【安価】で新人魔術師君を迷宮から生還させる
僕は緊張と期待を胸にしながら、神父の祈りを見つめていた。厳密には魔法でもあるその祈りが進むにつれ、神父の老いた穏やかな顔を取り囲む様に何やら文字のようなものが浮かび上がってくる。
僕にはさっぱり読めない、文字というより記号に近いそれは、神父の祈りの言葉が終わると同時に動きを止めた。見えない何者かがペンを取り、祈祷に合わせて何かを綴りペンを置いた。そんなふうに見えなくもないな、等と思いながらぼんやり眺めていると、どろりと文字が溶けて無くなってしまった。
「あなたの魔術を授かる儀式は無事に完了しましたよ」
「ありがとうございます。それで、僕の魔術って一体なんなんですか?もう楽しみで仕方がなくて」
がっつく僕に神父は微笑んだ。
「ふふ、落ち着いて。魔術は逃げませんから……まあ、かくいう私も魔術を授かる時は大はしゃぎしたものです」
「にこやかな神父さんのはしゃぐところ……ちょっと想像できないです」
「まあ、昔の話ですから……さて、本題に戻りましょう。あなたの授かった魔法はーーーー」
神父がそこまで言ったところで、僕は不意に浮遊感を覚えた。見ると、僕らの足元が崩れ、真っ暗な奈落が口を開けていた。床の崩れはどんどん広がり、僕は寒気がする程の暗闇に飲み込まれていった。
>>4 主人公の魔法の系統(チート、現代科学系無し。これらの場合再安価) 「bad odor!」
奈落のモンスター達は悪臭により全滅した。 >>8
悩みまくった結果もうこれでいいんじゃないかなって思ってしまった作者(嘘ですちゃんと書くぞい) 全身が痛い。打ち付けられた衝撃を堪えながら、僕は軋む体を起こす。随分長いこと奈落へと落ちていた気がするが……どういう訳か骨の1本も折れていない。
自分が降ってきたはずの頭上を見上げてみるが、どこまでも暗闇が続いているだけだ。
「ここは地下みたいだな……深すぎる気もするが、とにかくここを出るために探索するしかないな。神父さんとも合流したいし」
立ち上がって周りを見回すと、小さな紙切れが落ちているのが見える。拾い上げると、丁寧な筆跡で書かれた文字が見えた。
『記録 授術の儀 魔術 悪臭
悪臭により、妨害や攻撃を行うことが出来る。鍛えることで、臭いの指向性や強度を操作することができる。』
どうやら自分の魔術についての記録らしい。
「悪臭、ね。炎とか派手な魔術もかっこいいけど……こういう邪道っぽいのも、面白いじゃん」
僕はにんまりと笑みをこぼし、紙切れを拾い上げた。しかしいつまでものんびりしてはいられない。パタパタと足音が近づいてくる方向を見ると、薄汚い緑色をした人型の生き物が、鋭い石を掲げながら走りよってきた。
「ゴブリンだっけか?あいつと戦いつつ、早速魔術を試してみるとするか」
僕は左手を構え、心臓から水が流れ込む様イメージを抱く。すると指先から魔力が、臭いとなって放たれる。
「魔法ーーー刺激臭」