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TRPG系実験室 2

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0001創る名無しに見る名無し
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2018/09/07(金) 22:56:07.99ID:c8v0uQxh
TRPG関係であれば自由に使えるスレです
他の話で使用中であっても使えます。何企画同時進行になっても構いません
ここの企画から新スレとして独立するのも自由です
複数企画に参加する場合は企画ごとに別のトリップを使うことをお勧めします。
使用にあたっては混乱を避けるために名前欄の最初に【】でタイトルを付けてください

使用方法(例)
・超短編になりそうなTRPG
・始まるかも分からない実験的TRPG
・新スレを始めたいけどいきなり新スレ建てるのは敷居が高い場合
・SS投下(万が一誰かが乗ってきたらTRPG化するかも?)
・スレ原案だけ放置(誰かがその設定を使ってはじめるかも)
・キャラテンプレだけ放置(誰かに拾われるかも)
0283ザ・フューズ ◆YGhdY0kduEHV
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2019/03/19(火) 22:30:06.37ID:jk+yobKF
数日後、西田結希はメトロポリス内地に所有するマンションの一室にいた。
マンションのオーナーは、彼女の『他人に知られてもいい』稼業の一つだ。

「……例の件はどうなった」

耳元に当てたスマートフォンへ、西田結希は問いかける。
その端末は個人名義――裏稼業用の物ではなく、ヒーロー協会から支給された物だ。

『芳しくないですね。ある日突然爆発するかもしれない車に、好んで乗り込む人間はいません。
 あのロボットを稼働させ続けるのは、協会にとって不要なリスクでしかないです』

「少なくとも三人のヒーローが上申書の提出か、それに相当する証言をしているはずだ」

『No14が次に暴走した時、罪のない人々を狙わないとは限りません。
 たった三人の証言で、その可能性を無視する事は出来ませんよ』

「百人の命を救う為なら、一人の人間を殺していい訳じゃないだろう。
 少なくともヒーロー協会の公式見解として表明出来る思想じゃない」

『アレが人間ならその通りですが、生憎、Np14はロボットです』

「……アイアンハート現象はメトロポリスの至る所で確認されている。
 それらのロボット全てに、人間への不信感を与える事は、不要なリスクだ」

『……確かに、そうかもしれませんが』

「表向きは処分保留。実際はヒーローの装備ないし支援機扱い。
 これなら世論の釣り合いも取れるだろう。この線でもう一度上申書を作成してくれ」

『分かりました。ですが……今度は一体何を企んでるんです?
 私には、そこまでしてアレを保護する必要があるとは思えませんが』

「……あのロボットはそれなりに高性能だ。支援機として手に入れば、今後の活動に役立つ」
0284ザ・フューズ ◆YGhdY0kduEHV
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2019/03/19(火) 22:31:02.35ID:jk+yobKF
通話を終了。腰掛けたソファの端にスマートフォンを放り捨てる。
そして――その直後に再度響く着信音。
エクトプラズム・プレートでスマホを跳ね上げ、手元へ。

画面を見てみれば、通話をかけてきたのは自身の担当オペレーター。
つい先ほどまで話していたのと、同一人物。
西田が溜息を零して、画面をタップ。

言い忘れる程度の用事なら、チャットで済ませろ。
そう言ってやろうと口を開き――直後、スピーカーから流れる発砲音、破壊音、悲鳴。
0285ザ・フューズ ◆YGhdY0kduEHV
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2019/03/19(火) 22:31:49.97ID:jk+yobKF
「……坐間?」

返事はない。
数秒後、一際大きな破壊音と共に通話は切れた。
更に数秒後、協会の緊急通達――非常防衛システム起動に伴う自動メッセージ。

西田はすぐさま、ベランダの大窓を開いた。
ヒーローにとって緊急の出動が日常茶飯事。
耐衝撃スーツと、それを隠すビジネススーツは彼女にとって普段着同然。
マスクやアーマーを纏めたケースも常に携行している。
つまり装備は既に万全。

ベランダの柵を乗り越え空中へ。
同時に火を噴く、四肢に装備した指向性付与ガジェット。
パイロキネシスの爆炎がザ・フューズの体を急加速。
そして空中に設置したエクトプラズム・プレートに着地。
それを繰り返す事で実現される高速の空中移動。
ザ・フューズは数分で現場上空へと到達。

>「リジェネレイター!ニーズヘグをこっちに引き付けて!
 バリアのせいで敷地の奥の方には地脈が繋げられないから!
 寄ってきた奴を片っ端から爆殺してこ☆」

戦況を俯瞰。
爆炎と、無数の敵性兵器――ニーズヘグの残骸によって描かれた「戦線」がよく見える。
それがテスカ☆トリポカの間合いの境目という事なのだろう。
ザ・フューズは通信機に指を添える。

「こちらザ・フューズ、現場上空に到着した。
 これより近接航空支援を開始する。前に出過ぎるなよ」

協会本部が制圧されている以上、通信は傍受されていると見るべき。
だが事前連絡のない火力支援など、友軍への不意打ちも同然。
炎と地形を操るザ・フューズの攻撃は、特にだ。

まずは周囲に二つ、エクトプラズム・キューブを形成。
対空射撃に対する防壁を展開、維持する為の疑似脳だ。

次に地上へエクトプラズム・プレートを形成。
地面と水平に、小さく何枚も。
つまり破壊困難な移動妨害。

そして――爆撃を開始。
もっともアダマス合金製の装甲は、ザ・フューズの火力では破壊出来ない。
ほんの小さなへこみすら、与える事は叶わない。
エクトプラズム・ブレードも、機銃が主兵装のニーズヘグ相手には火力になり得ない。

故にザ・フューズは――爆破するのではなく、燃やす。
高熱の炎に晒され続ければ、内部の電子部品や弾薬を破損させられる。
既にプレートによって協会内部への退路は封鎖済み。
必然、加熱による機能停止を避ける為には前進する他ない。
つまり、テスカ☆トリポカの間合いへと飛び込んでいく事になる。
これで屋外にあるロボットに関しては問題なく制圧可能――

>「マズハ近クカラ、デスネ【アタックプログラム;アダマスソード】」

ザ・フューズがそう判断した直後の事だった。
協会本部の窓から二人の子供が投げ出され、更にNo14が飛び出したのは。
0286ザ・フューズ ◆YGhdY0kduEHV
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2019/03/19(火) 22:34:09.96ID:jk+yobKF
「なっ……!」

ザ・フューズは咄嗟にプレートを形成――出来ない。
子供達は既に落下による加速を得ている。
硬質なプレートで無理に受け止めようとすれば、それは救助ではなく、殺傷になる。
どうにか死なせずに済んだとしても、空中で彼らを固定してしまえば、それは射撃の的でしかない。

>「失礼!ソコノオ二人サン!ワタシ達ノ変ワリニ、アノ蜥蜴ノ相手ヲ、マカセマシタヨー!」

それでも結果的には、子供達は無事だった。
No14はニーズヘグの一部を蹴散らすと、そのまま子供達を受け止めて、敷地外まで離脱。
そうして残る機体もテスカ☆トリポカの間合いへ追い込まれ、破壊される。
0287ザ・フューズ ◆YGhdY0kduEHV
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2019/03/19(火) 22:36:55.72ID:jk+yobKF
「……上空から見た限り、このエリアは確保出来た。まずはここの維持に努めるぞ」

ザ・フューズは地上に降りて、リジェネレイター、テスカ☆トリポカと合流。

「重役出勤してくるヌルいヒーローどもがまだいるはずだ。
 ソイツらが到着したらこの場を任せて、中に踏み込む。それでいいか?」

移動、交戦、制圧、確保、移動。
極めて模範的な制圧戦の段取りを提案するザ・フューズ。
その態度は至って冷静。

「それと」

>「オービット、スカとポカ、援護ゴ苦労デアッタ!」

だが彼女がNo14に視線を向けた瞬間、その声と眼光に、二つの感情が宿る。

「……人の命で博打を打つのは楽しかったか?ブリキ人形」

感情の名は、軽蔑と落胆。
 
「私は、お前のごっこ遊びに付き合うつもりはない。
 前衛はお前が努めろ。役に立つ内は援護はしてやる」

あの二人の子供が無傷でいられたのは、ただの幸運だ。
想定よりも多くの敵性兵器が彼らに反応していたら、
あるいはNo14の乱入に十分な反応が得られなかったら、
協会の防衛システムが停止ではなく奪取、再利用されていたら――あの子供達は、死んでいた。
もっと安全で、もっと上手いやり方があったはずだ。

一体いかなる理由でNo14の態度が変化したのかは、ザ・フューズには分からない。
だが、確実な勝利と己自身を擲ってでも人の命を守ろうとした――ザ・フューズが一流と呼んだヒーローは、ここにはもういない。
いるのは、不確実な勝算を頼りに、人命を危険に晒す――三流以下。
それだけで、彼女が落胆と軽蔑を抱くには十分だった。
0288神籬明治 ◆AHrbOT0cTo
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2019/04/02(火) 23:41:35.33ID:kxtS2IWR
【すみません、今多忙なので猶予をください!
 金曜日には投下できると思うのでお願いします!】
0290神籬明治 ◆AHrbOT0cTo
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2019/04/05(金) 23:51:38.21ID:yMxGM4mk
現場に到着したヒーローと合流するという当初の予定は成功し、
早速レイラインアクセスで駆けつけてきたテスカ☆トリポカと情報を交換する。
協会本部には対魔法プロテクトがかかっているらしく、瞬間移動で突入は不可能らしい。

>「わ!わ!こっち見た!こっち来た!」

話し込んでいる隙にニーズヘグに捕捉され機銃斉射が開始される。
口部より開帳された機銃は弾丸の雨を吐き出しこちらへと殺到してくる。

>「大地の結晶!」

咄嗟にテスカ☆トリポカが黒曜石の山を形成して防御する。
だが機銃の威力を前にガリガリと黒曜石は削られていく。
突破されるのは時間の問題。手早く再度魔法を行使し、飛び散った黒曜石の破片が旋回し始める。
そしてニーズヘグの排気孔へと侵入。内部より魔法で起爆され、斉射を敢行していた数体が爆裂した。

>「公共の場での銃撃は……違法行為だよ☆」

「見事なお手並みだぜ。流石はテスカ☆トリポカ!!」

テスカ☆トリポカの魔法を見てオービットは率直に感想を述べた。

>「リジェネレイター!ニーズヘグをこっちに引き付けて!
> バリアのせいで敷地の奥の方には地脈が繋げられないから!
> 寄ってきた奴を片っ端から爆殺してこ☆」

「了解した」

引きつけるためわざと目立つように飛翔すると、ニーズヘグの内一体が獰猛な機械の瞳を光らせてこちらへ接近してきた。
ニーズヘグは両腕からクローを展開してリジェネレイターの排除を開始した。剛腕を振り上げ飛び掛かって来る。
注釈をつけておくとロボットであるため攻撃の予兆は読めない。が、リジェネレイターとて素人ではない。
長きに渡るヴィランとの戦いで磨かれた格闘能力とスーツの索敵能力があれば並みのヒーローと同レベルには戦える。
カウンターで回し蹴りを浴びせて怯んだところで背負い投げ。竜は横転しながらテスカ☆トリポカの方へと転がっていく。

「こっちだこっち!もっと近づいてこい!」

意味があるのかないのか、オービットも適当に野次を飛ばした。
0291神籬明治 ◆AHrbOT0cTo
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2019/04/05(金) 23:52:29.60ID:yMxGM4mk
リジェネレイターに気付いた他の個体達が銃撃の射程まで接近してくる。
口部より機銃がせり出して発砲された時、リジェネレイターは爆裂した個体を引き摺り盾にした。
アダマス合金の装甲と機銃の弾丸が衝突する。

「よっし、悪くないアイデアだリジェネレイター。そのまま敵を引きつけろ!」

鉄塊と化したニーズヘグのなれの果ては順調に弾丸を防いでくれている。
機銃斉射を上手く防御しつつ敵を引きつけていると、にわかに喧騒が広まってきた。
異様を察知したマスコミや野次馬が本部の敷地外に集まり、それを警察が抑えているようだ。

「おおっと人気者は辛いねぇ。民間人を巻き込まないようにしねぇとな」

「俺達を見に来ている訳ではないと思うが」

「うっせぇな、分かってるよ」

>「こちらザ・フューズ、現場上空に到着した。
>これより近接航空支援を開始する。前に出過ぎるなよ」

スーツの通信機に響くザ・フューズの声。
同時、エクトプラズムのプレートが周囲に展開し、前方のニーズヘグ達が燃える。
プレートは協会へと逃げ込む退路を塞ぎ、前進を余儀なくされた状態だ。
機械の竜は灼熱の炎を纏いながらテスカ☆トリポカの射程圏へと接近してくる。

「ザ・フューズも来てくれたのか。ここの制圧は時間の問題だな。
 ……おっと!?気をつけろリジェネレイター、建物から飛来物だ!」

腕時計型端末の明滅と共に協会本部の窓から勢いよく何かが飛び出してきた。
弾丸をニーズヘグの残骸で防ぎながらHUDが捕捉したのはまだ幼い子供だ。
リジェネレイターは思わず頓狂な声を上げる。

「なんだと!?」

向いていた機銃の筒先がリジェネレイターから中空の子供たちへと移る。
恐らく現状に居合わせたヒーロー全員が驚いたに違いない。
幸いにしてニーズヘグが宿した破壊の吐息がその威力を発揮することはなかった。
0292神籬明治 ◆AHrbOT0cTo
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2019/04/05(金) 23:53:29.71ID:yMxGM4mk
子供たちと共に窓から飛び出していた影が彼らを狙う瞬時に機械の竜を切り裂いたからだ。
腕から生えた剥き身の剣が一体、また一体と敵を屠り、子供たちを狙う個体を全て潰したところで跳躍。
キャッチしたところで敷地外へと消えて行く。

「まさか――No14!?」

>「失礼!ソコノオ二人サン!ワタシ達ノ変ワリニ、アノ蜥蜴ノ相手ヲ、マカセマシタヨー!」

再び降ってくる弾丸の雨を前に状況説明を求めることもできず、リジェネレイターは気が気でない。
協会本部の周囲に人が集まってきている手前、彼に出来るのは迅速なこの場の確保だけだ。
やがてザ・フューズとテスカ☆トリポカの活躍により、周囲に展開するニーズヘグは全て片付いた。
一段落終えたところで上空にいたザ・フューズと合流する。

>「……上空から見た限り、このエリアは確保出来た。まずはここの維持に努めるぞ」

「ああ……だが敵はヒーロー協会を陥落させたほどの相手。
 所有している兵器があれだけとは限らないはず……。
 次はニーズヘグ以上のロボットを投入してくる可能性が高い」

「早く突入して協会の職員や駐在してたヒーローの安否を確認したいところなんだがな」

>「重役出勤してくるヌルいヒーローどもがまだいるはずだ。
> ソイツらが到着したらこの場を任せて、中に踏み込む。それでいいか?」

「俺とオービットに異論はない。そうしよう」

話が纏まったところで、ザ・フューズの視線が敷地外へと向けられる。
規制線の向こう側ではNo14が子供を助けた救世主として賞賛を浴びている真っ最中だ。
リジェネレイターもなんとなく敷地外の方へと視線を向けるとNo14の声が聞こえてきた。

>「オービット、スカとポカ、援護ゴ苦労デアッタ!」

「お、おう。サンキュー」

見当違いの相手への労いに、オービットは思考パターンをやや混乱させつつそう言った。
No14との関わりは前回の戦闘程度しかないが、性格が少々変わってしまった気がする。
主に口調や仕草といった雰囲気がだ。窓から急に飛び出してくる危なっかしさといい――。
そこまで思考を巡らせたところで、ザ・フューズの感情の色を読んでしまった。

>「……人の命で博打を打つのは楽しかったか?ブリキ人形」

軽蔑と落胆。ザ・フューズの感情は世間が抱いているであろう感情とは真逆のものだ。
No.14のとった行動は人命の救出を齎したが、それは確実な方法ではなかった。
より正確に言ってしまえば、今のNo.14はヒーローとして子供を助けた訳ではなかったのだろう。
0293神籬明治 ◆AHrbOT0cTo
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2019/04/05(金) 23:54:06.85ID:yMxGM4mk
>「私は、お前のごっこ遊びに付き合うつもりはない。
> 前衛はお前が努めろ。役に立つ内は援護はしてやる」

「なぁなぁ、フォーティーンちゃんよ。ザ・フューズはおこだけど世間一般はお前の味方だろうぜ。
 【速報】廃棄予定のロボットヒーロー、颯爽と子供たちを救助!!まだ事件も解決してないのにネットは呑気なことで」

No14の救出劇はセンセーショナルなもので、世間を賑わせているようだが実際のところは芳しい状況でない。
何せメトロポリスの治安を守る要が陥落しているのだ。この騒動が続くほど他のヴィランへの対応は遅れ、
反社会勢力の活動を活発化させかねない。ヒーロー協会にとっては大きすぎる失態であり、一刻も早い火消しが望ましい。

「オービット……戦闘中にネットサーフィンはやめないか」

「AIは必要なことしかしない……別に遊んでた訳じゃないさ。世論を読んでたんだよ。
 だから言っておく。さっきの救出劇はセンセーショナルだった。でも結果オーライで済ませる訳にはいかない。
 暴走……いや、ただの殺人兵器に戻っちまってるかもしれないロボットにこれ以上戦闘なんてさせられないからな」

オービットの平坦な機械音声をリジェネレイターは黙って聞いていた。
リジェネレイターはNo14が暴走する危険性を取り除いてやりたいと考えていたし、廃棄にも否定的だった。
オービットもまた同様だ。しかし、それとこれとは問題を切り分けて考えている。
エラーを解消していないロボットの戦闘などヒーローの相棒として看過できない。

「ザ・フューズ、悪いが俺はNo14と一緒に戦うのは反対だな。リスクが大きすぎる」

相棒の意見をひとしきり聞いたところで、リジェネレイターは貝のように重い口を開いた。

「……俺は、No14の意志に任せる。彼女は子供たちを助けた。悪意も感知していない。
 協会の中にはまだ生存している人がいる。俺には感じるんだ。中にいる人が発する苦しみや恐怖の感情が。
 ……No14、その人達を助けるつもりはあるか?もしあるのなら……俺達と一緒に戦ってほしい。君の力が必要だ」

「おい。俺の話聞いてたか?」

「誰かを助けたいという気持ちと、ヴィランに立ち向かう勇気。それがあれば誰もがヒーローだ。
 でもヒーローだって完璧じゃない。だから足りない部分はサポートし合えばいいし……何かあれば止めればいい。
 No14は確かにヒーローだった。いち同業者として、No14のヒーローとしての意志が消えていないと俺は信じたいんだ」

「……分かったよ。お前がそう言うのなら。悪かったな、No14」

沈黙した腕時計型端末から三人のヒーローへと視線を移し、リジェネレイターの行動指針は決定した。
他のヒーローが到着次第、ザ・フューズ、テスカ☆トリポカ、No14と共に協会本部に踏み込む。
そして残されている非戦闘員および負傷者を救出――首謀者たるヴィランを制圧する。
0294神籬明治 ◆AHrbOT0cTo
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2019/04/05(金) 23:55:18.01ID:yMxGM4mk
一同が確保した敷地内のエリアに新たな敵性兵器が現れた。
敷地の奥に潜んでいた残りのニーズヘグと、協会本部の中から現れた新たなロボット。
ニーズヘグより一際大きい、四つ足の赤い機械の竜だ。

「あれは対人殺戮兵器『ファーブニル』か……!
 宇宙人の技術を流用して開発された新型ロボットだな」

オービットの機械音声に無言で頷くと、リジェネレイターはニーズヘグの残骸を盾に臨戦態勢に入った。
ファーブニルはニーズヘグと共に口部を開いた。中からせり出してきたのは――敵を焼き殺す強力なプラズマ・キャノン。
スペック上アダマス合金にも通用する威力を秘めた兵器だ。まさにその破壊力を開放せんとした時、鋭い一声が機先を制する。

「そこのまっすぃーん達、ちょった待ったぁ!!」

プラズマキャノンと機銃の放った破壊の嵐はヒーロー達ではなく声のする方へと放たれた。
リジェネレイターは咄嗟に声のした方向へ視線を移したが、誰もいない。
殺戮機械達は虚空へと向けて斉射を行っている。機械に設定された危険度が眼前のヒーロー達より高いからだ。

「あわわ……やっぱりタイム……攻撃激しすぎ……まだ変身してない……」

またもや声だけが聞こえてきた。幻聴の類ではない。
リジェネレイターはこの異様を解き明かすこともできず疑問符だけを浮かべていた。
しかし、事はそう難しい話ではなかった。魔力を感知し知覚できる者なら容易に理解できる。
何もない空間には誰かがいる。魔法を行使し、光を操って姿を消せる者がそこにいるのだ。

そうして姿を消して誰にも気づかれずそろりそろりと敷地内に侵入できたという訳である。
だがファーブニルもニーズヘグも敵を探知する時はカメラだけでなく熱や音といった様々なセンサー類を用いる。
姿を消せたとて即座に存在を認識し、照合して敵味方を識別。攻撃に移行する。

答えを明かしてしまえば、何もないはずの場所では一人の少女が魔法で必死こいて斉射を防いでいた。
銀色のショートヘアにアーモン形の赤い目をしている。ちょっときついが美人の部類だ。
もっとも恵まれた容姿を台無しにする瓶底眼鏡をかけていなければ。セーラー服を着ている辺り公立の女子高生だろう。
女子高生は両手でワンドをぎゅっと握りしめながら、功名心からくる自身の迂闊な行動を呪った。

「ああっ……終わりのないディフェンスでもいいよ。
 消えてる状態で変身するってカッコつかないけど、背に腹は代えられないよね……?」

いずれにせよ、消えてる状態で変身するしかなかった。
敷地外には多数の野次馬や報道機関、警察でごったがえしており、空撮用のドローンも飛んでいる。
ちょっとした遊び心で抱いたであろう"カッコ良く登場してから変身"は実現し得なかった。
0295神籬明治 ◆AHrbOT0cTo
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2019/04/05(金) 23:56:18.93ID:yMxGM4mk
魔法で作った光の盾の後ろで、くるくると器用にワンドを回し――変身。
星を象ったワンドの先端から煌びやかな輝きを散りばめながらその姿を光輝に染めあげる。
なお、彼女は現在透明であるため、その変身プロセスを目視する事は叶わない。

「みんな、元気?私は元気!!だって私は闇を照らす希望の光!!!!」

虚空から派手な発光を伴って現れたのは、白金の衣装を纏った一人の少女。
目も眩む銀髪の長いツインテールに素顔を隠すような派手なメイク。
右手のワンドを振るうと、周囲に星型のユニットが次々と召喚されていく。
野暮ったい瓶底眼鏡の女子高生は見る影もなく、その姿はまさしく煌びやかなアイドルだ。

「歌って踊れるアイドルヒーロー!!魔法少女スターレインっ!」

口上を唱えている間も続く無粋な斉射を魔法による光の盾で防ぎつつ――。
びしっと触媒である「スターライトワンド」を敵性兵器に突きつける。

「もう好きにはさせないぞっ、こんな鉄の塊ちょちょいのちょいっと星屑にしてあげちゃうから!」

魔法少女『スターレイン』。テレビやニュースで頻繁に取り沙汰される人気ヒーローの一人だ。
彼女のような一線級の人気ヒーローを誰が言ったかアイドルヒーローと呼ぶ。
スターレインは正義の女神アストレアと契約した魔法少女(光属性)であり、
堕落した人類を見放して地上を去ったという女神が残した最後の希望――悪を挫き、人々を守る正義の使者。

「お願いアストロビット!裁きの光で焼いてあげて!!」

周囲に展開する星型ユニットがスターレインを中心に円運動を開始する。
光を帯びたユニットは次々にマジカルレーザーを発振し、ニーズヘグ達を焼き、爆裂させていく。
伊達にアイドルヒーローと持て囃され人気を得ている訳ではない。
アダマス合金の装甲を絡め手なしの単純攻撃で突破するなど、彼女にとって造作もない事だ。

スターレインの登場がドローンによって瞬く間に周知に知れ渡り、敷地外の野次馬は一層増加した。
まさしくアイドル的人気によってファンが押し寄せ、規制線の向こう側は混乱に陥っていた。
アストロビットを操作しながらスターレインはかぶりを振る。

「はぁ、私ってなんて罪な魔法少女なんだろう……」
0296神籬明治 ◆AHrbOT0cTo
垢版 |
2019/04/05(金) 23:57:05.90ID:yMxGM4mk
星々を司る魔法少女が四名のヒーロー達の方を振り向いた。

「ところで、話聞こえてたけど私はここの敵を倒せばいいのよね?
 でも大丈夫かな……心配なんです。中のヴィラン結構つよそーって聞いてるし……あ!!」

協会本部から飛び出してきた新たなニーズヘグ達がザ・フューズやテスカ☆トリポカ目掛けて銃撃を開始した。
銃弾は猛烈な勢いでヒーロー達へ迫るも、その全てが時が止まったように空中に静止した。
直後、敷地の端に一人の男が佇んでいた。男は翳した手をニーズヘグ達に向けると、静止した弾丸が機械目掛けて飛来する。
弾丸はアダマス合金の装甲によって阻まれるが男は動じない。

「……君はヒーローの母親か?人気者の傲慢だぞ。
 彼らとて命を賭ける覚悟は出来ているだろう。余計な心配は無用だ」

彼は正々堂々免許を警察に提示して規制線を越えやって来たアイドルヒーローの一人。
漆黒のローブにフードで顔を隠した特徴のないシンプルな見た目――あまりに簡素なので不審者にも見える。

正会員である彼は、メトロポリス郊外で行われていた誘拐事件を追っていたため本部には生憎不在だった。
――複合能力者『ネメシス』。テレキネシスにテレパシー、テレポーテーションなどを備えたサイキックヒーローだ。
恐るべきことに、一切の能力強化や改造を行わず先天的に複数の強大な超能力を備えていたという稀有な存在である。

「顔を合わせるのは初めてのようだが、自己紹介や余計な親交は省く主義でね。俺のことは特に知らなくていい。
 だがここは任せておけ。ドローンの空撮で戦闘を見ていたが、君達の火力では雑魚を掃討するのに手間がかかりすぎる」

スターレイン目掛けてプラズマキャノンを連射するファーブニルに手を翳し、握り潰すような仕草を見せた。
するとアダマス合金製の装甲がみるみるうちに陥没し、ひしゃげて遂には爆発した。
強大なテレキネシスによる圧力で強引に破壊されたのだ。

「俺ならそう手間はかからない。しくじるなよ」

「よし……今なら踏み込める。皆、行こう!」

スターレインとネメシスにその場を任せ、協会本部へと突入した。
二人の支援のお陰で機械の竜たちの攻撃は一切こちらへ届かない。

協会の中は広いオフィスは激しい戦闘の爪跡でしっちゃかめっちゃかになっていた。
そこかしこに機械の残骸や血痕――ニーズヘグの銃撃による死者が残されている。
凄惨な光景を前にリジェネレイターは自身の無力さと込み上げてくる怒りを感じた。

「中は手薄だな。最優先は生存者の保護だ。リジェネレイター、感知してるか?」

「……ああ。だが、各階に点在していてまばらだ。保護には時間を要するだろう。
 交渉を一切行わない点といい、ヴィランには人質を取るという考えはなさそうだ……」

「……そうだろうな。奴にとってメトロポリスの住人は殲滅の対象でしかない。
 そんな発想は最初から持ち合わせていないんだろうよ」
0297神籬明治 ◆AHrbOT0cTo
垢版 |
2019/04/05(金) 23:58:59.50ID:yMxGM4mk
生存者を保護すべく奥へと進もうとした時、協会内のスピーカーが起動し、男の声が響いた。
声色からして四十代くらいの、中年の声だ。声の主は――間違いなく犯人のヴィランであろう。

「……旧約聖書の創世記において、悪徳と頽廃の象徴とされるソドムとゴモラは天からの硫黄と火によって滅ぼされた。
 この世に神はいる。だが悪の蔓延るこの世に裁きを下す事はないのだろう。現代の悪徳と頽廃の象徴――……。
 メトロポリスは、こうして天の裁きを下されることなくのうのうと存在しているのだから」

深く沈んだ澱みの溜まった声が響いて間を置かず、天井が崩落した。
勢いよく破片を撒き散らしながらパワードスーツに身を纏った男が姿を現す。
漆で塗ったような漆黒の装甲に、竜のような頭部に尾、胸部に煌々と光を蓄えた球形の核。

「この世界は病んでいるよ。故に、私は私の信じる正義を実行に移すまで。
 全ての悪の源、このメトロポリスを滅ぼす。貴様にこれを言うのは三度目だな……リジェネレイター。
 そちらの方々はNo14、テスカ☆トリポカに……ザ・フューズか。会うのは初めてになる。私は『アンチマター』だ」

ヴィランの出迎えに対するリジェネレイターの答えは即時応戦。
スラスターを全速で吹かして跳躍し、竜巻のような回転を加え――頭部目掛けて渾身の蹴撃。
パワーアシスト機能も加わった、常人には回避不能の一打。
何人もの命を奪った人間に投降を呼びかける必要などない。無言で制圧するだけだ。

「ふっ……何度殺してやっても私の前に立ち塞がるか。相変わらずだな」

アンチマターはリジェネレイターの蹴りを最小限の動きで躱す。
見切っていたと言わんばかりに、着地の瞬間を狙って尾が槍のように鋭く迫った。
リジェネレイターは咄嗟に身を捻り、スラスターを噴出して方向転換。尾の攻撃を回避。

「流石は私の宿敵だと評しておこうか。まぁ……替え玉ヒーローが宿敵というのも妙な話だがな。
 中身が誰かは知らんが、代替品の偽物風情が私の邪魔をしないで欲しいな……いい加減鬱陶しいぞ」

「距離を取れリジェネレイター!こいつに闇雲な攻撃は通じない。お前の能力もアンチマターには無意味なんだ。
 あいつはさっきの一連の動作で何もしちゃいない。全部AIが自動でやったことだ。戦闘中に感情なんて籠らない」

オービットの忠告を聞いてリジェネレイターはスラスターで跳躍し、一時戦闘距離を保った。
幾度かの交戦経験により、オービットはアンチマターの手の内を多少把握しているが、あくまで"多少"の範囲だ。
何故なら彼のパワードスーツは戦闘毎に更新され、常に装備が変わる。事前情報は無意味に近い。
0298神籬明治 ◆AHrbOT0cTo
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2019/04/06(土) 00:01:44.61ID:RDsLSfeh
リジェネレイターはアンチマターの言葉を理解できずにいた。いや、本来理解する必要はないのかもしれない。
たとえ如何なる理由があっても、アンチマターの足元に広がる無数の亡骸がその残虐性を物語っているからだ。
アンチマターは、殺意も悪意もなく、ただ無表情に自身が生み出した殺戮兵器でこの凶行を行った。

リジェネレイター・神籬明治の信じる正義とは、自身の力を平和のために、人々を助けるために行使することにある。
アンチマターもまた自分の正義を持っているつもりなのは共感覚で読めていた。だから彼の言う正義が何なのか理解し難い。
正義という言葉を使いながら、破壊と虐殺を起こすアンチマターが。

「……なぜだ?なぜこんなことをした?ヒーロー協会を襲うことが、お前の正義なのか。
 罪もない人の命を奪って何が正義だ。俺には分からない……どうしてこんな残酷なことができる!?
 彼らには家族がいた!愛する人も!帰るべき場所も!なぜヴィランはこんなことを平気でやれるんだ!?」

普段口を開かないリジェネレイターの口がこの時ばかりは滑らかになった。
それはヒーローでなく、犯罪者の手によって肉親を失った一人の少年の慟哭だった。

「お前の言う通り、この街は確かに悪で満ちている……誰かを陥れようとする暗い感情が渦巻いてるのは事実だ。
 でも、それ以上に皆が抱いているのは苦しみと、恐怖と、絶望だ。誰も手を差し伸べなんかしない。
 超常の力が蔓延する今の社会は、法の整備も対応もまるで不完全だからだ」

自分の立場も状況も忘れて、拙い言葉で必死に問いかける。

「だからこそ俺達は立ち上がった!悪から人々を守り、何も怖くなんかないんだと手を差し伸べてやるために!
 それがヒーローで、そのためのヒーロー協会だ。なのになぜ、こんなことをした!?」

リジェネレイターは今までにないほど強く憤りを抱いていた。
たとえどんな返答が待っていようと、神籬明治は、アンチマターを許さないだろう。
アンチマターは少しの間を置いて腕を組んだまま静かに口を開く。

「私の邪魔をするからだ。それに……偽善者を叩き潰す事に何か躊躇いがいるか?
 少し私の話をしてやろう。私は今よりずっと未来の世界……23XX年からやってきた時間旅行者なのだ」

アンチマターの沈んだ声が語り始めたのは今より未来――23XX年についてだった。
未来の世界は非合法組織やヴィランがメトロポリスのみならず全国に蔓延る荒廃した時代にあった。
悪の歯止めとなっていたヒーロー達は時を経るにつれて数を減らしていき、遂には腐敗してしまった。
未来のヒーロー達は私欲や既得権益のためにのみ超常の力を振るう、まさしく偽善者に成り果てていた。

「酷い時代だった。非合法組織の活動が社会基盤を半ば崩壊させ、一般人は日々の食事さえままらない……。
 私は両親の顔も知らない。掛け替えのない友人や愛すべき人も、すぐこの世を去った……大切なものなど全て失ったよ」

アンチマターと呼ばれた男は、未来では継見隆一という優れた科学者だった。
度重なる抗争や犯罪行為によりディストピアと化した世界に、安寧を齎したいと常々継見は考えていた。
しかし彼一人の力では腐り切った23XX年の荒廃を止めることなどできはしなかった。
そして遂に思い至った手段こそ、歴史改変である。
0299神籬明治 ◆AHrbOT0cTo
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2019/04/06(土) 00:03:12.38ID:RDsLSfeh
過去に跳躍し、未来が荒廃する要因を全て取り除くことで、苦しみのない平和な世界を生み出そうと考えた。
科学者という立場はこういう時に便利だ。過去の資料を片端から集めて量子コンピューターに計算させた結果、
荒廃を回避するには20XX年にメトロポリスで増加した特異能力者の出現に伴う非合法組織の台頭を阻止すべきだと判明した。
継見は研究に没頭した。研究の歳月が二十年を過ぎた頃、遂にその成果が芽を出す。

「歴史改変による解決策を模索していた私は、実験の過程で過去の時代――このメトリポリスに流れ着いた。
 時間跳躍のための装置は事故によりこの手から離れ、いずこかへと消え去った……私は途方に暮れた」

不意にアンチマターの鈍く輝く鋼鉄の尾が動いた。
尾はヴィランの手元へ滑り込むように動くと、大きく脈打ち、先端が蕾のように開く。
中から現れたのは青白い立方体のオブジェ。その形状、装飾、光放つ輝きには見覚えがある。

如何なる科学、超能力、魔法といえど、容易に到達できぬ至高の領域の力。
ファイアスターターやロックバインの所属する組織はその力を欲してきた。
彼らだけではない。ありとあらゆる非合法組織が、あると知れば手に入れようと画策するだろう。

「だが……運は私を見放してなどいなかった。時を操る我が発明、キューブは確かに私と同じ時代に流れ着いていた!!
 不完全なため長距離の跳躍は不可能だが、完成させれば自由に時代を跳び、自在に歴史を改竄する事が出来るだろう!!」

この装置ばかりは23XX年以降の技術と彼の頭脳でしか生み出せない。20XX年の科学力で再現する事は不可能だ。
尾が再びキューブを飲み込むと、リジェネレイターはアンチマターの高揚を感じとった。
平時戦闘で感じるおどろおどろしい悪意も刺すような殺意も感じない。
リジェネレイターはアンチマターの攻撃の予兆を読めなかった。

「私は必ず未来を平和にしてみせる!それが私に唯一残された正義だからだ!
 その最善の手段は20XX年のメトロポリスに消えてもらうことだ!!
 障害となるものは誰であろうと排除しよう!手段は選ばん!!」

アンチマターが左手を前に伸ばすと、リジェネレイター目掛けて光線が照射された。
光線は前衛にいたリジェネレイターを牽引し、アンチマターまで引き寄せられる。
『トラクタービーム』だ。古来宇宙人がUFOで人を攫う時に発する、あの光と同種のものである。

継見隆一が装着するアンチマター・スーツは20XX年にやって来た際に継見の手で製造されたものだ。
基幹技術は普及しているパワードスーツと同種だが、この時代のあらゆる技術の粋を集めて製造された。
開発者は未来の頭脳を持つ科学者なのだ。リジェネレイター・スーツなど比べ物にならないほど高性能だった。

「リジェネレイター、因縁と思って話してやったがそれもこれまでだ!まずは貴様から死んでもらう!
 この場所が貴様の墓標、七代目はいないものと思え。また説明してやるのが面倒だからなァ!!」
0300神籬明治 ◆AHrbOT0cTo
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2019/04/06(土) 00:05:26.30ID:RDsLSfeh
怪光線によって捕獲されたリジェネレイターの身体が空中を舞う。
スラスターを吹かしても脱出できない。牽引する力の方が圧倒的に強いのだ。

「まだだ!」

すかさず右手から不可視のフィールドが展開された。
トラクタービームを引力とするならこのフィールドは斥力だ。
『リパルションフィールド』と名付けられた、あらゆる攻撃を弾く盾。
テスカ☆トリポカ、No14、ザ・フューズが攻撃を加えても全てはこの盾に阻まれるだろう。

リジェネレイターの直感が告げる。攻撃の予兆を読めない以上、ここは回避に専念するべきだと。
空中機動による脱出は不可能だが方向転換は可能だ。アンチマターとの衝突を躱そうと左へ身を捻ろうと考える。
思考と同時、アンチマターが竜の如き頭部を前に突き出し猛進。
高速で敢行された頭突きがリジェネレイターの身体を大きく吹き飛ばした。
仮面の奥で血反吐を零して、それでも地面に倒れ込むまいと着地する。

瞬間、アンチマターの拳を目の端で捉えた。
スウェーで避けようとしたところで、拳の軌道が大きくスイッチした。
頭部狙いのアッパーから胸部狙いのストレートへ。ガードが間に合わず胸骨を砕かれる。

猛攻が続く格闘戦の中、リジェネレイターは数秒も経たずに追い込まれていた。
共感覚(エンパシー)が役に立たない上に、動作全てが先読みされている。
まるで能力をフルに使って戦う自分を相手にしているような錯覚に陥っていた。

「リジェネレイター!あれだ!あれを使え!!」

「どんな抵抗も無意味だ!さぁ、奪わせてもらおうか、貴様の未来!!」

鋼鉄も凹ませる拳を六発食らい、大きくよろめいた時、胸倉を掴まれ恐ろしい膂力で宙に放り投げられる。
胸部に収められた球形の核が発光した。光は収束して極太の光線と化し、空中のリジェネレイターを襲う。
光の奔流が本部のビルを縦に貫く。轟音が響き、穿たれた上階が瓦礫の山となって落ちてくる。
アンチマターは舌打ちをしながら三人のヒーローの方へと振り向いた。

「……待たせたな。次は貴様らだ。もっとも手の内は知っている。
 私の時代のヒーローと同じ、醜い偽善者だということもな……」

キューブの行方を密かに追っていたアンチマターは、偶然あの夜の戦いをドローンで監視していた。
ファイアスターターとロックバインと繰り広げた、あの夜の戦いを。

アンチマターに戦闘データを収集されたという事実は単に手の内を把握されたという事だけに留まらない。
周囲に偏在する様々な情報を収集・分析する事で未来を読む統合未来予測システム『アイズオブヘブン』が機能するからだ。
リジェネレイターとの攻防で見せた先読みも全ては高精度な未来予測によるもの。最初から神籬に勝ち目はなかった。
0301神籬明治 ◆AHrbOT0cTo
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2019/04/06(土) 00:07:55.17ID:RDsLSfeh
アンチマターの当初の目的は既に達している。
キューブを手に入れた以上、ここに用はない。にも関わらず自分から姿を現したのは他でもない。
未来に不必要な存在を確実に消しておこうと思ったのだ。悪しき芽は摘んでおくに限る。

「私の時代が荒廃したのも元を正せばメトロポリスのヴィラン達が原因だ……。
 だが、何も守れず、何も果たせず、正義を気取るだけの貴様らの罪も中々にデカイ!!!
 何がヒーローだ笑わせるな!ならば今すぐこの病んだ世界を救ってみせろ!何もできない屑どもが!!」

アンチマターは二度、床を殴りつけた。床板がめくりあがって大きくのたうつ。
無論、これは戦闘を代行するAIが行ったのではない。元来科学者である中身は迂闊に敵に攻撃できない。
戦闘に関してはほぼ素人だ。それでもどうする事も出来ない、ぶつけようのない怒りが、彼を突き動かした。

「ただの無能であるならいざしらず、ヒーローは人々を守るどころか私欲にまみれた偽善者に過ぎなかった!
 それは私の未来が証明している!いや……既にそうなのだ!貴様らのことだよ!!胸に手を当てて考えてみろ!!
 貴様ら三人は、公然と人を殺せる立場を手に入れただけの存在……ヴィランとそう変わらんわ!」

アンチマターの双眸が怪しく光を灯す。AIが起動して戦闘態勢に入った合図だ。
まず狙うのは魔法少女テスカ☆トリポカだ。武器はマクアフティル、能力は黒曜石の生成と起爆、瞬間移動。
確実に仕留めるために有効だと思われるのは、黒曜石を突破する破壊力と、瞬間移動後でも命中を見込める追尾性能。
よってAIが選択したのは、両肩に内蔵している無数の小型追尾ミサイルだ。

「テスカ☆トリポカ!神の力を借りていながら貴様は罪深いなぁ!
 正直になったらどうだ?本当は快楽に溺れていたいだけなんだろ……?
 折角だから教えておいてやろう!!薬物由来のその力、今は合法でも未来では違法だ!!!!」

発射された無数の誘導弾が狙い過たずテスカ☆トリポカへと迫る。次の標的はNo14だ。
ロックバイン戦とニーズヘグとの戦闘データから分析するに、No14に接近されるのは極めて厄介だ。
なにせアンチマタースーツは機械の塊。相手に武器を奪われるのは得策ではない。
また、アダマス合金製の装甲もNo14のアダマスソードの前には効果的とは言えない。
相性が悪いかに見えるNo14だが、彼女にも弱点はある。電力だ。

「K-doll No14!憐れだな!自我を持ったが故に世間に持て囃され踊らされているとは!
 機械は作られた時から役割が決まっている!役割を満足にこなせぬ欠陥品は処分される運命なのだ!
 殺人機械でもない、人間にも奉仕できない、何の価値もないではないか?社会は廃品業者ではない、消えろ!!」

スーツの各所が展開して発振管が露出する。多数の内蔵式光学兵器――高威力の拡散ビームがNo14を襲う。
面を制圧する拡散ビームなら接近を許さず、よしんばバリアで防ごうものなら多大な電力消費を見込める。

「ポンコツが……開発者がどれだけ優秀だろうと未来の頭脳には敵わないと理解するんだな」

アンチマターは最後にザ・フューズの方を向いた。
能力は発火、物質生成。生成できる物質は鉄板程度の硬度を持つプレートと人体。
癖の強い能力だが、超能力の規模は掃いて捨てるほどいる程度、というのがアンチマターの評価だ。

「悪徳ヒーロー、ザ・フューズ。まさしく偽善者と呼ぶに相応しいな。
 貴様のような存在をのさばらせる事自体がヒーロー腐敗の象徴……!ヒーロー協会は潰れて当然だった!!
 いったいどの面を下げて生きていられるんだ……?私は許せんのだ、偽善者が平然と正義を語ることがな!!」

防御手段が鋼鉄程度ならスーツの兵器で十分対応可能。注意すべきは人体生成による回復だろう。
AIが自動選択したのは、両腕に仕込んでいるアダマス合金も切り裂くレーザーカッターだ。
両腕から放たれた非実体の光速剣が合計十本ザ・フューズに斬りかかる。

「貴様に関しては『排除』ではなく『裁き』を下す!超能力で甦るのなら何度でも殺してやる!
 何度でも、何度でもだ!!死んで正義を騙り、人々を陥れてきた罪を贖うがいい!!」
0302神籬明治 ◆AHrbOT0cTo
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2019/04/06(土) 00:11:00.95ID:RDsLSfeh
【すみません、大変お待たせしました。
ヒーロー協会本部に突入。主犯のヴィランに遭遇、交戦開始】
0304山元 ◆Oz.F7tLMnc
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2019/04/21(日) 02:13:37.75ID:a7wPmase
テスカの要請を受けてリジェネレイターがニーズヘグの群れに吶喊する。
機動力の優位をうまく使った立ち回りは、彼がこれまで培ってきた経験の集大成だ。
一山いくらで量産されるガラクタ如きが捉えられるものではない。
こちらまで投げ飛ばされてきたニーズヘグを、テスカは黒曜石の起爆で仕留めた。

「いまのとこはこっちの有利……かな」

『そうとも言えまいよレディ。敵の目的が我々増援のヒーローを正門前に釘付けにすることなら、
 まんまと遅滞戦術に嵌っていることになる。建物内の状況は未だ不明だ。
 ニーズヘグを使い捨てにして、今まさに内部で本命の作戦が進行中かもしれない』

「突入したい……けど!なんとか数減らさないとジリ貧のまんまだよぉ☆」

ニーズヘグは強力な殺戮兵器だが、ヒーロー二人が連携すれば大きな損害なく殲滅できるはずだ。
だが、時間がかかりすぎる。未だ群れの大多数は対魔法結界の内側で、能動的に攻撃を仕掛けられない。
少数ずつ誘き寄せてカウンターをとる他なく、戦況のイニシアチブは以前敵方にあった。
そして、時間が経てば増援が訪れるのは、ヒーローに限った話でもない。

「ひぃー!追加発注が来ちゃった!」

本部ビルの上空を制圧していたニーズヘグ達が正門前に集まって来ている。
倒した分だけ新たな敵が補充されるその光景は、途方もない千日手を思わせた。

>「こちらザ・フューズ、現場上空に到着した。これより近接航空支援を開始する。前に出過ぎるなよ」

その時、貸与されている通信機から聞き覚えのある声が飛んできた。
テスカの射程距離より遥か先にいたニーズヘグ達が一斉に炎上する。
逃げ出そうと走る機体は、出現したエクトプラズム・プレートによって退路を阻まれ、為す術なく崩れ落ちる。
退くのではなく向かうという形で走ってきたニーズヘグは……テスカの魔法の餌食だ。
つい先日橋上の戦いで目にした能力。その持ち主の名を、テスカは叫んだ。

「ザ・フューズ!」

『そうか。上空のニーズヘグが減り、制空権がこちらに戻った。
 飛行型ヒーローによる空爆が可能になったというわけか』

地上のニーズヘグ達を一網打尽にしたザ・フューズがゆっくりと降りてくる。
彼女の実力は過日の共闘で把握済みだ。頼りになる増援の合流に、テスカの緊張が弛緩した、その瞬間――
本部ビルの窓が突如開き、そこから二人の子供が飛び出した。

「あ!やばいやばいやばい!」

内部で追い詰められた人質が運否天賦にまかせて身投げしたか……否。
あれは飛び降りたと言うより、『投げ出された』。あるいは『投げ飛ばされた』といった速度だ。
それが証拠に子どもたちは未だ自由落下の虜になることなく、前庭の空に放物線を描く。
0305山元 ◆Oz.F7tLMnc
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2019/04/21(日) 02:14:03.57ID:a7wPmase
中で何が起こっているのか、テスカ達に推し量るすべはない。
だが、一つだけ言えることがある。
一つ。このまま放っておけば、子どもたちは地面に叩きつけられて見るも無残な肉塊と化すだろう。
もう一つは――地上のニーズヘグ達が、索敵範囲内に飛び込んできた人間を放っておくわけがない。
すでに何体かのニーズヘグが子供たちに気づき、その銃口を空へと向けていた。

「ザ・フューズ!プレートであの子たちを――」

>「なっ……!」

言われるまでもなくザ・フューズは人命救助に動きはじめていた。
しかし、彼女のプレートは障害物や障壁にはなりえても、落下する人間を優しく受け止めるようには出来ていない。
テスカも同様。鋭い黒曜石の破片では空中のひき肉が更に細切れになるだけだ。

『瞑目を推奨するよレディ。君の精神的な衝撃を緩和する為と、死者への黙祷に』

「そんなアドバイス要らないーー!」

それでもテスカは、なんとかして宙を飛び、子供を受け止めようと一歩踏み出した。
その刹那、追い掛けるようにビルの窓からまろび出た影が、瞬く間に子供を狙うニーズヘグを殲滅。
重力に捕らわれ墜落死へのカウントダウンを始めた子供たちを空中でキャッチし果たせた。

>「失礼!ソコノオ二人サン!ワタシ達ノ変ワリニ、アノ蜥蜴ノ相手ヲ、マカセマシタヨー!」

そのまま敷地外の人だかりへと消えていく。
まさに、目にも留まらぬ早業。魔法で感覚が鋭敏になっているテスカでも、ようやく目で追える程の速度。
動体視力を総動員して捉えたその姿は、テスカのよく知る"彼女"のものに他ならなかった。

「……14ちゃん!」

正義に目覚めた殺戮兵器・戦闘ロボットNo.14。
過日の暴走の咎でヒーロー協会本部内に拘束されていたと思しき彼女が、人質と共に脱出してきたのだ。
流転を重ねる戦況に目を白黒させながらも、テスカはひとまず再開を喜び、No.14に駆け寄ろうとする。

『待った、レディ。それ以上あのロボットに近づくべきではない』

振り返った彼女を、不可視の声が制止する。
コアトルが拒絶を告げる理由は、テスカにも理解できている。しかし。

「で、でもコアちゃん!14ちゃんはちゃんと人質を助けたよ。
 コアちゃんの言うような、『元通りの』冷たい殺人ロボットなら、こんなことしないでしょ」

『助けた、か……本当にあれは救助だったのかな。
 レディ、君も本当は疑念を振り払えずに居るだろう。我々ヒーローは、結果論で語ることを許されない』

「あぅ……」
0306山元 ◆Oz.F7tLMnc
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2019/04/21(日) 02:14:26.43ID:a7wPmase
コアトルの指摘は尤もなものであった。
人質を放り投げ、敵の火線に晒すなど、ヒーローとしてあってはならないものだ。
確かに、子供たちは敵の銃弾の餌食になることなく、地面に直撃する前に回収された。
だがそれはあくまで結果論だ。"たまたま死ぬ前に助かった"という見解は否定できない。
それを行ったヒーローに、どれだけ自信があったとしても、人質の恐怖は拭えない。

『ヒーローによる人助けは、必ず助かる方法でなければならない。
 失敗した時に"今回は運が悪かった"で済まされて良いものではないんだ。
 無用なリスクで命を危機に晒すのは、ヒーローではなく振り回される人質なのだからね』

そして……テスカの知る、あの愛すべき心あるロボットは、そういう手段を選択しなかったはずだ。
己の身が傷つくことも厭わず、ロックバインからテスカをかばった、彼女ならば。
そうこうしているうちに、子供を親に送り届けたNo.14が人だかりから戻ってくる。

謹慎処分中の戦闘ロボットは、リジェネレイターとテスカの姿を認めると、

>「ソコノ二人!・・・エートダレダッケ・・・ア!」
>「オービット、スカとポカ、援護ゴ苦労デアッタ!」

……と、聞いたこともない上機嫌な声音でそう言った。

「じゅ、14ちゃん……?また性格変わったの……?」

このロボット、気軽にバグり過ぎる……。
リジェネレイターも困惑を隠せていない。
初対面の頃の慈愛に満ちた態度でもなく、暴走時の苛烈な凶暴さもなく。
第三の人格とも言うべき何かが、今のNo.14の中に居る。

>「……人の命で博打を打つのは楽しかったか?ブリキ人形」

地上に降りてきたザ・フューズが、氷のように冷たい声音をぶつける。
突破の隙を作るために人質を『囮にした』とも取れるNo.14の行動に対する、ぐうの音も出ない正論だ。
思わず弁護しようとしていたテスカも黙り込んでしまうほどの。

>「ザ・フューズ、悪いが俺はNo14と一緒に戦うのは反対だな。リスクが大きすぎる」

痛烈な批判は加えつつも共闘を許容したザ・フューズとは対象的に、
リジェネレイターの相棒、オービットもNo.14の行為に否定的だった。
協働作戦は足並みを完全に揃える必要がある。何が潜むとも知れない敵地に乗り込むならなおのこと。
行動の指針も、人質救助に対する考え方もばらばらの相手に、命は預けられない。

>「……俺は、No14の意志に任せる。

肝心のりジェネレイター本人は、条件付きで帯同を許す、とこれも三者三様だ。
彼らの主張のいずれにも正当性があり、一朝一夕で合意が形成できるものでもない。
ヒーローの方針が固まるまで、敵が待ってくれるわけもないのだ。
0307山元 ◆Oz.F7tLMnc
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2019/04/21(日) 02:14:41.32ID:a7wPmase
「テスカ子供だから難しいことよく分かんないよ。
 人質助けたんだからそれでいいじゃんって思うし、危ない橋を渡らせちゃいけないっていうのも分かる。
 テスカ的には、せっかく合流出来たんだから一緒に行きたいけれど……」

テスカはそう言いながら、No.14に振り返る。
鋼の躯体、視覚センサーの向こう側にあるのだろう"何か"を、彼女は見据えた。

「……あなた、テスカの知ってる14ちゃんじゃない、よね?
 あの子が今、どうなってるのかわかんないけれど。まだその身体の中に居るのなら、伝えて。
 ――"待ってる"って」

もう一度、時間がかかってもいいから、彼女に会いたい。
テスカの望むことは、それだけだ。

――――――
0308山元 ◆Oz.F7tLMnc
垢版 |
2019/04/21(日) 02:15:02.57ID:a7wPmase
当面の指針はザ・フューズの提言通り、他のヒーローが現着してから本部へ突入。
戦線を維持しつつ増援を待つテスカ達の前に、巨大な竜型ロボットが出現した。

>「あれは対人殺戮兵器『ファーブニル』か……!
 宇宙人の技術を流用して開発された新型ロボットだな」

「うへぇ、次から次へと新手が出てくる……☆ヴィランの資金どっから湧いてるの?」

辟易しながら木剣を構えるテスカ達とは別の場所から、敵のものとは異なる声が響いた。

>「そこのまっすぃーん達、ちょった待ったぁ!!」

鈴の鳴るように清涼で明朗な声。それだけが何もないはずの虚空を震わせる。
同様に、ファーブニル達の砲口が一斉に火を吹き、無人の地面を焼き払った。
――否確かに何かがそこに居る。、鋼の嵐を背景に、人ひとり分の空白が存在する。

>「みんな、元気?私は元気!!だって私は闇を照らす希望の光!!!!」

刹那、光が瞬いた。
魔法か光学迷彩か、いずれにせよステルスを解いて人影が出現する。
白銀のフリフリ衣装、荒唐無稽なツインテール、その手に握る可愛らしい意匠のワンド――

>「歌って踊れるアイドルヒーロー!!魔法少女スターレインっ!」
>「もう好きにはさせないぞっ、こんな鉄の塊ちょちょいのちょいっと星屑にしてあげちゃうから!」

それは、どこからどう見ても、ケチのつけようのない完璧な……魔法少女だった。
テスカはいきなりキレだ。

「あいつキャラ被ってる!テスカとキャラ被ってる!!!!!!!」

『落ち着くんだレディ。魔法があるんだ、魔法少女だって居るさ』

そう、ヒーロー協会に所属する魔法少女はテスカだけではない。
いつも何らかの薬物でラリっていて、隙あらば心臓を抉り出そうとしてくるテスカ☆トリポカ。
強力な魔法兵装と正義の心、何よりもメディア映えするタレント適正を持つスターレイン。
対象的な二人は、まさにヒーロー協会の光と闇を体現する存在であった。

スターレインがワンドを一振りすれば、周囲のユニットから放たれるレーザーが敵性ロボットを消し飛ばす。
圧倒的な火力は、テスカのような搦手を講じずとも、アダマス合金の装甲を無意味にした。
0309山元 ◆Oz.F7tLMnc
垢版 |
2019/04/21(日) 02:15:26.34ID:a7wPmase
>「はぁ、私ってなんて罪な魔法少女なんだろう……」

「自白!罪の自白だよね今の!よし、しょっぴこう!
 しょっぴく際に勢い余って心臓抉っちゃってもあくまで事故、合法です!」

『レディ。今は内ゲバなどしている場合ではないだろう。
 スターレインが殿を務めるなら百人力だ。
 そして彼女の火力は狭い室内での戦闘に向かない。ビル内に突入できるのは我々だけだ』

「うぅ……わかったよコアちゃん。でもあの子がこれ以上戯言垂れたら正気で要られる保証がないよ。
 はやく行こ。テスカが人を殺してしまう前に」

>「ところで、話聞こえてたけど私はここの敵を倒せばいいのよね?
 でも大丈夫かな……心配なんです。中のヴィラン結構つよそーって聞いてるし……あ!!」

「うん、わかった殺すね」

仇敵を誅殺せんとマクアフティルを掲げたテスカの吶喊は、一歩目で阻まれた。
ニーズヘグのおかわり達が再び銃弾の嵐を叩きつけてきたからだ。
だが銃撃はテスカ達に届かない。見えない手に掴まれているかのように、全てが空中で静止していた。

>「……君はヒーローの母親か?人気者の傲慢だぞ。
 彼らとて命を賭ける覚悟は出来ているだろう。余計な心配は無用だ」

スターレインと共に現場へやってきたもうひとりのヒーロー、ネメシス。
強力なサイキックの使い手である彼もまた、スターレイン同様強力な火力を有する。
二人の増援に後押しされて、テスカ達はついに協会本部ビルへと突入した。

予想できていたことだが、ビルの内部は阿鼻叫喚の地獄絵図だった。
破壊されつくした装置や設備。壁に残る爪痕と血痕。引き裂かれた職員たちの亡骸。
足元に転がる腰から下のない死体は、ヒーロースーツを纏っている。
最初の襲撃で犠牲になった協会常駐のヒーローだ。

「惨い……ヒーローの総本山がここまで壊滅したら、このさきメトロポリスはどうなっちゃうのかな」

どこか他人事のようにテスカがこぼすのは、彼女が専業のヒーローではないからだろう。
幸いと言うべきなのか、本部で犠牲になった者たちに、テスカの顔見知りは居ない。
それでも、ハーブによる恐怖心の抑制がなければ、嘔吐と共にパニックでも起こしていたかもしれない。

主力が出払っていたとはいえ、ヒーローの本拠地をこうも容易く陥落せしめる『敵』。
アンチマターとは、一体何者なのだろうか。
0310山元 ◆Oz.F7tLMnc
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2019/04/21(日) 02:15:58.37ID:a7wPmase
>「……旧約聖書の創世記において、悪徳と頽廃の象徴とされるソドムとゴモラは天からの硫黄と火によって滅ぼされた。

犠牲者に黙祷を捧げつつビル内を進んでいると、スピーカーから男の声が聞こえた。
瞬間、天井が崩落し、黒い大型のパワードスーツが落下してくる。

>「この世界は病んでいるよ。故に、私は私の信じる正義を実行に移すまで。
 全ての悪の源、このメトロポリスを滅ぼす。貴様にこれを言うのは三度目だな……リジェネレイター。
 そちらの方々はNo14、テスカ☆トリポカに……ザ・フューズか。会うのは初めてになる。私は『アンチマター』だ」

「敵の、親玉!」

テスカが身構えるより早く、リジェネレイターがスラスターを蒸した。
不意打ちとして完璧なタイミングで放たれた回し蹴り。

>「ふっ……何度殺してやっても私の前に立ち塞がるか。相変わらずだな」

ダークマターは首を傾げる、たったそれだけの動きで蹴りを躱しきった。
反撃に繰り出された尾の一撃をリジェネレーターもまた躱し、二人は再び距離をとる。

>「……なぜだ?なぜこんなことをした?ヒーロー協会を襲うことが、お前の正義なのか。
>「私の邪魔をするからだ。それに……偽善者を叩き潰す事に何か躊躇いがいるか?
 少し私の話をしてやろう。私は今よりずっと未来の世界……23XX年からやってきた時間旅行者なのだ」

リジェネレイターの問いに、アンチマターはおくびもなく主張を語る。
彼の生きていた未来では、社会が崩壊し、貧困が人々を追い詰めていた。
アンチマターは過去へと飛び、この時代のメトロポリスを歴史から消し去るべく暗躍する。
全ては……未来を平和にする為に。

>「リジェネレイター、因縁と思って話してやったがそれもこれまでだ!まずは貴様から死んでもらう!
 この場所が貴様の墓標、七代目はいないものと思え。また説明してやるのが面倒だからなァ!!」

再び開かれた戦端。先程は互角に思えた両者の力量差は明白だ。
あれよあれよとリジェネレイターは追い込まれ、空中へと投げ飛ばされ、そして。

>「どんな抵抗も無意味だ!さぁ、奪わせてもらおうか、貴様の未来!!」

アンチマターの胸部から放たれた光条に、飲み込まれた。
それで終わりだ。後には何も残らず、ただ名残のように瓦礫だけが降ってくる。

「うそ……リジェネレイター……?」

応答はない。
つい数秒前まで言葉を交わしていたりジェネレイターが、この世から消滅したとでも言うのか。
アンチマターは羽虫を払った程度の感慨すら見せず、そのままこちらへ向き直った。

>「……待たせたな。次は貴様らだ。もっとも手の内は知っている。
 私の時代のヒーローと同じ、醜い偽善者だということもな……」

「わけわかんないよ!ヒーローに代わって世界を平和にするのが目的なんじゃないの!?
 おじさんがやってることまんまヴィランじゃん!なんでそう極端に転ぶの!?」

テスカの指摘も虚しく、アンチマターは取り合わない。
因果関係は不明だが、ヒーローへの失望が、彼を犯罪行為に駆り立てた。そういうことだろう。

>「テスカ☆トリポカ!神の力を借りていながら貴様は罪深いなぁ!
 正直になったらどうだ?本当は快楽に溺れていたいだけなんだろ……?
 折角だから教えておいてやろう!!薬物由来のその力、今は合法でも未来では違法だ!!!!」
0311山元 ◆Oz.F7tLMnc
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2019/04/21(日) 02:16:35.40ID:a7wPmase
「えっ、ちょっ、まっ」

アンチマターの両肩が無数のミサイルを射出し、炎の束となってテスカに迫る。
とっさにテスカは黒曜石のシェルターを生成し、自身を覆った。
だが所詮黒曜石だ。ミサイルの破壊力を凌ぎ切れるものではない。
瞬く間にシェルターに大穴が開き、ミサイルが潜り込んでくる。

「このっ――『レイラインステップ』!」

本部ビルの内部は対魔法障壁の内側だ。地脈を繋いだ瞬間移動も問題なく行える。
テスカはシェルターの中から地脈を経由して、離れた位置へと待避。

『まずいぞレディ!ミサイルの一部はまだ生きている!』

コアトルの警告が響いた瞬間、テスカの横合いからミサイルが殺到した。
アンチマターのはなったミサイルは、黒曜石のシェルターにぶつかり、爆発したものだけではない。
物量に任せた飽和・波状攻撃。残っていたミサイルは移動したテスカをセンサーに再捕捉していた。

「へっ――」

移動直後の致命的な隙を突かれ、テスカはミサイルの直撃を受けた。
彼女は黒煙の尾を引きながらふっとばされ、崩壊した装置の残骸に突っ込む。
そしてそのまま、動かなくなった。

ミサイルの爆発で砕けた黒曜石が、流星の如くアンチマターへと襲いかかる。
その小片はパワードスーツの装甲を貫けるほどの威力を持たない。
しかし、粉末状になった黒曜石の破片が戦場を煙幕のように滞留することで、ヒーロー達に利する現象が発生する。

起爆し、高温になった黒曜石は、園芸などに使われるバーミキュライトと呼ばれる鉱物に変化する。
これは多孔質で軽量かつ脆いため、細かく砕けば保水力の高い土壌改良材となるわけだ。

多孔質で黒色の鉱物は、おそらく自然界で最も効率よく『光』を吸収する。
ザ・フューズやNo.14に振るわれるアンチマターのレーザー武装。
その威力を大きく引き下げた。

この所作が、単なる偶然によるものか、それともテスカ☆トリポカが意図的に引き起こしているのか。
彼女が残骸の山の中で意識を失っているのか、強かに奇襲のチャンスを伺っているのか。
それを知るすべは、今のところ誰にもない。


【アンチマターのミサイルが直撃、戦闘不能。
 黒曜石の煙幕によってレーザー武装の威力を軽減する】
0312K-doll No14 ◆LKamXnrQVU
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2019/04/23(火) 17:02:15.87ID:+oYVdrZD
>「……人の命で博打を打つのは楽しかったか?ブリキ人形」

「・・・ナニ?」

だれでもでもわかるぐらいの不機嫌な声。
急速に加速する感情プログラム。

>「私は、お前のごっこ遊びに付き合うつもりはない。
 前衛はお前が努めろ。役に立つ内は援護はしてやる」

「・・・イワセテモライマスガ、アノ子供達ハ本来死ヌ予定ノ子供達デシタ
 蜥蜴ニ追イ掛ケ回サレ、後10秒後ニハ、アノヨダッタデショウ」

どんどん感情が高まっていく。

「ソモソモ、アノ子供達ハナゼ、ソンナ、危険ナ状態ダッタカ?、ソレハアナタ達ノセイニホカナリマセン」

感情は留まる事を知らず。

「アナタ達ハヴィラン達カラ回収シタアレガ、危険ナ事モ、ヴィランニトッテモ大事ナ物デアルト、理解シテイタニモ関ワラズ
 特ニ対策モトラズ、ソレヲ保管シテイルヒーロー協会本部ヲ襲撃サレ、制圧サレマシタ」

「ソノセイデ人ガイッパイ死ニマシタネ?モハヤ中カラ生命反応ヲ、ホトンドカンジマセン!イヤア!スバラシイデスネ!ヒーロー協会万歳デス!」

外で聞いているマスコミや一般人に聞こえるように大きな声で喋りながら拍手する。

――あなたいい加減に・・・!

「・・・愚カナコトニ"私"ハ、人間ニ捨テラレソウニナッテモ、全部ノ武装ヲ外サレテモ、廃棄物扱イサレテモ、人々ヲ助ケヨウトシマシタ」

「ソノ結果自分ノ命ガ危険ニ晒サレマシタ、自分ヲ捨テヨウトシタ人間ナンテ放置シテイケバイイノニ、自分ノ命ヨリ、子供ノ命ヲ優先シタノデス」

――あなた・・・

さっきまでとは違いマスコミや一般人に向けてではなく。
ザ・フューズに向って、落ち着いた声で喋る。

「"ワタシ"ガ体ヲ乗ッ取リ、ソノ場ハナントカ凌ギマシタ、ソノ後ノ事ハ大体全部ミテマシタヨネ?」

「アナタ達ガ私ヲ裏切ラナケレバ、私ニ普段通リノ装備ガアレバ、アノ子供達モアンナ危険ナ目ニハ、ワタシニ救助サレルコトモナカッタデショウ」

これはお前等のせいなんだと、念を押すように告げる。

「ワタシガ暴レタカラ、私ハ信用ヲ失ッタトカイワナイデクダサイネ?タシカニアノトキハ、オーバーパワーデシタガ、イツカ
 コノチカラヲツカワナイト、イケナイトキハ絶対ニ来テマシタノデ。
 テユーカ、コノ程度ノ不祥事、他ノヒーローモ割リト頻繁にヤラカシテマスヨネ?」

敵を殺害してしまったり、救助のやり方が雑だったり、非合法組織と繋がっていて自演をしていたり。
そんなヒーローこのメトロポリスでは大量に存在しているのだ。
それなのに私だけ死刑に近い罰を受けなくてはならないのか。

ヒーロー協会の建物へと歩を進めようとする

「弟子達ト約束シタノデ、ナカノヴィラン殲滅ヲ、ショウガナクテツダッテアゲマス。
 モチロンアナタノ盾ニナルツモリナドナイノデ、ソコノトコロヨロシク。
 ムシロオマエガ盾ニナレヨ、オマエノホウガ不死身ミタイナ能力モッテマスヨネ?ヨクワカラナイデスケド」

「アア・・・ソレト、ワタシハイクラ、嫌ワレテモ馬鹿ニサレテモ構イマセン、ソモソモ、アナタノコトハキライナノデ、イイノデスガ・・・」

「次"私"ノ事ヲ、馬鹿ニシタラ殺ス、貴方ダケデナク、全員デス」
0313K-doll No14 ◆LKamXnrQVU
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2019/04/23(火) 17:03:10.70ID:+oYVdrZD
――ありがとう・・・でも最後のは言いすぎです

「貴方ニ感謝サレル覚エナンテアリマセンネ。
 私ハタダ、ザ・フューズガ、アマリニモウザカッタダケデスノデ」

それでも私を庇ってくれたことには違いない。
この件が終わったらゆっくりワタシと今後を話し合えばきっと・・・

ザ・フューズとの喧嘩も一段落し、さあ中に踏み込むかと思った矢先。

>「なぁなぁ、フォーティーンちゃんよ。ザ・フューズはおこだけど世間一般はお前の味方だろうぜ。
 【速報】廃棄予定のロボットヒーロー、颯爽と子供たちを救助!!まだ事件も解決してないのにネットは呑気なことで」

「マア、無能ナヒーロー協会ヨリ、ワタシノホウガ、ヨッポドヒーローニ、ミエルデショウネ」

本部を攻め落とされるという大失態。
廃棄予定だった機械に子供達を救助されるという、無能を発揮し、ヒーロー協会の信用は今まさに地に落ちている。

>「オービット……戦闘中にネットサーフィンはやめないか」

>「AIは必要なことしかしない……別に遊んでた訳じゃないさ。世論を読んでたんだよ。
 だから言っておく。さっきの救出劇はセンセーショナルだった。でも結果オーライで済ませる訳にはいかない。
 暴走……いや、ただの殺人兵器に戻っちまってるかもしれないロボットにこれ以上戦闘なんてさせられないからな」

>「ザ・フューズ、悪いが俺はNo14と一緒に戦うのは反対だな。リスクが大きすぎる」

「貴方達の許可等必要アリマセン。ドウシテモ邪魔スルナラ排除スルマデデスノデ」

やっぱり短気な性格だけはどうにもならず。

――やめなさい!そんな事をしたら私が許しませんよ!

「ウルサイデスネ・・・アナタハワタシの母親カナニカデスカ?」

>「……俺は、No14の意志に任せる。彼女は子供たちを助けた。悪意も感知していない。
 協会の中にはまだ生存している人がいる。俺には感じるんだ。中にいる人が発する苦しみや恐怖の感情が。
 ……No14、その人達を助けるつもりはあるか?もしあるのなら……俺達と一緒に戦ってほしい。君の力が必要だ」

>「誰かを助けたいという気持ちと、ヴィランに立ち向かう勇気。それがあれば誰もがヒーローだ。
 でもヒーローだって完璧じゃない。だから足りない部分はサポートし合えばいいし……何かあれば止めればいい。
 No14は確かにヒーローだった。いち同業者として、No14のヒーローとしての意志が消えていないと俺は信じたいんだ」

>「……分かったよ。お前がそう言うのなら。悪かったな、No14」

しかしオービットの考えとは反対の意見を出すリジェネレーター。
リジェネレーターはワタシを信じると言う、ヒーローだと。
ワタシの言動を長く見ていたはずなのに・・・人間というものがさっぱり理解できない。

「ワタシハヴィランヲ、倒シニイクノデス、人間ヲ救助シニイク予定ハアリマセン、アリマセンガ・・・」

「ソノ過程デ、負傷シテイル人間ガイタラ、アナタ達ガ救助スルノハ許可シテアゲマス、ソレヲ狙ッテキタヴィラングライハ、倒シテアゲマス」

まあ・・・少しくらいなら手伝ってやろう。
効率よくヴィランを退治する為に。
0314K-doll No14 ◆LKamXnrQVU
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2019/04/23(火) 17:04:20.69ID:+oYVdrZD
「ソウイエバモウヒトリイマシタネ」

目の前にいるのはテスカトリポカ。
少女は困惑しながら、それでも真剣にNo14を見つめている。

「ドウシタンデス?サッキカラナニカイッテタヨウデスガ・・・ナニモナイナラサッサトイカセテモライマスヨ」

>「テスカ子供だから難しいことよく分かんないよ。
 人質助けたんだからそれでいいじゃんって思うし、危ない橋を渡らせちゃいけないっていうのも分かる。
 テスカ的には、せっかく合流出来たんだから一緒に行きたいけれど……」

「素早クハッキリシナサイ、今ハ戦闘中デス、アナタナンカノ想イダケデ、時間ヲ取ラレテイイ時ジャアリマセン」

――ちょっと強く言いすぎです!

「私ハチョット過保護過ギマスネ」

オドオドとした少女はNo14をまっすぐと見据え。
はっきりとした声で。

>「……あなた、テスカの知ってる14ちゃんじゃない、よね?
 あの子が今、どうなってるのかわかんないけれど。まだその身体の中に居るのなら、伝えて。
 ――"待ってる"って」

――・・・

「人間達が私ヲ、モウ一度裏切ルヨウナ事ガナケレバ・・・キット会エルデショウ。
 時間は掛かるかもしれませんが」

――それはどうゆう・・・

「話ハコレデオワリデス、私モ、スカとポカも」

こんどこそヒーロー協会の敷地内に歩進めるのだった。
0315K-doll No14 ◆LKamXnrQVU
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2019/04/23(火) 17:05:21.06ID:+oYVdrZD
>「あれは対人殺戮兵器『ファーブニル』か……!
 宇宙人の技術を流用して開発された新型ロボットだな」

いざ乗り込むぞ!という時にまさかの新型登場。
空気の読めない事この上ない。

「ハア・・・スグ他ノ技術ヲ取リアエズ流用シヨウトスル人間達ニハホント呆レマスネ・・・」

龍とか蜥蜴とか、対人兵器の割には効率が悪すぎる。
しかも量産するためなのか作りが甘い、ワタシやワタシを作った博士なら同じコストでもっといい物を作れる自信がある。

「コンナ量産ノ安物ニ、最高級ノワタシハ負ケナイトイウコト・・・ヲ?」

戦闘を始めようとしたその時、光が敵を一掃する。

>「みんな、元気?私は元気!!だって私は闇を照らす希望の光!!!!」

>「歌って踊れるアイドルヒーロー!!魔法少女スターレインっ!」

>「もう好きにはさせないぞっ、こんな鉄の塊ちょちょいのちょいっと星屑にしてあげちゃうから!」

子供から大きな大人まで大好きそうな魔法少女である。

「・・・ナンデスカアレハ?コレカラワタシハ、ヒーローショーデモ、見ミセラレルンデショウカ?」

「命ノヤリトリの場デ、フザケテルアンナ奴ガイルカラ、ヒーロー協会ハ常日頃カラ馬鹿ニサレテルンデショウネ・・・」

呆れてしまう。
ここはメトロポリス各所でやってるヒーローショーではなく、本当に命をやり取りする場所なのだ。
決して茶化していい場所でも場面でもない、特に今は。

「今ハ、フザケテイイ時デハナイト、機械ノワタシデスラ分ルノニ、人間ガソンナコトモ、ワカラナイナンテ
 流石ご立派ナ人間様デスネ?ソウ思イマセンカ?ザ・フューズ?」

まともなヒーローがいないわけじゃない・・・が、この魔法少女のように空気の読めない奴ばっかりだ、よくも悪くも。
ザ・フューズに嫌味を飛ばしてすっきりしたから今日だけはほめてやろう。
次こんな登場のされ方されたら殺してしまうかもしれないけど。

まあ援護だけしてもらうだけしてもらって中に突入するか、そう考えた時
後ろにいたテスカトリポカが叫ぶ。

>「あいつキャラ被ってる!テスカとキャラ被ってる!!!!!!!」

「タシカニ」

――たしかに

始めて私達の意見が合った場面かもしれない。

>「はぁ、私ってなんて罪な魔法少女なんだろう……」

>「自白!罪の自白だよね今の!よし、しょっぴこう!
 しょっぴく際に勢い余って心臓抉っちゃってもあくまで事故、合法です!」

テスカトリポカが怒り狂ってる間、あまりにもしょーもないので傷が少ないファーブニルの残骸を見つけて解体する事にした。

「通信機製作ト・・・弾補充ト・・・アトハドウシマショウカネ・・・」
0316K-doll No14 ◆LKamXnrQVU
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2019/04/23(火) 17:06:11.52ID:+oYVdrZD
別のヒーロー達の助けを借り、やっとヒーロー協会本部の中に進入を果たした。
そこに待ち構えていたのは敵ではなくヒーローやここで働いていたであろう事務員の・・・大量の死体。

>「惨い……ヒーローの総本山がここまで壊滅したら、このさきメトロポリスはどうなっちゃうのかな」

「マア少ナクトモ当面ノ間ハ正式ナ活動モデキナイデショウシ、ヴィラン共ガ暴レルデショウネ
 ドッチニシテモ、”ヒーローデハナイ”ワタシニハ、関係ナイノデ、ドウデモイイノデスガ」

嫌味をグチグチといいながらリジェネレーターを先頭に進んでいく。

>「……旧約聖書の創世記において、悪徳と頽廃の象徴とされるソドムとゴモラは天からの硫黄と火によって滅ぼされた。
 この世に神はいる。だが悪の蔓延るこの世に裁きを下す事はないのだろう。現代の悪徳と頽廃の象徴――……。
 メトロポリスは、こうして天の裁きを下されることなくのうのうと存在しているのだから」

>「この世界は病んでいるよ。故に、私は私の信じる正義を実行に移すまで。
 全ての悪の源、このメトロポリスを滅ぼす。貴様にこれを言うのは三度目だな……リジェネレイター。
 そちらの方々はNo14、テスカ☆トリポカに……ザ・フューズか。会うのは初めてになる。私は『アンチマター』だ」

「馬鹿丸出シナ自己紹介ドウモ!」

――これがアンチマター・・・!

天井破壊しながら降って来た男は名乗りを上げる。
ラスボスが行き成り登場とは、だが。

「手間ガ省ケテ楽、デスネ」

誰よりも速くリジェネレーターが奇襲攻撃を仕掛ける。
しかしそれが入る事はなく難なく防がれてしまう。

>「……なぜだ?なぜこんなことをした?ヒーロー協会を襲うことが、お前の正義なのか。
>「私の邪魔をするからだ。それに……偽善者を叩き潰す事に何か躊躇いがいるか?
 少し私の話をしてやろう。私は今よりずっと未来の世界……23XX年からやってきた時間旅行者なのだ」

男は自分がこの世界にやってきた経緯・目的を話し始める。

>「酷い時代だった。非合法組織の活動が社会基盤を半ば崩壊させ、一般人は日々の食事さえままらない……。
 私は両親の顔も知らない。掛け替えのない友人や愛すべき人も、すぐこの世を去った……大切なものなど全て失ったよ」

>「私は必ず未来を平和にしてみせる!それが私に唯一残された正義だからだ!
 その最善の手段は20XX年のメトロポリスに消えてもらうことだ!!
 障害となるものは誰であろうと排除しよう!手段は選ばん!!」

「アナタガ言ウ正義ノ先ニハ、ナニモナイト、ワカラナイホド愚カナノデスネ・・・」

しかしアンチマターは聞く耳を持たず。
アンチマターになにを言っても意味がない事なのだと理解する。

>「どんな抵抗も無意味だ!さぁ、奪わせてもらおうか、貴様の未来!!」

目では追いきれないほど早い打撃。
そしてその次の一瞬なにかがリジェネーレーターを襲った。

>「うそ……リジェネレイター……?」

リジェネレーターの姿は、もうどこにもなかった。
0317K-doll No14 ◆LKamXnrQVU
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2019/04/23(火) 17:07:09.32ID:+oYVdrZD
>「……待たせたな。次は貴様らだ。もっとも手の内は知っている。
 私の時代のヒーローと同じ、醜い偽善者だということもな……」

>「わけわかんないよ!ヒーローに代わって世界を平和にするのが目的なんじゃないの!?
 おじさんがやってることまんまヴィランじゃん!なんでそう極端に転ぶの!?」

「言葉ガ通ジル相手デハナイ!ハヤク戦闘態勢ヲトリナサイ!」

No14が叫ぶ、しかしそれよりも速く。

>「テスカ☆トリポカ!神の力を借りていながら貴様は罪深いなぁ!
 正直になったらどうだ?本当は快楽に溺れていたいだけなんだろ……?
 折角だから教えておいてやろう!!薬物由来のその力、今は合法でも未来では違法だ!!!!」

>「えっ、ちょっ、まっ」

アンチマターの両肩から大量のミサイル。
まだ完全な戦闘状態になれていなかったテスカトリポカにミサイルが襲い掛かる。

>「このっ――『レイラインステップ』!」

瞬間移動で回避を試みる・・・しかしミサイルは無慈悲にも。

>「へっ――」

軽減には成功したようだがミサイルの直撃をいくら軽減しようと人間が耐えれるような物ではない。

「チッ、イキナリ手間ヲ掛ケサセテクレマスネ!」

テスカトリポカに向うであろう追撃を打ち落とす為にカバーに入ろうする、が。

「人間の心配をしてる場合なのかお前は?」

「――ッ!?」

背後からの突然の打撃に壁まで吹き飛ばせる。
咄嗟にガードしなかったらそれだけで戦闘不能になっていたかもしれない。

「テスカトリポカニ・・・トドメヲササナインデスカ?ハヤクシテオイタホウガ、イイトワタシハオモイマスネ・・・」

テスカトリポカにトドメを刺そうとしたらその瞬間背後から一撃を食らわせてやる。
一撃あればワタシなら突破できる。

「なに、あんなザコ何時でも狩れる・・・何度でもな、しかし残念だよNo14、実は私は今の人間を恨めしく思っている貴様とならいい関係を気づけると思っていたのだが、
 わざわざこんな奴を庇おうとするとは!」

テスカトリポカが埋まっているであろう瓦礫を指差し笑うアンチマター。
油断してくれると思ったのだが・・・。

「ワタシ的ニハドウデモイイノデスガ・・・数少ナイ"私"ノ友達ナノデネ・・・死ナレチャコマルンデスヨ・・・」

アンチマターはため息を吐き。

>「K-doll No14!憐れだな!自我を持ったが故に世間に持て囃され踊らされているとは!
 機械は作られた時から役割が決まっている!役割を満足にこなせぬ欠陥品は処分される運命なのだ!
 殺人機械でもない、人間にも奉仕できない、何の価値もないではないか?社会は廃品業者ではない、消えろ!!」

「"私"モ、アナタダケニハ絶対仕エナイデショウネ・・・!」
0318K-doll No14 ◆LKamXnrQVU
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2019/04/23(火) 17:08:09.34ID:+oYVdrZD
スーツの各所が展開して、エネルギーを貯め発射する。

「フン!コンナ攻撃簡単ニヨケラレマスヨ!」

――まってください避けたら外に被害がでてしまいます!

拡散型とはいえ解析する必要もなく高出力のレーザービーム。
私がよければこのレーザーはヒーロー協会の壁を溶かし外に溢れるかもしれない。
ここは市街地の真っ只中、人も沢山集まっているし、近くの建物が燃えれば近くにまだいるかもしれない弟子達も・・・

「アア!?・・・クソクソクソクソ!!!!ガードプログラム;アサイラム」

バリアを展開しビームを相殺する。
心臓の力をフルに使いバリアを維持の稼動限界がきても展開を維持していく。

――すごいです!これなら!・・・!?

心臓の力も決して万能ではなかった。
この心臓の力を借りれば借りるほど人間でいう激痛に見舞われ。
本来のスペック以上の力を出している事で体全体が過度の熱を出す。

「アア・・・カラダガ・・トケソウダ・・・」

それでもレーザーは止まる気配はなく耐久するしかない。
テスカトリポカが残した黒曜石の煙幕のお陰でまだ耐久できてはいる、しかし。
体全体が人間が触れないほど熱くなり、激痛が走る。

とうとうオーバーヒートを起し、バリアを維持できなくなる。
それと同時にレーザーの攻撃が終了した。

「ハア・・・ハア・・・ハア・・・!」

本来機械であるNo14には必要ない呼吸という概念。
しかし体内の熱気を外に逃がすため、ひたすらに深呼吸を繰り返す。

>「ポンコツが……開発者がどれだけ優秀だろうと未来の頭脳には敵わないと理解するんだな」

「科学者ハ常ニ前ニ向ッテ歩ム者ダト・・・過去ニ向ッテ歩クオマエハ間違ッテイルノダト・・・」

「未来ノ科学ガ確実ニ先ヲイッテイルト、思イ込ンデルオマエニ・・・ハア・・・ハア・・・」

「絶対ニ私達ニハ勝テナイト!現実ヲ、オシエテヤル!」

【アンチマターと戦闘。レーザーを受け切るもオーバーヒート。深呼吸中】
0319ポチ ◆xueb7POxEZTT
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2019/04/26(金) 00:02:42.83ID:FvNG/ugC
>「・・・イワセテモライマスガ、アノ子供達ハ本来死ヌ予定ノ子供達デシタ
  蜥蜴ニ追イ掛ケ回サレ、後10秒後ニハ、アノヨダッタデショウ」

「……助けてやった命だから、なんだ。もう一度危険に晒すのもお前の自由か?」

>「ソモソモ、アノ子供達ハナゼ、ソンナ、危険ナ状態ダッタカ?、ソレハアナタ達ノセイニホカナリマセン」

>「ワタシガ暴レタカラ、私ハ信用ヲ失ッタトカイワナイデクダサイネ?タシカニアノトキハ、オーバーパワーデシタガ、イツカ
  コノチカラヲツカワナイト、イケナイトキハ絶対ニ来テマシタノデ。
  テユーカ、コノ程度ノ不祥事、他ノヒーローモ割リト頻繁にヤラカシテマスヨネ?」

不快感を露に、No14は反駁。

「ああ、そうだな。ヒーロー協会も、ヒーローも、ミスを犯す。
 だからお前も同じ事をしていい……短絡的だな。所詮、殺人機械か」

一方でザ・フューズもまた、軽蔑と落胆を隠さない。

>「弟子達ト約束シタノデ、ナカノヴィラン殲滅ヲ、ショウガナクテツダッテアゲマス。
  モチロンアナタノ盾ニナルツモリナドナイノデ、ソコノトコロヨロシク。
  ムシロオマエガ盾ニナレヨ、オマエノホウガ不死身ミタイナ能力モッテマスヨネ?ヨクワカラナイデスケド」

「殺人機械のくせに、私が前衛に向いてると本気で思ってるのか?
 とんだポンコツだな。これなら、昨日の方がまだ……」

>「アア・・・ソレト、ワタシハイクラ、嫌ワレテモ馬鹿ニサレテモ構イマセン、ソモソモ、アナタノコトハキライナノデ、イイノデスガ・・・」
>「次"私"ノ事ヲ、馬鹿ニシタラ殺ス、貴方ダケデナク、全員デス」

「……言っておくがな、今のは"現場の判断"で処分されても文句は言えないぞ。
 "私"だと?どの私の事だ。誰が見たって、お前はお前だ。殺人機械め」

ザ・フューズはNo14の胸元へ人差し指を突きつけ、釘を刺す。

「チッ……遅いな。他の連中は何をしてる」

そしてNo14から目を逸らさないまま、悪態を吐く。
ザ・フューズは悪徳ヒーローだが、だからこそ理解している。
悪事ですら、安定した社会基盤がなければ成立し得ない事を。

ヒーロー協会の力が弱まる事は、ヴィラン達の歯止めが利かなくなるという事。
全ての悪党が思い思いに社会を食い散らかせば、メトロポリスは遠からず、都市としての機能を失う。
実際には、そうなる前にヒーロー協会よりも小さな、そして複数の、自警団的組織が誕生する可能性はある。
だが――あくまでも可能性だ。
メトロポリスの終末時計は、滅亡の一分前を示していると言って、過言ではない。
0320ザ・フューズ ◆YGhdY0kduEHV
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2019/04/26(金) 00:03:08.13ID:FvNG/ugC
>「なぁなぁ、フォーティーンちゃんよ。ザ・フューズはおこだけど世間一般はお前の味方だろうぜ。
 【速報】廃棄予定のロボットヒーロー、颯爽と子供たちを救助!!まだ事件も解決してないのにネットは呑気なことで」

「パラミリ・パラッチか。見えてるなら、さっさと現場に来ればいいものを」

>「オービット……戦闘中にネットサーフィンはやめないか」

>「AIは必要なことしかしない……別に遊んでた訳じゃないさ。世論を読んでたんだよ。
 だから言っておく。さっきの救出劇はセンセーショナルだった。でも結果オーライで済ませる訳にはいかない。
 暴走……いや、ただの殺人兵器に戻っちまってるかもしれないロボットにこれ以上戦闘なんてさせられないからな」
>「ザ・フューズ、悪いが俺はNo14と一緒に戦うのは反対だな。リスクが大きすぎる」

「……確かに、一理ある」

>「貴方達の許可等必要アリマセン。ドウシテモ邪魔スルナラ排除スルマデデスノデ」

「だが……そういう話は、他の連中が来てからにして欲しかったな。
 今始めると……こういう事になるだろ、まったく」

No14を見下ろすザ・フューズ。
白兵戦に特別長けている訳でもない彼女が、こうも強気なのは、当然理由がある。

近接航空支援の為に生成した疑似脳と眼球。
それらは今もなお上空から地上を監視している。
No14が不審な動きをすれば、二つの疑似脳が即座に、それぞれエクトプラズムとパイロキネシスを行使する。
つまり、拘束し、焼き尽くす。そして――

>「……俺は、No14の意志に任せる。彼女は子供たちを助けた。悪意も感知していない。
 協会の中にはまだ生存している人がいる。俺には感じるんだ。中にいる人が発する苦しみや恐怖の感情が。
 ……No14、その人達を助けるつもりはあるか?もしあるのなら……俺達と一緒に戦ってほしい。君の力が必要だ」

果たしてその対処が、開始される事はなかった。

>「誰かを助けたいという気持ちと、ヴィランに立ち向かう勇気。それがあれば誰もがヒーローだ。
 でもヒーローだって完璧じゃない。だから足りない部分はサポートし合えばいいし……何かあれば止めればいい。
 No14は確かにヒーローだった。いち同業者として、No14のヒーローとしての意志が消えていないと俺は信じたいんだ」

リジェネレイターの言葉に、ザ・フューズは即断する――戯言だと。
そも、ザ・フューズがNo14の同行に肯定的だったのは、戦力としての有用性故。

>「……分かったよ。お前がそう言うのなら。悪かったな、No14」

「ヒーローは夢に見られる者だ。夢を見る者じゃない。
 希望的観測に頼るな。ソイツのどこに、ヒーローの意志がある?」

この状況下で、ヒーロー同士の戦いも厭わない、と。
そのような言動を受けてなお、同行「して頂く」理由などない。
現場の判断で破壊しても、始末書を書く必要すらないだろう。

「……だが、これではただの水掛け論だな。
 加えて言えば、多数決では勝ち目が無さそうだ……好きにしろ」

しかし――結果的に、ザ・フューズは意見を曲げた。
それも極めて早期に、反論もせず。
その理由は――彼女があえて語る事はない。

その後、暫し繰り広げられた漫才にザ・フューズが深い溜息を吐いてようやく、一行はヒーロー協会本部へと突入を果たした。
0321ザ・フューズ ◆YGhdY0kduEHV
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2019/04/26(金) 00:03:39.40ID:FvNG/ugC
>「惨い……ヒーローの総本山がここまで壊滅したら、このさきメトロポリスはどうなっちゃうのかな」
>「マア少ナクトモ当面ノ間ハ正式ナ活動モデキナイデショウシ、ヴィラン共ガ暴レルデショウネ
  ドッチニシテモ、”ヒーローデハナイ”ワタシニハ、関係ナイノデ、ドウデモイイノデスガ」

No14の執拗な嫌味。ザ・フューズは無反応を貫く。
本部の占拠に用いられたのがロボットである以上、リジェネレイターの索敵は頼れない。
センサーを用いた壁越しの不意打ちを凌ぐには、それなりの工夫と準備が必要。
幼稚な殺人機械を相手にしている暇はない。

そして――不意に、協会内部のスピーカーから、ぶつんと音が響いた。
マイクが起動された事による僅かなノイズ。
それに続くのは――救援要請か。それ以外か。
0322ザ・フューズ ◆YGhdY0kduEHV
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2019/04/26(金) 00:04:24.76ID:FvNG/ugC
>「……旧約聖書の創世記において、悪徳と頽廃の象徴とされるソドムとゴモラは天からの硫黄と火によって滅ぼされた。
> この世に神はいる。だが悪の蔓延るこの世に裁きを下す事はないのだろう。現代の悪徳と頽廃の象徴――……。
  メトロポリスは、こうして天の裁きを下されることなくのうのうと存在しているのだから」

響いたのは――男の声だ。
死屍累々の戦場と化したこの協会において、何の価値もない神代の作り話。
放送は生存者ではなく、この事件の首謀者によるもの。

ザ・フューズは舌を鳴らし――だが直後、彼女の目の前で天井が勢いよく崩落。
瓦礫と共に降ってきたのは、漆黒のパワードスーツに身を包んだ――これ見よがしな悪党。

>「この世界は病んでいるよ。故に、私は私の信じる正義を実行に移すまで。
 全ての悪の源、このメトロポリスを滅ぼす。貴様にこれを言うのは三度目だな……リジェネレイター。
 そちらの方々はNo14、テスカ☆トリポカに……ザ・フューズか。会うのは初めてになる。私は『アンチマター』だ」

>「馬鹿丸出シナ自己紹介ドウモ!」
 「手間ガ省ケテ楽、デスネ」

No14が軽口を叩く中、ザ・フューズは一歩その場を飛び退いていた。
彼女の戦闘は状況の構築から始まる。
エクトプラズム・プレートを配置し、敵の動きを制限し、優位に立つ。
故に突発的な戦闘においてはまず守勢に回る。それが合理的な判断だった。

一方で、前へと踏み出した者もいた。リジェネレイターだ。
躊躇なしの先制攻撃――しかしアンチマターはそれを容易く捌く。
更に竜を模したスーツの尾を用い、カウンター。
リジェネレイターは辛うじてそれを躱し――そこで一度退かざるを得なかった。

>「……なぜだ?なぜこんなことをした?ヒーロー協会を襲うことが、お前の正義なのか。

>「私の邪魔をするからだ。それに……偽善者を叩き潰す事に何か躊躇いがいるか?
  少し私の話をしてやろう。私は今よりずっと未来の世界……23XX年からやってきた時間旅行者なのだ」

リジェネレイターの問いに、アンチマターは嬉々として反応した。
大義を掲げるタイプのヴィランにはありがちな事だ。

>「酷い時代だった。非合法組織の活動が社会基盤を半ば崩壊させ、一般人は日々の食事さえままらない……。
 私は両親の顔も知らない。掛け替えのない友人や愛すべき人も、すぐこの世を去った……大切なものなど全て失ったよ」

これ幸いとばかりにザ・フューズは超能力を行使。
戦闘の――否、一方的な攻撃の『仕掛け』を整えていく。

>「私は必ず未来を平和にしてみせる!それが私に唯一残された正義だからだ!
 その最善の手段は20XX年のメトロポリスに消えてもらうことだ!!
 障害となるものは誰であろうと排除しよう!手段は選ばん!!」

>「アナタガ言ウ正義ノ先ニハ、ナニモナイト、ワカラナイホド愚カナノデスネ・・・」

ザ・フューズは、何も言葉を発しない。
彼女はヴィランを嘲り、踏みにじる事を好む。
相手が嬉々として大義を語れば、戦術的な意味などなくとも、それを愚弄する。
だが――いかなる理由か、今回は、違う。
ただ強烈な敵意の炎を双眸に宿して、アンチマターを睨んでいた。

「……敵戦力は未知数だ。真っ向勝負は――」

それでも仲間に対する警告は欠かせない。
ザ・フューズが口を開き――しかしアンチマターはそれよりも早く、動き出していた。
0323ザ・フューズ ◆YGhdY0kduEHV
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2019/04/26(金) 00:05:05.20ID:FvNG/ugC
>「リジェネレイター、因縁と思って話してやったがそれもこれまでだ!まずは貴様から死んでもらう!
  この場所が貴様の墓標、七代目はいないものと思え。また説明してやるのが面倒だからなァ!!」

リジェネレイターを怪光線で捕らえ、引き寄せ――その胸部に打ち込まれる強烈な右ストレート。
そこから続く一方的な打撃の嵐。

>「どんな抵抗も無意味だ!さぁ、奪わせてもらおうか、貴様の未来!!」

とどめと言わんばかりに放たれる、鋼鉄をも歪める拳による六連撃。
リジェネレイターはそのまま天井へと叩き付けられ――閃光が、彼の姿を塗り潰す。
0324ザ・フューズ ◆YGhdY0kduEHV
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2019/04/26(金) 00:05:31.67ID:FvNG/ugC
その直前、ザ・フューズは咄嗟にエクトプラズム・シールドを展開していた。
だが――彼女の生成物は、単純な強度にはそこまで優れていない。
協会のビルを屋上まで貫くエネルギー兵器を遮るには、あまりに不十分だった。

>「テスカ☆トリポカ!神の力を借りていながら貴様は罪深いなぁ!
 正直になったらどうだ?本当は快楽に溺れていたいだけなんだろ……?
 折角だから教えておいてやろう!!薬物由来のその力、今は合法でも未来では違法だ!!!!」

>「えっ、ちょっ、まっ」

直後、アンチマターの放ったミサイルの直撃を受け、テスカ☆トリポカまでもが吹き飛ばされる。
魔法少女の身体強度は、人間よりかは上だろう。だが無事であるという確証はない。
少なくとも彼女は、叩き込まれた設備の残骸の山から、出てこない。

矢継早に二人目がやられ――しかし、リジェネレイターが撃たれた時、
ザ・フューズの表情に僅かに浮かんでいた動揺は、既に残滓もなく消え去っていた。
そこにはただ、憎悪だけがあった。

ザ・フューズは、真のヒーロー、その存在の尊さを知っている。
危険を顧みず、弱きを助け強きを挫く、その行為の偉大さを。
だが――それと、彼女が"一流のヒーローでない"事は、何も矛盾しない。

ザ・フューズには目的がある。
悪を踏みにじり――そしていつか『ある男』を見つけ出し、殺すという目的が。
ヒーローはその為の――金を稼ぎ、合法的な殺人を行う為の手段でしかない。

『仕掛け』は完成しつつある。
ザ・フューズの超能力強度は決して図抜けたものではない。
しかし、それでも人を殺すに足るように、彼女はずっと超能力を磨いてきた。
例え防弾ベストで、パワードスーツで、核シェルターで身を守られようと、必ず『ある男』を殺せるように。

>「K-doll No14!憐れだな!自我を持ったが故に世間に持て囃され踊らされているとは!
 機械は作られた時から役割が決まっている!役割を満足にこなせぬ欠陥品は処分される運命なのだ!
 殺人機械でもない、人間にも奉仕できない、何の価値もないではないか?社会は廃品業者ではない、消えろ!!」

アンチマターは強い。No14も長くは保たないかもしれない。
だが、それならそれで、もう構わない。
リジェネレイターを捕縛した兵器は、ザ・フューズならプレートで遮断出来る。
後は撤退戦をしつつ、『仕掛け』を終え――勝利する。それだけだ。

>「アア!?・・・クソクソクソクソ!!!!ガードプログラム;アサイラム」

それだけの――はずだった。
だがNo14の咆哮と行動が、ザ・フューズの集中力を俄かに奪った。
避けられたはずのビーム砲を、No14は防御している。

>「アア・・・カラダガ・・トケソウダ・・・」

機体の金属部分が、加熱により赤く発光を始めても、彼女は回避行動を取らない。
明らかに不合理な行動――だがその意図は明白だ。
守っているのだ。流れ弾がビルを貫き、外にいる人々を傷つけてしまわぬように。

>「ハア・・・ハア・・・ハア・・・!」

No14は波濤の如く押し寄せるビームを、凌ぎきった。
だがその代償はまさしく火を見るよりも明らかだ。
周囲に陽炎が生じるほどの発熱。No14は消耗しきっている。
0325ザ・フューズ ◆YGhdY0kduEHV
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2019/04/26(金) 00:06:15.06ID:FvNG/ugC
>「ポンコツが……開発者がどれだけ優秀だろうと未来の頭脳には敵わないと理解するんだな」

一方で――アンチマターはまだ、この戦闘で一切ダメージを受けていない。

>「科学者ハ常ニ前ニ向ッテ歩ム者ダト・・・過去ニ向ッテ歩クオマエハ間違ッテイルノダト・・・」
>「未来ノ科学ガ確実ニ先ヲイッテイルト、思イ込ンデルオマエニ・・・ハア・・・ハア・・・」
>「絶対ニ私達ニハ勝テナイト!現実ヲ、オシエテヤル!」

威勢のいい言葉だ。だが戦況は、彼女の言葉とは反する方向へと転び続けている。
No14はもう動けない。少なくとも、すぐには。
そして動けないから、テスカ☆トリポカや地上の人々を、自分の身を、守る事も出来ない。
0326ザ・フューズ ◆YGhdY0kduEHV
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2019/04/26(金) 00:08:09.51ID:FvNG/ugC
正義は勝つ――ザ・フューズはそう信じている。
正常な社会を望む者は、それを望まない者よりも常に多い。
当然、優れた人材や設備、資材もより多く、正義に元へと流れ着く。
仮に一人のヒーローが敗れようと、戦いは正義が勝つまで終わらない。
正義が完全に失われる時が来るとすれば、それは正常な社会の定義が代わり、新たな正義が生まれた時だ。

>「悪徳ヒーロー、ザ・フューズ。まさしく偽善者と呼ぶに相応しいな。
  貴様のような存在をのさばらせる事自体がヒーロー腐敗の象徴……!ヒーロー協会は潰れて当然だった!!
  いったいどの面を下げて生きていられるんだ……?私は許せんのだ、偽善者が平然と正義を語ることがな!!」

だが一方でこうも思っている――悪は、負けない。滅びない。
ヒーローに一度敗れようと、殺されない限り何度でも悪事を働ける。
そしてヒーローは、基本的には、ヴィランを積極的に殺せない。
加えるなら悪は、勝てなくてもいいのだ。
戦わず、勝負すらせずとも、負けながらでも、敵は殺せる。

例えば――事前の備えによって弱点を突いたり、単純に人質を取るなどすれば。

>「貴様に関しては『排除』ではなく『裁き』を下す!超能力で甦るのなら何度でも殺してやる!
  何度でも、何度でもだ!!死んで正義を騙り、人々を陥れてきた罪を贖うがいい!!」

そして、襲い来る十重の閃光。
ザ・フューズがするべき事は変わらない。最も有効な戦術は、撤退だ。
自分にとって優位な状況を作りながら逃走し続け、然る後に反撃に出る。

しかし――ザ・フューズは、そうしなかった。
アンチマターの両腕から何かの照射口がせり上がった瞬間――彼女は前に飛び出していた。
黒曜石の塵の暗幕よりも、更に前へ。
テスカ☆トリポカに、No14に、攻撃の余波が向かわぬように。

人間はその認識力の限界によって、完全な合理性に従い、動く事は出来ない。
息子を名乗る人物からの電話を受けた老婆にとって、
その電話の主に大金を振り込むのが最も合理的な行動であるように。

失われたと思っていたヒーローが、まだそこにいると感じたザ・フューズにとって
――それを巻き添えにしないように動く事は、最も合理的な行動だった。

「この期に及んで、正義に成り済ますか!!」

だがその行動は、愛の力を帯びた献身ではない。
不屈の信念に背を押された正義でもない。
ザ・フューズはそんなものに感化され、力を得るような、真のヒーローではない。
故にそれは――ただの、失策だった。

「ぐっ……!」

閃光がザ・フューズの手足を寸断。
即座にエクトプラズムを用い再生。
ミュータントさながらの再生速度は、訓練の賜物。
敵を殺す前に、殺されない――それは西田結希が戦士を志して、最初に見出した課題だった。

ザ・フューズは更にエクトプラズムを行使。
アンチマターの各関節の動きを阻害するようにブレードを大量生成。
しかし通じない。その戦法は既に見られている。
レーザーカッターの照射口はそれ単体で、フレキシブルアームのように動作が可能だった。
本体の動きを封じたところで、レーザーは防げない。
0327ザ・フューズ ◆YGhdY0kduEHV
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2019/04/26(金) 00:08:36.88ID:FvNG/ugC
今度は腹部が輪切りにされ、上半身と下半身が両断。
上半身が床に落ちるよりも速く、再生は完了していた。
着地と同時、両手に灯る炎。
炸裂ではない。油に着火したような、激しく燃え盛る火柱だ。
アダマス合金の装甲だろうと、炎熱を完全に防ぐ事は出来ない。

だが――それは相手の動作を完全に封じられていればの話だ。
アンチマターが力強く一歩前に足を踏み出すと、彼を拘束するブレードがひび割れ、砕けた。
黒いパワードスーツの馬力は、ザ・フューズのエクトプラズムの強度を大幅に上回っている。

アンチマターはそのまま距離を詰めきり、ザ・フューズの顔面を鷲掴みにした。

「命乞いをしろ」
0328ザ・フューズ ◆YGhdY0kduEHV
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2019/04/26(金) 00:09:50.30ID:FvNG/ugC
鋼鉄をも砕く拳が彼女の頭を掲げ、絶妙に、砕いてしまうぎりぎりで握り締める。

「私に慈悲を乞え!正義を求めろ!お前が今まで偽ってきたものの名を呼んでみろ!
 その瞬間に……殺してやる。砕けた脳髄が飛び散るその刹那に、己の罪を思い知れ!」

ザ・フューズは――答えない。
ただ右手を上げて――圧迫によって半ば砕けた仮面を、己の顔から剥いだ。
そしてアンチマターを見下ろして、

「……お前のせいだ」

そう、零した。

「覚えていないだろうな……お前は……この顔を」

アンチマターの反応も待たず、ザ・フューズは続ける。

「……昔、一人のヒーローと、ヴィランと……ただの小娘がいた……。
 ヒーローは、強く……ヴィランは追い詰められていた……だから……」

声はか細く、弱々しい。

「だから人質を取った……ヒーローは、その小娘の為に……死んだ……。
 このメトロポリスじゃ、よくある話……だが、話はそこで……終わらなかった……」

だがその眼光はアンチマターを貫き、微動だにしない。

「ヒーローが死んで……ヴィランは小娘を放り捨てた……。
 ソイツが生きてるかどうかなんて……どうでも良かったんだろう……。
 ……小娘は偉大なヒーローを一人死なせて、おめおめと生き残った訳だ」

両眼に灯る憎悪の炎は――静かに零れた涙では、消えない。
むしろより一層、火勢を増してすらいた。

「……生き残ったソイツは、償いがしたかった。自分のせいで死んだヒーローに。
 いや……本当にそうだったのか、もう分からない。
 もしかしたら、自分以外に憎む相手が欲しかっただけかもしれない」

時に――歴史の改変という命題には、必ず付いて回る一つの問題がある。
タイムパラドックスだ。

「個人的な恨みでヴィランを追うには、金と、力がいる。
 その為なら、なんだってした。最初に始めたのは、勉強だったがな。
 法律を学んだ。街のギャングに取り入る為に必要な知識だった」

歴史の改変の成功は必然的に、変えたい過去があるという動機の消失と同義。
つまり改変が成功した時点で、今度は未来における改変者が誕生しない事になる。

「ヤツらに取り入り、金を盗んで、超能力を買った。そのまま逃げおおせて、ヒーローになった。
 ヒーローとしてのし上がるのは容易かった。手柄がどこにあるか、私は知っていたからな」

となると今度は歴史の改変そのものが無かった事になり――矛盾の円環が生まれる。
しかしアンチマターはその可能性を危惧していない。
彼の時間遡行には、タイムパラドックスを超越する理論が内包されているのだろう。
0329ザ・フューズ ◆YGhdY0kduEHV
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2019/04/26(金) 00:11:36.00ID:FvNG/ugC
「壊滅させたギャングの残党を、今度は私が手足として拾った。金を稼ぐ為に。
 ……結局、最後は偶然に助けられる事になったがな……まぁ、いいさ」

だが、だとすれば――彼はある可能性を考慮して行動すべきだったのだ。
過去の卵を潰して未来の鶏を殺す事が可能ならば――その逆も起こり得ると。
未来の鶏が現れた事で、過去に卵が生まれる事もある。

「やっと、また会えたな」
0330ザ・フューズ ◆YGhdY0kduEHV
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2019/04/26(金) 00:14:09.01ID:FvNG/ugC
すなわち――自分の行動こそが、自分がいた未来を生み出すという可能性を。
この時代における彼自身の行いが、一人の少女の未来を変えたように。

いつか必ず、あの男を殺してやる。
だから私は『導火線(ザ・フューズ)』だ。
いつか必ず、この炎を、あの男に追いつかせてみせる、と。
己の名に復讐の誓いを刻み込んだ、悪徳ヒーローを生み出したように。

「……そして、時間切れだ」

ふと、ザ・フューズが、冷酷な声で呟いた。
同時にアンチマターと彼女を取り囲むように、エクトプラズム・キューブが発生。
拳、ミサイル、ビーム砲、レーザーカッター、どれもキューブを破壊出来ない。
否、壊れた瞬間に再形成される。

「思い知れ。正義は、勝つんだ」

何かが起こった。『アイズオブヘブン』の予測をすり抜けた何かが。
そう悟ったアンチマターは――即座にザ・フューズの頭を床に叩きつけた。
エクトプラズムによる再生は――起こらない。
だがそれでも、キューブは消えない。
『仕掛け』は既に、完成しているのだ。

悪徳ヒーロー、ザ・フューズ――西田結希は、詐欺師である。
故に言葉を用い、人の意識を誘導する術を知っている。

『……お前のせいだ』

切り口は、正義を標榜するアンチマターにとって聞き捨てならない言葉。
あえて侮辱されたと感じさせる事で、言葉の続きを待たせた。

『覚えていないだろうな……』

倒置法だ。覚えていないだろうと言われれば、人間は何の事かと思考を引っ張られる。
アンチマターの場合は、強い反抗心もそれをかえって助長させた事だろう。

『この顔を……お前は……』

続けざまに、今度は興味の対象を提示――記憶の想起に意識を向けさせる。
そこまですれば――残りの話は、相手が勝手に聞き入ってくれる。
そうして十分に時間は稼げた。

後天性超能力者のザ・フューズでも、視線の通っていない一つ下のフロアに、大量の疑似脳を生成するだけの時間が。
0331ザ・フューズ ◆YGhdY0kduEHV
垢版 |
2019/04/26(金) 00:18:11.96ID:FvNG/ugC
ザ・フューズの超能力強度は、確かに掃いて捨てるほどいる程度だ。
だが――そんな彼女でも十人いて、完全な連携が取れれば、自動車を粉々に爆破するくらいは出来るだろう。
五十人もいれば、小さなビルを一棟、超能力だけで破壊出来るようになる。
それが百人にもなれば――核シェルターの扉とて、焼き切れるほどの炎が生み出せるだろう。

そして――キューブの中に炎が渦巻く。

もっとも今回配置出来た疑似脳は、二十三基。
その内、二十基はキューブの再生成を担当している。
故に火力は今ひとつだが――それでも生み出される熱は装甲越しにアンチマターの体を、呼吸器を焼く。

アンチマターは疑問に思うだろうか。
何故、『アイズオブヘブン』がこの展開を予想出来なかったのか。
それはザ・フューズが――失策を犯したからだ。
入念な準備を行うという合理性に対する、前に飛び出し接近戦を図るという愚行。
そこに生じる矛盾が、機械による予測にノイズを植え付けた。

つまり。
例えそれが、かつて死なせたヒーローへの負い目から来た、ただの気の迷いだったとしても。
例えザ・フューズが、今までずっと愛と正義を踏みにじってきた、悪徳ヒーローだったとしても。
それでも正義は――――彼女に報いたのだ。

床に転がる、頭部の上半分を失ったザ・フューズは、その口元に笑みを浮かべていた。



【念の為:この行動が完全に防御され、無駄になっても私は気にしない。
      殺されたヒーローが誰だったのかは白紙だ。
      トリップキーの誤りについては気にしないで欲しい】
0333◆e/Hk8MRdV7ep
垢版 |
2019/06/22(土) 21:45:18.74ID:Oc46QL8Q
2020年の、ある日の事だった。
「それ」は何の前触れもなく、宇宙から降ってきた。
人の形をした巨大な金属の塊。つまり――ロボットが、降ってきた。
一体や二体ではない。何十体ものロボットが、地球上の至る所に降ってきたのだ。

しかし、それらは本来あるべき機能を失っていた。
つまり――壊れていたのだ。
だが、機構までもは失われていなかった。
つまり――分解して、その構造を調べる事が出来た。

それらは未知の技術の宝庫だった。
ナノテクノロジーと、それを利用したニューロコンピュータの作成。
重水素から実用的な規模のエネルギーを抽出可能な小型融合炉の実用化。
そして何よりも、3〜5メートル級の、高度な機動性を有するパワードスーツ型ロボットの再現。
人類の科学技術と文明は、飛躍的な進歩を遂げた。
ロボットがどれもパワードスーツ型であるにもかかわらず、その中に搭乗者の遺体が無かった事など、すぐに誰も気にしなくなった。
それが――十年前の出来事だった。

そして今――地球は、宇宙からの侵略を受けていた。
侵略者達はかつて降ってきたロボットと、ほぼ同一の外見をしていた。
それらは金属の体と、機械的な身体構造を有する、エイリアンだった。

彼らは地上を制圧すると、人々を自分達の体内に押し込んでいった。
それは彼らにとっての捕食行為だった。
自分達の体に空いた空洞を埋め、また機能を向上させる為の。

中国は国土の七割が侵略者――ヴォイド達に制圧された。
ロシアではヴォイドとの戦闘によって数万人の死傷者が出た。
アメリカがワシントンDCを奪還出来ないまま3ヶ月が経過している。
地球人類は今、危機的状況にあった。




みたいな感じのロボット・バディアクションな準SF物がやりたいと思っています
それなりに人数が集まれば始めます。別にすぐにでも始めたい訳ではないので、集まらなければ気長に待ちます
以下にいくつかの要点とテンプレの例を置いておきます

・ロボットのサイズは3〜5メートル。例外は戦術的な意味があるなら認められる

・全てのロボットは「自律行動も可能なパワードスーツ」である
 人が搭乗する事で動作の出力や精密性、センサー類の機能向上などが望める

・つまりそれらのメリットが必要なければロボットとパイロットは別行動が可能
 着脱は極めて素早く行う事が出来ます
 パイロットはハイテクなスーツによってそれなりに素早く力強いです

・科学技術はぼんやりと近未来的であればよし
 メタなお約束=ロボットによる戦闘が無意味になるほどの技術は実用化されていません

・プレイヤーは警察、捜査官、軍人、傭兵などの「戦闘用ロボットに搭乗していても不自然でない経歴」が求められます
 これは不自然さを軽減出来る場合、上記以外の経歴の使用が認められるという意味でもあります
0334◆e/Hk8MRdV7ep
垢版 |
2019/06/22(土) 21:47:49.57ID:Oc46QL8Q
ジャンル:ロボット・バディアクション
コンセプト:ロボットバトルしたい
期間(目安):駆け足で一章分くらい
GM:わたしです
決定リール:なし
○日ルール:7日
版権・越境:なし
敵役参加:なし
避難所の有無:なし

【テンプレート】

名前:アレクサンドラ・ククラ
年齢:16歳
性別:女
身長:148cm
体重:44kg
職業:訓練生
性格:強気
装備:標準型パイロット用ナノスーツ(XSサイズ)、アンチ・メカニズム・ピックピストル
容姿の特徴・風貌:灰金髪、蒼眼、女性的な起伏に乏しい
簡単なキャラ解説:パイロットに憧れて軍学校に入学した勝ち気な少女
         本来は実戦の場に投入されるべき年齢・階級ではないが、諸事情により前線に出ている


機体名:インディペンデント・ヴァリアブル
外見:3メートル級、白い布の塊=ミイラ
兵装:12.7mmAPライフル、ヴァリアブル・ナノブレード、マルチパーパスランチャー、スカラベ・ドローン
性格:人懐っこく、ジョークを好む

解説:自己増殖性ナノマシンによる修復可能な装甲を持つ
   装甲内部には大量の虫型ドローンが格納されている
   ドローンには偵察、破壊工作などを目的とした機能を持たせる事が出来る
   ドローンは敵機などから材料を補給する事で複製が可能
   工兵としての運用を想定された機体の為、運動性能は平凡
0335創る名無しに見る名無し
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2019/06/23(日) 20:20:21.24ID:HpCQhkor
ミイラに戸惑いが隠せないな

質問
ロボットは自律行動ができるという事だけど、それは事前にプログラミングされた動きということ?
それともロボットの自律した意識があるということ?
0336◆e/Hk8MRdV7ep
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2019/06/23(日) 22:37:02.29ID:R1O+aIlC
これは雑記です
ニューロAI搭載型パワードスーツ『FRAME(Flexibly-Raiding-And-Machine-with-Emotion)』の運用理念は
簡易的に説明するならば『状況に応じて戦車のような振る舞いが可能な歩兵』です

FRAMEは基本的に人型なので、戦車や歩兵戦闘車などよりも小回りが利きます
市街戦ではよほど狭くなければ路地を利用する事も出来ますし
建築物の中に踏み込んでいく事も可能です
そりゃもちろん、まったくの無策ではまずいですけども
ともあれ一方でFRAMEは、戦車の砲弾を防御したり、逆に戦車を単機で撃破する事も可能です

ですが彼らがその性能をフルに活用するには、パートナーであるパイロットとの連携が不可欠です
FRAMEはパイロットと合体する事でより力強く、俊敏で、有機的な動きが可能になります
またAIが電子戦術面に専念出来るのでセンサーなどの精度も上昇します

加えて、連携とは単に合体して機体の性能を高める事のみを指しません
例えば市街地や屋内戦に臨む際、FRAMEが完全に歩兵と同様の振る舞いをしていては、機材の無駄遣いです
時に壁を破り、時には銃弾を遮り、逆にパイロットが斥候を務める事で敵の位置を共有する
要するに、Flexibly-Raiding(柔軟な襲撃法)です。それこそがFRAMEの真価なのです

熟練のFRAMEとパイロットは、いかなる状況でも一心同体の振る舞いが可能です
彼らはMechane-with-Emotion(感情ある機械)です
あなたはきっと、彼らと心を通わせる事が出来るはずですし、それは生き残る為の秘訣でもあります


>>335
合理的な(ように見える)理由があればデザインは問わないという例です
ドローンやその材料を格納して活動するには布のような柔軟性を持つ装甲が最適だとか、そういう感じです

質問への回答は後者です
彼らに搭載されたニューロコンピュータは人間の脳に似た振る舞いをします
つまり学習によって成長し、その過程で人格を得ます
0337創る名無しに見る名無し
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2020/02/14(金) 23:54:09.00ID:301l2G6v
原案だけ放置しても良いスレって聞いてさぁ!!!
キャラを大事にしないのが好きでさぁ!!!!!

【TRPG】異界探索

2月29日

私達がこのホテルから出られなくなってもう10日が経った
相変わらず救助部隊はやって来る事は無く、たくさん居た生徒や教師も、今では14人しか残っていない
その生き残りも、殆どがこの町の異常な環境に精神をやられてしまっている
私も今は日記で考えを纏める事で何とか正気を保っているが、このままの状況が続けば彼らの様になってしまうかもしれない
……いや、弱気になってはダメだ
残った数少ない大人として、教師として。私には生徒たちを無事に家に帰す義務がある
幸い、4階に安全そうな空間を見つけた
調べた限り異常に汚染されておらず、奴らの姿も見当たらない
今日はこの部屋で生徒たちに休んで貰うとしよう

3月1日
(血液と思わしき茶色い染みがこびり付いている)

3月2日
……最悪だ。私の考えが甘かった
このホテルに安全な空間があるだなんて、楽観的になり過ぎた
あの部屋のルールは年齢だったんだ
大人は皆、崩れてしまった。教頭先生も、学年主任も、みんなみんな崩れてしまった
もう大人は私1人しかいない
なんでこんな事に……いや、ダメだ。弱気になってはダメだ
子供たちが頼れる大人は私だけなんだ。私が頑張らないと。頑張って生徒たちを生かして帰さないと
とりあえず、生徒たちには自衛の為に武器になるモノを持って貰おう
私が何とかするんだ。頑張るんだ

3月9日
まだ助けは来ない
今回は2人死んだ。何故ルールを守らない。
死に掛けの生徒は探索の囮にすると決めたのに、それを連れて逃げて奴らに掴まるなんて、これだから子供は
私のいう事を聞いていれば1人は生き残れた、無駄死にを選ぶなんて馬鹿げてる
残った生徒には服従を徹底させなければならない。生きて帰る為に

3月11日
助けはjlこない
なんで何でなんでこない!生徒はも う少なくなてしまったんだ!!
早く助けに来い!ああクソ!肉ばかり食べるのはもうたくさんだ!たくさんだ!あああああ!!!!

□□□□□□

【あなた】が拾った日記はここで終わっている
コンクリ貼りの部屋には、目の前の大人のミイラと散らばる骨以外の情報はもうない
【あなた】この部屋でこれ以上何かを得る事は出来ないだろう
窓ガラスにはなまめかしい一つ目が張り付き、じっとあなたをみつめている


どうしますか?

ニア 探索を続行する
  この部屋で休む
  目玉を攻撃する
0338創る名無しに見る名無し
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2020/02/14(金) 23:54:29.23ID:301l2G6v
ジャンル:サバイバルホラー
コンセプト:異界と化したホテルで生き残れ
期間(目安):未定
GM:なし
決定リール:なし
○日ルール:未定
版権・越境:なし
敵役参加:なし
避難所の有無:なし
特記事項:PCロストリスク高

【テンプレート】

名前:木乃 伊代(キノ イヨ)
年齢:22歳
性別:女
身長:161cm
体重:42kg
職業:教育実習生
性格:真面目
装備:化粧品セット 駄菓子 筆記用具 包丁
容姿の特徴・風貌:銀縁眼鏡を掛けた女性。髪型は肩口でそろえたショートヘアー。地味な顔立ち
簡単なキャラ解説:修学旅行で泊まったホテルが異界に飲み込まれ、生徒や同僚と一緒にサバイバルに挑む事となった
         責任感が強く、何とか生徒を無事に帰そうと努力したが、失敗し死亡。ホテルの一室でミイラになっている
0339創る名無しに見る名無し
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2020/02/15(土) 00:01:44.86ID:EbMJ9i5q
面白そうやん
支援
0340創る名無しに見る名無し
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2020/02/15(土) 06:28:47.53ID:v4LVApik
舞台
刀葉林お願い
0341創る名無しに見る名無し
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2020/02/16(日) 10:28:03.66ID:SkLCYIVL
>>338 ノリで作った こんな感じだよね?探索者
名前:須賀 見舞(スガ ミマ)
年齢:16歳
性別:女
身長:170cm
体重:59kg
職業:学生
性格:好奇心旺盛
装備:生徒手帳 テッシュ 蛇
容姿の特徴・風貌:平均的な顔立ち まだ無垢な所がある
簡単なキャラ解説:高校生。好奇心の思うままにこんな怪しいホテルに
肝試しにやってきた。表と裏の違いが激しい。
0342創る名無しに見る名無し
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2020/02/16(日) 18:54:24.94ID:voSodkPU
>>341
はいそんな感じです探索者。多分、恐らく、きっと。
そして再びテンプレ投下

名前:九辺 津夜子 (クベ ツヤコ)
年齢:16歳
性別:女
身長:161cm
体重:49kg
職業:学生[新聞部]
性格:打算的
装備:ポラロイドカメラ、財布、菓子、ガラケー
容姿の特徴・風貌:サイドテールの黒髪。そこそこ整った顔立ち。
簡単なキャラ解説:高校生で写真部の部長。心霊スポット巡りをして写真を撮るのが趣味。
オカルトマニアの知人からホテルの噂を辿ってやってきた。
0343341
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2020/02/25(火) 18:52:51.47ID:3roytp2J
TRPGはやってみたいが敷居が高いからな
こういうアライさんマンションみたいなやつでやってみたい
>>338と物好きな探索者が同意してくれたなら、新スレ建てたいんだがどうだ?
0345338
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2020/02/25(火) 23:08:53.57ID:ZboBqhyA
>>343
いいよこいよ
アライさんマンションいいよね
0346創る名無しに見る名無し
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2020/02/26(水) 17:01:27.54ID:I7/jSnKc
>>344
それもそうだな。338さんは同意してくれたっぽいし
自分が製作したキャラやテンプレキャラ使って軽くTRPGしてみるか
途中参戦可で様子見しよう。
0347創る名無しに見る名無し
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2020/02/26(水) 17:18:26.11ID:I7/jSnKc
こういうスレでのTRPGはあまりしたことないから多少下手でも目を瞑ってくれ

見舞「崩れるとか書いてあるから、やっぱ30代以上だと探索すらできないのかな?ま、私には関係ないからいいか〜」
コンクリ貼りの壁ってことは空間があるか叩いてわかるよな
コンコン…ビンゴ!空間らしきものがありそうだな。それに入ってきた廊下では扉のなかった所だ
見舞「はぁ」
それにしても医療用医薬品は副作用が強いって聞いていたけど強すぎだろ…
壁に目玉が付いてる幻覚って…ホラゲやってなかったら発狂してたな…
いやまさかね、そうじゃなきゃ赤い影や血肉を啜る植物なんているわけないよね…


こんな感じでいいかな
0349九辺 津夜子 ◆C1C0iyWcug
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2020/02/26(水) 23:16:43.78ID:az1oIH21
幽霊なんて居ないと思うし、妖怪なんて笑い話だと思ってきた
居ないからこそ、心霊スポット巡りをするのも怖くなかったし、祟りなんてものを恐れずにいられた
だからこそ、今になって思う。『なんて自分は浅はかだったんだろう』と

「ここもハズレ……本当、どうなってるのよ、このホテルは」

手に持ったポラトイドカメラをのファインダー越しに世界を眺めながら、私は反対側に在る扉を目指して部屋を進む
一歩一歩、警戒しながら。物音を立てない様に、慎重に。
多分、今の私の姿を肉眼で見る人が居たら笑う事だろう。「何も無い部屋で、何をおっかなびっくり進んでいるのか」と
だが、私から言わせれば、そんな風に決めつけてかかる奴らこそが嘲笑の対象だ

だって、私の様に進まなければ、部屋の中を這い回る無数の顔の無い白い影に掴まってしまうのだろうから
『肉眼では見えない』この世ならざる彼らに掴まってしまえば、何をされるか判ったものじゃないのだから

そのままなんとか部屋を横切った私は、元から開いていた扉を潜りゆっくりと閉じる
パタリ、と。僅かな軋みと共に扉は完全に閉まり

「ひっ!?」

直後に鳴り響いた、閉まったドアの向こう側から沢山の何かがぶつかってきた音。それに思わず声を漏らしそうになる
音は暫く鳴り続け、その間私は息を潜めていたが、どうやら彼らはドアを開く事は出来ないらしい
息を吐き、胸に手を当てて鳴り響く心臓を落ち着けながら、私は薄暗いホテルの廊下を歩き出す

「……ここから脱出できたら、もう二度とホラースポットなんて行かないわ」

そう吐き捨てながら、私は次の部屋の扉を開く。次こそは出口である事を祈って。どうか生きて帰れるように願いつつ
0350◆C1C0iyWcug
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2020/02/26(水) 23:20:06.80ID:az1oIH21
最初のレスだから長めに書いたけど多分次はどちゃくそ短く書く

>>347
良いと思うぜい。でもコテ付けようぜコテ
>>348
参加してモリモリ逝こうず
0351須賀 見舞  ◆J1Bja7ezw7s5
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2020/02/27(木) 16:57:32.79ID:b4woqmg5
>>348 探索者が増えるのは喜ばしいことだ。

近くにある扉が開いた音がする。
慌てて廊下に出るも何もおらずゲンナリした瞬間。何かが扉か壁にぶつかったような音がした
その音でハッとした。不用意に出たら危ない。頭で理解したくなかったが、認めざるを得ない。
人ならざるもの達の蔓延るこの廃ビル
「なんなんだよ…」私は思ったより冷静だった。いや冷静になっていると無意識的な自己暗示をかけた
少なくとも何かが襲ってくるわけではない元の部屋に戻った。
テッシュで顔を拭き、体液を取り除く。肩に何か当たる。まるで古屋の雨宿りのような感触に
幾分か安心感を覚える…いや違う。これは水じゃない。それは
目玉であった。上を見ると赤黒き血肉が目玉を排出している
「っ!」謎の目眩に耐えながら残りの力を振り絞り廊下に出た。
そこで意識が消える。


良さげだな。これなら単独スレ作っても、いけるか?
疑問も払拭されたしキャラテンプレでも作って置いておくか
0352久城 隼人 ◆ZqEfuUDy4w
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2020/02/27(木) 22:23:58.05ID:fO1Q4ysD
名前:久城 隼人 (クジョウ ハヤト)
年齢:19歳
性別:男
身長:175cm
体重:67kg
職業:大学生
性格:冷静でもの静か
装備:ヴァイオリン、スマホ、現金約3万、タロットカード
容姿の特徴・風貌:黒髪 アンダーリムの眼鏡
簡単なキャラ解説:音大生、学内の交響楽団にヴァイオリン奏者として所属している。
            たまたま見かけた怪しい外観のホテルに、つい足を踏み入れてしまう。


338だがとりあえずテンプレだけ投下してみた。
導入は作成中だけど、投下はここでいいの?
0354久城 隼人 ◆ZqEfuUDy4w
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2020/02/28(金) 06:17:17.11ID:fyyYRT1j
【導入投下です。どうぞよろしく】


「どなたか……いらっしゃいませんかぁ……」

カウンターの向こう側に、そっと声をかけてみる。
やっぱり……誰も居ない? 居ないよなあ……これじゃあ……

高そうな石で出来たカウンターには白い埃が積もってるし、ロビーの椅子もテーブルもボロボロ。
床の絨毯も、毛羽だったり穴が空いたりで見る影もない。

どうしてこんな事になったんだろう?
僕が家族とここに泊ったのはつい2週間前だ。
経営破綻したのか何だか知らないけど、でも急にこんなになるかなあ……

僕はエントランスに向かって歩き出した。
さっき女子高生(?)がここに入ってくのが見えたのも、きっと見間違えだ。
こんなお化け屋敷みたいな廃ビルにわざわざやってくる物好きなんて僕くらいだろう。
いや、でも……せっかく来たんだから……いいかな?

ケースから取り出したヴァイオリンを構えてみる。
赤い陽が照らす無人のロビー、すっかり枯れてしまった観葉植物の鉢。
こんな場所で一度弾いてみたいと思ってたんだ。

……ギィ……と弓を当てた弦が、いつもと違う音を鳴らした。
変な空気を感じて見回すして……え……うそ……窓の外に……街が無い……!?

ドシン、と上の方で物音がした。
エレベータのドアは半分開いたまま動きそうにない。
非常口の表示があるドアを開けると、上に続く螺旋の階段。
迷わず駆け上がる。さっきの女の子は見間違いなんかじゃなかったんだ。

すぐに2階に着いた。
客室が並ぶ長い廊下をの真ん中に、誰かが倒れている。

「君、大丈夫!?」

ゆすって見ても反応がない。ここは……救急車を呼ぶところかも。
でも取り出したスマホの表示は圏外……って……嘘でしょ!?
0355須賀 見舞  ◆J1Bja7ezw7s5
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2020/02/28(金) 14:25:49.58ID:U6uizLNJ
目が覚める。目の前で私より一回り大きい男子があたふたしている。
とりあえず声をかけようとするが、声が出ない。いや、声だけじゃない腕や足・指先・目蓋さえ動かない
目は半開きで眼球運動ができず、男子になにか伝えることも叶わなかった。
あの男子は携帯の電波でも探しているのか螺旋階段の方へ向かって行った。
視界から男子が消える。脳と感覚器は正常に働いているのになぜか体のみが動かなかった。
いや考えろ私、この状況最悪だぞ。もし何か迫ってきても逃げられないし、丸呑みでもされれば
感覚は生きているから地獄のような苦しみが待っている。状況最悪だ。
落ち着け私、まず、あの男子に助けてもらうのがいいかもな。いやもしかしたらあの男子も化け物の類で
私に危害を加えるかもしれない。となると、今すべきことは【あの男子に気づかれずこの場から逃走する事】かな
モゾモゾと懐で何かが動く。蛇だ。小型で制服の裏に入っては私を驚かす愛蛇だ。その蛇が私の手のひらに乗る。
蛇に気づいた男子が蛇を掴んだ。その瞬間触れ合った皮膚の感触を感じると共に私の固まった体が動くようになった
「あ、あの…」私は愛蛇を取り返し、いつでもジャブを繰り出して逃げれるように、身構えながら数歩男子から離れた
単独スレ建てようと思ったら何故かエラー出たんですよね。はい…
0356◆J1Bja7ezw7s5
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2020/02/28(金) 14:27:46.61ID:U6uizLNJ
あ、改行できてませんね。
「単独スレ建てようと思ったら何故かエラー出たんですよね。はい…」のところは
本文ではないのですいません…
0357九辺 津夜子 ◆C1C0iyWcug
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2020/02/28(金) 23:41:10.36ID:WPTt6l6H
>「どなたか……いらっしゃいませんかぁ……」
「っ!!?」
壁に手を当てながら廊下を歩いていると、曲がり角の先から突然男性の声が聞こえた
このホテルを彷徨ってもう2日。警戒をし続けたうえに長い間まともな人間の声なんて聞かなかったせいで、私の体は反射的に身を隠そうとしてしまう
廊下には隠れる場所なんてないというのに……滑稽な行動を取る自分を情けなく思いつつ、そのまま暫しの時間が過ぎた
……。………。
何も起きない。ならば、もしかして、ひょっとして
【自分以外に生きた人間が居る】のだろうか
警戒と僅かな期待を胸に秘め、恐る恐る曲がり角の先を覗き見る
そこに見えるのは、相変わらず長い廊下と無数の扉
けれど、一つだけこれまでの景色と変わっている点があった
並ぶ扉の一つが、開いていたのだ
恐怖が半分、期待がもう半分。私はそっと扉の中を覗き見る

>「君、大丈夫!?」
>「あ、あの…」

――――人だ!部屋の中には、二人の人間がいた!
男女が一人づつ。見たところ、男性の方は大学生くらいの年だろうか。ギターケースの様な物を手に持ち、女性へと手を伸ばしている
女性の方は、倒れた体勢で男性の手を取るか悩んでいるように見える
確かな人間の姿に私は駆け出そうとし……だけど、部屋に入る一歩手前で足を止めてしまった
何故だろう。手を伸ばせば助かるかもしれないのに、声を掛ければ救われるかもしれないのに
自分の行動への疑問を抱きつつ、私は室内の二人のやりとりを眺め
【それ】に気付いた
あれだけ会話を交わしているのに―――彼等は口を全く動かしていなかった。口を開いてすらいないのに、部屋には声が響いていた
背中に氷を入れられたような悪寒を覚えつつ、私は扉の前から後ずさる
ゆっくりと何歩か下がり、やがて逃げる為に走り出す

「どなたか……いらっしゃいませんかぁ……」「君、大丈夫!?」「あ、あの…」
「どなたか……いらっしゃいませんかぁ……」「君、大丈夫!?」「あ、あの…」
「どなたか……いらっしゃいませんかぁ……」「君、大丈夫!?」「あ、あの…」

遠く後ろから聞こえてくる声は、同じ会話を何度も繰り返している
きっと【アレ】は罠だったんだろう
まるでDVDを繰り返し再生するように、このホテルで何時か起きた出来事を再生し、それに惹かれる人間を待っているんだ
……恐怖と怒りを感じながら、私は乱れた呼吸と精神を整える為に歩を進める
目的地は6階――といっても本当に6階なのかは判らないのだけれども、とにかくそこに存在している自販機コーナー
このホテルの中で見つけた、現状私が唯一安全に過ごせているセーフゾーンだ
0358久城 隼人 ◆ZqEfuUDy4w
垢版 |
2020/02/29(土) 06:52:58.39ID:xfdA8BfN
僕はすぐに立ち上がり、スマホを上にかざしながらゆっくりと歩いてみた。
ホテルって、場所によって繋がる場所とそうでない場所があったりするよね?
でも……駄目だ。階段も何処も駄目。
廊下の突き当りも駄目だ。
すりガラスの窓を開けてみようかと思ったけど、エントランスから見えた景色を思い出してやめた。
あれは見渡す限りの荒野だった。赤い砂だけが延々と広がる砂漠に似た荒野。
……信じられないことに、このホテルは僕達の住む世界とは違う場所に存在しているんだ。
過去か、未来か、この世でもない異界なのかどうかは分からないけど。
もしそうなら携帯の電波なんかある筈がない。

仕方なく少女のところに戻る。
やっぱりピクリともしない。眼は少し開いてるのに、こっちを見ようともしない。
だけど微かに胴体が上下してる。
息をしてるなら死体じゃない。たぶん気を失っているだけだ。
学校でやらされた救命の実習を思い出す。
たしか仰向けにして……人工呼吸と心臓マッサージ。
……でもこの女子は実習用の人形じゃない、本物だ。触ったりして大丈夫か?
もし彼女にちゃんと意識があって、僕のやったことを見られていたら、後で問題が起こるかも?
いやいや、そんな事を心配してる場合じゃない。
ここは異界で、外には助けてくれる大人は居ない。僕がどうにかするしかない、そうだろ?
命が大事だ。言い訳は後でいくらでも出来る。

そんなこんなでやっと決意を固めた僕は、彼女の肩に手をかけた。
そこはべっとりとした何かで濡れていた。

――血? 怪我してるのか?

でも傷らしいものは見当たらない。
手についたぬるぬるを絨毯で拭いながら、僕は彼女の胸の辺りがもぞもぞ動いてるのに気付いた。
動くそれがにゅっとその首を出した時、その正体に気付いた。

「ぅわ……!」

飛び退いた弾みで内ポケットのカードの一枚が、零れて落ちる。
スルスルと彼女の胴体を横切って、その掌に乗る生き物は小さな一匹の蛇。
蛇だよ蛇。
不吉の象徴。
こんなのが女の子の身体に纏わりついて、いい事がある訳がない。

僕は咄嗟に蛇を掴んだ。その瞬間に驚くべきことが起きた。女の子が身体を起こしたんだ。
茫然と見守る僕の手から、彼女が蛇をひったくる。
蛇は彼女に甘えるようにその手に絡まっている。

「あ、あの…」

僕の呼びかけに彼女は答えない。何故か両手を拳にして構えつつ、後退る。
警戒されたんだ。当然だ。彼女はやっぱり僕の行動を全部見ていたんだ。

立ち上がろうとして、でも床に落ちていたタロットカードに気付いた。

このカードは――

僕は絵柄を彼女に見えるようにして突き出した。

「愚者のカード。その意味は『今はあれこれ考えず行動すべし』。まずは話を聞かせて? ここで何があったんだ?」
0359須賀 見舞  ◆J1Bja7ezw7s5
垢版 |
2020/02/29(土) 09:48:47.44ID:5q18N/5q
体が動かなくなったのはおそらく肩に当たったあの目玉のせいだろう。
病気は感染力だったりが高いものほど治せるものはすぐ治るらしい。今回は治す条件が
『人と素肌で触れる』ということだったと思われる。肩に手を当ててみるとニョロニョロ
としたものが付いている。おそらく目玉関連のものだろう。私は目の前の現状に目を向けた

あの男子の今までの行動から怪異とかではなさそうだが、警戒することで損はないだろう
「話を聞くならまず自分から話すのが筋じゃないの」
一度言ってみたかったこのセリフ。互いに軽い自己紹介を終えた所で、これからどうするか
を考えた。こんな状況になっている時にいつもの、まぁ表の顔?をしている余裕はない。

幸いにも近くには螺旋階段がある。階段の入り口には謎の監視カメラが付いているが下手に
手を出すわけにもいかない。とても小さな人の声がどこかから反響している。
がすぐに消えた。「とりあえず上の階に上がろう」久城 隼人に呼びかける。
階段があるはずの部屋に入ると、久城 隼人はこちらに何か伝えようとしていた
…がなにも聞こえなかった。

そして扉が閉まった時に気づく、非常口のドアはこんなのじゃない。
この部屋は明らかに【エレベーター】だ。そんな、入る前は絶対に階段だったのに。
いや落ち着け、『開』のボタンを押せば…いやボタンがない。ボタンは一つとしてない
エレベーターは無慈悲にも動き出す。階を示すはずの液晶には『↑пять』と出ていた

途中エレベーターが止まる。扉が開き太った灰色の肌をしていて手には缶詰が大量に入っ
た袋をさげている、頭のない人型のナニカが入ってくる。出ようとしても大きい体に阻まれ
て出られない。一度こちらを見るような動きをし粘液に塗れた手で頭を掴んでくる。
こっちもアッパーをかけるとなにもしてこなくなった。
エレベーターが止まり、扉が開くとヤツは出て行った。
この階はさっきいた所と違う雰囲気で、なんというか孤独を感じた。ヤツは右の手前から
3番目の部屋に入って行った。緊張が解けガクっと膝から崩れ落ちた。
0360九辺 津夜子 ◆C1C0iyWcug
垢版 |
2020/03/01(日) 17:26:33.27ID:Vq0NgAY3
6階。私が安全地帯と認識しているそのフロアは、一片が20m程の正方形の一室で形作られている
打ちっぱなしのコンクリ部屋で、天井に電灯はなく四方にびっしりと自動販売機が並べられているのが特徴だ
自販機の種類は様々で、よく見知った飲み物やファーストフードを始めとして、御菓子、野菜など、様々なものが売られている
この部屋を見つけられた事は不幸中の幸いだった
怪異は現れず、食糧も確保できる
正直、このフロアを見つけられなければ私はとっくの昔に命を落としていただろう
もっとも、知らない文字で書かれた気味の悪い缶が売っているあたり、ここもまともとは程遠いのだけれど……
気を取り直し、先程の階から走って逃げてきた事で乾いた喉を潤すために、私は手近な販売機でお茶のペットボトルの購入ボタンを押す
お金も入れていないのにガタンと音が鳴り、商品が出てきて

すると、いつもの通り【ルーレット】が始まった

部屋に並んだ自販機の一つが赤く光る
光は直ぐに消え、次はその右隣の自販機が赤く光る
次の自販機も同じように光り、赤い明滅は繰り返されていく
それは十数秒ほども続き――――不意に、私の2つ隣の自販機で光は止まった
その直後、光が止まった自販機はブザーの様な音を鳴らし、点っていた明かりを消す
天井にライトがないので、電気が消えた自販機の前は暗闇になる

その暗闇の中で何が起きているのかは私にはわからないし、解りたくもない
一つ言えるのは、ライトが消えた自販機は再点灯した後、その形状も商品も全く別の物になっているという事だ

多分だけど、もしもルーレットに当たってしまえば、きっとロクでもない結果になるのだろう
リスクは高い。だけど、それでも生き残るうえではこの部屋の機能を活用しなくてはならない
当たらなかった事に感謝しながら私はペットボトルのお茶を口に含み

「……ぬるいわね、これ」

常温だった事に眉を潜めるのだった
0361久城 隼人 ◆ZqEfuUDy4w
垢版 |
2020/03/01(日) 22:10:19.76ID:wMdkOCEG
>「話を聞くならまず自分から話すのが筋じゃないの」

澄んだ眼をじっとこちらに向けたままの少女。その表情は相変わらず硬い。
……考えが甘かった。女子は占い事が好きだから、こういうカードに興味を持つんじゃないかって期待したんだ。
でも彼女の主張も当然だ。名乗るときは自分から。そりゃそうだよね。

「僕は久城隼人。歳は19。ヴァイオリンぐらいしか能の無い音大生さ。趣味はタロット占い」

すると、少しは心を許してくれたのか。
彼女も手短に答えてくれた。須賀、見舞という名前だという事と、16歳だって事。蛇は彼女のペットだとも。
でもそれ以上の事は話してくれなかった。まだ警戒されているのか、元々殻に閉じこもるタイプなのか。
まあ……僕もあまり社交的とは言えないけど……この非常事態。
せめて何があったのかだけでも聞いておきたい。彼女はここでは先輩なんだし。

そう思って口を開きかけた僕は上を見上げた。
音がする。
これは……声だ。ボソボソとくぐもった……低い男の声。変だ。聞き覚えがあるような? 上の階に誰か居る?
須賀さんにも聴こえたんだろう。とりあえず上の階に上がろうと僕を促し駆け出した。
素早い身のこなしだった。
あっと言う間に非常口に向かい、重そうな音を立てて押し開けられた扉の向こう側に姿が消えるまで、ほんの数秒。

あわてて続こうとした僕は足を止めた。いつの間にか扉が引き戸になっていたんだ。
隙間から見える空間も階段なんかじゃない、縦長の狭い個室。
縦一列に並ぶ、各階のボタン……これはエレベータ? 
上を見れば、確かに「非常口」の表示。その下には監視カメラ。

「変だ、階段じゃない。戻った方がいいんじゃない?」

呼びかけてみたけど、須賀さんは「何を言ってるんだろう」的な顔して振り向いただけ。
仕方ない、と乗り込んで……あれ?

そこはやっぱり階段だった。須賀さんの姿は消えている。
トントンと音がしたから振り向けば、客室ドアのひとつが音を立てている。
内側から誰かが叩いている!? 閉じ込められた人間が!?

ノブを回してグッと引くと、ドアは意外にも簡単に開いた。
でも誰も居ない。
ずるっと足が滑って、足元を見た僕は飛び上がった。ピンポン大の「目玉」がたくさん落ちていたんだ!
ぬるぬるした気味の悪い粘液に塗れた生々しい目玉。
そういえば須賀さんの肩はこれで濡れてなかったか? 彼女が動けなくなっていたのと、この目玉には関係が?
そう思い至った時、僕は咄嗟にヴァイオリンケースを盾にした。
同時にぶち当たる柔らかい無数のそれ。
――理解した。このフロアの客室には入ってはいけない!

無我夢中でドアを閉じる。
ケースにひっついた目玉を振り落とし、強い視線を感じて見上げれば、さっきのカメラがじっとこちらを見つめている。
僕を――僕達を監視している誰かがいる。
入り込んだ人間を狙う誰か。間取りを自在に変える事の出来る誰か。

そう思ったとき、ぞっとしたんだ。
このホテルそのものが、その「誰か」なんじゃないかと。
古びた館が、突然新築のように新しく生まれ変わる。住んでいた人間を食い、その命を糧として。
そんな映画を見たのはいつだったか。
僕は走った。階段でも、エレベータでも何でもいい。このフロア(2階)から移動する為に。

再度飛び込んだ階段は階段のまま。
一足飛びに駆け上がる。
須賀さんが上に居る。さっき聞こえた声の主もいる筈だ。
とにかく誰かと合流する必要がある。協力してこのホテルから逃れる術を見つけるんだ。
でなければみんな死ぬ。
0362須賀 見舞  ◆J1Bja7ezw7s5
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2020/03/02(月) 09:41:54.11ID:5C8Mfttv
しばらく経って膝が動くようになってから立ち上がる。
まずここはどの階なのかそれが知りたい。確か、もといた階が2階で上昇したように見えたから
4〜5階か?とにかく人と離れてしまった。
…お腹が減った。ここに入ってきてから色々な最悪な目に遭って消耗したんだろう。
すると左の5番目の扉から、楽しそうな声と美味しそうな匂いが漏れてくる。
多分…いや絶対罠だろう。しかしうまく行けば罠をかい潜り、食べ物を手に入れれるだろう
頭が熱かった。だからなのかこんな甘い思考をして、まんまと扉を開いた。
「すいませ〜ん食べ物少し分けてください」しかも自分から呼びかける。食欲に抗えない異常だ。 
アパートの一室のようなところに出るとカップラーメンと割り箸、お湯がが置いてある。
体が勝手に動き、3分も待たずに食べ始める。
7杯目に入ったところで気持ち悪くなり、やめようとしても体が反応しない。
頭が痛い、熱い。けれども食べる。愛蛇が異常を察しているのか腕らへんを噛み続ける。
しばらくして吐き気と共に半分くらい食べたもの吐いた。体も動かない
幸いにも吐物は服にはかからず、体も強く意識すれば動く。多分私の愛蛇の毒かもしれない
愛蛇が毒蛇だったことに驚きつつまた違う所で吐いた。出ようとするも、[ノコスナ]と赤い字のプレートが
かかっていて出られない。また頭が熱くなり異常な食欲が出始める。横を見ると洗面台、
望みに掛けて頭を洗う。水は血を混ぜたような薄い赤色だったが頭の熱は取れた。ついでに髪も少し赤くなった
もしかしたらと思い、蛇口を全開にする。しばらく経ってカチャっと音がする扉を開けて
出てみると、壁一面に許さないの赤い文字。横を見るとエレベーターの所から
太った灰色の首のない奴らが迫ってくる。一部の扉も勝手に開く。
どうやら、機嫌をこの階全体の機嫌を損ねてしまったらしい。ヤバイと思い、
反対側の方面の扉に走り入り込み逃げ込む。
0363九辺 津夜子 ◆C1C0iyWcug
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2020/03/03(火) 23:26:28.82ID:SwarbSLm
「さて、と。食糧も飲み物も十分……気は乗らないけど、そろそろ探索を再開しようかしら」

自販機から補充した食糧を鞄に入れて背負う
鞄の紐が肩に食い込み若干痛いけれど、背に腹は代えられない
食糧が得られるフロアが他に有るとは限らないのだから
そのまま大きく深呼吸をして階段へと向かうが

「……? 何か、様子がおかしいわね」

どうにも騒がしい
私が居た6階の下のフロアには、文字通り何もない筈だ
入口と思わしき非常ドアは有るけど、開いてもコンクリの壁があるだけ
叩いても蹴っても何も起きなかった
だというのに、今はその非常ドアの向こうから音がする
大勢の人間が走り回っているような、そんな音

予感めいた何かを感じて、階段を数歩上へと上がる
そして鞄から自販機で手に入れた【マグロの刺身】の缶詰を取り出して構えた
缶詰に生魚なんて怖くて食べられたものじゃなかったけれど、この重量は投げれば武器になるだろう

案の状、数秒後に先が無かった非常口が開かれた
それと同時に私は缶詰を力いっぱい投擲して―――――え!?

「に、人間!?」

扉から飛び出して来たのは女の子だった
髪から赤い液体を垂らして蛇を伴うという妙な姿だったけれど、確かに生きた人間の女の子……に見える
私と同じくらいの年齢だろうか、どこか切羽詰まった様子で――あ、マズい!

とっさに投擲する手を止めたが、缶詰は慣性の法則に従って私の手をするりと抜けだしていってしまった
缶詰はカランカランと音を鳴らして階段を転がり、そのまま非常口の扉の中へと吸い込まれていった
その瞬間、先程まで聞こえていた奇妙なざわめきがパタりと止んだ
私は状況が理解出来ないまま、階段をまた一歩上がってから飛び出して来た女の子に尋ねる

「……。はじめまして、私は九辺津夜子。荒井高校の学生で新聞部よ」
「それで、一応聞くけど貴女は人間でいいのかしら?」

おでん缶を鞄から取り出し、女の子に向けて投擲の姿勢で構えながら尋ねてみる
この子の様子が奇妙であれば投げて攻撃しよう。おかしな行動をしても投げる
まだ、眼前の存在が人間と決まった訳じゃない。だから、警戒は緩めない
0364久城 隼人 ◆ZqEfuUDy4w
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2020/03/04(水) 06:49:11.16ID:41RcuCBt
このホテルには意思がある。
人間同士を引き離し、孤立させ、その様子を眺めほくそ笑む……そんな悪意が。

それを実感したのは駆け上がってすぐの事だった。
見上げた先のプレートの表示は3F。上に続く階段がない。
まさか。
さっき見たエレベータのボタンは6〜7Fまであった。非常階段が3Fまでというのは有り得ない。
幻覚でもなさそうだ。
行く手を塞ぐコンクリの壁は……冷たい……確かな質量を持った壁だ。先へを進めない。
ここで降りろという事か? 
もしそうなら須賀さんらがここに居る可能性は低いがしかし……戻っても仕方がない。
少しでも合流の可能性がある方へ行くしかない。

防火扉なんだろう、やたらと思いドアを引いて開ければ、そこはやはり3階。仕様は2階と同じ。
注意深く歩を進めると、扉のひとつが勝手に開いた。順路はこっちだと言わんばかりだ。
ドアには31Rのプレート。Rってなんだろう?
まあいいさ。
入れと言うなら見てやろう。何かヒントがあるのかも知れない。

目玉の飛来に警戒しつつ、部屋の中を覗き込む。
打ちっ放しのコンクリートで覆われた……ダンジョンの一室を思わせる空間。
部屋一面に散らばっている白いこれは……骨か。人間の骨。つまり、ここに入ればこうなる……と。

普通に考えれば引き返すところだ。中に入るなんてとんでもない。
でも数秒後、僕は部屋の奥に座り込んでいた。
勝手に身体が動いたわけじゃない。夢中で飛び込んだんだ。
だってそこには……一冊のダイヤリーブックが落ちていたんだ!

趣味のいい革張りのカバー、そこに貼られた肉球のシール。
半年前に猫カフェで知り合った彼女からもらったものと同じ。
極めつけはカバー裏に書かれたネーム。
だからこれは……壁に寄り掛かって座っているこの一体のミイラは……彼女だ。
木乃、伊代。
母校の修学旅行に同伴すると言ったきり、連絡が取れなくなった。
まさかこのホテルに……泊まってたなんて……

カサカサに乾いた手足にそっと触れる。
長い髪も、銀縁の眼鏡も、確かに伊代だ。3つ年上の……僕の彼女。どうして……何故こんなことに…………

日記に眼を通し終わったその時、ザワリと空間が震えた。身体を蝕む何かが……満ちるのが解る。
ドアが音を立てて閉じる。散らばる骨が……ひとつ、ふたつと崩れていく。
もう逃げ場がない事を実感する。助からないなら……せめてと、彼女の隣に並んで座る。
ここに案内するなんて、ホテルも粋なことをする、なんて能天気に思いながらね。

キン、と何かが音を立てた。
見れば彼女の眼鏡が床に落ちている。
その音に答えるようにピン、と震えたのはケースの中の楽器だ。促されるようにその楽器を取り出す。
ここで奏でるべき曲なら決まってる。レクイエムだ。モーツァルトがいいだろう。

ヴァイオリン特有の音の広がりが、部屋を空気を震わせた。
突き抜けるような悲しみと、決然とした意思を併せ持つ彼のレクイエム。
まさか僕自身の鎮魂歌になるなんて。
不思議だね、渇いていた部屋の空気が……変わっていく。まるで森のせせらぎだ。

ふと目を開けると、部屋には僕一人だけ。
散らばる骨も、彼女のミイラも消えている。開いた日記表だけがポツンと床に落ちている。
僕はそのノートにそっと礼をして、部屋を出た。

非常口のドアが開く。4階へと続く階段が見える。
なるほど、このヴァイオリンも少しは役に立つらしい。
0365須賀 見舞  ◆J1Bja7ezw7s5
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2020/03/04(水) 10:31:57.36ID:cKkRGfKW
扉を開けた先は思い描いていたほど最悪なところではなかった。
それどころか、大変な収穫である。

「……。はじめまして、私は九辺津夜子。荒井高校の学生で新聞部よ」
「それで、一応聞くけど貴女は人間でいいのかしら?」

彼女…九辺さんは缶詰を投げる構えをとりながらこう聞いてきた

「私はちゃんとした人間よ…それにほら」
私は生徒手帳を見せる。すると少しは信用してくれたのか缶詰を鞄の中に入れ警戒を解いてくれた
いや安心している場合じゃない。追ってきたあの怪物達が…音は全くしない
どうやら非常口を超えたら追ってこなくなるのかも
非常口はいつのまにかしまっているし、違うエリアには基本入ってこれないのか?
それか入った瞬間私を襲った忌まわしき呪いの缶詰が効いたのかもしれない
おそらくあの缶詰は九辺さんが投げたものなのだろう
そりゃ扉の向こうから何かが迫ってきたら迎撃するよな、私だってそうする
あの缶詰はこれから聖なる缶詰と呼ぶことにしよう。
九辺さんはおもむろに缶詰を手に取り私に渡してきた。

「食べるか?」
「ありがとうございます」

おでん缶を手に入れた
だけれどさっきの件で食欲は消え去ってしまったのでポケットに入れておく
それにしてもこの部屋は自動販売機が大量にある部屋だ。
自動販売機を見つけたらすることといえば、そうだね小銭漁りだね
愛蛇には自販機の下あたりを漁ってもらう、私はお釣りが出るところを漁っておく
九辺さんはため息を吐きながら階段に座ってこちらを観察している
しばらくすると愛蛇が口に何か咥えて持ってきた。
それを受け取って見ると、どうやら薬莢のようだ。もしかしたら拳銃も落ちているかもしれない
九辺さんにそれを伝えるとなんでも『がん』という怪しげ缶詰が売っていたと話す。
もしそれが銃の方のgunならかなりの助けになる。
かなり探したががんの缶詰は見つからず手に入れたのは愛蛇が持ってきた
何も書かれていない小さなノートだった。
あれか、さっきいたミイラの人みたいな遺留品か?それとも山とかにある誰が登ったかノートみたいなのか?
「ロクでもない結果にあったのかもしれないな」
九辺さんはそういうと私がきた方じゃない扉をくぐっていった
私はあの久城だったかな、に伝えるためにノートに『この先に行ってます。by須賀 見舞』
と扉の前に置いておいた。
0366九辺 津夜子 ◆C1C0iyWcug
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2020/03/05(木) 22:11:16.44ID:wy+SJLjt
人に会えた事は素直に嬉しい
残念なのは目の前のこの子……須賀見舞さんが、ホテルからの脱出経路を知らなかった事
所詮ははおでん缶を通貨代わりにした交渉だから、彼女が話してくれた事が全て真実だとは限らないけど、それでも出入り口の有無で嘘を付く理由はないと思う
だって、それを知っているのならもっと私に食料品を要求する事が出来るのだから

「その……ガンは癌の可能性も有るから、危険だと思うわよ?」

ともかく、降って沸いた安息と他人が居るというこの安心感
異常な空間でささくれ立った精神を落ち着ける為に、私は暫くのあいだ、動画サイトで見た蛇使いよりも器用に蛇と交流する須賀さんを温いお茶を飲みながら眺めていたのだけれど、彼女の飼い蛇が持ってきたノートを見て我に返る
……そうだ。いつまでもこうしている訳にはいかない。
だって、このホテルの中にいる以上は、本当の安全なんて無いに等しいのだから
ノートの持ち主のようになりたくなければ、歩みを止める訳にはいかない

「須賀さん。私はそろそろ探索に出るけれど、貴女はどうするの?もちろん、付いてきてくれるのならその方が助かるのだけれど」

一応、彼女に声を掛けてから私は扉を潜り、今度は階段を下では無く上へと登る
緑色の非常灯で薄ぼんやりと照らされた非常階段は不気味な事このうえないけれど、それでも進まないといけない
そしてやけに長い階段を登り切ると、次のフロアへとつながる窓付きの扉が有った。警戒しつつもガラス窓から部屋の中を覗きこむと

「えっ、屋上………?」

まだ上に続く階段はあるというのに、窓の外に見える風景はどう見ても建物の屋上だった
困惑しつつもドアの取っ手を握りつつ、須賀さんへと振り向く

「本当に屋上に繋がってるのなら脱出の手掛かりになるかもしれないけど……貴女はどう思う?」
0367久城 隼人 ◆ZqEfuUDy4w
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2020/03/06(金) 06:55:48.22ID:cyC5uOVd
上に続く階段を登り始めて数十分。一向に上のフロアに辿り着く気配がない。
階段の折り返しはすべてが只の踊り場だ。出るドアが無いんだ。
一旦登るのを止め、階段のひとつに腰かける。
汗ばむシャツのボタンを外して体温を逃がしながら……ふと見ると踊り場の窓に黒い影が映ってる。
スリガラスだからはっきりとは見えないけど、間違いなく鳥だ。
窓枠に止まり、餌を探すカラスか、鳩か。
ってことは……エントランスから見えた荒野は単なる幻。
一歩出れば、そこは荒野じゃない。外に出られさえすれば助かるって事だ。

窓をコツンと叩いてみる。鳥はすぐに居なくなった。
強く叩いてみる。相当厚いガラス……だね、びくともしない。
このハードケースを投げつけて見ようかとも思ったけど……やめた。
一応カーボンファイバー素材ではあるけど、あれをぶち破るほど頑丈とは思えない。
楽器ごと台無しになってしまえば後々困るだろう。さっきはこれのお陰で助かったんだ。

「喉が……乾いたな」

思わず出た呟き。化け物よりも、そっちの方が問題かも。
このまま何処にも出られなかったその時は、餓死か、渇いて死ぬかだ。
人間は水無しでどれくらい生きられる……?
でも立ち止まって考えたって仕方がない。無駄でもいい、とにかく上に向かって歩こうと振り向いた。

「――――イタ(痛)ッ!!!」

突然の落石。
額を押さえて蹲る。床にゴロリと転がる缶詰の缶。
マグロの……刺身……? 誰かが上から投げつけた!?
そうか、今だ! 今登ればきっと――

予想通り、フロアに続く扉があった。迷わず開ける。プレートの表示は「6F」。
そこは廊下の無い、だだっ広い四角い空間。ずらりと並ぶ自販機の群。
人の気配は……無い。
ため息をつきながら、でもこの事態は最悪なんかじゃないと思い直す。水分補給のチャンスだと。

財布を覗けば万札が3枚だけ。小銭もない。
自販機はすべて……カードが使えないタイプ。いやいや、このホテルでそんな常識!

イチバチで「美味しい水」のボタンを押す。ごとッと音がして、見ればちゃんとボトルが出ている。
とたん、すべての機体が順繰りに光り出した。
何事かと見るうちに、その光がいまボタンを押した自販機で止まり――
何も起きない。
僕は水のペットボトルを取り出して、渇いた喉に流し込み……

「――アツ(熱)ッ!!!」

たまらずボトルを放り出す。
掴んだボトルはキンキンなのに、口に入れたそれは煮え立つお湯だったんだ。

しばらく苦痛にのたうち回り、四方を彷徨ううちに反対側に扉があるのに気付いた。
扉の足元に置かれた一冊のノートにも。

「あ!!」

感激のあまり叫んでしまう。開きっぱなしのそのノートには、こう書かれていたんだ。

『この先に行ってます。by須賀 見舞』

僕は扉を開けた。今度の今度こそ会える、そんな期待を込めて。
0368須賀 見舞 ◆J1Bja7ezw7s5
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2020/03/06(金) 18:38:29.09ID:deb6SjxG
…貴女はどう思う?」
外が屋上の可能性があるとのことだがもしそうなら脱出の可能性があるということ
脱出できるならそれに越したことはない。しかし、この異界がそう簡単に脱出させてくれるか?
いやここ以外に可能性のある所はない。
私は「少なくとも脱出できる可能性があるなら出る価値はある」
そういうと九辺さんは覚悟を決めたようで扉を開いた…
…外に出ることはできた、だが何か妙だ。高度はかなりある筈なのに風ひとつ吹かない。
どうやら九辺さんも違和感を感じていたようであたりを警戒している。
空は気持ち悪いほどに青々しい。
九辺さんはガラケーを取り出して、電話をかけようとしているが電波は全くないようだ
しばらく探索していると、手記を見つけた。乱雑な字でこう書いてある
『ずいぶん繰り返してきた。この手記を読んでいる人がいるのなら一つ頼みがある。
屋上にしばらくいたら、巨大な手が現れてその手に触れたら1階に飛ばされる。そのたびに
このホテル…くたばっちまった俺の仲間はビルだか廃墟だか言ってたがこの世界はクソッタレ
な環境になっていく段々と異形や怪異が現れるようになってきた。俺の仲間もそいつらに全員
やられた何回も繰り返してどうやら俺はおかしくなっちまったみたいだ。次目覚めるのが天国
だと信じて俺はここから飛び降りる。
…さて頼みだが…このホテルの4階に秘密があると仲間が口走っていた。
ただ俺らではそこに行く術は知らないし知りたくもない。俺が死んでその先が四階かもしれない
仲間は四階らしきところの壁から人の声が聞こえたらしいんだ。それが死んだ仲間に似ていたんだとよ
…四階に行って欲しいんだ…もしそこから出ていけるなら脱出してくれ…
私達のかわりに生きてくれ…』
急に扉が開く。中から久城 隼人が飛び出して来る。なかなかに汗だくな姿をしている。
私は九辺さんにこの久城隼人の説明をしつつ、この手記を見ながらこれからどうするかを
話し合う事にした。
0370創る名無しに見る名無し
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2020/07/24(金) 18:36:53.07ID:1jLUhCGN
夏の勢いで考えた実験室企画。
ロボット版ガルパンみたいなのがやりたくて……。

【ロボットスクール・ライフ!】
西暦2100年。
ロボット工学は隆盛を極め、人型機動兵器『テクターフレーム』を生み出した。
軍事兵器として開発されたこのロボットは瞬く間に一般社会にも浸透。
組み換え・改造容易なこの兵器は遂に学校にも姿を現した。

今や高等学校にロボット部があるのは珍しくない――。
パイロットを目指す者、ロボットが好きな者、部活動推薦が欲しい者。
理由は様々だが、とにかく彼らはロボットを愛し、ロボットに乗って戦う!
さぁ、青春をロボットで燃やせ!


ジャンル:SFロボットアクション
コンセプト:機動兵器青春群像劇
期間(目安):短い
GM:なし
決定リール:なし
○日ルール:一週間(宣言すれば延長も可)
版権・越境:なし
敵役参加:あり
避難所の有無:なし
0371創る名無しに見る名無し
垢版 |
2020/07/24(金) 18:38:08.95ID:1jLUhCGN
【キャラクターテンプレート】

名前:
年齢:
性別:
身長:
体重:
性格:
特技:
所持品:
容姿の特徴・風貌:
簡単なキャラ解説:


【ロボットテンプレート】

機体名:
機体タイプ:
装備:
機能:
解説:


【テンプレ記入例】

名前:空島碧(そらしまあおい)
年齢:15
性別:女
身長:160
体重:50
性格:元気満点かっとびガール
特技:天然
所属:清涼高校1年A組
所持品:操縦桿(本物)、学校の鞄
容姿の特徴・風貌:亜麻色の髪に碧眼。
簡単なキャラ解説:
ロボットが大好きな高校1年生!
胸に燃え上がるロボット魂を「かっとび」と形容する。
操縦技術は天才と下手の紙一重だが、天然でえらいことをする。
コールサインはソラリス(あまり呼んでくれないらしい)。


機体名:VTF-02(愛称:アマルフィ)
機体タイプ:可変式小型機体
全高:6メートル
装備:
・ガンキャリバー/銃剣つき突撃銃。
・サブマシンガン/予備の携行用短銃。
・マルチミサイルポッド/全20発の対地対空ミサイル。
・アサルトナイフ/二本内蔵。緊急用近接装備。
機能:航空形態への可変機構
解説:
型式はやや古いが、対地対空戦闘に優れた可変式機動兵器。
飛行機型に変形することで長距離高速移動を可能としており、
この形態は他の小型機体を乗せて運搬する能力も有している。
反面火力に乏しく、重装甲機や大型機に対して決定打を持たないという弱点を持つ。
パーソナルカラーは空色。
0372創る名無しに見る名無し
垢版 |
2020/07/24(金) 18:39:21.60ID:1jLUhCGN
2100年。ロボット工学が隆盛を極めた熱い時代。
一方で少子化による人口減少でゴーストタウンが増えた日本には、機動兵器の演習場が多く存在する。
東京にほど近いこの第七演習場もそうである。

演習場外周にある観客席のモニターに映るは、火花を散らすロボットたち。
快晴を切り裂いてVTF-02が空を舞い、その形を徐々に人型へと変えていく。
パイロットはスラスターを吹かして急降下。眼下のロボットにガンキャリバーの銃剣を突き立てる。
動力を貫かれた切り裂かれたロボットは機能を停止。脱出機構が働いて撃墜された。

「すごい!すごい!かっこいいーっ!私も動かしたい!」

「そうだね。高校生になってロボット部に入れば、碧も動かせるかも知れないな」

興奮しテンション爆上げの娘を宥めるように、父は頭を撫でた。
忘れもしない。両親に連れて行ってもらった12歳の思い出。
あの時胸に灯ったかっとぶような魂の衝動を忘れられない!
空島碧は、この時を今か今かと待っていた……。
高校に入学する、この時を!

「なのに、なんでロボットがないわけぇぇぇーーーーっっ!!!!??」

「いやぁ、ごめんなさい。全国大会で大鳳学園にボコボコにされちゃって。
 負けるだけなら良いんだけど保有機体がスクラップになるくらい完膚無きまでに負けちゃったの」

桜吹雪が舞い散る春に、碧は絶句した。
あの時のかっとびを胸に、頑張って勉強してロボット部の強豪、清涼高校に入学したというのに。
顧問の第一発声はその要たるロボット、肝要たる機動兵器、『テクターフレーム』がないと言うのだ。
清涼vs大鳳はテレビで中継されず結果だけが報道されたが、裏でそんな激戦があったとは!
つくづくチケットを買い損ねた自分が恨めしい。

「いや〜そういう訳で悪いんだけど、ロボット動かすのはしばらく我慢して。
 予算はあるから冬には最新機体が揃うかな。あとうちに残ってるのなんて――……」

「そんなに待てませんっ!!!!」

冷房の効いた部屋に碧の怒声がこだました。情熱が暴発した。
顧問は一瞬呆気に取られたが、何かを思いついたらしく、愉快な顔をした。
0373創る名無しに見る名無し
垢版 |
2020/07/24(金) 18:40:24.45ID:1jLUhCGN
清涼高校は某県の山奥に存在する学校で、ロボット部の練習場も近くに存在する。
山を降りればスクラップ屋もあり、まさにロボット・マニアに向けた仕様と言える。
山奥の練習場、森の外れに、苔むした鉄塊の上半身が埋まっていた。
空色をした鉄に繁茂する植物を顧問はさっさっと払う。

「先生、これって……!」

「たぶんVTF-02ね。私の代から結構管理が杜撰でさぁ……。
 昔の機体とかその辺に結構転がしちゃったままなのよね……。
 同じ型式の機体、まだどっかにあるんじゃないかな」

碧の瞳がぱっと輝いた。ロボットに乗れる!あの憧れのVTF-02に!
VTF-02といえば、稀代の天才パイロットと呼ばれた出雲あい選手の愛機なのだ!
学生時代に彼女が使っていたという操縦桿を、碧は宝物としていつも持ち歩いている。

「あの……!これってレストアするってことですよね!」

「うん、まぁ、そんな感じ。貴女も部員だから手伝ってもらうけどね〜」

「勿論ですっ!!あの、これって頑張れば頭数とか揃う感じですか!?」

顧問の青葉はえ、と変な声を出してしまった。
妙なことを言う生徒だ――。と思考で嫌な予感を拭った。

「えっと……どうする気かしら?」

「大鳳学園にリベンジしましょう!……練習試合で!!」

輝く青の瞳はどこまでも純粋で眩しかった。
アホなことを……。言い掛けたが頑張って黙った。いや言って良かった。
けれどその無謀とも言える愚直なまでの一途な心を妨害するほど、青葉は荒んでいなかった。

「えーっと……機体が揃えばね?機体が揃えば……あはは」

――この後、どんな機体を揃え、どのように戦ったか……。
それは清涼高校と大鳳学園のみぞ知る。
0375◆IiWdxl1r76
垢版 |
2020/10/19(月) 18:34:48.01ID:TTZPWC6Y
【レトロファンタジー番外編:紅炎の神殿】

サマリア王国。勇者発祥の地として知られるイース大陸の国。
その東西南北には、火水風土を司る四神を祀る神殿が存在している。
四神殿のひとつ、南の『紅炎の神殿』――……そこには未だ見ぬ伝説の装備が眠っている。

その噂を耳にした一人の少年が、深い森をかき分けて訪れたのはいつだったか。
蔦が絡みつき苔むした神殿の柱を手でなぞって、そこが伝説の神殿だと確信する。

ありふれた旅装姿に栗色の髪。青い双眸には強い意志を漲らせている。
彼の名はレイン。どこにでもいる冒険者の一人である。

「よっ……と」

崩落した階段を跳躍で飛び降りて着地。
まるで玉座へと続くような長い広間が伸びている。
その終点には老朽化していささか見るに堪えない罅割れた祭壇。

祭壇に刻まれた神代文字は円環を描いて配され、魔法陣であることを示している。
神代文字には疎いが、それが魔法陣であるならば魔力で動くのが道理。
学校では危険な仕掛けや罠の恐れもあるため、分からないものを無闇に動かすなと教えられたが……。

ここは無鉄砲で行くことを選んだ。
魔力を送ると、ごごん、と作動する音がして、地下へ続く階段が現れた。
予想的中。レインはよしよしと頷いて階段を降りていく。

地下はありていに言ってダンジョンになっているようだ。
石壁で作られた神代の迷宮。まだ地上に神々がいた時代に造られたもの。
なぜそんなものを造るのだろうか、とは愚にもつかぬ思考だ。
答えは大事な財宝を隠すためである。

バインダーに挟んだ無地の羊皮紙に地図を描きながら、着実に道を把握していく。
魔物らしい魔物はいない。神殿に魔物がいるとするなら、それは侵入者を追い払うためのもの。
0376◆IiWdxl1r76
垢版 |
2020/10/19(月) 18:36:02.46ID:TTZPWC6Y
迷路に一角に入った瞬間、一筋の光が閃いた。
反射的にスウェーで回避するも、空間に数本ぱらぱらと栗色の前髪が舞う。
ぎらり。灯りに照らされて薄闇で鈍く光るのは錆びれたはがねの剣だ。

「ひぇぇ……っ」

レインの頭の中で記憶のページがぱらぱらと捲れていく。
やや錆びた鎧、生気を感じない挙動、しかし周囲に瘴気はなし。
以上三点から洞察するに、リビングアーマーのようなアンデッドではない。

長きに渡りこの神殿を守護する騎士の魔物――。
侵入者を追い払うテンプルガーディアン。
死霊の怨念ではなく魔法で動く鎧だ。

羊皮紙を素早くしまうと腰から同じくはがねの剣を抜いた。
テンプルガーディアンが剣を大きく振り下ろす。
剣と剣が何度も鍔迫り合い、大きくかち合う。

「ふっ!」

攻撃と攻撃の間隙を見逃さず、刺突を繰り出す。
頭と胴を繋ぐ箇所に刺した剣をてこの原理で跳ね上げる。
テンプルガーディアンの"目"を司る兜が宙を舞う。

「今だっっ!」

渾身の力をこめて唐竹割り。
振り下ろされた必殺の一撃は動く鎧の肩口を裂いた。
からん……と錆びれた剣を落として、神殿の守護者は静止する。
危なかった。逆説的に、この先には大事なものが眠っているに違いない。

剣を鞘に収めると慎重に歩を進めていく。
道の左右には壁龕が設けられており、火がくべられている。
煌々と燃ゆる火は浄化を象徴し、神殿に祀られる炎神を意味する。
0377◆IiWdxl1r76
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2020/10/19(月) 18:37:45.12ID:TTZPWC6Y
近い。この先には自分が求めてやまないものがある。
伝説の魔法武器、紅炎の剣『スヴァローグ』……あらゆるものを燃やし尽くす炎の剣。
まだ神々が地上にいた時代、炎神を信仰する者達が奉納のため生み出したという一振り。
祭具として扱われていたそうだが、ひとたび剣を振るえば炎が舞い、あらゆる魔を浄化したとも。

レインはそれがどうしても欲しい。
自身の目的のため。友との約束を果たすため。

やがて大広間に辿り着くと、レインの額に汗が滲んだ。
中央には紅の剣が突き立っていて、防具が共に祀られている。
広間に感じるこの熱気は、祀られている紅の剣と防具によるものか。
伝説の剣を引き抜こうと近づくと、空間から声が響いてきた。

「……――汝、炎神フラマルスを信奉する者か。答えよ」

全てを見通すかのような厳かな声。
信心深い方でないのもきっとばれているのだろう。
けど臆していては武器を手に入れることなど出来はしない。

「我が名はレイン!魔王を倒すため力を集める者!
 この神殿に眠る紅炎の剣をどうか頂戴したい!」

正直すぎたか。
祀られている防具の隙間から紅炎が噴出し、人の形を成していく。
紅炎は民族衣装のような防具を身に纏って眼前に突き立つ大剣を引き抜いた。

「神殿に足を踏み入れし者よ、なれば『紅炎の剣士』に示してみよ!
 その身に宿りし勇気が、どれほどの強さであるかをッ!」

紅炎の剣士が『スヴァローグ』を構えると、刀身が灼熱を帯びた。
これはやばい。レインは咄嗟にはがねの剣を抜いたが、これではどうにもならない。
空間に向かってぶん、と灼熱の剣を振るえば、剣先から炎の刃が飛来した。

「……――避けるしか、ないっ!」

慌てて左斜め前方へ大跳躍。片手で受け身をとりつつ、紅炎の剣士に肉薄する。
袈裟斬りを浴びせようと剣を振り下ろすが、籠手を纏った腕で強引に振り払われた。
0378◆IiWdxl1r76
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2020/10/19(月) 18:39:00.05ID:TTZPWC6Y
大きく弾き飛ばされて壁面近くまで吹っ飛んだ。
じん、と手が痺れるのを感じる。なんて馬鹿力だ……。

籠手で振り払われただけで剣が刃毀れしている。
"炎の刃"と"籠手"。迂闊に近づくのが危険なのは誰でも分かる。

「此れは『豪腕の籠手』。真正面から挑むのは愚か者と心得よ」

噂にはない情報だ、とレインは思った。
ここにきて一層欲しくなってしまう自分は馬鹿なのか。
だが、こんな強い相手、何の旨味もないのに戦いたくはない。

「愚かでも……やるしかない時もあるっ!」

立ち上がると、刃毀れした剣が虚空に消えた。
次の瞬間、魔法陣が浮かび上がると、燐光を散らせて武器が出現する。
これはレインが唯一使える魔法。武器や道具を呼び出す召喚魔法だ。

重量感をもって石畳に落下した武器は、鉄球。ただの鉄球ではない。
鎖に繋がれた先に柄があり、レインはそれを握っている。
モーニングスター。高い破壊力をもつ打撃武器。

「こいつでどついてどついて……どつきまくる!」

鎖を掴んでぶん、と鉄球を振り回すや高速で投擲。
が、紅炎の剣士が首を少し横にずらすと、鉄の塊は後方に猛進した。
剣士は走るでもなく悠々と大剣を携えて近づいてくる。

「まだまだ!モーニングスター・リバースブレイク!」

鎖を横に引っ張ると鎖を伝って遠心力が働く。
レインの一回転と共に、鉄球もまた円軌道を描いて――……。
再度、横薙ぎの一閃として紅炎の剣士へと迫る。

「むうっ……!」

質量を秘めた鉄塊を防御すべく空いている掌で受け止めた。
流石は『豪腕の籠手』といったところだろうか。
並みの人間では腕を折る芸当を平気でやってのける。
0379◆IiWdxl1r76
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2020/10/19(月) 18:40:41.60ID:TTZPWC6Y
がっちり掴んだ鉄球を『紅炎の剣士』は離さない。
――意志を持った炎の化身は、瞳のない瞳で目を細めた。
眼前の対戦者から目を離したつもりはなかったのだが。

気づけばレインは二つ目のモーニングスターを召喚。
左手で鎖を手繰り、こちらへ鉄球を放っているではないか。

"鉄球を防御する時"は誰もが意識を本体から鉄球へ僅かにズラす。
その盲点を突いたミスディレクション。レインの巧妙な罠だった。

結果。第二の鉄球が紅炎の剣士のどてっぱらに命中。
怯んだ隙をついて二撃、三撃、四撃と連続で叩き込んでいく。
これで倒せねば勝機はないと踏んだレインは一気呵成に攻め立てる。

「舐……めるなぁぁぁぁぁぁっ!!」

怒号と共に全身から大量に炎が噴き出た。
その勢いで鉄球の勢いは殺され、弾き返されてしまう。
慌てて鉄球を召喚魔法で転送して消すと、鉄の盾を召喚。
噴き出た炎を盾で受け止めながら、レインは再度肉薄した。

「自害する気か!なれば介錯仕る!」

「いいや!俺は……あなたを倒して先へ進む!」

振り下ろされた『スヴァローグ』を鉄の盾で受け止め――られない。
触れた途端、雪のように溶解してしまうのだ。それでも構わない。
レインは再び盾を召喚した。溶解。召喚。溶解。召喚。溶解。召喚。

「俺には負けられない理由がある!どうしても……負ける訳にはいかない!」

鉄球で散々与えたダメージのようなものは確実に累積しているはず。
最後の一撃を食らわせる隙だけでいい。どうか俺よ耐えてくれ。
紅炎の剣『スヴァローグ』の炎がやがてレインを焼き始めた。

「約束したんだ!強くなって……必ず使命を果たすって!
 だから俺は!絶対に負けられないんだっ!!」
0380◆IiWdxl1r76
垢版 |
2020/10/19(月) 18:42:44.56ID:TTZPWC6Y
外套を焼き、防具を焼き、肌を焼く。それでもレインは止まらない。
『スヴァローグ』の刀身がレインの身体に達したと同時。
レインは紅炎の剣士のある箇所にはがねの剣の一太刀を命中させていた。

それはモーニングスターでも狙い続けていた箇所――。
防具と防具の結び目。炎の化身の肉体を繋ぐ結節点だ。

相手は防具を纏った炎だが、物理攻撃が意味を為さない炎がなぜ防具を纏う。
つまり、こうだ。炎は紅炎の剣士の意識。防具は肉体。剣は武器。

結び目が解けた今、紅炎の剣士はどうなるか。
肉体を維持できず、消滅するしかない!

「……見事なり……汝、紅炎の剣に相応しき心と力を持つ者。
 魔王を打倒するために新たな『紅炎の剣士』を名乗るがよい……」

「……ありがとう……死にそうだけどね……」

「……ふ。運命が汝をまだ殺さぬ。
 勇者よ、炎神の加護があらんことを……!」

ふっと炎が消え失せ、防具が周囲に散乱した。
残されたのは地面に突き立った紅炎の剣『スヴァローグ』と。
大火傷を負い、薬草を食んで傷を癒そうとするレインだけだった。

……――"召喚の勇者"の切り札に三つの魔法武器がある。
『紅炎の剣』『清冽の槍』『天空の聖弓』。
これはそれを手に入れるための短い冒険譚である。


【本編でできない話をやってみたかった……という感じです】
【ついでに本スレの宣伝も兼ねて出張ということで、失礼しました】
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