魔法機関車は建物の中に滑り込み、その動きを止める。
からくり仕掛けで扉が開くと、ほどなくしてどやどやと乗り込んでくる者たちがいた。
まず一人。それから遅れてさらに数名。
彼らが……『異邦の魔物使い』。

外見的には、わたし達『魔女術の少女』や『王』達とさほど変わらない、いわゆる『人型』族の特徴を備えているようだ。
見た目的には男性が二人、女性二人……いや、もう一人背負われている少女がいた。合計五人だ。
いずれも見た事もないような意匠の衣服を纏っているが、装飾過多な印象はない。実用性に優れた服装であることが窺える。
魔力的な防御はされていないようだが、恒常的でない魔力付与に関しては分からなかった。
他、レトロスケルトンやスライムなどの魔物も何体かいた。彼らは『捕獲』で使役されているのだろう。

さて、何を話したものだろうか。
内容を吟味しているうちに、第二陣でやってきた面々の先頭に立つ少女が先に話しかけてきた。

>「えーと……、こんばんは?」
>「この魔法機関車が、メロの言ってた王さまのお迎え……ってことでいいのかしら?
 わたしたち、アルフヘイムは初めてだから。右も左もわからなくて……。
 あ、わたしの名前は崇月院なゆた。なゆって呼んでね。
 こっちの無愛想なのが赤城真一。こちらの女の人が五穀みのりさん。あとは、えーっと……」

「……」

言葉が『石礫連弾(ストーンバレット:ガトリング)』のように撃ちだされてくる。
まずい。正直苦手なタイプだ。普段なら黙って聞き手に回るのだが、この局面ではそうもいかない。

「……こんばんは。メロという子は知らないけれど……ええ、この乗り物が『王』の迎えよ」

王の遣い、と一口に言ってもその数は軽く4ケタは下らない。いくらわたしでもその全員を把握してはいないのだ。
……あるいは、『王』自身なら全員の名と顔を一致させているのかもしれないが。

「ナユに、シンイチ、それにミノリね。それから……」

意識がない様子の少女はひとまず置いておき、最初にこの車両に入ってきた青年を見る。

>「俺は……『明神』とでも呼んでくれ。本名プレイは好きじゃないんだ」

「……ミョウジン。分かったわ」

自ら本名でないと名乗るというのも怪しいが、現状ではそこまで突っ込むべきではないだろう。
あとから調べる方法はいくらでもあるのだから。彼はミョウジン。今はそれがわかればいい。