お父さんの帽子

パソコンのじゅぎょうで「お父さんやお母さんの名前をけんさくしよう!」ということをやった。
ぼくはお父さんの名前でけんさくした。お父さんか、お父さんと同じ名前の人の話がたくさん出てきた。
がぞうけんさくにしてみたら、いろいろながぞうが出てきた。写真が多かったけど、その中に一つまんがを見つけた。
そのまんがに出ている男の人は、お父さんが昔の写真でよくかぶっているのと同じ帽子をかぶっていた。
(これはきっと昔のお父さんだ!)
ぼくはふしぎな気分になってまんがの続きを読んだ。まんがのお父さんは女の人に出会い、仲良くなっていった。
(じゃあ、この女の人はお母さんかな?)
女の人は、帽子で顔のかくれたお父さんにむかって恥ずかしそうに言った。
「私、赤ちゃんができたの」
(ぼくが生まれてくるのかな…)
ぼくはドキドキしながらページをスクロールした。

お父さんが帽子の下からものすごい顔つきで睨みつけ、女の人のお腹を蹴り飛ばしていた。
「うわあああ!」
ぼくは飛び上がって床にたおれた。そのままほけんしつに連れて行かれたけど、まんがのことはだれにも何も言わなかった。
汗をたくさんかきながら思い出した。
女の人は、ぼくのお母さんじゃない。お父さんの昔の写真で一緒に映っていることもある、知らない人……。
家に帰ったぼくは、お父さんの古い帽子を探し出してカッターでズタズタに切りきざんで捨てた。

夜、ぼくのお兄さんだかお姉さんだか分からない人が、お父さんの帽子を頭に乗せて暗やみの中に消える夢を見た。

おわり