と、安心したのもつかの間。ナユはさらに言葉を連ねてくる。

>「とにかく、メロの言ったとおり王さまに会えってことなら、こっちもそのつもりよ。
 わたしたちは元の世界へ帰りたいの。あなたたちの王さまなら、きっとその方法も知ってるはず……よね?
 いや、絶対知ってるはず。直接的な方法は知らなくとも、そのヒントくらいは知ってるはずよ、絶対!
 でないとユーザーフレンドリーじゃないクソゲーってフォーラムでまたアンチに叩かれちゃう!

「……」

思わず瞬きを数度する。傍目にはきょとんとしている、という風に見えるかもしれない。
『王』から、『異邦の魔物使い』は奇妙な言葉を話すかもしれない、と聞いてはいたが。

「(これほどまでなんて……最後の一文なんて文法以外何もわからないのだけど)」

こほん、と咳払いを一つ。その間に、ナユはシンイチと気絶した少女の席割を決め、さらにこちらに話しかけてきた。

>「まずは、道すがら事情を説明してもらえるかしら?それから――あなたのことをなんて呼べばいいのかも、ね」

さらに、ミョウジンも続ける。

>「異論なしだ。俺が知りたいのはこの魔法機関車がどこに向かってるのかと、
 そこでまともなメシと寝床が提供して貰えるか。それから――」
>「この列車、トイレある?」

次いで、ミノリも。

>「そうそう、とりあえずお水か何かあらしませんかしらねえ?
 皆さんこちらにきてから何も飲んだり食べたりしてへんやろし、外は暑かったからねえ」

「……」

順を追って対処することにした。
まずはミョウジンの方を見る。彼の様子は急を要しそうだ。

「向かう先は王都よ。王都キングヒル……偉大なる『王』のおひざ元ね。
 食事と寝床は提供されるはずよ。贅を尽くした、とまではいかないけれど料理人は全力を尽くすはず。
 個人の嗜好に合うかまでは保証しないけど。あと、トイレはあっち」

機関車の最後尾の方を指す。
さすがに、乗り込むときにその辺りの事は聞いている……私は比較的我慢が出来る方なので、今のところ使ってはいないが。
ちなみに、出発前に軽く覗いた範囲では清潔でよい具合のトイレだった。
ミョウジンがそちらに向かうのを見届けてから、次はミノリの方を見る。

「水と軽食程度なら用意があるわ。必要があれば、あれに話しかければ『運転手』に伝わって、持ってきてくれるはず。
 王都までは少し長い道のりになるから、呑まず食わずでいるならせめて喉を湿らすぐらいはした方がいいでしょうね」

あれ、と言いながら指すのは伝声管だ。
あらかじめ敷設した範囲であれば魔法抜きで声を遠隔で届けられる、驚異の技術である。
まったく、この魔法機関車に詰め込まれた技術の粋には驚かされるばかりだ。
最後にナユを見て、言う。

「そうね。話せば長くなる……と言いたいところだけど、わたしもそのすべてを把握しているわけじゃない。
 わたしにわかる範囲の話でよければ、ミョウジンがトイレから戻ってきてから話すわ。
 詳しい話は、『王』から話していただけることになっているから、それを待って頂戴。
 ……あと、ユーザーフレンドリーとかクソゲーとかは……恥ずかしながら、よく分からない。ごめんなさい」