさん。あとは、えーっと……」
流れるように『崇月院なゆた』とかな乗った女子高生が自分と仲間の紹介をしていく。
なにこいつ。この意味不明な状況で一向に物怖じする様子もねえしどういうメンタルしてんの?
なゆたちゃんコミュ強すぎていっそこえーよ……。 「俺は……『明神』とでも呼んでくれ。本名プレイは好きじゃないんだ」
俺はゲームと現実は切り離したい派なので、オフ会とかでもキャラ名で呼び合うタイプだ。
まあフレンドいないしオフ会とかやったことねーから知らねーけど。
>「とにかく、メロの言ったとおり王さまに会えってことなら、こっちもそのつもりよ。
わたしたちは元の世界へ帰りたいの。あなたたちの王さまなら、きっとその方法も知ってるはず……よね?
いや、絶対知ってるはず。直接的な方法は知らなくとも、そのヒントくらいは知ってるはずよ、絶対!
でないとユーザーフレンドリーじゃないクソゲーってフォーラムでまたアンチに叩かれちゃう!
ってことで――」
……なゆたちゃんグイグイ突っ込むなあ!
ここでそういうこと言うぅ?ほら魔女術の少女めっちゃ真顔じゃんぜってーアンチとかフォーラムとか分かってねーよ!
ちなみにフォーラムでそのスレ立てたの俺だわ!ごめんね!でもクソゲーだと思うよ実際!
暫定NPCを差し置いてなゆたちゃんは場を仕切る!仕切りまくる!男子高校生改め真一君もずこずこ従っている。
わはは真ちゃんオモクソ尻に敷かれてやんの。おめーハエと殴り合ってた威勢はどこ行ったのよ。
あとさっきからすげえ俺の腹がピーゴロ鳴ってるんだけどやっぱコカトリスの肉ってやべーやつなのかな。
>「まずは、道すがら事情を説明してもらえるかしら?それから――あなたのことをなんて呼べばいいのかも、ね」
「異論なしだ。俺が知りたいのはこの魔法機関車がどこに向かってるのかと、
そこでまともなメシと寝床が提供して貰えるか。それから――」
そろそろ限界だったので俺は脂汗まみれの額を拭って聞いた。
「この列車、トイレある?」
【ベルゼブブの捕獲に失敗し、なゆたちゃんを逆恨み。コカトリスの肉に当たってピンチ】 トイレでは
「脱糞権」が認められる
いつでもええんやで 「はぁい〜。ゆくあてもあらへんし、ご一緒させてもらいますわ〜
そちらのお兄さんも、五穀みのりと言います〜よしなにねぇ〜」
魔法列車を前になゆたに状況と魔法列車の話を聞き、同行を承諾。
戦闘のどさくさにお互いの顔もよく見合わせられなかったので、ようやくここで顔合わせして挨拶ができたのだった。
挨拶を交わしているところでなゆたの拳骨が真一の脳天に落ちる
と共に真一の背中に張り付いていた藁人形が破裂した
未だにダメージを肩代わりする効果が続いており、真一の頭には拳固の痛みは伝わらなかったのだが、きっと心には伝わったであろう。
涙目になってお説教するなゆたの後姿を見ながら、クスリと笑みを浮かべてみのりが動く
「うふふ、真ちゃんゆぅんやねえ。
こんな可愛い彼女を泣かしたらあかへんよ〜」
なゆたのお説教が終わった頃合いを見計らいそういいながら真一の頭、拳骨が落ちたあたりを撫でながら、声をかける
藁人形から届いていた声と同じことから、五穀みのりであることが判るだろう。
そしてそっと耳元に口を近づけ
「見させてもらったけど〜真ちゃんとなゆちゃんて結構好対照なパートナーやデッキ構成みたいやん?
一緒に肩を並べて戦う事は出来ても、うちがしよったみたいにフォローや守ってあげる事は難しいやろうからぁ辛いと思うんよ
うちが出来るからと言ってあまり助け過ぎても、なゆちゃん彼女としての立場もあらへんやろうしねぇ
そういうところ、ちゃ〜んと汲んであげるんが、色男ゆうものやよ〜」
腕組みをしてそっぽを向いているなゆたを目線で指示しながら、吐息と共に囁く。
みのりの中で真一への評価は、当初は無鉄砲で理論的な行動ができない、というものであった。
だが、ベルゼブブへの飛び移りなど、もうここまでされると一周回って清々しく感じてしまうほどになっている。
本来ならばなゆたと異口同音の注意を与える所だが、思わずつついてしまいたくなる程度には。
>「さ! お迎えも来たし、このフィールドには用はないわ。早く魔法機関車に乗ろう!」
なゆたが振り向いた時には、すっと位置を外し、ゆったりとした足取りで魔法機関車へと乗り込むのであった。 機関車の中は豪華な造りとなっており、先ほどまでの砂漠然とした暑さとは比べ物にならないほど快適であった。
客車の中には魔女術の少女族がおり、さっそくなゆたが話しかけている。
大勢で話しかけてもまとまらないだろうし、どれも明確な答えが返ってくるとは思っていないからだ。
そも、ブレモンの世界にプレイヤーを引き込んだのが誰なのか?
おそらく王を始め、この魔女術の少女族を含んで誰も知らないだろう
各プレイヤーがこの世界に来た時に、呼び出した者がいるはずだ
遠隔で呼び出したとしても、呼び出した対象を速やかに回収するために待ち構えているはず
こんな風に【迎えが来る】というのは、
『いつくらい』に『あそこらへん』に来ると『思われる』
という、伝承程度の情報を頼りに迎えに来ているのだろうから。
迎えが『この場所』だけとも限らないし、各地にプレイヤーが呼びこまれている可能性もある
そういった事から予想するに、お願い事はされても『元の世界に戻す方法』を知っているとは思えないのだから
とはいえ、身も知らぬ場所に放り出されるよりは、身を落ち着けられるのは有り難い話だ。
であるから、みのりから付け加えてウィズリィに質問する事はなく、軽い自己紹介だけに……いや、一つ注文を加える
「そうそう、とりあえずお水か何かあらしませんかしらねえ?
皆さんこちらにきてから何も飲んだり食べたりしてへんやろし、外は暑かったからねえ」
そういいながら、イシュタルに巻き付いている蔦についている赤い果実を一つむしりとる
大きさはスモモ程度で、力を軽く込めた程度で二つに割れた
「ま〜飲み物来るまで、こちら子にはこれでも上げましょか〜」
ぎゅっと握ると果汁が滴り、メルトの唇を濡らす
イシュタルのグラフィックにフレーバー程度に書き込まれていた蔦と果実だが、このおかげでみのりはこちらの世界にきてからも飢えと乾きに苦しめられることはなかったのだ。
「なゆちゃんも〜良かったら食べたってえねぇ〜
大丈夫〜うちも何個か食べたけど、お腹痛くなってへんからね〜」
もう片割れをなゆたに渡し、ゆっくりと立ち上がりスマホを取り出した
取り出したのは「浄化(ピュリフィケーション)」
勿論使用する先は脂汗で一杯な明神である
「せめてお腹痛いのだけはこれで治るとよろしいな〜」
あの状態になっては出すもの出さなければ収まりがつかないだろうが、腹痛だけでも収まれば、と。
真一は「限界突破(オーバードライブ)」をかけて実際に身体能力が上がっていたのだし、スペルカードが人間には利用できるというのは大きな収穫であった。
それに、ベルゼブブの翅を切り落としたのも、だ。
攻撃をただのダメージではなく、攻撃部位によってダメージ以上に機能に損傷が与えられる
ゲームとは違う戦いの様に、戦い方もまた変えていく必要もあるだろうから。
「さて、色々お話を聞きながら、デッキ編成でもしよかしらねえ」
ゲームとしてのブレイブアンドモンスターであっても戦う敵や目的によってパートナーやデッキ編成は当然である
みのりはそういった時間がなくほぼ固定であはあるとはいえ、実際に戦うとなればまた話は変わってくるであろうから。 断末魔を上げるベルゼブブに照射される赤い光。
その光の発生源は明神
それを視てみのりは思わず手を打った。
どれだけぶりだろうか?
モンスターの捕獲というものを意識したのは
モンスターの捕獲、育成、それぞれのモンスターに合った戦略とそれに伴うデッキ構築。
みのりの短いプレイ時間ではとてもできるものではなく、だからこそそれをお金で補った
捕獲する手間がなく、褒賞モンスター故に育成する必要もなし。
高HP高再生、低機動、低防御力に挑発能力
バインドデッキ専用に設定されたかのようなスケアクロウを入手する為に課金は惜しまなかった
それ以降、新たに捕獲する必要もなく、短いプレイ時間の狭間でタンクとして活躍する
そんなブレモンライフだったので、捕獲に拘りがなく、明神が抜け駆け的に行動に出てもむしろ新鮮さを覚えるのであった。
捕獲が失敗に終わった瞬間は思わず自分のように身悶えしてしまったのだが、すぐに失敗して残念、だけの話ではない事に気が付いた。
高火力のレッドドラゴン
高レベルのスライム
そしてスケアクロウ
この中にあってリビングレザーアーマーはあまりに貧弱であり、これからこのような戦いが続くと考えるのならば戦力増強は急務であろう。
といったみのりの思惑とは裏腹に、なゆたの怒涛のトドメでベルゼブブは消滅。
魔法機関車の到着と共に戦闘は終了となったのであった。
【コピペミス
こちらのレスは>>169の前に着くものです】 五穀 みのり ◆2zOJYh/vk6 
自分の文章力見直した方がいい
他で修行するべき 引退かただの荒らしかはっきりしてくれや
迷惑なんだわ 中一日が基本ペースだったスレで丸三日間放置確定
ラテよ、お前はここでも迷惑をかけ続けるのか? 「……ふうん」
窓から嫌でも見える、地に落ちる巨大な蝿の姿を見ながら、わたしは感心していた。
あの蝿はベルゼブブ……ニヴルヘイムに住まう上級悪魔族の一種だ。
基本的にはニヴルヘイム内にとどまっている彼らだが、時折こちら(アルフヘイム)に現れる事がある。
ここ、『赭色の荒野』にベルゼブブが時折現れている、という噂は聞いていた。
まさか、倒されている姿を目の当たりにするとは思わなかったが……。
あの蝿も、伊達や酔狂で上級悪魔と呼称されているわけではない。
強大な力を持ち君臨するからこそ、そう呼ばれ恐れられるのだ。
それを倒してのける。どうやら、『異邦の魔物使い(ブレイブ)』達の力は本物のようだ。
幾つものスペル、魔物の使役、なにより……。
「……あの光。一瞬しか見えなかったけど、間違いない」
『捕獲(キャプチャー)』の術。
その名の通り対象を捕獲し、自らの思うままに動く手駒とする。極めて危険な術だ。
理論上は、この世界(アルフヘイムに限らず、ニヴルヘイムも、わたしたちのような『境界』の住民も含む)に住まう
ありとあらゆる生物を隷属させることができると言われている。
その危険性から、基本的にはあらゆる魔術書から抹消され、その使い手はこの世界にはいない、とされている。
そもそも、現代ではごく一部の例外を除けば存在すら知られていない。禁術の中の禁術。
何故それをわたしが知っているのか、というのは、少々長い話になるのでまたいずれ語るとして。
「当たり前のように禁術を使う……『王』の言うとおりね。
彼らは良くも悪くもこの世界の存在ではない、か」
その存在をうまく御する事が出来なければ、世界の危機以前にそもそも彼らにこの世界が滅ぼされかねない。
責任は重大だ。警笛を聞きながら、わたしは大きく息を吐いた。 魔法機関車は建物の中に滑り込み、その動きを止める。
からくり仕掛けで扉が開くと、ほどなくしてどやどやと乗り込んでくる者たちがいた。
まず一人。それから遅れてさらに数名。
彼らが……『異邦の魔物使い』。
外見的には、わたし達『魔女術の少女』や『王』達とさほど変わらない、いわゆる『人型』族の特徴を備えているようだ。
見た目的には男性が二人、女性二人……いや、もう一人背負われている少女がいた。合計五人だ。
いずれも見た事もないような意匠の衣服を纏っているが、装飾過多な印象はない。実用性に優れた服装であることが窺える。
魔力的な防御はされていないようだが、恒常的でない魔力付与に関しては分からなかった。
他、レトロスケルトンやスライムなどの魔物も何体かいた。彼らは『捕獲』で使役されているのだろう。
さて、何を話したものだろうか。
内容を吟味しているうちに、第二陣でやってきた面々の先頭に立つ少女が先に話しかけてきた。
>「えーと……、こんばんは?」
>「この魔法機関車が、メロの言ってた王さまのお迎え……ってことでいいのかしら?
わたしたち、アルフヘイムは初めてだから。右も左もわからなくて……。
あ、わたしの名前は崇月院なゆた。なゆって呼んでね。
こっちの無愛想なのが赤城真一。こちらの女の人が五穀みのりさん。あとは、えーっと……」
「……」
言葉が『石礫連弾(ストーンバレット:ガトリング)』のように撃ちだされてくる。
まずい。正直苦手なタイプだ。普段なら黙って聞き手に回るのだが、この局面ではそうもいかない。
「……こんばんは。メロという子は知らないけれど……ええ、この乗り物が『王』の迎えよ」
王の遣い、と一口に言ってもその数は軽く4ケタは下らない。いくらわたしでもその全員を把握してはいないのだ。
……あるいは、『王』自身なら全員の名と顔を一致させているのかもしれないが。
「ナユに、シンイチ、それにミノリね。それから……」
意識がない様子の少女はひとまず置いておき、最初にこの車両に入ってきた青年を見る。
>「俺は……『明神』とでも呼んでくれ。本名プレイは好きじゃないんだ」
「……ミョウジン。分かったわ」
自ら本名でないと名乗るというのも怪しいが、現状ではそこまで突っ込むべきではないだろう。
あとから調べる方法はいくらでもあるのだから。彼はミョウジン。今はそれがわかればいい。 と、安心したのもつかの間。ナユはさらに言葉を連ねてくる。
>「とにかく、メロの言ったとおり王さまに会えってことなら、こっちもそのつもりよ。
わたしたちは元の世界へ帰りたいの。あなたたちの王さまなら、きっとその方法も知ってるはず……よね?
いや、絶対知ってるはず。直接的な方法は知らなくとも、そのヒントくらいは知ってるはずよ、絶対!
でないとユーザーフレンドリーじゃないクソゲーってフォーラムでまたアンチに叩かれちゃう!
「……」
思わず瞬きを数度する。傍目にはきょとんとしている、という風に見えるかもしれない。
『王』から、『異邦の魔物使い』は奇妙な言葉を話すかもしれない、と聞いてはいたが。
「(これほどまでなんて……最後の一文なんて文法以外何もわからないのだけど)」
こほん、と咳払いを一つ。その間に、ナユはシンイチと気絶した少女の席割を決め、さらにこちらに話しかけてきた。
>「まずは、道すがら事情を説明してもらえるかしら?それから――あなたのことをなんて呼べばいいのかも、ね」
さらに、ミョウジンも続ける。
>「異論なしだ。俺が知りたいのはこの魔法機関車がどこに向かってるのかと、
そこでまともなメシと寝床が提供して貰えるか。それから――」
>「この列車、トイレある?」
次いで、ミノリも。
>「そうそう、とりあえずお水か何かあらしませんかしらねえ?
皆さんこちらにきてから何も飲んだり食べたりしてへんやろし、外は暑かったからねえ」
「……」
順を追って対処することにした。
まずはミョウジンの方を見る。彼の様子は急を要しそうだ。
「向かう先は王都よ。王都キングヒル……偉大なる『王』のおひざ元ね。
食事と寝床は提供されるはずよ。贅を尽くした、とまではいかないけれど料理人は全力を尽くすはず。
個人の嗜好に合うかまでは保証しないけど。あと、トイレはあっち」
機関車の最後尾の方を指す。
さすがに、乗り込むときにその辺りの事は聞いている……私は比較的我慢が出来る方なので、今のところ使ってはいないが。
ちなみに、出発前に軽く覗いた範囲では清潔でよい具合のトイレだった。
ミョウジンがそちらに向かうのを見届けてから、次はミノリの方を見る。
「水と軽食程度なら用意があるわ。必要があれば、あれに話しかければ『運転手』に伝わって、持ってきてくれるはず。
王都までは少し長い道のりになるから、呑まず食わずでいるならせめて喉を湿らすぐらいはした方がいいでしょうね」
あれ、と言いながら指すのは伝声管だ。
あらかじめ敷設した範囲であれば魔法抜きで声を遠隔で届けられる、驚異の技術である。
まったく、この魔法機関車に詰め込まれた技術の粋には驚かされるばかりだ。
最後にナユを見て、言う。
「そうね。話せば長くなる……と言いたいところだけど、わたしもそのすべてを把握しているわけじゃない。
わたしにわかる範囲の話でよければ、ミョウジンがトイレから戻ってきてから話すわ。
詳しい話は、『王』から話していただけることになっているから、それを待って頂戴。
……あと、ユーザーフレンドリーとかクソゲーとかは……恥ずかしながら、よく分からない。ごめんなさい」 最後に、小さく咳払いをしてから
「自己紹介が遅れたわね。
私はウィズリィ。忘却の森に住まう魔女術の少女の一人、『森の魔女』ウィズリィよ。
……まあ、ウィズリィと呼んでくれればいいわ」
精一杯の笑顔を作って、言う。
「よろしくね、『異邦の魔物使い(ブレイブ)』の皆さん」
【ウィズリィ:邂逅。そして自己紹介】
【魔法機関車:停車中】
【トイレ:清潔】 >>178
おせーよダボ
いい加減にしろよクズ以下 まずTRPGは鯖負担になってると自覚しなさい
何か反論できるソースがあるなら挙げてみなさい
できないなら別の板に引っ越して削除依頼お願いします ID:rsFWoenJ
0718 名無しさん@ゴーゴーゴーゴー! 2017/10/16 20:05:25
TRPGは出ていけとか寝言抜かす自治厨は創発の原住民か? 
板全体がきちんとSSや小説書いたり批評したりしてんならともかく 
ゴミみてえな埋め立てスレと速攻スレ主のいなくなる立て逃げスレしかない癖に一丁前のこと抜かしやがって 
TRPGのがよっぽどまともな使い方してるわ 自治スレ見てきたけどその議論見つからなかった
どこでやってんの?
荒しまがいな嫌がらせではなく、議論の場に誘導してや >>184
え?わたし?
わたしの髪の色は、ごらんの通りのナチュラルカラー!黒だよ黒。
たまには気分を変えて、校則に違反しない程度にブリーチしてみようかなーとか。
カラー変えてみようかなー、なーんて考えちゃったりもするんだけど。
でもねぇ……。
どこかの誰かさんが、黒髪がいいって言うもんですから〜?
わたしとしては、そのリクエストに応えましょう!みたいな……ね。
ってことで!答えになったかな? 唇をなぞる液体の感触
それは、乾いた砂漠で過ごした為に罅割れかけていたメルトの唇に潤いを与える
水分を求める身体は、無意識にもかかわらずその液体を求め……桃色の唇は小さく開き、流れ込んできたそれをゆっくりと嚥下する
「はい……これは……桃の天然の……」
そして、その行動に反応したメルトの意識が覚醒し、目を開く――すると、その眼前には【見慣れない見知った光景】が広がっていた
まるで王宮の様な豪奢な意匠が施された、けれど王宮とは思えない細長く狭い形状
窓から入り込む光を内部で屈折させ幾何学的で美しい模様を描く、神秘的な灯り
それを目にしたメルトは、寝ぼけ眼を擦りながら無意識に口を開く
「……知ってる天井です……運営は列車移動のスキップの実装を――――って、ここどこですか!?」
そして叫ぶ。己が目にしている光景が何百回と見た魔法機関車の室内グラフィックであり、尚且つ
それが画面越しではない肉眼で捕えた物である事を自覚した瞬間、メルトは勢いよく上体を起こそうとし
「ちょっ、うあっ、そして痛いですっ!?」
枕にしていたものが柔らかな人間の腿であった為に、耐性を崩し床へと転がり落ちる事となった
起きて早々に騒々しいメルトであったが、それでもなんとか起き上がり、ぶつけた額ごと片目を隠している前髪を抑えつつ、キョロキョロと周囲を見渡してみる
するとそこには……メルト自身を除いて5人もの人間が存在していた
学ランを羽織った、ウルフカットの高校生らしき少年
先までメルトに膝を貸してくれていたと思わしき、芯の強そうな瞳が印象的なサイドテールの少女
芯が傷んでそうな皺の多いスーツが印象的な、今まさにどこかへ向かわんとしている中……青年
落ち着いた雰囲気。そしてツナギとタンクトップと長靴という、都心では見かけない衣装に目が行ってしまう少女
オッドアイと長い髪が印象的な――――ゲームプレイ中に何度も目撃したモンスターに酷似した少女
見知ったバーチャル世界に酷似した見知らぬ世界で、見知らぬ人物達と遭遇したメルトは、一瞬で身体を石像の如く硬直させると
暫くしてからそのままジリジリと動き、一同と一つ分離れた座席へ移動し、身を隠してしまう
……仕方がない、といえばそうだろう
なにせ、このメルトという少女は小学校からの登校拒否児童なのである
対面での会話や画面越しのチャットであればまだしも、いきなり生身の人間の前に晒されて、まともな反応を期待する方が酷な話だ
だがそれでも、混乱にかまけて状況を無視する程に、メルトは純粋ではない
何とか情報を集めるべく聞き耳を立てて見れば
>「この列車、トイレある?」
>「さて、色々お話を聞きながら、デッキ編成でもしよかしらねえ」
>「そうね。話せば長くなる……と言いたいところだけど、わたしもそのすべてを把握しているわけじゃない。
わたしにわかる範囲の話でよければ、ミョウジンがトイレから戻ってきてから話すわ。
詳しい話は、『王』から話していただけることになっているから、それを待って頂戴。
……あと、ユーザーフレンドリーとかクソゲーとかは……恥ずかしながら、よく分からない。ごめんなさい」
>「自己紹介が遅れたわね。
> 私はウィズリィ。忘却の森に住まう魔女術の少女の一人、『森の魔女』ウィズリィよ。
> ……まあ、ウィズリィと呼んでくれればいいわ」
トイレはどうでもいいとして。大事な事なので二回言うが、トイレはどうでもいいとして
聞こえて来たのは、まるでゲームで遊んでいるプレイヤーとイベントを進行するNPCの様な会話
……それだけを聞いて、そして見れば、コスプレ会場か運営の企画したリアイベかとでも思いかねない状況ではあるのだが、砂漠をベルゼブブに追われ続けたメルト自身のリアル過ぎる体験がその可能性を否定する
そうなると、現実にしては悪夢の様ではあるが、今メルトの置かれている状況は……
(考えたくありませんが、あんな蠅の化物が地球に居る訳がありません。そうすると、多分というか、やはりここは……地球ではないんでしょうか) 困惑しながらも認めざるを得ない可能性
というよりも、メルト自身の脳に異常が有る訳でないのならば、現状それ以外に説明のしようがない
となれば、眼前の少年少女達は……メルト自身が倒れた時に周囲に人がいなかった以上、恐らくは、【駅】でメルトが遠目に見たベルゼブブと戦闘していた者達であるのだろう
そして、自身が気絶していた以上、ここまで運んできたのも眼前の彼等にちがいない
混乱する頭を無理やりに働かせ、何とか思考をそこまで持ってきたメルトは、
「あ、あのっ!!……ど、どうも。私はPL名【メタルしめじ】です。、ええと、皆様が私をここまで連れてきてくださったのでしょうか……?
もしそうなら、ありがとうございます……それで……《私は新参でとても弱いので》この訳が判らない状況に着いていけそうにありません
なので……なので、寄生みたいで申し訳ないのですが、暫くの間皆様に同行させて頂きたいのですが……」
自己紹介やら懇願やらの混じった言葉を吐き出して、体を椅子に隠したまま頭を下げた
……勿論、これは本当に恐怖に怯えきっての言動ではない。いや、恐怖もあるにはあるが、今のメルトの思考の半分以上を占めるのは【眼前の人物たちをどう利用し、生き残るか】というもの
もしも、現在自分が置かれている環境が【ブレイブ&モンスターズ!】に酷似した世界であるというのであれば、自分が気絶する前に目撃した「あの」レトロスケルトンをパートナーに据えた、
アイテム増殖バグ用のゴミ編成で生き残れる筈がないと。そう考えての打算的行為であった
最も――初心者であると自称したにも関わらず、会話に【新参】【寄生】といった初心者が使用しないワードが会話の所々に入っている辺り、
詰めが甘いというか、対人コミュ力が圧倒的に不足しているメルトであった
【明神がトイレに行っている間に、起き抜けに初心者を装って寄生依頼】 >>ウィズリィさん
【質問なんですが、『運転手』についての概要って何か考えてますか?
それともこちらで勝手に設定しちゃってもいいんでしょうか?】 >真一君
【特に決めていませんー。好きに設定しちゃってください!】 便乗!
>>真ちゃん
【妹さんのお名前を教えてください!】 >>189
【了解です! では、こちらで考えた設定を使わせて貰いますね】
>>190
【名前は『雪奈(ゆきな)』で、年齢は真一たちの一つ下って感じでお願いします!】 ハイパーウンコ支援してるアホがいるスレはここか?
俺が代わりにウンコしたるわ
おう 真一はグラドの背の上に乗ったまま、ゆっくりと荒野へ降下する。
死闘で火照った体を冷ます夜風の感触が、妙に心地良く思えた。
「あれは、魔法機関車か……?」
そして、戦いの終わりを告げるゴングのように鳴り響く警笛の方に目をくれると、遥か彼方まで続くレールの上を汽車が走って来ていた。
一昔前の蒸気機関車を連想させる、レトロな外観でありながら、荘厳さも併せ持った豪奢な装飾。
あれは、ブレモンのプレイヤーなら誰もが知っている乗り物――魔法機関車に他ならなかった。
汽車が疾駆する様を眺めつつ、地上に足を着けたグラドの背から、真一はひょいと飛び降りる。
それから真一が優しくグラドの頭を撫でてやると、グラドは嬉しそうに鼻先を擦り付けてきた。
「お前にも、随分無茶させちまったな。……ありがとよ、相棒。あとはゆっくり休んでてくれ」
真一はスマホを操作して〈召喚解除(アンサモン)〉のボタンをタップする。
すると、召喚時と同様に眩い光がスマホから放たれ、グラドはその中に消えて行った。
ゲーム内の仕様と同じなら、このように休ませておけば時間経過と共にグラドの体力も回復する筈であった。
>「……真ちゃん」
真一とグラドがそんなやり取りをしていると、こちらへ歩いてくるなゆたの姿が目に入った。
激しく肩を持ち上げているその様子を見れば、なゆたが激怒しているのは明らかだった。
「――痛っ!!」
そして、なゆたが振り下ろしたゲンコツを頭に食らい、真一は思わず声を上げる。
――いや、実際には藁人形がダメージを肩代わりしてくれたおかげで痛みは感じなかったのだが、条件反射でそう叫んだ。
>「なんなのよ、今の戦いは!? どこの世界にパートナーモンスターと一緒に戦うマスターがいるのよ!
あの炎精王の剣も! 限界突破も! モンスター用のスペルカードなんだから!
あんたいつからモンスターになったのよ!? わたしはモンスターを幼馴染に持った覚えはないっ!」
>「まだ、ここがどんな場所なのかもわかんないんだよ!? やられて、ゲームオーバーになるだけならいい。
ゲーム続行不可になって、この世界から元の世界に戻れるなら、わたしだってすぐにそうするよ。
でも、そうなるとは限らない! モンスターに傷つけられたら、本当に怪我をして! 死んじゃうかもしれないんだよ!?
そうなったらどうするの!?」
なゆたは矢継ぎ早にお小言を繰り出すが、そう言われると真一にも言い返したいことはあった。
何故真一があんな戦い方をしたのかと言えば――それは、グラドを護るためだ。
まだレベルの低いグラドが、あの蝿の群れと単騎で打ち合ったのならば、恐らくなゆたがコンボを決める時間も稼げなかっただろう。
自分のプレイヤーとしての未熟さを理解しているからこそ、真一はグラドと共に戦い、力を合わせることを選んだのだ。
実際それは功を奏した部分もあると思っている。
真一はそう主張しようと口を開きかけたが、そこでなゆたの瞳に涙が滲むのを見て、思わず「うっ」と息を詰まらせる。 >「……心配、させないでよ……。あんたにもしものことがあったら、わたし……。
あんたの家族に、なんて説明すればいいのよ……!?」
>「テンションが上がっちゃったのはわかるけど、もう二度とあんな無茶なことはしないでね!
じゃないとぉ〜……真ちゃんの好きなハンバーグ、もう作ってあげないから!
わかった!? 『はい』は!?」
女に泣かれると弱いのは、あらゆる男の性というやつだ。
真一は気不味そうに目を逸らしながら、右手の人差し指で頬を掻いた。
「……まぁ、なんだ。お前に心配させちまったのは悪かったよ。
もうあんな無茶はしない――とは言えねーけど、お前と一緒に元の世界に帰るまで、絶対に死なないってのは約束する。
……その、お前が作ったハンバーグを食えなくなっちまうのも困るしな」
真一はそう言いながら、両目に涙を浮かべるなゆたの頭を、右手でポンポン叩く。
しかし、その後になゆたが小声でぼそぼそと何かを言っていたのは、ラノベのような難聴スキルを発動して聞き逃した。
>「真ちゃん、この子も連れて行こう。ここに置き去りにはできないよ」
――と、二人がそんな痴話喧嘩を繰り広げたあと、不意にプラットホームで倒れている人影を見付けた。
どうやら中学生くらいの子供のようであり、その服装や隣に付き添っているパートナーらしきモンスターを見れば、恐らくは彼女も真一たちと同じく、現実世界から飛ばされてきた人間なのであろう。
「……息はあるし、気絶してるだけみたいだな。勿論ここに置いていくわけにもいかねーし、一緒に連れてくとするか」
真一は倒れている少女の下に手を差し入れて持ち上げる。
見るからに小柄な少女ではあるが、こうして抱き抱えてみると、驚くほど体重が軽いのが分かった。
>「うふふ、真ちゃんゆぅんやねえ。
こんな可愛い彼女を泣かしたらあかへんよ〜」
>「見させてもらったけど〜真ちゃんとなゆちゃんて結構好対照なパートナーやデッキ構成みたいやん?
一緒に肩を並べて戦う事は出来ても、うちがしよったみたいにフォローや守ってあげる事は難しいやろうからぁ辛いと思うんよ
うちが出来るからと言ってあまり助け過ぎても、なゆちゃん彼女としての立場もあらへんやろうしねぇ
そういうところ、ちゃ〜んと汲んであげるんが、色男ゆうものやよ〜」
そんな一幕の後、真一となゆたが魔法機関車の方に足を進めると、誰かが二人に話し掛けて来た。
彼女の声を聞いて、真一はすぐにピンと来る。
先程のベルゼブブとの戦闘の際、イシュタルという名のスケアクロウを従えて、自分たちをサポートしてくれたプレイヤーで間違いないだろう。
「ん、その声は……アンタがスケアクロウのマスターか!
さっきは助かったぜ、ありがとな! ……って、いや、俺とあいつは彼氏とか彼女とか、そういうのではないから!」
挨拶もそこそこにして、何やら好き勝手なことを言ってくるみのりに対し、真一は慌てて手を振って否定する。
そんな様子を見て、みのりは相変わらずニヤニヤと笑みを携えたまま、一足先に魔法機関車へと乗り込んでいってしまった。 >「えーと……、こんばんは?」
>「……こんばんは。メロという子は知らないけれど……ええ、この乗り物が『王』の迎えよ」
そんなこんなでようやく魔法機関車に乗り込むと、中には既に先客らしき少女が居た。
しかしながら、彼女はこれまで出会って来た何人かとは違い、現実世界の人間ではないようだった。
魔女さながらのローブを纏い、黒髪とオッドアイの双眸を持つその姿は、真一もゲームの中で見たことがある。
あれは――“魔女術の少女(ガール・ウィッチクラフティ)”というブレモンのモンスターだ。
その愛らしい容貌などで人気があり、真一がブレモンを通じて話すようになったクラスメイトの小林君(キモオタ)も、パートナーとして愛用していた記憶がある。
>「ナユに、シンイチ、それにミノリね。それから……」
>「俺は……『明神』とでも呼んでくれ。本名プレイは好きじゃないんだ」
「なゆが言ってた通り、俺は赤城真一だ。……そっちのアンタも! さっき俺たちを援護してくれたリーマンだろ?
あの時はおかげで助かったぜ。これからよろしくな!」
各々が自己紹介を始めたのに割って入りつつ、ベルゼブブ戦で共闘したリーマンにも声を掛ける。
あの戦いの後、勝手に先走ってベルゼブブを捕獲しようとしていた点と、この世界で何故か本名を隠すのは少しだけ引っ掛かったが、あまり細かいことを気にし続ける性格でもない。
真一は快活な笑顔を見せながら、明神に向けて親指を立てた。
>「向かう先は王都よ。王都キングヒル……偉大なる『王』のおひざ元ね。
食事と寝床は提供されるはずよ。贅を尽くした、とまではいかないけれど料理人は全力を尽くすはず。
個人の嗜好に合うかまでは保証しないけど。あと、トイレはあっち」
軽く挨拶を済ませると、明神はトイレの方へ飛んで行ってしまったが、魔女術の少女との問答は続く。
王都キングヒル――とは、このアルフヘイムの覇権国家である“アルメリア王国”の都だ。
ゲーム内ではプレイヤー達が最初期に訪れるステージだが、ここが赭色の荒野ならば、地理的にはアルメリアの最果てだ。
この魔法機関車に乗っても、王都に着くまでにしばらく掛かりそうだということは理解した。 >「まずは、道すがら事情を説明してもらえるかしら?それから――あなたのことをなんて呼べばいいのかも、ね」
>「そうね。話せば長くなる……と言いたいところだけど、わたしもそのすべてを把握しているわけじゃない。
わたしにわかる範囲の話でよければ、ミョウジンがトイレから戻ってきてから話すわ。
詳しい話は、『王』から話していただけることになっているから、それを待って頂戴。
……あと、ユーザーフレンドリーとかクソゲーとかは……恥ずかしながら、よく分からない。ごめんなさい」
なゆたの相変わらずなマシンガンクエスチョンで、相手も若干たじろいでいたが、聞きたいことは大体言ってくれた。
しかし、どうやらこの案内者も、スノウフェアリーのメロと同じくそこまで深い事情を知っているわけではないらしい。
結局のところ、真一たちがここへ連れて来られた理由も、元の世界に帰るための手段も、王都へ行かないことには分からないようだった。
>「ちょっ、うあっ、そして痛いですっ!?」
そんな最中、真一が魔法機関車まで運び、なゆたが膝の上で寝かせていた少女が目を覚まして座席から転げ落ちた。
真一となゆたが「あっ」と声を上げる間もなく、少女はそそくさと隣の席に身を隠してしまう。
>「あ、あのっ!!……ど、どうも。私はPL名【メタルしめじ】です。、ええと、皆様が私をここまで連れてきてくださったのでしょうか……?
もしそうなら、ありがとうございます……それで……《私は新参でとても弱いので》この訳が判らない状況に着いていけそうにありません
なので……なので、寄生みたいで申し訳ないのですが、暫くの間皆様に同行させて頂きたいのですが……」
そして、一通りの会話が終わったのを見計らい、少女は再び姿を表した。
「言われなくても、お前みたいな子供をこんな場所に置いてくつもりなんてねーよ。
お前は必ず、俺たちが元の世界に連れ帰ってやるから心配すんな! これからよろしく頼むぜ、しめ子!」
即興で変なニックネームを付けて呼ぶ辺りは真一らしいが、ともかくこれで顔合わせは済んだ。
五人の人間と、一人のモンスター。総勢六人の奇妙なパーティではあるものの、右も左も分からぬ異世界を生き延びるためには、この面子で力を合わせなければならない。
真一は気を引き締めながら、あらためて一人ひとりの顔に目を落とす。
『……皆様、ご挨拶は済みましたでしょうカ?
初めましテ。ワタシはこの汽車の車掌兼運転士を務めさせて頂く“ボノ”と申しまス。
ご覧の通り人形の身ではありますが、必ずや皆様を王都までお連れしますので、今後ともよろしくお願い致しまス』
――その時、車両の前の方から、一体の人形がこちらへと歩いて来た。
と言っても、それはただの人形ではなく“ブリキの兵隊”というブレモンのモンスターだ。
戦闘力は低いが、特定エリアにしか出現しないため地味にレア度は高く、滑稽な可愛げのある容貌も相まって、マニアの間では奇妙な人気がある。
「――よし、それじゃあ早速出発しようか! 目指すは王都だ。こんなところで、いつまでも立ち止まってられないぜ!」
真一の号令に従い、ボノは一礼するとさっと踵を返して、車両の先頭へと消えて行った。
そして、魔法機関車は再び夜空に向けて、一際甲高い警笛を放つ。
車輪はカラカラと音を鳴らしながら回転し、ゆっくりと線路を前進し始める。
かくして、少年たちはこの異世界で出会い、長い旅路の第一歩を踏み出した。
――これは後に“勇者(ブレイブ)”と呼ばれる彼らと、その守護者が紡ぎ出す、勇気と友情の物語のプロローグであった。
第一章「旅立ちの夜」
完
【これにて、第一章完結です!
ひとまずお疲れ様でした。まだまだ先は長くなると思いますが、今後ともお付き合いして貰えると嬉しいです。
この後に次章の導入を投下する予定なので、もう少々お待ち下さい】 【なゆたPLでございます。
第一章が終わり、これからというところに水を差すようで、大変心苦しいのですが。
このたびは私の軽率な行動で、スレの皆様に多大なるご迷惑をおかけしてしまいました。
慎んでお詫びをさせて頂きます。
私たちが折角みんなで楽しいことをしているのに、くだらない茶々を入れて妨害する行為。
それがどうしても、どうしても許せなくて、衝動的にこんな愚かな行為に走ってしまいました。
これが許される行為であるとはもちろん思っておりませんし、我ながらなんて短慮だったのだろうと思います。
完全に無視するか、もしくはきちんと抗議するかすればよかったのですが、荒らしにそんなことをしても無駄と思い。
目には目を、の精神でこちらも荒らし行為に踏み切ってしまいました。
本当に、スレの皆さまにはお詫びの言葉もありません。申し訳ありません。
このような行為をする人間がいては、皆様も楽しく遊ぶことはできないと思います。
何より、私自身自らのやった行為が情けなく、皆様に顔向けすることが出来ません。
幸い、たくさんの方が参加されていますので、私がいなくなってもスレに影響はないかと思います。
ですので、大変残念ですが、私はこれにておいとまをさせて頂こうと思います。
なゆたについては、幸い章の区切りということで、勝手ながらGM様預かりということにして頂き、
何らかの理由によってキングヒルに残留ということにして頂ければ大変ありがたいです。
本当に、申し訳ございませんでした。
ブレイブ&モンスターズの世界が今後も盛り上がることを祈念致しております。
なゆたPL 拝】 >>198
【……えっ!?
いきなり何を言ってるのか意味が分からなかったので、他スレでIDを探して理解しました。
まぁ、本音言うとなゆたさんが相手と同レベルのことをしてるのはショックでしたが、
気持ちはよく分かりますし、ムカついていたのは私も同じです。
ただ、正直向こうがどうなろうと、別にどうでもいいというか……わざわざ荒らしに行くのって無駄な労力だと思うんですよね。
そんなことに時間を割くよりも、こっちはこっちで楽しむことに全力捧げた方が良いんじゃないかなーというのが私の考えでした。
ともあれ、あなたが誰に対して謝罪したいのか分からないのですが、
私や他の参加者さんに謝りたいというのであれば、今後もスレに残って頂けるのが一番効果あると思います。
もしもブレモンのスレ自体に飽きたなら仕方ないのですけど、
そうでないなら是非ともヒロインを続けて欲しいのですが、如何でしょうか?】
そこはいったん辞表受理して別キャラででもいつでも帰ってきて下さい、が正解じゃないか
周囲は気にしてないとしても本人が気まずい思いをするからな >>200
【勿論なゆたさん自身の気まずさとか、周囲から批判を受けるかもしれないということは理解してます。
しかし、そういった諸々を分かった上で、それでも私はなゆたさんの擁護側に回るので、
「崇月院なゆた」に残って欲しいという意思を表明したつもりでした。
ちょっと今から仕事なので、しばらく返信はできないかと思いますが、
こちらの考えは分かって貰えると嬉しいです】 【状況把握
このスレの参加者ではないけど、関係者としてコメント
こちらの気持ちとしては一切不問、真一君に同意
ですが、それでは収まらないでしょうから、罰として向こう一ヶ月参加スレ以外のあらゆるスレを閲覧しない(ウォチ板も)
その上で現在参加中のスレに参加継続する
苦しいとは思いますが罰として受け入れてください
そして責めるも謝罪も同様に蒸し返さず蒸し返されても目に写さない、触れないこと
それで決着とし受け入れてもらえれば有難い
一ファンの読者より】 【他のスレのことは知ったこっちゃないし調べるつもりもないのでここで知った情報だけでコメントします。
私個人としては、このままなゆたちゃんが抜けて続けるより同僚として一緒にプレイ出来たほうが百倍楽しいと思うんで残って欲しいですね。
明神とモンデンキントの因縁も未消化のままじゃ滅茶苦茶勿体無いと思いますし。
あとはまぁ、これ言っていいのか分かんないんですけど、嫌な思いをしたのは私じゃないんで明日には一連のゴタゴタ全部忘れる予定です。
以上の理由から合理的帰結としてなゆたちゃん残留に一票。】 >>202
あーあ、お前みたいな厨がいるからだよ
なゆたは真面目に見切りをつけて抜けておいた方がいいよ
陰湿なのに粘着される もはや名無しで擁護してるのが泣けるわ。
終わりだよ、ハイパーウンコさん。 【全力で調査完了!
つまり長期間TRPGスレ全般に粘着してた例の荒らしの正体が判明して、その荒らしが謝罪も無く逃走!
更には新スレを立てて知らぬ存ぜぬで乗り切ろうとしたから深夜の勢いでついムシャクシャしてやった!
今は後悔もしてるし反省してるという訳ですね!
うん!賞賛とか肯定とかをするつもりはさらっさらありませんが
ぶっちゃけあの荒らしは鬱陶しかったから理解は出来ますな!
とりあえず、今の時点で嫌な思いをしたのは例の荒らしだけなので気にせず参加継続しましょうよ!
というか、ソシャゲ玄人のなゆたさんが居ないと私は色々困りますので!
謝罪というなら是非参加継続をしてくださいお願いします!】 【こんばんはー
まあ、語りだすと長くなっちゃうので手短に
なゆたさんがの自責の念も危惧している事もそれが現実のものとなっても全て了承します
その上で
第二章もよろしくね!
元々荒らされているのですし、今更理由づけ如き一つ増えても変わりません
それよりもなゆたさんを失う方が痛いのでね
大見栄切ってしまった手前また戻りにくいとは思いますが、それを押してこちらの手を取ってくださいな】 >>207
それ言っちゃダメなんだよ
アグリッピナは確定じゃないんだからさ 【注意:以下の発言には自己中心的かつ身勝手な内容が多数含まれます。
そう言った発言に免疫のない方は読み飛ばし推奨。】
【なゆたちゃんPLさんの発言を読んで、正直ちょっとほっとしました。
荒らしはスルーは鉄則。ですが、それはつまり同僚が荒らしをどう思っているか分からないって事でもあるわけで。
今回の荒らしに直にびしびしぶっ叩かれた(明確な証拠はないですが、同一人物でしょう。多分)身としては、ちょっと不安だったところもありました。
同僚の皆さんはこの荒らしをどう思っているのか。明言はしてないが同調してるのではないか。むしろ同僚の誰かがこの荒らしなのでは?
叩きを口実に撤退しようか、ちょっと悩みました。最終的にはスルーしてレスを返せたのは皆さんご存知の通りですが、正直大分ギリギリでした。
そんな中、なゆたちゃんPLさんは荒らしに怒っていてくれた。怒りのあまりルール無視な行いに出てしまうほどに。
もちろん私個人をかばった訳ではないとは思いますが、それでも大分救われました。
大分長文になったので、最後に一言。
なゆたちゃんPLさん、ありがとうございました。
できれば、これからも一緒に遊べれば嬉しいです。】 >>なゆたさん
【皆の意見が出揃ったようなので、あらためて。
私は細かいことなんてどうでもいいんで、それでもなゆたさんと一緒に続けたいと言いましたが、
見ての通り、これはメンバーの総意でもあります。
TRPGは仕事でも何でもない遊びなので、あなたがしたくないことを強要はできませんが、
もしもやり直したい気持ちが残っているのなら、もう一度こちらの手を取ってみませんか?
このままやめてしまうよりも、きっといい結果にしてみせるってことは約束します。
一応区切りは必要なので、今から三日間だけ待ちます。
その間に返事を頂けなかった場合は、残念ながら次章を開始させて頂きます。
……ってわけで。
いつまでもつまんねーこと言ってないで、さっさと行こうぜ、なゆ!】
0198 崇月院なゆた ◆uymDMygpKE 2017/10/20 02:13:14
【なゆたPLでございます。 
第一章が終わり、これからというところに水を差すようで、大変心苦しいのですが。 
このたびは私の軽率な行動で、スレの皆様に多大なるご迷惑をおかけしてしまいました。 
慎んでお詫びをさせて頂きます。 
私たちが折角みんなで楽しいことをしているのに、くだらない茶々を入れて妨害する行為。 
それがどうしても、どうしても許せなくて、衝動的にこんな愚かな行為に走ってしまいました。 
これが許される行為であるとはもちろん思っておりませんし、我ながらなんて短慮だったのだろうと思います。 
完全に無視するか、もしくはきちんと抗議するかすればよかったのですが、荒らしにそんなことをしても無駄と思い。 
目には目を、の精神でこちらも荒らし行為に踏み切ってしまいました。 
本当に、スレの皆さまにはお詫びの言葉もありません。申し訳ありません。 
 
このような行為をする人間がいては、皆様も楽しく遊ぶことはできないと思います。 
何より、私自身自らのやった行為が情けなく、皆様に顔向けすることが出来ません。 
幸い、たくさんの方が参加されていますので、私がいなくなってもスレに影響はないかと思います。
ですので、大変残念ですが、私はこれにておいとまをさせて頂こうと思います。 
なゆたについては、幸い章の区切りということで、勝手ながらGM様預かりということにして頂き、 
何らかの理由によってキングヒルに残留ということにして頂ければ大変ありがたいです。 
本当に、申し訳ございませんでした。 
ブレイブ&モンスターズの世界が今後も盛り上がることを祈念致しております。 
なゆたPL 拝】 このスレしか見ていない方もいると思うので
なゆたさんはこれ以上迷惑をかけられないということで引退の決断をされたようです。
今後のこのスレの発展を願っておられました。
引退される方が痛手、と皆さんが言っているのは分かっていると思います
引き止めてくれたことに感謝もしていると思います
でも防波堤無く名無しが来る環境ではきっと彼女自身が耐えられないんじゃないかと
悪く思わないでやってくれると嬉しいな、というのが私の身勝手な願いです
一名無しより 【なゆたPLでございます。
大変申しわけございません。先日からスレを見るまいと、すべて消しておりました。
ただただ自分の愚かな行動が許せなくて。それに何より、皆さんに叱責されるのが怖くて。
目と耳を塞いでいました。
けれども、私のスレの方にて名無しの方にご忠告頂き、これも罰だろうと思ってスレを拝見したところ、
皆様からとても温かなお言葉を頂き、意外であると同時に改めて、こんな素晴らしい方々にご迷惑をお掛けしたのだと。
自らの短絡的な行いに、慙愧に堪えない思いです。
私は許されないことをしました。
でも。詳しいことは別の場所に書いたのですが、ルール違反だと分かっていても許せなかったのです。
こいつさえいなくなれば、TRPGは平和になる。そう思いました。
みんなが楽しくやっているのに、それをメチャクチャにしようとする荒らしが許せなかった。
ウィズリィさんを叩き出そうとする行為に対して、知らんぷりできなかった。
相手が尻尾を出したなら、なおさら。
本当に私は愚かでした。
皆さん、こんな私を引き留めて下さって、ありがとうございます。
温かなお言葉の数々、本当にありがたいです。
もし私が復帰すれば、荒らしは嵩にかかって攻撃してくることでしょう。
皆さんにはお見苦しいものをお目にかけることになると思います。
でも。もし、それでも宜しければ。前向きに検討させてください。
私は自分のスレを持っています。まずはそちらの方々にお伺いを立てたいと思います。
それまでお待ち頂けますでしょうか。
順番は、私を一番最後にして頂ければ……。私の順番が回ってくるまでをリミットと、よく考えたいと思います。
本当に皆さん、ご迷惑をおかけして申し訳ありません。
どうか、私の我侭をお許し下さい。
なゆたPL 拝】 >>215
【お返事を頂けて良かったです!
では、とりあえずなゆたさんを6番目に変更という形で対応させて貰いますね。
こちらも近日中に新章の導入を投下しますので、もう少々お待ちください。
また、私自身があまり荒らしを気にしないタイプなので、そこまで重く考えてはいなかったのですが、
それによってスレを辞めるところまで思い詰めてしまう方がいるのならば、別板に移籍することも検討しようと思っています。
ですので、他の方々もこれからは辛くなる前に相談してください。
それと一応ですが、今後のために避難所も立てておきました。
SS投下などでもいいので、ご自由にお使いください!】
【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!in避難所
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/3274/1508770829/ >>215
【よかった……なによりも、よかった……
スレを見るのも辛かった事は察するに余りありますが、それでもこうしてスレを見て、私たちの声がなゆたさんに届いたことが何よりも嬉しいです
正味な話、名も知らぬだれに何を言われるより、共に楽しむ同僚が苦しみ本意でない事でスレを離れていくのが一番つらいですから
なゆたさんの気持ちは判りますし、同じ意見を持っております
>>208に書いた通り、なゆたさんの危惧する事も承知しておりますし、それを了承したうえで言葉をかけさせてもらっております
おそらくなゆたさんも、自分が叩かれているのであれば知らんぷりもできたでしょう
ですが自分以外の、今回はウィズリィさんでしたが、同僚を狙って叩かれる
ウィズリィさんがどれだけ苦しんでいるか、それすら推し量れず、声をかける事も出来ない状況が辛かったのだと思います
というか、私がそういう状態でしたから
ですので、もし今後なゆたさんに限らず叩かれるようでしたら一声叩かれている同僚の方にかけさせてもらいたいですね
無視する事が最良なのかもしれませんが、同僚間の疎通が出来ず不安になってしまうくらいなら、と思うのです
ま、ともかく、今はゆっくり心落ち着けてくださいな
そして落ち着いたらまた共にブレモンを楽しみましょ〜
お待ちしておりますわ】 >>215
頼むから消えて
あなたの犯した罪はずっと残るから
その傲慢さと陰湿さが不愉快だから >>215
【あなたに残ってくれる意志があるのならこんなに嬉しいことはありません。改めて歓迎出来ることを祈っています。
今回の件は私にとっても荒らしとの向き合い方を考えさせられる出来事でした。
荒らしはスルーが鉄則、これは確かに正しいことです。しかし、ターゲットにされた同僚さんには掛けられる言葉があったんじゃないかとも思いました。
ウィズリィさん、何も庇えなくてすみません。私はあなたの味方です。あなたが荒らしの暴言に負けず続けてくれて本当に良かった。私達を信じてくれてありがとう。
もっと早く、ちゃんと伝えるべきでした。
だから、なゆたさんの行動を大っぴらに褒めるわけには行きませんが、正直よく言ってくれた!って気分です。
ただ大っぴらには言えないので、まずは荒らし問題抜きで一緒に遊んでて楽しい同僚としてのなゆたさんの帰還を楽しみにしています】 悪意をもってやったことだからな
この人が、って感じ 今回の件の問題は、それなりのベテランGMが報復荒らしで、更には立ったスレを軒並み潰しにかかっていた荒らしと同じ口調だったこと。
もう信用できないというか、この板が怖いんだよね。。。 汽車の窓際で頬杖をつきながら、真一は朝焼けで黄金色に染まった景色を眺めていた。
共に乗り合わせた他の仲間たちは、未だぐっすりと夢の中だ。
流石に昨日は皆も疲れ切っていたようで、魔法機関車に乗ってから小一時間ほど話し合いをしたあと、全員すぐに眠りに落ちてしまった。
真一は元々早起きなタイプなので、こうしていち早く目覚め、一人で物思いに耽っていたのだ。
どういうわけか、この異世界に飛ばされてしまい、初日はとにかく目の前の事態に対処するので精一杯だった。
しかし、一晩眠って冴えた脳裏に浮かぶのは――やはり、あちらの世界に残してきた、家族や友人たちのことであった。
家族には特に心配を掛けてしまっているだろうし、妹の雪奈が泣いている姿など考えると、どうしても胸が痛む。
一刻も早く、元の世界に帰らねばならない……と、思う。
自分自身のことだけではない。なゆたの両親だって今頃は気が気でない筈だし、他のメンバーにも、帰りを待っている人がいるだろう。
必ず全員を連れ帰ると、真一は断固たる決意を誓う。
世界の危機だか何だか知らないが、勝手にこんなところへ呼び付けた“王”とやらは、一発ブン殴ってやらねば気が済まない思いだった。
「……ん、故障か?」
――と、そこで不意に魔法機関車はガタンと音を立て、その場で進行を止めてしまった。
今の振動によって仲間たちも目を覚ましたらしく、一体何事かと眠い目を擦っている。
「おい、何があった? まさか、もう到着したってわけじゃねーよな?」
真一は手元の伝声管を取り上げ、運転室にいる筈の車掌へと声を掛ける。
すると、しばらくしてからまたボノが姿を見せ、車両の前の方からこちらへと歩いてきた。
ボノは申し訳なさそうな表情を浮かべながら――ブリキのくせにそんな顔をしているのは滑稽だが――おずおずと、こう切り出した。
『その、大変申し訳ありませン……燃料切れでございまス。
王都からこちら、今まで休みなく走り続けていたものでしテ……』
ボノは相変わらずの微妙なカタコトで、とんでもないことを言ってのける。
王の迎えだとか名乗っていたくせに、呆れた手際の悪さであった。
「は!? おいおい、燃料切れって……そういやこいつは何で動いてるんだ? 水と石炭?」
『いえ、魔法機関車ですのデ。あくまでも動力は魔力でス。
魔力の結晶体である“クリスタル”を焚べれば、また動かすことができるのですガ……』
見た目が蒸気機関車っぽかったので、真一はそう尋ねてみたが、どうやら違うらしい。
ボノが言ったクリスタルとは――ブレモンのゲーム内においては、リアルマネーを課金したりデイリーミッションをクリアすることによって手に入り、ガチャを回すなどに使うことができる、ソシャゲ特有のアレである。
ボノの話によるとこの魔法機関車は、クリスタルを炉に焚べることで魔力を供給しているようであった。 「んー、仕方ねーな。クリスタルなら俺も少しは蓄えがあった筈だし、分けてやるよ。
……って、あれ。俺のクリスタル、こんなに少なかったか!?」
真一は自分のスマホを取り出し、画面に表示されたクリスタルの量を見て驚愕する。
なゆたやみのりのような重課金勢ではないが、真一も日頃からクエストやデイリーミッションで得たクリスタルを貯めていたので、それなりの余裕はある筈だった。
しかし、今映し出されている数値は、自分が思っていた半分以下だったのだ。
『皆さんの持っている“魔法の板”も、魔力によって動いているのではないのでしょうカ?
それならバ、使用する度にクリスタルを消費してしまうのも仕方ないと思いますガ……』
そう続けるボノの言葉を聞いて、真一はピンと来る。
この世界に来てからずっと、スマホのバッテリー残量は気になっていた。
今の状況でスマホが使えなくなることは死活問題であり、かと言って充電する方法もありそうにない。
どうやって電池を手に入れようか考えていたものの、何故かスマホのバッテリー表示は100%のままで、減少する様子は一切なかった。
既に常識外れの世界観なんだし、そういう便利な仕様になったのだろうと納得していたが、そこまで都合のいい代物ではないようだ。
つまり、この世界におけるスマホとは――まさしく魔法のアイテムなのだ。
であるため、電力ではなく魔力によって動作する。
そして、魔力を供給するためには、その結晶体であるクリスタルが必要となる。
非常に分かりやすい理屈だったが、だとすればクリスタルの残量は生命の危機に関わる。
昨日は大分スマホを使ってしまったが、この勢いでクリスタルが消費されていくとなれば、他の奴らだって長くは保たないだろう。
何とか追加購入できないかと試してみるも、やはり向こうの世界とはリンクしていないようで、クレジットカードもウェブマネーも利用できなかった。
「こりゃ、かなりやべーな……何とかクリスタルをかき集めないと、王都に行くどころじゃなくなっちまうぞ」
真一が頭を抱えていると、そこで不意にスマホがピロンと通知音を鳴らした。
電波の飛んでいないアルフヘイムでスマホが反応するとすれば、ブレモン関係に他ならない。
慌ててスマホの画面を見てみると、そこには新着クエストが一件追加されていた。
そして、その内容とは――
「“ローウェルの指輪”を手に入れろ。報酬は……クリスタル9999個だって!?」
ローウェルの指輪とは、ブレモンの作中では有名な“大賢者ローウェル”の遺物である。
大変希少な激レアアイテムであり、やり込んでいるプレイヤーでさえ、ほとんどお目にかかったことがない程だ。
かなり難易度が高そうなクエストなのは間違いないが、それにしても――この報酬量。
通常のクエストなどで手に入るクリスタルが3〜5個程度ということを考えれば、あまりにも破格の量だということが分かるだろう。
真一は更に画面をタップして、クエストの詳細を見る。
そこには一枚のマップと、恐らくは指輪の在り処を示しているのであろう光点が表示されていた。
地図の指し示す場所は“鉱山都市ガンダラ”。
アルメリアの金脈とも称される街であり、現在の地点からならば、歩いても半日は掛からない筈だ。
そして、真一はニッと笑いながら、スマホの画面を仲間たちに見せる。
「――どうやら、次の目的地が決まったみたいだぜ」
【第二章開始!
既に話した通り順番変更になりますので、次レスは明神さんからお願いします!】 やらないほうがいいよ
きっと悪い狐さんがハイパーウンコ召喚しちゃうよ 名前:ザ・グレート・ウンコ/The Great U.N.C.O. 年齢:17歳
性別:ヒミツ
身長:255cm
体重:ヒミツ
スリーサイズ:55-155-255
種族:ウンコ
職業:ウン高校生
性格:ウンコ好き かわいいもの好き キツネ嫌い
特技:ウンコ全般
容姿の特徴・風貌:
肩甲骨までの長いウンコをシュシュして左側に纏めたウンコと、頭頂部のウンコ
気の強そうなつり目がちの整ったウンコ、学校指定のウンコ
簡単なキャラ解説:
赤城真一の自宅の隣に住むウンコ。
学校ではウンコで通っており、生徒会室でウンコをしていることもあり教師の受けはウンコ。
成績優秀、運動神経も人並み以上のウンコで学校ではウンコの「ウ」の字も出さない。
「ブレイブ&モンスターズ!」に関しても、なんとなくウンコ勢……
と思いきや、実は実家でのウンコ代のすべてを「ブレイブ&モンスターズ!」につぎ込むウンコ。
ウンコなので限りはあるものの同年代のプレイヤーより遥かにウンコ。
なゆたに「ブレイブ&モンスターズ!」を勧めた張本人。
実家は寺。「ウンコ」という名前で幼い頃からかわれたのが心の傷になっており、周囲には「ザ・グレートウンコ」と呼ばせている。
成績優秀だが肝心なところでウンコな、いわゆる荒らしのなゆたキラー。
【パートナーモンスター】
ニックネーム:クソリン
モンスター名:ウンコマン
特技・能力:変幻自在の身体、耐久力に優れる
容姿の特徴・風貌:
普段は255センチ程度のウンコ色で楕円形のウンコ
硬さは普通のウンコ程度だが、命令によってダイヤモンド並みに硬化することも可能
簡単なキャラ解説:
「ブレイブ&モンスターズ!」のマスコットキャラ。
ぷよぷよしたボディとつぶらなウンコで人気。レア度は最高レベルだが、実はウンコ。
ウンコのえげつないデッキのコンボによって、舐めプしてくるなゆたを狩りまくる日々。
【使用デッキ】
・スペルカード
「形態変化・硬化(ウンコ・ハード)」×2 ……瞬間的に硬くなる。
「形態変化・軟化(ウンコ・ソフト)」×2 ……瞬間的に軟らかくなる。
「形態変化・液状化(ウンコ・リクイファクション)」×1 ……瞬間的に液体化する。
「糞散布(ヴェノムダスター)」×1 ……ウンコを振りまき対象に継続ダメージを与える。
「分裂(ディヴィジョン・セル)」×3 ……瞬間的に二対のウンコに分裂する。重ねがけで更に倍々で増える。水フィールドだと更に倍
「再生糞(リジェネレーション)」×2 ……なゆたに継続ウンコ効果を与える。
「麻痺糞(バイオトキシック)」×1 ……なゆたを麻痺させしばらく行動不能にする。
「限界突破(ウンコドライブ)」×1 ……魔力のウンコを纏い、身体能力を大幅に向上させる。
「鈍化(スロウモーション)」×1 ……対象の素早さを著しく下げる。
「融合(ウンコフユジオン)」×1 ……なゆたと合体して荒らしになる。
「糞回復(クソヒーリング)」×1 ……対象の傷を癒やす。
「浄化(ピュリフィケーション)」×1 ……浄化されて消える。
・ユニットカード
「命たゆたう原初の糞(オリジン・ビリーフ)」×2 ……フィールドが糞属性に変化する。
「排泄大移動(エクソダス)」×1 ……とにかく大量のウンコを召喚する。 「糞・糞・糞」と書かれたタイトルの怪文書を読み上げる。みんなドン引きだ。
そしてザ・グレートはウンコを撒き散らしはじめた。
【第二章開幕ウンコが全員を襲う】 ウンコは荒らしを探していた。その名は「崇月院なゆた」。この板を荒らす鬼才である。
ちなみに「鬼才」というのは本人の自演による弁で、あちこちで自分は天才で板を動かしていると自称しているらしい。
ウンコはなゆたを鎮圧するか、それとも一体化するか悩んだ。
ウーーーーーーーン…
コ。
【ここで他の皆さんに質問 なゆたをどうすればいいか? 名無しも歓迎します】 >「向かう先は王都よ。王都キングヒル……偉大なる『王』のおひざ元ね。
食事と寝床は提供されるはずよ。贅を尽くした、とまではいかないけれど料理人は全力を尽くすはず。
個人の嗜好に合うかまでは保証しないけど。あと、トイレはあっち」
「マジ?サンキューちょっとお花摘みに行って来るね」
ウィズリィとかなんとか名乗った魔女術の少女は、俺の質問に過不足なく答えてくれた。
そういうわけで俺は満を持して3番(隠語)に入ることにする。
括約筋に俺の持てる全ての力を注ぎ込みながら、ヒョコヒョコ歩きで客室を出た。
……それにしても、『王』か。
蝿の王だの炎精王だの石油王だの、この世界王様多すぎじゃね?
今更ノーマルな王が出てきたところでなんも畏敬できねーわ。
こういうフレーバー設定のガバガバ具合もザ・ソシャゲって感じで大変ノーグッドですね。
トイレまでの通路には窓があって、そこから外の景色を眺めることが出来た。
超高速で流れていく荒野。列車の進行方向にキングヒルがあるらしいけど、今んとこまだ地平線の向こう側だ。
にしても全然揺れねーなこの機関車。昔明治村でSL乗ったことあるけど結構ガタガタ言ってたのにな。
トイレ、トイレは何処……あそこか。うへっちゃんと男女で分けてある。妙なとこだけ現代的で笑うわ。
「この便座……大理石だと……!?」
ようやく再会できたお便所ちゃんはやはりというかなんというかすげえ豪華な造りになっていた。
形状は一般的な洋式便器だけど、なんとまぁ総大理石製だ。石の中にアンモナイトが浮いてやがる。
ケツに触るとこまで石で作ってどうすんの。ぜってー冷たいじゃんこれ。便座カバーくれー付けようぜマジでさぁ。
そんなこんなでおそらく生涯最高に美しい環境で俺は用を足した。
いっぱい出た。
「ただいまー自己紹介タイム終わった?」
懸念を一つさっぱり洗い流せて上機嫌の俺は、鼻歌交じりに客室に戻る。
するとなにやら真ちゃんが揉めていた。相手は俺の知らない新キャラだ。車掌っぽい服来てるし車掌なんだろ多分。
「そういや、列車止まってないか?こんな荒野のど真ん中で……」
真ちゃんと車掌の会話はまさにその件についてだったらしい。
曰く、燃料切れで当車両の運行がストップしたとかなんとか……マジで?
「なんで帰りの燃料積んでねーのよ。特攻隊じゃねえんだからさぁ」
どこの世界に片道分の燃料でお迎えに上がる使者がおんねん。
なに?キングヒルの懐事情ってそんな逼迫してんの?賓客に歩いて王都まで来いってか。
車掌が言うには、魔法機関車はクリスタルで動くらしい。
俺達に自腹を切れっていう行間を真ちゃんは読んだらしく、自分のスマホを手繰る。
>「んー、仕方ねーな。クリスタルなら俺も少しは蓄えがあった筈だし、分けてやるよ。
……って、あれ。俺のクリスタル、こんなに少なかったか!?」
猛烈に嫌な予感がして、俺もスマホのアプリを開いた。
プレイヤープロフィール画面の、所持クリスタルの数が……激減している!
自慢じゃねーけど俺はガチャとか回さない人だからクリスタルの貯蓄にはちょっとした自信があった。
それこそ、ブレモン史上最大のアプデにして悪名高き200連ガチャを余裕で回せるくらいには。
それが、まるで初心者のビギナーボーナス貰ったまま引退しましたみたいな数にまで減ってやがるのだ。
>『皆さんの持っている“魔法の板”も、魔力によって動いているのではないのでしょうカ?
それならバ、使用する度にクリスタルを消費してしまうのも仕方ないと思いますガ……』
「だからそういう仕様はよお!もっと早く告知しろっつーんだよクソゲーがよぉ!」 俺、オモクソスマホ構いまくっちゃったよ!荒野に一人でいるときクッソ暇だったからね!!
なにせ無人の荒野じゃ歩きスマホを咎めるのはサンドワームとコカトリスぐらいなもんだ。
そして絡んでくるそいつらは暴力で黙らせられる。世はまさに世紀末。イカれた時代にようこそ。
そういうさあ!死活問題に関わるような重要案件はさあ!パッチノートに書いとこうぜ、なあ!
>「こりゃ、かなりやべーな……何とかクリスタルをかき集めないと、王都に行くどころじゃなくなっちまうぞ」
「インベントリの水も食料も取り出せなくなっちまったら、俺達は今度こそ飢え死にだな……」
どころかスペルもサモンも使えないんじゃクソ雑魚コカトリスにもボコられかねないのが俺達生身の人間だ。
今のうちに真ちゃんに媚売っとくか?あいつ適当な棒でも持たせときゃ肉壁くらいにはなるだろ。
と、スマホに着信だ。当たり前のように圏外だし、ブレモンアプリの通知だな。
フラグの達成による新規クエスト受注のお知らせだ。
>「“ローウェルの指輪”を手に入れろ。報酬は……クリスタル9999個だって!?」
「なんだそのサービス末期みてーなインフレ具合は……」
9999個て。達成にリアル時間で一週間かかる超高難度クエストの最高報酬が確かクリスタル20個だったはずだ。
いや実際消費量から見た需要に対する供給って意味では釣り合い取れてるけどさぁ……運営さんはバランスとか考えない人?
クエスト詳細にはマップが付属されていた。ここから徒歩で半日行ったところにある……鉱山都市ガンダラ。
ガンダラはいわゆる素材掘りの聖地で、ポチポチ連打してるだけで金策になるから俺もよく利用していた。
大体業者のBotが走り回ってるからその辺のモンスター引っ張ってきてMPKしたりとアトラクションも豊富だ。
>「――どうやら、次の目的地が決まったみたいだぜ」
「向かう先に異論はないよ、真一君。だがここからまた半日歩き詰めというのはかなりしんどい。
俺や君は問題なくとも、ここには女の子もいるんだ。レッドラの背中に何人か乗せられないか」
先のベルゼブブ戦を見る限りでは、人間を乗せられるようなサイズのパートナーはレッドラだけだった。
スケアクロウに機動性は望めないし、皮鎧やスライムは論外。女子中学生はそもそもこいつプレイヤーなの?
「ウィズリィちゃんや、何か便利な乗り物とか借りられないか。魔女の箒とかそういうの、あるだろ?」
ブレモンのゲーム上では基本的に魔法機関車と飛空艇がプレイヤーの移動手段になるわけだが、
流石にこの世界で自転車とか騎馬的なポジションの道具がまったく発展しなかったとは考えにくい。
アルフヘイムの住人であらせられるところのウィズリィえもんがなんか良い感じの魔法道具出してくんねーかな。
……それから。
『ローウェルの指輪』を入手するこのクエスト、肝心の指輪がどうなるかクエスト概要だけじゃ分からない。
つまり、キーフラグとなる指輪は全員のインベントリに行き渡るのか、PTの代表者が一つだけ入手できるのかだ。
言うまでもなくローウェルの指輪は超クソレアアイテム。ベルゼブブ捕獲は失敗に終わったが、こいつは絶対に取り逃がせねえ。
もしも指輪がPTに一つしか手に入らないシステムだったら……今度こそ、出し抜く算段を付けねえとな。
【半日歩くのしんどいとゴネはじめる最年長】 そうだな、出し抜く算段をつけねえとな……ウンコを
ブボボボボボ……!!!!
『ローウェルの指輪』を入手するこのクエスト、肝心の指輪がどうなるかクエスト概要だけじゃ分からない。
つまり、キーフラグとなる指輪は全員のウンコを摘便し、確認しなくてはならないのだ!!
ブレモンのシステムやべえ、マジやべえ!!
【半日歩くのがしんどそうな最年長に「命たゆたう原初の糞」を発動】 >>233
一晩経ってるはずだぞ
よく読んだ方がいい こっちだった
>>233
そうだゾ
しっかり読んどけや 農家の朝は早い
夜明けとともに作業が始まるため、まだ薄暗いうちに起きて朝の準備を終える
そんな生活が染み付いているみのりは自然と目が覚めたが、ここは既にブレモンの世界。
もう起きる必要もないと起き上がらずに横になっていた。
が、魔法機関車が不意に停止するのを受けてそうも言っていられなくなる。
他の面々も起き上がってくるんい合わせ、みのりも体を起こす。
車掌のボノによると燃料切れだとか。
この魔法機関車の燃料は魔力の結晶体であるクリスタル。
ブレモンではミッションクリアーするなり課金で買うなりして入手できるもので珍しくもない。
珍しくもないのではあるが雲行きは急速に怪しくなる。
真一が驚きの声を上げ、明神の表情からも同様なのであろう。
この世界ではスマホは魔法のアイテム
すなわちスマホの動力もまたクリスタルであるという事だ。
この先王都に向かうにしても、スマホで各々がパートナーを呼ぶなりカードを使うにしてもクリスタルの消耗がネックになる。
補充しようにもクリスタル購入はできない様子。
クリスタルの補充は……スマホに舞い込む新着クエストだけが頼りなのだ。
ローウェルの指輪入手……報酬クリスタル9999個
降ってわいたようなそのクエストにもはや選択の余地はない。
というところまで話が進み、ようやくみのりが動き出した
「あらあら、燃料がないとはうっかり屋さんやねえ。
丁度破格のクエストも舞い込んで来はったことやし、真ちゃんの言う通りこのクエストでクリスタル手に入れへんとねえ
ふふふ、ローウェルの指輪のクエストって初めてやし、楽しみやわぁ」
微笑みながら真一の意見に同意する
正直な話、みのりはクリスタルについて心配はしていない。
確かに目減りはしていた。
していたのだが、それでも伊達に石油王と言われるほど課金をしているわけではないのだ。
デイリークエストや他クエストをほとんどしておらず、報酬によるクリスタル入手など片手で数えるくらいしかないのだが。
おそらく現時点にあってみのりのクリスタルは他のメンバーの持つクリスタルを合計した数よりはるかに多いだろう。
それを放出すれば、魔法機関車は再び息を吹き返し、おそらくは王都までたどり着ける。
だがあえてみのりはそれを言わない。
どれだけのレアアイテムであろうが、ガチャを絞られていようが、『お金さえかければ出るのであればそれは手に入れられるってじょとでしょう?』という感覚でゲームをしてきたのだ
だが、課金要素を打ち切られ、現実的な生活と仕事による束縛も受けない。
みのりにとって、この状況は初めて本当の意味でブレモンというゲームを楽しめている状況と言えるのだから。
「報酬9999なんて、さぞかし難しいクエストなんやろねえ。
協力し合わなクリアーでけへんやろうし、ちょいと皆さん今のうちに見たってぇな
お互い手の内知ってた方が連携しやすいやろ?
昨夜デッキ再構築もしましてん
特にうちのイシュタルは珍しいから皆さんどういうのか知らへんやろでねえ。」
総言葉を添えてスマホを差し出すと、そこにはスケアクロウのデータとデッキ一覧が表示されていた。 ニックネーム:イシュタル
モンスター名:スケアクロウ
特技・能力:防御力は無いに等しく機動力も低いが、HPと回復力は全モンスターでもトップクラスであり耐久度は高い
ダメージ反射を主体とするバインドコンボに適しているため拠点防衛には無類の強さを誇る
また、探知能力も高く、一定範囲内をテリトリーと定めるとテリトリー内の情報把握能力が高まる
150センチほどの案山子
顔はカボチャに目鼻を書き込み、眼深にとんがり帽子を被っている
案山子あり藁の体で何やら蔦が絡み付いている
やたらと目立つようで、MOBの注目を集めやすい
『不協響鳴(ルーピ―ノイズ)』……耳障りな声で嘲笑い周囲のヘイトを強烈に集める
『機能美の極致(ボルテックスエイジ)』……目玉風船に廃棄CDを吊り下げたものが爆竹の破裂音をまき散らしながら飛び出る。ダメージ無し
『長男豚の作品(イミテーションズ)』……藁を組み替え編み直すことで形を変える。なお機能は変わらない
簡単なキャラ解説:
スマホ向けアンチウィルスソフト会社とのコラボ企画で、グッズフルコンプリート(総額15万円)&アンチウイルス契約者へのプレゼントキャンペーンで契約者に送られる特典モンスター
聖域(田畑)の守護者と銘打たれているが、石油王のコレクターズアイテムの象徴的な存在として見られている
ニックネームイシュタルはメソポタミアの豊穣神から
【使用デッキ】
・スペルカード
○「肥沃なる氾濫(ポロロッカ)」×1 ……フィールド上を洪水が押し流し、与えたダメージ分回復
○「灰燼豊土(ヤキハタ)」×1 ……フィールド上を業火が包み、与えたダメージ分回復
○●「浄化(ピュリフィケーション)」×2 ……対象の状態異常を治す。
○○「中回復(ミドルヒーリング)」×2 ……対象の傷を中程度癒やす。高回復に回復量は劣るが素早い使用が可能
○「地脈同化(レイライアクセス)」×1 ……地脈の力を吸い上げ高い継続回復するがその場から動けなくなる
○「我伝引吸(オールイン)」×1 ……1ターンPTのダメージを肩代わりする
○「来春の種籾(リボーンシード)」×1 ……致命のダメージを負ってもHP1残して復活できる。デッキに複数入れられない
○○○「愛染赤糸(イクタマヨリヒメ)」*3……対象とパートナーモンスターを赤い位置で繋ぎ、一定期間離れられないようにする
・ユニットカード
○○「雨乞いの儀式(ライテイライライ)」×2 ……雨を降らせてフィールドを水属性に変化させる
●○「太陽の恵み(テルテルツルシ)」×2 ……太陽を照らせてフィールドを火属性に変化させる
○「荊の城(スリーピングビューティー)」×1……荊の城を出現させる。荊に触れたものは睡眠状態に
○「防風林(グレートプレーンズ)」×1……林立する樹を出現させる。風属性や衝撃波を軽減
●○「囮の藁人形(スケープゴートルーレット)」×2 ……5体の藁人形を出現させる。身代わりとなり攻撃を受け、内1体は他の藁人形を受けた累積ダメージを反射する
●「収穫祭の鎌(サクリファイスハーベスト)」×1 ……攻撃力0の鎌。累積ダメージがそのまま攻撃力になる 「ゲームとは違うし、ゆっくり回復カード切れるように待ってられなさそうやから高回復を中回復に代えてみたわ〜
他にもいろいろ、ゲームのシステムだけでは収まらへんところがあるみたいやしねえ。
スケアクロウのグラフィックのフレーバー程度やと思うてた蔦についた実も食べられたりしはったし、相違点は色々ありそうやねえ」
ブレモンを始めてデッキ構築を考えたり、レアアイテム当たってはしゃいだり。
そんなブレモンが一番楽しい時期の初心者のようにみのりは浮かれてしまっているのだ。
初めてのクエスト、しかもゲームではなく実体験できるとあれば尚更だ。
しかし、そんなみのりとは対照的に、現実的に物事を見るのが明神であった。
現在地点から目的地である鉱山都市ガンダラまでは徒歩で半日かからない程度。
とはいえ、半日歩きづめたら体力の消耗も激しい、と。
確かに農作業で鍛え持久力に自信のあるみのりとて、長距離歩くのに不向きな長靴のまま半日あるけばかなり厳しいだろう。
更に言えばメルトはどう見ても運動に向くとは思えない
「ほうやねえ、確かにこれでは歩くの向かれへんし、しめじちゃんみたいな子を半日も歩かせるのはねえ……」
うーんと唸っていると明神がみのりの琴線を鷲掴みをする突破口を開くのだ
>「ウィズリィちゃんや、何か便利な乗り物とか借りられないか。魔女の箒とかそういうの、あるだろ?」
「あらあら、あらあら、そうやねえ。
魔法のじゅうたんがあらはったらみんなで乗れるしええんやなぁい?
どのみち現地ガイド役がおってくれるとありがたいわ〜」
明神に乗っかり期待に満ちた目ででウィズリィを見つめるのであった。
【うなるほどのクリスタルを隠して冒険にウキウキ】
【デッキ披露】
【ウィズリィにマジックアイテムとガイドを期待】 糞・糞・糞
この怪文書が撒かれると、同時に周囲からは糞とホモの大群が押し寄せてきた。
五穀みのりのデッキ
・スペルカード
○「肥沃なる氾濫(ポロロッカ)」×1 ……フィールド上を洪水が押し流し、与えたダメージ分回復
○「灰燼豊土(ヤキハタ)」×1 ……フィールド上を業火が包み、与えたダメージ分回復
○●「浄化(ピュリフィケーション)」×2 ……対象の状態異常を治す。
○○「中回復(ミドルヒーリング)」×2 ……対象の傷を中程度癒やす。高回復に回復量は劣るが素早い使用が可能
○「地脈同化(レイライアクセス)」×1 ……地脈の力を吸い上げ高い継続回復するがその場から動けなくなる
○「我伝引吸(オールイン)」×1 ……1ターンPTのダメージを肩代わりする
○「来春の種籾(リボーンシード)」×1 ……致命のダメージを負ってもHP1残して復活できる。デッキに複数入れられない
○○○「愛染赤糸(イクタマヨリヒメ)」*3……対象とパートナーモンスターを赤い位置で繋ぎ、一定期間離れられないようにする
・ユニットカード
○○「雨乞いの儀式(ライテイライライ)」×2 ……雨を降らせてフィールドを水属性に変化させる
●○「太陽の恵み(テルテルツルシ)」×2 ……太陽を照らせてフィールドを火属性に変化させる
○「荊の城(スリーピングビューティー)」×1……荊の城を出現させる。荊に触れたものは睡眠状態に
○「防風林(グレートプレーンズ)」×1……林立する樹を出現させる。風属性や衝撃波を軽減
●○「囮の藁人形(スケープゴートルーレット)」×2 ……5体の藁人形を出現させる。身代わりとなり攻撃を受け、内1体は他の藁人形を受けた累積ダメージを反射する
●「収穫祭の鎌(サクリファイスハーベスト)」×1 ……攻撃力0の鎌。累積ダメージがそのまま攻撃力になる
を丸パクリし、
「糞まみれのペースト(ウンコ・ペースト)」×1 ……攻撃力0の。累積ダメージがそのままウンコになる
を発動。あたりはウンコに包まれる
…… >>239
一晩中気張ってたんやな
「せや、せや、一晩中気張ってたんや!」
糞をきばっていたグレートウンコは、
あたりに糞を撒き散らす。
キツネのマークの札をばら撒き、「アイ・アム・レジェンド・ウンコ」と叫ぶ
そしてなゆたは糞の加護に包まれた……… >>244
お前フィッチャーだろ
文書くと正体バレるぞ 従士はムロアジと自分が関わったスレ以外全部に無差別攻撃してるし、狐の弁解でそれ認めてるもんな
そのうちティターニアも粘着ウンコされそう >>249
お前が消えろっつの
ハイパーウンコなゆた 魔女ってラテカスなんだろ?
3スレも掛け持ちしてたら遅れて当然だわ
迷惑だからさっさと消えろよ ラテと従士=狐糞に繋がりがあるのも事実
ゴミ同士仲良くしろよ 大人は勝手だ。
「……ウィズリィ、お前は本気なのか? 本気で、『王都』に行こうと?」
「ウィズリィ、あなたが勉強を頑張っているのは知っているわ。でも、だからと言って無理な事はあるのよ」
「『王』が何と言おうと、ウィズリィ、お前が未熟なのは変わりない。
私達はお前を大切に育てなければいけない責務がある」
大人は勝手だ。
大切に育てるだなんて、いつまでも子ども扱いして。
わたしだって、魔法は十分使えるし、『王』も認めてくれている。
わたしは立派な『森の魔女』。大人の手助けなんていらない……!
ガタン!
「ん……え……?」
突然の振動に、大人たちの姿が掻き消え、目の前には魔法機関車内の光景が戻ってくる。
……どうやら、うたた寝をしていたようだ。
窓から外を見ると、どうやら魔法機関車は止まっているらしい。
はて、どういう事だろう。『王都』についたわけでもないようだが……。
シンイチが伝声管を通じて呼びかけると、運転手であるボノが出てきた。
そして、とんでもないことを告げたのだ。
>『その、大変申し訳ありませン……燃料切れでございまス。
> 王都からこちら、今まで休みなく走り続けていたものでしテ……』
「……」
めまいがした。
「必要分のクリスタルを用意していなかったの?
確かにクリスタルは希少だけれど、今回の迎えの目的地と、必要な魔力は分かっていたはずでしょう?」
自然に口調がきつくなる。
今回の迎えが失敗でもしようものなら、それは『王』の威信を傷つける事にもなりかねないのだ。
だが、ボノから返ってきたのは意外な言葉だった。
『いエ。必要分のクリスタルは、確かに積んできた筈でございまス。
それはワタシ自ら、出発前に確認しておりましタ。
ただ……どういう訳か、クリスタルが予想より早く減ってしまっていたのでございまス』
「……つまり、魔法機関車の燃費が悪くなった、という事?」
『いいエ。炉にくべていない筈のクリスタルが、どこかに消えてしまったのでス』
「…………」
つまり、クリスタル泥棒がどこかにいるという事だろうか。
思わずシンイチたち5人を見渡すが……すぐに考え直す。
「(彼らだって、魔法機関車が『王都』につかなければ困るのは一緒のはず……軽々にそんな行為をするとも思えない)」
完全に疑いが晴れたわけではないが、動機は薄いと言えるだろう。
とはいえ、彼らにもクリスタルが貴重品であるのは変わらないようだ。
彼らが持っている“魔法の板”……魔法を扱うための一種の発動具となっているそれも、クリスタルを動力源としているようであった。
実は、その辺りの事情はわたしも一緒である。 「……ブック、クリスタルの備蓄量はどう? 余裕はある?」
言葉と共にブック……わたしの相棒である生きる本、『原初の百科事典(オリジン・エンサイクロペディア)』が飛んできて
(比喩ではなく、文字通り飛行してきた)、ページを開き示す。
そこに記された数字を見て、わたしは顔を曇らせた。
「ぎりぎりかしら……こんな事になるならもっと貯めこんでおくべきだったわ」
ブックのような『リビングブック族』のモンスターは、日々の食べ物を必要としない代わりにクリスタルによる魔力を食事とする。
それをため込むことで、スペルや魔法の行使の支援を行う事が出来るのだ。
つまり、シンイチ達にとっての“魔法の板”が、わたしにとってのブックなのだ、と言えるかもしれない。
もちろん、ブックはわたしの契約モンスターでもあるため、一概に対応するとも言い切れないのだが……。
「……困ったわね。まさか、空からクリスタルが降ってくるような事があるわけも……」
ピロンッ♪ 聞いたことのない音が、わたしの言葉を遮る。
どうやら“魔法の板”が一斉に音を鳴らしたらしい。シンイチ達がそれを覗きこむ。……そして。
>「“ローウェルの指輪”を手に入れろ。報酬は……クリスタル9999個だって!?」
「……は?」
思わずぽかん、と口を開けてしまう。
なによそれは。どこの誰がそんないい加減な量のクリスタルを出してくれるというのか。
そもそもその“魔法の板”、どこからそういう話を受信してくるの?
神託? 神託なの?
どうやらシンイチ達はその話の信ぴょう性を欠片も疑っていないらしく、即座にそれを受けて相談し始めた。
それだけならいいのだが、わたしにも話が容赦なく振られる。
>「ウィズリィちゃんや、何か便利な乗り物とか借りられないか。魔女の箒とかそういうの、あるだろ?」
>「あらあら、あらあら、そうやねえ。
>魔法のじゅうたんがあらはったらみんなで乗れるしええんやなぁい?
>どのみち現地ガイド役がおってくれるとありがたいわ〜」
「……ええと」
こほん、と咳払いをして、答える。
「残念ながら、そういうのはないわね。
魔女の箒は、私個人の飛行魔法の補助をするものだから、複数人での使用には不向きだし。
魔法のじゅうたんは、『アルフライラ連邦』の方の高級マジックアイテム。あちらの王族でもなければ持ってないわ。
……ただ、そうね」
ブックに視線をやると、即座にスペルカードが1枚、具現化され私の手の中に納まる。
「其疾如風(コマンド・ウインド)。味方に空を飛ぶ力を与えるスペルよ。
これを使えば、それほど疲れもなく目的地……鉱山都市ガンダラまでつけるんじゃないかしら。
魔力のリチャージも、ブックのスキルのおかげでそれほど負担にはならないしね」
必要事項を伝えると、皆を見渡す。
「何か事前に準備があるならしておいて頂戴。
準備ができ次第、スペルを使って飛ぶことにするから。
……あと、その話は本当に信用できるのよね?」
【ウィズリィ:スペルを用意して飛んでいく事を示唆】
【クリスタル泥棒?:存在不確定】 質問、雑談いいかい?
なゆたが出したウンコは
誰が片付ける予定なん? >>269
俺が食ってるから大丈夫だよ
ウンコモシャッ!!モシャッッッ!!!! (……。)
赤茶けた荒野の中を、少年少女と青年を乗せて列車は進む。
(困りました。やるせない程に眠れません)
規則的な振動を与えてくる列車の中で同行する他の面々が微睡む中、されどメルトは一向に眠りに就く事が出来なかった。
目を瞑ってじっとしてようが羊をカウントしようが、一切眠れない。その理由は単純だ
(ええ、寝過ぎです分かってます。そもそも私、気絶を含めたらずっと寝続けてたみたいなものですし)
ベルゼブブに追われて疲れて眠り。自分で呼んだらしいレトロスケルトンに驚いて気絶し。
つまりは一日中眠っていた様な状態のメルトが、このタイミングで眠れる訳が無かったのである。
……だがそれでも、空気を呼んで眠っているポーズだけは取っていた成果が出たのか、ようやく眠気を覚え始めたのだが
「そわぁっ!?」
その貴重な眠気は、唐突に訪れた列車の振動とそれに伴う座席からの落下により、彼方へと消え去る事となった
>「……ん、故障か?」
「うぐぐ……こ、故障? 誰か線路に石でも置いたんでしょうか?」
真一の言葉を聞いてメルトが強かに打った頭を摩りながら窓を見れば、列車は静止してしまっている。
だが、事故というには車体に大きな損壊はなく、別に原因がありそうだ。
>「そういや、列車止まってないか?こんな荒野のど真ん中で……」
>『その、大変申し訳ありませン……燃料切れでございまス。
>王都からこちら、今まで休みなく走り続けていたものでしテ……』
そして案の定。判明した列車が止まった原因は、単なる燃料不足であった。
それだけであれば、予備の燃料か何かでどうにでもなりそうなものであったが、問題は
>『いえ、魔法機関車ですのデ。あくまでも動力は魔力でス。
>魔力の結晶体である“クリスタル”を焚べれば、また動かすことができるのですガ……』
この列車の動力源が、クリスタル(課金要素)であった事だろう。
>「なんで帰りの燃料積んでねーのよ。特攻隊じゃねえんだからさぁ」
>『いエ。必要分のクリスタルは、確かに積んできた筈でございまス。
>それはワタシ自ら、出発前に確認しておりましタ。
>ただ……どういう訳か、クリスタルが予想より早く減ってしまっていたのでございまス』
>「……つまり、魔法機関車の燃費が悪くなった、という事?」
>『いいエ。炉にくべていない筈のクリスタルが、どこかに消えてしまったのでス』
>「…………」
「……な、何故こちらを見るんでしょう。私、ずっと此処に居ましたよ。アレですよ。車掌さんがガチャで使い込んだとかじゃないんですか?」
移動用の燃料(課金要素)が消失した事で向けられたウィズリィの視線に対して、
メルトは無実であるにも関わらず必要以上に過敏に反応して、視線を逸らしつつ車掌へと責任を擦り付けようとする。
この辺りの対人能力の低さは、半引きこもり故のサガか。
「そもそも、そもそもです!石(クリスタル)で周回用のスタミナ回復するのは情弱…………って!掲示板に書いてありました、確か。私よく判らないですけど」
そして更に、問われてもいないのに言い訳を始め、その途中で初心者設定だった事を思い出し慌てて取り繕うメルト。
幸いだったのは、そんなメルトの言葉など誰も聞いてはいなかった事であろう。
何故なら、燃料枯渇の続報として更にとんでもない問題が発生していたからだ。 >「んー、仕方ねーな。クリスタルなら俺も少しは蓄えがあった筈だし、分けてやるよ。
>……って、あれ。俺のクリスタル、こんなに少なかったか!?」
>『皆さんの持っている“魔法の板”も、魔力によって動いているのではないのでしょうカ?
>それならバ、使用する度にクリスタルを消費してしまうのも仕方ないと思いますガ……』
>「だからそういう仕様はよお!もっと早く告知しろっつーんだよクソゲーがよぉ!」
クリスタルの激減。
真一と、妙に長いトイレタイムを終えた明神の驚愕の声を聞いたメルトは、
反射的に自身のスマートフォンを取り出し、プロフィール画面を開く。するとそこには
クリスタル:4
「……何か知りませんがクリスタルが超減りました!運営!侘び石はよ!」
混乱し、思わず侘び石(ゲーム進行上の不具合やアップデートの際に配られるクリスタル)を要求する声を上げてしまうメルト。だが、それも仕方ないと言えるだろう。
佐藤メルトはバグを利用したチートやアカウントやアイテムの売買によるRMT(リアルマネートレード)といった、規約違反をさんざんに繰り返していた悪質プレイヤーであり、
カード増殖バグで増やす為にレアカードを購入した事で目減りはしたものの、相応の量のクリスタルを有していたのだ。
五穀みのり程とまでは言わずとも、微課金を鼻で笑える額のクリスタルを有していたのである。
それが、ガチャを回すどころかスタミナ回復すら不可能な残量まで激減していれば混乱するのは必定
更に、特に明神や真一達の様に戦闘行為を行ったという訳でもないのだから混乱の倍率はドンである
>「インベントリの水も食料も取り出せなくなっちまったら、俺達は今度こそ飢え死にだな……」
「ううっ、垢BANされる様な証拠は残してないのに……。運営は金の為にユーザーを絞る拝金主義者です……」
不安を煽る様な明神の言葉を聞いた事で更に混乱し、頭を抱えるメルト。
だがその時。まるで救済措置とでも言わんばかりに鳴り響く、新着クエスト発生の効果音。
>「“ローウェルの指輪”を手に入れろ。報酬は……クリスタル9999個だって!?」
>「あらあら、燃料がないとはうっかり屋さんやねえ。
>丁度破格のクエストも舞い込んで来はったことやし、真ちゃんの言う通りこのクエストでクリスタル手に入れへんとねえ
>ふふふ、ローウェルの指輪のクエストって初めてやし、楽しみやわぁ」
>「なんだそのサービス末期みてーなインフレ具合は……」
「っ、賢者シリーズをクエストで出すとか運営ご乱心ですか!?」
真一達の言葉を聞いてメッセージを閲覧したメルトは、驚愕に片目を見開く。
9999個の石もそうだが、それよりもローウェルの指輪を入手出来るというのはクエストとしては破格過ぎる。
何せこのローウェルの遺物……性能が異様に高い事もさることながら、何よりも『ゲーム内存在上限個数限定』のアイテムなのである
プレイヤー1人に対してではない。全プレイヤーに対しての上限個数限定だ。
当然ながら、所有者はそのアイテムを手放す事は無い為、表のトレードは勿論、裏のRMTにも出回る事は滅多に無く
メルトが唯一オークションで見かけた時は、それこそ高級車が買える程の値が付いていた。
(……これは、是非欲しいです)
降って沸いた激レアアイテムに対し、ゴクリと生唾を飲み込むメルト。
幸運な事にBotと海外業者が大量に沸く街【鉱山都市ガンダラ】は、同じ穴の貉であるメルトの熟知している都市だ。
仮に指輪がイベントのクリアボーナスでなくとも、欺き騙して出し抜いて指輪を手に入れる算段は十分に立つ。
手に入れた指輪は自身で使っても良いし、交渉次第では先程眺め見た、どれだけ実弾(リアルマネー)をつぎ込んだのか
課金額が判らない程のスケアクロウデッキを持つみのりに売りさばいても構わない。
……と、物欲センサーが振り切れそうな打算をしていたメルトであるが >「向かう先に異論はないよ、真一君。だがここからまた半日歩き詰めというのはかなりしんどい。
>俺や君は問題なくとも、ここには女の子もいるんだ。レッドラの背中に何人か乗せられないか」
>「ほうやねえ、確かにこれでは歩くの向かれへんし、しめじちゃんみたいな子を半日も歩かせるのはねえ……」
「え? あっ」
そこで、現在の状況がゲームでは無く現実である事を思い出す。
そう。ゲーム内では自分の庭の様に縦横無尽に駆け回れたフィールドも、今は自身の体一つで散策しなければならないのだ。
自身の細い腕と、日焼けしていないインドア風に白い肌を交互に眺めたメルトは、最後に画面に表示された4つしかないクリスタルを確認して
>「其疾如風(コマンド・ウインド)。味方に空を飛ぶ力を与えるスペルよ。
>これを使えば、それほど疲れもなく目的地……鉱山都市ガンダラまでつけるんじゃないかしら。
>魔力のリチャージも、ブックのスキルのおかげでそれほど負担にはならないしね」
「あ……あの。飛ぶ前にですね……私、クリスタルが無くて……どなたか貸してください、お願いします……。
あと!あと、その……ガンダラに付いたら、どなたか傍に居てくれませんでしょうか……?」
打算が破綻し、野垂れ死にの予感を覚えたメルトは、遠くの激レアアイテムよりも、目先の生存の為に
己の寄生先とクリスタル(活動資金)の無心を行う事を始めた。
【クリスタル残4。物欲センサー動かしてる場合じゃない】
【急募:石と寄生先(クレクレ厨)】 ボットン弁護士が叫ぶ!
ハイパーウンコを呼んでくれ、なゆた! そろそろ、夕飯の支度をしなければならない。
父親は坊主の癖に金無垢の腕時計を嵌めてブガッティを乗り回すような超俗物だが、三度の食事はきっちり家で食べる。
毎日決まった時間になゆたが食事の支度をし、食卓の前でスタンバイしていなければ、途端に機嫌が悪くなるのだ。
崇月院家では三度の食事の時間は何があっても変わることはない。従ってなゆたもスケジュールをそれに合わせている。
買い物は既に済ませた。父と、自分と、それから真一。その妹の雪奈の分。
赤城家と崇月院家は共に母親がおらず、両家の母親的役割はなゆたがほぼ一手に引き受けている。
……尤も、真一は母親と死別しているが、なゆたの場合は単なる離婚なので母親とは定期的に会っているのだが。
とまれ、なゆたの中では真一と雪奈の分の食事を作るのは日常の一部となっている。
――今日はクリームシチューにしようかな。
そんなことを、ぼんやり考える。
今度の土曜日には、溜まっている洗濯をしよう。本堂の掃除は毎日しているけれど、本尊はしばらく磨いていないのでそれもやりたい。
そういえば、生徒会の仕事もやり残したことがある。頼りない生徒会長には任せておけない。
じきに中間テストの範囲も発表されるだろう。学年10位内はキープしておきたいので、勉強もする必要がある。
真一の赤点を回避させるため、家庭教師めいたこともしなければなるまい。
やることは山積している。それを順番に、着実にこなしてゆこう。
……しかし、それらに着手する前にやることがある。それは――
「ひゃぁぅっ!?」
ガクン!と突然起こった震動によって、なゆたは頓狂な声を上げて目を覚ました。
どうやら、機関車に揺られながら眠り込んでしまっていたらしい。
突然ワケのわからない(ゲーム的には知悉しているが)世界に放り出され、立て続けにバトルをさせられたのだ。
疲労して眠ってしまうというのも無理からぬことだろう。
しかし、てっきり王都キングヒルへ行くとばかり思っていた魔法機関車が停止している。――到着した、という訳ではないらしい。
>その、大変申し訳ありませン……燃料切れでございまス。
王都からこちら、今まで休みなく走り続けていたものでしテ……
魔法機関車の運転手を務めるブリキの兵隊、ボノがそんなことを言ってくる。
クリスタルがない、と慌てる一行。なゆたもスマホの液晶画面に視線を落とし、クリスタル(通称『石』)の残量をチェックした。
……やはり、減っている。
なゆたは18歳未満のため、基本的に月々の課金は5000円まで!と自らを戒めている。
が、少しでも魅力的なガチャやキャンペーンが開催されると、ついつい「おぉっと手が滑った!」と課金してしまう。
何せ金無垢の腕時計を嵌めブガッティを乗り回す住職のいる寺の一人娘だ。豪農(?)のみのりほどではないにせよ経済力はある。
従って、基本的に手持ちの石に不自由したことはなかったのだが――
「……ふーむ。これはちょっと、死活問題ね」
制服の短いプリーツスカートから伸びる、白いニーハイソックスに包んだ脚を組み替え、顎に右手を添えて唸る。
実際、今も10連ガチャを10回程度回すくらいの予備がある……にはある。
とはいえ、目減りしているのは事実だ。資源が有限である以上、いつかは枯渇してしまう。
どこかで減った分の石を補充する必要がある。
「…………」
スマホを操作し、『ショップ』のアイコンをタップする。
『クリスタルを購入する』をタップ。――が、いつもは出てくるはずの課金確認のポップアップが出ない。
やはり、課金などという安易な方法ではこの世界ではクリスタルを手に入れることはできない、ということらしい。
で、あれば―― 次善の策を講じようと思ったそのとき、手の中のスマホが小さく通知音を鳴らした。
スマホの左上に小さくブレモンのアイコンが現れ、新たなお知らせが届いたことを知らせてくる。
それを確認し、なゆたは思わず目を見開いた。あと二度見した。
新着クエスト――鉱山都市ガンダラで“ローウェルの指輪”を手に入れろ。
>報酬は……クリスタル9999個だって!?」
>なんだそのサービス末期みてーなインフレ具合は……
>ふふふ、ローウェルの指輪のクエストって初めてやし、楽しみやわぁ
>……は?
>っ、賢者シリーズをクエストで出すとか運営ご乱心ですか!?
それを見た他のプレイヤー(うちひとりは魔物)の反応は様々だったが、一様に驚きに満ちているというところだけは共通している。
が、それも無理のないことであろう。何せ、クエスト報酬は個数限定の超超超レアアイテム。
おまけに石9999個進呈と来れば、明神やメルトの「末期」「ご乱心」という感想も致し方ない。
単細胞の真一は報酬に一も二もなく飛びつくだろう。
心からゲームを楽しんでいます、という風情にはんなりなみのりも、このクエストも楽しもうとするだろう。
しかし。
――絶 対 無 理 。
なゆたの頭には、『QUEST FAILED』の文字しか出てこなかった。
大賢者ローウェル。
かつてキングヒルの王に代々使えた偉大な賢者で、この世界の1/3の魔法を編み出した――と(設定には)ある。
その魔術と知識へ向ける貪欲さは異常、偏執的でさえあり、アルフヘイムだけでは飽き足らず。
ついには闇の世界ニヴルヘイムの深奥にまで至ったという。
そんなアルフヘイムでは知らぬ者のいない大賢者ローウェルが、己の魔力の粋と叡智とを封じたと言われる指輪。
その指輪を嵌めた瞬間、牛馬ですらたちどころに高位魔法言語を喋り世の理を改編する魔法を使い出すという。
尤もそれは設定上の話で、ゲーム上でどんな働きをするのかまではなゆたは知らない。
いや、この中の誰も知るまい。何故なら、ローウェルの指輪はほとんど実在が疑われるようなレベルのアイテム。
攻略wikiにさえ実際の効果が記されていない、幻の存在なのだから。
むろん、ランカーのなゆたでさえお目にかかったことはない。
ただし。
なゆたはかつて一度だけ、ローウェルの指輪が手に入る『かもしれない』クエストにマルチで参加したことがある。
クエスト『転輾(のたう)つ者たちの廟』。
正規のストーリーをクリアした後で出てくる超高難度クエストのひとつである。
ストーリーモードのラスボス級が雑魚として群れで襲ってくるクエストで、ソロではまず攻略不可能と言われている。
なゆたはたまたまフォーラムに立てられていたメンバー募集のスレッドで名乗りを上げ、パーティーに加わった。
そして、その廟所の最下層で待ち構えていたボスが――誰あろう、大賢者ローウェルその人。
禁断の叡智を手に入れ、不死の魔物と化した大賢者の成れの果てだったのである。
ローウェルはとにかくバフとデバフを多用してくるイヤらしい敵で、なゆたのパーティーは散々翻弄され全滅した。
なお、その際の他のメンバーはベルゼブブ、メタトロン、バアル、カイザードラゴンなど、軒並みレイドボス級。
そんな選りすぐりのパーティーでさえ敵わなかったバケモノ、それが大賢者ローウェルなのだ。
ローウェルの指輪が手に入り、なおかつクリスタルが9999個も貰える。
そんなムシのいいクエストがホイホイ達成できるレベルで転がっているわけがない。
おいしいアイテムと報酬には、それなりの難度が付いて回るものだ。
もし目先の報酬に欲が眩んで、ローウェルご本人とご対面……などということになったら――
――うん、無理。無理無理無理、160%無理!
なゆたは断言した。
ここで今一度、魔法機関車内にいるメンバーとパートナーを見てみよう。
真一のレッドドラゴン。レア度は高いものの、育成がまだまだ。
まして搦め手をまったく考えない猪武者の戦い方では、ローウェルに指一本触れられず撃墜されるのがオチだ。 明神のリビングレザーアーマー。
マスターの明神自体は手慣れたプレイヤーだろうと思うが、いかんせんリビングレザーアーマー自体が心許なすぎる。
スルメであるという事実はまったく否定しないし評価もするが、超高難度に連れていけるモンスターではない。
みのりのスケアクロウ。
これは役に立つ。例えローウェルとの対決になったとしても、自分の役割をきっちりこなしてくれるだろう。
しかし、スケアクロウ単体では火力は出せない。メインアタッカーがいてこそ光るモンスターなので、単品ではどうしようもない。
ウィズリィと原初の百科事典。
こちらはまだ未知数だ。モンスターとしては、いずれも育てれば強力な魔法を使いこなすというのはわかっている。
が、現状彼女たちがどれほどの強さなのかまではわからない。大賢者に勝るレベルとは考えづらかった。
しめじとレトロスケルトン。
……………………う、うん。
そして、自分とスライム。
ポヨリンは種族の限界を遥かに突破して鍛えてある。属性有利なら、タイマンでドラゴンを屠れる自信もある。
ただ、ひとりでは無理だ。ローウェル討伐にはパーティーの力が、それも緻密な計算とチームワークがなければいけない。
ベルゼブブを倒せたこと自体、奇跡のようなものである。急造メンバーで大賢者を仕留められるとは到底思えない――が。
>――どうやら、次の目的地が決まったみたいだぜ
案の定と言うべきか、真一はもうやる気らしい。
これについてはもう分かり切っていたことなので、特に驚かない。が、言うべきことは言っておこうと思う。
>向かう先に異論はないよ、真一君。
明神も異論はないらしい。それより交通の足の方が気になっているようだ。
確かに、徒歩での移動は時間もかかるし、何よりモンスターとのエンカウントの危険がある。よけいな消耗は避けるべきだ。
さすが年長だけあって年下への気配りが出来ている、となゆたは単純に感心した。
>お互い手の内知ってた方が連携しやすいやろ?
みのりに至っては、自らの手の内まで明かしている。
ブレモンの楽しみ方は人それぞれだ。気の合う仲間とパーティープレイする者もいれば、ソロに徹する者もいる。
他のプレイヤーは味方になる場合もあれば、敵になる場合もある。
そんな中、自分のデッキというのは命綱となりうる。よってプレイヤーは通常、滅多にデッキ編成を他人に見せないのだ。
「み、みのりさん!そんな、軽々しく自分のデッキを――」
思わず、慌ててみのりのスマホの液晶画面を手のひらで隠そうとする。
とはいえ、敢えて手の内を見せるというのは彼女がそれだけ皆を信用している、もしくはしようとしていることの証拠だ。
そんな彼女の心を自分が無碍にするのは筋違いだと、なゆたはすぐに手を下ろした。
「……えと。あとで、わたしのデッキも見せますね。信頼の証として」
自分の非礼を詫び、それから小声でみのりに言う。ガンダラへ行く道すがら、みのりには自分のデッキを公開しようと決める。
>其疾如風(コマンド・ウインド)。味方に空を飛ぶ力を与えるスペルよ。
そして、明神に質問されたウィズリィが空飛ぶ箒や絨毯の代わりに提示したのは、飛行の魔法。
空を飛ぶなんて体験は当然未体験だ。いかにも異世界といった提案に心が躍ったが、こほん、と空咳を打って平静を装う。
>……あと、その話は本当に信用できるのよね?
「それについては、心配ないと思うわ。基本、通知がウソをつくなんてことはないし。そんなの本気で運営に問い合わせ案件だもの。
第一……この通知はわたしたちを導いている気がする。わたしたちが進むべき道へ」
この世界に運営なんているわけがない。ということは、この通知を皆のスマホへ送っているのはいったい誰なのだろう?
神か。悪魔か。それとももっと得体の知れない何かか―― 「……で。みんな、ちょっといいかしら?」
皆の意見がガンダラへ行くということで固まりかけたそのとき、徐に車内の全員に対して言う。
「ガンダラへ行くっていうこと自体は、わたしも賛成よ。というか、それしか選択肢はないみたいだしね」
ウィズリィの飛行魔法でキングヒルまで行き、石よこせ! と王に直訴するという方法もあったが、それは言わない。
「ただし、ローウェルの指輪のクエストについては、すぐに飛びつかない方がいいと思う」
そう前置きして、先程考えたその根拠を説明する。
ひとつ、ローウェルの指輪は実在さえ疑われるレベルの超絶激レアアイテム。そう簡単に手に入るとは思えない。
ひとつ、通常のクエスト報酬が石3〜5個。クリアに1週間かかる最高難度クエストの報酬が石20個。それに対する9999個。
ひとつ、自分はかつてローウェルの指輪を手に入れようとして盛大にコケた。
ひとつ、もしローウェル本人と戦う羽目になったら、どうひっくり返ってもこのメンバーでは勝てない。
……とはいえ、このクエストが〇周年記念キャンペーンばりのボーナスクエストだという可能性もないわけではない。
気休めにもならないかもしれないが、一応そちらの説明もしておく。
根拠としては、かつてなゆたがコテンパンにされたローウェルの住処『転輾つ者たちの廟』はガンダラとは違う地域にある。
第一、クエスト名が違う。報酬が一緒の別クエスト、という線もあるかもしれない。
「だから。まずガンダラへ行ってみて、クエストの内容をよく確認してからチャレンジするかどうか決めましょ。
無理だと思ったらやめる。勿体ないと思うけど……命の方が大切、だもの」
そう、自分たちが現在いるのは単なるゲーム画面ではない。
疲労もすれば腹も減る。眠気もあるし、トイレにだって行きたくなる――現実の世界なのだ。
ゲームで死んでも『クエスト失敗』と言われて悔しい思いをするだけだが、ここではそれだけで終わる保証はない。
本当に死ぬ可能性だって充分にあるのだ。
そもそも、新着クエストの通知が来たからと言ってそれを絶対に受けなければいけないという決まりはない。
ガンダラは素材掘りの聖地であり、クエストそっちのけでツルハシ片手に日々掘削作業に明け暮れるプレイヤーも少なくない。
初心者から熟練者まで多くのプレイヤーがおり、クエストの数も多い。
リスキーな石9999個クエは早々に諦めて、もっと堅実に石10個くらいのクエストを多くこなしていくという方法もあるのだ。
こちらは王都へ行くだけの魔法機関車の燃料と、自分たちのスマホのバッテリー分を確保できればいいのだから。
ローウェルの指輪はプレイヤー垂涎の品だが、なゆたはその入手に対して執着がほとんどない。
元々スライムを極限まで鍛えているような片寄ったプレイヤーである。レアリティにはさして価値を見出していないのだった。
「特に、真ちゃん。敵は強ければ強いほど燃える! な〜んて言うのは厳禁だから!
ここから先はパーティープレイよ。真ちゃんの身勝手な行動で、みんなが危険に晒されるの。
自分のせいで全滅! なんてイヤでしょ?」
ぴしり、と真一の鼻先に人差し指を突き付ける。
「ま……真ちゃんもそろそろソロプレイじゃなくて、マルチの楽しさを覚えるべきって思ってたから。
これはいい機会かもね……だから、ちゃんとみんなのことを考えなくちゃダメよ」
いつも真一のブレーキ役となってきたなゆたである。その立ち位置は異世界へ転移しても変わらない。
自分ひとりならいくらでも真一に合わせられるが、これからはそうはいかない。
マルチで大切なのは譲り合いの心だ。真一もそれを知っていい、と思う。
「……もちろん、それはわたし個人の意見だから。どうしてもこのクエをやりたいって言うなら、それも正当な意見だと思うけど、ね」
とにもかくにも、ガンダラへ行ってみてから決めることだ。当座の拠点も確保したいし、食べ物やベッドも恋しい。
自分の準備はとっくにできている。今すぐ飛んでも構わない、となゆたはウィズリィを見た。
……しかし。 >あ……あの。飛ぶ前にですね……私、クリスタルが無くて……どなたか貸してください、お願いします……。
あと!あと、その……ガンダラに付いたら、どなたか傍に居てくれませんでしょうか……?
不意に、それまで捕獲された栗鼠のように隅の方にいた少女――メルトが切羽詰まったような声を上げた。
大なり小なり経験者らしい他のメンバーと違い、この少女だけは正真正銘の初心者……のように、なゆたには見えた。
少なくとも、彼女の言動を疑うようなことはしなかった。
よもや自分より年下の少女が日常的に不正行為を繰り返す悪徳プレイヤーだとは夢にも思わない。
よって今の言動に対しても、
――そうだよね。真ちゃんがいたわたしと違って、こんなところにひとりで放り出されて。不安に決まってるよね。
と考え、多少の怪しい言動もまったく疑問に思うことはなかった。
スマホの液晶画面をなぞり、フレンド画面を開く。
「わたしでよければ、あげるよ。まだ石には余裕があるから――。しめじちゃん、ID教えてくれる? フレンドになろう」
フレンドになればプレゼントボックスで石の譲渡ができる。
また、フレンド間では相手のステータスも確認できる。レベルとランキングも表示されるので、こちらの実力もわかることだろう。
とりあえず、クリスタルを20個ほどメルトへプレゼントしておく。
「ここにいる人たちは、みんなしめじちゃんのことをひとりになんてしないと思うけれど。
でも、不安だって言うのはよくわかるから。一緒にいよう? 大丈夫! わたし、こう見えて結構強いし!」
メルトに視線を合わせ、にっこり笑って右手を差し伸べる。一緒に手をつないで歩こうか――そんな仕草。
真一の妹、雪奈とは姉妹のように育ったなゆただ。面倒見がよく、年下のために骨を折ることを苦と思わない。
また、現在はすっかりやらなくなってしまったが、小学校卒業まではなゆたも赤城家で剣道を嗜んでいた。
全国大会で名を馳せた真一には遠く及ばないが、同年代の女子高生に比べれば動ける方である。
「ポヨリン、いいわね? イザってときはわたしより、しめじちゃんを守ってあげて」
『ぽよっ!』
ポヨリンにメルトのボディガードを任せると、ポヨリンは眉間を引き締め気合の入った(?)表情でぽよんと跳ねた。
それから、メルトの胸にぽよよんと飛び込んでゆく。
「――さて……。わたしは準備いいわよ、ウィズリィ。いざ、鉱山都市ガンダラへ!!」
メルトの望み通り傍らに立つと、ウィズリィに対して告げる。
全員の準備が整ったなら、さっそく飛翔の魔法でガンダラへと飛ぶことになるだろうか。
まるでアメリカの西部開拓時代のように、ゴールドラッシュに湧く鉱山都市。
誰も彼もが一獲千金を求めて素材を掘り、鉱山に出没するモンスターを狩りに赴く。
素材に、金(石)に、モンスター。何かを手に入れたいと欲するなら、ガンダラほどお誂え向きの場所はない。
明神たちの例に漏れず、ゲームではなゆたも嫌と言うほど世話になった場所だが、実際に向かうその地は果たしてどんな所なのだろう。
ぐっと拳を握って逸る心を押さえつけながら、なゆたはウィズリィが魔法を唱えるのを待った。
【みのりにだけデッキ公開】
【指輪クエに対しては懐疑的かつ及び腰。慎重論を主張】
【メルトの希望を承諾。少々のクリスタルを譲渡】 なゆた、ウンコの召喚忘れてるよ
いつになったらハイパーウンコの正体現すの? ここもブリーチャーズに改名したら?
糞を駆逐する必要がある 糞・糞・糞 投稿者:変態糞なゆた (10月19日(木)23時27分36秒)
俺は糞まみれになってお互いにけつの穴や口にちんぽを突っ込みあいながら、狂うのが大好きや。
浣腸してお互いにちんぽ尺八しながら、顔の上に糞をだしながら、やりまくろうぜ。3人でやると写真が取れる
のでやってやってやりまくりたいぜ。
岡山県の県北なら最高だえ。年齢は年上の親父・爺さんならいいが、糞まみれになれるなら30代でもOKだぜ。
もう糞に最近飢えてるので、徹底的にやろうや。又野外で浮浪者にせんずりを掻いて見せ合うのも大好きや。
野外撮影もOKだぜ。
わしが浮浪者の汚れたちんぽ舐めているのをデジカメで撮ってくれるやつもいいなあ〜。163*85*53の
変態よごれ親父や。至急連絡くれや。 ハイパーウンコの降臨まだですか?
あ、これ質雑です なんか足りないというか、
もう一人カリスマウンコタレントが
必要な気がしますね。
降臨を希望します。 ウンコなゆた:TRPG荒らしの主犯
五穀みのり:糞文章
ウィズリィ:遅レス魔
この三人いらなくねえ?w >>290
戦犯具合だとな
97:1:2ぐらいだけどな ハイパーウンコより上の何かは来ないのか
降臨を望む >「向かう先に異論はないよ、真一君。だがここからまた半日歩き詰めというのはかなりしんどい。
俺や君は問題なくとも、ここには女の子もいるんだ。レッドラの背中に何人か乗せられないか」
>「ウィズリィちゃんや、何か便利な乗り物とか借りられないか。魔女の箒とかそういうの、あるだろ?」
>「あらあら、あらあら、そうやねえ。
魔法のじゅうたんがあらはったらみんなで乗れるしええんやなぁい?
どのみち現地ガイド役がおってくれるとありがたいわ〜」
“考えるよりもまず行動”を信条としている真一は、今すぐにでもガンダラへすっ飛んで行きたいところだったが、確かに明神らの懸念も一理ある。
ゲームの中とは違い、この世界にいる自分たちは疲れもすれば傷付きもする、生身の人間なのだ。
ガンダラまでの道中にもモンスターは現れるだろうし、余計な消耗を避けられるならばそれに越したことはない。
「うーん、グラドはまだ成体じゃねーからなぁ……。三人くらいなら乗せられるだろうけど、この全員ってのはちょっと厳しいぜ」
しかし、幾らレッドドラゴンとはいえ、まだ体のサイズもそこまで大きく成長していないグラドでは、大勢の人間を乗せて飛ぶことはできない。
真一が両腕を組みつつ唸り声を上げていると、そこにウィズリィが助け舟を出してくれた。
>「其疾如風(コマンド・ウインド)。味方に空を飛ぶ力を与えるスペルよ。
これを使えば、それほど疲れもなく目的地……鉱山都市ガンダラまでつけるんじゃないかしら。
魔力のリチャージも、ブックのスキルのおかげでそれほど負担にはならないしね」
――曰く、彼女の保有するスペルを使えば、ガンダラまで文字通り飛んで行けるらしい。
効果時間がそこまで続くのかどうか気になったが、どうやら魔力を再充填する手段も用意してあるようだ。
異邦者たちの案内人を自称しているだけあって、流石に頼りになると真一は感心する。
>「あ……あの。飛ぶ前にですね……私、クリスタルが無くて……どなたか貸してください、お願いします……。
あと!あと、その……ガンダラに付いたら、どなたか傍に居てくれませんでしょうか……?」
>「わたしでよければ、あげるよ。まだ石には余裕があるから――。しめじちゃん、ID教えてくれる? フレンドになろう」
さて、移動手段も決まって早速出発しようかという矢先、メタルしめじと名乗った女子中学生が、自分のクリスタル残量を見て狼狽し始めた。
元々初心者のようだし、所持していたクリスタルも少なかったのだろう。
真っ先にクリスタルを譲った世話焼きのなゆたに続いて、真一も自分のクリスタルを譲渡することに決める。
「俺も少し分けてやるよ。こっちに来てから結構減っちゃったから、そんなに沢山は渡せないけどさ。
……それと、お前は必ず元の世界まで連れて帰るって言ったろ? 俺たちが守ってやるから心配すんなって!」
真一は幾つかのクリスタルをプレゼントした後、自分の胸をドンと叩きながらそう言って見せる。
真一もなゆたと同じで、困っている後輩などに助けを求められたら、放っておけない性分なのだ。
メルトに言われるまでもなく、彼女を一人置き去りにして行くつもりなどは微塵もなかった。
* * * そんなこんなで車中でのやり取りを終えた真一たちは、日が暮れる頃にはガンダラに到着した。
道中は真一となゆた、メルトの三人はグラドの背に乗り、残りの三人はウィズリィの魔法で飛翔。
行程の途中で魔力を回復するために何度か休養を取ったが、それでも特に危険な目に合うこともなくここまで来れたのは、空路を選択した賜物だろう。
真一はスマホで地図を開きつつ、ついでに自分のデッキをチェックする。
あれから大分時間も経ったので、昨晩のベルゼブブ戦で使用したカードは全てチャージが完了していた。これで、この街の探索にも支障はない。
「……にしても、夜だってのに随分と活気のある街だなぁ。流石にゴールドタウンって呼ばれてるだけあるわ」
そして、真一は多種多様な人々で賑わうガンダラの街並みを一瞥し、思わず溜息をこぼす。
アルメリアの金脈と称される街――鉱山都市ガンダラ。
南部の国境沿いに連なるフレイル山脈の麓に位置し、地理的には辺境の土地であるにも関わらず、鉱山から採取される豊富な鉱物資源によって発展し、今ではこうして各地から様々な商人や冒険者が訪れる大都市になった。
――ちなみに、ブレモンの世界にも人間は存在する。
現実世界の人間に極めて近い特徴を持った、ヒュームと呼ばれる種族。
或いはファンタジーさながらのエルフやホビットといった亜人種も存在し、このガンダラでは原住民であるドワーフたちが数多く住まい、鉱山での採掘などの仕事に勤しんでいる。
見渡してみると、今日も仕事を終えた彼らがこうして街に降りて来て、仲間と酒場を探している様子などもチラホラとあった。
「さて、俺たちもまずは今夜の宿と、メシでも食えるところを探そうぜ。もう不味いアイテムのパンは食い飽きちまったよ」
そこで、真一はともあれ今晩の宿を確保しようと提案する。
長旅で皆も疲れているだろうし、それに何よりもいい加減まともな食事を口にしたいという気持ちもあった。
アイテムのパンを齧って飢えを凌ぐことはできたが、味についてはとても食べられたものではなく、この二日間で軽くノイローゼになっている。 「……ん? あっちの方で何か賑わってんな」
――と、宿を探しながら街を歩いていたところで、何やら路上に人集りができているのに気付いた。
「さぁー、次のチャレンジャーはいないかい? 参加費用は1000ルピ。もしもこいつに勝つことができたなら、今までの賭け金は総取りだぁ!」
気になってその様子を覗き込んでみると、そこには一つのテーブルを挟むようにして、二脚の椅子が置かれていた。
片方には見るからに屈強そうなオークが腕を組んで座り、その傍らにヒューム族と思われる男が立ち、声を張り上げて群衆に煽りを入れていた。
「おーし、次は儂が相手だ!!」
そんなオークに挑むべく、今度は一人のドワーフが対面の席に着いて1000ルピ(ゲーム内通貨)分の金貨をテーブルに積み上げる。
そして、台上でオークと腕を組み合わせると、司会の男の掛け声に従って一気に力を込める。
――いわゆる、アームレスリングというやつだ。
要するに参加費用として1000ルピを渡し、もしもこのオークに腕相撲で勝つことができたなら、今までの賭け金を全て貰えるというルールなのだろう。
見れば台上には既に結構な量の金貨が積み上がっており、オークがかなりの相手を打ち倒してきたのが分かる。
そして、今まさにチャレンジャーとして名乗りを上げたドワーフも、同じように瞬殺されていた。
力自慢で有名なドワーフ族をこうも簡単に捻じ伏せてしまえるあたり、オークが秘めたる膂力の程が窺い知れた。
「おーっと、そこの興味有りげに見ている坊っちゃん! 次は君が参加してみるかい?
……って、君みたいな子供が、こいつの相手になるわけないかぁ!」
すると先程からそんな様子を眺めていた真一を見て、司会の男が声を掛けて来た。
相手からすれば、周囲を沸かせるためのマイクパフォーマンスの一つだったのだろう。
狙い通り観客からはどっと笑い声が上がって、真一を煽り立てるような暴言も飛ぶ。
だが、それと同時――真一の脳内では「プチッ」と血管の切れる音が鳴り響いていた。
真一はスマホから取り出した金貨をテーブルに叩き付けると、オークの対面の椅子に勢い良く腰を下ろす。
「お、おいおい……本気かい? 君じゃ腕がもがれるかもしれないよ?」
「……テメーが売ってきた喧嘩だろうが。買ってやるから、さっさと始めようぜ」
司会の男はまさか真一が本気になるとは思っていなかったらしく、先程まで騒いでいた観客たちも、ざわざわと妙な空気に包まれる。
相手はオークという歴としたモンスターであり、身長は2メートルを超える巨漢。体重だって真一の三倍くらいはありそうだ。
どう見ても戦いになるわけがなく、真一が無事で済まないのではないかという心配の声も囁かれ始めた。
――が、勝負が始まった次の瞬間、観客は一様に信じられない光景を目撃する。
真一が満身の力を込めて振り下ろした右手で、オークの腕がテーブルに叩き付けられていたのだ。
しかも、あろうことかその勢いでオークは椅子から転げ落ち、真一の腕一本でひっくり返されていた。
そんな様子を目にして絶句する群衆の中で唯一人、真一だけが悪役のように不敵な笑みを浮かべていた。
「――悪いな、俺の総取りだ」
無論、力比べでオークに勝てるわけがない。
ならば何をしたのかと言うと、スペルカードを使ったのである。
真一はオークと腕を組み合わせる直前、こっそりとポケットから取り出したスマホを操作して〈限界突破(オーバードライブ)〉のスペルを発動。
魔法によって底上げされた身体能力を以て、オークとの戦いに挑んだのだ。
相手の油断もあったし、あのベルゼブブの羽を斬り落とした時のことを思えば、これくらいの芸当は造作もなかった。
また、こんなところでスペルを無駄撃ちしてしまったことをなゆたに咎められるんだろうな――と、真一の脳裏には嫌な光景が浮かんでいた。
【すいません、大分遅くなってしまいました……!
ガンダラに到着し、とりあえずは自由に街の散策という感じで】 その叩いた場所には
ウンコが落ちていた!
グレートウンコの降臨まだー? その叩いた場所には
ウンコが落ちていた!
グレートウンコの降臨まだー?
降臨を望む
猛烈に降臨を望む
お前が必要だ、ザグレートウンコ!! おう
見とるで
>
それを見た他のプレイヤー(うちひとりは魔物)の反応は様々だったが、一様に驚きに満ちているというところだけは共通している。
が、それも無理のないことであろう。何せ、クエスト報酬は個数限定の超超超レアアイテム。
おまけに石9999個進呈と来れば、明神やメルトの「末期」「ご乱心」という感想も致し方ない。
単細胞の真一は報酬に一も二もなく飛びつくだろう。
心からゲームを楽しんでいます、という風情にはんなりなみのりも、このクエストも楽しもうとするだろう。
しかし。
――絶 対 無 理 。
なゆたの頭には、『QUEST FAILED』の文字しか出てこなかった。
大賢者ローウェル。
かつてキングヒルの王に代々使えた偉大な賢者で、この世界の1/3の魔法を編み出した――と(設定には)ある。
その魔術と知識へ向ける貪欲さは異常、偏執的でさえあり、アルフヘイムだけでは飽き足らず。
ついには闇の世界ニヴルヘイムの深奥にまで至ったという。
そんなアルフヘイムでは知らぬ者のいない大賢者ローウェルが、己の魔力の粋と叡智とを封じたと言われる指輪。
その指輪を嵌めた瞬間、牛馬ですらたちどころに高位魔法言語を喋り世の理を改編する魔法を使い出すという。
尤もそれは設定上の話で、ゲーム上でどんな働きをするのかまではなゆたは知らない。
いや、この中の誰も知るまい。何故なら、ローウェルの指輪はほとんど実在が疑われるようなレベルのアイテム。
攻略wikiにさえ実際の効果が記されていない、幻の存在なのだから。
むろん、ランカーのなゆたでさえお目にかかったことはない。
おぉ、なゆた、出るう!!!
ブリブリブリブリ・・・・」!!!! おう
見とるで
>
それを見た他のプレイヤー(うちひとりは魔物)の反応は様々だったが、一様に驚きに満ちているというところだけは共通している。
が、それも無理のないことであろう。何せ、クエスト報酬は個数限定の超超超レアアイテム。
おまけに石9999個進呈と来れば、明神やメルトの「末期」「ご乱心」という感想も致し方ない。
単細胞の真一は報酬に一も二もなく飛びつくだろう。
心からゲームを楽しんでいます、という風情にはんなりなみのりも、このクエストも楽しもうとするだろう。
しかし。
――絶 対 無 理 。
なゆたの頭には、『QUEST FAILED』の文字しか出てこなかった。
大賢者ローウェル。
かつてキングヒルの王に代々使えた偉大な賢者で、この世界の1/3の魔法を編み出した――と(設定には)ある。
その魔術と知識へ向ける貪欲さは異常、偏執的でさえあり、アルフヘイムだけでは飽き足らず。
ついには闇の世界ニヴルヘイムの深奥にまで至ったという。
そんなアルフヘイムでは知らぬ者のいない大賢者ローウェルが、己の魔力の粋と叡智とを封じたと言われる指輪。
その指輪を嵌めた瞬間、牛馬ですらたちどころに高位魔法言語を喋り世の理を改編する魔法を使い出すという。
尤もそれは設定上の話で、ゲーム上でどんな働きをするのかまではなゆたは知らない。
いや、この中の誰も知るまい。何故なら、ローウェルの指輪はほとんど実在が疑われるようなレベルのアイテム。
攻略wikiにさえ実際の効果が記されていない、幻の存在なのだから。
むろん、ランカーのなゆたでさえお目にかかったことはない。
お前が絶対無理だわなゆたァ!!
ブリブリブリブリ・・・・」!!!! 覇権スレブレモモン
いつから荒らしの魔窟になった? 立てた人間
盛り上げた人間
それが荒らしだった
ただそれだけのこと >「うーん、グラドはまだ成体じゃねーからなぁ……。三人くらいなら乗せられるだろうけど、この全員ってのはちょっと厳しいぜ」
俺の提案に真ちゃんは渋い顔をした。こいつわりとこえー顔してっからちょっとビビるわそれ。
え、ていうかレッドラってアレまだ成長期なの?攻略Wikiにゃ文字情報しか載ってねーからわかんなかったけど。
あれよりデカくなるとかもはやレイド級だろそれ。超低確率とは言えリセマラでそんなん出すなよ運営……。
>「残念ながら、そういうのはないわね。
魔女の箒は、私個人の飛行魔法の補助をするものだから、複数人での使用には不向きだし。
片やウィズリィちゃんも、俺の問いに首を横に振った。
いいんだぜ俺は君と箒にニケツでもよぉ……他の連中レッドラに乗せて俺はウィズリィちゃんとタンデム。
これで万事解決じゃん!真ちゃん?適当にマラソンでもさせとけば。
俺が頭の中で完璧なプランを立てていると、どうやらウィズリィちゃんには対案の用意があったようだ。
>「其疾如風(コマンド・ウインド)。味方に空を飛ぶ力を与えるスペルよ。
これを使えば、それほど疲れもなく目的地……鉱山都市ガンダラまでつけるんじゃないかしら。
「有能かよ。でも俺はニケツでもいいのよ……ニケツしよ?俺と君でさぁ」
当初のプランに頑なに固執する俺の声なき抗議は仕事の出来る魔女っ子の提案によって叩き潰された。
お兄さんかなしい……女の子とニケツしたかった……。
でもまぁこれが最適解だろうな。いわゆる飛行魔法は移動狩りが楽になるからガチ勢の間でも検証が進んでる。
魔力効率の良い飛び方とか、空中補給の方法なんかも、俺はWiki情報で知ってるから、低コストでガンダラまでいけるだろう。
>「何か事前に準備があるならしておいて頂戴。準備ができ次第、スペルを使って飛ぶことにするから。
……あと、その話は本当に信用できるのよね?」
「それについては問題ない。この世界の唯一絶対の神から啓示が降りてるからな」
さて、ウィズリィちゃんがいわゆるNPCのモード(準備が出来たら俺に話しかけてくれ!とか言うアレ)になったので、
俺達漂着者もクエスト開始に向けて準備を整える段となった。
>「報酬9999なんて、さぞかし難しいクエストなんやろねえ。
協力し合わなクリアーでけへんやろうし、ちょいと皆さん今のうちに見たってぇなお互い手の内知ってた方が連携しやすいやろ?
昨夜デッキ再構築もしましてん 特にうちのイシュタルは珍しいから皆さんどういうのか知らへんやろでねえ。」
石油王がなんか情報共有したいとか言ってる。お?課金自慢か?野良パでそんなんしたら晒し案件やぞ。
……え?マジでデッキ見せんの?石油王が差し出したスマホには、彼女のデッキ編成が全部公開されていた。
正気かよ。昨日会ったばっかの人間にそんなんされたら俺……メタデッキ組んじゃうよ?
>「み、みのりさん!そんな、軽々しく自分のデッキを――」
そういう危険を分かってるんだろう、なゆたちゃんが制止に入るが、時既に時間切れ。
俺はばっちり石油王のデッキレシピをこの目に焼き付けていた。やったぜ。
っていうか石油王のデッキえげつねぇな!この編成は好きなだけ殴らせたあと殴った分だけ殴り返すバインドデッキだ。
スケアクロウの高耐久に加えて、多種多様の回復スペルに被ダメの肩代わり……ダメージソースの確保に余念がねぇ。
拘束と範囲軽減入れてるのは一応普通のタンクとしても機能させるためか?正攻法じゃ石油王に火力を献上するだけだろう。
出し抜けるポイントがあるとすれば、バインドのキーカードが二種三枚しかないってところか。
特に主砲になるであろう『収穫祭の鎌』は、ベルゼブブ戦で使い切ってる……丸一日経つまでこいつはただの硬いカカシだ。 >「ゲームとは違うし、ゆっくり回復カード切れるように待ってられなさそうやから高回復を中回復に代えてみたわ〜
他にもいろいろ、ゲームのシステムだけでは収まらへんところがあるみたいやしねえ。
スケアクロウのグラフィックのフレーバー程度やと思うてた蔦についた実も食べられたりしはったし、相違点は色々ありそうやねえ」
石油王はのほほんと自分のデッキを解説してるのを聞いて、俺は頭が痛くなった。
これ他人に知られたらマズい奴じゃねえの。石油王はさぁ……PvPやらない人?危機感なさすぎじゃない?
だが腹は決まった。ローウェルの指環が争奪戦になるなら、俺が真っ先に標的とするのは石油王、貴様だ……!
>「……で。みんな、ちょっといいかしら?」
廃課金デッキにワイキャイ言ってた俺達に、なゆたちゃんが低い声で釘を差す。
>「ガンダラへ行くっていうこと自体は、わたしも賛成よ。というか、それしか選択肢はないみたいだしね」
>「ただし、ローウェルの指輪のクエストについては、すぐに飛びつかない方がいいと思う」
物騒な前置きをしてから、なゆたちゃんは根拠を添えて話し始めた。
要約すると指環のクエストマジでやべー奴だから今のトーシロPTじゃぜってー勝てないってことらしい。
曰く、ガチ勢がレイド級の魔物を従えて束になってかかっても無理無理カタツムリだったという。
……うん?サラっと流したけどなゆたちゃん指環のクエスト参加したことあんの?
あれってガチのハイエンドコンテンツだよな。この女、スライムでエンドコンテンツ行ってんの!?
俺行ったことないからわかんないけどああいうのって最低限レイド級持ってないと参加資格すらないとかじゃないのか。
――まぁアレだな。なゆたちゃんもしかすっと廃人サーのhimechanなのかもな。取り巻き連中がやべー奴らなんだろう。
今分かってる情報から統合するにそういう結論しか出ねーけど口に出すのはやめておいた。
ギスギス×で行きましょう^^;。
>「だから。まずガンダラへ行ってみて、クエストの内容をよく確認してからチャレンジするかどうか決めましょ。
無理だと思ったらやめる。勿体ないと思うけど……命の方が大切、だもの」
「同感だな。別に俺は、ガンダラに永住したって良いと思ってる」
ガンダラは良いとこだぞぅ。ハイエンドへの挑戦を早々に諦めたミッドコア連中が金策がてらいつも駄弁ってる。
ガチ勢連中を「ガチ過ぎてついて行けないッスわ(笑)」と遠巻きに眺め、新規ちゃん相手には半端な知識でマウントを取る。
みんなで鉱石掘りながら運営への文句を言い合い、業者のBotをMPKしてアルフヘイムの警察気取りだ。
あそこの駄目人間を許容する雰囲気はすっげー居心地良かった。まぁ俺はガンダラでも爪弾き者だったんだけど。
>「あ……あの。飛ぶ前にですね……私、クリスタルが無くて……どなたか貸してください、お願いします……。
あと!あと、その……ガンダラに付いたら、どなたか傍に居てくれませんでしょうか……?」
話が纏まりつつある中で、なんかずっと素っ頓狂なリアクションばっかしてた女子中学生が声を上げた。
昨日俺がおトイレ行ってる間に自己紹介済ませやがったらしいメタルしめじちゃんだ。
>「わたしでよければ、あげるよ。まだ石には余裕があるから――。しめじちゃん、ID教えてくれる? フレンドになろう」
小動物みたいなしめじちゃんのムーブに母性を刺激されたのかなゆたちゃんは慈愛顔でお小遣いをあげていた。
よーしおじさんも女子中学生にお金あげちゃおうかNA!いや違うんですこれは純粋な援助であってですね、やましい気持ちは…… >「ここにいる人たちは、みんなしめじちゃんのことをひとりになんてしないと思うけれど。
でも、不安だって言うのはよくわかるから。一緒にいよう? 大丈夫! わたし、こう見えて結構強いし!」
なゆたちゃんはそう微笑み、バブみ全開でしめじちゃんに手を差し伸べた。
なにこの光景。はぁ……マヂ尊い。俺もなゆたちゃんにママになってほしい……。
養ってくれなくてもいいんだ。ただ俺に微笑みかけ、寄り添い、手を握ってくれればそれで……。
>「俺も少し分けてやるよ。こっちに来てから結構減っちゃったから、そんなに沢山は渡せないけどさ。
……それと、お前は必ず元の世界まで連れて帰るって言ったろ? 俺たちが守ってやるから心配すんなって!」
真ちゃんも良い感じのことを言って胸をドンと叩いた。
あ、真ちゃんは別にママになってもらわなくて良いんで……またの機会にお願いしますね^^;
「しめじちゃんには俺も同行しよう。レトロスケルトンとリビングレザーアーマーは同じアンデッドで相性が良いからな」
PTプレイの重要な要素の一つにシナジーがある。アンデッド強化のスペルの恩恵を一緒に受けられたりな。
だからまぁ俺がしめじちゃんと共に動くのは合理的ではあるんだけど、理由はそれだけじゃあない。
……しめじちゃん。いかにもいたいけな少女って感じのツラしてっけど、俺は知っている。
クリスタル減りまくり事件の際にこいつの口からポロっと出た、ミッドコア以上でなけりゃ知りようのないワードの数々。
証拠があったら垢BANされるような規約違反に手を染めてるっていう自白。
そして、生身でアルフヘイムに放り出されたこの非常事態でも本名をひた隠しにしてる、グレー者特有の危機管理意識。
結論から言おう。しめじちゃんからは俺と同属……邪悪なる者の匂いをプンプン感じる……!
俺には理解(わかる)!十中八九こいつは猫被ってやがるぜェーッ!
「それから石油王さん。手札を明かしたあんたに対する義理として、俺もバディのことを解説しておこう。
こいつはヤマシタ。種族はリビングレザーアーマー、見ての通りペラッペラの革鎧に宿ったアンデッドだ。
防御力はカスみたいなもんだが革鎧を装備できる全てのジョブのスキルを使えるというのが特徴だな。
……ベルゼブブを捕獲出来てりゃ、こんなゴミモンスターに頼らなくても良かったんだが」
暗になゆたちゃんにギスギスをぶつけつつ、俺はヤマシタについて簡単に説明した。
これが全部だ。物言わぬ革鎧に蹴りを入れてから、俺は客室の椅子に腰を落とした。
「俺はいつでも行けるぜ。とっととガンダラ行ってまともなメシを食おう」 ガンダラに着いたのは夜になってからだった。
いや飛行魔法ってスゲーわ。だって空飛べるんだぜ?俺飛行機もロクに乗ったことなかったからおしっこ出るとこだったわ。
何がやべーって風がやばい。もうこれは本能的な恐怖だね、耳元でビュオビュオ響くのマジこえーよ。
>「……にしても、夜だってのに随分と活気のある街だなぁ。流石にゴールドタウンって呼ばれてるだけあるわ」
「ゲームの方のガンダラはNPC以外はBotが動かしてるキャラが黙々鉱石掘ってるだけの不気味な街だったんだけどな。
これじゃゴールドタウンじゃなくてゴーストタウンやないかーい!……ってな、わはは」
益体もない戯言を抜かしながら俺はガンダラの街に降り立つ。
近隣有数の鉱山都市として賑わっている(設定)、Botとミッドコアの溜まり場になっている(現実)。
果たして俺の今訪れているガンダラは、前者の方の設定を反映して見事な盛り場へと変貌を遂げていた。
鉱山へ向かう目抜き通りには綺羅びやかな燭灯を掲げた酒場や宿屋が立ち並び、往来に人の流れが途切れることはない。
コボルト族らしき背の低い生き物が、酒場に人を呼ぼうとさかんにポン引きしては道行くオークに蹴られている。
「鉱山労働者とその家族、労働者向けの飲食店に、街の外から鉱石の買い付けに訪れた商人。それから冒険者か。
一次産業がこれだけ盛況なら、王都の方もさぞかし税金で潤ってるんだろうなぁ。
王都で受けられる接待ってのにも、こりゃ期待が持てそうだ」
>「さて、俺たちもまずは今夜の宿と、メシでも食えるところを探そうぜ。もう不味いアイテムのパンは食い飽きちまったよ」
「コカトリスの串焼きでも食うか?お通じ良くなること請け合いだぞ。ははは」
乾いた笑いで冗談を交わしながら、俺達はガンダラの街を散策する。
宿は綺麗なところがいいなぁ……。獣人共と同じ獣くせーベッドなんかで寝られるかよ(差別発言)。
あとシャワーね、これ大事よ。鉱山の麓だし沐浴設備は整ってると思うけど、大衆浴場はいやだぜ。
明らか真ちゃんと混浴する流れになるじゃん。
>「……ん? あっちの方で何か賑わってんな」
真ちゃんがなんか見つけたらしい。俺もそっちを見ると、なんか道端に蛮族共が集まっている。
オークが机に腕をほっぽり出してドヤ顔していた。傍で人間っぽい男が声を張り上げる。
>「さぁー、次のチャレンジャーはいないかい? 参加費用は1000ルピ。
もしもこいつに勝つことができたなら、今までの賭け金は総取りだぁ!」
……ははーん、賭け腕相撲か。いかにもクソ田舎の野蛮人が好きそうな催し物だな。
アホくさ。こんなんオークが勝つに決まってんじゃん。種としてのスペックがちげーよ。ヒトがゴリラに勝てるかっての。
>「おーっと、そこの興味有りげに見ている坊っちゃん! 次は君が参加してみるかい?
……って、君みたいな子供が、こいつの相手になるわけないかぁ!」
「馬鹿馬鹿しい。行こうぜ真一君、あんなやっすい挑発に乗ることは……真一君?」
ちょっと真ちゃん!?何オークの前に座ってんの!?その金貨どっから出した!?……あ、インベントリか。
っていやいやいや!いっくらお前がリアルファイト上等のフィジカルエリートだからってオークは無理だろ!?
よくよく相手と自分の腕の太さ見比べてみ?あいつの力瘤お前の頭くらいあるのよ!? >「……テメーが売ってきた喧嘩だろうが。買ってやるから、さっさと始めようぜ」
イベンターのMCと観客の煽りにものの見事にプッツンした真ちゃんはもう既に周囲が見えていない感じだ。
いきなりキレたヒュームの子供にオークの方が困惑気味になってる始末である。
「……なゆたちゃん、いっつもあんなんの手綱握ってんの?いつか過労死するぞ君」
なんでも良いけど怪我だけはしてくれるなよ……治癒スペル無駄打ちなんてアホくせーからな。
まぁ俺は治癒持ってないから割を食うのは大方なゆたちゃんなんだろう。合掌。
俺が瞑目しナムナム手を合わせていると、ドーンとものっそい音が聞こえてきた。
あーあ、骨何本イったかな?俺治癒スペルは使わないけど慰めるくらいのことはしてやるよ。
目を開けた。オークが机から転げ落ちていた。
「……んん!?」
椅子に座ったままの真ちゃんが、不敵な笑みでそれを見下ろしていた。
>「――悪いな、俺の総取りだ」
なん……だと……?いやマジでウソだろお前!?ホントに人間かよコイツ、ゴリラ混じってない?
しかし俺は目撃した。真ちゃんの身体をぼんやりと覆う、プレイヤーだけに見えるバフの輝き。
こ、こいつ……!身体強化のスペル使いやがった……!!
「えぇ……チートやん……チートやんこんなん……」
ていうか結局スペル無駄打ちしてんじゃねーか!何やってんだよマジでさぁ!
脳筋ってのは褒め言葉じゃねーかんな!なゆたちゃんしまいにゃ心労で倒れるぞ!
「……なゆたちゃん、追い詰められる前に大人にちゃんと相談するんだぞ。俺達は君の味方だ」
スペル使ってNPCから金巻き上げるとか業者も真っ青なレッドカードだよぅ……。
おめーこれが現実じゃなかったら一発垢BANだかんな?そこらへんちょっとよく考えて?
いやー現実で良かった。現実?現実とは一体……うごごごご。
「まぁ、前向きに考えるならこれで宿代とメシ代は確保出来たってことだ。
真ちゃんパイセンのオゴリで良いとこ泊まらせてもらおうじゃないか」
さて、ガンダラまで来たは良いものの、こっからどうすりゃいいんだ?
確か鉱山の奥がダンジョンになってたはずだけど、最奥にいきゃ指環が手に入るのか。
アプリの通知だけじゃなんとも判断しがたい。ちゃんとプレイヤーの導線作っとけよクソゲー!
「当面の資金は得られたことだし、情報収集に行かないか。他にもクリスタルが稼げそうなクエストがあるかもしれない。
ブレモンはRPGだからな。情報収集にうってつけの場所と言えば、相場は決まってるだろう」
俺は目抜き通りの向こうを指差した。
そこに建っているのは、この街で一番大きな建物。冒険者ギルドが併設された酒場である。
「ここから先はRTA方式でサクっと進めよう。酒場のマスターに大金握らせて、一番良い情報を絞り出す。
支払いは任せたぞ真一君!」 極太糞が
ああ出そうだ
助けてくれ、糞がでるっ
きてくれ、ハイパーウンコ! ID:JbTCd32T
0133 名無しさん@ゴーゴーゴーゴー! 2017/11/18 22:10:37
うんち明神が完全に気持ち悪いおっさんになってて草
排便(で)るよ? 待たせたなァァァァ――!!!!!
>「ここから先はRTA方式でサクっと進めよう。酒場のマスターに大金握らせて、一番良い情報を絞り出す。
支払いは任せたぞ真一君!」
そうだ、うんこもりもり方式でブリッとっ進めよう。酒場のウンコマスターに大ウンコ握らせて、
ついでに玉も握らせて、一番良いウンコをくれ!!! ザ・グレートウンコはウンコをひり出した
buriburiburi・・・
そのウンコのうち75%はなゆたにぶっかかった。
では、残りの25%は?
ザ・グレート・ウンコからの問題だぜ? ヒョコ……
キョロ、キョロ
キュポン(穴に隠れる)
我がウンコにまさるウンコはいないのか……
>>309
明神 ◆9EasXbvg42
我が仲間にならぬか・・・
【明神にナチュラルにウンコへの参加を呼びかけるグレートウンコ
であった】 すんげえ臭うスレ
排便したグレートウンコのせいだけじゃない 魔法機関車の中、デッキを開示するみのりを慌てて制止しようとするなゆただが、意図を汲んでかその手を下げた。
その様子を見て笑みを浮かべながら口を開く
「なゆちゃんありがとうなぁ。でもええんよ〜
PTというのは集団で一つの戦士やと思うんよ。
アタッカーが鉾で、うちみたいなタンクが盾、みたいにね。
身を守る盾の性能を知っておかないと、思い切って攻撃もできへんやろ?」
礼を言い、そしてその意図を説明する。
タンクの仕事は単純で、敵の攻撃を一手に引き受けうることにある。
後は敵を倒すのも、味方を回復するのも、デバフを入れるのも後衛陣に任せてしまえるのだから。
逆に言えば、タンクが攻撃を一手に引き受けるからこそ、後衛陣は自由に行動ができる。
であるのだが、ベルゼブブ戦でヘイト数値を越えてターゲットを変えた。
これはタンクの固定が信用できなくなる事であり、後衛陣の行動リソースが防御行動にも割かなければいけなくなることになる。
デッキ編成を変え固定力を増しているとはいえ、ゲーム同様に固定ができるとは限らない。
ならばデッキを晒し、みのりがどういう行動がとれるのか
どこまで固定ができるのかをそれぞれに計算に入れておいてもらうという狙いがあっての行動である。
という旨の説明をし、一堂にデッキを見せるのであった。
が……その笑みの裏で別の思考もひた走っていた
クリスタルの消耗増そしてガチャなどの補給線の停止から、スマホの操作自体制限されているのも同然である。
デッキ編成にスマホを操作することさえも、だ。
だがみのりには消耗したとはいえそれでも十分すぎるほどのクリスタルがあり、そういった面では大きなアドバンテージを得ているといえる。
こうして開示して、しっかり信用させ対策を取らせた事を見越して更にデッキを再構築するほどの。
勿論そんな思惑を微塵も表に出さず、明神のバディの説明を受け
「おおきにな〜
ベルゼブブさんは残念やったねえ。
今度なんぞつよそおなモンスターさんいはったら頑張って捕獲しましょか〜」
デッキ構築が全てスケアクロウのイシュタルを基準に作ってあり、他モンスターを捕獲する気もないし、捕獲しても育成する時間もないので、こちらに遠慮しなくても大丈夫な旨も付け加える。
話しは進み、ウィズリィの其疾如風(コマンド・ウインド)でガンダラまで一気に行けるとのこと。
魔法の絨毯ではなかったのは残念だが、身一つで空を飛べるとは、現実世界では体験できない事に興奮が隠し切れないみのりであった。
ガンダラ行きで話がまとまりかけたところで、なゆたからローウェルの指輪のクエストについての情報がもたらされる。
それはかつてなゆたが挑んだローウェルの住処『転輾つ者たちの廟』の顛末
思わずため息が零れる様な話であった。
最庵緯度クエストの報酬を考えれば9999個が如何に破格で、そしてどれだけの難易度であるかという事を思い出させるに値する話。
「ひょえ〜恐ろしい話やねえ。
ほれにしても、なゆちゃんは色々知ってて有り難いわ〜
このPTのおかあさんやねえ」
真一の鼻先に人差し指を突き付けるなゆたを見てコロコロと笑い声を上げるみのりであった。 そんな緊張しつつも弛緩した空気の中、震える小動物のような声があがる
>「あ……あの。飛ぶ前にですね……私、クリスタルが無くて……どなたか貸してください、お願いします……。
> あと!あと、その……ガンダラに付いたら、どなたか傍に居てくれませんでしょうか……?」
メルトである。
クリスタルが枯渇し、パートナーモンスターも脆弱、そしてメルト自身も押さなく体つきも貧弱
誰かの庇護がなければとてもこの世界で生きてはいけないだろう
そんな声になゆたをはじめ、真一、明神も援助を惜しまない姿勢を見せている。
「しめじちゃん良かったなぁ
クリスタルはもう足りているやろし、おねいさんからはこれをあげるわ〜
他の皆さんも持っといてぇな〜」
そういい取り出したのは30センチほどの藁人形。
ユニットカード「囮の藁人形(スケープゴートルーレット)」から呼び出された5体の藁人形である。
身に着けておけばある程度のダメージを肩代わりしてくれる
許容量を超えればはぜて消えるが、ある程度の盾となってくれるだろう。
「この藁人形、トランシーバーみたいな感じ見たいにもなるし、これからガンダラ行ってもしはぐれても連絡が取れるとええやろ?」
相違って藁人形を明神、ウィズリィ、めると、なゆた、そしてみのり自身が持つ。
「なゆちゃんと明神のお兄さんがシメジちゃんを守ってくれはるからねえ。
うちは真ちゃんと一緒にいさせてもらうわ〜
藁人形一体足りひんけど、うちが守るよって安心してぇな。
アタッカーとタンクで相性もよろしいおすしな〜」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
魔法機関車での宣言通り、みのりは真一の隣に位置して歩いていた。
風を切り空を飛ぶ其疾如風(コマンド・ウインド)を楽しみ、ガンダラの町の賑わいに息をのみあたりを見回す。
そこは喧噪行き交う活気に満ちたファンタジーな街であり、どこを見ても目新しくその空気すらも新鮮でおいしく感じるものだ。
勿論上品な待ちとは言い難く、柄の悪さも適度にまじりあっており、ピンポイントでそこへと首を突っ込むのが真一であった。
巨大なオークとの腕相撲勝負に乗り、そしてそれを瞬殺!
当たりの人垣からはどよめきと歓声が上がり、後ろでは明神やなゆたからため息が聞こえてくるかのようだった。
「真ちゃん凄いわ〜!こんな大きなお人に腕相撲で勝てるやなんて〜!」
ひときわ大きな歓声を上げ、真一の頭に抱き着くみのり
だが、もちろんみのりもプレイヤーであり、バフの輝きは見えている。
抱きつきながら耳元に口をやり、そっと囁きかける
「こんなところでスペルカード使ってもうたらなゆちゃんに怒られるえ〜
この頭に大きなコブつくられる前に、はよ行こな〜」
囁き終わるとようやく体を離し、真一の手を引き先に進む。
「真ちゃんの大活躍でお金も仰山手に入ったことやし、ウィズリィちゃん、明神のお兄さんの言うような宿屋や酒場に案内したってぇ〜」
待ちきれないかのように真一の手を引き、ウィズリィ案内を待つのであった。 メルトである。 
クリスタルが枯渇し、パートナーモンスターも脆弱、そしてメルト自身も押さなく体つきも貧弱 
誰かの庇護がなければとてもこの世界で生きてはいけないだろう 
そんな声になゆたをはじめ、真一、明神も援助を惜しまない姿勢を見せている。 
「しめじちゃん良かったなぁ 
クリスタルはもう足りているやろし、おねいさんからはこれをあげるわ〜 
他の皆さんも持っといてぇな〜」 
なゆた、おるか〜? >五穀みのり
勿論上品な待ちとは言い難く、柄の悪さも適度にまじりあっており、ピンポイントでそこへと首を突っ込むのが真一であった。
巨大なオークとの腕相撲勝負に乗り、そしてそれを瞬殺!
当たりの人垣からはどよめきと歓声が上がり、後ろでは明神やなゆたからため息が聞こえてくるかのようだった。
「真ちゃん凄いわ〜!こんな大きなお人に腕相撲で勝てるやなんて〜!」
ひときわ大きな歓声を上げ、真一の頭に抱き着くみのり
だが、もちろんみのりもプレイヤーであり、バフの輝きは見えている。
抱きつきながら耳元に口をやり、そっと囁きかける
「こんなところでスペルカード使ってもうたらなゆちゃんに怒られるえ〜
この頭に大きなコブつくられる前に、はよ行こな〜」
囁き終わるとようやく体を離し、真一の手を引き先に進む。
「真ちゃんの大活躍でお金も仰山手に入ったことやし、ウィズリィちゃん、明神のお兄さんの言うような宿屋や酒場に案内したってぇ〜」
待ちきれないかのように真一の手を引き、ウィズリィ案内を待つのであった。
つ【招待状】 ザ・グレートウンコは五穀みのりに
ウンコ側に付くことを招待しました
そのかわりウンコも付くけどね
思いっきり糞ひり出して楽しもうぜ
そして諸悪の根源である狐退治に出発するのだ
【ザ・グレート・ウンコの本体が参戦を表明】 コウノスケ=GAKURANMANが具体的に嫌いな、「キャーキャーしてる人たち」の特徴
・自分たちが居た世界のルールをこちら側に適用しようとする。
・暗黙のルールを理解していないのに、黙っていることも出来ない。
・感情に任せた自己中心的な問題提起を全体化し、感情に任せた水掛け論を引き起こす。(学級会と呼ばれる)
・自分の発言に価値が無いのに、価値があると思っている。
・主体性がなく、流行っているという理由で物事を好きになる。
・傷ついた素振りを見せることで、他者の気を引こうとする。
・キャーキャーすることが、その対象のためになると思っている。
・対象のキャーキャーできる部分が、その対象の全てだと思っている。
・キャーキャーすることにより、同族でコミュニティを形成しようとする。
・自身の紹介が、「何にキャーキャーしているか」に依っている。
・以上のような自分たちの振る舞いが迷惑になることを顧みない、顧みているつもりになっている。
・こうした意思の表明に対してすら、いちいち自分の見解を発表せずにはいられない。
お前らのことだな。 TRPGウォッチャーの人達にはいろんな意味でまるっきりついていけないから仲間にすら入れないよ。 >>323
入る必要ないよ
ここウンコ荒らしの拠点だから 魔女さぁ…
何で毎ターンこんなに遅いの?
流石に他の参加者もイラついてると思うよ >>325
俺はここにいちいち書き込む非常識で頭ガイジなお前にイラついてるよ 【避難所の方にも書きましたが、ウィズリィさんがこのターンパスということですので、
次はメルトさんのターンでお願いします】 永遠にパスでお願いします
地下でやっててください
臭いが凄いんで >「わたしでよければ、あげるよ。まだ石には余裕があるから――。しめじちゃん、ID教えてくれる? フレンドになろう」
>「俺も少し分けてやるよ。こっちに来てから結構減っちゃったから、そんなに沢山は渡せないけどさ。
>……それと、お前は必ず元の世界まで連れて帰るって言ったろ? 俺たちが守ってやるから心配すんなって!」
「あえ―――ふ、フレンド登録ですか……そ、そうでしたね。その、ありがとうございます」
自分から石を乞うたにも関わらず、スムーズに恵んで貰えた事。
そして、みのりからは「囮の藁人形(スケープゴートルーレット)」という割とレアなアイテムを受け渡された事に対して、メルトは動揺を見せる。
メルトの感覚では、弱みを見せて頼みごとをすれば、頼みごと以上の見返りを求められるのが当然なのだ。
その辺りの認識が甘い連中を騙してアイテムを撒き上げた挙句に引退させた事は何度もあるが、こうも無条件に善意を示される事は彼女にとって初めての事であった。
故に視線を泳がせ、人差し指を擦り合わせて気まずさを示しつつもIDを提示する。
そして、送られてきたクリスタルと人形を確認すると
「えへへ……」
誰にも盗られまいとするかの様に、無意識にスマートフォンを胸にかき抱く。
同時に浮かんだ笑みは、石配布に喜ぶゲーマー特有のそれか、或いは他の何かなのかはメルト自身にも判らないだろう。
>「しめじちゃんには俺も同行しよう。レトロスケルトンとリビングレザーアーマーは同じアンデッドで相性が良いからな」
と。そんなメルトにある意味では初の顔合わせといえる明神が語りかける。
この場では唯一の成人した大人の男性。例え所有するモンスターが強力とは言えずとも、その庇護を得られるという事は子供のメルトにとって力強い。が
「えっ……あ、はい。ありがとうございます」
声を掛けられたメルトは、一瞬顔を引き攣らせた。
……別段、メルトは明神に嫌悪感を覚えている訳では無い。そもそも、嫌う程の長い付き合いがある訳もないのだから。
では、何故このような反応を見せたのかと言えば。
(リビングレザーアーマーですか……あの時の嫌な奴を思い出しますね。私が塩の壺バグで鬼沸きさせて囲ってたジュエルビーストを煽り台詞残して解き放った上に、運営にバグ報告して修正させたあの荒らし……今でも許せません。作業の為に割った石返して欲しいです)
単なる八つ当たりのとばっちりであった。
だが、その荒らしが明神であるという、ある意味奇跡的な偶然が起きる可能性は低いだろうと思い直したメルトは、直ぐに表情を取り繕うと、明神に対して礼儀正しく頭を下げる。
言動の端を見て、相手の立ち位置を見抜けるか見抜けないか。
明神とメルト。同じアングラな側に位置するプレイヤーであっても、この辺りに半引きこもりと社会人の人生経験の差が明確に表れていた。
さて。その後、デッキ構成やモンスター情報などの公開をはさみつつ――――
>「――さて……。わたしは準備いいわよ、ウィズリィ。いざ、鉱山都市ガンダラへ!!」
なゆたの掛け声と共に、一行は空へと飛び立つのであった 鉄を打つ音と、鳴り響く怒声と嬌声。立ち込める煤と漂うアルコールの臭い。
亜人と人間の区別なく泥臭く騒ぎ、酒とつまみを喰らう姿。
日暮れの中に在るにも関わらず、数多の建物から漏れ出る灯りと喧騒は、夜が持つ静謐をあざ笑うかのような活気に満ちていた。
ここは鉱山都市ガンダラ。
夢と希望と欲望が渦巻く不夜の街。
>「……にしても、夜だってのに随分と活気のある街だなぁ。流石にゴールドタウンって呼ばれてるだけあるわ」
>「ゲームの方のガンダラはNPC以外はBotが動かしてるキャラが黙々鉱石掘ってるだけの不気味な街だったんだけどな。
これじゃゴールドタウンじゃなくてゴーストタウンやないかーい!……ってな、わはは」
(……あっ、あの黄鉄鉱のポイントが空いてます!軽銀の沸きポイントにもBotが居ません!なんですかこれ!素材の宝石箱ですよここ!)
周囲を落ち着きなく見渡しつつ歩きながら、見知ったBot御用達の発掘ポイントが空いている事を発見しては足を止め、
置いていかれそうになる度に小走りで集団へと追いつくメルト。
その様子はまるでおのぼりさんであったが、それも仕方ないといえよう。
ゲームでは中華Botに貼り付かれ活用しようにも出来なかった狩場が、この世界では見向きもされていないのだ。
金儲けに旨味を感じる者が見れば、カモが鍋と葱背負ってブレイクダンスしているような物である。
周囲を通りかかる現地の通行人はそんなメルトの様子を不審そうな目で見ているが、本人はそれどころではないというのが救いだろう。
もしその視線に気づいていたのなら、恐らくメルトは見る間に萎縮してしまった事だろうから。
>「さて、俺たちもまずは今夜の宿と、メシでも食えるところを探そうぜ。もう不味いアイテムのパンは食い飽きちまったよ」
>「コカトリスの串焼きでも食うか?お通じ良くなること請け合いだぞ。ははは」
「こんな世界ですから、流石にカップラーメンは無いですよね……」
そして、歩きながら食事と宿の談義をしている最中であった
>「おーっと、そこの興味有りげに見ている坊っちゃん! 次は君が参加してみるかい?
>……って、君みたいな子供が、こいつの相手になるわけないかぁ!」
>「馬鹿馬鹿しい。行こうぜ真一君、あんなやっすい挑発に乗ることは……真一君?」
>「……テメーが売ってきた喧嘩だろうが。買ってやるから、さっさと始めようぜ」
「うえぇ!? え、え!? あの!何してるんですか真一さん!正気ですか真一さん!ダメですよ!腕がポキッとなってしまいますよ!?
ほら、今からでも遅くないですからクーリングオフしましょう!ねっ!ねっ!?」
なんと、通りすがりに挑発された真一が、巨漢のオークが主催する腕相撲の賭け試合にエントリーを決めていたのである。
採掘ポイントに気を取られ遅れていたメルトが追いついた時には、既に真一は勝負の席に着いており、
大人と子供程もある体格差など気にもせず、相手のオークに睨みを利かせていた。
(なに考えてるんですかこの人は! デカいは強いんです。少年漫画じゃないんですから、こんなの勝てる訳ないですよ……
こんな所で寄生先の戦力を失う訳にはいきませんし、最悪『生存戦略(タクティクス)』のスペルの回復効果で…………あれ?スペル?)
どうあっても引く様子がない真一を半ばあきらめて眺めていたメルトであったが、試合後に負うであろう怪我を回復する手段を思い描いた時、ある可能性に思い至った。
それは、体格で劣る真一がオークの腕を叩き付けるのと正に同時の閃きであった。
>「――悪いな、俺の総取りだ」
>「……なゆたちゃん、追い詰められる前に大人にちゃんと相談するんだぞ。俺達は君の味方だ」
>「真ちゃん凄いわ〜!こんな大きなお人に腕相撲で勝てるやなんて〜!」
「うわ……驚きました。いい感じに仕様の隙間を付いてます。ただ、運営の目を掻い潜るには少し心許ないですね。
フィールドで継続時間の長いスペルを使用してから街に戻って、偶然を装った方が……」
明神が驚き、みのりが真一に抱き着いて賞賛の言葉を発しているのを傍から眺めなつつ、、
メルトは『バフの発光はプレイヤーにのみ見える』という仕様の裏側を付いた真一のセンスに静かに驚嘆する。 そして、直ぐにその技術を上手に悪用する手段を考え始めるメルトであったが、
>「まぁ、前向きに考えるならこれで宿代とメシ代は確保出来たってことだ。
> 真ちゃんパイセンのオゴリで良いとこ泊まらせてもらおうじゃないか」
>「真ちゃんの大活躍でお金も仰山手に入ったことやし、ウィズリィちゃん、明神のお兄さんの言うような宿屋や酒場に案内したってぇ〜」
次いで同行者の面々が今後の指針について語りだした事で我に返ると、誤魔化すように慌ててその会話に参加する。
「そ、そうですね。明神さんの言う通り、酒場のマスターの弱みを握るか懐柔をすれば、特殊クエストが発生します……って、攻略サイトに書いてありましたし!」
慌てて参加した為に、妙な知識を吐き出しそうになってしまったのはご愛嬌。
――――と、そこでメルトはある事を思い出す。
(あれ、そういえばガンダラの酒場のマスターって確か『雄々しき兎耳の漢女(マッシブバニーガイ)』だった気が……)
粗暴な炭鉱不達や、歓楽街を取り仕切る悪漢達をも恐れさせる酒場のマスター。
彼のブレモンのモンスターとしての名は『雄々しき兎耳の漢女(マッシブバニーガイ)』。
ゲーム中ではプレイヤー達に優良な情報と良質な依頼と報酬を与えるやり手であり、ガンダラにプレイヤーが集まる要因の一つでもあった。
名前と連動して、ゲームでの彼のグラフィックを想起したメルトは、頬に汗を垂らしながら女性陣に向けて口を開く。
「あの、なゆたさん。みのりさん。ウィズリィさん……ええと、ですね。私、頑張りますので、頑張って守りますので……」
何を、とは言わない。ただ、メルトの視線は明神と真一の臀部に向けられている。
『雄々しき兎耳の漢女(マッシブバニーガイ)』。
有能な酒場のマスターだが、男性プレイヤーが話しかけた時に一定確率で画面を暗転させ、全ステータスにデバフを掛けて来るのが玉に傷。
メルトには、今の時代が『雄々しき兎耳の漢女(マッシブバニーガイ)』がマスターである時代でない事を祈る事しか出来ない。 メルト=溶ける=つまりウンコ!
呼ばれて飛び出たハイパーウンコは今日も絶好調で
糞!
糞!
糞!
はよう糞まみれになろうや・・・ 「えっ……あ、はい。ありがとうございます」
なゆたに声を掛けられたメルトは、一瞬顔を引き攣らせた。
……別段、メルトはウンコに嫌悪感を覚えている訳では無い。なゆたが嫌いだ。そもそも、嫌う程の長いウンコがあるのだから。
では、何故このような反応を見せたのかと言えば。
(ハイパーウンコですか……あの時の嫌な荒らしを思い出しますね。私が糞の壺バグで鬼沸きさせて囲ってた狐を煽り台詞残して解き放った上に、運営に荒らし報告して修正させたあのウンコ……今でも許せません。作業の為に割った石返して欲しいです)
単なる八つ当たりのとばっちりであった。
だが、その荒らしがなゆたウンコであるという、ある意味奇跡的な偶然が起きる可能性は低いだろうと思い直したメルトは、直ぐに表情を取り繕うと、明神に対して礼儀正しく頭を下げる。
言動の端を見て、相手の立ち位置を見抜けるか見抜けないか。
なゆたとメルト。同じウンコな側に位置するプレイヤーであっても、この辺りに引きこもりとニートの人生経験の差が明確に表れていた。
さて。その後、水分構成やウンコの臭度情報などの公開をはさみつつ――――
>「――さて……。わたしは準備いいわよ、グレートウンコ。いざ、糞尿都市ウンコダラダラへ!!」
なゆたの掛け声と共に、一行はウンコの国へと飛び立つのであった
ジ・エンド?
(つづく?) なゆたに呼び出された俺は引いたらいいのか押したらいいのか分からぬ。
それでメルトに意見を聞いてみた。
同じメルト族として。
俺はメルト族のグレートウンコだから
(なに考えてるんですかこの人は! デカいは強いんです。少年漫画じゃないんですから、こんなの勝てる訳ないですよ……
こんな所で寄生先の戦力を失う訳にはいきませんし、最悪『生存戦略(タクティクス)』のスペルの回復効果で…………あれ?スペル?)
どうあっても引く様子がない真一を半ばあきらめて眺めていたメルトであったが、試合後に負うであろう怪我を回復する手段を思い描いた時、ある可能性に思い至った。
それは、体格で劣る真一がオークの腕を叩き付けるのと正に同時の閃きであった。
>「――悪いな、俺の総取りだ」
「悪いな、俺のウンコは…特大だ」
と、グレートウンコは呟いた
なゆたが爆ぜる
そして、狐がウンコに化ける
まだまだこの戦いは終わらない… 初めてグレウンのレスが面白いと思った
ハイウンよりはセンスがある
柔軟性が違うよな ま、俺は柔らかいからな
軟便よ
ブリブロブリッ・・・
あ、糞出る!!
ブッチッパ! 液晶画面越しに見る世界と実際に肉眼で見る世界は大違いだ。
酒のにおい、土のにおい。怒号と喧騒、頬を撫でる風の感触。
視覚だけでなく嗅覚や聴覚、触覚に訴えかけてくるすべてのものに、自分たちのいる場所が紛れもない現実だということを思い知らされる。
まるで自分がハリー・〇ッターやロード・オブ・〇・リングの世界の住人になったような気持ちだ。
もちろん、こんな体験は初めてのこと。すべての物事が驚異と興奮に満ちている。
鉱山都市ガンダラは世界設定的な意味で重要な場所であると同時に、ゲーム進行にとっても欠かすことができない都市だ。
『ガンダラで揃わないアイテムはない』と言われている通り、ゲーム内で必要な資材の80%はこの街で手に入る。
アップデート等で新規アイテムが実装された際も、プレイヤーは大抵最初にガンダラを当たるのだ。
ガンダラにはいつでも人が、亜人種が、モンスターが溢れている。
しかし。
――いない。
メルトの隣に佇みながら、なゆたは目だけを動かして周囲を見渡し、そう結論付けた。
人間はいる。設定では『ヒューム』と呼ばれる種族だ。
彼らは西洋ファンタジー色の強い衣服を身につけているものの、その肉体自体はなゆたたちと変わらない。
エルフもいる。ドワーフもいるし、ホビットも、オークやスライムなどといったモンスターの姿もちらほら見える。
が、『プレイヤーはいない』。
自分たちの他に、このブレモンの世界に召喚されたであろうプレイヤーが一人も見当たらないのだ。
ブレモンのプレイヤーで、ガンダラの重要性を理解していない者は存在しないと断言していい。
実際、ゲーム内のガンダラの路上にはパーティーメンバーを募集したり、アイテムのトレードを希望するプレイヤーが大勢いる。
もし自分たち以外にこの世界に召喚されたプレイヤーがいるなら、自分たち同様ガンダラを目指さないわけがないのだ。
なゆたはガンダラで他のプレイヤーと接触し、情報を交換しようと考えていた。
が、その予定は早々に潰されてしまった。
――わたしたち五人だけが、アルフヘイムに召喚された? まさかね……。
ブレモンは一億ダウンロードに迫る怪物覇権ゲーである。
もちろんダウンロードした全員がゲームをやっているということはないだろうが、それでも他のゲームとは桁違いのユーザー数を誇る。
そんな中、自分たち五人だけがこの世界に召喚されるというのは理屈に合わない。
もっと多くのプレイヤーと出会い、ギルドを結成して一致団結すれば、それだけ早くこの世界から脱出できると思ったのだが――。
「……このパーティーでどうにかしろ、ってことなのかしらね」
右手を顎先に添え、ぽつりと呟く。
もしもゲームのストーリーモード宜しくこの世界を救え! という条件を突き付けられるなら、このメンバーでは甚だ心許ない。
特に明神とメルトのモンスターは問題だ。ストーリーの終盤まですら行けるかわからない。
――これは。気合を入れていかなくちゃならないわね。
しかし、不可能ではない。wikiやフォーラムには、低レベルクリアや低レアモンスターでのストーリークリア報告も届いている。
困難な道ではあろう。だが実際に達成しているプレイヤーがいる以上、自分たちにできない道理はない。
wiki編纂者のひとりでもあるなゆたの脳内では、現在急速に低レベル低レアクリアへのフローチャートが構築されつつあった。 と。考え事に気を取られていたところ、不意に歓声が上がった。
見れば、いつのまにか真一が巨大なオークと腕相撲に興じている。
無謀な挑戦にパーティーメンバーたちが慌てる中、泰然と構える真一はなんと、巨体のオークをあっさり捻じ伏せてしまった。
真一の身体がぼんやりと輝いている。それはプレイヤーにしか見えない、スペルの輝きだ。
>――悪いな、俺の総取りだ
>真ちゃん凄いわ〜!こんな大きなお人に腕相撲で勝てるやなんて〜!
>うわ……驚きました。いい感じに仕様の隙間を付いてます。ただ、運営の目を掻い潜るには少し心許ないですね。
他のメンバーは一様に驚いていたが、なゆたは声を荒らげるでもなくその光景を眺めた。
真一は基本的に直情径行の単細胞だが、一方で応用力がとてつもなく高い。
1を教えると、明後日の方向に10飛んでいくようなタイプだ。常識にとらわれない、奇想天外な発想をする。
彼にブレモンを教えた当初、彼の何を考えているのかさっぱり理解できないデッキに随分難儀した覚えがある。
彼はこのアルフヘイムで『プレイヤーにスペルを掛ける』という突拍子もない策を実行し、自分のものとした。
そして、その使い方の巧妙さが秒単位で進歩している。驚くべき成長率と言うほかない。
――ああいうのだけは悪知恵が働くのよね。
こんな振舞いは今に限ったことではない。長い付き合いの中では幾度もあったことだ。
ベルゼブブ退治の際の奇襲といい、彼は一見無策に見えて実は……ということを自然にやってのける。
見ているこちらとしては理解できないし、ハラハラするのでやめてほしいのだが、それを言っても詮なきことだろう。
>……なゆたちゃん、追い詰められる前に大人にちゃんと相談するんだぞ。俺達は君の味方だ
「あはは……。ありがとうございます、明神さん。でも、もう慣れたんで……」
気遣わしげな明神の言葉に、軽く彼の方を向いてぎこちなく微笑む。
ただ、真一のお蔭でガンダラでの活動資金ができた。ゲーム内通貨など腐るほど持っているが、金銭は持っているに越したことはない。
>当面の資金は得られたことだし、情報収集に行かないか。他にもクリスタルが稼げそうなクエストがあるかもしれない。
>ブレモンはRPGだからな。情報収集にうってつけの場所と言えば、相場は決まってるだろう
明神が提案する。
目抜き通りの向こうにある、ひときわ目を引く建物。その佇まいには見覚えがある。
宿や道具屋、冒険者ギルド――人の営みの中で必要なものをすべて備えた酒場。
ゲームの中では酒場でモンスター退治や素材収集のクエストを請け負う。きっと、そこにローウェルの指輪のクエストもあるのだろう。
もちろん、なゆたにも異論はない。
>真ちゃんの大活躍でお金も仰山手に入ったことやし、ウィズリィちゃん、明神のお兄さんの言うような宿屋や酒場に案内したってぇ〜
みのりが真一の手を引き、先へ行こうとする。
――む。
その様子に、なゆたは僅かに眉を顰めた。
みのりはその前にも腕相撲に勝った真一に抱きついたり、妙に親しげにしている。
そんな光景に、なぜだが胸の中がモヤモヤする。
――いやいや。まあまあ。いえいえそんな。
なゆたはすぐにかぶりを振ると、胸の中のモヤモヤを打ち払った。
元々スキンシップ過多な人かもしれないし、興奮のあまり人に抱きつくことだってあるだろう。
そう自分を納得させる。 >そ、そうですね。明神さんの言う通り、酒場のマスターの弱みを握るか懐柔をすれば、特殊クエストが発生します……
>って、攻略サイトに書いてありましたし!
メルトもそう提案してくる。初心者のはずなのによく勉強してるのね、となゆたは感心した。
しかし、その一方でなゆたも当然知っている。
その酒場のマスターが、ただのマスターではないということを。
『雄々しき兎耳の漢女(マッシブバニーガイ)』――
身長2メートルを越えるヒゲ面ムキムキマッチョのオッサンが、バニーガールの格好をしているという異様なモンスターである。
ブレモンはその辺のモブやNPCにもケンカを売れるシステムで、『雄々しき兎耳の漢女(マッシブバニーガイ)』にもケンカを挑める。
が、勝ったという話はほとんど聞かない。とにかく恐ろしく強く、たいていのプレイヤーとモンスターは3ターンともたず沈む。
超激レアモンスターの一体なので仲間にもできる(らしい)が、魔力以外のステータスが軒並み異常なほど高いという。
が、『雄々しき兎耳の漢女(マッシブバニーガイ)』の恐ろしさはそんなフィジカルエリートっぷりにあるのではない。
男プレイヤーが話しかけると、一定の確率で放ってくる全ステータスデバフスキル。
回避不可能のそれが、ブレモンの全男プレイヤーを恐怖のどん底に突き落としていたのである――。
>あの、なゆたさん。みのりさん。ウィズリィさん……ええと、ですね。私、頑張りますので、頑張って守りますので……
「……あぁ……。あれかぁー……。わたしたちには関係ないけど、真ちゃんと明神さんは……うん……」
メルトの気まずそうな言葉に、なゆたもまた困り笑いを浮かべて右手の人差し指で米神を掻いた。
しかし、酒場に行かないという選択肢はない。ここに留まっていても仕方ないし、情報は欲しいのだ。
真一の言う通りまともな食べ物も食べたいし、お風呂に入ったりベッドできちんと睡眠もとりたい。
ゲーム内ではバッテリー残量がある限り何時間だって周回できたクエストも、今はそう簡単には行かない。
「と、ともかく、酒場へ行きましょ。考えるのはそれからよ」
うん。と覚悟を決めると、なゆたは先行する真一とみのりの後に倣って歩き始めた。
酒場の中は路上に輪をかけてうるさい。ジョッキになみなみ注がれたエールを鯨飲しながら、下手な歌を歌うドワーフ。
ワイングラスを優雅に傾けているエルフ。遠慮のない笑い声を響かせる鉱山夫姿のヒュームたち。
胸元も露なエプロンドレスのウェイトレスがジョッキとソーセージなんかを持ってテーブルの間を駆け回り、ホビットがお零れに与る。
そんな、いかにもファンタジー世界の酒場といった感じの内部の熱気に一瞬眩暈を覚える。
が、気圧されてはいられない。なゆたはキッと口許を引き結ぶと、大股でカウンターへ歩いて行った。
果たして、『彼』はそこにいた。
見上げんばかりの巨体をしたバニースーツ姿の中年男が、黙々とグラスを磨いている。
その肉体は極限まで鍛え上げられており、布の少ないバニースーツの胸元から覗く大胸筋ははちきれんばかりに隆起している。
剥き出しの腕も丸太のようだ。先程真一が勝負したオークのものより、さらに太い。
いかついヒゲ面の眼光は鋭く、酒場内のどんな揉め事も見逃さないとばかりに店内に注がれている。
アフロヘアから飛び出したウサミミが、時折ひょこひょこと揺れる。
――う。
さすがに少々引いた。ゲーム内でもそのヴィジュアルに引き気味だったが、実際遭遇するとその衝撃は倍増する。
「みんな、ここはわたしに任せてくれない? 交渉事なら経験があるから、悪いようにはしないわ」
仲間たちの方を振り返って提案する。
真一と明神は交渉の切り札で、まだ切るのは早い。といってみのりやメルトにやらせるのも悪い、と思う。
現地人(?)のウィズリィに任せるのが一番いいのかもしれないが、なゆたは自分がやる、と断言した。
高校の生徒会では副会長として教師と丁々発止の舌戦を繰り広げ、予算をもぎ取っているなゆたである。 「……あの」
「いらっしゃァ〜い、『魔銀の兎娘(ミスリルバニー)亭』へようこそ! アラ、アンタたちここらじゃ見ない顔ねェ」
マスターはいかつい顔に似合わない、甲高い声で愛想よく返事をしてきた。
「ええ、ガンダラへはさっき到着したばかりよ。早速なんだけど、部屋を用意してもらえるかしら? そうね……とりあえず三部屋」
軽く背後を見てから、マスターへ指を三本立てる。
二人部屋を三部屋、部屋割は真一と明神の男部屋と、他四人の女部屋が二部屋ということでいいだろうと思う。
全員個室でもよかったのだが、ガンダラに何泊するかわからない以上、出費は極力切り詰める必要がある。
また、全員が個室では万一襲撃などされた場合に対応が遅れる。警戒の意味もあって相部屋を選択したのだった。なお、一人一泊50ルピ。
「真ちゃん、お金」
真一に手を伸ばし、腕相撲の賞金から支払ってもらう。
本来なら一刻も早く部屋に行き、ちょっと休憩するなり酒場のテーブルを確保して食事するなりしたいが、まだやることがある。
なゆたはカウンターに両肘をついて緩く腕を組み、バニー姿のマスターと会話を続けた。
「マスター、今ギルドに来てる仕事の一覧を見せてくれない?」
「いいわヨ。これが今のところ募集してる依頼の一覧ね」
マスターがカウンターの裏から台帳を出し、目の前に広げる。
なお、一覧はプレイヤーが各々持っているスマホからも確認できるので、カウンターの台帳をわざわざ覗き込む必要はない。
クエスト一覧には『黄鉄鉱を300個収集せよ』だの『鉱山に巣食うゴブリンを討伐せよ』だのというクエストが羅列してある。
そのランクはE〜Aまであり、難易度も千差万別だ。
……ただ、そこに『ローウェルの指輪を手に入れろ』というクエストはない。
もう期間が終了したのだろうか? ――いや、そんなことはない。
ランクAより上のミッションは通常の画面には表示されない。そこは明神やメルトの言葉通り、裏技を使う必要があるのだ。
「真ちゃん、お金。――全部」
ちょいちょい、と右の手のひらを上にして指で招く。
先程のアームレスリングで獲得した賞金を全部よこせ、と言っている。
問答無用で賞金の入った袋を提出させると、なゆたはそれをどかん、とカウンターの上に置いた。
マスターが驚いたようにぱちぱちと目を瞬かせる。
「まだるっこしいことは無しよ。今、このギルドで一番大きな仕事を教えてちょうだい」
なゆたがそう言うと、マスターはやや思案気な表情を見せ、それからカウンター裏をまさぐって二冊目の台帳を出してきた。
そこには『廃鉱に棲むバルログ退治』『オリハルコン採掘』『エリクサーの精製』など、錚々たる上位クエストが名を連ねている。
が、そこにもローウェルの指輪に関するクエストはない。
なゆたが顔を上げると、マスターはニヤリと笑った。
明らかに、まだネタを隠し持っているという顔だ。――ならば。 「――明神さん」
仲間たちの方に向き直ると、なゆたは明神に視線を合わせた。
「明神さんは強いモンスターが欲しいんですよね? ベルゼブブ捕獲を試みてたくらいだし。
あのときは討伐を優先しちゃってごめんなさい。でも、次にもし強力なレイドボスが出現したら――捕獲の手助けをしますよ。
みんなも協力してくれるはず。ううん、協力してもらう。あなたが欲しいモンスターを捕獲できるように……その代わり」
そこまで言って、肩越しに右手の親指で軽くマスターを指す。
明神が抜け駆けしてベルゼブブを捕獲しようと試み、なゆたがそれを阻止したのは以前あった通りだ。
>……ベルゼブブを捕獲出来てりゃ、こんなゴミモンスターに頼らなくても良かったんだが
と、明神が上位モンスターに対して執着を見せているのも知っている。
ガンダラ周辺のレイドモンスターと言ったら、上位クエスト一覧にもあった悪魔族のバルログや、炎の精霊イフリート。
それからドラゴンゾンビくらいだろうか。
ドラゴンゾンビは見るからに不衛生なので論外として、バルログやイフリートならば捕獲できないこともないだろう。
パーティーの戦力的にも申し分ない。だが、ひとりでの捕獲は不可能だ。
だからこそ。
「レイドモンスターの捕獲に手を貸す代わりに――明神さん、マスターから情報を引き出して。
これはあなたにしかできない仕事、だから」
『雄々しき兎耳の漢女(マッシブバニーガイ)』の繰り出す、暗転からの全ステータスデバフスキル――
それを、甘んじて喰らえと言っている。
マスターのデバフは宿屋で宿泊しても回復せず、しばらく実時間を経るしか解除方法がないという鬼スキルだ。
しかし、その代わり喰らった男プレイヤーに対してはマスターの隠しステータス『心証』が爆上がりするというメリットがある。
心証が上がると宿代が安くなる、アイテムの買取値が高くなる、など種々の恩恵が得られる。
その恩恵の中に、きっとローウェルの指輪に関する情報も入っているに違いないのだ。
「お願い明神さん! わたしたち、みんなでこの世界から脱出する手助けと思って!」
無茶振りにも程がある。そして、ちゃっかり真一をデバフの対象から除外している。
が、これには一応理由がある。
「真ちゃんはこの際、モンスターの一種として見ていいと思う。
となれば真ちゃんも貴重な戦力のひとり。クエストを受ければ戦闘は避けられないんだから、戦力は多いに越したことはないわ。
そんな真ちゃんが全ステータスデバフを受けるのは、わたしたち全員にとって不利でしょ?
でも、明神さんは戦わない。そして、下がるのは明神さんのステータスであって、ヤマシタさんのじゃない。
ってことは、明神さんのステータスが下がっても、パーティーの戦力そのものは低下しないってこと」
一応パーティーのことを考えているらしい。
……とはいえ、『真ちゃんにいかがわしいことはさせたくない』という考えが一番先に立っているのだが。
「ってことで、よろしくお願いします! マスター、彼がマスターにお話があるそうですよ!」
そう言って明神の背中を押す。
「あらン……何かしら? かわいい子ねン」
『雄々しき兎耳の漢女(マッシブバニーガイ)』――バニースーツに身を包んだアフロマッチョ中年は、明神を見て舌なめずりをした。
【情報のため明神を売る鬼畜的所業。ゴメンナサイ……】 0334 ザ・グ…… ◆Znv0XSIufA 2017/12/06 00:42:32
なゆたに呼び出された俺は引いたらいいのか押したらいいのか分からぬ。 
それでメルトに意見を聞いてみた。 
同じメルト族として。 
俺はメルト族のグレートウンコだから 
(なに考えてるんですかこの人は! デカいは強いんです。少年漫画じゃないんですから、こんなの勝てる訳ないですよ…… 
  こんな所で寄生先の戦力を失う訳にはいきませんし、最悪『生存戦略(タクティクス)』のスペルの回復効果で…………あれ?スペル?) 
どうあっても引く様子がない真一を半ばあきらめて眺めていたメルトであったが、試合後に負うであろう怪我を回復する手段を思い描いた時、ある可能性に思い至った。 
 それは、体格で劣る真一がオークの腕を叩き付けるのと正に同時の閃きであった。 
>「――悪いな、俺の総取りだ」 
「悪いな、俺のウンコは…特大だ」 
と、グレートウンコは呟いた 
なゆたが爆ぜる 
そして、狐がウンコに化ける 
まだまだこの戦いは終わらない… それでメルトに意見を聞いてみた。 
同じメルト族として。 
俺はメルト族のグレートウンコだから 
(なに考えてるんですかこの人は! デカいは強いんです。少年漫画じゃないんですから、こんなの勝てる訳ないですよ…… 
  こんな所で寄生先の戦力を失う訳にはいきませんし、最悪『生存戦略(タクティクス)』のスペルの回復効果で…………あれ?スペル?) 
どうあっても引く様子がない真一を半ばあきらめて眺めていたメルトであったが、試合後に負うであろう怪我を回復する手段を思い描いた時、ある可能性に思い至った。 
 それは、体格で劣る真一がオークの腕を叩き付けるのと正に同時の閃きであった。 
>「――悪いな、俺の総取りだ」 
「悪いな、俺のウンコは…特大だ」 
と、グレートウンコは呟いた 
なゆたが爆ぜる 
そして、狐がウンコに化ける 
まだまだこの戦いは終わらない…
なゆたの登場でウンコたちが湧いた
いや、沸いた
流れが変わった
橘音との合流を彼らは望んでいるようだ 橘音との合流を彼らは望んでいるようだ
ウンコの無限沸きは止められないのだろうか?
ハイパーウンコがなゆたに代わって答えた
「それは即ち不可能なり」
橘音も続く
「不可能なぜなら俺も荒らしだからだ」 なゆた「悪いな、鬼畜的所業は俺だ」
橘音「俺がハイパーウンコでもか?」
なゆた「おう、だって俺らは一心同体」
ハイパーウンコ「」 ウンコが何か書いたところでウンコなのに
懲りないなあこのウンコなゆた ブレウン
ブレウン勢
ブリモン
ブリモン勢
どっちがいい? 「ハッ、喧嘩を売った相手が悪かったな」
まるで信じられないものを目撃したかのように、目を白黒させる司会の男の姿を見て、真一は満足そうに鼻息を鳴らす。
そして机上に積まれた金貨を全て掴み取り、それをインベントリに格納して、アームレスリングの席を立った。
>「真ちゃん凄いわ〜!こんな大きなお人に腕相撲で勝てるやなんて〜!」
すると、そんな真一の元へ真っ先に訪れたのは、意外にもみのりだった。
彼女は無邪気そうに真一の頭に抱き付いてくるが、抱き締められているこちらからすれば、ただ事では済まされない理由があった。
「ちょ、ちょっ……! その……あ、当たってんだけど……!」
――そう、当たっているのだ。
頭になど抱き付いてくれば、必然的に。
普段は野暮ったい農作業服に覆い隠されているが、みのりの体躯はスレンダーでありつつ、女性らしい起伏に富んでいる。
真一も健全な男子高校生なので、そんな体をこうやって無防備に押し付けられると、大分参ってしまうものがある。
血流が心臓の方から登ってきて、自分の頬が紅潮していくのを感じた。
>「ここから先はRTA方式でサクっと進めよう。酒場のマスターに大金握らせて、一番良い情報を絞り出す。
支払いは任せたぞ真一君!」
>「真ちゃんの大活躍でお金も仰山手に入ったことやし、ウィズリィちゃん、明神のお兄さんの言うような宿屋や酒場に案内したってぇ〜」
>「そ、そうですね。明神さんの言う通り、酒場のマスターの弱みを握るか懐柔をすれば、特殊クエストが発生します……って、攻略サイトに書いてありましたし!」
「あ、ああ……そうだな。さっきの一悶着で路銀も手に入ったし、それくらいは俺が持つぜ」
そして明神の提案に乗り、一行は酒場を目指すことにする。
しかし、ここでもみのりは何の気無しに真一の手を握ると、子供のようにはしゃぎながら、その手を引いて歩き出した。
何故かは分からないが、ガンダラの街に着いてからというもの、彼女のボディタッチが異様に多い気がする。
歳上の可愛いお姉さんにベタベタされて、悪い気のする男はいない――が、そんな様子を鋭く見据える視線を感じ取り、真一は何やら居心地の悪さを覚えずにはいられなかった。 ――“魔銀の兎娘(ミスリルバニー)亭”。
ガンダラに存在する数多くの建造物の中でも、その魔窟は一際の異彩を放っていた。
まず見てくれからいかがわしく、屋根の上には兎の耳のような飾りが付いており、店の前にはハート型の看板が立てられている。
ショッキングピンクやパープルといった毒々しい色で塗装されたその店は、ファンタジー世界の酒場というよりは、現代のキャバクラなどを彷彿とさせた。
「……なぁ、マジでこの店にすんの?」
真一は「他の店にしとこうぜ」という雰囲気を醸し出しながらそう言うが、彼らの主目的はあくまでも情報収集だ。
ガンダラの街では何故かこの店が一番繁盛しており、ゲーム内でも多数のクエストを取り扱っている。
ローウェルの指輪という激レアアイテムの情報を手に入れるためには、避けては通れない道であった。
そして、一行が決心を固めて店の戸を叩くと、予想に反して店内は意外とまともな酒場だった。
ウェイトレスの格好がコスプレ染みていて、妙に露出度が高いのが気になるが、それに目を瞑れば如何にもイメージ通りのファンタジー風だ。
人間だけでなく、多様な亜人種たちが卓を囲んで酒を酌み交わし、高らかに歌いながら手を取り合って踊る。
子供の頃から色んな漫画やアニメで見知ってきた光景を目の当たりにして、真一は思わず感動しそうになるが、そんな店内に一つの異物を発見してしまう。
「うげっ……あれが、噂のバニーマスターか」
それは“雄々しき兎耳の漢女(マッシブバニーガイ)”の名で知られる、モンスターの一種だった。
バニーガールの服装を纏った筋骨隆々のオッサンという、ゲテモノ極まる容貌でありながら、その戦闘力は作中のNPCでもトップクラスに位置するらしい。
真一は当然戦ったことなどなかったが、今後もその機会が来ないことを心から願った。
>「みんな、ここはわたしに任せてくれない? 交渉事なら経験があるから、悪いようにはしないわ」
>「真ちゃん、お金」
「……ん。頼んだぜ、なゆ。お前は生徒会でもそういうの得意だったもんな」
真一はなゆたに言われた通りに金貨を渡すと、マスターとの交渉を彼女に一任する。
なゆたは気の強さに加え弁が立つのを知っていたし、何よりアレとあまり関わり合いたくない。
この場はなゆたを信頼するとして、真一はそそくさと席を離れると、近くのウェイトレスを呼び止め、しれっとエール酒を注文した。
「ぷはぁ……! あっちの世界のビールと違って冷えてないけど、すげー美味いなコレ! 本場の味って奴か?」
そして、なみなみとジョッキに注がれたエール酒を一気に半分くらい飲み干すと、真一は幸福の溜息を漏らす。
真一は現実世界にいる頃も、酔っ払った父親に付き合わされて、こんな風に酒を飲むことは多少あった。
あちらでは大っぴらに言えたことではないが、幸いここはアルフヘイムだ。日本の法律を気にする必要なんて微塵もありはしない。
「おっ、兄ちゃんいけるクチだな? ほら、もっと飲みな飲みな!」
「おう、ありがとな! そういうオッサンも中々飲めるじゃねーか」
すっかりいい気になった真一は、隣の卓のドワーフたちとも意気投合し、彼らに促されるがままガブガブと酒を呑み始める。
そして、何語かさえ分からない賛美歌のような歌を共に歌いながら、瞬く間に酒場の空気へ溶け合っていくのであった。
【面倒事をなゆたたちに任せて、未成年飲酒を断行】 「うげっ……あれが、噂のブレウンか」 
それは“雄々しき兎耳の糞女(ハイパーはなゆた)”の名で知られる、モンスターの一種だった。 
バニーガールの服装を纏った筋骨隆々のオッサンという、ゲテモノ極まる容貌でありながら、その荒らし力は作中のNPCでもトップクラスに位置するらしい。 
真一は当然戦ったことなどなかったが、今後もその機会が来ないことを心から願った。 
>「みんな、ここはわたしに任せてくれない? 交渉事なら経験があるから、悪いようにはしないわ」 
>「真ちゃん、うんち」 
「……ん。頼んだぜ、糞なゆた。お前は生徒会でもそういうの得意だったもんな」 
真一はハイパーウンコに言われた通りに金貨を渡すと、マスターとの交渉を彼女に一任する。 
ウンコは気の強さに加え弁が立つのを知っていたし、何よりアレとあまり関わり合いたくない。 
この場はなゆたを信頼するとして、真一はそそくさと席を離れると、近くのウェイトレスを呼び止め、しれっと特製糞汁を注文した。  「うげっ……あれが、噂のブレウンか」 
それは“雄々しき兎耳の糞女(ハイパーはなゆた)”の名で知られる、モンスターの一種だった。 
バニーガールの服装を纏った筋骨隆々のオッサンという、ゲテモノ極まる容貌でありながら、その荒らし力は作中のNPCでもトップクラスに位置するらしい。 
真一は当然戦ったことなどなかったが、今後もその機会が来ないことを心から願った。 
>「みんな、ここはわたしに任せてくれない? 交渉事なら経験があるから、悪いようにはしないわ」 
>「真ちゃん、うんち」 
「……ん。頼んだぜ、糞なゆた。お前は生徒会でもそういうの得意だったもんな」 
真一はハイパーウンコに言われた通りに金貨を渡すと、マスターとの交渉を彼女に一任する。 
ウンコは気の強さに加え弁が立つのを知っていたし、何よりアレとあまり関わり合いたくない。 
この場はなゆたを信頼するとして、真一はそそくさと席を離れると、近くのウェイトレスを呼び止め、しれっと特製糞汁を注文した。 
うんち臭い ――「ブレイブ&ハイパーウンコ!」とは? 
遡ること二年前、某大手ゲーム会社からリリースされたスマートフォン向けソーシャルゲーム。 
リリース直後から国内外で絶大な支持を集め、その人気は社会現象にまで発展した。 
ゲーム内容は、位置情報によって現れる様々なモンスターを捕まえ、育成し、広大な世界を冒険する本格RPGの体を成しながら、 
対人戦の要素も取り入れており、その駆け引きの奥深さなどは、まるで戦略ゲームのようだとも言われている。 
プレイヤーは「スペルカード」や「ユニットカード」から構成される、20枚のデッキを互いに用意。 
それらを自在に駆使して、パートナーモンスターをサポートしながら、熱いアクティブタイムバトルを制するのだ! 
世界中に存在する、数多のライバル達と出会い、闘い、進化する―― 
それこそが、ブレイブ&ウンコなゆた! 通称「ブレウン」なのである!! 
そして、あの日――それは虚構(ヒート)から、真実ヘイズ)へと姿を変えた。 
そしてウンコは流転する
↓ハイパーウンコかグレートウンコが次書け 別に呼ばれてないが、出てきてやったぞ
ビュッ…
ビュッ…
これ何の音だと思う?
糞を発射してるときの音だ
ウンコの神ってのは常に前向きだ
それを覚えておきたまえ 質問コーナーを設ける
ブレモンで一番綺麗なウンコを出しそうなのは誰か?
答えは俺が持っている
当たり前だと思うが、お前ら答えてくれ
もし正解したら
一番良いウンコをやろう
ビュッ…
俺はウンコの王
王の中の王 >>361
許してくれ
下痢ぎみなんだよ最近
>>360
俺はブリーフ派だ 『魔銀の兎娘(ミスリルバニー)亭』は、ガンダラに数あるクエスト起点の中でも質・量共にトップクラスを誇るロケーションだ。
店内は広々としていてプレイヤー同士の交流も盛んに行われ、ガンダラを拠点とする冒険者達の憩いの場となっている。
……というのが、当初開発の想定したこの店の様相だったらしい。
だが、実情はそうならなかった。プレイヤー達は魔銀の兎娘亭に寄り付きもせず、ガンダラ自体が深刻な過疎化に陥っていた。
その理由の一つが――
>「いらっしゃァ〜い、『魔銀の兎娘(ミスリルバニー)亭』へようこそ! アラ、アンタたちここらじゃ見ない顔ねェ」
――アレだ。
この店のマスター、雄々しき兎耳の漢女(マッシブバニーガイ)。
バニーガールの格好したものっそいガタイのオッサンという出オチ丸出しのビジュアルがもう生理的にアレだけど、
更にやべーのがこいつが振り撒いてくる回避不能にして時間経過以外で解除できない超極悪デバフ。
男性プレイヤーにのみ付与される点と、暗転つまり一晩明かした描写が全ての言い逃れを叩き潰している。
プレイヤーの間じゃ『肛門裂傷デバフ』だとか『掘られ状態』とか揶揄されてる開発部の悪ノリの結晶だ。
「クソッ、再現性高えなオイ……」
果たして店の奥、カウンターの向こうにそいつはいた。
近付くだけで雄の匂いが漂ってきそうな濃ゆいツラで、店内の様子をネットリと眺めている。
ときおり俺や真ちゃんに向かってウインクしてくんのホントやめて欲しい。
>「あの、なゆたさん。みのりさん。ウィズリィさん……ええと、ですね。私、頑張りますので、頑張って守りますので……」
しめじちゃんはああ言ってるけどむしろ守って欲しいのは俺達の方なんだよなぁ……。
マジで大丈夫かこのゲーム。一応全年齢向けだよ?CEROに怒られたりしない?
>「……あぁ……。あれかぁー……。わたしたちには関係ないけど、真ちゃんと明神さんは……うん……」
何濁してんだてめー他人事だと思いやがってよぉー!
ん?何を想像したのかな?おじさんにこっそり教えてごらん??
とまぁ通報されたら垢BANモノのセクハラは置いといて、画面越しじゃないリアルなおっさんバニーの存在に俺達は気圧されていた。
ドン引きだよ……開発さんは各方面への配慮が足りてないのでは?世の中にはデリケートな少数派もいるんですよ!
>「みんな、ここはわたしに任せてくれない? 交渉事なら経験があるから、悪いようにはしないわ」
お尻を抑えて一歩下がった俺と入れ替わるようになゆたちゃんが前に歩み出る。
なんて頼りになる女子高生なんだ……もしかしてなゆたちゃんは俺のお母さんなのでは?
>「真ちゃん、お金」
情けない最年長に変わって交渉の矢面に立ったなゆたちゃんは、早速PTのお財布(蔑称)に路銀を要求する。
真ちゃんやっぱ尻に敷かれるタイプだわ……なんか他の客と勝手に未成年飲酒始めてるし。
おめーはダメ亭主かなんかかよ。女房に働かせといて一人で飲み歩いてんじゃねーよマジで!
>「真ちゃん、お金。――全部」
流石のなゆたちゃんもこれにはお冠らしく、財布の中身を全部カツアゲする英断に出た。
真ちゃんが腕相撲でチートかまして巻き上げてきた金の全てがカウンターにドンと置かれる。
マスターの眉がピクリと跳ね上がった。一介の冒険者がホイと出せる金額じゃない。この店の酒を棚ごと買える金だ。
そして……A級以上のクエストを求める上級者達が、挨拶代わりに握らせる額でもある。
>「まだるっこしいことは無しよ。今、このギルドで一番大きな仕事を教えてちょうだい」
交渉慣れしてると言うだけあって、なゆたちゃんの要求は端的かつ正確だった。
この辺は流石にエンド勢って感じだ。まぁ使ってんのがスライム()だしhimechan疑惑が高まるばかりだけれども。
マスターは鼻を鳴らして金貨の入った袋を矯めつ眇めつ眺めると、やがて奥からもう一つの台帳を引っ張り出してくる。
ニュービーには拝むこともままならない、危険度の高い上級クエストの記された帳簿だ。
初心者が勝手に挑んであたら若い命を散らさないように、マスターが厳重に管理しているクエスト類である。 「俺もナマで拝むのは初めてだ。あんな額の金、ミッドコアにゃ用意出来ねえからな」
だが……まだ足りない。まだ先がある。
この段階で受注が可能になるのは、ブレモンを半年も続けりゃたどり着ける『普通の上級者』に向けたクエストだ。
これよりも更に高難度な、ハイエンドコンテンツの名に恥じない『裏クエスト』がこのゲームには存在する。
ローウェルの指輪はまさにそのハイエンドコンテンツで排出される超極希少アイテムなのだ。
ガンダラでハイエンドコンテンツを受けるには……金だけじゃなく、とある条件を満たさなければならない。
>「――明神さん」
振り返ったなゆたちゃんが迷わず俺を見据えたのを感じて、とってもイヤーな予感が背筋を駆け巡った。
俺は咄嗟に逃げ場を探したが、後ろには石油王がニコニコしながら突っ立ってて下がれねえ。
>「明神さんは強いモンスターが欲しいんですよね? ベルゼブブ捕獲を試みてたくらいだし。
あのときは討伐を優先しちゃってごめんなさい。でも、次にもし強力なレイドボスが出現したら――捕獲の手助けをしますよ。
みんなも協力してくれるはず。ううん、協力してもらう。あなたが欲しいモンスターを捕獲できるように……その代わり」
……待て待て待て。この流れはマズいぞ!本当にマズいぞ!
なゆたちゃんはマジモンの交渉巧者だ。提示されたこの美味い条件は、交換条件がとんでもなくエグいことを意味してる。
そして交換条件を先出しすることで、拒否しづらい空気を出していやがる。
拒否権を剥奪するんじゃなく、あくまで相手が自分の意志でそれを選び取ったという履歴を残すためだ!
パーティに数少ない男である俺に、この状況で依頼することなんて一つしかねぇ。
>「レイドモンスターの捕獲に手を貸す代わりに――明神さん、マスターから情報を引き出して。
これはあなたにしかできない仕事、だから」
うげぁー。やっぱそーなるの?
裏クエストを受注する条件。それは、男性プレイヤー一人を犠牲にしてマスターの心証値を上げること。
本来はパーティを組んで、最も火力の低いプレイヤーを生贄に捧げてクエストを開始するのが定石だ。
俺達もその例に漏れず、つまり生贄は俺だった。
「マジかよ」
この女……言ってる意味分かってんだろうな……俺にあのおっさんへケツを差し出せってことだぞ。
ふざけやがって、なんで俺が昨日今日シリ合った連中のために純潔を捧げなきゃなんねーんだ!シリだけに!
>「お願い明神さん! わたしたち、みんなでこの世界から脱出する手助けと思って!」
お願いするんじゃねええええ!!!
脱出すんのなんか俺一人で良いんだよ!おめーらは仲良くガンダラでチマチマ石掘ってろや!
ガンダラは掘る場所であって掘られる場所じゃねぇんだよ!!
ていうか真ちゃんを生贄に捧げりゃいいじゃん。あいつ良い感じに酔っ払ってるし好都合だろ。
マスターだって絶対若い方が良いって!なぁマスター!マスター?なんで俺の方凝視してんの?
目線がずっと下がり気味なのマジでこえーんだけど!
>「真ちゃんはこの際、モンスターの一種として見ていいと思う。
となれば真ちゃんも貴重な戦力のひとり。クエストを受ければ戦闘は避けられないんだから、戦力は多いに越したことはないわ。
そんな真ちゃんが全ステータスデバフを受けるのは、わたしたち全員にとって不利でしょ?
でも、明神さんは戦わない。そして、下がるのは明神さんのステータスであって、ヤマシタさんのじゃない。
ってことは、明神さんのステータスが下がっても、パーティーの戦力そのものは低下しないってこと」
クソっもっともらしい理屈こねやがって!
サラっと言ったけど真ちゃんもはや人間として扱われてねえ!お前らお友達じゃないの?
ベルゼブブの時はたまたま上手く行ったけど真ちゃんあんな戦い方続けてたらそのうち捻り潰されて死ぬからな!?
>「ってことで、よろしくお願いします! マスター、彼がマスターにお話があるそうですよ!」
勝手に話を進めるんじゃねぇ!!
ねぇ真ちゃんどう思う!?あの娘俺を売ったよ!?お前のお友達ああいうことする奴なんだよ!!
ヘイ真ちゃん!こっち見て!……だめだあいつ完全に出来上がってやがる……! 俺は不条理への怒りを込めてなゆたちゃんを睨みつけた。なゆたちゃんは眼を逸らさなかった。
目線を合わせて来るんじゃねえ。それは厄介事を厄介だと分かって頼んでくる奴の眼だ。
罪悪感とばつの悪さを受け入れて、それでも目的を果たそうとする……芯の強さのある眼だ。
邪悪なる俺にはそれが眩しい。居心地の良い日陰から引きずり出される気分になる。
「…………レイドボス捕獲の話、忘れるんじゃねえぞ」
ついに根負けして、俺の方が目を伏せる事になった。
最近の女子高生ってみんなこんな押し強いの?そりゃ真ちゃんも尻に敷かれるわ。こえーもんなゆたちゃん。
まぁ確かに、こんなとこでウダウダ行ってる場合じゃねーってのはその通りだ。
ローウェルの指輪のクエストがいつまでも発生してるとは限らない。
入手のチャンスを逃せば俺達はすっとガンダラで暮らさなきゃならなくなるかもしれないのだ。
「しめじちゃん、石油王、今の話は聞いてたな?君達も証人だ。約束を違えるなよ」
ウィズリィちゃんは何の話してるかわかんねーと思うからこの際除外する。
多分この子はこれから俺がどんな覚悟を決めるか知ることはねーんだろうな……。
でもわかっておいて欲しい。ここに過酷な運命へ立ち向かった一人の男がいたことを。
>「あらン……何かしら? かわいい子ねン」
なゆたちゃんに押し出されるようにして矢面に立った俺を、マスターは舌舐めずりで迎えた。
「マスター、部屋の予約を変更する。二人部屋が二つと個室が一つだ。俺は……あんたのところに泊まる」
マスターは犬歯を見せる笑みを作った。
全然関係ないけど笑うという行為は本来攻撃的なものであり獣が牙をむく行為が原点である的なイメージが脳裏をよぎる。
「うふ。それは『そういうコト』だって受け取ってもいいのかしらン?」
「ああ……俺達は、あんたの求めるものを用意できる」
「あはぁ、しばらくご無沙汰だったから滾るわねぇ……それじゃ、あの月が天辺に来た頃に待ってるわン。
ちゃんとシャワー浴びてから来るのよぉ?優先的に使えるようにしといてあげるわ」
「作法は心得てるつもりだ」
俺は女性陣を顎でしゃくって二階への階段を示す。
「先に宿に行ってろ。そして夜明けまで降りてくるなよ。明日の朝メシまでには戻ってくる」
テーブルで酔客たちと盛り上がってる真ちゃんの肩を、恨みをこめてべしべし叩いた。
「そろそろ門限だ真一君。君は女衆を部屋までエスコートしてそのまま個室に直帰してくれ。
いいかもし俺が夜明けより前に戻ってきて泣きながらシャワーを浴びていたら、その時は何も声を掛けてくれるなよ」
「大丈夫よン、やさしくするから☆」
マスターが俺にウインクする。背筋をものすごい勢いで脂汗が流れ落ちた。
うわぁ……蛇に睨まれたカエルってこんな気持ちだったんだぁ……。 真ちゃんに女性陣を送らせてからしばらく酒場で時間を潰す。シラフじゃやってらんねえよマジでさぁ。
しかしここのビールぬるいっすね。キンキンに冷やしてくんなきゃ美味しくないじゃん。配慮足りてねえなあもう!
月が直上に差し掛かる、地球時間で言う所の12時になってから、俺はシャワーを浴びてマスターの部屋を訪れた。
「待ってたわァ。さぁ、アタシの望む通りのものをくれるのよね?」
ベッドに腰掛けて俺を出迎えたマスターは、相変わらず肉食獣染みた視線で俺を舐めた。
まるで物理的にペロペロされたような錯覚に陥って身震いしながら、俺はスマホを手繰った。
「あんたの求めて止まないもの。そいつは……これだ」
残り少ないクリスタルを消費して、インベントリを開く。
その最下段、一番最近に入手したアイテムを取り出して、机の上に置く。
――『蝿王の翅』。
超希少レイドボス、ベルゼブブを討伐した者だけが手に入れることのできる、トロフィーアイテムだ。
マスターは蝿王の翅と俺の顔とをしばらく交互に眺めて、そして笑った。
あの品定めするような粘着質な笑みではない、相好を崩した快活な笑顔だった。
「へぇ……アナタみたいなヒョロヒョロのヒュームがベルゼブブを倒したの?
それは興味深いわ。ええ、とっても滾る。聞かせてちょうだい、あの凶悪無比な蝿の王を、どんな風に下したのか」
――なゆたちゃんに生贄に選ばれたあと、俺は必死に脳味噌の中身をひっくり返して活路を探していた。
そして、一つの記憶を探り当てて、それに全てのチップをベットし賭けに出た。
すなわちそれは、ブレイブ&モンスターズが押しも押されぬクソゲーだという厳然たる事実だ。
ご存知の通り、ブレモンはクソゲーである。
バディ間のバランスは崩壊してるし、ガチャの排出率はゴミだし、不具合への対応はクソみてーに遅い。
この前塩の壺バグでデュープ行為してる奴を見つけて通報したのに証拠不十分でロクに対処しなかったからな。
結局フォーラムで俺がバグの仕様を公開して、デュープに手を染めるプレイヤーが大量発生してようやく重い腰上げやがった。
いやー良いことすると気持ちがいいなあ!ブレモンの平和を護る聖戦士と呼んで欲しい。
とまあこのように、開発はプレイヤーの神経を逆なでする言動に迷いがない。
ガンダラの主、マッスルバニーガールと謎デバフの設定周りにしたってそうだ。 ブレモンプレイヤーの99割は、マスターの放ってくるデバフがいかがわしいモノだと思ってる。
そりゃそうだ、オカマっぽいマスターが男性にだけ付与してくるデバフだもの。状況証拠が揃いすぎてる。
しかしその一方で、ゲーム中のテキストでも開発のアナウンスでも、デバフの内容については一切言明されていないのだ。
聡明なるプレイヤー諸兄がいくら『マスターに掘られたんですけお!』と騒ぎ立てたところで、開発は涼しい顔でこう言い返す。
『全年齢向けゲームでそんないかがわしいシーンあるわけないじゃないスか(笑)。邪推しないで下さいよ(核爆)』
クッソむかつくけどまぁ正論だ。肛門裂傷デバフなんてのはプレイヤーが勝手に言いだした揶揄に過ぎない。
いくらそうとしか取れないシーンであっても、言明されていない以上これは健全なシーンなのだ。
そういう脳味噌の腐った開発陣の悪意を、今俺の立ってるアルフヘイムが完璧に再現しているとすれば。
そこにこそ、俺の活路はある。
「聞かせよう。俺とその仲間たちが、これまでどんな旅をしてきたのか。
まだ誰にも教えてない、出来たてホヤホヤの冒険譚さ」
ブレモンが健全なゲームだという前提に則って状況を読み解けば、大体の答えは見えてくる。
マッスルバニーガールがデバフを放ってくるのはプレイヤー。男性である以前に、冒険者だ。
そしてゲーム上の演出としての暗転は、すなわち一晩明かしたことを意味している。
酒場で数多くの冒険者を相手にしているマスターが、一晩明かした後に好感度を上げるという状況は、
不健全な交友関係を除外するのであれば、すなわち健全な交友関係を構築したということに他ならない。
もっと端的に言うならば、冒険者と冒険譚を肴に夜通し飲み明かして、仲良くなった。
それが暗転と心証値爆上げのからくりってわけだ。
対象が男性限定なのは、全年齢向けのゲームにおいて男であるマスターに夜明けまで付き合えるのは、男だけってことなんだろう。
マジで紛らわしいな……こういうトラップを喜々として仕込んでくる開発のクソ根性が、俺には手に取るように分かる。
伊達に三年くらいフォーラム戦士やってねえからな。
「うふふ。長くなりそうだしとっておきの瓶を開けちゃうわ。特別よ?明神ちゃん」
いつの間にか俺の名前を呼ぶようになったマスターが、戸棚から高級そうな酒瓶を出してくる。
クリスタルガラスで作られたショットグラスに、琥珀色の液体が注がれた。
暗転後にプレイヤーに付与される、全ステータスを低減させる凶悪なデバフ。
その正体は――二日酔いだ。 翌朝。俺は凄まじい頭痛に苛まれながら朝食の席についた。
「うごごご……頭が割れるようにいてぇ……。ゲームのデバフをリアルに受けるとこんな感じなのか……」
「もう明神ちゃん飲み過ぎよン!今水持ってくるから待っててねっ!」
鼻歌交じりに厨房を駆け回るマスターは全然堪えた様子がない。
昨日あんだけ度の強い酒ガバガバ飲んでたのになんで酒残ってねーんだよ化物か。
俺も会社の忘年会とかでは結構呑む方だけどここまで酷い二日酔いになったの初めてだよ……。
「だが情報は聞き出せた……へへっ……身体張ったかいがあったぜ……」
起きてきた女性陣や真ちゃんは、このテーブルを埋め尽くすようなご馳走に目を奪われることだろう。
仲良くなったマスターが、俺の仲間たちを送り出すために腕によりをかけて振るった料理の数々だ。
しかも起き抜けに喰っても重くないよう消化しやすいメニューをしっかり選んである。
ちょっとつまみ食いしたけどすげえ美味かった。なんなのマスターお嫁さんかなんかなの?
やがて揃った全員を相手に、俺はマスターから聞き出したローウェルの指輪に関する情報を話した。
「まず結論から言うが、ローウェルの指輪自体の在りかについては情報がなかった。まぁ当たり前だがな。
ただし、指輪に繋がるような手がかりはある。――数日前、この店に『聖灰のマルグリット』が訪れたらしい。
賢者ローウェルの弟子が、何の因果かガンダラくんだりまで来てる。間違いなく指輪に関係してるだろう」
聖灰のマルグリット。
賢者ローウェルに師事する『十二階梯の継承者』の一人である魔術師の男だ。
マルグリットは第四階梯、つまり継承権第四位のかなり上位の弟子ということになる。
マルグリットはブレモンのメインクエストでもプレイヤーと関わることになるキーキャラクターで、
"アコライト外郭防衛戦"を初めに何度も対決することになるほか、一部のクエストでは共闘することもある。
その強さもさることながら、有名絵師がキャラデザを手掛けてるだけあってビジュアル面でも人気が高い。
いやマジですげえイケメンなのよ。小学生と大きなお姉さまがたから絶大な師事を得てるらしいっす。
あとセリフがいちいちクサいので男連中からもそこそこネタ的な人気があるのもデカイね。
「なんでも、マルグリットはガンダラの道具屋で大量のポーションを買い付けて鉱山に向かったらしい。
その後数日、今日に至るまで奴の姿をこの街で見かけた者はいない。鉱山から出てきてねえんだ。
出入りしてる鉱夫たちにも見つからない場所っつうと、ガンダラ鉱山奥の『第十九試掘洞』しかないよな」
第十九試掘洞は、ガンダラ鉱山の奥地を侵入点とする中級者向けのダンジョンだ。
作業員がとにかく縦横無尽に掘りまくった結果、という設定のもと、入る度に内部構造が変わる特徴を持ってる。
ダンジョン解放レベルは中級者だけど、下層に辿り着くのはエンドコンテンツ並に難しいとされている。
「おそらくマルグリットは未だにダンジョンに篭ってる。買い込んだ物資の量から見るにかなり長丁場だ。
俺達も試掘洞に潜って、奴に接触出来れば、指輪に繋がるなんらかの手がかりが得られるかもしれねえ」
そこまで話して、もう喋るだけで響くような頭痛が限界に達してきた。
「約束は……果たしたぜ……あとのことは……頼んだ……うっ」
「明神ちゃん水よ――明神ちゃん?明神ちゃーん!?」
マスターが冷水を持って来た時には時既に時間切れ、デバフによって俺のHPは限りなく0に達していた。
マスターが力いっぱい揺さぶって、そのダメージで俺は死んだ。スイーツ(笑)
【マスターと仲良くなり(意味深)、デバフを受ける(意味深)。
ローウェルの弟子、『聖灰のマルグリット』がガンダラ鉱山奥『第十九試掘洞』に篭ってるという情報を入手】 なあ、
ウンコ大明神
一回さ
なゆたウンコと
糞を糞で洗う
大バトルしてみない?
俺協力するよ
な、グレートウンコさんよ? ブレクソプレイヤーの99割は、マスターの放ってくるウンコがいかがわしいモノだと思ってる。 
そりゃそうだ、オカマっぽいマスターが男性にだけ付与してくるウンコだもの。肛門証拠が揃いすぎてる。 
しかしその一方で、ゲーム中のテキストでも開発のアナウンスでもウンコの内容については一切言明されていないのだ。 
聡明なるプレイヤー諸兄がいくら『糞なゆに掘られたんですけお!』と騒ぎ立てたところで、開発は涼しい顔でこう言い返す。 
『全年齢向けゲームでそんないかがわしいウンコシーンあるわけないじゃないスか(笑)。邪推しないで下さいよ(核爆)』 
ウンコむかつくけどまぁ正論だ。肛門裂傷デバフウンコなんてのはプレイヤーが勝手に言いだした揶揄に過ぎない。 
いくらそうとしか取れないシーンであっても、言明されていない以上これは健全なシーンなのだ。 
そういう脳味噌の腐ったなゆたの悪意を、今俺の立ってるアナルヘイムが完璧に再現しているとすれば。 
そこにこそ、俺の括約筋はある。 
糞糞糞! 聖灰のマルグリット。 
賢者グレートウンコに師事する『十二階糞の継承者』の一人である魔術師の男だ。 
マルグリットは第四階糞、つまり継承権第四位のかなり上位の弟子ということになる。 
マルグリットはブリモンのメインクエストでもプレイヤーと関わることになるキーウンコバターで、 
"糞便器外郭防衛戦"を初めに何度も対決することになるほか、一部のクエストではウンコと共闘することもある。
「来いよグレート」
マルグリットは言った。 >>373
悪い
断る
なゆたは俺のフレンドなんだ
いわゆるライフメイトってやつかな
ウンコ仲間
>>370明神 ◆9EasXbvg42
◯ ◯ ◯ >>明神 ◆9EasXbvg42
つ ● ● ●
● ● ● 三
ほら、ウンコを飛ばしてやったぞ
食いなはれ
お前の大好物じゃぞ >>363
悪いな
俺はな
フン族なんだ
だからフンのにおいがするんだぜ…
アッティラ >>372明神
悪い
こっそり相談なんだが、今凄く悩んでいることがある
糞の出が悪いんだ
何か良い治療方法を紹介してはくれんだろうか?
紹介してくれた場合は、
俺のサイン入り糞紙を100枚進呈しよう
配布ももちろんありだ
【参加者募集 みんなで同盟組んでバトルしようぜ】 「あら〜あらあらま〜そういう事やのねぇ〜」
みのりの口から思わず感嘆の声が出たのは、喧騒と紫煙の溢れる『魔銀の兎娘(ミスリルバニー)亭』
その主である『雄々しき兎耳の漢女(マッシブバニーガイ)』を前にしての事であった。
ガンダラはプレイヤーならば誰もが立ち寄り、拠点とする者も多い街ではあるが、みのりは数度訪れたきり
必要なものは町で集めるより課金や取引で集める事がメインだったので、この町に来ることもなかったのだ。
故にほぼ初見状態
ここで何が必要とされ、何が起きるのか全く知らずに来ているのだ
なゆたが交渉を買って出た時もそのまま任せ、何が起きるのかをただ見守っていたが……一連のやり取りを見ておおよそ察するに至る。
>「しめじちゃん、石油王、今の話は聞いてたな?君達も証人だ。約束を違えるなよ」
「はいな〜、確かに聞きましたよって、おきばりやす〜」
悲壮な覚悟を浮かべた表情の明神を安心させるように声をかけその後ろ姿を見送る。
「しめじちゃん、こうなること知っててんな〜
うちこういう普通のクエストプレイとか全然してきいへんかったから知らへんかったわ〜
うちの方がお姉さんやけど、ゲームの知識ではシメジちゃんの方が頼りになるわ〜これからも助けたってや〜」
隣に並ぶメルトが自分よりゲームの知識が豊富な事に素直に驚きの声をかけ、交渉を明神へとバトンタッチして下がってきたなゆたにも声をかける
「交渉お疲れさん〜お見事さんやったねえ。
ほやけど、あのマスターすんごい乙女やのに、いたす時は男に戻りはるんやろうか?不思議やわ〜」
交渉を任せテーブル席に消えて行った真はともかく、ここに残り交渉を行った女三人とその身を捧げた明神はこれから何が起こるかは想像できていただろう
その上でみのりは小さく首を傾げ出した言葉に説明を加える
『雄々しき兎耳の漢女(マッシブバニーガイ)』はその風貌で一目瞭然
骨格から筋肉、顔付き、あふれ出る男性ホルモン、どれをとっても立派な男いや漢である
全力で漢であるにもかかわらずそれに抗い性格と服装を女に保つのは並大抵の精神力では不可能であろう
それを可能にしている『雄々しき兎耳の漢女(マッシブバニーガイ)』がベッドの上だけ男に勃ち戻る不思議を指していたのだ
なんにせよここから先の交渉は明神に託された
テーブル席で酒を呑む真一を見つけ、肩を叩きテーブル席の奥に去っていく明神に代わりみのりがその隣の席に着いた。
一人で飲みたい気分なのも察するに有り余る故に、それを引き止める真似はしない
「あらあら、真ちゃんなんや美味しそうなもん呑んどるやないの〜
なゆちゃんと明神さんが交渉してくれてたけど見ているだけで喉乾いてもーたから一口頂きますえ〜」
真一の手に自分の手を重ね、ジョッキの反対側にも手を添えくいっと一口。
喉を潤し、ふぅと一息ついてからようやく手を離し笑みを浮かべた
「ふふ、美味しいお酒やねえ。
エールいうのん?
美味しし飲みやすいけど……随分と軽いお酒やねえ、これやとうち酔う前にお腹いっぱいになってしまいそうやわ〜」
テーブルを囲み陽気に歌っていたドワーフの空気がピクリと固まる
元々気が荒く酒飲みを自認する鉱夫のたまり場である
『雄々しき兎耳の漢女(マッシブバニーガイ)』によって揉め事は一切置きえないとはいえ、女に挑発されてそのまま流せるような男たちではないようだ
それならばこれはどうだと出された火酒を一息に飲み干し、妖艶な笑みを浮かべる
「あらま―これは美味しいわ〜いい具合の酔えそうやし
お兄さん方、お酒に詳しそうやし、一つうちと遊んでみいへん?」
みのりが提案したのは小さなコップに入れた強い酒を度数の弱い順に入れて並べる
一杯飲めば次の一杯は更に強い酒になっているというものだ。
お互いに一杯ずつ飲み、何列目まで呑めるかという、いわば量より質の飲み比べである
かくしてグラスの列を前に酒豪たちが集い、コールと共に一杯、さらに一杯と度数を強めながら進み、それと共に盛り上がりも高まっていくのであった。 酔いが進めば話も進む。
気も大きくなり、普段はこぼれない話も零れてくるというもの。
最終的にみのりは20杯を空け、『魔銀の兎娘(ミスリルバニー)亭』の上位20酒を全て呑み切ることに成功。
このラインまでたどり着いたのはスタート時12人の内3人のみであった。
その間に、今回呑んだ代金を全て奢ろうという申し出を受け、更にガンダラの最近の情報も聞き出すことに成功していた。
【ここ最近目に見えてクリスタルの産出が減ってきた】
【鉱脈が不自然に枯れた】など
情報を引き出しはしたが、流石に20杯も飲めば足元もおぼつかず、真の方に寄り掛かるようにして部屋へと連れて行かれることになるのであった
「うふふ、ブレモンな世界に来たからってちょいと浮かれてもうたかもやねえ〜
真ちゃんごめんな〜でも明神はんに言われたようにエスコートしたってえな〜
あ、そうやったわ〜明神はん他に泊まるいう事は真ちゃん一人で寂しあらせぇへん?」
酔っぱらいの戯言ではあるが、ともすれば夜中に忍び込むような雰囲気も漂わせる発言に真一は、そしてなゆたはどう聞いたであろうか?
結局のところ、真一は一人部屋に。
なゆたとメルト、ウィズリィとみのりの部屋訳がされ、それぞれが夜を迎えたのであった。
酔い潰れてベッドに横たわっていたみのりであったが、それぞれ部屋に分かれドアが閉まった途端に普通に起き上がった
顔の赤みも引き、つい先ほどまで酔い潰れていた痕跡すらないのだ
「少し横になってたら酔いも引いたみたいやわ〜」
急な変化に驚いたウィズリィに笑いながら答えるが、実はそうではない。
そもそもみのりは酔っていなかったのだ
みのりの実家である五穀ファームは由緒正しき農家で様々な作物を生産している
その品目の一つに日本酒用のコメや蒸留酒用の大麦などもあり、幼少のころから製品となったお酒の試飲をしてきている
その訓練の賜物か、はたまた体質的なものか
本来の目的である酒利きの方はあまり上達しなかったが、酒酔いに対しては恐ろしく強い耐性を備えるに至ったのだった。
夜も更け普段ならば熟睡している時間ではあるが、みのりの目は冴えたまま
酔いにくいとはいえ、酔わない訳ではないのであれだけ呑めばそれなりに影響が出るのであろうか?
などと考えながら同室のウィズリィと話をしていた
「鉱夫のお兄さん方が言うとったけど、クリスタルの産出が減ったって話やけどねえ
機関車のクリスタルが足りひんくなったとか、消費が激しくなるってぇ、この世界的な異変が起こってるゆうことなやろうかねえ?」
手に持つ藁人形をいじりながら話しをしていると、突然藁人形の口から水音が流れ出す
驚きながらも良く聞くとそれはシャワーの音のようだった
「あれれ?なんやろね、これ
ていうか「囮の藁人形(スケープゴートルーレット)」て消えひんけどモンスター扱いやからかねえ?」
そういいながらあれやこれやと藁人形をいじっていると
『ひんけどモンスター扱いやからねえ?』
と自分の声が聞こえてくる。
あれこれ触るうちにわかったことは、「囮の藁人形(スケープゴートルーレット)」は4体の受け藁人形と1体の反射藁人形によって構成される
ダメージ累積計算できることから何らかの繋がりがあるようで、トランシーバーのように離れた場所であっても藁人形を介して声を届ける事ができる。
だがそれ以外にも、反射藁人形は他四体の周囲の音声を一方的に拾える機能がついているようだった。
ウィズリィに渡した藁人形を同じように弄ってみても他の藁人形の音声を拾う事はなかった事から間違いはないであろう
そしてみのりが持つ藁人形こそが反射藁人形であったという事だ。
「ふぅ〜ん、悪趣味な機能やけど、まあ、便利やわねえ
なゆちゃんがやきもきしてそうなのも楽しそうやけど、まずはこちらかしらねえ〜」
拾う音声を明神の持つ藁人形に合わせ、事の成り行きに聞き耳を立てながら夜を明かすのであった。 翌朝、テーブルを埋め尽くすご馳走と、全身生気が抜けたような明神と、どちらに驚けばいいか迷うような朝食
>「だが情報は聞き出せた……へへっ……身体張ったかいがあったぜ……」
「千夜一夜お疲れ様やわ〜。これ、うちからのせめてもの心遣いよ〜」
全てを聞いて知っていながらもみのりが明神の席にそっと置いたのは、藁で編んだドーナッツ型の座布団であった。
明神が体を張って引き出した情報
それは賢者ローウェルの弟子、聖灰のマルグリッドが鉱山に入っているという事
おそらくはガンダラ鉱山奥の『第十九試掘洞』に入っているであろうという事だった
基本野良のレイド戦にふらっとあらわれてはタンクとして参加して一戦終了すれば離脱
そんなプレイをしてきたみのりであるから、当然時間のかかる探索プレイはしてきていない
『第十九試掘洞』も始めてはいる事になるのだが、その表情に不安はない
相変わらず冒険できることへの興奮が不安や恐怖を塗りつぶしてしまっているのだから
「はぁ〜それは大変なダンジョンやのねえ
昨夜クリスタルの算出が減っている云う話聞いたし、それにも関連しているかもしれへんね〜」
わっくわくである
まるでこれからピクニックへ行くかのように
「それで、その『第十九試掘洞』ってクリアーするのにどのくらいかかるんやろか?
ウィズリィちゃんに食べ物とか色々手配お願いしてもらわなあかへんしぃ、洞窟やと飛んだらすぐに頭打ちそうやしヘルメットでも用意してもらう?
明神さんは名誉の負傷やし、元気になるまではうちのイシュタルに運んでもらおかしらね〜」
みのりのパートナーモンスタースケアクロウのイシュタルは藁で出来た案山子である。
その固有スキルの一つに『長男豚の作品(イミテーションズ)』があり、藁を組み替えてその姿を変えることができるのだ。
案山子の背中を椅子状に組み直せば人ひとり背負い移動する事もできるだろう。
【酒宴での零れ話はどんどん追加していっちゃってくださいなー】
【円座布作って明神の夜の既成事実化】 酒宴で糞用意しとくからさ
どんどん支援物資ちょーだい
あ、自演物資でもいーよ >>373
悪い
断る
なゆたは俺のフレンドなんだ
いわゆるライフメイトってやつかな
ウンコ仲間
>>370明神 ◆9EasXbvg42
◯ ◯ ◯
377ザ・( ◆Znv0XSIufA 2017/12/19(火) 01:45:41.04ID:yi4wlIUV
>>明神 ◆9EasXbvg42
つ ● ● ●
● ● ● 三
ほら、ウンコを飛ばしてやったぞ
食いなはれ
お前の大好物じゃぞ
378ザ・グレートウンコ ◆Znv0XSIufA 2017/12/19(火) 01:47:07.11ID:yi4wlIUV
>>363
悪いな
俺はな
フン族なんだ
だからフンのにおいがするんだぜ… やあ
実は僕なんだ
今「ヤマビコーンウンコマシーン」ってのを開発してみた
お前らのウンコを反射することができる道具さ
ところがボクチン、さっき自分の声を反射した
それはまた僕もウンコだからかな? 酔いが進めば話も進む。
気も大きくなり、普段はこぼれない話も零れてくるというもの。
最終的にみのりは20杯を空け、『魔銀の兎娘(ミスリルバニー)亭』の上位20酒を全て呑み切ることに成功。
このラインまでたどり着いたのはスタート時12人の内3人のみであった。
その間に、今回呑んだ代金を全て奢ろうという申し出を受け、更にガンダラの最近の情報も聞き出すことに成功していた。
【ここ最近目に見えてクリスタルの産出が減ってきた】
【鉱脈が不自然に枯れた】など←待て、ウンコの算出が増えていることを忘れるな!
情報を引き出しはしたが、流石に20杯も飲めば足元もおぼつかず、真の方に寄り掛かるようにして部屋へと連れて行かれることになるのであった
「うふふ、ブレモンな世界に来たからってちょいと浮かれてもうたかもやねえ〜
真ちゃんごめんな〜でも明神はんに言われたようにエスコートしたってえな〜
あ、そうやったわ〜明神はん他に泊まるいう事は真ちゃん一人で寂しあらせぇへん?」
酔っぱらいの戯言ではあるが、ともすれば夜中に忍び込むような雰囲気も漂わせる発言に真一は、そしてなゆたはどう聞いたであろうか?
結局のところ、真一は一人部屋に。
なゆたとメルト、ウィズリィとみのりの部屋訳がされ、それぞれが夜を迎えたのであった。
酔い潰れてベッドに横たわっていたみのりであったが、それぞれ部屋に分かれドアが閉まった途端に普通に起き上がった
顔の赤みも引き、つい先ほどまで酔い潰れていた痕跡すらないのだ
「少し横になってたら酔いも引いたみたいやわ〜」
急な変化に驚いたウィズリィに笑いながら答えるが、実はそうではない。
そもそもみのりは酔っていなかったのだ
みのりの実家である五穀ファームは由緒正しき農家で様々な作物を生産している
その品目の一つに日本酒用のコメや蒸留酒用の大麦などもあり、幼少のころから製品となったお酒の試飲をしてきている
その訓練の賜物か、はたまた体質的なものか
本来の目的である酒利きの方はあまり上達しなかったが、酒酔いに対しては恐ろしく強い耐性を備えるに至ったのだった。
夜も更け普段ならば熟睡している時間ではあるが、みのりの目は冴えたまま
酔いにくいとはいえ、酔わない訳ではないのであれだけ呑めばそれなりに影響が出るのであろうか?
などと考えながら同室のウィズリィと話をしていた ←残念、みのりは完全に酔っていて大便中だ
「鉱夫のお兄さん方が言うとったけど、クリスタルの産出が減ったって話やけどねえ
機関車のクリスタルが足りひんくなったとか、消費が激しくなるってぇ、この世界的な異変が起こってるゆうことなやろうかねえ?」
手に持つ藁人形をいじりながら話しをしていると、突然藁人形の口から水音が流れ出す
驚きながらも良く聞くとそれはシャワーの音のようだった
「あれれ?なんやろね、これ
ていうか「囮の藁人形(スケープゴートルーレット)」て消えひんけどモンスター扱いやからかねえ?」
そういいながらあれやこれやと藁人形をいじっていると
『ひんけどモンスター扱いやからねえ?』
と自分の声が聞こえてくる。
あれこれ触るうちにわかったことは、「囮の藁人形(スケープゴートルーレット)」は4体の受け藁人形と1体の反射藁人形によって構成される
ダメージ累積計算できることから何らかの繋がりがあるようで、トランシーバーのように離れた場所であっても藁人形を介して声を届ける事ができる。
だがそれ以外にも、反射藁人形は他四体の周囲の音声を一方的に拾える機能がついているようだった。
ウィズリィに渡した藁人形を同じように弄ってみても他の藁人形の音声を拾う事はなかった事から間違いはないであろう
そしてみのりが持つ藁人形こそが反射藁人形であったという事だ。
「ふぅ〜ん、悪趣味な機能やけど、まあ、便利やわねえ
なゆちゃんがやきもきしてそうなのも楽しそうやけど、まずはこちらかしらねえ〜」
拾う音声を明神の持つ藁人形に合わせ、事の成り行きに聞き耳を立てながら夜を明かすのであった。
(みのりは5回は嘘言ってるゾ) ボバろうか
糞を
一人でボバる?
それとも一緒に? 家で不労所得的に稼げる方法など
参考までに、
⇒ 『武藤のムロイエウレ』 というHPで見ることができるらしいです。
グーグル検索⇒『武藤のムロイエウレ』"
9E2NP6NQ2L 鉱山都市ガンダラ。
辺境にありながら、鉱物資源の取引によって発展した大都市。
が、発展していると言っても辺境には違いなく、ちょっと旅をする途中で立ち寄る、という事はあまり起こらない場所だ。
この都市に訪れる人間は、大抵の場合「鉱山都市ガンダラに行こう」という確固たる意志を持ってこの都市を訪問するのである。
そして、鉱山都市という呼び名からも知れる通りこの街の主要産業は鉱山であり、
ありていに言うなら私達魔女とは(クリスタルの採掘場所、という点を除けば)あまりかかわりのない場所となる。
……延々と文章を使って何が言いたいかというと。
わたしことウィズリィ。初ガンダラである。
「ふうん……」
辛うじて外見上は特に大したこともないよう取り繕うが、正直内心ではだいぶ興奮している。
もちろん、文献や書簡、それに旅人との会話で、ガンダラという都市がどういう場所か、見知ってはいた。
が、百聞は一見にしかず。
猥雑な喧噪、行き交う荒くれ者たち、どこからか漂う美味しそうな料理の匂い、
そんな、文章上では数文字で片づけられる現象達が大いなる実感を持って襲い掛かってくる。
静謐に包まれた忘却の森や、活気はあっても整然としていた王都(の表通り)とは全く違う。
これが……いわゆる「いけない大人の街」という物か。
「(これは……危ないわね。頑張って自制しないと空気に呑まれる、かも)」
深呼吸をしようと息を吸いかけて、濃厚な酒精の香りにあわてて中断する。
見れば、道端でオーガたちが呑み比べをしていた。火がつきそうな強い酒なのが匂いだけで分かる。
「これは……危ないわね」
大事な事なので、今度は口に出して言いました。
まったく、シンイチ達も先導しないといけないのに、先が思いやられ……。
……あれ、シンイチは? きょろきょろと周囲を見渡すと、オークと腕相撲に挑もうとしているシンイチの姿が。
いやいやいや、死ぬわ彼。
……と、思ってしまうのは素人なら致し方ないだろう。
が、わたしは彼が纏っている強化スペルの輝きを見逃さなかった。
「(限界突破(オーバードライブ)か……大したものね)」
その効力は、並の魔女なら習得に一か月は要する(無論、基礎魔法からの下積みも考慮すればもっとだ)とも言われる中位の強化魔法に匹敵する。
只の元気で無鉄砲な少年に見えるが、彼もやはり「異邦の魔物使い(ブレイブ)」なのだ。
スペルの効果を得て、シンイチがオークの腕を一気に押し倒す。一瞬の沈黙ののち、歓声が上がった。
さて。
腕相撲会場から程よく離れたところで、わたしはシンイチに話しかける。
「お疲れ様……というべきかしら。でも、限界突破(オーバードライブ)を使ってしまったのは少し勿体無いかもね。
今後すぐに使用機会が来ないとも限らないし、『戻しておく』わ。今の状態なら、私の方が魔力回復も早いし」
そう言って、わたしはブックに視線をやり、スペルカードを1枚取り出す。
「多算勝(コマンド・リピート)……プレイ」
これは、簡単に言えば「魔力再充填」のスペルである。
目には見えないが、これでシンイチの限界突破(オーバードライブ)は再び使用可能になったはずだ。
使用済みのカードは、ブックのスキル効果で作り出された知の避難所(ナレッジへイブン)に格納。
すでにそこには2枚の多算勝(コマンド・リピート)と其疾如風(コマンド・ウインド)が入っている……魔法機関車からガンダラまでの移動に使った分だ。
これで4枚、上限いっぱい。
格納しているカードは魔力充填速度が倍になるので、およそ半日で回復する。本番は明日、と考えれば、それまでには回復している事だろう。
「これでよし。さて、行きましょう。……ええと、地図、地図」
ブックのページにガンダラの地図を表示させ、行先である冒険者の酒場の場所を辿る。
「この辺りだと、やはり『魔銀の兎娘(ミスリルバニー)亭』が最大手かしら。そこに向かうので異存は……?」
魔銀の兎娘(ミスリルバニー)亭。
その名を口にした瞬間、ナユタやミョウジン達の顔に微妙なげんなり感が漂った。
はて。
どういうことだろう? 「……なるほど」
バニーと聞いた時点で想像してしかるべきだったかもしれない。
“雄々しき兎耳の漢女(マッシブバニーガイ)”の姿を目にしたわたしは、ナユタたちのげんなり顔仲間に加わる事になった。
フィジカルの権化のようなマッシブな男がその肉体をそのままに女装している。まさしく悪夢のような光景。
伝承で『彼ら』の存在自体は知ってはいても、聞くのと実際に目にするのとでは破壊力が違う。
これがシンイチ達『異邦の魔物使い(ブレイブ)』の引率でなければ反転ターンからの退出待ったなしだったのだが。
「そうもいかないわよね……」
なけなしの勇気を振り絞ったところで、ナユタがこちらを見、提案してくる。
>「みんな、ここはわたしに任せてくれない? 交渉事なら経験があるから、悪いようにはしないわ」
「そうなの? なら、お手並み拝見と行かせてもらうわね。
……正直なところ、その。肉の圧でわたしだとあまり口が回らなさそう」
……そこからのナユタの手腕は見事な物だった。
最初のリストに望む物がないと見るや、即座に金子を積んで(シンイチの先ほどの稼ぎが吹き飛んだ。シンイチ……不憫)追加のリストを提示させる。
そこにも望む物が見つからないと、今度はミョウジンに話を振ったのだ。
不覚ながらわたしは知らなかったが、どうもこのマスターは男と友好関係を結ぶことを好むらしい。
ミョウジンもそれを知っていたのか、強いモンスターの捕獲を手伝う、というナユタの言もあり、最終的には協力を約束した。
……すごい物だ。わたしは感嘆せざるを得なかった。
ここまで来ると、私が持つ『知』の体系とは違う、いわば『話』の技術と言ってしまっていいだろう。
さすが『異邦の魔物使い(ブレイブ)』……なのだろうか。
哀愁の漂うミョウジンの後ろ姿を見ていると、どうもそれも違うような気がした。
ミョウジンが一人で呑み始め、ミノリがシンイチに絡みに行ったので、テーブルには3人の女性が残される。
つまり、わたし、ナユタ、そしてシメジ。
ミョウジンはシンイチが私たちを送る事を期待していたようだったのだが、ミノリがあの様子ではシンイチもなかなか席を外せまい。
「やれやれ……ところで、貴女達お酒は飲める? 私は呑まないことにしてるのだけど。
知識の守り手を自称してるものとしては、頭の回りが鈍くなるものは避けたいからね」
なお、忘却の森の魔女の中には、『この方が頭良くなるよぉー』と言って酒を飲む者も少数派だが存在する。
個人的には、その路線はあまり進みたくない。あれは大人自称者たちの呑む悪魔の飲み物だ。
……決して、1回こっそり呑んだ後、頭痛をこらえながら両親に叱られたのが尾を引いているわけではない。ないったらない。
「まあ、ここでは呑めないのが少数派でしょうから、肩身が狭いのは確かだけど。……他の客ともあまり話ができなさそうね。
しかたないから、女の子同士の話に花を咲かせることにしましょうか」
冗談めかして(あまりうまくないのは自覚している)言うと、続ける。
「……貴女達、このガンダラの事にとても詳しいようね。この店やマスターの事もよく知ってたみたい。
マスターの勘所も……どんな条件なら彼が交渉に応じるかも、知ってたのかしら。
正直驚いてるわ。わたしも知らないようなことを、外から来た貴女達が知っているなんて。
……よかったら聞かせて。この世界の事を、貴女達はどれだけ知っているの?」
ナユタとシメジの二人を見据えて、私は目を細めた。 「まったく……呑みすぎよ、ミノリ」
ナユタ、シメジの二人と話している間、ミノリはひたすらに呑んでいたようだ。
部屋分け(即席のくじを使った)でミノリと同室となったわたしは、足元をふらつかせる彼女を先導して、部屋までつれていった(シンイチの手も借りた)。
そして、部屋の扉が閉じた瞬間。
「……えっ」
何もなかったかのようにむくりと起きるミノリ。なにそれ。酔ってないの?
>「少し横になってたら酔いも引いたみたいやわ〜」
「そ、そう」
怖くなったのでそれ以上の追及はしない事にする。
ちらほらと言葉を交わすうちに、ミノリは酒を酌み交わしながら得た情報を披露した。
>「鉱夫のお兄さん方が言うとったけど、クリスタルの産出が減ったって話やけどねえ
>機関車のクリスタルが足りひんくなったとか、消費が激しくなるってぇ、この世界的な異変が起こってるゆうことなやろうかねえ?」
「そう……確かに、成型クリスタルの取引価値が上がってきているのは、聞いてはいたけれど」
アルフヘイムにおいて成型クリスタルは高密度な魔力供給源としてポピュラーな存在だが、それは安価であることを意味しない。
たとえば、ガンダラ近辺で流通している貨幣単位は「ルピ」だが、ルピと成型クリスタルの直接的な交換は行われていない。
成型クリスタルの方の価値が高すぎて、ルピ貨幣を物理的に用意できないのだ。
高純度の成型クリスタルを10個用意できれば、土地の安い辺境ならばルピを経由せず物々交換で立派な一軒家が建つ。クリスタルとはそういう物なのである。
……と、いう前提を考慮に入れたとしても、ここ最近のクリスタルの高騰ぶりは異常だった。
正確に把握はしていないが、確か私が王都を発つ頃のレートでは成型クリスタル10個で王都中心部の土地に家が建てられるぐらいにまで上がっていたと思う。
『王』も頭を悩ませていたと聞くが……これも、世界の危機に関わる問題なのだろうか。
「世界的な魔力流の異常……確かに、あり得ない話ではないわ。貴女達『ブレイブ』が来た事もそうだけど、世界が直面する問題に、魔力は深くかかわって……ん?」
突然、水音が聞こえた。
どうも、ミノリの手元の藁人形から聞こえてきたらしい。
しばらく試行錯誤してみると、どうも藁人形が音を拾ってミノリの手元の藁人形に伝えているらしいことが分かった。
「便利だけど悪趣味ねえ……あまり悪用はしないでほしい物だけど、ちょっと、ミノリ?」
嬉々としてミョウジンの会話を聞こうとするミノリを、わたしは呆れ顔で眺めているほかなかった。
……これは、止めると尾を引く奴だろうし。 翌朝。
ミョウジンの奮闘の結果、わたしたちは大変豪華な(しかも消化の良い)朝食にありつけることとなった。
……実際、ミョウジンは奮闘していたと思う。ベルゼブブを倒した際の奮戦の語り口は、藁人形越しに聞いていたわたしも思わず手に汗握ったほどだ。眠気の都合で最後まで聞けなかったのが悔やまれる。
そして、もちろんミョウジンは、豪華な朝ごはんのために奮戦したわけではない。
「聖灰のマルグリッド、か……」
有名人だ。
直接の面識こそないが、私の故郷の忘却の森にも訪れた事があると聞く。
それはつまり、このアルフヘイムの範囲に囚われず世界を飛び回っている存在である、という事だ。
「賢者ローウェルの手掛かりには違いないわね。彼を追う、で方針としては問題ないと思うわ。
第十九試掘洞に行くとしたら、確かに長丁場になるわね。一応、『王』の名義で各種の必要物資は集めてみるわ」
わたしも、伊達や酔狂、徒手空拳で『王』の使者をやっているわけではない。
『王』の紋章を刻んだペンダントを預かっており、しかるべきところで提示すれば恩恵が受けられるのである。
……もちろん、普段から見せびらかしたりはしていない。こっそりと隠して携帯している。
「それじゃあ、朝食が終わったらさっそく準備と行きましょう。わたしはこの街の領主のところで物資を貰いに行くけど、あなた達はどうする?」
一同を見渡して、確認を取るようにわたしは言った。
……ところで、ミョウジンの座布団はなぜ中央に穴が?
【ウィズリィ:全体の音頭を取り、領主亭に向かう準備】
【クリスタル:高騰】 【糞ズリィ:全体のウンコを取り、領主関白亭に向かう糞の準備】 
【ウンコ:高騰】
これはまずい流れだ! みんなの創作ノート Part1
https://mao.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1519263145/157
ここで、TRPGより簡単なRP=ロールプレイの実験を始めようと思うから
興味のある人は見てみて ■GM…ゲームマスター(進行係)
こういう特別な役割を設定しないといけない
この人はゲームに参加せず、プレイヤーの意見を聞いて調整したり
戦闘の結果を判定したりする審判兼進行係だ
スレ主がまずやって、慣れて来たら交代でやれば良い
これを設定していないから、イマイチ上手く行かない レッドドラゴンが現れた、どうしますか?
__ .'i,\__ __
/ハヽ\ =》,,゚v─〉、\
/ / l'i, ヽヽノ/ /~´/ ヽ \
/ / j' 'i,.〉 ,/、 〈 / ! ヽ \
/⌒V⌒V⌒ヽ./ ,/ヽ∨/)、'V⌒V⌒ ヽ
〈,.,.,j ∨/.,.,>
(Wヽ_ノ)W
,___/〈 ハ く__
\___ .WV ヽVW`
みたいなことだよ、簡単に言えばね AAは活用した方がいいね
*゚゚・*+。
| ゚*。
。∩∧∧ *
+ (・ω・`) *+゚
*。ヽ つ*゚*
゙・+。*・゚⊃ +゚
☆ ∪ 。*゚
゙・+。*・゚
ま、ブラウザによって、表示がまちまちだけど まあ、文字だけでも色々と表現できるけどな
GMは状況説明と結果の判定係だからな
それ専用の中立的な人間が絶対要る
TRPGの基本中の基本だ
あくまでゲームであって小説とは違うからな
コンピューターRPGのコンピューターの代わりを人間がやるってだけ ゲームなのに何で小説みたいになっているのか?
TRPGのやり方を根本的に間違えている
まず進行役のGMがいないのがおかしい >>411
おそらくあなたの言っているD&Dやソードワールドの様なTRPGとはまた別の遊びよ
紛らわしくはあるけど、諸々の事情もあっての事だし、そんなに興奮しないで、こういう世界もあるのねーくらいに見てやってあげて ロールプレイで話を転がしてるだけだからゲーム性はあまりない
やっぱりなな板TRPGの形態はリレー小説に近いんだろう リレー小説というか群像劇
キャラクター分担型合作小説なんて言い方もなかったっけ? それが形式として成功していれば良いんだけど、
極少数の仲間内だけの苦行に近い物になっている。
「何だろ?」と思って覗いた人も、訳がわからなくてすぐに退場してしまう。
もっと多くの人が参加できるイージーな物に変えた方がいい。
その為には本来のTRPGの方がやりやすいんだよ。
むしろ、この5chのスレはTRPGには打ってつけのものだ。
その為には独立したGM(ゲームマスター)が絶対に必要だ。
そして各プレイヤーはコテハンで参加して、そのキャラに成り切ってプレーする。
世界全体を考えるのはGMの役目
大まかな地図か何か書いといて、徐々にそれを精密化して行けばいいと思う。
コンピューターRPGを思い起こせばわかるだろ?
アレを想像とこのスレのやり取りだけでやるってだけのことだ。
GMは何が起っているのかの状況をプレイヤーたちに伝える。
それに対してプレイヤーたちはさらに質問したりした後、行動を決めるのだ。
そしてGMはその結果をプレイヤーに伝える。
判定はゲーム性を高めたい時は厳密にやる。
そうでなくていいならGMの裁量で良い。
参加するプレイヤーたちの好みで決めれば良い。 まずは簡単な物から始めて、
徐々に高度化、複雑化して行けば良いと思う。 GMが状況を説明する
↓
名プレイヤーは、GMに質問をしてさらに詳しい情報を得る
プレイヤーどうし話し合いをしても良い
↓
その後自分たちの行動を決める
プレイヤーどうし協力し合ってもいい
↓
GMはシステム的に判定して、その結果をプレイヤーたちに伝える
大体、この繰り返しだ
で、目標を達成できるか否か GMは世界を設計し
プレイヤーたちに冒険、アドベンチャーを体験させるのが役目
敵や障害を準備するのもGMの役目だ
判定はシステマティックにやっても良いし
裁量中心でもいい
最初はザックリしたもので良いと思う
やるうちに双方慣れて上達して行くと思う >>415
それはそれでいいんじゃない?
ただここでいうTRPGを楽しみたいという層が、あなたの言う本来のゲームとしてのTRPGをやってみたいという層かどうかはまた別問題というだけで
ゲームとして明確なルールやダイス判定をしたり、PBMのようにGMの裁量で勧めたり
そういった形を否定しているわけではなく、ここではそれとは別の形だった、というだけなのだから
まず提唱者のあなたがスレを立てて、賛同者が得られればスレとして成立していくだろうから頑張って!
ちなみに判りやすくするためにコンピューターRPGを例に出しているのだろうけど、本来逆なのよな
TRPGはGMやその他の配役が必要であり、それをコンピューターにやらせるようになったのよね
なんて懐かしい思い出に浸らせてもらえたわ
自分の上の世代は本来の人が集まってのTRPGをやれていたようだけど、自分の世代は既にそうやって集まれるほど周りにいなかったし、普通にコンピューターRPGだったのでね まあ、それなら好きにして、
大きなお世話だったな。
個人的にはゲーム性のないロールプレイをやりたいのでそっちに注力する。
では、楽しい遊びをお続けになって下さい。
もう遊びの邪魔はしませんのでw 47 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2018/03/01(Thu) 21:17
最近は、なりきり掲示板より
テーブルトークRPGの方が人気な気がしますねぇ。
それかみんな『ツイッターでなりきり』とかしているようです。 知り合いから教えてもらったパソコン一台でお金持ちになれるやり方
参考までに書いておきます
グーグルで検索するといいかも『ネットで稼ぐ方法 モニアレフヌノ』
WWBIT >>1くんはどこでも大体「俺の考えたヒーローがかっこよく活躍する話」を構想の土台として遊んでいるようだけど
その基礎部分には他人踏み台にする=俺主人公やるんだから他は盛り上げ役やれよ
俺は好き勝手するけどお前ら指定した期間内にやれよなどといった極めて利己的な考えが根ざしているね
なんでそんな独善的でわがままな子供のような人が他の人と一緒に楽しむものであるTRPGを趣味にしているのさ? あと単純に、>>1くん嫌いだったなぁ〜
今ごろ言いたくなった、それだけ 最近の流れ見てるとウンコ二匹の中で決定的な仲間割れがあったんだなぁと、
そりゃ文章の書き方が違うからな
どっちも界隈牛耳ろうとする荒らしでクズだけど
片方はある程度世界観が書けるが空気が絶望的に読めない
もう片方は雑魚温存が好きでグダらせ、ちょいエロすら書けずヒロインを動かすことすらできない
どっちも老害でしかない
てかなろう行けや 中学生でもできるネットで稼げる情報とか
暇な人は見てみるといいかもしれません
いいことありますよーに『金持ちになる方法 羽山のサユレイザ』とはなんですかね
GOG ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています