アンパンマン強さ議論スレ Part2
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が、わしは確かにビイルゼバッブだと信じてゐるて。」 彼は話すのを止めて、恰も其話の効果を観察するやうに、前よりも一層、注意深くわしを見始めた。 わしは彼がクラリモンドの名を口にした時に思はず躍り立たずには居られなかつた。 そして彼女の死の知らせは、わしの見た其夜の景色と符合する為に、わしの胸を畏怖と懊悩とに満たしたのである。 其畏怖と懊悩とはわしが出来る限り力を尽したにも拘らず、わしの顔に現はれずにはゐなかつた。 セラピオンは心配さうな、厳格な眸でぢつとわしを見たが、やがて云ふには「わしはお前に忠告せねばならぬて。 クラリモンドの墓は、三重の封印でもせねばなるまい。 人の云ふのが誠なら、あの女の死ぬのは始めてゞは無いさうな。 かう云つて僧院長セラピオンは静かに戸口へ歩んで行つた。 わしは全く健康も恢復すれば、又日頃の職務に服する事も出来る様になつた。 がクラリモンドの記憶と老年の僧院長の語とは一刻もわしを離れない。 けれども格別、彼の気味の悪い予言を実現するやうな大事件も起らなかつたので、わしは彼の掛念もわしの恐怖も、誇張されたのに過ぎないと信じるやうになつた。 それはわしが眠るか眠らないのに、寝床の帳の輪が、鋭い音を立てゝ、其輪のかゝつてゐる棒の上をすべつたので、わしは帳が開いたなとかう思つた。 そこで素早く肘をついて起き上ると、わしの前に真直に立つてゐる女の影がある。 彼女は手に、墓の中に置くやうな形をした小さなランプを持つてゐる。 その光に霑された彼女の指は、薔薇色にすきとほつて、それが亦次第に不透明な、牛乳のやうに白い、裸身の腕に溶けこんでゐる。 彼女の着てゐるのは、末期の床の上に横はつてゐた時に彼女を包んでゐた、リンネルの経帷子である。 彼女はこの様にみすぼらしい衣服を纏ふのを恥ぢるやうに、其リンネルの褶に胸をかくさうとしたものの、彼女の小さな手は其役に立たなかつた。 彼女は其経帷子の色がランプの青ざめた光の中で彼女の肉の色と一つになる程白いのである。 彼女の肉体のあらゆる輪廓を現すやうな、しなやかな、織物に包まれた彼女の姿は、生きた女と云ふよりも寧ろ美しい古の浴みする女の大理石像のやうに眺められる。 が、死んでゐるにせよ、生きてゐるにせよ、石像にせよ女にせよ、影にせよ肉体にせよ、彼女の美しさは依然として美しい。 唯違ふのは彼女の眼の緑色の光が、前よりも輝かないのと嘗ては燃えたつやうな真紅の唇が、今は其頬の色のやうな、微かなやさしい薔薇色に染んでゐるとの二つである。 わしが前に気の附いた、髪にさしてある小さな青い花も今は見る影もなく枯れ凋んで、殆どのこらず葉を振ひつくしてゐるが、之とても彼女の愛らしさを妨げる事はない―― 彼女は、此事の性質が不思議なのにも拘らず、又わしの室へはひつて来た様子が奇怪なのにも関らず、暫くはわしが何等の恐怖をも感じなかつた程、愛らしく見えたのである。 彼女はランプを卓の上へのせて、わしの寝床の後に坐つた。 それからわしの上に身をかゞめて、銀のやうに冴えてゐる、しかも天鵞絨のやうにやさしく柔かい声で、かう云つた。 其声は彼女を除いては誰の唇からも聞く事の出来ぬやうな声である。 ロミュアル、私が貴方の事を忘れてしまつたのだと思つたでせう。 でも私は遠い処から来たのよ、それはずうつと遠い処なの。 唯、空間と影ばかりある処なの、大きな路も小さな路もない処でね。 まあ、此処へ来る途中で、何と云ふ悲しい顔や、恐しい物を見たのでせう。 唯意志の力だけで又此大地の上へ帰つて来て、体を見附けて其中へはひる迄に、私の霊魂は何と云ふ苦しい目に遭つたでせう。 私を掩つて置いた重い石の板を擡げる迄に、何と云ふ苦労をしなければならなかつたでせう。 このスレッドは1000を超えました。
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