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ロスト・スペラー 21
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0205創る名無しに見る名無し
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2020/01/22(水) 13:57:19.00ID:XbQSv6a+
そういえば、夜の人とかひっそり生き続けてたようなものの中には、
世界再生の際に誰からも思い出してもらえず消滅した奴もいるのだろうか……
0206創る名無しに見る名無し
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2020/01/22(水) 18:43:39.23ID:l4bBizmg
>>205
完全に孤立すると言う事は中々難しいので大丈夫だと思います。
思い出すと言うのもファジーな感覚で記憶の片隅にでも残っていれば良いので。
意識は動物にもありますし、人が動植物を思い出せば、その動植物からも連鎖的に存在が再現されます。
良い思い出じゃなくても良いので、悪い記憶でもイメージでも、とにかく誰かや何かの記憶に残っていれば。
中には完璧に閉じた存在もあるでしょうが、そうなってしまうと、もう居ても居なくても同じなので……。
0207創る名無しに見る名無し
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2020/01/25(土) 22:36:25.98ID:EKbqGwmS
過去スレを見てたが、設定では遊牧民もいるのか
唯一大陸って思ったより広いな
0208創る名無しに見る名無し
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2020/01/28(火) 18:58:51.77ID:Tczrbno/
唯一大陸の広さは北アメリカ大陸より少し大きい位のを想定しています。
人口2億5000万と言うのも、その辺を参考にした記憶があります。
馬車鉄道で何日駅とあるので、唯一大陸が1周何キロメートル相当か、一応は算出可能です。
実際は線路の外周部もあるので、もっと広くなりますが……。
舞台となっている星は唯一大陸以外は殆ど海で、唯一大陸が表面積の約20分の1と言う設定だった筈です。
北は極地で南は熱帯なので、相応の広さだと思います。
……本当かな?
厳密に計算すると違うかも知れません。


現実の大陸にも様々な人種や生活習慣がある様に、唯一大陸でも私達が考える「標準的な生活」を営まない人達は居ます。
魔導師会と言う組織は、グラマー地方を除いて政治機能を持っていないので、基本的には現地の決定が優先されます。
魔導師会の役割は争いや行き過ぎがある時に、仲裁する程度です。
大体の集落に、魔導師会の者が1人か2人は配置されている物ですが、居ない所もあります。
0210創る名無しに見る名無し
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2020/01/29(水) 18:49:10.09ID:tc8J+L1n
人間に戻る


ポイキロサームズの後日談


第一魔法都市グラマー 禁断共通魔法研究特区 禁断共通魔法研究所 通称「象牙の塔」にて


反逆同盟との戦いが終わった後、ポイキロサームズは象牙の塔に集められた。
そこで人間の体を与えようと言うのだ。
執行者達の監視の下、ポイキロサームズは象牙の塔の研究者達の診察を受ける。
蛇男のヤクトスだけは既に診察を受けた後だったが、仲間達と共に再度診察を受けた。
以前はカーラン博士だけだったが、今回は大勢のB級禁断共通魔法の研究者の好奇の目に晒されて、
好い気分はしなかったが、それも人間の体を得る為だと耐えた。
B棟の研究者達は「患者」を前に、好き勝手な事を言う。

 「これは完璧に動物ですね……」

 「動物に人間の魂を?」

 「いや、それが記憶は抜いて、人格だけを……」

 「記憶と人格って分けられる物か?」

 「事実、そうなっているんだから」

 「人格から記憶を復元出来るかも」

 「それってA棟の分野と違うか?」

そんな訳で、この珍しい「患者」の治療の為に、象牙の塔が全体が動く事になった。
0211創る名無しに見る名無し
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2020/01/29(水) 18:51:06.12ID:tc8J+L1n
ポイキロサームズの肉体は完全に動物で、人間の物では無い。
脳の構造が人間に近くなっている以外は、人間らしい形跡が無い。
その脳でさえ、人間の物では無いのだ。
B棟の研究者達は感心するばかり。

 「これは凄い。
  この肉体は製造された物だよ。
  製造者は余程、動物の肉体の構造に詳しいんだろう。
  動物の肉体を基礎にして、半分人間の様に動かせる様にするとか、並大抵じゃない」

 「ああ、我々は生命体を創造する時に、どうしても機能や効率を考えてしまう。
  態々こんな事をするとは暇人か、それとも独特な趣味者か?」

 「それが噂の反逆同盟らしい」

 「あぁ、暇人で趣味者だったか……。
  いや、しかし、これ程の腕があれば、真っ当に活かす道もあった筈だが……」

 「世間は常識に煩いですからねぇ。
  真っ当になれなかったんでしょう」

 「執行者も何かと違反違反だしな」

 「やあ、僕等は象牙の塔に入れて良かったですよ」

 「ああ、全く。
  ここなら好きなだけ実験と研究が出来るからな」

狂った研究者達は、執行者を前にして、その不満を平然と吐く。
執行者達は呆れるばかりで、腹も立たない。
相手は狂人、怒るだけ損だ。
0212創る名無しに見る名無し
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2020/01/29(水) 18:52:20.66ID:tc8J+L1n
ポイキロサームズのアジリアは、耐え兼ねて零した。

 「それで結局、人間には戻れるのか、戻れないのか、瞭りしてくれないかな?」

それを聞いて禁呪の研究者達は小さく笑う。
笑われるとは予想しておらず、アジリアは怒った。

 「何故笑う!?」

 「戻ると言う表現は適切では無いかなぁ」

 「それの何が可笑しい!」

 「いや、気を悪くしないで欲しい。
  皆、笑いに飢えているんだ。
  少しでも道理に合わない事が、可笑しくて仕方が無い」

アジリアは理解不能な理屈に益々憤るも、執行者が彼女を宥める。

 「落ち着いて下さい。
  奴等は一寸頭が奇怪しいんです。
  真面に相手をしていると、身も心も持ちませんよ」

研究者達は執行者の失礼な言い方にも、全く気分を害さない。
平然と聞き流して、ポイキロサームズに告げる。

 「これからA棟の心理分析の専門家に診て貰うから、人間の体にするのは、その後だよ。
  彼が到着するまで、適当に寛いで待っていなさい。
  中々直ぐには終わらないと思うからね」

 「今までのは、君達をどうするか話し合っていたんじゃなくて、暇潰しに駄弁っていただけさ。
  そう言う訳だから、肩の力を抜いて、楽にしていなよ」

執行者達もポイキロサームズも、その対応に脱力した。
そして改めて、碌でも無い連中だと思うのだった。
0213創る名無しに見る名無し
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2020/01/30(木) 18:46:33.71ID:UcZzkjLg
約1角後に、A級禁断共通魔法研究者のユーメロ・リヴラゾンが到着する。
彼は心理魔法の専門家で、人の深層心理を読む事に長けている。
人の体に現れる反応、小さな仕草、表情、言葉、あらゆる行動から、人の心を読む。
彼はポイキロサームズと一対一で、様々な心理テストを行った。
身長は、どの位から「高い」「低い」と思うのか?
体重は、どの位から「重い」「軽い」と思うのか?
収入は、どの位から「多い」「少ない」と思うのか?
空間は、どの位から「広い」「狭い」と思うのか?
年齢は、どの位から「若い」「年寄り」と思うのか?
年代は、どの位から「最近」「昔」と思うのか?
人は何事も自分を基準に考える物である。
意識的にでも、無意識にでも。
小さな引っ掛かりから、人物像を推定するのだ。
加えて、嘘を封じる魔法で、誤魔化す事も出来ない。
個人的な情報が多く含まれる為に、一対一と言う形式になった。
可能であれば、モデルとなった人物を特定する。
しかし、問題は本来の自分を思い出したとして、社会的に受容されるかと言う所。
そして、もし受容されたとしたら、元の生活に帰りたいかと思うかと言う所。
ユーメロはアジリアに問う。

 「何か夢を見たりはしませんか?
  それも一度や二度では無く、よく見る夢です。
  全く同じ夢では無くとも、類似したパターンの夢を見るとか」

アジリアは答えた。

 「あります。
  家族の夢です。
  夫と、子供が2人……。
  そう言う夢を、よく見ました」

 「成る程、失踪届を当たってみましょう」
0214創る名無しに見る名無し
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2020/01/30(木) 18:48:19.99ID:UcZzkjLg
小さな情報でも積み重なれば、個人を特定出来る。
言葉遣いを取っても、僅かな訛りや、聞き慣れない表現等で、出身地が絞り込める。
しかし、本人には自覚が無い物だから、とにかく言葉を引き出さなくてはならない。
手近にある簡単な物を提示して、これは何か等と、丸で幼児に尋ねる様な、基本的な質問を、
何度も何度も繰り返す。
そして丸1月を掛けて調査した結果、ヤクトス以外の全員の身元を特定出来た。
だが……、それと元の生活に戻りたいかは別だった。
以前の自分を知りたいかと言う問い掛けに、「はい」と答えるのか、「いいえ」と答えるのか……。
真っ先に元に戻りたいと答えたのは、アジリアとヘリオクロスだった。
象牙の塔のロビーに集まったポキロサームズは、これからの事を話し合う。

 「私達は人間の姿に戻る事にしたよ。
  人間としての私達は死んでるけれど、それでも家族と暮らしたい」

そう言ったアジリアに対して、ヴェロヴェロは外方を向いて答える。

 「そりゃ良かった。
  そんじゃ、ここでサヨナラだな。
  もう会う事も無えだろう」

 「そんな事を言うなよ」

 「ソウデスヨ……」

投げ遣りな態度のヴェロヴェロに、アジリアとヘリオクロスは寂しがった。

 「つったって、元の生活に戻るんだから、必然、俺等との付き合いも無くなるだろう」

突き放す彼に対して、アジリアは反論する。

 「そんな事は無いよ。
  そりゃあ元の生活が忙しくなれば、疎遠にはなるかも知れないけどさ……。
  定期的に会って、近況を話し合ったり、昔を懐かしんだりするのも良いじゃないか?」
0215創る名無しに見る名無し
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2020/01/30(木) 18:50:19.76ID:UcZzkjLg
彼女の言葉にヘリオクロスも同意した。

 「ソウデス。
  寂シイ事ヲ言ワナイデ下サイ。
  皆サンダッテ、人間ノ姿ニ戻ルンデショウ?」

ヘリオクロスの問い掛けに、ヴェロヴェロは答えなかった。
アジリアは驚く。

 「えっ、その姿の儘で居るのかい?」

 「それも悪くねえかもな」

捻くれて冗談を飛ばすヴェロヴェロを、アジリアは益々心配した。

 「……どうしたいんだい、ヴェロ」

 「俺の人生は、あんた等みたいな碌な物じゃなかったって事だよ。
  元の自分に戻っても戻らなくても、どうでも良い感じのな」

アジリアもヘリオクロスも返す言葉を失う。
そこにコラルが口を挟んだ。

 「あの、多分人間の姿には戻ると思います。
  元の姿かは分かりませんけれど……。
  これを機に新しい人生を歩むのも、ありなんじゃないでしょうか?」

 「それなら良いんだけど」

アジリアは怪訝な目でヴェロヴェロを見詰める。
0216創る名無しに見る名無し
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2020/01/31(金) 18:35:08.21ID:l/eD6mHR
ヴェロヴェロにとって、自分の過去は思い出したくない物の様だった。
誰もが幸せな人生を送っていたとは限らない。
アジリアは残りの2人にも尋ねる。

 「コラルとヤクトスは、どうするの?」

先に答えたのはコラル。

 「私は元々余り縁のある人が居なかったみたいなので、少し迷っています。
  元に戻っても、やる事が無いって言うか……」

その後にヤクトスが続けて言う。

 「俺は、そもそも過去の事が全然分からなかった。
  どうすれば良いのかも、全く分からない……」

アジリアとヘリオクロスは何とも言えず、沈黙した。
掛けるべき言葉が分からない。
自分達だけ帰る場所がある事が、申し訳無く感じられる。

 「何か、御免ね」

アジリアが謝ると、コラルは首を横に振った。

 「気にしないで下さい。
  他人の事より、自分の幸せを考えるべきですよ」

ヤクトスも同意して頷く。

 「変に気にされると、こっちも申し訳無くなっちゃうんで……」
0217創る名無しに見る名無し
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2020/01/31(金) 18:36:15.08ID:l/eD6mHR
それから重苦しい沈黙が訪れる。
空気に耐えられず、アジリアは話題を変えた。

 「あっ、そう言えばシャゾールは?」

その問にはヤクトスが答える。

 「彼は元々人間じゃないんで……」

 「ああ、そうだった」

数極後、再びアジリアが口を開いた。

 「取り敢えず、皆、人間にはなるんだろう?
  人間の姿で会おう」

アジリアの言葉に、ヴェロヴェロ以外の全員が頷く。

 「ヴェロ、あんたも……」

アジリアはヴェロヴェロにも呼び掛けたが、返事はして貰えなかった。
その後、アジリアとヘリオクロスが先に人間の姿に戻る。
アジリアは痩せ身で背の高い中年女性、ヘリオクロスは成長期の少年だった。
これから2人は、家族の元に戻るのだ。
コラルも人間だった頃の姿に戻った。
彼女は少し太目の若い女性で、象牙の塔で事務員として働く事にしたと言う。
ヤクトスは未だ人の姿になっていなかった。
元の姿が判らない以上、どの姿になっても違和感しか無いと言う事で、今の姿の儘で居ると言う。
ヴェロヴェロは……姿を見せなかった。
禁呪の研究者達の話では、人の姿に戻ったと言うが……。
0218創る名無しに見る名無し
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2020/01/31(金) 18:37:21.52ID:l/eD6mHR
何時までも象牙の塔に滞在している訳にも行かないので、アジリアとヘリオクロスは家族の元へ帰る。
もう2人はアジリアでもヘリオクロスでも無い。
コラルはグラマー地方で新しい生活を始めると言う。
彼女は自分の名前にコラルと言う愛称を加えた。
ヤクトスは何も分からない儘、象牙の塔で働く事になった。
何時か記憶が戻ると信じて。
ポイキロサームズは離れ離れになってしまった。
魔楽器演奏家のレノック・ダッバーディーは、コラルの勤めている市内の書店を訪れて、彼女と話す。

 「コラル君、今日は」

彼は青年の姿を取っていた。

 「あっ、レノックさん?
  お久し振りです。
  グラマー市に来て、大丈夫なんですか?」

グラマー地方特有のローブ姿のコラルは、一目で青年をレノックだと看破する。
動物の姿での生活が長かった彼女は、人を見た儘の姿では無く、全体の雰囲気で判断する癖が、
身に付いていた。
レノックは笑って答える。

 「ああ、目立った事をしなければ、平気平気」

軽い調子で答えたレノックを、コラルは疑ったり心配したりしない。
彼の実力は十分に知っている。
そこらの魔導師が束になっても、彼には敵わないと言う事を。
レノックには知恵も力もあるのだ。
0219創る名無しに見る名無し
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2020/02/01(土) 18:51:47.95ID:YaozF4HJ
コラルは続けてレノックに尋ねる。

 「態々グラマー地方に来たと言う事は、何か御用ですか?」

 「ああ、ポイキロサームズの皆は、どうしているかと思って。
  あれから象牙の塔で人の姿に戻った事までは聞いているんだけど……。
  その先の事とか、どうなったのかなと。
  この目で確認して、安心したいから」

 「ははぁ、それは有り難う御座います」

 「いやいや、お礼を言われる様な事じゃないんだけどね」

コラルとレノックは小さく笑い合った。
そしてコラルは自分達の近況を語る。

 「私は、そこそこ元気でやれています。
  生活にも特に困った事はありません。
  他の皆は……、どうなんでしょう?
  アジリアさんとヘリオ君は、家族に会いに行って、人間だった頃の生活に戻りました。
  ヴェロさんは……分かりません。
  誰にも会わずに、独りで出て行ってしまいました。
  ヤクトスさんは多分、未だ象牙の塔に居ると思います」

レノックは小さく溜め息を吐く。

 「……皆、散り散りになってしまったんだな。
  何だか、解散して活動停止したバンドみたいだ」

 「実際、解散して活動停止しているんです。
  反逆同盟との戦いも終わったので。
  あ、でも、年に一度は会おうって約束しました。
  10月10日にティナー市の例の場所で」
0220創る名無しに見る名無し
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2020/02/01(土) 18:52:35.62ID:YaozF4HJ
レノックは頷き、コラルに問う。

 「ヴェロヴェロ君も?」

 「いえ、彼は……」

 「ああ、分かった。
  どこかで彼に会ったら、伝えておくよ。
  参加してくれるかは分からないけど」

 「はい、お願いします。
  ……あっ、余り長く立ち話していると、変な目で見られるので……」

ここはグラマー地方である。
男女が一緒に居ると、夫婦か恋人だと思われてしまう。
コラルの態度からレノックは察した。

 「ややや、もしかして?」

コラルが頬を染めて小さく頷いたので、レノックは笑いながら謝った。

 「これは失礼。
  誤解されては行けないからね。
  僕はヤクトス君に会いに行ってみるよ」

 「お気を付けて」

 「何、大丈夫さ」

そう言ってレノックは去る。
コラルは既に付き合っている男性が居るのだ。
彼女は彼女の人生を歩もうとしている。
0221創る名無しに見る名無し
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2020/02/01(土) 18:53:13.57ID:YaozF4HJ
そしてレノックは象牙の塔に移動した。
ここを訪れるのは、彼も初めてである。
敷地内には強力な共通魔法の気配が充満している。
しかし、都市の様な画一的な整った魔力では無い。
より根源的な混沌に近い、整わない乱れた魔力だ。
彼は正面から堂々と近付き、守衛の駐在所にて、ヤクトスを呼び出して貰った。
ヤクトスは蛇人間の儘であった。

 「ヤクトス君、久し振り」

 「お久し振りです、レノックさん」

 「少し痩せた?」

 「ああ、ハハハ、中々ここの生活に慣れなくて」

 「無理しない方が良いんじゃないかい?」

象牙の塔は、真面な精神の人間が滞在する場所では無い。
只でさえ精神を削る場面に遭遇し易いのに、更に悪い事に、ヤクトスは特異な外貌から、
研究者達の興味を引いた。
お蔭で奇妙な実験に付き合わされたり、妙に馴れ馴れしくされたりと、嬉しくない人気者。
それでも象牙の塔を出て行かない理由は……。

 「いえ、外に出ても、どうやって行ったら良いか分かりませんから……」

蛇の姿では人の生活には紛れ込めない。
しかし、人の姿にして貰おうにも、見知らぬ顔では違和感がある。
そう言う訳で、ヤクトスは何と無く象牙の塔に居た。
0222創る名無しに見る名無し
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2020/02/02(日) 18:55:42.67ID:ysSr7Kge
時々大騒動に巻き込まれる事を除けば、象牙の塔は、そう悪い所では無い。
金に困る事は無い……と言うか、金銭の概念が無い。
禁呪の研究者達に頼めば、あらゆる問題が解決する。
「解決」と言っても、望ましい物とは限らないが……。
レノックはヤクトスの心情を慮り、深くは追及しなかった。

 「もし、ここでの生活が嫌になったら、風に頼んで僕を呼んでくれ。
  君の身元を引き受ける位の事はしよう」

 「有り難う御座います……。
  でも、大丈夫ですよ。
  ここの人達も悪い人達では無いので……」

 「君が良いと言うなら、僕から言う事は何も無いよ」

そう言って、レノックは話題を変える。

 「所で、10月10日の予定は決まっているかな?」

 「あぁ、皆で集まる日ですね。
  でも、この姿で出歩くのは……」

 「そんなの、一時的にでも変えて貰えば良いじゃないか?
  元の姿が判らなかった事に、引け目を感じる必要は無い」

ヤクトスは返事をしなかった。
自分の姿を簡単に変える事に、抵抗があるのだ。
レノックはヤクトスが引き篭もり勝ちになるのではと懸念していたが、余り諄々言っても仕方無いと、
一言だけ告げる。

 「何にせよ、君の人生だ。
  後悔しない様に生きるんだよ」
0223創る名無しに見る名無し
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2020/02/02(日) 18:57:34.86ID:ysSr7Kge
レノックは象牙の塔を後にする。
アジリアとヘリオクロスの様子を見に行こうかとも考えたが、人として幸せな生活を送っているなら、
自分が口を出す事は無いと、会わない様にした。

 (後はヴェロヴェロ君か……。
  今頃、どこで何をしているんだろう?
  人の姿に戻れて、幸せに暮らしていると良いんだけど……。
  ああ、思い悩んでいても仕方が無い。
  会いたくない者には会えないんだ。
  僕達は、そう言う風に出来ている。
  彼に困った事があれば、風が教えてくれるだろう)

レノックは深く考えない様にして、再び各地を放浪する。
別れは何時でも悲しい物だけれど、人の人生は人の物。
自分の思い通りには動かせない。
人の幸せを他人が勝手に決めては行けない。
人間でも無いレノックには尚の事。
0224創る名無しに見る名無し
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2020/02/02(日) 19:01:36.56ID:ysSr7Kge
2月は忙しいので、余り投稿出来ないかも知れません。
いや、そもそもがネタ切れ気味なんですけど……。
もう少しはあるので、フェードアウトしない様にします。
0225創る名無しに見る名無し
垢版 |
2020/03/04(水) 18:10:26.23ID:x9oy0x7h
名前が出てる魔法の中では生命魔法の設定が、まだ紹介されてない気がする
どんな魔法かはだいたい想像つくけど、呪詛魔法<カース・シューティング>や変身魔法<フェノメナル・メタモルフォシス>みたいなカッコいいルビがあるなら知りたいところ
0227創る名無しに見る名無し
垢版 |
2020/05/01(金) 20:12:16.29ID:ZmwSOi8d
久し振りの書き込みです。
えー、実は他のサイトに浮気してました。
これまで裏でコツコツ書き溜めてた分を投稿して……反響は今一でしたけども。
しかし、中々良い体験でした。
0228創る名無しに見る名無し
垢版 |
2020/05/01(金) 20:23:54.90ID:ZmwSOi8d
世情が世情ですから、御心配をお掛けしたかも知れません。
取り敢えず、元気でやっております。

>>225
「ライフ・シェアリング」です。
その儘の意味通り、活力を分け与える魔法。
リリリンカーとティアルマの場合は、双方が同時に死なないと片方が蘇ると言う仕込みをしていました。
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