アンパンマン強さ議論スレ Part2

**格無しさん** · 2017/11/07(火) 18:09:08.49

前スレ
アンパンマン強さ議論スレ
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**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:42:24.87

屍体は長々と横になつて、手を胸の上に合せてゐる、眩ゆいやうな白いリンネルの褻衣に掩はれたのも、掛衣の陰鬱な紫と、著しい対照を作つて、しかも地合のしなやかさが、彼女の肉体のやさしい形を何一つ隠す所もなく、見る人の眼を、美しい輪廓の曲線に従はしめる――

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:42:40.75

白鳥の首の如くになよやかな――

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:42:56.66

其輪廓の持つてゐる豊麗な、優しさは「死」

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:43:12.52

すらも奪ふ事が出来なかつたのである。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:43:28.36

彼女はさながら或巧妙な彫刻家が女王の墳墓の上に据ゑる為に造り上げた雪花石膏の像か、或は又恐らくは、眠つてゐる少女の上に声もない雪が一点の汚れもない掛衣を織りでもしたかの如く思はれた。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:43:44.11

わしはもう、力めて祈祷の態度を支へてゐる事が出来なくなつた。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:44:00.03

閨房の空気はわしを酔はせ、半ば凋んだ薔薇の花の熱を病んだやうな匂はわしの頭脳に滲み込んだ。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:44:15.94

わしは休みなく彼方此方と歩きながら、歩を転ずる毎に、屍体をのせた寝床の前に佇んで、其透いて見えさうな経帷子の下に、横はつてゐる優しい屍の事を、何と云ふ事もなく想ひはじめた、わしの頭脳には、熱した空想が徂徠して来たのである。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:44:31.81

わしは彼女が恐らく、本当に死んだのではあるまいと思つた。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:44:47.66

唯わしを此城へ呼び寄せて、其恋を打明ける為に、わざと死を装つてゐるのだと思つた。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:45:03.51

そしてわしは、同時に彼女の足が、白い掛衣の下で動いて、少しく捲いてある経帷子の長い真直な線を乱したとさへ思つた。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:45:19.24

それからわしはかう自問した。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:45:35.08

「これが本当にクラリモンドであらうか、之が彼女だと云ふ何んな証拠があるだらうか。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:45:50.93

あの黒人の扈従は外の貴夫人に傭はれたのではないだらうか。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:46:06.79

この様に独りで苦しがつてゐては、屹度わしは気が狂ふのに相違ない。」

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:46:22.65

けれども、わしの心臓ははげしく動悸を打ちながら、かう答へる。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:46:38.49

わしは再び寝台に近づいた。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:46:54.33

そして再び注意して、疑はしい屍体を凝視した。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:47:10.17

あゝ、わしは之も白状しなければならないであらうか。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:47:26.02

其すぐれた肉体の形の完全さは、「死」

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:47:41.76

の影で浄められてゐるとは云へ、常よりも更に淫惑な感じを起さしめた。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:47:57.60

そして又、其安息が何人も「死」

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:48:13.46

とは思はぬほど、眠りによく似てゐるのである。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:48:29.21

わしは、此処へ葬儀を勤めに来たと云ふ事も忘れてしまつた。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:48:45.05

いや寧ろ花嫁の閨へはひつた花婿だと想像した。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:49:00.93

花嫁はしとやかに、美しい顔を隠して、羞しさに姿を残る隈なく掩はうとしてゐるのである。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:49:16.78

わしは胸も裂けむ許りの悲しみを抱きながら、しかも物狂はしい希望にそゝられて、恐怖と快楽とにをのゝきながら、彼女の上に身をかゞめて、経帷子の端に手をかけた。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:49:32.51

そして、彼女の眠を醒ますまいと息をひそめながら其経帷子を上げて見た。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:49:48.35

わしの動悸は狂ほしく鼓動して蟀谷のあたりには蛇の声に似た音が聞えるかとさへ疑はれる。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:50:04.21

汗が額から滝の如く滴るのも、丁度わしが大きな大理石の板を擡げでもしたやうに思はれるのである。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:50:20.07

そして其処には実にクラリモンドが横はつてゐた。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:50:35.93

わしの得度の日に見たのと寸分も違ひなく横はつてゐた。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:50:51.80

彼女の姿は其時と変りなく美しい。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:51:07.71

も彼女にとつては、最後の嬌態に過ぎないのである。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:51:23.56

青ざめた頬、やゝ色の褪せた唇の肉色、其白い皮膚に黒い房をうき出させる長い睫毛、其等の物が皆彼女に悲しい貞淑と内心の苦痛との云ふ可らざる妖艶な容子を与へてゐる。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:51:39.43

未だ小さな青い花で編んである長い乱れ髪は、彼女の頭にまばゆい枕を造つて、其房々した巻き毛は、裸身の肩を掩つてゐる。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:51:55.18

聖麺麭よりも清く、浄らかな美しい手は組合せたまゝ、清浄な安息と無言の祈祷とを捧げるやうに、胸の上にのつてゐる。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:52:11.04

未だ真珠の腕輪も外さない、裸身の腕が象牙のやうにつや／＼と、円かな肉附きを見せてゐる艶めかしさに――

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:52:26.81

之のみが、反抗の意を示してゐるのである。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:52:42.57

わしは長い間、無言の黙想に沈んでゐた。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:52:58.31

すると、見てゐれば見てゐる程、わしには、「生」

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:53:14.21

がこの美しい肉体を永久に去つたと云ふ事が信じられなくなつて来た。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:53:29.95

所が燈火の光の反射かそれはわしにも解らないが、(彼女はぢつと動かずにはゐるけれど)

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:53:45.81

其命の無い青ざめた皮膚の下では、再び血液の循環が始つたやうに思はれた。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:54:01.65

わしは軽くわしの手を、彼女の腕の上に置いて見た。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:54:17.38

が、あの寺院の玄関で、わしの手に触れた時よりも冷たくはないのである。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:54:33.27

わしは再び彼女の上にうつむいて、温かな涙の露に彼女の頬を沾した。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:54:49.12

あゝ、わしはぢつと彼女を見守りながら、如何なる絶望、自棄の苦悶に、如何なる不言の懊悩に堪へなければならなかつたであらう。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:55:04.98

わしは徒にわしの生命を一塊の物質に集めてそれを彼女に与へたいと思つた。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:55:20.86

そして彼女の冷かな肉体に、わしを苛む情火を吹き入れたいと思つた。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:55:36.73

が夜は次第に更けて行つた。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:55:52.59

わしは永別の瞬間が近づくのを感じながらも、猶わが唯一の恋人なる彼女の唇に、接吻を印してゆく最後の悲しい快楽を、棄てる事が出来なかつた……

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:56:08.43

と奇蹟なるかな、かすかな呼吸はわしの呼吸に交つて、クラリモンドの口は、わしの熱情に溢れた接吻に応じたのである。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:56:24.27

彼女の眼は開いて、先きの日の輝きを示してくれる。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:56:40.16

しかも長い吐息をついて、組んでゐた腕をほどくと、溢るゝばかりの悦びを顔に現して、わしの頸を抱きながら「あゝ貴方ね、ロミュアル。」

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:56:56.06

竪琴の最後の響のやうな、懶い美しい声である。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:57:11.93

余り長い間貴方を待つてゐたから死んだのだわ。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:57:27.89

けれど私たちはもう結婚の約束をしたのだわね。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:57:43.76

もう貴方に会ひにも行かれるわ。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:57:59.50

ロミュアル、左様なら。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:58:15.49

私は貴方に恋をしてゐるのよ。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:58:31.34

私の話したい事はそれだけなの。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:58:47.11

貴方の接吻で一寸の間かへつて来た命を、貴方に返してあげませうね。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:59:02.84

また直にお目にかゝつてよ。」

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:59:18.68

腕は猶、わしを引止めるやうに、わしを抱いてゐる。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:59:34.54

其時凄じい旋風が急に窓を打つて、室の中へはいつた。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 05:59:50.38

すると白薔薇の最後の一葩は暫く茎の先で、胡蝶の羽の如くふるへてゐたが、それから茎を離れて、クラリモンドの魂をのせたまゝ、明けはなした窓から外へ翻つて行つてしまつた。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 06:00:06.12

そしてわしは、美しい死人の胸の上へ気を失つて倒れてしまつたのである。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 06:00:21.98

正気に帰つて見ると、わしは牧師館の小さな室の中にある寝台の上へ横になつてゐた。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 06:00:37.92

先住の老犬が、夜着の外へ垂れたわしの手を舐めてゐる。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 06:00:53.67

バルバラは老年と不安とでふるへながら、抽斗をあけたりしめたり、杯の中へ粉薬を入れたりして、忙しく室の中を歩きまはつてゐる。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 06:01:09.53

が、わしが眼を開いたのを見ると彼女が喜びの叫を上げれば、犬も吠え立てゝ尾を掉つた。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 06:01:25.26

けれどもわしは未だ疲れてゐたので、一口もきく事も出来なければ、身を動かす事も出来なかつた。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 06:01:41.01

其後はわしは、わしが微かな呼吸の外は生きてゐる様子もなく、此儘で三日間寝てゐたと云ふ事を知つた。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 06:01:56.85

其三日間はわしは殆ど何事も記憶してゐない。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 06:02:12.60

バルバラは、わしが牧師館を出た夜に訪ねて来たのと同じ銅色の顔の男が、次の朝、戸をしめた輿にのせてわしを連れて来て、それから直ぐに行つてしまつたと云ふ事を聞いた。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 06:02:28.33

わしがきれ／″＼な考を思合せる事が出来るやうになつた時に、わしは其恐しい夜の凡ての出来事を心の中に思ひ浮べた。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 06:02:44.10

わしは初め或魔術的な幻惑の犠牲になつたのだと思つたが、間も無く夫れでも真実な適確な事実とする事の出来る他の事情を思出したので、此考を許す事も出来なくなつて来た。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 06:02:59.95

わしは夢を見てゐたのだとは信じられない。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 06:03:15.73

何故と云へばバルバラもわしと同じやうに、二頭の黒馬をつれた見知らぬ男を見て、其男の形なり風采なりを、正確に細かい所迄述べる事が出来たからである。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 06:03:31.62

其癖、わしがクラリモンドに再会した城の様子に合ふやうな城の、此近所にある事を知つてゐる者も一人も無い。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 06:03:47.34

或朝、わしはわしの室で僧院長セラピオンに会つた。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 06:04:03.20

バルバラもわしの病気だと云ふ事を告げたので、急いで見舞に来てくれたのである。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 06:04:19.05

急いで来てくれたのは、彼から云へばわしに対する愛情ある興味を証拠立てゝゐるのであるが、其訪問は、当然わしの感ずべき愉快さへも与へてくれなかつた。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 06:04:34.79

僧院長セラピオンはその凝視の中に、何処となく洞察を恣にするやうな、審問をしてゐるやうな様子を備へてゐるので、わしは非常に間が悪かつた。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 06:04:50.50

彼と対ひあつてゐる丈でも、わしは当惑と有罪の感じを去る事が出来ないのである。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 06:05:06.35

一目見て彼は、わしの心中の苦痛を察したのに違ひない。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 06:05:22.20

わしは実に此洞察力の為に彼を憎んだのであつた。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 06:05:37.93

彼は偽善者のやうな優しい調子でわしの健康を尋ねながら、絶えず其獅子のやうな黄色い大きな眼をわしの上に注いで、測深錘のやうな透視をわしの霊魂の中に投入れるのである。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 06:05:53.68

それから彼は、わしがどう云ふ方針で此教会区を管轄するか、こゝへ来てから幸福かどうか、教務の余暇をどうして暮すか、此処に住んでゐる人々と大勢近附きになつたか、何を読むのが一番好きかと云ふやうな事を、数知れず尋ねた。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 06:06:09.54

わしは是等の問ひを出来る丈、短く答へたが、彼は何時でもわしの答を待たずに、急いで一つの問題から一つの問題へ移つて行つたのである。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 06:06:25.39

此会話は、彼が実際云はうとしてゐる事とは何の関係もないのに違ひない。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 06:06:41.25

遂に彼は何の予告もなく、丁度其時思ひ出した知らせを、忘れずに繰り返しておくやうに、明晰な声で急にかう云つた。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 06:06:57.00

其声はわしの耳に最後の審判の喇叭のやうに響いたのである。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 06:07:12.85

「あの名高い娼婦のクラリモンドが、五六日前の事、八日八夜続いた饗宴の終にとう／＼死んでしまつたわ、大した非道な事であつたさうな。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 06:07:28.69

ベルサガアルとクレオパトラの饗宴に行はれた罪悪が又犯されたと云ふものぢや。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 06:07:44.53

神よ、わし達は何と云ふ末世に生きてゐるのでござらう。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 06:08:00.42

客人たちは皆黒人の奴隷に給仕もして貰つたさうな。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 06:08:16.33

其奴隷共は又何やらわからぬ語を饒舌る、わしの眼には此世ながらの悪魔ぢや。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 06:08:32.12

其中の一番卑しい者の服でさへ、皇帝が祭礼に着る袍の役に立つさうな。

**格無しさん** · 2018/05/08(火) 06:08:47.90

此クラリモンドには、始終妙な噂があつたつて。