ママ、どうして僕を産んだの?
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淋しい雨の降る日、僕は聞いた。
この世は辛いことばっかりだと思ったから。
全部ママのせいにすれば楽になると思った。
でもやっぱりこの世は自分の思い通りになんかならないのだった。 「あたしが産んだんじゃないわ」
ママは面倒臭そうに電子タバコの煙を吐きながら言った。
「アンタが勝手に産まれて来たのよ」 僕は悲しそうに言った。
「やっぱり……I was born……なんだね」 「そうよ。You were born なのよ」
ママはそう言うとそっぽを向き、また歩き出した。
クリスマスを一月後に備えた街は賑やかなのに淋しかった。 僕はぽろぽろと涙を落としながらママについて歩いていった。
やがて道は喧騒を離れ、地面はアスファルトから泥道に変わった。
「ママ、どこまで行くの?」 「どこまで行ったって何も変わりゃぁしないよ」
ママは振り返りもせずに答えた。
僕は足元が泥だらけなのに、ママの赤いハイヒールはピカピカのまま。
「さよならさ」 やがて僕らは墓場に着いた。
花も線香も持って来ていないのに。
僕らに縁のある仏様もいないのに。 「ここに立ってな」
崩れそうな無縁仏の前で僕にそう命じると、ママは森の奥へと一人で歩き出した。
樹の上でカラスどもがうるさく鳴いていた。寒い風が一層僕を心細くさせた。
ママはそれきり戻って来ないと思わせといて直ぐに戻って来た。手に誰かの骨を持って。 まだ汚ならしい命の余韻の残る顎の骨だった。短い髭もちゃんとついている。
「パパ……?」
僕の疑問には答えずママは、無縁仏の裏の地面をハイヒールでコツコツと蹴った。
「ここにこれを埋めな」 「掘れないよ。石が多いし、固いよ。スコップは?」
「指で掘るんだよ」
「無理だよ」
「掘らないと帰れないよ」
選択肢をなくして僕は、ガリガリと固い地面に爪を立てて掘りはじめた。
幸い少し柔らかいところを見つけた。
『ついてる』と思い、僕は嬉しくなった。 僕はどんどんどんどんどんどん掘った。
その下に宝物が埋まっているとでもいうように。
指の痛みなんかとっくになくなっていた。 掘りながら、心の中でずっと叫んでいた。
「僕はここにいるぞ」
「僕は産まれて確かにここにいるんだぞ」
ママはその間きっとずっとスマホを見ていた。 30cmぐらい掘れたところで僕はママの顔を見た。
「まだだよ。その3倍は掘りな」
「でも、もう、入るよ? これ。埋めれるよ?」
「アンタも入るんだよ、そこに」
「えっ?」
「嘘だよ。でもそのぐらいのつもりで掘りな」 僕は掘り終わると、叫んだ。「ブラジルの人、こんにちは!」 イデア「すいません、小さな男の子が来ませんでしたか?」
謎のガンブレード使い「心配しなくても大丈夫。結局、あの子はどこへも行けないんだ」
イデア「私もね、そう思うわ。可哀想だけど仕方がないもの」
そこに死にかけた魔女が現れる。
謎のガンブレード使い「…生きていたのか!?」
イデア「…魔女ね?」
謎のガンブレード使い「そうです、ママ先生。俺たちが倒したはずなのに…。ママ先生、下がってください」
イデア「大丈夫。もう戦う必要はありません。その魔女は力を継承する相手を捜しているだけ。魔女は力を持ったまま死ねません。私も…魔女だから分かります。私がその魔女の力を引き受けましょう。子供たちを魔女にしたくありません」 イデアは魔女の力を継承する。
イデア「これで…終わりかしら?」
謎のガンブレード使い「…おそらく」
魔女はイデアに力を継承して消滅した。だが、まだ疑問が残っている。
イデア「あなたは私をママ先生と呼んだ。あなたは…誰?」
謎のガンブレード使い「SeeD。バラムガーデンのSeeD」
イデア「SeeD? ガーデン?」
謎のガンブレード使い「ガーデンもSeeDもママ先生が考えた。ガーデンはSeeDを育てる。SeeDは魔女を倒す」
イデア「あなた、何を言ってるの?」
ガーデン? SeeD? この人は何を言っているのだろう? 一寸イデアは戸惑ったがすぐにピンときた。
イデア「あなたは…あの子の未来ね」
スコール「…ママ先生」 「アンタなんて……産みたくなかった!」
それは母の口癖だった。アナタなんて産みたくなかったと、アナタさえいなければと、そう言われて私は生きてきた。
「死ね!死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!シネ死ね!シネ死ね!死ね死ね」
狂ったように叫ぶ母をみるのは、もう何度目だったろうか?
母は昔、強姦された。
みんなの留守の夜中に強盗に入られ、襲われてしまった。中絶はどうやら体質上、命の危険を孕んだ為にそれが出来ず、結果、私が産まれてしまった。 「勝手に産まれて来たくせに、何か辛いことがあると言い出しやがる
『ママ、どうして僕を産んだの?』
甘えんじゃないよふさけんじゃないよ
他人のせいにしてんじゃないよ!
あたしが1度でもばあちゃんにそんなことを言ったのを聞いたことがあるかい?自分でやったことの責任くらい自分で取りやがれ!」 では僕はなぜ穴を掘らされたんだろう?
それは僕の自由意志じゃない。 同じように、僕は『産まれさせられた』のだ。
僕の意志ではない。 しかし死ぬのは僕の自由意思だ。
僕は12階建てアパートの屋上の手すりの上に立ち、自分が生まれた町の景色を眺めた。 後ろへ転べば戻って来る。
前へ転べば……どうなるのだろう? だから思うのだ、誰か僕の背中を押してくれないかなと。 ママは穴を掘らせ終わると、僕を残して帰って行った。
ここはどこの山だろう?
ここはどこの墓地だろう?
僕は穴の中で二時間ぐらい膝を抱いてうずくまっていた。
お腹が減った。ただそれだけの理由で、僕はまた町へ向かって歩き出した。 途中、ひっそりと静まりかえった池があり、僕は何となく立ち止まった。
池というのか、沼というのか、どう言ったらいいのかわからない。
ただ何か懐かしい匂いを感じて、僕は水面から水底を覗き込んだ。
暗いそこから水面までぬるりと潜り抜けて、真っ赤な鯉が顔を出し、僕を見ると笑った。 「こんにちは」
僕は鯉に話しかけてみた。鯉は何も言わず、明るくウインクをひとつすると、また水底へ戻って行った。
誰か僕の知っている人が姿を変えているのだろうか。
僕はその人を追いかけて行きたかったけど、足が動かなかった、水底のあまりの暗さに。 ママは泣きながら、苦しそうな声を上げながら、しかし「もっと! もっと!」と矛盾した言葉を繰り返していた。 入口に立っている僕に気づかずに、姿の見えない何かに激しく後ろから穴を掘られながら、ママは絶叫する。
「あたる! おくに! あたる!」
僕の中で何かが産まれた。
僕を押さえつける一方だったママを見下す僕がいた。
よだれを垂らし、いじめられた目で涙を流すママへ、僕は歩み寄った。 僕は守るようにママに抱きついた。
「ママ! ママ! おかしくならないで! 僕、いい子になるから!」 僕はカーテンの隙間から差し込む日光で目を覚ました。
「おっす、おはよう坊や」
目の前のカバは大きな口で挨拶をした。
僕はキョトンとした。 「私がわからないのかい?」
カバは明るく優しい笑顔で言った。
「ママだよ、お前のママだ」 「嘘だ! お前なんか僕のママじゃない!」
僕は醜いカバに言ってやった。
「僕のママはな、もっと綺麗で、かっこよくて、優しいんだぞ!」
でもそれは本当に僕のママのことだろうか?
僕は理想のママのことを言ったのかもしれない。 それにしても不思議だ
なぜママという人間がいるんだろう?
それはどこから来たんだろう?
なぜ僕という人間がいるんだろう?
そしてなぜ僕は自分の中に理想のママや理想の自分を持っていて、
なぜそれらは現実のママや僕と違うんだろう? 「ゴチャゴチャ考えてんじゃないよ」
僕の考えてることがまるで聞こえてるように、寝そべってるほうのママが言った。
「アンタなんか宇宙の塵のひとつみたいなもんなんだから」
「そんなことないわ、坊や」
泣きそうになっている僕にカバが行った。
「あなたはとてもかけがえない存在で、意味を持って生まれて来たのよ」 もうやだ…ッッ!!
だれかたすけてッッ!!!
これは…ッ!!ゆめだ…ッッ!!
ぼくはッ!いまゆめを…ッ!みているのだッ!! 僕は優しいほうのママを選んだ。もちろんカバのほうだ。
「私がママだとわかってくれて嬉しいよ。さ、こっちへおいで」
手を広げて微笑むカバの胸に飛び込んだ。
「あなたが生まれて来たことには意味があるのよ。生まれて来てくれてありがとう」
そう言うとカバは思いきりおおきなその口を開けた。
「大事な、大事な、私のごちそう」
カバは口で僕の頭をすっぽりと包むと、逞しい歯と顎でシャクリと食べた。 僕は川の畔にいた。
おかしい、ここはさっきまでいえだったはずだけど 声のするほうを見やると、じいちゃんが手を振っていた。
よく見ると手を繋いでばあちゃんもいる。
二人の足元にはポチもいた。
3年前に仲良く自動車事故であっちへ行ってしまった僕の大好きだった二人と一匹が、今、懐かしいその姿のままで笑っている。
「なぁんだ、みんなここで幸せにしてたんだね」
笑顔で手を振り返しながら、僕は思わず呟いた。
「こんなことならもっと早く死ねばよかった」 「こんなことなら僕、もっと早く死ねばよかったよ」
幸せな気持ちに包まれながら僕が繰り返すと、向こう岸のじいちゃんとばあちゃんが笑顔で手招きをした。
ポチは置物のようにじっとしている。 「文句言ってやる」
私は屁をこいた筧利夫の所へ歩いて行った。 筧利夫は夢遊病のようにヨロヨロと歩いている。
そして私をトイレだと勘違いしたのか、いきなりズボンを下ろした。 私はシャイニングウィザードを筧利夫に喰らわせた。
バキッ!
筧利夫「ぎゃーっ!歯が!歯が!歯が!!」 「でも、これが夢なら、世界は夢のほうがいい」
じいちゃん達の後ろに、霧が晴れるように、綺麗な花園が見えてきた。
あそこへ行けば僕も幸せになれる、きっともう何も考えなくていいんだ。
そんな気がして、僕は川に足を入れ、歩き出した。 僕は川の水をかき分けるように歩いて行った。
川の水は軽くて歩きやすかった。
じいちゃんの声が頭の中で大きくなってくる。
『来ちゃいかん、来ちゃ、いかん』
びっくりして顔を上げると、じいちゃんはやっぱり優しく笑って手招きをしているのだった。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています