【TRPG】ブレイブ&モンスターズ! [無断転載禁止]©2ch.net
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――「ブレイブ&モンスターズ!」とは?
遡ること二年前、某大手ゲーム会社からリリースされたスマートフォン向けソーシャルゲーム。
リリース直後から国内外で絶大な支持を集め、その人気は社会現象にまで発展した。
ゲーム内容は、位置情報によって現れる様々なモンスターを捕まえ、育成し、広大な世界を冒険する本格RPGの体を成しながら、
対人戦の要素も取り入れており、その駆け引きの奥深さなどは、まるで戦略ゲームのようだとも言われている。
プレイヤーは「スペルカード」や「ユニットカード」から構成される、20枚のデッキを互いに用意。
それらを自在に駆使して、パートナーモンスターをサポートしながら、熱いアクティブタイムバトルを制するのだ!
世界中に存在する、数多のライバル達と出会い、闘い、進化する――
それこそが、ブレイブ&モンスターズ! 通称「ブレモン」なのである!!
そして、あの日――それは虚構(ゲーム)から、真実(リアル)へと姿を変えた。
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ジャンル:スマホゲーム×異世界ファンタジー
コンセプト:スマホゲームの世界に転移して大冒険!
期間(目安):特になし
GM:なし
決定リール:マナーを守った上で可
○日ルール:一週間
版権・越境:なし
敵役参加:あり
避難所の有無:なし
======================== 面白そうだったので登録させていただきました。今後ともよろしくお願いしまーす。
何かまずいところとか聞きたい点とかあったら言ってください! >「心配すんな、なゆ。俺は生まれてから一度もハエに負けたことはねえ!」
「サイズと状況を見てからものを言え――――――!!!!」
ツッコんだ。基本的に真一と一緒のときはツッコミ役に回るなゆたである。
確かに普通のハエに負ける人間はいないだろう。手でパチンと叩くだけで仕留められる。
けれども、今目の前にいる蝿は乗用車よりも巨大なバケモノで、しかも闇の世界産の上級悪魔。
翅に刻印されたドクロと交差した骨のマークが、やけに禍々しく浮かび上がって見える。
こんなモンスターとまともに戦っては、こちらが間違いなくパチンと叩かれて終わってしまう。
が、そんな全力のツッコミも功を奏さず、真一はヒラリとグラドの背に乗ると勢い込んで蝿の群れに向かっていってしまった。
手綱も何もなく、乗馬や何かの経験もないのに、ぶっつけ本番でドラゴンの背に跨って剣を振るなど言語道断だ。
……というのに、その言語道断をあっさりとやってのけている。
呆気に取られたなゆたはしばし我が身の状況も忘れ、ポカーンと口を半開きにして立ち尽くしてしまった。
いくらゲームの世界だからって、ムチャクチャだわ。これ。
そんなことを考えるも、いつまでもボーッとしてはいられない。いくら真一とグラドが奮闘していると言っても、ベルゼブブには勝てない。
眷属のデスフライを伴っているときのベルゼブブには、常に強力なバフがかかっている。
状態異常耐性、防御力上昇、継続HP回復、そして眷属の召喚。
デスフライが場に一匹でも残っている限り、ベルゼブブは無限に眷属を召喚できる。
そんなデスフライを残したままベルゼブブを倒すというのは、上級者でも至難の業。
トロフィー獲得条件に『デスフライを残したままベルゼブブを狩る』という項目があるくらいなのだ。
中には無限湧きするデスフライを狩ってレベルとスキル上げをする猛者もいるが、今はそんな悠長なことなど言っていられない。
「く……ポヨリン、わたしたちも行くよ!『形態変化・硬化(メタモルフォシス・ハード)』!!」
『ぽよっ!!』
なゆたはスマホの液晶画面を手繰ると、スペルカードを一枚選択した。
『形態変化・硬化(メタモルフォシス・ハード)』。自分のパートナーを瞬間的に硬化させるスペル。
スライムに対して発動させれば、スライムとしての弾性を保持したまま鋼のような硬さを得ることが可能になる。
単純に攻撃力と防御力の強化が望めるスペルである。
ポヨリンの体色が鮮やかな水色から鈍色に変化し、光沢を帯びる。
なゆたの編成したデッキ内の「ぽよぽよ☆カーニバルコンボ(なゆた命名)」は、決まれば必殺。
不測の事態におけるリカバリー能力にも優れた強力なコンボだが、コンボという特性上成立に若干の時間がかかる。
なゆたは早速次のスペルカードを発動させようとしたが――
「まだ、時間が……!」
スマホの液晶画面に横一本、青いゲージが表示されており、それが徐々に伸びていっている。
「ブレイブ&モンスターズ!」はターン性ではなく、アクティブタイムバトルを採用している。
プレイヤーと相手とで交互に行動するのではなく、ゲージが満タンになった者から行動できるというシステムだ。
よって、すぐには次のスペルカードを使うことができない。なゆたは歯噛みした。
「もーっ! 肝心なところでゲームっぽいー!!」
しかし、地団駄を踏んだところで仕方ない。矢継ぎ早のカード発動は不可能なのだ。
こちらのコンボが成立するまで、果たして真一とグラドは持ち堪えられるのか――。
なゆたは祈るような気持ちで、飛翔するグラドと真一を見上げた。
しかし、そんなとき。
「おーい君たち!大丈夫か!?俺も助太刀するぞ!」
声が、聞こえた。 >「デスフライが残っているうちはベルゼブブに防御上昇のバフが付く!先に眷属から落とすんだ!俺が隙を作ろう!」
見れば、サラリーマン風の男とリビングレザーアーマーがこちらへと向かってきている。
先程神頼みとばかりに送信したフレンド募集の通知に、応えてくれたプレイヤーがいたのだ。
自分と真一がいる以上、他のプレイヤーもいるはず。
そう思っての行動がまんまと図に当たった、というわけだ。
「ありがとう! お願いします!」
サラリーマン風の男に感謝の言葉を告げる。今は、この男が何者かなどということは後回しだ。
パートナーのリビングレザーアーマーはレアリティもスライムとどっこいのメジャーなモンスターであり、能力もお粗末なものだ。
が、人型という強力なアドバンテージを有しており極めて汎用性が高い。
器用貧乏の評価は否めないが、多様なスキルを習得できることもあり、伸びしろの大きさから玄人向けとされるモンスターである。
強力なレイドボスであるベルゼブブとの戦いに名乗りを上げるくらいだ。少なくとも初心者ではあるまい。
にわかに現れた援軍にホッとした――のも束の間。
不意に、何かがポンポンと脛のあたりを叩いている。
なゆたは足許に視線を向けた。そして
「――――ひ」
驚きのあまり、喉の奥にものの詰まったような声を漏らしてしまった。
いつの間にかなゆたの足許に小さな藁人形がおり、それが自らの意志を持つかのように動いている。
>「はぁ〜い、こっちもいてるよ〜」
藁人形が喋り出す。まさに恐怖だ。以前観たホラー映画にこんなのがいたような……なんて、妙なことを考える。
かと思いきや、今度は足許でなく肩にかけられる手。なゆたはびくぅっ! と全身を強張らせた。
しかし、恐る恐る振り返った視線の先に立っていたのは、にこやかな笑みを浮かべた女性だった。
歳の頃は自分と同じか、少しだけ上くらいだろうか。
農作業の最中です的な出で立ちがどことなく場違いだったが、彼女もまたブレモンのプレイヤーなのは間違いなかった。
>「初めまして〜。2.3回やけど共闘したことのある五穀豊穣こと五穀みのりよ〜よろしくねぇ。
それにしても、スライムつこてトッププレイヤー張ってはるモンデキントさんがこんなかわいらしい女の子とは驚きやわ〜」
「ふ……ふえっ!? ご、五穀豊穣さんって、あのスケアクロウの……?」
はんなり。という感じのみのりを失礼にも指差して、頓狂な声を出してしまう。
多数のプレイヤーとフレンド登録しているなゆただが、五穀豊穣というプレイヤーネームについては特によく覚えている。
課金者にはランクがあり、月に数百円、多くて数千円程度の課金者を微課金勢。
月にウン万円を惜しみなく注ぎ込む重課金勢、さらにその上を行く廃課金勢。
そして。
その廃課金の壁さえ超えた課金者を、プレイヤーたちは尊敬とやっかみ、そして少しの侮蔑を込めてこう呼ぶのだ。
『石油王』と――。
彼女のパートナーモンスター・スケアクロウは、そのみすぼらしい(?)外見と相反した、紛れもない石油王の証だった。
事前登録からブレモンを続けてきたなゆただが、スケアクロウ持ちと遭遇したことは二度しかない。そのうちの一人がみのりだ。
もちろん、なゆたの方から共闘を持ちかけフレンド申請したことは言うまでもない。
「あっ! モ、モンデンキントの崇月院なゆたです! はじめまして、いつもお世話になってます!」
こんな状況ではじめましての挨拶もないものだが、ぺこりと頭を下げて言っておく。
彼女のデッキはかつて共闘した際に見たことがある。自在にヘイトコントロールし累積ダメージを増してゆくバインドデッキだ。
数の暴力に訴える系のなゆたのデッキでは、少々相性が悪い。何にせよその実力は折り紙付きだ。
リビングレザーアーマーといい、誰でもいいからとランダムに募集したにも拘らず、強力な助っ人が来たものである。 >「それで、あっちの男の子がモンデキントさんの彼氏さんかしらぁ?
まあ……いうのもあれやけど、結構なアホの子やねえ」
「かっ、かかかか彼氏っ!? ちちち、違います!! 真ちゃんとは生まれたときからの付き合いで、単なる幼なじみで!
いっつもわたしが尻ぬぐいしてて、全然そんな、彼氏とか彼女とかじゃないですからぁぁぁ!!」
みのりの何気ない一言で、滑稽なほどうろたえる。大袈裟に両手をバタバタさせて全力否定の方向だ。
が、アホの子という点は反論しない。本来パートナーを戦わせるブレモンというゲームで、自分も戦うとは何事か。
ゲームのコンセプトに全力で抗っている。これは垢BAN案件ではないか、とさえ思う始末だった。
>「ほやけどまぁ、アホな子ほどかわええともいうし、しゃぁないわなぁ」
「かわいくないですよう!? いやまぁ、わたしがいないとしょーがないなーっていう部分はありますけど。
……って、そんなこと言ってる場合じゃなかった!」
みのりのペースにすっかり巻き込まれてしまっていたが、やっと我に返る。
空では真一とグラドが無数のデスフライにたかられていたが、なぜか被弾している様子はない。
みのりの差し向けた藁人形がダメージを肩代わりしているのだ。
>「『工業油脂(クラフターズワックス)』――プレイ!」
さらに、サラリーマン風の男の発動させたスペルカードにより、空から大量の鼻を突く臭いの液体が降り注ぐ。
工業油脂の雨をその翅に浴びたデスフライの群れは、面白いようにボトボトと地面に墜落した。
『工業油脂(クラフターズワックス)』は極めて高い可燃性を持つ油であり、容易に発火する。
ベルゼブブ討伐のセオリーであるデスフライ狩りには、もっとも有効なスペルのひとつである。
>「あらあら、あのお兄さんもやりよるねえ。デスフライを油で叩き落しはったわ
もう十分やろけど、せっかくやし私もいかせてもらおうかしらぁ」
さらに、みのりが自らのパートナーモンスターを召喚する。
スケアクロウ。ごくごく一部の限られたプレイヤー(経済的な意味で)のみが手にできる超レアモンスター。
それが出現すると同時、なんとも言えない不快な高笑いを始める。
スケアクロウの笑い声はエネミーのヘイトを一気に上昇させ、自らに向ける能力を持っている。
そうしてスケアクロウがエネミーの攻撃を一手に引き受け、他のプレイヤーが本命を集中攻撃するというのがパーティープレイの定石だ。
以前共闘したときも、みのりのヘイトコントロールには随分助けられた記憶がある。
「五穀さん、ナイス! あとでプレゼントボックスにアイテム贈っときますね! 回復系の!」
このころには、なゆたのATBゲージも溜まっている。さっそくなゆたは二枚目のスペルカードを手繰った。
「『分裂(ディヴィジョン・セル)』! 発動!!」
スペルを発動させると同時、鈍色に輝くポヨリンの姿が俄かにぐにゃりと歪む。
かと思えば、一匹だったポヨリンはまるでプラナリアか何かのように二匹に分裂した。
スペル『分裂(ディヴィジョン・セル)』の強みは、バフを維持したままモンスターの数を増やせるという点にある。
バフ効果をすべて打ち消す類のデバフスペルを喰らうと一匹に戻ってしまうが、基本バトル終了まで増えたままなのも強い。
>「纏めて薙ぎ払え……〈燃え盛る嵐(バーニングストーム)〉!!」
地面に墜落してスケアクロウに群がっていたデスフライへ、真一がスペルカードを発動させる。
途端に発生した炎の渦が、可燃性の油脂をたっぷりと浴びた蝿の群れを蹂躙する。
デスフライたちは瞬く間に燃え上がり、黒く澱んだ塵と化した。 「真ちゃんったら、考えなしにあんな大技使っちゃって……」
『工業油脂(クラフターズワックス)』に着火するには、ほんの僅かな火で充分事足りる。
真一のデッキなら、最弱の『火の玉(ファイアボール)』でも油を浴びたデスフライを充分殲滅できたのだ。
いや、むしろグラドのブレスでも発火しただろう。スペルを使う必要さえなかった。
その辺りのコストをまったく考えず、派手なことばかりやりたがる辺り、真ちゃんはまだまだ……と肩を竦めるなゆたであった。
デスフライは全滅した。あとは首魁のベルゼブブを始末するだけである。
デスフライのバフが消滅し、ベルゼブブは大幅に弱体化している。――とはいえ、油断は禁物だ。
相手は腐っても上級悪魔、レイドボスである。
ここからベルゼブブの猛攻に押し返され、全滅したパーティーも数多くいるのだ。
>『ギギギギギ……』
ベルゼブブは形勢不利と見たか、一度体当たりと酸の唾液を見舞っただけで真一グラドペアとの戦いを避けた。
また、ヘイトコントロールをしているスケアクロウにも見向きもしない。本能に屈さない高い知能を有する証拠である。
そんなベルゼブブがフィールドにいる四人と五体の中で最初に目を付けたのは、貧相な革鎧の人型モンスター。
>『ギギギッ……!!』
蝿の王の巨大な半透明の翅。そこに刻印された髑髏マークが不気味に輝く。翅が激しく振動する。
黒色の衝撃波、『闇の波動(ダークネスウェーブ)』。デスフライを失った後のベルゼブブのメイン武器のひとつだ。
指向性を持った衝撃波の威力は強大で、充分に育成したレアモンスターすらしばしば一撃で撃破されるほど。
サラリーマンの相棒であるリビングレザーアーマーがどれほど育っているのか確認はしなかったが、直撃は危険である。
何らかの防御系スペルカードを持っているのならいいのだが――。
しかし、なゆたはサラリーマンの対応を待ちはしなかった。
「ポヨリンA! 『しっぷうじんらい』!」
『ぽよよっ!!』
スキル『しっぷうじんらい』。
バトルの際、必ず相手から先制を取ることができるスキルである。
分裂したポヨリンAはスライムらしからぬ電光石火のスピードで跳ね飛ぶと、ベルゼブブとヤマシタの間に割り込んだ。
『闇の波動(ダークネスウェーブ)』がヤマシタの盾となって飛び出したポヨリンを直撃する。
『ぴき―――――っ!!』
闇色の衝撃波をまともに受けたポヨリンはぼよんっ、ぼよっ、と地面を数回バウンドしてひっくり返った。
……けれど、生きている。目を回しているだけだ。
一番最初に付与したバフ『形態変化・硬化(メタモルフォシス・ハード)』と、レベルマスキルマの恩恵である。
そして。
「ポヨリンB! 『てっけんせいさい』!!」
『ぽっよ……よよよ〜〜〜んっ!!』
分裂したもう一匹のポヨリン、ポヨリンBが、衝撃波を放った直後のベルゼブブの側面に回り込む。
グミキャンディーのような楕円形だったポヨリンBの姿が、瞬く間に巨大な右拳に変化する。
スキル『てっけんせいさい』。攻撃力を倍増させる格闘スキルだ。
『形態変化・硬化(メタモルフォシス・ハード)』によって上乗せした破壊力で、ポヨリンBは力の限りベルゼブブをぶん殴った。
鋼の拳がフック気味にベルゼブブの柔らかい腹部に突き刺さり、ドゴォ!!という重いSEが轟く。
そして頭上に表示される『CRITICAL!!』の文字。
ギエエエエーッ!と悲鳴を上げて仰け反る蝿の王。一定のダメージを与えると、ベルゼブブはスタン状態になる。
絶好の反撃のチャンスだ。
【殴。】 >>93
これはわたしが答える流れなのかな……?
ええと、すみませんーっ!ノリで書いてただけで何も考えてませんーっ!
ただ、基本的にアルフヘイム産のモンスターが光属性で、ニヴルヘイム産のモンスターが闇属性で。
その中でそれぞれ地、水、火、風の属性があるのかな、とか……。
例えばポヨリンだと【光−水】で、ベルゼブブは【闇−風】みたいな。
あ!わたしがそう考えてるだけなんで、公式じゃないんでーっ! >>107
【歓迎します! レス順はみのりさんの後になりますので、もう少々お待ちください】
>>93>>112
【属性や種族に関しては、ノリで設定してもいいと思ってたんですが、暫定的に決めときましょうか。
基本四属性は火→風→土→水→火の関係で、光と闇は有利不利の相性無し。
悪魔や死霊などは闇属性、精霊や天使などは光属性も付与されていることが多い。
とりあえずこんなイメージでお願いします】
【キャラクターテンプレ】
名前:佐藤メルト(プレイヤーネーム:メタルしめじ)
年齢:14歳
性別:女
身長:138cm
体重:35kg
スリーサイズ:B60 W47 H62
種族:人間
職業:中学生
性格:慇懃無礼、ネット弁慶
特技:ゲームのバグ探し
容姿の特徴・風貌:肩までの長さの黒髪。右側の額から頬にかけて大きな傷跡があるのを前髪で隠している
簡単なキャラ解説:ごく普通の少女であったが、小学生の時に不良同士の喧嘩に巻き込まれて顔に傷を負って以来、不登校となった
家に居る間は「ブレイブ&モンスターズ!」を延々とプレイしている無課金廃プレイヤー
そのプレイスタイルは極めて悪質であり、外部サイトを利用してのシャークトレードまがいの行為やRMT、
バグを利用したアイテム入手、マクロを使用したキャラ育成など、規約違反を複数に渡り行っている
メルトがこの世界を訪れた時は、最近見つけたカード増殖バグを行っている最中であった為、産廃カードの所有率が非常に高い
【パートナーモンスター】
ニックネーム: ゾウショク
モンスター名: レトロスケルトン
特技・能力:一部の属性を除く魔法攻撃に対する耐性が極めて高い反面、物理攻撃に対しては非常に脆い
容姿の特徴・風貌:人間の白骨の様な姿。頭蓋骨に魔法陣が彫り込まれている
簡単なキャラ解説:
無念の死を遂げた屍が魔力の影響を受ける事により動き出した。所謂アンデット
チュートリアルの道中に出現するコモンモンスターであり、脆く弱い
ドロップアイテムも『骨の欠片』だけなので倒しても何一つ旨味がなく、プレイヤー達には見向きもされない。
尚、初期装備では倒す為に2撃が必要になる為、速度が命のリセマラ勢に蛇蝎の如く嫌われている
本体は頭蓋骨
【使用デッキ】
・スペルカード
「腐肉喰らい(スカベンジャー)」×1 …… モンスター撃破時のアイテムドロップ率に×1.5の補正が掛かる。
「死線拡大(デッドハザード)」×2 …… 対象に『状態異常:アンデット』を付与する
「生存戦略(タクティクス)」×1 …… 敵味方問わず、範囲内のモンスターに対して回復効果(大)
「骨折り損(デッドラック)」×3 …… 『状態異常:アンデット』のモンスターが致命のダメージを負った際、HP1の状態で踏み止まる
「愚鈍な指揮官(ジェネラルフール)」×2 …… 所持するアイテムを3つ破棄する事で、スペルカード1枚の効果発動を遅延する
「感染拡大(パンデミック)」×1 …… 敵味方問わず、効果範囲内のモンスターの状態異常耐性を戦闘終了までの間半減する
「携帯食(カロリーブロック) ×1 …… 使用後、戦闘終了まで毎ターンHP回復(極小)
「病原体(レトロウイルス)」×1 …… 1ターンの間、対象の状態異常耐性を半減する
「勇者の軌跡」×2 …… HPが1割以下の状態でのみ使用可能。対象の状態異常を全て解除し、更に、戦闘終了まで運以外の全ステータスが毎ターン上昇する
尚、HPが2割以上になるとステータスの上昇は停止する
・ユニットカード
「骨の塊」×2 …… アイテム『骨の欠片』を持つ場合のみ使用可能。骨の欠片を3つ入手する。
「戦場跡地」×1 …… フィールドから継続的にオールドスケルトンが湧き出る様になる。特定のフィールドにおいては湧き出るスケルトンの種類が変化する
「血色塔」×1 …… 赤く発光する塔を産み出す。塔が破壊されるか、一定時間が経過するまで範囲内のプレイヤーとモンスターは全ての色が赤色と黒色でしか認識出来なくなる 僭越ながら参加希望です
テンプレはこの様な形で宜しいでしょうか? >>117
だから、反応せずにスルーすればいいだろっつの
小学生かよお前 >>115
【参加歓迎します!
レス順は6番目になりますので、少々お待ち下さい】 俺の放った油の雨音が、クソうっとおしいコバエ共の羽音を上書きする。
薄っぺらな羽にべっとりと付着した油の重みで、ハエ達はゆっくりと高度を下げつつあった。
「やべーな、散開し始めやがった」
眷属たちが油にまみれたのを見て、ベルゼブブの触覚が蠢き、指示を出している。
それに従ってデスフライの群れはお互いに距離をとり、一網打尽を防ぐシフトを取り始めた。
着火コンボを警戒した――?ベルゼブブの戦闘AIにそんなアルゴリズムはなかったはずだ。
まるで生きているかのような――思考しているかのような挙動じゃねえか。
「クソ、とっとと着火を――マジかよあいつ」
肝心の着火役、レッドドラゴンの使い手である男子高校生は、あろうことかドラゴンの背に乗って飛翔していた。
その手に剣を握ってデスフライの群れの中を飛び回り、すれ違いざまに斬撃を見舞ってる。
炎精王の剣自分で振るう奴初めて見たわ。
あいつだけなんか世界観違わない?
ていうかおもくそデスフライにタゲられてるけど死ぬんじゃねえのアイツ。
助けに行くか、行かざるべきか。
俺が逡巡している間に、駅のホームに更に飛び出す影があった。
ホームのど真ん中に出現したのは……カカシ。人間大のサイズで、頭に被ったカボチャの奥に生命の光を感じる。
新手の魔物――じゃねえ!ありゃ『スケアクロウ』、野生じゃ絶対に出逢うことのないモンスターだ。
課金者の中でも更に他者の追随を許さぬ額を支払った者に与えられる称号――『石油王』。
スケアクロウはそんな石油王だけが手にすることのできる、高額課金特典なのだ。
「あのコラボ金払った奴いたんだ……」
スケアクロウって確か、グッズのフルコンに加えて胡散臭いウイルス対策ソフトの契約までしなきゃならねえ、
情弱一本釣りみてーな特典配布条件だったはずだ。一回試算してみたけど俺の月給軽く吹っ飛ぶ額だぜアレ。
一体どこのアホが二ケタ万円このクソゲーに費やしたのか、その間抜け面を見てみてえ。うぷぷ。
高校生二人組はそれぞれレッドドラゴンとスライム(笑)だから違うとして――
「……あいつか」
女子高生の後ろにいつの間にかもう一人現れていた。
ツナギにタンクトップと、いかにも農作業の最中に飛ばされてきましたって格好の女。
まあ俺もウンコの最中に飛ばされたクチだからアレだけど。
あれが『石油王』?なんか若くない?農家ってそんな儲かるの?
この戦いが終わったら俺、脱サラしようかな……。
さて、戦場に闖入したスケアクロウだったが、カカシらしくその場を動こうとしない。
代わりに耳に障るケタケタ笑いがホームに響き渡り、デスフライ共の目がそっちに向いた。
群れのど真ん中で剣振り回してる馬鹿を放置して、一斉にスケアクロウへと襲いかかる。
……すげえ、一発で全部のタゲ取りやがった。
回復力に優れる耐久型のスケアクロウは、こうやって敵のヘイトを一身に集めて耐えまくるタンク的な運用に向く。
回復上昇のスペルも組み合わせれば、他のPTメンバーが完全フリーで長時間火力を発揮できるって寸法だ。
そしてデスフライ共のヘイトを集中させたおかげで、奴らが一箇所にまとまってる。
「……今だ!」
>「纏めて薙ぎ払え……〈燃え盛る嵐(バーニングストーム)〉!!」
「いやブレス吐けよブレス。何のためのドラゴンだよ」
俺の届くわけもない突っ込みも虚しく、ドラゴン乗りはスペルを発動。
着火するには無駄にでかい炎の嵐がデスフライ共を呑み込み、一瞬で消し炭へと変えた。
だが結果オーライだ。ククク……せいぜい上級スペル無駄打ちしてろ。それで有利になるのはこの俺だ。 俺は油断なく他にデスフライの生き残りがいないことを確認。
これがゲームならデスフライのバフ欄を見りゃ一発で判別出来るんだが、俺の目には禍々しい蝿の王のご尊顔しか映らねえ。
……よしよし、デスフライは全滅したな。
ベルゼブブ本体も巻き添えにしてやれるかと思ったが、敵もやっぱりアルゴリズムの奴隷ってわけじゃないらしい。
巧妙に防御態勢をとって、着火コンボを耐え抜いてやがった。
だが所詮お山の大将、手下がいなくなりゃ奴は砂の上の城に過ぎねえ。このPTなら削りきれる。
「ヤマシタ、『月天弓』」
上空でレッドドラゴンと一騎討ちを始めたベルゼブブ目掛けて、ヤマシタが矢を射掛ける。
『月天弓』は元々弓系武器に備わってる飛行特効を更に倍加させて撃つ弓使いのスキルだ。
しかしこれ、誤射したらどうなるんだろうな。
ゲーム上はオートターゲットだから味方に射撃が当たることないんだけど。
と、しばらく援護射撃を続けていると、レッドラがベルゼブブに弾き飛ばされて距離を離す。
それを契機として、ベルゼブブの複眼がこっちに向いた。
あれ?もしかしてヘイトこっち向いてね?
自問に自答するより早く、ベルゼブブが俺とヤマシタ目掛けて何らかのスペルの詠唱を始めた!
「タゲ剥がれてんじゃねーかクソタンク!!」
なにやってんすか石油王さんヘイト取るのやくめでしょはやくして!
だが一旦スペルの詠唱に入ったモンスターがターゲットを変えることはない。
やべーのは、この辺に身を隠すような遮蔽物は一切ねーってことだ!
あの挙動は確か『闇の波動』、馬鹿みてーな超威力の前にリビングレザーアーマーなんざ紙だ。
なんぼバフ使ったところでバフごと消し飛ぶだろう。
……なーんてな。
デスフライが全滅した時点で、ベルゼブブが『闇の波動』を使ってくるなんてことは予想済みだった。
なんで分かったかって?Wikiに書いてあったからだよ!!
廃人の先駆者共が何匹もパートナーを使い潰して得た情報の殆どは、攻略Wikiで共有されている。
こうしたレイドボスの討伐に参加する時は予習しておくのが前提とされるほどだ。
俺の方にタゲ跳ねてんのはちょっと予想外だったが、正味問題はねえ。
ククク……闇の波動を無力化するスペルもちゃあんと用意済みよぉ!
>「ポヨリンA! 『しっぷうじんらい』!」>『ぽよよっ!!』
しかし、俺がスペルを選び終えるよりも女子高生の反応の方が早かった。
パートナーのスライム――ポヨリンとかいう捻りのないネーミングのそいつが、猛然とこっちに走ってくる。
「ぐええ!」
何らかのスキルの影響か、どちゃクソ素早いスライムがヤマシタを直撃し、跳ね飛ばす。
そんで跳ねられたヤマシタは俺にぶち当たって、一人と一体仲良く荒野の上を転がった。
「なにすんだ軟体生物!」
受け身とか一般リーマンの俺にとれるはずもなくて、悪態と咳込みを交互にしている間に、闇の波動の詠唱が終わった。
オイオイオイ死ぬわ俺――と恐怖よりも先に諦めが来る中で、ポヨリンが波動に飛び込んで行くのが見えた。
それ意味あるぅ?スライム如きが肉壁になったってスライムごと掻き消されるだけだろ!?
>『ぴき―――――っ!!』
だが俺の絶望的な予測に反して、スライムは健闘した。
スライムの真芯を捉えた波動は、あろうことかスライムを貫通できずにそのまま威力を使い果たしたのだ。
一方波動を直撃したポヨリンが目を回しながら俺の傍を跳ね転がる。
えっマジで?なんで生きてんのこいつ。
俺はおそるおそるそのぷるんとしているであろう表面を指で突付いた。突き指した。 「こ、このスライム……硬い!」
いやマジでクソ硬え!なにこれどういう鍛え方したらこうなんの。
なんぼスペルで支援したところで、スライムが相殺できる威力じゃねえだろ闇の波動って!
……これはアレか、愛の為せる業なのか。
むかーしポケモンがまだ全盛期だった頃、嫁ポケとか言って弱いポケモンを愛で運用すんの流行ったもんな。
そういう趣味ビルドを否定するつもりは一切ないが、ここまで極まってるといっそ引くわ。明神ドン引きですぅ。
とは言え、助けられたのは確かだ。そこは感謝するほかあるまい。
なにせスペル一回分温存が出来た。馬鹿め……自分の首を締めているとも知らずに……!
「おきろポヨリンA、お前の飼い主が頑張ってんぞ」
失神しているスライムの頬(?)をペチペチ叩きながら、俺も立ち上がる。
大技を放ったあとの硬直はしっかり再現しているらしく、ベルゼブブからの追撃は来ない。
畳み掛けるなら今がチャンスだ。
>「ポヨリンB! 『てっけんせいさい』!!」
女子高生もそいつを理解しているらしく、ポヨリンBとかいうこれまた安直なネーミングのスライムをけしかけている。
うおっ、殴った!スライムが拳の形に変形してベルゼブブを殴り飛ばした!クリティカルだ!
防御力だけじゃなくて攻撃力も振りまくってんのか……愛のちからってすげー。
「捕獲は……まだ出来ねえか」
スマホの捕獲コマンドはまだ使用可能状態になってなかった。
ある程度HPを減らさないと捕獲自体不可能って仕様は、相手の残り体力を推し量る指標になる。
まだまだベルゼブブ君元気いっぱいってことっすね。
仕方ねえ、せっかく温存できたことだしもう一枚くらいカード切ってやろうじゃねえの。
「ヤマシタ、『曳光弾』」
革鎧の射掛ける矢に、線香花火のような光が灯る。
光る矢は空を切って飛び、スタン中のベルゼブブの肩に突き刺さった。
弓使いのスキル、『曳光弾』。矢や弾に魔力の光を灯し、着弾した敵はあらゆる攻撃が当たりやすくなる。
ゲームのシステム上では『着弾対象をターゲットとした全ての攻撃に命中補正』とかいうややこしい仕様だが、
この戦いにおいてはもっと分かりやすい効果を見込むことができる。
「『迷霧(ラビリンスミスト)』――プレイ!」
スペル発動、ベルゼブブを中心に乳白色の濃い霧が発生し、奴の複眼から視界を奪う。
同時に味方の視界も奪ってしまうというクソ迷惑な仕様だが、正味問題はねえ。
霧越しにもはっきりとわかる、突き刺さった曳光弾の光がベルゼブブの居場所を教えてくれる。
「迷霧の中にいる敵はクリティカル発生率が上がる!畳み掛けるぞ!」
ヤマシタ『乱れ打ち』スキルで矢の雨を降らせながら、俺は声を上げた。
このまま順調に削れて、捕獲可能になった瞬間、コマンドを実行してやるぜ。
【迷霧のスペルでベルゼブブの視界を奪いつつ、曳光弾で味方からは丸見えにする支援】 【ウィズリィちゃん、メルトちゃん、よろしくです!!!!!】 >>106
【こんばんはーよろしくお願いします
ウィズリィさんはブレモン内のモンスターということで
ゲームだと同一モンスターは同じグラフィックですが、ウィズリィさんはゲームグラフィックと同じでパッと見で「魔女術の少女族だ」って判りますでしょか?】
>>107
【こんばんはーよろしくお願いします
実はソシャゲってツムツムくらいしかやったことないので勉強になります。
リセマラとかシャークトレードって初めて知りましたわ
登場シーンに服装などの描写を入れていただけるとありがたい〜
キャラクターが見てわかる部分なので絡み所にもなりやすいのでよろしくですわー】
【色々増えてきそうなのでメモ代わり】
【基本四属性】
火→風→土→水→火
光と闇は相性なし
スケアクロウは光‐土て感じやね
【ディレイ】
アクティブタイムバトルでターン制ではなくゲージが満タンになると行動ができる
カードの出せるスピード制限
●強力なカードほど出すのに時間がかかる?
●カードの種類関係なくディレイが発生?
【フレンドリーファイアー】
今回のような着火による延焼など、物理現象については敵味方区別なく
スペルカードによる魔法現象については
1)敵味方区別なく
2)フレンド登録し共闘状態だと効果なし
というようにカードによって効果範囲を個別に決めていこうかという感じで考えております
状況:廃墟状態の駅
ホームにてベルゼバブと戦闘中
ベルゼブブ:眷属全滅、真一に牽制、明神に狙いを定め闇の波動発動
:ぽよりんAに間に入られ受けられる
:ぽよりんBの鉄拳制裁によりスタン状態に
:曳光弾+迷霧でベルゼブブ中心に濃霧発生も洩光弾により攻撃は当てられ易い
真一:上空、グラド騎乗、炎精王の剣装備
:【燃え盛る嵐】にて着火コンボ達成しデスフライ全滅
:ベルゼブブの唾液を【ファイアーウォール】にて防御
なゆた:ぽよりん分裂・ぽよりんA山下の盾となって闇の波動を受ける
:ぽよりんB・鉄拳制裁にて攻撃、スタン状態に
明神:石油王みのりを見て、死亡フラグを立てる
:着々とベルゼブブ確保にむけ戦略を立てる
:ベルゼブブの命中低下、味方の命中上昇状態にする
:乱れ打ちで矢の雨を降らせる
【修正点などありましたら教えてやってくださいな
レスは明日にでも投下しますのでしばしお待ちを】 >>125
【よろしくお願いしまーす。
ウィズリィはパーソナリティとして一般的な魔女術の少女族から離れてるわけではないので、見た目で分かると思います。
あと、多分スマホの画面を見るとモンスター名が表示されたりとかそういう何がしかはあるのではないかと。】
【それと、うっかり何枚かのカードのルビを振り忘れていたので、ここで追記しておきます】
「魔に触れぬ誓いの槍」→「「魔に触れぬ誓いの槍(ブリューナク)」
「城塞」→「城塞(フォートレス)」 「……あれは……」
廃墟に先客がいる。なゆたは右手で額に庇を作り、目を眇めて注視した。
人だ。やはり、先ほど人がサンドワームに襲われているように見えたのは見間違いではなかったらしい。
現在サンドワームの姿がない辺り、きっと自分と同じようにモンスターを召喚して窮地を脱したのだろう。
その証拠に、人影の傍らに真紅のドラゴンが寄り添っているのが見える。
レッドドラゴン。レアキャラだ。竜の谷というエリアに棲む、強力なモンスターである。
最初期に回せるガチャでもごく低確率で排出されるらしく、リセマラをする輩は多いが、出たという報告は滅多にない。
そんなレアキャラを持っているプレイヤーといえば……。
「んっ? んんん? ……んんんんん〜〜〜〜っ???」
どこかで見たことのある学校の制服と、どこかで見たことのあるウルフカット。
学ランの胸元から覗く、赤いシャツ――。
>あれはひょっとして人じゃないか? おーい、そこのアンタ! ちょっと待ってくれー!!
「う……、うわ――――っ!! 真ちゃあ〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!」
聞き覚えのある、いや、聞き間違えようのない声がこちらへ向けて投げかけられる。
なゆたは思わず両手を大きく上げ、ぶんぶんと振って叫んだ。ついでにポヨリンよろしくぴょんぴょん跳ねる。
相手は幼馴染の赤城真一に間違いない。お隣同士、親の代から家族ぐるみの付き合いをしてきた間柄だ。
彼が中学時代、荒れに荒れていた頃は少しだけ付き合いも疎遠になっていたが、今はその関係も修復されている。
なゆたは息せき切って真一へ駆け寄った。
「真ちゃんもこっち来てたんだ! あ〜……でも当然か! でもまさか、ここで真ちゃんに会えるなんて!
よかった〜〜〜〜〜〜!!!」
なゆたは嬉しそうに駆け寄ると、ためつすがめつ真一の全身を見た。紛れもない本物だ。
「ねえ、真ちゃん! 真ちゃんはどうしてこんなところへ飛ばされちゃったのかわかる?
わたしは生徒会室でアプリ起動させたら、いつの間にかここにいたんだ。で、サンドワームに襲われて、
でも絶体絶命ってときにこのポヨリンが助けてくれて、あー、ここはブレモンの世界なんだなーって。
けど、どうやってわたしがここへ来たのかは全然わからなくて――」
知った顔と会えた嬉しさからか、マシンガンのようにまくしたてる。
それからしばらく、とりあえずの情報交換をするものの、やはり結果は『わからん』という一点しかなかった。
廃墟の崩れた壁に腰掛け、白いニーハイソックスに包んだ両脚を交互にぱたぱたさせながら、なゆたは眉をしかめる。
「んー……やっぱり、真ちゃんにもわかんないか……。手詰まりだなぁ」
はー、と小さく息をつき、ポヨリンに視線を向ける。
ポヨリンは最初いかついレッドドラゴンのグラドを警戒していたが、少し経つとすっかり慣れたのか足元に纏わりついている。
敵意のないモンスターに対しては人懐っこい性格なのだ。 >「五穀さん、ナイス! あとでプレゼントボックスにアイテム贈っときますね! 回復系の!」
「はいな、おおきにさん。でもみのりでええよ〜」
なゆたの言葉に応えながら返事を返し、戦況を見守るみのり
ゲームではない、実際に目の前で繰り広げられる戦いに緊張はしていたが、戦いそのものはゲームと同じように順調に進んでいる。
それゆえに緊張よりも楽しさの方が若干上回っており、こうして余裕をもって眺めていることができたのだった
そして何より、最もみのりを楽しませているのが真一となゆたであった
>「纏めて薙ぎ払え……〈燃え盛る嵐(バーニングストーム)〉!!」
>「真ちゃんったら、考えなしにあんな大技使っちゃって……」
油まみれになり密集したデスフライに、上級スペルを使っての着火
なゆただけでなく、離れた明神もシンクロしたかのようにツッコミを入れてしまう所業なんだが
「ふふふ、元気があってええやないの、かぁいらしいわ〜」
と、みのりは面白そうに笑いをもらすのであった。
元よりグラドに騎乗して戦うなどという行動に出ている時点で、真一に対する評価は戦略的、理論的な行動は期待できない、となっている
故に今更着火にわざわざ上級スペルを繰り出しても驚きも呆れもしない。
それよりも、先ほどのやり取りからのなゆたの反応がかわいく思えてしまうのだ。
(世話焼き女房と、まだお子様な男の子って感じかしらぁ?
甘酸っぱいわ〜
こういうの見ていると、ついついつつきたくなっちゃうのは悪い癖やねえ)
などと思いを馳せるゆたの目に映るのは紅蓮に染まる駅のホーム
炎に包まれたデスフライは、身を焼かれながらもイシュタルへの攻撃を続けている
そしてイシュタルもまた燃え盛りながらデスフライへの攻撃を続けている。
スケアクロウのイシュタルはトップクラスのHPと回復力を誇るが、反面防御力や回避そして攻撃力はないに等しい
例えデスフライ相手であってもダメージは一桁あるかどうか
それでも攻撃を続けるのは、ダメージが狙いなのではなく被ダメージが狙いだからだ。
攻撃をする瞬間というのは攻撃をされやすく、最も脆い瞬間である。
そう、ともすればカウンターを受けるからだ
本来ならば避けるべき事態であるが、バインドを目的とするイシュタルにとっては累積ダメージを上積みする為の戦略であった。。
更に炎がデスフライだけでなくイシュタルも焼いているのは幸運だったといえよう。
これならばあと一つ大きな攻撃を食らえばベルゼブブですら倒しきるまでにダメージは累積されるだろうから。
しかし、その思惑は大きく外れることになる。
眷属を盾に紅蓮の炎を凌いだベルゼブブが真一に牽制の唾液を飛ばし、狙いをリビングレザーアーマーのヤマシタに定め、闇の波動を発動したのだ。
「はうぅ〜、タゲが外れてもうだわ〜おかしいなぁ」
ベルゼブブの思いがけない行動に驚きの声とともにあたりを見回す みのりのバインドデッキは累積ダメージを跳ね返す事を旨としている
【累積】というところがポイントであり、回復しながらダメージを食らい続ける事でどんどん強力な攻撃力を蓄えていけるのだ。
その強力さに注目されがちだが、この戦略の本当の要所はヘイトコントロールにある。
ダメージ【反射】であるから、そもそもダメージを食らわなければいけない
エネミーが複数いるプレイヤーの中で誰に攻撃をするかはランダムではなくヘイト値によって決定されるのだ。
ヘイト、すなわち憎しみ
判りやすく言えば一番ムカつく奴を殴り倒す!というものだ
ヘイトにも様々な種類があり、ヘイト値をためやすい順に
近接ヘイト:パーソナルスペースに入られるとイライラするよね
視覚ヘイト:目につく奴にイライラ、目立つ奴は特にイライラ
ダメージヘイト:殴られれば殴り返す、基本ですよね
回復ヘイト:せっかく殴ったのに回復されたら台無しって怒るよね
デバフヘイト:邪魔されるとうっとおしいよね、まずこいつから排除しようってなるよね
挑発ヘイト:イラつかせるためだけの技術で他に何の影響もないけどとにかくイラつかせるよ
エネミーによって優先順位が変わるものもあるが、基本的にこういった要素で決定づけられる。
他にも、イラつきまぎれに何か蹴飛ばそうとした時、硬そうなレンガより空き缶の方を蹴るように、属性や防御力などの弱いものを優先的に攻撃をする傾向がある。
逆にムカつく相手を殴ってすっきりするように、ダメージを与えられることでヘイト値が低下したらい、他にもヘイトカットのスキルやスペルはあるのだが、ここでは割愛
このような要素を加味してみのりのバインドデッキはイシュタルをパートナーにすることで絶大な効果を誇っていたのだ。
敵のど真ん中に出現し近接ヘイトを獲得
案山子という視覚的に注目されやすい特性で視覚ヘイトを獲得
持ち前の回復力と「地脈同化(レイライアクセス)」による継続回復効果
そして最初に響き渡った笑い声は挑発効果のあるイシュタルのスキル『不協響鳴(ルーピ―ノイズ)』
更に低防御力と属性による不利
これだけのヘイト獲得手段を講じていれば、被ダメージによるヘイト低下も問題なくベルゼブブのターゲットを固定し続けられるはずであった。
にもかかわらずターゲットがヤマシタに移ったのは、ブルゼブブに指示を送った者がいるのかと周囲を見まわさずにはいられなかったのだ。
だがあたりにそれらしい人物はいなさそうで、ふぅと、一息ついて視線を戦場へと戻す。
指示されていないのであれば、生物としてのベルゼブブの知性という事なのであろう。
ならば知性を掻き消すほどのヘイト稼ぎか、他の戦略を考えねばならない、と感じつつ目の前の戦いに集中する。 みのりが思いを巡らせている間に戦いは佳境に入っていた
なゆたのコンボが発動し、闇の波動は防がれ、ベルゼブブはスタン状態に。
そこへ畳みかけるようにヤマシタの矢が叩き込まれている。
「闇の波動欲しかったけど、全部が全部ゲーム通りとはいかへんわねえ。
まだ足りひんやろけど頃合いという事で〜収穫祭の鎌(サクリファイスハーベスト)」
スペルが発動し、イシュタルの手に巨大な黄金の両手持ちの鎌が現れる。
鎌を握りしめイシュタルがベルゼブブに向かい進みだす
移動した時点で継続回復の地脈同化(レイライアクセス)の効果を放棄する事になる
既に十分回復しているのと、もはやここから先回復の必要がない、すなわち決着をつける事を表していた。
後はベルゼブブの動きを封じ確実に当てるために荊の城(スリーピングビューティー)を用意していたのだが、明神とヤマシタがそれを不要としてくれた。
ベルゼブブを中心に濃い霧が発生しているが、曳光弾により命中補正がかかり動きを封じる必要がなくなっていたのだ。
「ほんにやりよるねえ。おおきにさん〜それでは行かせてもらいますえ〜」
明神に声をかけた直後、イシュタルが飛びその大鎌を振るう!
クリティカル状態でのデスフライの総攻撃を受け、更に燃え盛る炎にまかれた累積ダメージがクリティカル状態でベルゼブブを直撃したのだ。
大きく切り裂かれ、体液をまき散らしながもベルゼブブは死ななかった。
「はぁ〜やっぱり闇の波動分足りひんわねえ。
まあしゃあないし、なゆたちゃんの彼氏君に花持たせてあげましょか〜」
ぽよりんコンボにヤマシタの乱れ打ち、そしてイシュタルの累積ダメージ反射はベルゼブブに大ダメージを負わせた。
HP残量的には瀕死状態で、捕獲コマンドも使用可能となっている状態であろう。
だがそれでもベルゼブブはレイドボスなのだ。
残量的には1割を切っているが総数が膨大なため、1割であってもそれなりの数値になっているはず。
そして次を託す真一だが、みのりの中ではかなりの低評価。
例え属性的に相性がよい炎属性のレッドドラゴンを使っているとはいえ、このままトドメを任せてベルゼブブを沈めきれるとは考えていないので
「あのお兄さんのおかげで温存できたスペルカード一枚分サービスですえ〜
太陽の恵み(テルテルツルシ)!
さて、効果はフィールドを火属性にするスペルでおすし、あとはおきばりやす」
みのりの声は藁人形を通じて真一に届くであろう
スペルカードが発動し、夜空に目映い光球が出現し、当たりを照らし出す。
効果はフィールドを火属性にし、火属性のモンスターやスペル、スキルの強化をもたらすのであった
【累積ダメージ反射にてベルゼブブを攻撃、大ダメージを与える】
【フィールドを火属性に変えて支援】 >>126
【ありがとうございましたー
どんな接触になるのか、楽しみにしておりますよー】 次の人
遅れるなら遅れる、抜けるなら抜けるで
ちゃんと合図出してね
後ろがつかえてる
社会はそんなに甘くないよ 大人は勝手だ。
「ウィズリィ、お酒を飲んではだめだ。大人になってからにしなさい」
「ウィズリィ、あなた、そんな難しい本を読んでいるの? 子供らしく絵本でも読んでいればいいのに」
「ウィズリィ、言っただろう? これは苦みの分かる大人の味で、お前にはまだ早いって」
大人は勝手だ。
「ウィズリィ、お前は子供なんだから向こうに行っていなさい。私たちは大事な話があるんだ」
「ウィズリィ、あなたが背伸びしたがる歳なのは分かるわ。でも、これは大人のお仕事なの」
「ウィズリィ、このバカ娘! 聞き分けがないにも限度がある! 次にこんな事をしたらお前をタンスにしまってしまうからな!」
大人は勝手だ。自分勝手だ。
誰もかれもが自分の権威と既得権益を守るためだけに動いている。
かつて読んだとある物語では、大人たちはみんな死んで、少年少女が国の最後の希望、というような筋だった。
……本当にそうなってしまえばいいと思った事も、一度や二度ではない。
「ウィズリィ」
声が響く。他の誰の声とも違う、厳かなトーン。
そして、声とともに、わたしの眼前に現れる、一つの人影。
『王』だ。わたしは思わず居住まいを正した。
「ウィズリィ。我が敬愛する森の魔女よ。教えておくれ……私の国は、あとどのぐらいもつ?」
不確定要素が多すぎてまともな計算もはばかられるところだったが、概算では現状維持でよくて5年。おそらく実際はその半分以下。
そう伝えると、『王』は悲しそうな顔になった。
「ありがとう。……辛い言葉を言わせてしまったね。すまない」
首を振って応える。単なる事実を伝える事に、辛い事なんてないから。
「いや、それでも謝らせてほしい。これから私は君に、この質問とは比較にならないぐらい過酷な仕打ちを強いるのだから。
ウィズリィ、我が敬愛する魔女よ」
『王』がそう言った瞬間、気が遠くなっていく感覚に襲われる。視界がぼやけ、『王』の姿が薄れていく。
言葉に答える事も出来ないまま、わたしの視界は完全に暗闇に呑まれていった。
最後に、『王』の言葉だけが響く。
「私は、君に……」 「……夢……?」
どうやら、少々うたた寝をしてしまっていたらしい。二、三回まばたきをして、寝ぼけ眼をまぶたから追い払う。
真っ先に視界に映るのは、シンプルな装飾ながら設えの良い革張りの椅子。
私が今現在座っている(そして眠っていた)椅子とほぼ同じデザインのそれは、現在は空席である。
もちろん、そこに『王』が座っているという事は……座っていたという事も、ない。
私が『王』とあの会話をしたのは、もう2日は前の事になるのだから。
「……ふむ」
軽く体を動かし、少々のこわばりをほぐす。
この感触からするとそう長くは眠っていなかったようだが、さて。
「ブック」
わたしの最高の相棒である、本の姿をした魔物の名を呼ぶ。
言わずとも傍に控えていたのだろう。彼……彼女かもしれないが、性差のない種族に対しては無意味な呼称だ……は、即座に私の目の前に飛んできた。
「わたしが『これ』に乗ってからどれぐらい経っているかしら」
分かる?などと確認する必要はない。彼に分からないことなどないのだから。
今回も、彼は即座に回答する。
彼のページがひとりでに開き、その上に円状に小さな火の玉が12個並ぶ。
彼が知る知識の一つ、日の出から次の日の出までを24分割する、時の表記方法。
12個の火の玉のうち、二つの色が赤から青に変わった。……2単位分寝ていたという事だろう。
「思ったより疲れていたようね……しかも、それでまだ到着していないなんて。
『これ』の乗り心地は悪くないけれど、時間がかかるのは考え物ね」
いいながらわたしは立ち上がり、『これ』の内部を見渡す。
わたしが座っていたのと同じ椅子が、いくつも向かい合うように配置されている。
それほど高くない天井からは、小ぶりながら悪くない趣味のシャンデリアが下がり、室内を照らす。
ある一点に目をつぶれば、ここは王宮の応接室だ、と言っても通るかもしれない。
部屋の端にある窓からの景色が、流れるように通り過ぎていく事さえ、気にしなければ。
「……慣れないわ」
同意する、とでもいうように、ブックが火の玉を消し、自らを閉じた。
* * *
種を明かそう。『これ』とは、わたしの『王』が用意した乗り物なのだ。
魔法機関車、と『王』は呼んでいた。線路、というあらかじめ用意した鉄の道にそって、大量の荷物や人員を運搬できるからくりなのだという。
普段は『王』自らが乗り込み、あちこちに視察に赴くのだそうだ。
まさかそれにわたし(とブック)が乗る事になるとは夢にも思っていなかったが、この程度で驚いていては始まらない。
わたしがこれから魔法機関車で迎えに行くのは、博識であるわたしやブックでも一度も遭遇したことのない相手だという。
『異邦の魔物使い(ブレイブ)』と呼ばれる彼らを迎えに行く事が、さしあたってわたしがこなすべき任務なのだ。
そう、あくまでさしあたっての。
「……君に世界を救ってほしい、か。まったく、買いかぶられるのも考え物ね」
あの日の『王』の言葉を思い返す。
わたしが対応するべき最大級の謎。
世界の危機。
実感はない……が、いずれ嫌でも湧いてくるだろう。 気が付けば、窓の外の景色はいつのまにかすっかり赤茶けた荒野になっていた。
『赭色(そほいろ)の荒野』だ。つまり。目的地は近い。
何事もなければよい、という期待は早々に裏切られた。
夜空に太陽が浮いている。スペルの効果だ。
夜を昼にしようという斬新なリフォームを試みたバカがいるのでなければ、おそらく何らかの戦闘行為が行われているのであろう。
見れば、緩やかなカーブの先に見える建物の周囲で、何か大きなものが飛び回っている。
モンスターだ。敵か味方か通りすがりか、までは判別しきれないが、いずれにせよ邪魔だ。
いざとなれば、わたしも対応できるだけのスペルは貯蔵しているが……まずは穏健な策を取るべきだろう。
つまり……。
部屋の隅に用意されていた伝声管を開き、声をかける。
「運転手、聞こえるわね。目的地の方に障害物が多数あるわ。
最悪わたしが対応するけれど、まずは注意勧告をお願い」
しばらく後。
魔法機関車の警笛が『赭色の荒野』に響き渡った。
【ウィズリィ&ブック:魔法機関車内で到着待ち】
【魔法機関車運転手(詳細不明):警笛を鳴らす】 【お待たせしましたー。遅くなってごめんなさい!】
【ウィズリィ視点で出しようがないので書かなかったのですが、文中に出てきた『王』はスノウフェアリーが言っていた王様と同一人物のつもりです。
もちろん確定事項ではないのでひっくり返しても構いません】
【次はメルトさんでしょうか。よろしくお願いします!】 青白い蛍光灯の明かりに照らされたマンションの一室。
赤いランドセルを背負った少女が、連続ドラマを眺めながらソファに横になっている母親の背に、何事かを語りかけている
顔をくしゃくしゃにして涙を流しつつ声を紡ぐその様子と、泥の跡の様な物が付着したままの服装から、恐らくは少女の身に学校で何事か……良からぬ事があったのだろう
えづきながら語る少女。その訴えかけに、けれど母親は適当な相槌とドラマの滑稽な場面への笑い声で答えている
そのやり取りは数分の間に渡り続いたが
「それで……あのね。お母さん、今日、学校に行ったら友達に……笑われたの。お化けみたいだって」
「ああっ、もう!なによ、さっきからうるさいわね!ドラマが聞こえないでしょ!?」
ドラマがコマーシャルに入った瞬間に、怒りで顔を歪めた母親の怒鳴り声で中断する事となった
大声を向けられた少女はビクリを身を竦めたが、それでも母親に縋り付きたかったのであろう。再度口を開こうとするが
「でも、お母さ――」
「さっさとその汚れた服洗濯機に入れて自分の部屋に戻りなさい!汚いのはその【顔の傷痕】だけにしてよ!!」
……返されたのは怒声。少女の心は、母親の娯楽への興味により封殺されてしまった
先程まで滂沱の如く流していた涙も、まるで水源が枯渇したかの様にピタリと止まり、呆然としたまま浴室の洗面台の前まで歩を進め、少女は洗面所に設置された姿見に映った自分自身を眺め見る
肩までの長さの黒髪に、少し赤みがかった色の瞳。日焼けしていない白い肌
そこには、いつも見慣れた少女自身の姿が写っているが……ただ一つ。少女が【事件】の前と後で変わってしまった物があった
それは、長く伸ばした前髪で隠した、右顔
その上を縦断する醜い切傷の跡
右手で前髪を掻き揚げながらその傷跡を眺め見た少女は、小さく、泣き出しそうな歪んだ笑みを浮かべ……
――――……・・ 「う、ぁ――――な、何事です!?」
突如として響いた轟音
爆轟の如きそれを耳に入れた少女――【佐藤メルト】は驚愕の声をあげつつ飛び起きる事となった
「ま、また……! 地震ですか?ガス爆発ですか!?」
慌てて寝かせていた体を持ち上げるメルトだが、そんな事はお構いなしとばかりに先程彼女を叩き起こした轟音は断続的に続いている
混乱したまま周囲を見渡すも、そこは先ほどまで自身が見ていた青白い微睡の世界ではなく、目に写るのは、所々崩れた石壁により囲まれた見知らぬ部屋
当然の如くメルトもランドセルなど背負ってはおらず、着ている服は黒色のパーカーと同色のスキニー
そして「ラーメンライス」と筆文字でプリントされた白の謎インナー……彼女が中学校に通える年齢になってから愛用している部屋着であった
夢と現の境を振り切れぬまま、暫しの間、継続して鳴り響く轟音や爆音に振り回され、手を振って見たり蹲ってみたりと混乱を続けていたメルトであるが、
ふと、自身が現在潜んでいる部屋……線路が通る廃墟の中に有る、例えるのであれば駅長室とでもいうべきその場所の、崩れた壁の隙間から飛び込んできた風景を見て
空に座する蠅の王【ベルゼブブ】の姿によって、ようやく混乱を振り解く事に成功した
「……うわ、思い出しました……最悪、です。やっぱり夢じゃなかったんですね、コレ」
そして思い出す
自身が突如としてこの赤錆色の世界に放り出された事を
自身がプレイをしていた【ブレイブ&モンスターズ!】に登場する魔物、蠅の王【ベルゼブブ】に酷似した怪物に追われていた事を 遡る事数時間前。ある事情により、登校拒否の半引きこもりと化していた彼女がこの世界に落とされたのは締め切った自室で【ブレイブ&モンスターズ!】をプレイしていた時の事であった
ゲームのストーリーモードを進めたり素材集めをする訳でもなく、最弱レベルの雑魚モンスターであるレトロスケルトンをパートナーに、業者すら未発見のバグを利用したハイレベルのレアカードの増殖を行っている最中
一度目の増殖を成功させたそのタイミングで、瞬きをした瞬間に世界が切り替わっていた
切り替わり、目と鼻の先程の距離に眼前に蠅の王【ベルゼブブ】が鎮座していた
至近距離に高レベルのモンスター……昨今の糞ゲーですらあまり見ない、本来であれば致命的である状況の中でメルトが生き延びる事が出来たのは、殆ど奇跡といっていいだろう
まかりなりにも一日の殆どの時間をブレイブ&モンスターズにつぎ込む廃人と言って良い程の経験を積んでいた事で、ベルゼブブのモーションに対し異様な速度で反応、回避行動ができた事
回避した先が、赤い砂に塗れた急斜面であり、そこを転がりながら滑り落ちる事で、一時的にベルゼブブとの距離を取る事に成功した事
その二つの要因が、辛くもメルトの命を救った
当然の事ながら【近接ヘイト、視覚ヘイト、挑発ヘイト】この三つを完全に満たしたメルトをベルゼブブは獲物と定め、執拗に追跡を行ってきたが……運良くベルゼブブに殺される事無く、
逃げて逃げて逃げて、追跡を逃れ、廃墟の駅に逃げ込んだ事で事で気が緩み、そのまま意識を失い――――そして冒頭へ至ったという訳である
……つまり、真一達がここでベルゼブブに遭遇したのは、メルトが図らずもトレイン(モンスターを引きつけて他者に擦り付ける行為)を行った成果であるとも言えるのだが、それは誰が知る所でもない
「それにしても、さっきから響いてるこの轟音……戦闘音でしょうか? ――あっ。今の炎は確か【燃え盛る嵐】のエフェクトですね。なんか思った以上に物凄く燃えてる気もしますが」
一度大きく深呼吸をして、再度壁の隙間からベルゼブブの様子を眺め見るメルトだが、彼女はそこでベルゼブブの様子がおかしい事に気付いた
メルトを追跡していた時は泰然自若とした様子を崩さなかったベルゼブブが、殴られたかの様にふら付き、かと思えば突如としてその身が燃え上がったりしているのだ
暫く観察して、その炎の形状がスペルカードの一つと酷似している事を思い出したメルトは、
次いで現れた乳白色の霧とその中で輝く線香花火の様な発光を見て、ベルゼブブが【プレイヤー】と戦闘している事を確信する
これまで状況の掴めない中で逃げる事に精いっぱいだったメルトは、自分以外の他者の存在を感じた事でホッと息を吐こうとし……
けれど、直ぐに【プレイヤー】が友好的な人間とは限らないと思い至り頭を横に振った
ただ……それでも何もしない事は不安なのだろう、メルトは駅長室から恐る恐る歩み出て、
廃駅のホームの朽ちた看板の影から戦闘の様子を眺め見ていたが……そこでふと、彼女は己の懐に入っているスマートフォンの存在を思い出した
気を紛らわす手慰みなのだろう。ポケットに入れてあったスマホを取り出すと、
特に深く考えず、画面を良く確認する事も無く、何故かログイン出来ているブレイブ&モンスターズの『召喚』ボタンを作業的に押し 『カタタタカタカタ』
「……うぇえええええええええ!?」
眩い光と共に現れた、ガイコツ標本の様なモンスター
【レトロスケルトン】を至近距離で見る事となり奇妙な声を上げた
そして、そのタイミングで追撃とばかりに響き渡る大音量の【警笛】
限界まで張りつめた緊張のなか、視覚と聴覚の双方に奇襲を受けたメルトは
「……きゅう」
数歩ふら付きながら歩いてから、廃駅のプラットホームのど真ん中で、再度その意識のブレーカーを落とした
夜空に輝く眩い光球に照らされたレトロスケルトン……メルトがパートナーとして選択していたそのモンスターは、
未だ続く戦闘と、情けなく倒れた自身のパートナーを中身のない虚空の目で見比べて、
まるで困った人間の様に骨しかない指で頭蓋骨をポリポリと掻いた
【トレインしたり覗いたりのあげくに、特に何も成し遂げる事無く、誰かと遭遇する前に気絶】 青白い燐光を放つ満月の下で、蝿の王との激闘は続く。
一瞬の攻防の後、素早くグラドと距離を取ったベルゼブブが次に狙ったのは、こちらに向けて矢を射かけるリビングレザーアーマーだった。
真一はゲーム内でベルゼブブと戦ったことはなかったが、広げた羽を震わせるその挙動には、ピンと来るものがあった。
「――闇魔法か! おい、そこのアンタ。さっさと逃げろ!!」
真一は下方から援護するサラリーマン風の男に、慌てて声を掛ける。
先程はその助けによって、デスフライの群れを一掃することができたものの、彼のパートナーは脆弱な革鎧の亡霊だ。
金属製の鎧を纏ったリビングアーマーと比べれば、防御性能も遥かに劣り、ベルゼブブのスペルをまともに受けてしまえばひとたまりもないだろう。
>「ポヨリンA! 『しっぷうじんらい』!」
>『ぽよよっ!!』
しかし、そんな真一の心配をよそに、彼らの前に立ちはだかったのは、なゆたのポヨリンだった。
一見ただのスライムだが、なゆたの異様なやり込みによって鍛えられたその強靭さは、真一もよく知っている。
ポヨリンは〈闇の波動(ダークネスウェーブ)〉の直撃を貰って吹き飛ばされるも、何とか耐え切ったようであった。
>「ポヨリンB! 『てっけんせいさい』!!」
>『ぽっよ……よよよ〜〜〜んっ!!』
更に分裂したもう一匹のポヨリンが、衝撃波を放って隙ができたベルゼブブを狙う。
スライムが拳の姿に変化する様は、こうしてリアルで見ると中々不気味だったが、攻撃力はお墨付きだ。
強烈な鉄拳がベルゼブブの横っ腹を見舞い、敵の巨体をぶっ飛ばす。
「よっしゃ、流石ポヨリンだぜ!」
間近でその一撃を見た真一は、思わず拳を握ってガッツポーズを決める。
いつもは煮え湯を飲まされ続けている相手だが、こうして味方として戦う分には、これほど頼りになる奴らも中々いない。 >「迷霧の中にいる敵はクリティカル発生率が上がる!畳み掛けるぞ!」
>「闇の波動欲しかったけど、全部が全部ゲーム通りとはいかへんわねえ。
まだ足りひんやろけど頃合いという事で〜収穫祭の鎌(サクリファイスハーベスト)」
だが、他の仲間たちも、なゆたとポヨリンに負けず劣らずの活躍を見せた。
ベルゼブブのメインターゲットに定められていたサラリーマンらは、ベルゼブブの体に光の矢を突き刺しつつ、スペルで濃霧を発生させる。
そして、その援護を受けたイシュタルは、先程まで回復に徹していた構えを解いて、今度は両手に大鎌を握る。
ユニットカードの〈収穫祭の鎌(サクリファイスハーベスト)〉。
今まで自分が受けたダメージを攻撃力に変換する武器であり、あれだけデスフライの的にされていたことを考えると、その火力の程は計り知れないだろう。
>「ほんにやりよるねえ。おおきにさん〜それでは行かせてもらいますえ〜」
イシュタルは大鎌を振り抜き、ベルゼブブの胴体を見事に斬り裂いた。
真一もこれで決着がついたものかと思ったが、これだけの攻撃を立て続けに受けて尚、ベルゼブブは健在だった。
「まだ息があるのかよ。……思ってたよりも、随分タフな野郎じゃねーか」
やがて濃霧は晴れ始め、徐々に視界がクリアになる。
ベルゼブブは腹から体液を溢しながら、相変わらずその両脚を擦り合わせて不協和音を鳴らしていた。
然しものベルゼブブといえど、もはや息も絶え絶え。このまま畳み掛けることができるだろうと真一が身構えたその時、不意にベルゼブブの周囲を紫色の光が覆い始めた。
――蝿の王の異名は、伊達ではない。
ベルゼブブはこうして瀕死の状態まで追い込むと、俗に言う「バーサク状態」へ変貌するのだ。
闇の魔力を纏ったベルゼブブは、その高度な知性を失う代わり、あらゆるステータスを大幅に上昇させて暴れ始める。
残り体力的には〈捕獲(キャッチ)〉のコマンドを実行することも可能なのだが、今のままではまず捕獲に成功することもない。
更に攻撃を与えてバーサクを解除するか、或いは状態異常にさせて、身動きを封じるなどの工夫が必要になる。
>「あのお兄さんのおかげで温存できたスペルカード一枚分サービスですえ〜
太陽の恵み(テルテルツルシ)!
さて、効果はフィールドを火属性にするスペルでおすし、あとはおきばりやす」
「よし、任せとけ! ……って言いたいところだけど、何かヤバそうな雰囲気だ。油断すんなよ、グラド!」
先程、五穀豊穣と名乗ったイシュタルの主人は、藁人形を通して真一に声を掛ける。
そして、彼女が行使したユニットカードによって、夜空に太陽が昇った刹那、最後の戦いが幕を開けた。 「――〈火球連弾(マシンガンファイア)〉!!」
まずは手始めに、真一は牽制とばかりに一枚のカードをプレイする。
小さな火球の礫を無数に放つスペルであり、一発一発の攻撃力は低いものの、このように弾幕を張るには非常に優秀な効果を持つ。
――だが、バーサク状態に入って運動能力を高めたベルゼブブは、それらの攻撃を容易く回避し続けた。
「くっ、なんつー速さだよ……! グラド、ドラゴンブレスだ!!」
回避機動を取りつつ、ベルゼブブは複眼をこちらに向けて狙いを定め、再び闇の波動を解き放った。
グラドは自身のスキルである〈ドラゴンブレス〉を以てそれを迎え撃ち、両者の攻撃は虚空でぶつかり合って相殺される。
〈太陽の恵み(テルテルツルシ)〉の効果によって、こちらの火力も上がっていたため、威力負けすることはなかったが、敵に命中しなければ意味がない。
そのようにして、繰り返し撃ち出される真一とグラドの攻撃を、ベルゼブブは立て続けに躱し、自身は酸の唾液と闇の波動で応戦する。
幾度にも渡る攻防は、互いに致命打を与えるに至らず、空中戦は更に凄烈の様相を呈した。
「このままじゃ埒が明かねえ。なんとか、あいつの動きを止めねーと……」
しかしながら、そう呟いた真一の脳内には、敵の意表を突くための“ある作戦”があった。
それはかなりデンジャラスな賭けでもあったが、既に意は決している。真一はグラドの頭に顔を近付け、その内容を耳打ちした。
グラドは驚きに一度目を見開くも、その直後に腹を括ったようで、対峙するベルゼブブを鋭い眼光で見据える。
『グァアアアアアアッ――――!!』
そして、グラドは激しい咆哮を上げながら、ベルゼブブを目掛けて突っ込んだ。
理性を失っているベルゼブブは、その雄叫びに挑発されるがままに羽を開き、こちらを迎え撃つ構えを取る。
突進するグラドと、それを迎撃するベルゼブブ。互いの体当たりが炸裂し、両者は共に倒れたかのように見えた。
――だが、蹌踉めくグラドの背の上には、既に真一はいなかった。
今の衝突で振り落とされただけのようにも思えるが、そういうわけではない。
「――貰ったぜ。真上がガラ空きなんだよ、ハエ野郎!!」
そう叫んだ真一の姿は、ベルゼブブの死角――その直上にあった。
ぶつかり合う寸前、真一は〈限界突破(オーバードライブ)〉のスペルを発動して身体能力を底上げし、グラドの背を踏み台に跳び上がっていたのだ。
パートナーの突撃を囮に使い、自分自身が飛矢となる捨て身の作戦。
しかし、あまりにも無謀に思えるその行動は、完全にベルゼブブの虚を突いた。
真一は裂帛の気合と共に剣を振り下ろし、唐竹の剣戟でベルゼブブの左翼を斬り落とす。
ようやく届いたその一撃を受け、ベルゼブブは悲痛な叫び声を響かせながら崩れ落ちた。
「今だ! ブチかませ、グラドッ!!」
更にダメ押しとばかりに、グラドは〈ドラゴンクロー〉のスキルを発動。
右腕に炎を纏わせ、自慢の鉤爪を渾身の力でベルゼブブの顔面に叩き付けた。
真一とグラドのダブルアタックが炸裂し、遂に決着の時は訪れる。
ベルゼブブの周囲を取り巻いていた紫色の魔力は消え去り、そのまま荒野へと墜落していく。
やがてHPが尽きるのは明らかだったが、完全に息絶える直前――バーサク状態が解除されたこの瞬間に捕獲を試みれば、或いは成功する可能性もあるかもしれない。
そして、同様に落下する真一をグラドが背でキャッチした直後――この荒野を切り裂くように、けたたましい警笛が鳴り響く。
異世界の少年たちを「王都キングヒル」へと導く“迎え”が到着した合図であった。
【真一とグラドのコンビ攻撃が決まりベルゼブブ撃破。
ちなみに汽車に乗って移動するシーンでこの章を締める予定なので、そのつもりで準備お願いします】 【>>真ちゃん殿
今のうちにベルゼブブの捕獲が成功したかどうかの判定だけ貰ってよかですか
次のターンで書く内容がガッツリ変わってくるゆえ】 >>148
【明神さんの捕獲コマンドが成功するか、先に判定して欲しいということでしょうか?
それならばこのスレは基本的に非GM制なので、そちらの判断で成否を決めてもらって大丈夫です!】 >>151
【了解でんがな
ほなこのレスのタイムスタンプの末尾が偶数から成功、奇数なら失敗で】 >>153 明神さん
【残念!では失敗ということでこちらも対応させて頂きますね。投下は月曜の予定なので少々お待ちくださいませ】 スライム、リビングレザーアーマー、スケアクロウ、そしてレッドドラゴンの波状攻撃によって、ベルゼブブが墜ちていく。
急造チームではあったが、近距離アタッカー二体にタンク、遠距離アタッカーと、編成的にはまずまずだ。
あとはヒーラーでもいれば、より一層強いパーティーになるだろう。
何よりこの異世界に放り出され、右も左もわからない状態でレイドボスに遭遇するという絶体絶命の危機。
それを乗り切ったというのは、まさに奇跡としか言いようがない。
……と。
(……あれは……キャプチャーの……)
どどう、と赤色の土煙を上げて荒野に墜落したベルゼブブへ向けて放たれた、一条の光。
それはモンスターを捕獲するときに見られる光のエフェクトだった。
ダメージを与えて弱ったモンスターは捕獲できる。――たとえ、それが強大な力を持つレイドボスだったとしても。
普通のゲームならNPC専属であろうモンスターをも捕獲できるというのが、このブレイブ&モンスターズ!のウリである。
光の飛んできた方向を見ると、サラリーマンがいるのが見えた。間違いなくあの男性が捕獲を試みたのだろう。
……しかし、その光は一瞬ベルゼブブを取り巻くも、すぐにパッとかき消えてしまった。捕獲失敗のサインだ。
なゆたはその時点で、サラリーマンに軽い不信感を覚える。
通常、多人数のプレイヤーが参加するパーティープレイにおいてモンスターの捕獲はご法度とされている。
なぜなら、モンスターは分け合うことができない。
素材収集目的の討伐の場合は、討伐した時点でドロップアイテムが全員に行きわたるが、捕獲は違う。
一人が捕獲に成功すると、他のプレイヤーは経験値以外は何も貰えず終わるのである。
よって、特定のモンスターを捕獲しようとする場合はフレンド募集の時点で『○○捕獲希望』とメッセージを出すのが普通だった。
もしそうでないとしても、最低限『これ捕獲してもいいですか?』と一声掛けるのがマナーであろう。
学校で生徒会副会長を務める真面目さからか、ネットマナーにもうるさいなゆたであった。
ともかく、サラリーマンはベルゼブブ捕獲に失敗した。
捕獲自体に回数制限はない。もう少し弱らせて、次のATBゲージが溜まったときにリトライすることも可能だ。
真一とグラドはもうベルゼブブには見向きもしていない。既に戦いには勝った、と思っているのだろう。
真一らしい詰めの甘さだが、なゆたはそれを許さなかった。
「ポヨリンAアーンドB! 『スパイラルずつき』!」
『ぽよよよっ!』
地面に墜落し息も絶え絶えのベルゼブブへ、分裂した二体のポヨリンが突っ込んでゆく。
かと思えばポヨリン達は加速をつけて跳躍し、まるで弾丸のような形状になってきりもみ回転しながらベルゼブブを攻撃した。
エネミーの防御力を無視してダメージを与える、貫通属性持ちのスキル――スパイラルずつき。
硬化のスペルはまだ切れていない。銃弾めいた形になった鋼のスライム二体が、蝿の王の胴体を貫通する。
蝿の王はギョォォォォォ……と断末魔の悲鳴を上げながら、今度こそ動かなくなった。
と同時、戦闘に参加していた各人のスマホにドロップアイテムの報告表示が出る。
風属性モンスター育成のレアアイテム、『蝿王の翅』だ。 戦闘が終了した瞬間、けたたましい汽笛の音が鼓膜を震わせる。
見れば、廃墟とばかり思っていた駅のホームに一両の列車が近付いてきている。
魔法機関車――ブレイブ&モンスターズに出てくる、メジャーな交通手段のひとつだ。
ストーリーモードでは、飛空船を手に入れるまでこの魔法機関車でほうぼうを旅することになる。
「あれが、メロの言ってた迎えってことね……」
戦闘を終えてスペルカードとスキルの効果が切れ、一体に戻ったポヨリンを胸に抱き上げると、そう呟く。
メロの言っていた『王』とは、王都キングヒルに君臨するあの王のことで間違いないだろう。
ゲーム内では最序盤に出会う相手だ。もちろん、ストーリーモードをプレイした者なら全員知っているはず。
こんなミミズとハエしかいない荒野に突っ立っていても仕方ない。次の行き先は決まった、が――。
「みのりさん! ホントに助かっちゃいました、ありがとうございます!
まさか、こんなところでフレンドの方に会えるなんて!すごくすごく嬉しいです!」
まずは、共闘してくれたフレンドにお礼を言うのが筋であろう。すぐになゆたはみのりに向き直ると、深々と頭を下げた。
「改めて、崇月院なゆたです。崇月院の月を取って、月の子(モンデンキント)って。
でも、ここじゃ本名の方がいいですね。わたしのことは、なゆって呼んでください」
快く共闘に応じてくれ、なおかつ人当たりもいい。決して悪い人ではなさそうだ。
かつてスケアクロウを見たときは、どんだけ金満なプレイヤーなのよと思ったが、認識を改める。
「あそこのレッドドラゴンに乗ってるおバカが、赤城真一。えと……さっきも言った通り、わたしの幼馴染で。
ホント、ムチャクチャな戦い方で……。ド初心者なんです、みっともないところお見せしてお恥ずかしい……」
パートナーモンスターと一緒にエネミーと戦うばかりか、自分にバフを掛けるなど聞いたこともない。
軽く彼の方を指差して紹介すると、なゆたはまたみのりに対しぺこぺこと頭を下げた。
「……で。わたしたちは、さっきスノウフェアリーにあの機関車に乗れって。
そう言われたものですから、これから乗ろうと思うんですが……。
みのりさん、よかったらご一緒しませんか? 仲間は一人でも多い方が心強いですし」
彼女は信用できる。それがなゆたの下した結論であった。
寺の一人娘という出自もあってか、基本的に性善説を採用しているなゆたである。
以前からフレンドとして共闘しているという繋がりもある。
そして。
「お兄さんも! ありがとうございます!」
みのりから視線を外し、やや離れたところにいるサラリーマンの方を見る。大きく手を振ると、なゆたはお礼を言った。
共闘してくれたのはありがたいし、スペルカードで援護してくれたのも助かったのは事実だ。
独断でベルゼブブの捕獲を試みた先ほどの行動がどうも引っかかるが、それもたまたまかもしれない。
空気の読めないプレイヤーはどこにでもいる。いちいち目くじらを立てていてはきりがない。
それより、今はやはり味方を一人でも確保しておく必要がある。
急造でも上級レイドボスのベルゼブブを撃退したパーティーだ。この先もこの面子なら大抵の苦難は乗り越えられるだろう、と思う。 やがて真一とグラドが降りてくると、なゆたは肩を怒らせて彼の方へ歩いて行った。
そして、真一の顔に自らの顔を近づけると、む。とその目を見つめる。
「……真ちゃん」
と、その直後。なゆたは徐に右拳を握り込むと、ごちん。と真一の脳天にゲンコツを落とした。
「なんなのよ、今の戦いは!? どこの世界にパートナーモンスターと一緒に戦うマスターがいるのよ!
あの炎精王の剣も! 限界突破も! モンスター用のスペルカードなんだから!
あんたいつからモンスターになったのよ!? わたしはモンスターを幼馴染に持った覚えはないっ!」
途端に嵐のようなお小言を開始する。
「まだ、ここがどんな場所なのかもわかんないんだよ!? やられて、ゲームオーバーになるだけならいい。
ゲーム続行不可になって、この世界から元の世界に戻れるなら、わたしだってすぐにそうするよ。
でも、そうなるとは限らない! モンスターに傷つけられたら、本当に怪我をして! 死んじゃうかもしれないんだよ!?
そうなったらどうするの!?」
矢継ぎ早にまくしたてるうち、なゆたの大きな瞳に涙がにじんでゆく。
「……心配、させないでよ……。あんたにもしものことがあったら、わたし……。
あんたの家族に、なんて説明すればいいのよ……!?」
制服の袖でぐいっと乱暴に目元を拭うと、なゆたはもう一度真一を睨みつけた。
そして、右手の人差し指をびしぃっ! と真一の鼻先に突きつける。
「テンションが上がっちゃったのはわかるけど、もう二度とあんな無茶なことはしないでね!
じゃないとぉ〜……真ちゃんの好きなハンバーグ、もう作ってあげないから!
わかった!? 『はい』は!?」
ぴしゃりと言い放つ。それで言いたいことは言ったらしく、なゆたは一旦矛を収めた。
「……ま、まあ、グラちゃんに乗って戦う姿は、その……ちょっぴり、カッコよかった、けど」
腕組みし、そっぽを向きながらぽそぽそと零す。
「さ! お迎えも来たし、このフィールドには用はないわ。早く魔法機関車に乗ろう!」
一旦倒したレイドボスは日が変わらない限りリスポンすることはないが、サンドワームは無尽蔵に湧く。
スペルカードを使って消耗している現在、度重なる戦闘は避けたい。なゆたは真一の手を引き、プラットホームへ行こうとした。
そして、停車している魔法機関車に乗り込もうとしたとき――
「……あれ?」
いつのまに現れたのか、プラットホームの中央で倒れている少女を見つけたのだった。 「ひょっとして、あの子もわたしたちと同じプレイヤー?」
中学生くらいの背格好の少女が倒れているのを見て、なゆたは顔をしかめた。
というのも、少女のすぐ近くにレトロスケルトンがぼんやりと突っ立ってるのを認めたからである。
通常のエンカウントモンスターなら、とっくに少女に襲いかかっているはずだ。
また、レトロスケルトンが少女を襲い殺害し終わった後だとしたら、とっくにその場を離れているはずである。
たまに執拗に死体蹴りしてくるエネミーもいるが、基本モンスターはヘイトがなくなるとターゲットから離れる。
少女のそばを離れず、かといって攻撃するそぶりもない。
それはつまり、このレトロスケルトンが敵ではないということの証左に他ならない。
スライムやリビングレザーアーマーと並ぶザコ敵で、なおかつそれらほどの伸び代もない、正真正銘のザコモンスターだ。
何より可愛くない(なゆた的価値観で)。
そんな箸にも棒にもかからないモンスターをパートナーにしている辺り、相当な物好きか初心者か。
ともかく、捨て置くことは出来ない。なゆたは少女に駆け寄った。
「……目立った怪我はないみたいね……」
少女を抱き起し、その身体の様子を確かめる。恐らく気絶しているだけだろう。
こんな奇妙きわまる世界に着の身着のままで放り出されたのだ、それも致し方ない。
いち早く状況を理解したなゆたや、理解どころかモンスターとの共闘さえやってのけた真一の方がおかしいのである。
「真ちゃん、この子も連れて行こう。ここに置き去りにはできないよ」
巨大なハエとミミズののさばる荒野に少女をひとり置いていくなどという非人道的行為は、なゆたにはできない。
強力なパートナーモンスターがいるなら話は別だが、レトロスケルトンではサンドワームに一撃で粉砕されるのは目に見えている。
真一を振り仰いで告げると、ついでに少女のことを抱きかかえていくように、とも言う。
「よしっ! じゃあ、行きましょう!」
『ぽよっ!』
真一とみのり、そしてサラリーマンに言うと、なゆたは機関車に乗り込んだ。
ポヨリンもぽよん、と一度跳ね、意気揚々と客車に入る。
そして。
「んっ?」
テレビで観た王宮の応接間もかくや、というような豪奢な客室に入ると、等間隔に並んだ席に座っている小柄な人影が目に入った。 座っていたのは、ゆったりしたローブに身を包んだいかにもな魔法少女風の出で立ちの女の子だった。
その姿には見覚えがある。主にアルフヘイムとニヴルヘイムの狭間『忘却の森』エリアに出没するモンスター。
『魔女術の少女(ガール・ウィッチクラフティ)』だ。
知能が高く、その名の通り豊富な魔法を使いこなす。見た目の可愛さから、パートナーにしているプレイヤーも多い。
この少女もメロと同じ、王の使いということなのだろうか。
「えーと……、こんばんは?」
なゆたは率先して声をかけた。往々にして、こういう場合はエリア内のキャラクターに声をかけるとイベントが進むものだ。
「この魔法機関車が、メロの言ってた王さまのお迎え……ってことでいいのかしら?
わたしたち、アルフヘイムは初めてだから。右も左もわからなくて……。
あ、わたしの名前は崇月院なゆた。なゆって呼んでね。
こっちの無愛想なのが赤城真一。こちらの女の人が五穀みのりさん。あとは、えーっと……」
サラリーマンとプラットホームに倒れていた少女のことは、よくわからないのでお茶を濁す。
「とにかく、メロの言ったとおり王さまに会えってことなら、こっちもそのつもりよ。
わたしたちは元の世界へ帰りたいの。あなたたちの王さまなら、きっとその方法も知ってるはず……よね?
いや、絶対知ってるはず。直接的な方法は知らなくとも、そのヒントくらいは知ってるはずよ、絶対!
でないとユーザーフレンドリーじゃないクソゲーってフォーラムでまたアンチに叩かれちゃう!
ってことで――」
自分の意見を一気にまくし立てる。
そして機関車の二人掛けになっている席の窓際に腰を下ろすと、気絶している方の少女を自身の隣に横たわらせ、膝枕する。
「真ちゃんはそっち。また何かあったとき、すっ飛んでいかれると困るから」
真一に対し、自分と向かい合う形の席を指差して、座れ、と言う。
「まずは、道すがら事情を説明してもらえるかしら?それから――あなたのことをなんて呼べばいいのかも、ね」
魔女術の少女の名前を訊ねると、なゆたはにっこり笑った。
まだ、魔法機関車は出発しそうにない。その間、ここにいる人間たちの情報交換や自己紹介もできるだろう。
【メルトちゃんを保護。魔法機関車に乗り込みウィズリィちゃんと接触、情報収集開始。
なんか一気にやっちゃいましたが……。とにかくウィズリィちゃん、メルトちゃん、よろしくお願いします!】 名前:アディーム 
年齢:25 
性別:男 
身長:180 
体重:120 
スリーサイズ:筋肉質ではあるが痩身 
種族:人間 
職業:探索人 
性格:朗らかで押しに弱い 
能力:宿主 
武器:呪いの拳銃デュランダル 
防具:アラブ的民族衣装、ヤモリブーツ、丸サングラス 
所持品:弾、市松人形、食料など 
旅の目的:寄生生物や憑依体の解除法を見つけ出す
容姿の特徴・風貌:褐色の肌にドレッドヘア、アラブ系の彫の深い顔立ち唇厚め、筋肉質な体、丸サングラスをつけていて目の色や視線は追えない 
筋肉質ではあるが健康的とはとても見えず、痩せこけているという印象を受けるだろう 
アラブ系民族衣装を軍用と思しきブーツを着こなすアラブ紳士、ちなみにクーフィーヤ(アラブの帽子的布)はつけておらず 
簡単なキャラ解説:朗らかで押しに弱いお人よしなトレジャーハンター、だった。 
しかしその性格と、怪しげな場所に足を踏み入れる職業、そして稀に見る引き寄せ体質だったのがアディームの不幸の始まりだった 
行く先々で様々なトラブルに巻き込まれ、厄介事を押し付けられる(物理 
結果、骨髄に「液体金属スライム」、頭部「ドレッドヘアに見える寄生生物」、背中に「人面相」、腰には「呪われた拳銃デュランダル」、左手には「市松人形」の入った桐箱を抱える羽目に 
各種寄生生物、憑依体はアディームから生命エネルギーを吸い取り続けている 
本来は巨躯巨漢だったが今やすっかり痩せこけ、いくら食べても追いつかない状態になっており、持久力に乏しい 
宿主を死なせないようにするためか、寄生生物や憑依体は戦闘においてアディームに協力的であり、高い戦闘力を発揮する 
アディーム自身はこの状況から解放されるために解除法を探っているが、いまだ見つからず 
市松人形に導かれ入った廃墟の地下室からこの世界に迷い込む 
(参加が確定。よろしくお願いします。導入は後日) 【こんばんは
ひと段落つきそうなところでちょっと先のお話ですが
現在スマホの機能は召喚・スペル行使ですが、幕間にてデッキ編成は可能なのでしょうか?
ガチャ引くなりスペルカード変えるなりの他の機能面どうなるんだろうかなというところで】 >>161
【デッキ編成は可能ですが「使用済カード」を交換した場合、制限時間も引き継ぐというルールにしようかなーと思ってました。
あとはマップを見たり、入手したアイテムを出し入れしたり……なども可能です。
ガチャは回してもいいですが、現実世界とネット接続されていないので、リアルマネーを課金するのは不可です。
ちなみに、次章に入ってすぐストーリーで触れようと思っているのですが、
ゲーム内資源をスマホのエネルギー問題などに絡めるつもりなので、多分ガチャを引く余裕は出ないです】 対ベルゼブブ包囲網は着実に奴を追い込みつつあった。
いや実際ダメージレートすげえことになってんな。クリティカル連発でハエがスタンし続けてる。
ほとんど反撃出来てなくていっそ可哀想になってくるわ。
>「ほんにやりよるねえ。おおきにさん〜それでは行かせてもらいますえ〜」
相変わらずレッドラと一緒にハエと殴り合ってる男子高校生と、
最弱クソモンスのスライムでベルゼブブ相手に防戦一方を強いてる女子高生もやべーけど、石油王も伊達に廃課金してねーなアレ。
レイド級モンスターってのは残りHPの割合によって攻撃パターン(フェーズ)が変化するアルゴリズムになってる。
カカシ使いの石油王は、ベルゼブブが攻撃モーションに入った瞬間を狙って蓄積反射の特大ダメージをぶちかました。
HPをがっつり削られたベルゼブブは、次の攻撃パターンに以降する為に現在の攻撃モーションを解除させられるわけだ。
モーション強制解除で発生する硬直の間に更にHPを削られて、またパターン移行に伴うモーション解除。
「無限ループって怖くね?」
敵の行動パターンの熟知と、いっそ過剰なまでの火力の両方があって初めて成立するハメ殺しの一つ、『フェーズ飛ばし』だ。
普通は廃人PTが入念なタイムラインの打ち合わせのうえでやるレイド狩りの手法だが、この即席PTでお目にかかれるとは思わなんだ。
ダメージレートをある程度任意で調節できるバインド系のデッキでも、PTの火力を完全に信頼出来なきゃムリだろう。
あいつらフレンドかなんかなの?もしかしてこの場で野良なのって俺だけだったりするぅ?
「……そろそろか」
スマホをチラ見すれば、捕獲コマンドが使用可能を示す点灯状態にあった。
ベルゼブブのHPが1割切ってる。捕獲自体は実行可能だが、成功するかどうかはモンスターの状態次第だ。
当然、HPが1割丸々残ってるよりも0.1割まで削れた方が成功し易いし、状態異常もそこに加味される。
コマンドのリキャストタイムも考慮すれば、捕獲を行えるチャンスは一度か二度くらいってとこか。
そろそろ『濃霧』の効果も切れる。HPの減少は緩やかになるだろうし、しっかり機会を吟味しねーとな。
「あ、やべっ」
晴れつつある濃霧の向こうに再び姿を現したベルゼブブは、なんか毒々しい紫色のオーラを纏っていた。
バーサク入ってんじゃん。物理攻撃しかしなくなる代わりに各種ステータスにアホみたいな超補正がかかるバフだ。
上昇するステータスには、『捕獲難易度』も入ってる。つまりほぼほぼ捕まらねえってことだ。
そして何より問題なのは――
「当たらねえ!」
ヤマシタの射掛ける矢はおろか、男子高校生が至近距離で放ったスペルすら躱し切る圧倒的回避補正!
これはもう純粋にステータスの格差で、必中効果の付いた攻撃以外殆ど失敗するハイパークソチート技なのだ。
PT構成や残ってるスペルによってはこのまま詰みも有り得る。神ゲーかよ。
そんでもって間の悪いことに、俺の残存スペルで必中の魔法は……皆無!神ゲーだったわ。
宵闇に包まれた荒野に明星の如く輝く光球は、おそらくフィールド効果カードの影響だ。
ツルツルテルシだったか、炎属性の威力を底上げするカード、発動したのは多分石油王だろう。
男子高校生を支援して決着を付けさせるつもりらしい。すげー苦戦してんだけどアイツ大丈夫なの。
>『グァアアアアアアッ――――!!』
バーサク状態のベルゼブブに防戦を強いられていたレッドラが、一際大きく吠えた。
スケアクロウのヘイト上昇スキルを見よう見真似でパクったのか、ハエのタゲがレッドラに集中する。
いやここで更にヘイト重ねてどうするつもりだよ!どう考えてもプレイヤーごと捻り潰されるパターンだろ!
空中で闇と炎を纏った二つの影が激突する。オイオイオイ死んだわアイツ。
俺はおそらく繰り広げられるであろう一方的な虐殺を予感して目を伏せた。そんでもっかい見た。
ベルゼブブが勝利の雄叫びを上げなかったからだ。 「……アイツ、どこ行った?」
レッドラの背にしがみついてたはずの男子高校生がいない。空中でもみ合いになるうち振り落とされたか?
――いや違う!ツルツルテルシの逆光に紛れるように、ヤツは上空に高く飛び上がっていた!
その手に握る炎精王の剣で、自由落下の勢いそのままに、ベルゼブブの片翼を裁ち落とす!
パートナーの吶喊に呼応するように、レッドラもまた炎の爪でハエのもう片翼を引き裂いた。
完全に虚を突かれ深手を負ったベルゼブブが彗星のように落下していく!
「マジかよあいつ……マジかよ!」
レッドラの咆哮を布石にした、身体強化スペルを使っての単身ダイブ。
そしてフィールド魔法のオブジェクトさえも目眩ましに利用する圧倒的リアルファイトのセンス。
やっぱあいつだけ世界観違うって!そういうゲームじゃねーからこれ!
……っと、いかんいかん。つい実況に夢中になり過ぎた。
ベルゼブブは最早最終フェーズを通り越すレベルで削られてバーサクも解除されている。
地面に激突したダメージでそのまま討伐完了しちまいそうだ。
前にも後にも、チャンスは今しかねえ!
「『捕獲<キャプチャー>』!」
温存していたATBゲージを使い、俺は捕獲コマンドを実行した。
モンスターを隷属させる光、プレイヤー達の間で『洗脳ビーム』とか俗称されてる光条がベルゼブブに直撃する。
光が拘束具となってモンスターをガッチリ巻き取れれば捕獲成功――途中で弾ければ失敗という分かりやすいエフェクトだ。
ベルゼブブに巻き付いた光は、自由落下するハエの身体をぐるぐる巻きにしたが、地面に激突した衝撃でばらばらに弾け飛んだ。
「クソ、失敗か!」
流石にレイド級ともなると洗脳ビーム一発だけじゃ隷属させられないらしい。
ちょっと前にYouTubeに上がってた動画では、拘束スペルでガッチガチに固めたベルゼブブを5回ぐらいビームぶち当てて捕獲してた。
幸いにもベルゼブブはHPミリで生きてるようだし、もう一回ぐらい捕獲コマンドを実行できるはずだ。
ATBゲージの蓄積具合が遅くてイライラする。はやく溜まれはやく溜まれはやく溜まれ……!
>「ポヨリンAアーンドB! 『スパイラルずつき』!」
「あっ馬鹿!やめろ!やめてお願いマジで!」
しかし無慈悲にも、女子高生のスライムが二匹一緒に死に体のベルゼブブに殺到する。
闇の波動にも耐えきるアホみたいな硬さの物体が二つ、蝿の王の胴体に風穴を開け……討伐完了のリザルトがスマホに表示された。
「ほぎゃああああ!?」
絶望のあまり変な声が出ちゃった。
あ、あの女……!俺が捕獲ビーム撃ったの見た上でベルゼブブにトドメを刺しやがった!
つまりこいつは明確な捕獲妨害だ!!晒しスレ直行案件だぞ!!!
まあ確かに事前に何の取り決めもなく抜け駆けで捕獲しようとしたのは俺の方だ。
しかしそれはこの際棚に上げる!俺は誰よりも自分に甘い男!
あの女子高生野郎……絶対許さねえ……!
スライムなんか育ててる趣味勢のクセして狡猾な嫌がらせをしやがってぇ……!
「大人の陰湿さを思い知らせてやる……ヤマシタ!」
革鎧は暫く逡巡するかのように押し黙ったあと、無言で弓に矢を番えた。
あの女のスマホを射抜く。頼るべきものを失ったこの世界で干からびて行くがいい……!
だがヤマシタが矢の先を女子高生に向ける前に、ホームを揺るがすような音が轟いた。 「うおっなんだこりゃ……汽笛?」
ヤマシタが弓を放り出して剣を抜き、俺とホームとの間に割って入る。
俺はそれを右手で制した。この汽笛は知ってる。つーかこのゲームのプレイヤーならみんな聞き覚えがある。
エリア同士を繋ぐアルフヘイムの交通大動脈、魔法機関車だ。
多くの初心者プレイヤーを危険地帯へと送り出し、そのうちもっと便利な飛空船に取って代わられて埃を被る哀しい乗り物。
ベルゼブブとやり合った後にこんなこと言うのもなんだけど、ホントにここってブレモンの世界なんだな……。 「……ってことは、こっから脱出できるってことか!?」
魔法機関車があり、それを運行してるNPCの組織がある。
そいつはつまり、俺達の放り出されたこの荒野の外に、まともな宿と飯の食える街が存在するってことに他ならない。
俺達のような『漂流者』を回収する出迎え、とも言えるのかもしれない。
もうコカトリスの生焼け肉で食いつながなくてもいいのか!
にわかに立ち上がった希望の存在に、女子高生に対する怒りも忘れて俺は密かに小躍りした。
>「お兄さんも! ありがとうございます!」
と、なんか向こうで石油王とワイキャイしてた女子高生がこっちに向かって手を振った。
チッ……なにがありがとうだこの女……ぜってー晒してやっからな憶えとけよ。
「……ああ、皆無事で良かった」
本音をひた隠して建前で喋るのは社畜の得意技だ。
『瀧川君トイレの時間長くない?』と課長に言われた時も俺はこのスキルでどうにか誤魔化すことに成功した。
まあ翌日も長時間トイレでサボって、そのままこの世界に来たわけだけれども。
再び今度は男子高校生とワイキャイやり出した女子高生を尻目に、俺はとっとと魔法機関車に乗り込むことにした。
「うおお……客室ってこんなんなってたのか」
多くのプレイヤーは魔法機関車に移動コマンドとして以上の価値を見出していない。
俺もその類で、こうしてじっくり内装を見るのは初めてだった。
なんつーか無駄に豪華だな。やっぱプレイヤーって設定的にはすげえ高待遇だったりすんのかね。
「ん、先客か」
客室の奥に一つ、人影があった。
古典的な魔女が来てそうな黒のローブに、対照的な色白の肌、黒髪にオッドアイの少女。
なんか見たことあるなと思ったらこいつ、ブレモンのモンスターじゃねーか。
『魔女術の少女』。けっこーレアでその見た目からコアな人気を誇る、言わば売れ線のモンスターでもある。
思わずヤマシタを呼びそうになったが、少女に敵意はないらしかった。NPCとして配置されてる感じか?
>「えーと……、こんばんは?」
いつの間にか客室に入ってきていた女子高生が魔女術の少女に声を掛ける。
後ろには男子高校生と石油王と……なんかもう一人いるんだけど!
泡吹いて気絶してる女子中学生と思しき少女を、男子高校生が抱きかかえていた。
どこで拾ってきたんだよこんなの……もといた場所に返さなくて大丈夫?なんか変なフラグ立たない?
>「この魔法機関車が、メロの言ってた王さまのお迎え……ってことでいいのかしら?
わたしたち、アルフヘイムは初めてだから。右も左もわからなくて……。
あ、わたしの名前は崇月院なゆた。なゆって呼んでね。
こっちの無愛想なのが赤城真一。こちらの女の人が五穀みのりさん。あとは、えーっと……」
流れるように『崇月院なゆた』とかな乗った女子高生が自分と仲間の紹介をしていく。
なにこいつ。この意味不明な状況で一向に物怖じする様子もねえしどういうメンタルしてんの?
なゆたちゃんコミュ強すぎていっそこえーよ……。 「俺は……『明神』とでも呼んでくれ。本名プレイは好きじゃないんだ」
俺はゲームと現実は切り離したい派なので、オフ会とかでもキャラ名で呼び合うタイプだ。
まあフレンドいないしオフ会とかやったことねーから知らねーけど。
>「とにかく、メロの言ったとおり王さまに会えってことなら、こっちもそのつもりよ。
わたしたちは元の世界へ帰りたいの。あなたたちの王さまなら、きっとその方法も知ってるはず……よね?
いや、絶対知ってるはず。直接的な方法は知らなくとも、そのヒントくらいは知ってるはずよ、絶対!
でないとユーザーフレンドリーじゃないクソゲーってフォーラムでまたアンチに叩かれちゃう!
ってことで――」
……なゆたちゃんグイグイ突っ込むなあ!
ここでそういうこと言うぅ?ほら魔女術の少女めっちゃ真顔じゃんぜってーアンチとかフォーラムとか分かってねーよ!
ちなみにフォーラムでそのスレ立てたの俺だわ!ごめんね!でもクソゲーだと思うよ実際!
暫定NPCを差し置いてなゆたちゃんは場を仕切る!仕切りまくる!男子高校生改め真一君もずこずこ従っている。
わはは真ちゃんオモクソ尻に敷かれてやんの。おめーハエと殴り合ってた威勢はどこ行ったのよ。
あとさっきからすげえ俺の腹がピーゴロ鳴ってるんだけどやっぱコカトリスの肉ってやべーやつなのかな。
>「まずは、道すがら事情を説明してもらえるかしら?それから――あなたのことをなんて呼べばいいのかも、ね」
「異論なしだ。俺が知りたいのはこの魔法機関車がどこに向かってるのかと、
そこでまともなメシと寝床が提供して貰えるか。それから――」
そろそろ限界だったので俺は脂汗まみれの額を拭って聞いた。
「この列車、トイレある?」
【ベルゼブブの捕獲に失敗し、なゆたちゃんを逆恨み。コカトリスの肉に当たってピンチ】 トイレでは
「脱糞権」が認められる
いつでもええんやで 「はぁい〜。ゆくあてもあらへんし、ご一緒させてもらいますわ〜
そちらのお兄さんも、五穀みのりと言います〜よしなにねぇ〜」
魔法列車を前になゆたに状況と魔法列車の話を聞き、同行を承諾。
戦闘のどさくさにお互いの顔もよく見合わせられなかったので、ようやくここで顔合わせして挨拶ができたのだった。
挨拶を交わしているところでなゆたの拳骨が真一の脳天に落ちる
と共に真一の背中に張り付いていた藁人形が破裂した
未だにダメージを肩代わりする効果が続いており、真一の頭には拳固の痛みは伝わらなかったのだが、きっと心には伝わったであろう。
涙目になってお説教するなゆたの後姿を見ながら、クスリと笑みを浮かべてみのりが動く
「うふふ、真ちゃんゆぅんやねえ。
こんな可愛い彼女を泣かしたらあかへんよ〜」
なゆたのお説教が終わった頃合いを見計らいそういいながら真一の頭、拳骨が落ちたあたりを撫でながら、声をかける
藁人形から届いていた声と同じことから、五穀みのりであることが判るだろう。
そしてそっと耳元に口を近づけ
「見させてもらったけど〜真ちゃんとなゆちゃんて結構好対照なパートナーやデッキ構成みたいやん?
一緒に肩を並べて戦う事は出来ても、うちがしよったみたいにフォローや守ってあげる事は難しいやろうからぁ辛いと思うんよ
うちが出来るからと言ってあまり助け過ぎても、なゆちゃん彼女としての立場もあらへんやろうしねぇ
そういうところ、ちゃ〜んと汲んであげるんが、色男ゆうものやよ〜」
腕組みをしてそっぽを向いているなゆたを目線で指示しながら、吐息と共に囁く。
みのりの中で真一への評価は、当初は無鉄砲で理論的な行動ができない、というものであった。
だが、ベルゼブブへの飛び移りなど、もうここまでされると一周回って清々しく感じてしまうほどになっている。
本来ならばなゆたと異口同音の注意を与える所だが、思わずつついてしまいたくなる程度には。
>「さ! お迎えも来たし、このフィールドには用はないわ。早く魔法機関車に乗ろう!」
なゆたが振り向いた時には、すっと位置を外し、ゆったりとした足取りで魔法機関車へと乗り込むのであった。 機関車の中は豪華な造りとなっており、先ほどまでの砂漠然とした暑さとは比べ物にならないほど快適であった。
客車の中には魔女術の少女族がおり、さっそくなゆたが話しかけている。
大勢で話しかけてもまとまらないだろうし、どれも明確な答えが返ってくるとは思っていないからだ。
そも、ブレモンの世界にプレイヤーを引き込んだのが誰なのか?
おそらく王を始め、この魔女術の少女族を含んで誰も知らないだろう
各プレイヤーがこの世界に来た時に、呼び出した者がいるはずだ
遠隔で呼び出したとしても、呼び出した対象を速やかに回収するために待ち構えているはず
こんな風に【迎えが来る】というのは、
『いつくらい』に『あそこらへん』に来ると『思われる』
という、伝承程度の情報を頼りに迎えに来ているのだろうから。
迎えが『この場所』だけとも限らないし、各地にプレイヤーが呼びこまれている可能性もある
そういった事から予想するに、お願い事はされても『元の世界に戻す方法』を知っているとは思えないのだから
とはいえ、身も知らぬ場所に放り出されるよりは、身を落ち着けられるのは有り難い話だ。
であるから、みのりから付け加えてウィズリィに質問する事はなく、軽い自己紹介だけに……いや、一つ注文を加える
「そうそう、とりあえずお水か何かあらしませんかしらねえ?
皆さんこちらにきてから何も飲んだり食べたりしてへんやろし、外は暑かったからねえ」
そういいながら、イシュタルに巻き付いている蔦についている赤い果実を一つむしりとる
大きさはスモモ程度で、力を軽く込めた程度で二つに割れた
「ま〜飲み物来るまで、こちら子にはこれでも上げましょか〜」
ぎゅっと握ると果汁が滴り、メルトの唇を濡らす
イシュタルのグラフィックにフレーバー程度に書き込まれていた蔦と果実だが、このおかげでみのりはこちらの世界にきてからも飢えと乾きに苦しめられることはなかったのだ。
「なゆちゃんも〜良かったら食べたってえねぇ〜
大丈夫〜うちも何個か食べたけど、お腹痛くなってへんからね〜」
もう片割れをなゆたに渡し、ゆっくりと立ち上がりスマホを取り出した
取り出したのは「浄化(ピュリフィケーション)」
勿論使用する先は脂汗で一杯な明神である
「せめてお腹痛いのだけはこれで治るとよろしいな〜」
あの状態になっては出すもの出さなければ収まりがつかないだろうが、腹痛だけでも収まれば、と。
真一は「限界突破(オーバードライブ)」をかけて実際に身体能力が上がっていたのだし、スペルカードが人間には利用できるというのは大きな収穫であった。
それに、ベルゼブブの翅を切り落としたのも、だ。
攻撃をただのダメージではなく、攻撃部位によってダメージ以上に機能に損傷が与えられる
ゲームとは違う戦いの様に、戦い方もまた変えていく必要もあるだろうから。
「さて、色々お話を聞きながら、デッキ編成でもしよかしらねえ」
ゲームとしてのブレイブアンドモンスターであっても戦う敵や目的によってパートナーやデッキ編成は当然である
みのりはそういった時間がなくほぼ固定であはあるとはいえ、実際に戦うとなればまた話は変わってくるであろうから。 断末魔を上げるベルゼブブに照射される赤い光。
その光の発生源は明神
それを視てみのりは思わず手を打った。
どれだけぶりだろうか?
モンスターの捕獲というものを意識したのは
モンスターの捕獲、育成、それぞれのモンスターに合った戦略とそれに伴うデッキ構築。
みのりの短いプレイ時間ではとてもできるものではなく、だからこそそれをお金で補った
捕獲する手間がなく、褒賞モンスター故に育成する必要もなし。
高HP高再生、低機動、低防御力に挑発能力
バインドデッキ専用に設定されたかのようなスケアクロウを入手する為に課金は惜しまなかった
それ以降、新たに捕獲する必要もなく、短いプレイ時間の狭間でタンクとして活躍する
そんなブレモンライフだったので、捕獲に拘りがなく、明神が抜け駆け的に行動に出てもむしろ新鮮さを覚えるのであった。
捕獲が失敗に終わった瞬間は思わず自分のように身悶えしてしまったのだが、すぐに失敗して残念、だけの話ではない事に気が付いた。
高火力のレッドドラゴン
高レベルのスライム
そしてスケアクロウ
この中にあってリビングレザーアーマーはあまりに貧弱であり、これからこのような戦いが続くと考えるのならば戦力増強は急務であろう。
といったみのりの思惑とは裏腹に、なゆたの怒涛のトドメでベルゼブブは消滅。
魔法機関車の到着と共に戦闘は終了となったのであった。
【コピペミス
こちらのレスは>>169の前に着くものです】 五穀 みのり ◆2zOJYh/vk6 
自分の文章力見直した方がいい
他で修行するべき 引退かただの荒らしかはっきりしてくれや
迷惑なんだわ 中一日が基本ペースだったスレで丸三日間放置確定
ラテよ、お前はここでも迷惑をかけ続けるのか? 「……ふうん」
窓から嫌でも見える、地に落ちる巨大な蝿の姿を見ながら、わたしは感心していた。
あの蝿はベルゼブブ……ニヴルヘイムに住まう上級悪魔族の一種だ。
基本的にはニヴルヘイム内にとどまっている彼らだが、時折こちら(アルフヘイム)に現れる事がある。
ここ、『赭色の荒野』にベルゼブブが時折現れている、という噂は聞いていた。
まさか、倒されている姿を目の当たりにするとは思わなかったが……。
あの蝿も、伊達や酔狂で上級悪魔と呼称されているわけではない。
強大な力を持ち君臨するからこそ、そう呼ばれ恐れられるのだ。
それを倒してのける。どうやら、『異邦の魔物使い(ブレイブ)』達の力は本物のようだ。
幾つものスペル、魔物の使役、なにより……。
「……あの光。一瞬しか見えなかったけど、間違いない」
『捕獲(キャプチャー)』の術。
その名の通り対象を捕獲し、自らの思うままに動く手駒とする。極めて危険な術だ。
理論上は、この世界(アルフヘイムに限らず、ニヴルヘイムも、わたしたちのような『境界』の住民も含む)に住まう
ありとあらゆる生物を隷属させることができると言われている。
その危険性から、基本的にはあらゆる魔術書から抹消され、その使い手はこの世界にはいない、とされている。
そもそも、現代ではごく一部の例外を除けば存在すら知られていない。禁術の中の禁術。
何故それをわたしが知っているのか、というのは、少々長い話になるのでまたいずれ語るとして。
「当たり前のように禁術を使う……『王』の言うとおりね。
彼らは良くも悪くもこの世界の存在ではない、か」
その存在をうまく御する事が出来なければ、世界の危機以前にそもそも彼らにこの世界が滅ぼされかねない。
責任は重大だ。警笛を聞きながら、わたしは大きく息を吐いた。 魔法機関車は建物の中に滑り込み、その動きを止める。
からくり仕掛けで扉が開くと、ほどなくしてどやどやと乗り込んでくる者たちがいた。
まず一人。それから遅れてさらに数名。
彼らが……『異邦の魔物使い』。
外見的には、わたし達『魔女術の少女』や『王』達とさほど変わらない、いわゆる『人型』族の特徴を備えているようだ。
見た目的には男性が二人、女性二人……いや、もう一人背負われている少女がいた。合計五人だ。
いずれも見た事もないような意匠の衣服を纏っているが、装飾過多な印象はない。実用性に優れた服装であることが窺える。
魔力的な防御はされていないようだが、恒常的でない魔力付与に関しては分からなかった。
他、レトロスケルトンやスライムなどの魔物も何体かいた。彼らは『捕獲』で使役されているのだろう。
さて、何を話したものだろうか。
内容を吟味しているうちに、第二陣でやってきた面々の先頭に立つ少女が先に話しかけてきた。
>「えーと……、こんばんは?」
>「この魔法機関車が、メロの言ってた王さまのお迎え……ってことでいいのかしら?
わたしたち、アルフヘイムは初めてだから。右も左もわからなくて……。
あ、わたしの名前は崇月院なゆた。なゆって呼んでね。
こっちの無愛想なのが赤城真一。こちらの女の人が五穀みのりさん。あとは、えーっと……」
「……」
言葉が『石礫連弾(ストーンバレット:ガトリング)』のように撃ちだされてくる。
まずい。正直苦手なタイプだ。普段なら黙って聞き手に回るのだが、この局面ではそうもいかない。
「……こんばんは。メロという子は知らないけれど……ええ、この乗り物が『王』の迎えよ」
王の遣い、と一口に言ってもその数は軽く4ケタは下らない。いくらわたしでもその全員を把握してはいないのだ。
……あるいは、『王』自身なら全員の名と顔を一致させているのかもしれないが。
「ナユに、シンイチ、それにミノリね。それから……」
意識がない様子の少女はひとまず置いておき、最初にこの車両に入ってきた青年を見る。
>「俺は……『明神』とでも呼んでくれ。本名プレイは好きじゃないんだ」
「……ミョウジン。分かったわ」
自ら本名でないと名乗るというのも怪しいが、現状ではそこまで突っ込むべきではないだろう。
あとから調べる方法はいくらでもあるのだから。彼はミョウジン。今はそれがわかればいい。 と、安心したのもつかの間。ナユはさらに言葉を連ねてくる。
>「とにかく、メロの言ったとおり王さまに会えってことなら、こっちもそのつもりよ。
わたしたちは元の世界へ帰りたいの。あなたたちの王さまなら、きっとその方法も知ってるはず……よね?
いや、絶対知ってるはず。直接的な方法は知らなくとも、そのヒントくらいは知ってるはずよ、絶対!
でないとユーザーフレンドリーじゃないクソゲーってフォーラムでまたアンチに叩かれちゃう!
「……」
思わず瞬きを数度する。傍目にはきょとんとしている、という風に見えるかもしれない。
『王』から、『異邦の魔物使い』は奇妙な言葉を話すかもしれない、と聞いてはいたが。
「(これほどまでなんて……最後の一文なんて文法以外何もわからないのだけど)」
こほん、と咳払いを一つ。その間に、ナユはシンイチと気絶した少女の席割を決め、さらにこちらに話しかけてきた。
>「まずは、道すがら事情を説明してもらえるかしら?それから――あなたのことをなんて呼べばいいのかも、ね」
さらに、ミョウジンも続ける。
>「異論なしだ。俺が知りたいのはこの魔法機関車がどこに向かってるのかと、
そこでまともなメシと寝床が提供して貰えるか。それから――」
>「この列車、トイレある?」
次いで、ミノリも。
>「そうそう、とりあえずお水か何かあらしませんかしらねえ?
皆さんこちらにきてから何も飲んだり食べたりしてへんやろし、外は暑かったからねえ」
「……」
順を追って対処することにした。
まずはミョウジンの方を見る。彼の様子は急を要しそうだ。
「向かう先は王都よ。王都キングヒル……偉大なる『王』のおひざ元ね。
食事と寝床は提供されるはずよ。贅を尽くした、とまではいかないけれど料理人は全力を尽くすはず。
個人の嗜好に合うかまでは保証しないけど。あと、トイレはあっち」
機関車の最後尾の方を指す。
さすがに、乗り込むときにその辺りの事は聞いている……私は比較的我慢が出来る方なので、今のところ使ってはいないが。
ちなみに、出発前に軽く覗いた範囲では清潔でよい具合のトイレだった。
ミョウジンがそちらに向かうのを見届けてから、次はミノリの方を見る。
「水と軽食程度なら用意があるわ。必要があれば、あれに話しかければ『運転手』に伝わって、持ってきてくれるはず。
王都までは少し長い道のりになるから、呑まず食わずでいるならせめて喉を湿らすぐらいはした方がいいでしょうね」
あれ、と言いながら指すのは伝声管だ。
あらかじめ敷設した範囲であれば魔法抜きで声を遠隔で届けられる、驚異の技術である。
まったく、この魔法機関車に詰め込まれた技術の粋には驚かされるばかりだ。
最後にナユを見て、言う。
「そうね。話せば長くなる……と言いたいところだけど、わたしもそのすべてを把握しているわけじゃない。
わたしにわかる範囲の話でよければ、ミョウジンがトイレから戻ってきてから話すわ。
詳しい話は、『王』から話していただけることになっているから、それを待って頂戴。
……あと、ユーザーフレンドリーとかクソゲーとかは……恥ずかしながら、よく分からない。ごめんなさい」 最後に、小さく咳払いをしてから
「自己紹介が遅れたわね。
私はウィズリィ。忘却の森に住まう魔女術の少女の一人、『森の魔女』ウィズリィよ。
……まあ、ウィズリィと呼んでくれればいいわ」
精一杯の笑顔を作って、言う。
「よろしくね、『異邦の魔物使い(ブレイブ)』の皆さん」
【ウィズリィ:邂逅。そして自己紹介】
【魔法機関車:停車中】
【トイレ:清潔】 >>178
おせーよダボ
いい加減にしろよクズ以下 まずTRPGは鯖負担になってると自覚しなさい
何か反論できるソースがあるなら挙げてみなさい
できないなら別の板に引っ越して削除依頼お願いします ID:rsFWoenJ
0718 名無しさん@ゴーゴーゴーゴー! 2017/10/16 20:05:25
TRPGは出ていけとか寝言抜かす自治厨は創発の原住民か? 
板全体がきちんとSSや小説書いたり批評したりしてんならともかく 
ゴミみてえな埋め立てスレと速攻スレ主のいなくなる立て逃げスレしかない癖に一丁前のこと抜かしやがって 
TRPGのがよっぽどまともな使い方してるわ 自治スレ見てきたけどその議論見つからなかった
どこでやってんの?
荒しまがいな嫌がらせではなく、議論の場に誘導してや >>184
え?わたし?
わたしの髪の色は、ごらんの通りのナチュラルカラー!黒だよ黒。
たまには気分を変えて、校則に違反しない程度にブリーチしてみようかなーとか。
カラー変えてみようかなー、なーんて考えちゃったりもするんだけど。
でもねぇ……。
どこかの誰かさんが、黒髪がいいって言うもんですから〜?
わたしとしては、そのリクエストに応えましょう!みたいな……ね。
ってことで!答えになったかな? 唇をなぞる液体の感触
それは、乾いた砂漠で過ごした為に罅割れかけていたメルトの唇に潤いを与える
水分を求める身体は、無意識にもかかわらずその液体を求め……桃色の唇は小さく開き、流れ込んできたそれをゆっくりと嚥下する
「はい……これは……桃の天然の……」
そして、その行動に反応したメルトの意識が覚醒し、目を開く――すると、その眼前には【見慣れない見知った光景】が広がっていた
まるで王宮の様な豪奢な意匠が施された、けれど王宮とは思えない細長く狭い形状
窓から入り込む光を内部で屈折させ幾何学的で美しい模様を描く、神秘的な灯り
それを目にしたメルトは、寝ぼけ眼を擦りながら無意識に口を開く
「……知ってる天井です……運営は列車移動のスキップの実装を――――って、ここどこですか!?」
そして叫ぶ。己が目にしている光景が何百回と見た魔法機関車の室内グラフィックであり、尚且つ
それが画面越しではない肉眼で捕えた物である事を自覚した瞬間、メルトは勢いよく上体を起こそうとし
「ちょっ、うあっ、そして痛いですっ!?」
枕にしていたものが柔らかな人間の腿であった為に、耐性を崩し床へと転がり落ちる事となった
起きて早々に騒々しいメルトであったが、それでもなんとか起き上がり、ぶつけた額ごと片目を隠している前髪を抑えつつ、キョロキョロと周囲を見渡してみる
するとそこには……メルト自身を除いて5人もの人間が存在していた
学ランを羽織った、ウルフカットの高校生らしき少年
先までメルトに膝を貸してくれていたと思わしき、芯の強そうな瞳が印象的なサイドテールの少女
芯が傷んでそうな皺の多いスーツが印象的な、今まさにどこかへ向かわんとしている中……青年
落ち着いた雰囲気。そしてツナギとタンクトップと長靴という、都心では見かけない衣装に目が行ってしまう少女
オッドアイと長い髪が印象的な――――ゲームプレイ中に何度も目撃したモンスターに酷似した少女
見知ったバーチャル世界に酷似した見知らぬ世界で、見知らぬ人物達と遭遇したメルトは、一瞬で身体を石像の如く硬直させると
暫くしてからそのままジリジリと動き、一同と一つ分離れた座席へ移動し、身を隠してしまう
……仕方がない、といえばそうだろう
なにせ、このメルトという少女は小学校からの登校拒否児童なのである
対面での会話や画面越しのチャットであればまだしも、いきなり生身の人間の前に晒されて、まともな反応を期待する方が酷な話だ
だがそれでも、混乱にかまけて状況を無視する程に、メルトは純粋ではない
何とか情報を集めるべく聞き耳を立てて見れば
>「この列車、トイレある?」
>「さて、色々お話を聞きながら、デッキ編成でもしよかしらねえ」
>「そうね。話せば長くなる……と言いたいところだけど、わたしもそのすべてを把握しているわけじゃない。
わたしにわかる範囲の話でよければ、ミョウジンがトイレから戻ってきてから話すわ。
詳しい話は、『王』から話していただけることになっているから、それを待って頂戴。
……あと、ユーザーフレンドリーとかクソゲーとかは……恥ずかしながら、よく分からない。ごめんなさい」
>「自己紹介が遅れたわね。
> 私はウィズリィ。忘却の森に住まう魔女術の少女の一人、『森の魔女』ウィズリィよ。
> ……まあ、ウィズリィと呼んでくれればいいわ」
トイレはどうでもいいとして。大事な事なので二回言うが、トイレはどうでもいいとして
聞こえて来たのは、まるでゲームで遊んでいるプレイヤーとイベントを進行するNPCの様な会話
……それだけを聞いて、そして見れば、コスプレ会場か運営の企画したリアイベかとでも思いかねない状況ではあるのだが、砂漠をベルゼブブに追われ続けたメルト自身のリアル過ぎる体験がその可能性を否定する
そうなると、現実にしては悪夢の様ではあるが、今メルトの置かれている状況は……
(考えたくありませんが、あんな蠅の化物が地球に居る訳がありません。そうすると、多分というか、やはりここは……地球ではないんでしょうか) 困惑しながらも認めざるを得ない可能性
というよりも、メルト自身の脳に異常が有る訳でないのならば、現状それ以外に説明のしようがない
となれば、眼前の少年少女達は……メルト自身が倒れた時に周囲に人がいなかった以上、恐らくは、【駅】でメルトが遠目に見たベルゼブブと戦闘していた者達であるのだろう
そして、自身が気絶していた以上、ここまで運んできたのも眼前の彼等にちがいない
混乱する頭を無理やりに働かせ、何とか思考をそこまで持ってきたメルトは、
「あ、あのっ!!……ど、どうも。私はPL名【メタルしめじ】です。、ええと、皆様が私をここまで連れてきてくださったのでしょうか……?
もしそうなら、ありがとうございます……それで……《私は新参でとても弱いので》この訳が判らない状況に着いていけそうにありません
なので……なので、寄生みたいで申し訳ないのですが、暫くの間皆様に同行させて頂きたいのですが……」
自己紹介やら懇願やらの混じった言葉を吐き出して、体を椅子に隠したまま頭を下げた
……勿論、これは本当に恐怖に怯えきっての言動ではない。いや、恐怖もあるにはあるが、今のメルトの思考の半分以上を占めるのは【眼前の人物たちをどう利用し、生き残るか】というもの
もしも、現在自分が置かれている環境が【ブレイブ&モンスターズ!】に酷似した世界であるというのであれば、自分が気絶する前に目撃した「あの」レトロスケルトンをパートナーに据えた、
アイテム増殖バグ用のゴミ編成で生き残れる筈がないと。そう考えての打算的行為であった
最も――初心者であると自称したにも関わらず、会話に【新参】【寄生】といった初心者が使用しないワードが会話の所々に入っている辺り、
詰めが甘いというか、対人コミュ力が圧倒的に不足しているメルトであった
【明神がトイレに行っている間に、起き抜けに初心者を装って寄生依頼】 >>ウィズリィさん
【質問なんですが、『運転手』についての概要って何か考えてますか?
それともこちらで勝手に設定しちゃってもいいんでしょうか?】 >真一君
【特に決めていませんー。好きに設定しちゃってください!】 便乗!
>>真ちゃん
【妹さんのお名前を教えてください!】 >>189
【了解です! では、こちらで考えた設定を使わせて貰いますね】
>>190
【名前は『雪奈(ゆきな)』で、年齢は真一たちの一つ下って感じでお願いします!】 ハイパーウンコ支援してるアホがいるスレはここか?
俺が代わりにウンコしたるわ
おう 真一はグラドの背の上に乗ったまま、ゆっくりと荒野へ降下する。
死闘で火照った体を冷ます夜風の感触が、妙に心地良く思えた。
「あれは、魔法機関車か……?」
そして、戦いの終わりを告げるゴングのように鳴り響く警笛の方に目をくれると、遥か彼方まで続くレールの上を汽車が走って来ていた。
一昔前の蒸気機関車を連想させる、レトロな外観でありながら、荘厳さも併せ持った豪奢な装飾。
あれは、ブレモンのプレイヤーなら誰もが知っている乗り物――魔法機関車に他ならなかった。
汽車が疾駆する様を眺めつつ、地上に足を着けたグラドの背から、真一はひょいと飛び降りる。
それから真一が優しくグラドの頭を撫でてやると、グラドは嬉しそうに鼻先を擦り付けてきた。
「お前にも、随分無茶させちまったな。……ありがとよ、相棒。あとはゆっくり休んでてくれ」
真一はスマホを操作して〈召喚解除(アンサモン)〉のボタンをタップする。
すると、召喚時と同様に眩い光がスマホから放たれ、グラドはその中に消えて行った。
ゲーム内の仕様と同じなら、このように休ませておけば時間経過と共にグラドの体力も回復する筈であった。
>「……真ちゃん」
真一とグラドがそんなやり取りをしていると、こちらへ歩いてくるなゆたの姿が目に入った。
激しく肩を持ち上げているその様子を見れば、なゆたが激怒しているのは明らかだった。
「――痛っ!!」
そして、なゆたが振り下ろしたゲンコツを頭に食らい、真一は思わず声を上げる。
――いや、実際には藁人形がダメージを肩代わりしてくれたおかげで痛みは感じなかったのだが、条件反射でそう叫んだ。
>「なんなのよ、今の戦いは!? どこの世界にパートナーモンスターと一緒に戦うマスターがいるのよ!
あの炎精王の剣も! 限界突破も! モンスター用のスペルカードなんだから!
あんたいつからモンスターになったのよ!? わたしはモンスターを幼馴染に持った覚えはないっ!」
>「まだ、ここがどんな場所なのかもわかんないんだよ!? やられて、ゲームオーバーになるだけならいい。
ゲーム続行不可になって、この世界から元の世界に戻れるなら、わたしだってすぐにそうするよ。
でも、そうなるとは限らない! モンスターに傷つけられたら、本当に怪我をして! 死んじゃうかもしれないんだよ!?
そうなったらどうするの!?」
なゆたは矢継ぎ早にお小言を繰り出すが、そう言われると真一にも言い返したいことはあった。
何故真一があんな戦い方をしたのかと言えば――それは、グラドを護るためだ。
まだレベルの低いグラドが、あの蝿の群れと単騎で打ち合ったのならば、恐らくなゆたがコンボを決める時間も稼げなかっただろう。
自分のプレイヤーとしての未熟さを理解しているからこそ、真一はグラドと共に戦い、力を合わせることを選んだのだ。
実際それは功を奏した部分もあると思っている。
真一はそう主張しようと口を開きかけたが、そこでなゆたの瞳に涙が滲むのを見て、思わず「うっ」と息を詰まらせる。 >「……心配、させないでよ……。あんたにもしものことがあったら、わたし……。
あんたの家族に、なんて説明すればいいのよ……!?」
>「テンションが上がっちゃったのはわかるけど、もう二度とあんな無茶なことはしないでね!
じゃないとぉ〜……真ちゃんの好きなハンバーグ、もう作ってあげないから!
わかった!? 『はい』は!?」
女に泣かれると弱いのは、あらゆる男の性というやつだ。
真一は気不味そうに目を逸らしながら、右手の人差し指で頬を掻いた。
「……まぁ、なんだ。お前に心配させちまったのは悪かったよ。
もうあんな無茶はしない――とは言えねーけど、お前と一緒に元の世界に帰るまで、絶対に死なないってのは約束する。
……その、お前が作ったハンバーグを食えなくなっちまうのも困るしな」
真一はそう言いながら、両目に涙を浮かべるなゆたの頭を、右手でポンポン叩く。
しかし、その後になゆたが小声でぼそぼそと何かを言っていたのは、ラノベのような難聴スキルを発動して聞き逃した。
>「真ちゃん、この子も連れて行こう。ここに置き去りにはできないよ」
――と、二人がそんな痴話喧嘩を繰り広げたあと、不意にプラットホームで倒れている人影を見付けた。
どうやら中学生くらいの子供のようであり、その服装や隣に付き添っているパートナーらしきモンスターを見れば、恐らくは彼女も真一たちと同じく、現実世界から飛ばされてきた人間なのであろう。
「……息はあるし、気絶してるだけみたいだな。勿論ここに置いていくわけにもいかねーし、一緒に連れてくとするか」
真一は倒れている少女の下に手を差し入れて持ち上げる。
見るからに小柄な少女ではあるが、こうして抱き抱えてみると、驚くほど体重が軽いのが分かった。
>「うふふ、真ちゃんゆぅんやねえ。
こんな可愛い彼女を泣かしたらあかへんよ〜」
>「見させてもらったけど〜真ちゃんとなゆちゃんて結構好対照なパートナーやデッキ構成みたいやん?
一緒に肩を並べて戦う事は出来ても、うちがしよったみたいにフォローや守ってあげる事は難しいやろうからぁ辛いと思うんよ
うちが出来るからと言ってあまり助け過ぎても、なゆちゃん彼女としての立場もあらへんやろうしねぇ
そういうところ、ちゃ〜んと汲んであげるんが、色男ゆうものやよ〜」
そんな一幕の後、真一となゆたが魔法機関車の方に足を進めると、誰かが二人に話し掛けて来た。
彼女の声を聞いて、真一はすぐにピンと来る。
先程のベルゼブブとの戦闘の際、イシュタルという名のスケアクロウを従えて、自分たちをサポートしてくれたプレイヤーで間違いないだろう。
「ん、その声は……アンタがスケアクロウのマスターか!
さっきは助かったぜ、ありがとな! ……って、いや、俺とあいつは彼氏とか彼女とか、そういうのではないから!」
挨拶もそこそこにして、何やら好き勝手なことを言ってくるみのりに対し、真一は慌てて手を振って否定する。
そんな様子を見て、みのりは相変わらずニヤニヤと笑みを携えたまま、一足先に魔法機関車へと乗り込んでいってしまった。 >「えーと……、こんばんは?」
>「……こんばんは。メロという子は知らないけれど……ええ、この乗り物が『王』の迎えよ」
そんなこんなでようやく魔法機関車に乗り込むと、中には既に先客らしき少女が居た。
しかしながら、彼女はこれまで出会って来た何人かとは違い、現実世界の人間ではないようだった。
魔女さながらのローブを纏い、黒髪とオッドアイの双眸を持つその姿は、真一もゲームの中で見たことがある。
あれは――“魔女術の少女(ガール・ウィッチクラフティ)”というブレモンのモンスターだ。
その愛らしい容貌などで人気があり、真一がブレモンを通じて話すようになったクラスメイトの小林君(キモオタ)も、パートナーとして愛用していた記憶がある。
>「ナユに、シンイチ、それにミノリね。それから……」
>「俺は……『明神』とでも呼んでくれ。本名プレイは好きじゃないんだ」
「なゆが言ってた通り、俺は赤城真一だ。……そっちのアンタも! さっき俺たちを援護してくれたリーマンだろ?
あの時はおかげで助かったぜ。これからよろしくな!」
各々が自己紹介を始めたのに割って入りつつ、ベルゼブブ戦で共闘したリーマンにも声を掛ける。
あの戦いの後、勝手に先走ってベルゼブブを捕獲しようとしていた点と、この世界で何故か本名を隠すのは少しだけ引っ掛かったが、あまり細かいことを気にし続ける性格でもない。
真一は快活な笑顔を見せながら、明神に向けて親指を立てた。
>「向かう先は王都よ。王都キングヒル……偉大なる『王』のおひざ元ね。
食事と寝床は提供されるはずよ。贅を尽くした、とまではいかないけれど料理人は全力を尽くすはず。
個人の嗜好に合うかまでは保証しないけど。あと、トイレはあっち」
軽く挨拶を済ませると、明神はトイレの方へ飛んで行ってしまったが、魔女術の少女との問答は続く。
王都キングヒル――とは、このアルフヘイムの覇権国家である“アルメリア王国”の都だ。
ゲーム内ではプレイヤー達が最初期に訪れるステージだが、ここが赭色の荒野ならば、地理的にはアルメリアの最果てだ。
この魔法機関車に乗っても、王都に着くまでにしばらく掛かりそうだということは理解した。 >「まずは、道すがら事情を説明してもらえるかしら?それから――あなたのことをなんて呼べばいいのかも、ね」
>「そうね。話せば長くなる……と言いたいところだけど、わたしもそのすべてを把握しているわけじゃない。
わたしにわかる範囲の話でよければ、ミョウジンがトイレから戻ってきてから話すわ。
詳しい話は、『王』から話していただけることになっているから、それを待って頂戴。
……あと、ユーザーフレンドリーとかクソゲーとかは……恥ずかしながら、よく分からない。ごめんなさい」
なゆたの相変わらずなマシンガンクエスチョンで、相手も若干たじろいでいたが、聞きたいことは大体言ってくれた。
しかし、どうやらこの案内者も、スノウフェアリーのメロと同じくそこまで深い事情を知っているわけではないらしい。
結局のところ、真一たちがここへ連れて来られた理由も、元の世界に帰るための手段も、王都へ行かないことには分からないようだった。
>「ちょっ、うあっ、そして痛いですっ!?」
そんな最中、真一が魔法機関車まで運び、なゆたが膝の上で寝かせていた少女が目を覚まして座席から転げ落ちた。
真一となゆたが「あっ」と声を上げる間もなく、少女はそそくさと隣の席に身を隠してしまう。
>「あ、あのっ!!……ど、どうも。私はPL名【メタルしめじ】です。、ええと、皆様が私をここまで連れてきてくださったのでしょうか……?
もしそうなら、ありがとうございます……それで……《私は新参でとても弱いので》この訳が判らない状況に着いていけそうにありません
なので……なので、寄生みたいで申し訳ないのですが、暫くの間皆様に同行させて頂きたいのですが……」
そして、一通りの会話が終わったのを見計らい、少女は再び姿を表した。
「言われなくても、お前みたいな子供をこんな場所に置いてくつもりなんてねーよ。
お前は必ず、俺たちが元の世界に連れ帰ってやるから心配すんな! これからよろしく頼むぜ、しめ子!」
即興で変なニックネームを付けて呼ぶ辺りは真一らしいが、ともかくこれで顔合わせは済んだ。
五人の人間と、一人のモンスター。総勢六人の奇妙なパーティではあるものの、右も左も分からぬ異世界を生き延びるためには、この面子で力を合わせなければならない。
真一は気を引き締めながら、あらためて一人ひとりの顔に目を落とす。
『……皆様、ご挨拶は済みましたでしょうカ?
初めましテ。ワタシはこの汽車の車掌兼運転士を務めさせて頂く“ボノ”と申しまス。
ご覧の通り人形の身ではありますが、必ずや皆様を王都までお連れしますので、今後ともよろしくお願い致しまス』
――その時、車両の前の方から、一体の人形がこちらへと歩いて来た。
と言っても、それはただの人形ではなく“ブリキの兵隊”というブレモンのモンスターだ。
戦闘力は低いが、特定エリアにしか出現しないため地味にレア度は高く、滑稽な可愛げのある容貌も相まって、マニアの間では奇妙な人気がある。
「――よし、それじゃあ早速出発しようか! 目指すは王都だ。こんなところで、いつまでも立ち止まってられないぜ!」
真一の号令に従い、ボノは一礼するとさっと踵を返して、車両の先頭へと消えて行った。
そして、魔法機関車は再び夜空に向けて、一際甲高い警笛を放つ。
車輪はカラカラと音を鳴らしながら回転し、ゆっくりと線路を前進し始める。
かくして、少年たちはこの異世界で出会い、長い旅路の第一歩を踏み出した。
――これは後に“勇者(ブレイブ)”と呼ばれる彼らと、その守護者が紡ぎ出す、勇気と友情の物語のプロローグであった。
第一章「旅立ちの夜」
完
【これにて、第一章完結です!
ひとまずお疲れ様でした。まだまだ先は長くなると思いますが、今後ともお付き合いして貰えると嬉しいです。
この後に次章の導入を投下する予定なので、もう少々お待ち下さい】 【なゆたPLでございます。
第一章が終わり、これからというところに水を差すようで、大変心苦しいのですが。
このたびは私の軽率な行動で、スレの皆様に多大なるご迷惑をおかけしてしまいました。
慎んでお詫びをさせて頂きます。
私たちが折角みんなで楽しいことをしているのに、くだらない茶々を入れて妨害する行為。
それがどうしても、どうしても許せなくて、衝動的にこんな愚かな行為に走ってしまいました。
これが許される行為であるとはもちろん思っておりませんし、我ながらなんて短慮だったのだろうと思います。
完全に無視するか、もしくはきちんと抗議するかすればよかったのですが、荒らしにそんなことをしても無駄と思い。
目には目を、の精神でこちらも荒らし行為に踏み切ってしまいました。
本当に、スレの皆さまにはお詫びの言葉もありません。申し訳ありません。
このような行為をする人間がいては、皆様も楽しく遊ぶことはできないと思います。
何より、私自身自らのやった行為が情けなく、皆様に顔向けすることが出来ません。
幸い、たくさんの方が参加されていますので、私がいなくなってもスレに影響はないかと思います。
ですので、大変残念ですが、私はこれにておいとまをさせて頂こうと思います。
なゆたについては、幸い章の区切りということで、勝手ながらGM様預かりということにして頂き、
何らかの理由によってキングヒルに残留ということにして頂ければ大変ありがたいです。
本当に、申し訳ございませんでした。
ブレイブ&モンスターズの世界が今後も盛り上がることを祈念致しております。
なゆたPL 拝】 >>198
【……えっ!?
いきなり何を言ってるのか意味が分からなかったので、他スレでIDを探して理解しました。
まぁ、本音言うとなゆたさんが相手と同レベルのことをしてるのはショックでしたが、
気持ちはよく分かりますし、ムカついていたのは私も同じです。
ただ、正直向こうがどうなろうと、別にどうでもいいというか……わざわざ荒らしに行くのって無駄な労力だと思うんですよね。
そんなことに時間を割くよりも、こっちはこっちで楽しむことに全力捧げた方が良いんじゃないかなーというのが私の考えでした。
ともあれ、あなたが誰に対して謝罪したいのか分からないのですが、
私や他の参加者さんに謝りたいというのであれば、今後もスレに残って頂けるのが一番効果あると思います。
もしもブレモンのスレ自体に飽きたなら仕方ないのですけど、
そうでないなら是非ともヒロインを続けて欲しいのですが、如何でしょうか?】
そこはいったん辞表受理して別キャラででもいつでも帰ってきて下さい、が正解じゃないか
周囲は気にしてないとしても本人が気まずい思いをするからな >>200
【勿論なゆたさん自身の気まずさとか、周囲から批判を受けるかもしれないということは理解してます。
しかし、そういった諸々を分かった上で、それでも私はなゆたさんの擁護側に回るので、
「崇月院なゆた」に残って欲しいという意思を表明したつもりでした。
ちょっと今から仕事なので、しばらく返信はできないかと思いますが、
こちらの考えは分かって貰えると嬉しいです】 【状況把握
このスレの参加者ではないけど、関係者としてコメント
こちらの気持ちとしては一切不問、真一君に同意
ですが、それでは収まらないでしょうから、罰として向こう一ヶ月参加スレ以外のあらゆるスレを閲覧しない(ウォチ板も)
その上で現在参加中のスレに参加継続する
苦しいとは思いますが罰として受け入れてください
そして責めるも謝罪も同様に蒸し返さず蒸し返されても目に写さない、触れないこと
それで決着とし受け入れてもらえれば有難い
一ファンの読者より】 【他のスレのことは知ったこっちゃないし調べるつもりもないのでここで知った情報だけでコメントします。
私個人としては、このままなゆたちゃんが抜けて続けるより同僚として一緒にプレイ出来たほうが百倍楽しいと思うんで残って欲しいですね。
明神とモンデンキントの因縁も未消化のままじゃ滅茶苦茶勿体無いと思いますし。
あとはまぁ、これ言っていいのか分かんないんですけど、嫌な思いをしたのは私じゃないんで明日には一連のゴタゴタ全部忘れる予定です。
以上の理由から合理的帰結としてなゆたちゃん残留に一票。】 >>202
あーあ、お前みたいな厨がいるからだよ
なゆたは真面目に見切りをつけて抜けておいた方がいいよ
陰湿なのに粘着される もはや名無しで擁護してるのが泣けるわ。
終わりだよ、ハイパーウンコさん。 【全力で調査完了!
つまり長期間TRPGスレ全般に粘着してた例の荒らしの正体が判明して、その荒らしが謝罪も無く逃走!
更には新スレを立てて知らぬ存ぜぬで乗り切ろうとしたから深夜の勢いでついムシャクシャしてやった!
今は後悔もしてるし反省してるという訳ですね!
うん!賞賛とか肯定とかをするつもりはさらっさらありませんが
ぶっちゃけあの荒らしは鬱陶しかったから理解は出来ますな!
とりあえず、今の時点で嫌な思いをしたのは例の荒らしだけなので気にせず参加継続しましょうよ!
というか、ソシャゲ玄人のなゆたさんが居ないと私は色々困りますので!
謝罪というなら是非参加継続をしてくださいお願いします!】 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています