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帰ってきたミウたん
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0001創る名無しに見る名無し
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2014/08/05(火) 17:16:28.68ID:7NVGgOzH
『 帰ってきたミウたん 』



"十三… 十四… 十五… はい、確かに十五万円頂きました… それでは鍵は
お渡しします… "
不動産屋を出て商店街を抜ける 夏の日射しが照りつける丘の坂道
そこから見下ろす懐かしい風景 ほんの少し、大きくなった様な気がする
躑躅の木陰に、それは変わらぬ姿を佇ませていた
(……帰ってきた… 遂に帰って来ました… )
ミウたんの胸に熱い何かが込み上げる
『お帰りなさい… 』
確かにそんな声が聞こえた気がした
"ただいま! "
ミウたんの凛とした声が響いた…



"今どき高校位出なければ、まともな就職先なんて無いぞ… "
担任は親身になって何度もミウたんを諭した そもそもおつむの出来は
イマサン位な生徒ではあるが、出来の悪い子程なんとやら… な思いで
あったのだろう
幼い頃に母を亡くし、父の男手1つで育て上げられたミウたん
その父も、彼女が中学に上がる頃に突如失踪する 身寄りの無い、今のミウたんにとって、頼れる大人は保護者代わりの民生員のおばさんと、この担任位な物である
"先生、私、夢があるんです! その夢を叶える為に東京へ行くんです! "
卒業式の明くる日、ミウたんは見送りに来た、その親代わりとも言うべき
担任と民生員のおばさんに、何度も何度もお礼を述べ、東京行きの鈍行電車に
飛び乗った 住み慣れた街が遠くなって行く 雄大な日本海に沈む大きな太陽…
記憶の奥に虚ろな姿を残す母、大好きだった父… 2人との想い出の背景にも、
幾度となく現れたそれは、今も変わらず美しくも猛々しい姿を見せていた
結局、乗る電車を間違えていて、到着したのは夜の大阪… 途方に暮れ、
疲労と不安から独り、新大阪駅前で号泣し、警察に保護され、
担任が遥々車で四時間駆けて迎えに来てくれ、翌朝改めて旅立ちの仕切り直しに
なったのも、今となってはいい想い出だ そんなミウたんの、
東京での暮らしを支えた、ボロくとも愛おしい、一軒のあばら家…



『ギィィィィッ…… 』
元々、立て付けの悪かった玄関の板戸 今、改めて見て見れば、ただのベニヤ板を
打ち付けただけの様にも見えるそれは、
数ヶ月ぶりの使命の重責に耐えかねたかの様に悲鳴を上げた
埃… カビ… 湿気… 古い家屋独特のすえた匂い… ミウたんにとっては
母親の香りにも似た、懐かしき香りが鼻を突く
0002創る名無しに見る名無し
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2014/08/05(火) 17:19:46.37ID:7NVGgOzH
何もかも、あの日のままだ… 主を失ってから時の止まったあばら家
古い家屋にしては広いリビング 高い天井 奥にはキッチン 西欧風でモダンな造り
きっと建てられた頃は、衆目を集める立派な邸宅だったのだろう
そんな面影を残す個性的な外観と、自分のライフカラーであるピンク色の外壁に
一目惚れし、ミウたんはこのあばら家を住み家とした 無論、タダでは無い
月々、五万五千円… 田舎から出て来たばかりの小娘には、決して楽な出費では無かった
それでも、自分という名のサクセスストーリーの主人公には、お似合いな
舞台だと、初めて見た時からそう感じていたのだ
リビングを抜けた、短い廊下の先 明らかに後から付けられたと分かる、
そこだけ重厚なチークドア ミウたんは弾む鼓動を抑え切れずに、飛び付く様に
それを開ける
ミウたんの右手が躊躇無く探り当てたスイッチ 蛍光灯の明かりが、
数瞬の瞬きの後、そこを支配していた薄闇を払う
"……ただいま……… "
ミウたんは既に涙声 そこは母屋に隣接したガレージ それもアメリカ映画に
出て来る様な、それ自体が小さな家とも形容出来る、広大なスペースを有していた
「制作舞台(ステージ) 」
ミウたんはそのガレージをそう呼んでいた 煩雑に散らばる様々な物品
木箱にドラム缶、備え付けの棚には本人も経緯不明なガラクタが並ぶ
そんなカオスの中央に鎮座する、1台のクラシックカー……に似せた軽自動車
色褪せたピンクの奇抜なボディ 大きなドアの打痕を隠す為に、
自分で描いたディフォルメ自画像…
「ピンクミウたん号 」
中古ながら五万円という奇跡のリーズナブルで巡り会った、ミウたんの青春の相棒
いくら洗っても消えない手形と、いく取っても無くならない誰かの髪の毛、
時々ルームミラーに写り込む、髪の長い女性の姿がほんのちょっぴり気になるが、
ミウたんの東京ライフを語る上には欠かせない、正に人生のパートナーだった
短い階段を降りてガレージに降り立つ 悪い足場に気を付けながら、
数ヶ月ぶりに相棒の脇に立った
"ゴメンね、寂しかったでしょ…? "
ミウたんはうっすらと埃の積もったピンクミウたん号のボディを撫でる
その時、まるで再会の喜びを表したかの様に、ピンクミウたん号のヘッドライトが
静かに瞬いた事を、ミウたんは果たして気付いただろか?
0003創る名無しに見る名無し
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2014/08/05(火) 17:22:36.21ID:7NVGgOzH
ミウたんは相棒との再会に一頻り心を震わせた後、その更に奥、
麻布ので仕切られた一角に向かう 分厚い麻布をカーテンの様にワイヤーで
吊るしたそれを、ミウたんはゆっくり押し開いていく
畳一畳もある大きな作業テーブルと木棚 煩雑なガレージの中にあって、
そこだけは明らかに空気の違う、異様な雰囲気を醸し出す領域だった
初めてその光景を目にする者があれば、恐らくは恐怖に慄き、驚愕の叫びを
上げた事だろう その異様な雰囲気の正体、それは木棚に整然と陳列された
大量のこけしであった
"うぅ… ゴメンね… ゴメンね… "
ミウたんは鼻を啜る事すら忘れたかの様に、無様に鼻水を垂れ流しながら
そのこけし達に語り掛けた…



多分、自分は貧しい家の子だったと思う 多分と言うのは、比較すべき存在を
具体的にイメージする事が出来なかったからだ 物心が付いた頃から
今日この日まで、ミウたんの置かれた経済的環境が、良い方向に激変する事は
一度も無かった
ミウたんの父は、市井の様々なデータを駆使し、頭脳をフル回転させ、
主に馬のバイオリズムやモーターボードの機械的特性を把握、予測するとのいう、
極めて高度で特殊な研究業を生業としていた 家に居る時でも、新聞、ラジオを
手放さず、常に研究に没頭する父
そんな父はミウたんの誇りであり、自慢でもあった ただ、恐らくは父の収入は
世の平均を大きく下回っており、少なくともかなりのムラがあった
ミウたんの記憶の中でそれを初めて意識したのが、多分、小学校一年か二年の
遠足だった ミウたんがお正月にしか食べられない市販のお菓子
バスの中の級友達は、それをリュックの中から無造作に取り出し、
それが当たり前の様に回し食べをする お弁当しか持って来ていないミウたんは、
その輪に加わる事が出来ない そのお弁当も広げて見れば、級友達の正に
ご馳走としか例え様のない豪華なそれに比べ、ミウたんのそれは梅干しだけが
おかずの海苔弁当… カラフルなビニールシートの上で、楽しそうに豪華弁当を
頬張る級友達を尻目に、ミウたんは蓙を敷いて独り寂しく海苔弁当をパクついた
いつもは大好きな海苔弁当… その日は何故か何の味もしなかった
私もお菓子やご馳走が食べたい… 遠足から帰って父に訴えたミウたん
その日、生まれて初めて、記憶を無くすまで父にしばかれた
0004創る名無しに見る名無し
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2014/08/05(火) 17:25:49.37ID:7NVGgOzH
そんな級友達と自分との微妙な価値観の相違が負い目となった、と言えば
都合の良い言い訳になるだろうか? ミウたんは徐々にクラスから孤立していった
目と耳を塞ぎたかったのかもしれない 少しずつ大人になるにつれ
突き付けられる、認めたくはない現実…
それでも、ミウたんは父が大好きだった 大抵の日の父は、穏やかで、面白くて、
ミウたんの事を何より一番に考えてくれる素敵な存在だった
あれは父が失踪する直前、小学生最後のクリスマスの事だった
その日も、いつもと同じ様に夜9時には布団に入ったミウたん
クリスマス… それが如何なる物であるかはミウたんも知っていた
ただ、厳格な「東方の光」教徒であるという、ミウたんの家には関係の無い
イベントであった そう教えられてきたし、自分自身もそう信じたかった
浮かれた町並み… 幸せそうな家族… サンタを夢見る子供達…
何も考えない様にする… まだ幼き日のミウたんが編み出した、
余りにも悲しい自己防衛の手段…
日付が変わる頃、玄関の引き戸がガラガラ音を立てた 父は今日も民間研究施設で
閉店まで残業だ 父の奏でる鼻唄に、安堵のため息を漏らすミウたん
どうやら機嫌は良いようだ
(!? )
だが、父の足音は何時もと違い、ミウたんの部屋の前にやって来る
ゆっくりと開く襖 ミウたんは取り敢えず寝たふりで様子を伺う
"メリ〜クリスマス〜… "
押し殺した低い声が枕元に聞こえる 厳格な東方の光教徒の筈のお父さんが何を…?
困惑するミウたんをそのままに、父は静かに部屋を出て行った
(こ、こ、こ、これは……! )
顔を上げたミウたんは、驚きに心臓が止まりそうになる感覚を味わう
ミウたんの視界に飛び込んで来た物… それは高さ1尺もある真っ赤な
こけしだった 胸元に白抜きで大きなMの字をあしらった、和洋折衷な佇まいが
ミウたんの目に、とてつもなくお洒落に映った
"これって… もしかして…!! "
興奮と感動に震える指先をこけしに向ける 徐々に目が闇に慣れると、
そのこけしの気品溢れる尊顔がはっきりとしてくる 丸顔で優しい笑顔…
何故だろう? ミウたんはその顔に心当たりがあった
思い出せない、だけど絶対に忘れる事の出来ない誰かの顔がそこに重なった
益々、このこけしが気に入ったミウたん
"……お父さん、ありがとう…… "
自分には無縁だと思っていたクリスマス そして、生まれて初めての
クリスマスプレゼント 本当の本当は、サンタさんが来る事を、ずっと祈っていた
その夜の出来事は、色んな意味でミウたんの心に深く刻まれる事となった
0005創る名無しに見る名無し
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2014/08/05(火) 17:28:55.00ID:7NVGgOzH
翌年の4月 ミウたんの中学校の入学式の日、父は突如失踪した
どれだけの涙を流しただろう… 靴底がすり減り、穴が穿つまで、ミウたんは
父の姿を探しさ迷った 悲しみはやがて怒りとなり、最後は絶望と自責になった
ミウたんの心と肉体が、形を保つ事を拒み始めた
白熱電球の下、ちゃぶ台の前に正座するミウたん 右手に握った果物ナイフを
左の手首に近付ける 生気の無い、虚ろな瞳… もしそこに、あのこけしの姿が
飛び込んで来なければ、ミウたんの意識は永遠の白濁の中に沈んだ事だろう
"えっ!? "
ミウたんは驚きの余り、手にした果物ナイフを畳の上に落とす
こけしは泣いていた… そんなバカな…! ミウたんは目を擦り、改めて視線を送る
"……………… "
泣いていたのは自分だった 自分の涙が錯覚を見せただけだった
"!! "
だが、そこでミウたんははっきりとそのこけしの顔が、微笑み掛けてくるのを
目撃した 少なくともそう見えた
"……お母さん!! "
ミウたんは思い出した そのこけしの顔の中の面影を…
カーテンの隙間から覗く、大きな満月がこけしを包み込む 白銀の衣を纏ったかの
様なその姿は、正に天界から舞い降りた母の姿に見えた
ミウたんの心の中に、熱い潮が込み上げてきた 私は何を血迷っていたのだろう
私は独りじゃない! 母から…父から授かったこの命、無駄にする訳にはいかない!
母は天国から見守ってくれている 私は生きる 生きてみせる!
立ち上がったミウたんはこけしを手に取り、静かに抱き締める
天国の母、行方知れずの父、そしてこの私… その全てを、このこけしが
繋いでくれている様な気がした
その時から、ミウたんには1つの大きな夢ができた
こけし職人… 母の姿を… 私の想いを… こけしに刻み込み、この世に送り出したい
そして、この空の下にいる筈の父の元に届けたい…
ミウたんはもう、いつものミウたんだった その瞳には無限に広がる世界だけが
映っていた
0006創る名無しに見る名無し
垢版 |
2014/08/05(火) 17:32:40.88ID:7NVGgOzH
制作舞台(ステージ )…… それは、ミウたんの切なる想いを具現化する
魂の闘技場… こけし職人、ジャパニーズクラシカルオブジェアーティストとしての、
夢の始発駅…
ミウたんは木棚の最上段、それだけが明らかに特別扱いされた一体を手に取る
「花笠ぼんぼり側位付け〜富士の段〜 」
まだ始まったばかりの、ミウたんのこけし職人としてのキャリア
その短いキャリアの中でも最高の傑作を上げろ、と言われれば、やはりこのこけしに
なるであろう 現時点でのミウたんの代表作
山形の花笠祭りの踊り娘が、東海道から富士山を見上げているという、
難解なモチーフに果敢に挑んだ力作 すみれ色のボディに赤い花笠がよく映える
こけしアーティスト界のラジカルマガジン、「月刊こけし世界」主催の
「こけし界期待のニューエイジ賞」に於いて、見事、佳作に食い込んだ自慢の一品だ
自分では、大賞作との力量差は全く感じなかった 自分にはこけし界の天下を
取れる天賦の才がある筈なのだ
ミウたんは花笠側位付けを作業テーブルに置くと、傍らに投げ出したままだった
ミズキの木塊を手に取る
そして、同じくテーブルの上に放り投げたままだった彫刻刀を握り、
木塊に押し当てる ミズキの表層を滑る刃先が、まるで生き物の様に木切れを
産み落としていく 良し、イケる…
数ヶ月のブランクを経ても、ミウたんのこけし表現者としての腕には
些かの曇りもなかった また再び、この場所でこけしに打ち込める喜び…
ミウたんの脳裏に、この数ヶ月に味わった辛酸な日々が過る

若くてそこそこ可愛い… それだけの条件があれば、マイナーファストフード店
でバイト職を得る事位は可能である 中卒のミウたんも一応は人の子
小生意気にも乙女の端くれにはカテゴライズされる彼女は、
そこで時給850円の職を得た
廃棄される予定の残飯で、たまに迎える味気のないディナーを我慢出来れば、
この世知辛い都会での1人暮らしを何とか人並みにこなしていく事が出来た
だからその職を失った時、ミウたんの人生設計は大きく狂う事となった
都会に来ての初めての挫折だった 再就職の壁にぶち当たった時、
初めて自分が幸運のレールに乗れていた事に気付く
そのレールを外れてから谷底に転落する迄は、あっという間だった
0007創る名無しに見る名無し
垢版 |
2014/08/05(火) 17:36:51.33ID:7NVGgOzH
滞る家賃と光熱費、飢えと渇きはミウたんを極限に追い込む
止むに止まれず、初めて手を出した消費者金融… 震える手で受け取った十万円…
支払いを済まして、3日振りの食事を取った 直ぐに返そう… でも、返せる当てもない…
心がやさぐれ始めていたのかも知れない 余った三万円を手に、その日また初めて
パチンコ屋に入った 見様見真似で座ったパチンコ台 閉店を迎える頃、
ミウたんの三万円は十万円に化けていた
神様ありがとう… ミウたんは背中に神の息吹きを感じた
だが、それは悪魔の吐息だった 一ヶ月を過ぎる頃、ミウたんの負債は貸出し限度額に
達する 闇金の存在をパチンコ屋の顔見知りから知ったミウたんに、
もう心のブレーキは無かった
一発逆転を狙い、FXに手を出す ハイレバで大敗し、更なるハイレバに挑む
毒々しいピンクの外壁、ミウたんハウスの暗い一室、嗚咽と怨嗟の呻きをあげながら
キーボードを叩く彼女の姿が其処にあった…
何もかも失ったミウたんは、街外れを流れる川の畔をとぼとぼと歩く
死に場所を探していた 実際、何度も冷たい川の流れに身を任せた
でも死に切れない 夜空を埋め尽くす星空の様に、ついこの間まで自分を輝かせて
いた夢達… あの日、こけし越しに母に誓った約束… 伝え切れない父への想い…
それらがミウたんの短い後ろ髪を引くのだった
数週間後、河川敷に住まう女ホームレスの噂が街に流れる
土手に空いた洞穴 新しいミウたんハウス 犯罪以外なら、否、凶悪犯罪以外なら
何でもやった 幾多の死線を掻い潜り、垢と日焼けですっかり肌の黒ずんだミウたん
涙を捨て、少しだけ逞しくなった彼女が、そこで出会った自由人達に
支えられ人生を取り戻すのは、それから暫く経ってからだった



"ただいま…… "
ミウたんはもう一度、彼女の帰りをずっと待っていてくれた仲間達に
帰宅の挨拶をする 盛夏の日差しに照らされたスレート葺きのガレージ
その空気は既に噎せ返る程の熱気を帯びていた
ミウたんの尖った顎から汗の滴が垂れる だが、彼女はそれを拭わない
ミウたんには分からないのだ 自分の身体を火照らせる熱源の由来が…
今、ミウたんの心の中で、確かに真っ赤な炎が立ち昇っていた
一度は消えかかった、情熱の炎… 血をたぎらせる、灼熱の炎…
新進こけしアーティスト、須内ミウ 通称ミウたん
東京での四度目の夏を迎えようとしていた
0008創る名無しに見る名無し
垢版 |
2014/08/20(水) 19:43:12.98ID:ylSKupmt
『ミウたんの日常 』



"ふぁぁぁ………っ? "
大きな欠伸をして上半身の筋肉を解すミウたん 辺りの様子に違和感を感じ、一瞬固まった
(そうだ、帰ってきたんだった… )
ついネームバリューで購入した、決して上等とは言えないIKEAのマットレス
3年分のミウたんの汗と、数ヶ月分の埃にまみれても尚、やはりそれは
河原の洞穴に惹いた蓙の寝心地とは隔世の感がある
ベッドで寝れる幸せ そんな当たり前の様な喜びを改めて噛み締めるミウたん
勢いを着けてそこから跳ね起き、朝日に照らされるカーテンを開く
(今日も暑くなりそう〜 )
既に窓の外は夏の目映い輝きに満たされていた
"ふぅ〜…… "
そんな光の世界に背を向けて寝室を見回すミウたんはため息をついた
昨日は蓄積した疲労に喜び疲れも重なって、宵の口にベッドに飛び込んだ
今、改めて室内を見回せば、辺りは足の踏み場も無い程に物が散らかっている
元々片付けられないタイプではあったが、数ヶ月の主の留守はその乱雑な
空間を更に混沌の魔境に変えていた
(こりゃ、一旦大掃除だな… )
人生再起を賭けるミウたんは心機一転、今までの惰性な自分に別れを告げる
意味も込めて、上京以来初となる大掃除を決意した

『ブロロロロ… 』
流石に数ヶ月も放置していれば、バッテリーは上がったか…
そんなミウたんの予想に反して、ピンクミウたん号は軽快なエンジン音を響かせる
機械的にはあり得ぬ話だが、メカに疎いミウたんは特に疑問も感じない
昨日、汗を垂らして登り詰めた長い坂道を、ピンクミウたん号は風を切って
下って行く 久しぶりの相棒とのドライブ 目指すは郊外型多店舗商業タウン
「触れ合いショッピングセンター」
こけしアート界のファッションリーダーを自負するミウたんのお気に入りブランド、
「しまむら」がある其処は彼女の青春のアメニティスポットでもある
だが、今日の目的はお洒落アイテムを物色する為では無い
触れ合いショッピングセンターに無い物は核兵器と生鮮食料品と言わしめる程、
地元住民の信頼を集める其処には、ホームセンターのリーディングカンパニー、
「カインズホーム」も存在する ミウたんは溜まりに溜まった埃を除去するのに
最適なアルティメットウェポン「クイックルワイパー」を入手すべく、
そのショッピングセンターの合同駐車場にピンクミウたん号を滑り込ませた
0009創る名無しに見る名無し
垢版 |
2014/08/20(水) 19:46:36.99ID:ylSKupmt
噎せ返る様な駐車場の熱気から逃れる様に、ミウたんはカインズホームの
自動ドアに飛び込む
"ふぅ〜〜〜 "
経済的事情からお家でエアコンを使えないミウたんにとって、商業施設は
夏のオアシスである オアシスに来ればハイテンションになるのは人の常
"72へんちの〜 たらららららら〜 "
ご機嫌に鼻唄を奏でながら、聞いた事も無い様なマイナーメーカーの、
安さしか取り柄のない消費材の陳列棚の間をステップで駆けて行く
"おんにゃの子だもん〜 あ〜いむ すにゃいぱ〜〜いっ!!? "
そんなミウたんの鼻唄と足取りがピタリと止まったのは、
キッチンタオルコーナーを抜け、センター通りに差し掛かった時であった
"あいつだ…! あいつが居た! "
見る者によっては天使に見えなくもない、ミウたんの一応端正な目尻と
口角が一瞬にして吊りあがる…
陰陽の世界観では、この世の万物は全て対となっているという
光と影、雄と雌、天と地、雪と炎… それは決して相容れず、常に対極に有り、
それでいて相手の存在が己の輪郭を浮き彫りとする…
そんな陰陽の価値観を人間関係に当てはめれば、正に今、ミウたんの目の前で
お掃除グッズを漁る1つの影、白いワンピースにロングヘアーを靡かせる
この女こそ、ミウたんにとっての不倶戴天の存在 水と油、犬と猿、ハブとマングース…
如何なる言葉でも形容し難い、憎悪と恐怖の対象なのだ
川原の葦原での数ヶ月にも及ぶ隠遁生活… その存在を忘れていた、とは言わないが、
油断していたのは紛れも無い事実だ
喉の乾きを覚えてミウたんは唾を飲み込む ここで引き返す事など断じて出来ない
この女に負ける事など、絶対に許され無いのだ ただ、少しだけ心の準備が欲しいのだ
"!! "
だが、宿命はそんな柔な人間の心の内など考慮はしない
目当てのお掃除グッズの物色を終えた宿敵は、徐に立ち上がり踵を返す
そこでミウたんと目が合った 僅かに見開く女の瞳 ゴングの音が確かに聞こえた
"あ〜た〜し〜の〜! "
"放しなさいよ〜! "
今日もバトルのイニシアチブはミウたんが取る 女の手に握られた
クイックルワイパーを強奪すべく、絶妙なボディバランスでショルダーを相手の
体軸に捩じ込んでいく やはりこの技も、数ヶ月のブランク程度では曇らない
0010創る名無しに見る名無し
垢版 |
2014/08/20(水) 19:50:03.40ID:ylSKupmt
ツーバックスイーパー… ミウたんの基本的なランジェリーローテーションである
二枚のパンティを交互に先発させ、いつか来るであろう勝負の瞬間に
スーパーサブの取って置きでパワープレーに出る… ミウたんの構想は
完璧であったが、何より激しいレギュラーシーズン、選手の現役は想定より短い
その都度、勝負役であるスイーパーをツーバックに昇格させる苦肉の策を講じてきた
チームの財政事情により元より薄い選手層 そんな苦しい台所事情に光明が差す瞬間が、
3ヶ月に1度、季節の変わり目に訪れる「しまむら」のバーゲンセールなのだ
限られた予算で選手の補強 この女に出会ったのは、そんなトライアウト会場と化した
パンティ売り場の一角だった 若さ溢れる能動性と、未来を感じさせる前鋭的デザイン
そんな将来性ある1枚の選手に着目し、スカウトの手を差し出したミウたん
その手の先、否、正解に言えば、肩に掛けた筈の手を振り解どき、その選手を
強奪したのがこの女だったのだ 1度や2度のニアミスや協定違反なら、
ミウたんとて事を荒立てたりはしない だがその日から、ミウたんとこの女の
因縁は浅からぬ物へとなっていく…
ある時は大物炬燵布団のポスティングを巡り、またある時は新色レッグウォーマー
のワゴンドラフトの会場で…
運命に導かれる様に二人は廻り合い、そして火花を散らした
しまむらで、日高屋で、ケーズデンキで、イオンモールで… ミウたんの行く所、この女在り
アミヤ… そう1度だけ、しまむらのレジでこの女の名を聞いた事がある
ミウたんよりちょっぴり背が高く、ちょっぴり鼻筋が透き通り、
そして全く比べ物にならないデカイ胸を持つ女、アミヤ…
麗らかな昼下がりのカインズホームのセンター通り、今再びその宿敵と相見え、
傍迷惑で子供じみたキャットファイトのボルテージは上昇していく
"あ〜だ〜じ〜のぉぉぉ〜〜〜…… "
"は〜な〜ぜぇぇぇっ〜〜〜…… "
堆く積まれたクイックルワイパーの前で、その一本を奪い合う二匹の雌猫
既にそれは原型を留めぬ程崩壊し、その機能は永遠に失われた
だがそんな事は問題ではない これはプライドの問題なのだ
あくまで二人にとってはであるが…
0011創る名無しに見る名無し
垢版 |
2014/08/20(水) 19:54:01.27ID:ylSKupmt
"……親御さんは? 御家族は? "
""……………… ""
"答えられないなら、警察を呼ぶしかないね… "
"ちょ、ちょっと待って下さい! "
"べ、弁償すればいいんでしょ!? "
慌ただしく従業員が往来する倉庫の片隅、ベーシックな折り畳みテーブルと
パイプ椅子が数脚並ぶだけのその一角でライバルが互いの肩を並べる
"……あのね、店の売り物滅茶苦茶にして置いて、弁償するから良いだろってね……
ふざけんじゃねーぞ!! "
""ヒッ!? ""
とうとう堪忍袋の緒が切れた店長が怒鳴り声と共にテーブルを叩く
その余りの剣幕につい先刻までの骨肉を忘れ、思わず互いの手をとる
ミウたんとアミヤ
尤も、店長の怒りは当然である あれから二人は何の罪も無いクイックルワイパー
を20本も破壊し、たまたまお使いに来た幼い姉妹を恐怖のどん底に叩き落とし
号泣させ、とうとう店員に取り押さえられここまで連れて来られたのだ
お店の裏方に連れて来られ説教を賜るなど、中1の秋にダンシングフラワーを
くすね損ねたハローマック以来の出来事
自分では随分大人になったと感じていたミウたんは、流石にこの軽率な行動を恥じ、
反省する他無かった

"……それじゃ、今回だけは警察沙汰にはしないけど、今後うちには出入り禁止ね… "
夏の太陽が西の山嶺に漸くその姿を隠す頃、こってりと絞られたミウたん達は
なんとか釈放と相成った 暑さの幾らか柔いだ駐車場、何度も店長に頭を下げる
二人の長い影がそこに伸びる 貴重なリーズナブル日用雑貨の狩場からの閉め出し
ミウたんの人生の再スタートは思わぬ所から躓いてしまった
それもこれも、全てこの女… ミウたんは落とした肩を並べて隣を歩く禍の元凶、
アミヤに視線を向けた
"…………生意気ね…… "
"!? "
ミウたんの視線を感じたのか、アミヤは歩先に顔を向けたまま呟いた
"……大きくなってから挑戦しなさいよ! "
それがコンプレックスであるお乳のサイズを指している事を理解し、
ミウたんは思わず声を荒らげる
"何よ! 大きいのがそんなに偉いの!? そんなんじゃ、隙間も通れないじゃない! "
"何それ? 悔しいの!? "
"そっちこそ! "
歯軋りをして睨み合うミウたんとアミヤ 広がりきった鼻腔から荒い鼻息が漏れる
二人の放つ熱気が冷めかけた夏の大気を再び震わせていく…

"お母さん、あのお姉ちゃん達、ブタになってるよ? あれ、なんて妖怪かなぁ?
ジバニャンより強いかなぁ? "
"こら、健太 失礼な事言うんじゃありません 危ないからこっちにいらっしゃい "
そんな二人の姿を輝く瞳で見詰める少年が無邪気な声をあげた
慌てた母親に手を引かれ、駐車場の向こうに消えていく
その道すがら、何度も何度もミウたん達に手を振る少年
果たして少年の瞳に、二人の姿はどの様に写ったのか…
"…………ブタ…… "
"…………妖怪…… "
ボソリと呟く二人を、眠りから覚めたばかりの駐車場の水銀灯が優しく照らした
0012創る名無しに見る名無し
垢版 |
2014/09/16(火) 18:45:54.91ID:8adVYjVm
『ミウたんのホントにあった怖い話 』



昨年、奮発して購入したピカチュウのかき氷機は今年も大活躍
練乳浸る淡雪の様なそれを頬張りながら、つくづく良い買い物をしたと悦に入るミウたん
コレさえあれば茹だる様な夏の暑さの中に、一時の癒しパラダイスを
無限コンテニューで生み出す事が出来る
この時期、ミウたん家の冷蔵庫の冷凍室は製氷皿で埋め尽くされている
水道代に電気代、練乳やシロップ代を考慮しても、アイスを買うより
遥かに経済的だ 更にお盆の頃には墓場に大量の餡子が放置されており、
それらを獲得、冷凍保存すれば味のアクセントにも事欠かない
ピカチュウのかき氷機は、清貧生活を強いられ、エアコンすら使えない
ミウたんにとって正に夏の救世主である

『グウゥゥ〜〜…… 』
ミウたんするの腹の虫が、力無い鳴き声をあげる
ミウたんは昨夏からの経験で1つ学んだ事がある
「かき氷は腹の足しにならない 」
ミウたんの基本的生活サイクルに於いて、食事は朝と夜の2回だけである
3食などブルジョアのやる事である 一応は食べ盛りの隅に名を連ねる彼女にとって、
それは決して生半可な縛りではない イスラム教徒でさえ苦行とするそれを、
東方の光教徒のミウたんは1年を通して行っているのだ
無論、宗教的事情では無いが…
そんなミウたんが空腹を紛らわす為に、空の器を再びピカチュウの足元に供える
『ジャコジャコジャコ… 』
頭に生えたハンドルを回すと、ピカチュウの股の間から白い塊が零れ落ちる
皿の底に残った練乳にスプーンでまぶして口に運ぶ 微かな甘味と冷たい刺激を残して、
たちどころにそれは元の水道水に姿を変える
一服の清涼感、だがこれでは腹は満たされないのだ
『グウゥゥウゥ…… 』
皮肉にもこの連日のかき氷が、粗食に慣れていたミウたんの胃を覚醒させていた
(夜御飯までまだ時間はあるし… 仕方ない、久しぶりにあれをやるか… )
余りの空腹に耐えきれず、遂に何かを決意したミウたんは、勢い良く立ち上がると
その姿をガレージへと消すのだった
0013創る名無しに見る名無し
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2014/09/16(火) 18:48:51.74ID:8adVYjVm
昼下がりの公園、焼け付く様な日射しの中、そのオブジェは姿を表す
"なんだろうあれ〜!? "
"面白そ〜! "
三々五々、昼休憩を終えた子供達が、彼らの午後の業をこなす為に公園の門を潜る
そして唐突に姿を現したそれに驚きの声をあげる
公園のシンボル、山桜の木陰にある水飲み場から、ここの一番の人気プレイス、
ジャングルジムの立体の中を突っ切り、柵代わりの躑躅の垣根まで伸びるそれ
近づいて見れば、それが水飲み場の蛇口から溢れる水を流れとして生み出す、
竹の樋である事に気付く だが、子供達の注目を集めたのは、その竹樋の向こうに
等間隔で居並ぶ7体の地蔵…… に良く似た大きなこけし達であった
1体が幼児の背丈程あるそれは、一様に赤いよだれ掛けを巻き、
その下には木鉢が備え着けられていた
"お地蔵さん…かなぁ? "
"何してるんだろ? "
"ちょっとコワ〜い… "
軽い興奮を含ませながら子供達はこけしと竹樋からなるオブジェの前に集まる
"どうしたの、みんな? "
滑り台の陰で頃合いを見計らっていたミウたんは、満を持してその背後に立つ
"あのね〜 変な物があるの〜 "
"午前中は無かったのに〜 "
人は老若男女問わず、相手が若い女というだけで警戒心を失う
子供ならば言わずもがな よもや、このオブジェの制作者が目の前のお姉さん
とは想像だに出来ない子供達は、自分達のテリトリーに起こったサプライズを
少し自慢気に説明する 大人であるお姉さんなら、この不思議に対する答えを
知っていると思ったのかもしれない
"うわぁ〜〜 こ、これは〜〜! "
そんな子供達の純粋な瞳を受けながらミウたんはあからさまな
オーバーリアクションをとる
"みんな〜 これは笠こけしだよ〜! "
""笠こけし〜? ""
"みんな、笠地蔵のお話は知ってる? "
まるでNHKの児童向け番組を見ているかの様な猿芝居 そのプロデューサー兼、
主演のミウたんの問い掛けに、子供は何処までも純真に反応する
"知ってる〜 絵本持ってる "
"笠のお礼にお地蔵さんがご馳走や宝物をくれるの〜 "
"そうだね〜 みんな偉いぞ〜 "
ミウたんもその気になって、NHKのお姉さん口調になっていく
"このこけしさん達は、お腹が空き過ぎてみんなの前に現れたんだよ〜! "
""え〜〜!? ""
そんなこけしなど居るか… 幸いにもそこにはそんな突っ込みを入れる者は
居なかった
0014創る名無しに見る名無し
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2014/09/16(火) 18:52:25.87ID:8adVYjVm
"みんな、こけしさん達の前にあるこれが何だか分かる? "
ミウたんはこけし達の前を通る竹樋を指差す
"ん〜〜〜? "
"私知ってる〜 流し素麺〜 "
"その通り、どうやらこけしさん達は流し素麺が食べたいみたいね〜 "
公園の脇の道を行く乗用車のドライバーが、不思議そうな視線をミウたん達に
向けて行った
"きっとお素麺を流せばこけしさん達がお礼してくれるよ "
"僕んち、お昼、素麺だった まだ余ってるかも… "
"じゃあ、僕もお母さんに聞いて来る〜 "
完璧に想定通り… ミウたんは思わずほくそ笑む
"じゃあ、みんな気をつけてね 私は流し素麺の準備をしてるから! "
その声に背中を押される様に、子供達は散り散りに公園を後にして行く
これぞミウたんのこけしアーティストとしてのスキルが編み出した
食費のマル秘節約術、『こけし地蔵』なのだ
ある時、たまたま玄関先に置いていた廃棄予定の失敗作の前に、何者かが備えた草団子
初めは誰かのイタズラかとも思ったが、その新鮮こね立て作り上げ立ての草団子は、
明らかにその日こけしに捧げる為にこさえられた物である事は明白であった
いったい誰が… 得体の知れない犯人と目的を探る為、明くる日も玄関先に
放置したこけしを引き戸の奥から観察する するとどうだ、程無くして1人の
老婆がとぼとぼと現れ、こけしの前にかしずく そしてこけしの前で手を合わせると
懐からみたらし団子を取り出し、こけしの前に供えたのだ
そこでミウたんは漸く状況が飲み込める 地蔵だ… 地蔵に勘違いされてるのだ…
確かに武骨で荒削りな一品とは言え、自身のこけしアートを理解されないのは
釈然としない物があった だが、結果的に貴重な甘物を手に入れられた事も
また事実だった それがその時だけの出来事ならば、己の表現力の無さを恥じ入る
だけのほろ苦い思い出になる筈だった
だが、それからしばらくして、絵の具を乾燥させる為に庭に干していた
こけしが失踪する事件がおこる ミウたん久々の自信作であり、窃盗を確信し
警察沙汰に発展する大騒ぎとなった だが、こけしは直ぐに発見される
ミウたんのあばら家から少し離れた空き地の隅、真新しい小さな祠の中に
それは鎮座していた 赤いよだれ掛けと赤い帽子… 何者かが打ち捨てられた
地蔵と勘違いして、祠まで築いて…
0015創る名無しに見る名無し
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2014/09/16(火) 18:56:17.49ID:8adVYjVm
『もう地蔵でよくね…? そこまで言うなら地蔵アーティストでよくね…!? 』
ミウたんのこけしアーティストとしての薄いプライドは粉々に砕け散った
自嘲と自虐を込めた皮肉を心の中で何度も反復した
そこまで地蔵に見えるなら、とことん利用してやろう…
秘術『こけし地蔵』誕生の瞬間でもあった

"お姉〜〜ちゃん!"
"よいしょ… よいしょ… "
子供達が続々と公園に戻って来る ボウルやお鍋を小さな手に抱きミウたんの
元にやって来る
"お姉ちゃん、お素麺、お地蔵様にあげて "
"お汁も持ってきたよ〜 "
"みんな偉いわね! じゃあ、お地蔵に流し素麺をご馳走しようか! "
1人1人の持参した量は大した事はないが、今、それらを金盥に1つにまとめれば、
そこはたちまち無数の白蛇が蠢く混沌のと魔沼と化す
それをかき混ぜるミウたんは恰も、今から一世一代の大魔術を披露せんとする
深森の古魔女にも見えた
"それじゃ 行くわよ〜 お地蔵様〜 召し上がれ〜 "
杖代わりの菜箸を振るうと、命を吹き込まれたかの様に素麺の束が宙を踊る
そして自らの意思であるかの如く、竹樋を下る流れの中に華麗にダイブした
水飲み場をスタート地点に、計算され尽くした緩やかな勾配をたおやかに
滑って行くお素麺 見る者全てに一服の清涼をもたらしながら、
次々とこけし地蔵の前を通り過ぎて行く 軽い緊張感を孕んだの沈黙と
十数の視線を浴びながら、それはそのまま垣根の向こうに消えて行った

"みんな、本当にありがとう お地蔵様も喜んでいたよ〜 "
""やった〜! ""
"ねぇ、お地蔵様達はこれからどうするの〜? "
"大丈夫、私がお地蔵達のお家まで送り届けるから!みんなももう遅いから
早くお家にお帰り! きっとそのうち良い事があるよ! "
"は〜〜い "
"またね〜 お姉〜ちゃん "
用済みの子供達を体よくあしらうミウたん その姿が道の向こうに消えるのを
確認すると、勢い良く躑躅の垣根に飛び込んだ
"ヒャッハ〜〜〜!! 大漁! 大勝利! "
竹樋の終点の先、バケツに据え付けられた笊の中にこんもりと積み上がる
素麺の山 それを目にしたミウたんの顔がだらしなく綻ぶ
0016創る名無しに見る名無し
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2014/09/16(火) 18:59:24.08ID:8adVYjVm
久方ぶりに鱈腹、炭水化物にむしゃぶりつけそうだ
早速、ポケットから取り出したスーパーのビニール袋に笊ごと素麺をぶち込みむと、
溢れる涎を拭いながら、全力疾走でミウたんハウスへの帰路に着くのだった

時は来た、ただそれだけだ… とばかりに、半年ぶりの揚げ物、屑野菜のかき揚げを作り、
その夜のディナーはミウたん的には贅を尽くした物だった
"ムニャ… ムニャ… もう食べられない… "
漫画の様な寝言を呟きながら、凡そ年頃がの娘とは思えぬ、はしたない寝姿を
IKEAベッドの上で晒すミウたん
『トン… トン… トン… 』
そんなミウたんが玄関先から聞こえる異音に気付く事は無かった…

『こけし様… こけし様…余った麺で良かったら…
どうぞ… むしゃぶり… くりゃしゃんせ… 少しは… 飢えも… 凌げましょう… 』

その夜、ミウたんのあばら家の前で踊る7つの小さな影…

"ふぁ〜〜 良く寝た〜〜 "
久方ぶりの満腹は上質な眠りをもミウたんにプレゼントした
大きく伸びをし、カーテンを開け、朝とは些か言い難い力強い日射しを浴びるミウたん
"ん〜〜〜 んん… んっ!? "
太陽の光に馴染ませながら、ゆっくりと開けたその瞳に異様な光景が飛び込んで来た
"な、なんじゃありゃ!? "
弾かれた様に寝室を飛び出し、一目散に玄関へと向かう
寝癖の妖怪アンテナが向かい風に靡く
『バタンッ! 』
勢い良く、そのベニア板に限り無く近い薄いドアを開ける
"ひべっ!? "
と同時に凄まじい悪臭がミウたんの鼻腔を刺激した
"げぇげぇ…? 何なのこれぇ…! "
鼻を押さえながら、既に涙目のミウたんは絞り出す様に声をあげた
魚の頭… 野菜の皮… 卵の殻に何かのミンチ… それは堆く積まれた生ゴミの山だった
全体を覆う得体の知れない液体が、陽の光に鈍く輝く それが更に黒い靄に包まれている
"だ… 誰がこんな事を… "
呆然と立ち尽くすミウたんの脇を、生ゴミを覆う謎の靄がすり抜けた
『ブゥゥゥ… 』
"ひゃぁっ!? "
微かな羽音と風圧でその正体に気付く
"わぁぁぁっ! ダメ〜! 入っちゃダメ〜!! "
0017創る名無しに見る名無し
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2014/09/16(火) 19:01:31.62ID:8adVYjVm
黒い靄に見えた物… それはハエの大群であった まるで生ゴミより旨そうな物を
見つけたと言わんばかりに、ミウたんハウスの中を蹂躙して行く
慌てその後を追うミウたん その開け放たれた玄関から、別動隊が進入を開始する
地を這う、黒光りの一団が…

一体、誰が何の為にこんな嫌がらせを…
その答えが出ぬまま、その嫌がらせはそれからも続いた
どれだけ目を凝らして犯人を待ち続けても、その姿を捉える事は出来なかった
そしていつの間にか、庭の片隅に鎮座する大量の生ゴミ…
ミウたんハウスのピンクの外壁が、蠢く謎の黒に染め上げられる頃、
漸くその嫌がらせは終わったという…



ミウたんが体験した、世にも恐ろしい出来事である…
0018創る名無しに見る名無し
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2014/10/23(木) 17:13:23.72ID:69UhaDSa
『ミウたんは肉抜きハンバーグの夢を見るか? 』



コーナーポストの最上階から高く舞い上がるルチャドーラ
照明に照らされ輝く汗の飛沫が、彼女の体を神々しく包み込む
"ぐわぁぁぁっ!! "
必殺のプランチャ ルチャドーラとしてはかなり小柄な体躯のハンディを
逆手に取った、高空からの肉弾爆撃 そのまま押さえ込んだ対戦相手には、
最早逃れる体力は無かった
『ワン… ツー… スリー! 』
決して多いとは言えない観客だが、この瞬間ばかりはその歓声が空気を大きく震わす
"ハァ… ハァ… ハァ… "
大きく肩で息をするルチャドーラの左手をレフェリーが掲げる
リングを照らすスポットライトの中、激闘の故か、魂が抜けた様にただ拍手を
受ける彼女の姿かそこにあった

選手控え室である体育館の用具室 切れかかった蛍光灯が瞬く中、
ルチャドーラは後頭部に手を回し、ゆっくりとその頭部を覆う真っ赤なマスクを
外していく 長い髪が滝の様に溢れる
"ハァァ… フゥ… "
大きく深呼吸して未だ落ち着かぬ息を整え様とする彼女
ペットボトルの蓋を開け中の水を飲み込む彼女の顔は、まだ少女と言うべき
幼さが残り、そして病的なまでに青ざめていた
"ゲホッ、ゲボッ… ブハッ!? "
気管に誤飲したか激しく咳き込む少女 口を押さえた掌を外した時、
彼女は目を見開いた 掌にべっとりとまとわり付く鮮血
(……お願い、神様…… まだ… まだ…… )
少女はその手を握ると、用具室の小窓から覗く明星に祈りを捧げた



"ただいま〜! "
"お帰りなさ〜い! "
"ママ先生、お帰りなさい!"
玄関に現れた少女の姿を認めて飛び出して来る、更に幼い少女達
少女の両手にぶら下がる買い物袋を受け取り、楽しそうに奥に駆けて行く
"ご苦労様… "
1人その場に残った長い黒髪の少女が彼女の労をねぎらう
彼女だけは、その「苦労」の意味を知っているのだ
"ザクロもご苦労様… 何か変わった事はあった? "
靴を脱ぎながら折り返し労いの言葉を掛ける
"ううん… ただ、お米屋さんが… そろそろ先々月のお代が欲しいって… "
ザクロと呼ばれた少女が僅かに顔を曇らせながら答えた
"そう… すっかり… 忘れてたわ… ふふっ… "
努めて平静を装うその姿に、ザクロの胸は一層強く締め付けらるのだった
0019創る名無しに見る名無し
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2014/10/23(木) 17:15:08.20ID:69UhaDSa
"ザクロ〜 ママ先生は大丈夫なんですか〜? "
戦場の様な慌ただし夕食を終え、栗色の髪の少女が不安の払拭を求めて尋ねる
何時もはその戦場のど真ん中に鎮座し、恰もベテラン兵士の小銃捌きの如く
配膳、配給を巧みにこなすママ先生… その不在が与える場の損失感は、
華奢な彼女の体躯の何倍もの大きさで夕食の食卓に影を落としていた
"大丈夫よ! ちょっと疲れているだけみたい あたしが様子を見て来るから!
その場に居合わす者の全ての視線を感じとったザクロが、
今度は努めて明るく答えを返す ママ先生…と呼ばれる彼女の分の夕食を
トレイに乗せると、何とも言えない空気の立ち込める食堂を後にした

"イチゴ、入るわよ… "
暗い廊下の突き当たり、襖の奥がママ先生、イチゴの私室である
この家で私室を持つ者は彼女だけ 身寄りのない子供達が肩を寄せ合い生活する
元養護施設「人形館」
元、と言うのは、大分前にこの施設の責任者達が失踪した為である
今現在、驚くべき事にこの施設は、本来養護されるべき児童達の手によって
運営されているのである 年端もいかぬ少女ばかり9人、その中で最年長
であるイチゴ、1月5日に施設の玄関前に置き去りにされていた事にちなんで
そう命名された彼女が、ママ先生としてみんなを纏め、施設を切り盛りしていたのだ
(……? )
返事が無い事に胸騒ぎを感じた、石榴柄の毛布にくるまれ捨てられていた彼女が、
慌てて襖を開く
"!!? イチゴ!! "
其処には畳の上で踞るイチゴの姿があった 咄嗟にその傍らにすがり付くザクロ
"いやっ! しっかり! だ、誰か…! "
"だ、大丈夫… よ… 少し休めば… みんなを… 心配させないで… "
助けを呼ぼうとしたザクロの左手をイチゴが引く もたげられた彼女の顔は
蒼白だったが、心配をかけまいと必死に笑顔を向けてくる 血の気の無い唇が
微かに震えている
"お願い…… ねっ… "
"………… "
ザクロは何も言えなかった イチゴの想いが彼女には痛い程理解出来た
誰もが口には出せぬ不安や悲しみを抱いて生きる、人形館の少女達の
ママであり先生 頼る事の出来る最大にして無二の存在…
もしザクロがその立場なら、きっと同じ想いを抱いたであろう
0020創る名無しに見る名無し
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2014/10/23(木) 18:42:49.81ID:69UhaDSa
ザクロはイチゴの意を汲んだ 常々イチゴの右腕として人形館の切り盛りに
貢献してきた彼女だからこそ理解出来る、頼られる者の悲壮な決意…
ザクロは返事を返す代わりに、未だ畳の上から起きられぬイチゴの上半身を
優しく抱き締めた
"イチゴ… お願いだから、もう無理はしないで… お金は… 私も働いて…! "
彼女の白磁の様な頬を一滴の涙が流れた
今度はイチゴの左手が、そんなザクロの頭を優しく撫でた
"ふふ… お金の事なんて心配しなくていいのよ… ザクロには、みんなを… ねっ "
幾分、血の気の戻ったイチゴの微笑みがザクロを向けられる
お母さんって、きっとこんな優しい笑顔をくれるのかな…
涙に歪むその笑顔を、まだ見ぬ母の姿に被せるザクロだった



"赤コ〜ナ〜、102パウンド〜 フレサ・ムニェカ〜! "
疎らな観客の疎らな拍手の中、トップロープを潜ったルチャドーラが右腕を
高々と突き上げる 頭頂部に緑のモールでワンポイントをあしらった深紅のマスクカクテルビームが、そんなドーラの華奢なボディラインをリングの上に
浮かび上がらせる
"続きまして青コ〜ナ〜、225パウンド〜 セルド・ブルハ〜! "
獣の様な叫び声を上げて巨漢のルチャドーラがリングによじ登る
漆黒のマスク、猪ともゴリラとも形容出来るその姿は正に野獣…
向かい合う二人のドーラ 一瞬の沈黙…
『カ〜〜〜ン!! 』

その日の… 否、その日も赤ドーラは明らかに精彩を欠いていた
幾度となく絶望的体格差を覆してきた得意の空中殺法
だが、その日も跳躍は高度を得られず、動きは見えない糸に絡み付かれた様に鈍い
"ウォォォォッ!! "
"クッ!? "
何とか既での所で黒ドーラの攻撃をかわしてきた赤ドーラだったが、
遂にその細い腰をそれより太い腕に捕捉される 軽々と持ち上げられる赤ドーラ
『ドッスンッ! 』
"ウゥッ………!! "
そのまま勢いよく叩き突けられる 詰まる息、回る視界…
巨大な圧力がのし掛かって来る 遠くなる意識の先で聞き慣れたカウントと
ゴングの音が聞こえ、そして静寂に包まれた
0021創る名無しに見る名無し
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2014/10/25(土) 06:21:37.66ID:kPg1oUZU
夕暮れの街をイチゴはさ迷う 身体の節々が痛む 右足が上手く上がらない
何時の間にか、大分風に冷たさを感じる様になった 冬はもう直ぐそこだ…
イチゴは踵を返し、もう一度商店街の人混みの中に紛れる
お肉屋さんの熱々コロッケ… お魚屋さんの軒先には丸々と太った秋刀魚が並ぶ…
人参、じゃがいも、ブロッコリー… シチューにしたら美味しそう…
人形館のみんなの笑顔が浮かぶ コロッケを頬張る食いしん坊なあの娘…
苦手な人参をこっそり隣の皿に移す、おしゃまなあの娘… 食後のデザートに
みんなが大好きなクッキーを…
大粒の涙がイチゴの頬を伝う 嗚咽を必死に堪える 泣かない 泣きたくはない
泣かないと誓った筈だ そしてみんなを笑顔にすると誓った筈だ なのに…!
首に掛けたがま口を右手で握る 帰れない… 帰れないよ…
みんながお腹を空かせて待っているのに…
イチゴがルチャ団体から契約解除を申し渡されたのは三時間前
元々がアマチュアに毛が生えた程度のマイナー団体 慰労金などあり得ない
ファイトマネー、勝利給だけが全て それは初めから分かっていた
所詮、その程度の団体 そしてその程度のルチャドーラ…
好きなルチャでお金が貰えるのなら… 大抵のドーラはそれで満足だろう
だが、イチゴは違った 彼女には「家族」があった 彼女がルチャを始めたのは
「家族」を養う為だ 学校にもまともに通えず、身元保証人も居ない彼女が
まとまったお金を得る手段は、犯罪を除けばルチャしか無かった
勿論、ルチャなど経験も知識も無かった 岩にかじり付く…
正にイチゴの根性と執念が、華奢でどちらかと言えばおっとりとした性格の少女を、
一人前のルチャドーラ、「フレサ・ムニェカ」へと変えたのだ
"エフォッ! ベホッ! ゴホホッ…!? "
突然込み上げてくる何か 異様な咳を繰り返すイチゴは何かを感じ慌て路地裏に駆け込む
"ブォォォォッ……!? "
滝の様な吐血 足元が鮮血に染まる 身体の中が熱い だけどとても寒い
怖い… 怖いよ… やだよ…! 死ぬのは怖いよ!
"神様… どうして… どうして私に… 私達に… "



何時の間にか通りの喧騒が消えた 何時だろうか…? みんな心配してるかな…?
ううん… ご飯も用意出来ない私なんか… みんな怒っているよね…
"ゴメンね… "
コンクリートの壁に寄りかかり、虚ろな瞳のイチゴが、血糊にまみれた唇で
ポツリと呟いた
0022創る名無しに見る名無し
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2014/10/25(土) 06:23:12.89ID:kPg1oUZU
"まだ、スリーカウントは取られてないわよ…! "
"!? "
どこかで聞き覚えのある声 明らかに自分に向けられたその声の方にイチゴは顔を向ける
"!! "
生気を失い掛けた瞳が僅かに輝きを取り戻した
"……師……匠……!? "
その視線の先、路地裏の更に奥、何処からか溢れる街明かりにぼんやりと
輪郭を露にする一つの影…
"随分苦戦している見たいね… "
子供をからかうかの様な口調 ゆっくりとイチゴの前に立つ
ピンクのマスクのルチャドーラ 間違いない、師匠だ!
あの日、ルチャの余りに高い壁の前に立ち塞がれ、今日と同じ様に公園で
涙と絶望にくれていたイチゴ その前に今と同じ様に突如現れ、
彼女にルチャの基本と真髄を叩き込み、一人前のルチャドーラにしてくれた
人生の恩人 マスクマン… もとい、マスクウーマンとしての定め、
何処の誰かは分からないが、この人が居なければルチャドーラとしての自分など
当然存在はしていない
"師… 匠ぉ…… "
イチゴの目から先程とは成分の異なる涙が流れる
それを彼女の前に屈んだピンクマスクが、頬を撫でる様に両手で掬う
"うぅ…… 師匠… 私、死んじゃうの… 骨癌だって… もう助からないって… "
今まで誰にも、ザクロにさえ打ち明けられなかった秘密を師匠を前に吐露する
イチゴにとって只一人、甘えられる存在が目の前の彼女なのだ
"死にたくないよ… 私が死んだら… みんなは… みんなと……! "
イチゴの心の中でずっと張り詰めていた物が、音を立てて崩れていく
誰にも見せる事の無かった、臆病で内気で寂しがりやな本当の自分が現れてくる
"うぁぁぁぁん…… どうして… 私は… 私はなんの為に生まれてきたの…… "
涙の堰が切れ、滂沱の如く地面を濡らす きっと彼女は抱き締めて欲しかったに違いない
だが、彼女の期待は真っ向から裏切られる
『パシィィィッ!! 』
強烈なスパンク 乾いた衝撃音が路地裏に響く
"見損なったわ… どうやら私の見当違いだった様ね… "
"……? "
あの特訓の最中も見せた事は無い、師匠の冷酷で怒気に満ちた態度
ヒリヒリする頬を押さえながら、呆気に取られた様にその姿を見上げるイチゴ
0023創る名無しに見る名無し
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2014/10/25(土) 06:25:26.83ID:kPg1oUZU
"もう少し骨のある娘だと思ってた… 「家族」の為なら、どんな苦難も乗り越え
られる根性のある娘だと…! "
"乗り越えられるよ! どんな事だって! でも……! でも! 病気には勝てない…! "
「家族」への想いを侮辱された気がしたイチゴが、今度は語気を荒たげる
"イチゴ… ルチャの命は何だったかしら… "
そんなイチゴに背を向け、ピンクマスクは呟いた
"……ルチャの…… 命……? "
イチゴの視線が、傍らに落ちたショルダーバッグに向けられる
"………… "
操られる様にそのバッグに手を伸ばす ルチャの命、と問われれば、
答えは一つしかない バッグの中身をまさぐる手が止まる ゆっくりと
引き抜かれたその先には、真紅のフレサマスク… ルチャの命、それはマスクだ
マスクを身に付ける時、人はドール、又はドーラとなり、エストレージャになる
マスクには精霊が宿り、人を神と引き合わせる かつて古代マヤ文明に於て
マスクは、王族や神官が身に付けるスピリチュアルアイテムであった
人が誰しも心の奥底に持つ変身願望 それを具現化する鍵こそがマスクなのだ
イチゴ自身、このマスクを身に付けた時はママ先生である自分を忘れた
「家族」の為に敵にプランチャを叩き込む 敵を傷つけ、痛めつけ、
その姿が苦痛に悶えれば好機とばかりにアドレナリンが噴出される
正に闘神 そこには誰にも優しく面倒見の良いママ先生、イチゴの姿は無い
"イチゴ… 人としての貴女の命はもう長くはないのかも知れない…
でもね… それは誰にも訪れる宿命… 只、遅いか早いかの違いだけ… "
苺を型どった己のマスクをじっと眺めていたイチゴが顔をあげる
"でもね… ルチャの命は永遠よ 例えその舞台の演者が入れ替わろうとも、
ルチャが伝えるテーマやメッセージは変わらない… それを見る者の心に
永遠に響き続けるわ… "
"…………永… 遠…… "
イチゴこは胸元のマスクを強く握り絞めていた
"イチゴ… 貴女は何の為にドーラになったの? "
"…………? "
イチゴは再び視線を師の元に向ける 質問の意味が分からなかった
イチゴが「家族」を養う為にルチャのマスクを被った事は、何より師匠が
一番良く知っている筈…
"……それは… "
"イチゴ… 貴女は「家族」への愛を形にしたかったんじゃないの! "
イチゴのたどたどしい返答を遮ってピンクマスクは一喝する
"!! "
0024創る名無しに見る名無し
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2014/10/27(月) 11:35:57.35ID:mW6QE0bL
体重の乗ったティヘラを食らったかの様な衝撃 イチゴの脳裏に電撃が走る
"イチゴ… 初めて会った時、貴女は言ったわよね… 「家族」の為なら命を
捧げられるって… 貴女は「家族」の為に死ねるんじゃ無かったの? "
"捨てられる! 嘘じゃない! 今でもその気持ちは変わらない! "
再び愚弄するかの様な問に咄嗟に反論する
"じゃあ、最後に見せてやりなさいよ! ルチャドーライチゴとしての
貴女の生き様! いつか別れは来るのよ… 残さなければならないのは、
お金なんかじゃない筈よ…! "
"!! ……… でも…! でもどうすれば…!? 私、もうルチャドーラじゃ…… "
感窮まり悲鳴に近い叫びを上げるイチゴ そんな彼女の前にピンクマスクは再び
屈み込み、その両肩に優しく手を置いた
"貴女の花道、この私がキチンと飾らしてあげるわ… "





"あっ! ママ先生が帰って来たですぅ! "
"遅かったのじゃ〜! 心配したのじゃ〜! "
"ママ先生、お帰りなさい… "
"イチゴ〜! 遅過ぎ〜! "
玄関から聞こえる解錠音に一斉に立ち上がる少女達
明るい筈の食堂で、明かりが消えた様に沈黙し、余りに遅いその帰りを
只々待ちわびていた彼女達 電気ショックでも受けたかの様に、
飛び跳ねながら玄関へと向かう
"今夜は僕の考案、ヘルシー肉抜きハンバーグですよ〜 "
"味はイマイチアルね〜! "
"あ〜 盗み食いはズルい〜! "
彼女達も当然、意識はしていた ママ先生が自分達の為に身を粉にしている事を…
空腹を我慢するなど、苦でも無かった ママ先生はきっともっとお腹が空いている
筈なのだ ママ先生にお腹一杯ご飯を食べて貰い、元気になって欲しい
今夜の夕食には、高くて手の出なかったお肉に代わり、そんな彼女達の愛情が
たっぷり込められていた
『ガラガラガラ… 』
玄関に押し寄せた少女達の前で玄関の引き戸が開かれる
大好きなママ先生の表情がどうか今日も明るくあります様に…
彼女達の祈りを込めた視線が、その向こうに注がれる
"ひっ!!? "
"えっ!? "
"!?………どちら様…… なのじゃ……? "
0025創る名無しに見る名無し
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2014/10/27(月) 11:39:22.67ID:mW6QE0bL
だが、その向こうから現れたのは待望のママ先生ではなかった
ピンクの覆面にピンクのレオタードの女… 凡そ常人とは思えぬその出で立ち…
表情は見えずともママ先生の体躯ではない 第一、ママ先生がそんな格好をする筈が無い
"貴女は誰!? 何の用!? どうして鍵を持っているの!? "
本能的に誰よりも早く危険を察知したザクロが、反射的に皆の前に立ち両腕を広げる
イチゴの居ない間は私が… そんな想いが彼女の感性を研ぎ澄ましていたのだろう
そんなザクロのリアクションを見て、漸く少女達にも恐慌が起こり出す
"だ、誰アルね!? 家の鍵… どこで手に入れたアル!? "
"怪しですぅ! 変態さんですぅ!? "
"ま、ま、ま、まさか…! ママ先生に何か…!? "
肉抜きハンバーグを考案したという褐色の肌の少女の叫びは、
その場に居会わす少女達の脳裏に浮かんだ不安を代弁する物だった
"イチゴは何処!? イチゴに何をしたぁぁぁっ!? "
不安と不信が頂点に達したザクロがピンクマスクに掴み掛かる
その手首を握り、ゆっくり押し返すピンクマスクの口元が不敵に歪んだ



『ガチャン!! 』
""キャャャャャャアッ!! ""
ガラスの割れる音と少女達の悲鳴 今、ザクロの身体が宙を舞い、
居間の茶箪笥に激突した 砕けるガラス片と共に人形の様に崩れるザクロ
"ぼ、僕が食い止めますよ! その内にみんなっあ…!? "
最後まで言い終わらぬうちに褐色の肌の少女も宙を舞う
『ドスンッ! 』
絨毯の上に背中から墜落する 余りの激痛に悲鳴も上げられず悶える
無慈悲な暴力の嵐 その中心に居るのがピンクマスクである
見かけとは裏腹の怪力であっという間に二人を屠る 人形館でも身体の大きい二人が、
簡単に投げ飛ばされるのを目の当たりにした他の少女達はいよいよ恐慌に支配されていく
一体、何が始まったのか? 突如現れた怪しきマスク女 言われの無い暴力
頼れるママ先生が不在の時に陥った人形館始まって以来の窮地
これまで飢えや不安に苛む事はあっても、直接身の危険を感じる事は無かった
0026創る名無しに見る名無し
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2014/10/27(月) 11:41:18.93ID:mW6QE0bL
この世に神という者があるのなら、何故かくも過酷な運命を私達に課すのか…?
「家族」の中で最も物静かなその少女は、己の運命を呪わずには居られ無かった
"こいアル! 中国拳法をお見舞いするアル! "
その少女の傍らの中華娘が大袈裟なリアクションでピンクマスクに立ち向かう
"ショコラもやっちゃう! "
普段から食べる事以外、殆ど興味を示さない彼女も勇ましく中華娘の後に続く
物静かな少女、ヨーコは当然分かっている 中華娘… パイが中国拳法など知らない事を…
食いしん坊のショコラが誰よりも運動音痴で鈍い事を…
それでも彼女達は立ち向かう 勝ち目など無い事は分かっているのに…
そしてその理由が、自分の為に少しでも時間を稼がんとしてである事を、
賢明な彼女は瞬時に理解する 今、自分達がしなければならない事
それは彼女の後ろで哀れに震える、年少組の3人を無事に逃がす事
パイとショコラはヨーコにその任を託したのだ その悲壮な想いが、
臆病な彼女の身体を突き動かした
"みんなこっち! "
自分でも驚く程の声量 間違いなく、生まれて初めての絶叫
普段物静かな彼女の叫びが、恐怖にすくむ幼女達の身体の呪縛を解いた
台所の勝手口へ向かう4人の足音
"ぎぁぁぁぁっ! "
"痛いっ! "
背後から衝撃音と共にパイとショコラの悲鳴が聞こえて来た
ヨーコは張り裂けそうになる胸を押さえる 間を置かず、大股な足音が迫って来る
"振り向いちゃだめ! そこから逃げて! 何処かのお家にっ…!? "
ヨーコのワンピースの襟首が押さえられた そのまま身体が宙に浮く
"くっ!!? "
ワンピースの襟がヨーコの首を絞めあげる 息が詰まる 声が出ない
(私、死ぬんだ… ママ先生… ヨーコは… 私達は頑張りました… )
"うわ〜〜ん! もうやめるです〜! "
"ヨーコを放すのじゃ! "
"もう許さない…! "
(あぁ… 駄目! 逃げて! お願い! )
ヨーコの危機を察した幼女達が戻ってくる その扉を出る事が、「姉達」との
今生の別れになる事を、彼女達なりに察したのかも知れない
次の瞬間、薄れ行く意識のヨーコは待ちわびたその声を確かに聞いた
"そこまでよ!! "
ヨーコを吊るすマスク女の力が少しだけ抜けた
0027創る名無しに見る名無し
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2014/10/30(木) 18:53:18.36ID:2BsfUa1r
霞む視線の先に1つの影… もう1人のマスク女… 赤いマスクの…
"ママ… 先生…!! "
素顔は隠されていたがヨーコには分かった 否、幼女達にも分かっていた
その華奢な輪郭、透き通る声 そして何より、その身体から溢れる慈愛のオーラ
まごうことなき私達の母、導きの師、ママ先生イチゴである
"てゃぁぁぁぁっ!! "
狭い廊下を前転したイチゴが、その勢いのままピンクマスクに体当たる
得意のプランチャ 数多のルチャドーラをマットに沈めてきた十八番
"フンッ! "
それを横転でかわすピンクマスク ヨーコは漸く絞首刑から解放された
"ママ… 先生… ですか〜…? "
"凄いのじゃ! ママ先生、レスラーなのじゃ! "
"ママ先生… 意外… "
幼女達が赤マスクの元に詰め寄る
"ヨーコ、大丈夫? "
"ママ先生………! "
ヨーコの両眼から大粒の涙が溢れる
"もう… 遅いわよ… イチゴ… "
襖の影からザクロが這い出て来る
"肉抜き… バーグ… 冷めちゃたよ… "
そこに被さる様に褐色の肌の少女、アマ子も顔を出す
"痛めつけておいたアル… 止めは… 譲るアル… "
鼻血を垂れ流しながらパイがヨロヨロと姿を見せる
"もう… お腹… 空いた… "
頬を腫らしたショコラが芋虫の様に廊下を這って来る
"みんな、ごめんなさい! でも、もう大丈夫よ! "
赤マスクのイチゴ、ルチャフレサは再びピンクマスク、ルチャロサードと向き合う
"何者か知らないけど、良く聞きなさい! この人形館に住む私達は、
どんな困難や障害にも決して屈しはしない! 何故なら、私達は誰もがみんな
「家族」を想い、「家族」の為に自分を犠牲に出来る、勇気と愛を持って
いるのだから! "
イチゴの凛とした声が人形館と、その住人である少女達の胸に響く
各々の胸中に熱い何かが込み上げてくる
"私達が力を合わせれば、どんな試練だって乗り越えて見せる! "
イチゴは己の後頭部に手を回す そして紐を解き、サフレマスクをゆっくりと外した
長い髪が滝の様に流れる ここからはルチャサフレではない
人形館のママ先生、イチゴなのだ
"行くわよ! 必殺、ドールズハウスプランチャ!! "
掛け声と共に駆け出すルチャフレサ、否、人形館のママ先生イチゴ
何時も笑顔を絶やさず、何人も差別せず、慈しみの心でずっと「家族」を包んできた彼女
今、その愛すべき「家族」の視線と想いを背に受けて、軽やかに宙空に舞い踊る
0028創る名無しに見る名無し
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2014/10/30(木) 18:55:13.80ID:2BsfUa1r
"うわぁぁぁぁぁぁっ!! "
『ガチャン!! 』
その身体は最早、病にも重力にも縛られていなかった 真紅の肉弾は天井を掠め、
ルチャロサードの肉体にのめり込む あれ程屈強だったピンクマスクが
まるでゴム人形の様に弾け飛び、ガラス戸を突き破って夜の闇に消えて行った
""やったぁぁぁっ!! ""
「家族」の歓声が人形館に木霊する
"ママ先生、凄いです〜! 格好いいです〜! "
"いつの間にそんな拳法、習得したアル!? "
"イチゴ〜、まるで本当にプロレスラーみた〜い! "
ザクロだけは分かっていたイチゴの裏稼業 みんなに心配させまいと
2人だけの秘密にしてきたが、まさかこんな形でカミングアウトする事になろうとは…
"イチゴ…… "
何時もの様に彼女を労おうと、その実際よりずっと大きく見える背中に
声を掛けた これで終わりにしよう… これからは私も働いてみんなを…
イチゴを少しでも楽にさせよう そんな想いを心に誓い、
何時もの優しいその笑顔が振り返るのを待った
"………!? イチ… ゴ……? "
だからその彼女の身体が僅かに揺れた事に誰よりも早く気付いた
棒が倒れる様… まさにイチゴはそんな風に、雑貨の散らばる絨毯の上に
仰向けに倒れた 音がしたかも知れない
"キャァァァァッ!!"
"イ、イチゴ!! "
"ママ先生〜!! "
ほんの一瞬の間を置いて、先程とは性質異なる絶叫が響いた
稲妻の様な速度で、少女達はイチゴの周りに集結する
"……嫌っ……! イチゴ… イチゴ!! "
誰よりも早く彼女に駆け寄り、その頭を抱き上げるザクロ
その顔は既に蝋人形の様に蒼白で、口角か流れる一筋の血糊だけが驚く程鮮やかに見えた
彼女の脳裏に、あの日畳の上で踞るイチゴの姿がフラッシュバックする
"ど、どうしたんです!? しっかりして下さいっ!! "
"マ、マ、マ、ママ先生〜! 死んじゃダメなのじゃ!! "
誰の目にも彼女の状態が尋常でない事は明らかだった
"ヨーコ! き、救急車! "
ザクロの絶叫 だがヨーコはモジモジするばかりで動かない
"何してるの!? 早く!!"
0029創る名無しに見る名無し
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2014/10/30(木) 18:56:42.26ID:2BsfUa1r
"でも… お電話… 止められてる… "
惨めで悲惨な現実 親を失い、大人達に捨てられ、社会に見放され、
それでも何とか支え合って生きてきた
その中心で常に誰より頑張って、誰より辛い思いをしてきたママ先生…
今、その彼女の身に異変が起き、こうして皆が集まって居るにも関わらず、
助けを呼ぶ術すら無い… 否、救急車なら呼べる 近所まで走れば良い
だが、それからどうするのだ… 電話料金も払えぬ私達に治療費や入院費の
負担など… ましてや大黒柱のママ先生を失っては、日々の糧すら…
今一度思う この世に神が居るのなら、何故かくも過酷な運命を私達に課すのか…
少女達は心で泣いていた 1番辛いママ先生が泣いていないのに、
自分達が泣くわけにはいかない…
"僕がお隣さん家まで走ってきます! "
褐色の肌の少女、アマ子は立ち上がった ここで嘆いていても始まらない
とにかく今はママ先生を救うのだ! そんな思いで駆け出そうとする彼女の手を
イチゴが掴んだ
"!? "
"イチゴッ!? "
"ママ先生っ!? "
失われたと思われた彼女の意識の覚醒に、一縷の希望を見出だす少女達
だが、彼女の口を突いて出てきた言葉は、そんなか細い灯火を無惨に吹き消す
"……もう…… いいの…… 私は… 安心したわ…… 私が… 居なくても……
きっと… 大丈夫ね…… みんな… 愛してる…… "
"ど、どうしてそんな事言うですかー!! "
"嫌アル! 死んじゃ駄目アル!! "
"貴女が居なくて、大丈夫な訳が無いじゃない!! "
イチゴは震える瞼を重そうに開けて、己の頭を抱えるザクロに視線を向ける
"……ザクロ… 貴女がこれから…… ママ先生よ…… 私なんかより…
ずっと賢い貴女なら…… みんなを…… グフッ!? "
魂がそのものが抜け出すかの様な大量の吐血 壊れた玩具の様にイチゴの
身体は一瞬大きく痙攣し、そして糸が切れたかの様に力が抜けていった
"嫌ぁぁぁぁぁぁっ!! "
"イチゴォォォォッ!! "
"ママ先生ぇぇぇぇっ!! "
この日最大の絶叫が人形館に木霊した

"意識を失っただけよ… まだ大丈夫、横にして休ませてあげて "
""!? ""
突如、聞きなれぬ声が庭先から向けられた ギョッとする少女達
幾つもの視線が集中するその割れた窓から、あのピンクマスクが姿を現した
0030創る名無しに見る名無し
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2014/11/05(水) 01:09:02.23ID:mOE5eZl8
"キャァッ!! "
"怖いです〜! "
"まだ居たのじゃぁ!! "
冷静になれば当然の展開 まだ年端も行かぬ小娘達相手とは言え、
あれ程までの力量の差を見せつけた侵入者が、イチゴの一撃で易々と退散
するとは思えなかった
"くぅぅ… そんな… "
少女達はイチゴを庇う為、殆ど無意識にザクロを中心にその周囲にスクラムを組む
だが、少女達の心には恐怖と共に不可思議な蟠りも広がっていた
それはピンクマスクの発した、恰もイチゴを思いやるかの様な台詞…
それも、事の全てを見透かした様な、落ち着き払った穏やかな口調…
事実、今、目の前に立つピンクマスクに、先程の様な殺気を孕む危険な
オーラは感じなかった
微かな混乱、その波紋はやがて大きなうねりとなって少女達の思考を翻弄した
"その娘はね… 骨癌なの… もう殆ど時間が無いの… "
そんな少女達の心を見透かした様に、ピンクマスクはゆっくりと言葉を紡いだ
"う、嘘よ! 貴女が何を知っているの!? "
ザクロが発したその言葉には、そうであって欲しいという願いが多分に含まれていた
そして恐らく、今からそれが否定されようとしている予感も感じていた
もうザクロには分かっていた 目の前のピンクマスクが、イチゴと深い関わりを
持つという事を…
"ねぇ… 彼女を助けたい…? "
ピンクマスクのその言葉が少女達の心に突き刺さる
助けたいのは当然、でも手段が無いのだ 助けたいけど、助けられない…!
それとも目の前のピンクマスクは、自分を頼れとでも言うのか…?
散々自分達に暴力を振るった存在に、助けを求めろと…?
"助けたいのかって聞いてるのよ!! "
ピンクマスクの突然の怒号 暴力の記憶が生々しい少女達は、思わず身をすくます
"た、助けたいわよ! でもどうすれば…! お金が… 身寄りが無いのよ…… "
ザクロの発したその言葉は、人形館の全ての少女達の代弁であり、悲鳴であった
その言葉の悲し過ぎる意味を噛みしめ、少女達は皆、込み上げる何かを必死に
押さえ込もうとしていた
"どんな事でもする覚悟はある? "
""!?""
"彼女の為に… イチゴの為に、どんな事でもする覚悟があるのかって聞いているの "
再び穏やかな口調でピンクマスクは語った
"イチゴが貴女達の為に何でもしてきた様に、貴女達もイチゴ為に何でも
する事が出来るのか、聞いているの… "
少女達の視線がピンクマスクに集中する
0031創る名無しに見る名無し
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2014/11/05(水) 01:11:11.86ID:mOE5eZl8
"な、何でもするです〜! ママ先生を… イチゴを助けて欲しいです〜! "
"私も頑張るよ〜 何をすればいいの〜? "
"ママ先生を助けられるなら、何でもやりますよ〜! "
"私も!! "
"あたしも!! "
競い合う様に少女達は誓いを立てる その言葉には一辺の偽りも無い
"貴女は…? "
ピンクマスクの視線がザクロに向けられる
イチゴの倒れた今、彼女の決意が「家族」の総意となるのだ
"………お願い… お願いします! イチゴを… 私達を… 助けて下さぁーいっ!!
私達にはイチゴが… ママ先生が必要なんですぅっ!!"
その日一番の大声が、人形館に響き渡った
"……イチゴは幸せ者ね…… こんな家族に囲まれて……
命を張るだけの価値がある訳よね…… "
すすり泣きが方々で上がり、やがてそれは一つになり合唱となった
だが、それは悲しみとはまた違う、温もりと心地良さの成分を含む物だった
"貴女達の想い、確かに受け取ったわ "
そう言うピンクマスクはゆっくりとその頭部を覆うそれを脱ぎ始めた
ぱっつん前髪の下、円らな瞳と筋の通った鼻 予想よりずっと若く、それでいて
自信に溢れた彼女の表情は、白い肌と相まってとても美しく見えた
"今夜一晩祈りなさい… 明日、太陽がこの窓から差し込む頃、
きっと奇跡は起こるでしょう…"
そう言うと彼女は踵を返し、その割れた窓から出て行く
"待って! 貴女は… 貴女は一体? どうして…? どうしてこんな事を…? "
ザクロはその背中に向けて叫んだ その声に元ピンクマスクは足を止める
"私の名はルチャロサード、世を忍ぶ仮の名を、須内ミウ… "
それだけを言うと再び歩を進め、漆黒の闇の中に消えて行った



東の空が白む頃、イチゴの顔色も心無しか血色を取り戻した
あれから皆で看病した 濡れタオルで汗を拭い、身体の節々をマッサージした
改めて見る彼女の身体は、無数の古傷や痣にまみれていた
それが彼女が己に課してきた十字架の重さを物語っている気がして、
少女達のはその小さな胸を更に強く締め付けるのだった
"イチゴ… きっと助かるからね… "
何が起こるのか、起こらないのか分からない そもそもあの女を信じて良いのか…
ザクロは思わず頭を振った 信じるしかない… 信じるしかないのだ
0032創る名無しに見る名無し
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2014/11/05(水) 01:12:49.03ID:mOE5eZl8
"お早うございま〜〜す! "
その能天気な迄にド明るい声が玄関先で響いたのは、徹夜の疲労が睡魔となって
少女達を微睡みの世界へ誘い始めた時だった
人形館を訪れる者と言えば、滞納する各種料金の催促か、市の依頼を受けた
やる気の無い民生員位な物…
こんな垢抜けた挨拶など、そう言えば久しぶりに聞いた気がする
"は…… はい…… "
訝しがりながらザクロが出迎える 玄関の引き戸を用心深く開いていく
"あ〜! 昨日はどうも〜! "
"あっ…… 貴女は…! "
能天気な声の主、それは凛々しくレディーススーツに身を包んだ、
あのピンクマスク事、我等がミウたんであった
"あ〜 イチゴさんのお具合は〜 "
"あっ… はい… 何とか落ち着いてる… みたいです… "
昨日との余りの印象の違い 何が起きてるか分からず、目を屡叩かせる
異変を感じ取った少女達も三々五々、玄関に集まって来る
"あ〜 それは良かった〜 間に合ったです〜! "
さらっと物騒な事を口走りながら、ミウたんは小脇に抱えた鞄から
大きな封書を取り出し、ザクロの眼前に差し出す
"アブラック… ガン保険… days…… "
デカデカと書かれたその一文を反射的に読み上げる
"いや〜 お客様は運がよろしい! 只今なら医師の診断無しでご加入頂けます! "
"………いや… あの…… "
"はいはい、死後保険金ですが月額五千円のコースでなんと一千万円! "
"………ちょ… ちょっと… "
"お金ですか? 大丈夫〜 せいぜいお支払は1ヶ月でしょ〜
大切なのは、この契約はわたくしとお客様の間のヒ・ミ・ツ って事です
流石に余命幾ばくも無い方とのご契約は会社が認めませんので〜 "
"………あの… ちょっと… "
"いえいえ、お気になさらずに〜 此方は契約を取ればオッケー、
お客様は保険に加入出来てハッピー 完全にWin-Winの関係ですね! "
"ちょっと! いい加減に…! "
"ん〜〜? お客様〜 昨日仰いましたよね〜?
何でもするって〜 保険に入ればちゃんと治療も受けられますし、
もしかしたら奇跡も起こるかも〜 それでは署名、捺印の後、
最寄りのポストに〜 お邪魔しました〜!"
それだけを吐き捨てる様に言うと、何かを叫ぶザクロ達の絶叫を背に、
軽やかなスキップ人形館を後にする
0033創る名無しに見る名無し
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2014/11/05(水) 01:14:26.84ID:mOE5eZl8
"いっつまいら〜 きっと大丈夫〜♪ ホニャララ〜 ヘニャララ〜♪ "
ちょっと古いユーキャンのCMソングをご機嫌に口ずさむミウたん
ファーストフード店に代わるミウたんの新しいライフメイクワーク、
それが保険外交員だった ファーストフード店の売り子同様、
女で若くてそこそこ可愛ければ誰でも出来る職業シリーズ(本人談)第2弾
今、初めての契約をゲット(予定)した喜びに自分の未来が開けて行くのを感じ、
人目も憚らず、小躍りするのだった
数ヶ月に渡る川原暮らしの最中、とある因縁で偶習得したルチャの技が、
まさかこんな所で役に立つとは…!
"奇跡もルチャもあるんだよ! 私と契約してガン保険に入ってね! "
ミウたんの今年一番のの笑顔が、日本晴れの秋空の下に炸裂した





因みにイチゴの病はヤブ医師の誤診であり、実際は過度の過労と胃潰瘍であった
1ヶ月の静養の後、無事に健康を取り戻し、再びママ先生として多忙ながらも
幸せな日々を送る事になる
そしてミウたんは相変わらずの底辺貧困暮らしを続ける事になるのだった
0034sage
垢版 |
2015/01/29(木) 18:48:36.51ID:y7Mt9gPC
『工場ガールミウたん』



"最先端のテクノロジー、最新鋭のイノベーション…
それが生み出す、夢のハイクオリティライフ…
今、このテクノステージIZUMIが造り出しているのは『未来』なのです…! "

"ほぇ〜〜〜!!"
ガラスチューブの中、緩やかな勾配を進むエスカレーター
その流れに身を任せるミウたんの口はずっと半開きのままだった
広がっていく視界に、群立するプラントや前衛的なデザインの建造物が
幾つも飛び込んで来る
日光を反射して宝石の様に輝くフルハイトガラス
遠近感を喪失を誘う入り組んだ回路や無数のパイプライン
それらの間には管理された緑地や公園が箱庭の様に敷き詰められている
エスカレーターの終着点は中空に突き出したテラスだった
まさに未来都市ーーー
遥か天空を覆うガラスドームが無ければ、誰しもそこが超巨大工場の内部で
あるとを失念してしまうだろう
"ひぇぇ…… こりゃ凄い…… "
テラスの隅の手摺に身を委ねて、その空想的な風景に感嘆の声をあげるミウたん
(日本一の噂通り… 今年は1発目から大成功だな )
テラスにはミウたん同様、満足気な表情を湛えた人々が、
思い思いに目の前の荘厳な光景を自分の心に刻み込んでいた

ーーーーー『工場萌え』

インターネットの発達は、それまで個人の独創的感性の範疇に過ぎなかった
極めて狭義的な嗜好を、それまで交流の機会の少なかった同輩を結び付ける事に
よって1つの「趣味」にクラスチェンジさせた
工場の風景にときめく・・・
嘗ては言葉として表現する事も困難だったその嗜好
「工場萌え」という文言をディスプレイの中に見つけた日の感動を、
ミウたんは昨日の様に覚えている
『工場ガール』
それはミウたんが2ヶ月に一度開催される、この工場萌え見学会に参加する
己を指して、「森ガール」的なおしゃま度をイメージして創作した造語である
何せ女性が自分しか居ないオフ会である
アイドル的存在なのは悪い気はしないが、出来れば同年代の女性が来て欲しい
造語にはそんな願いが込められていた
0035創る名無しに見る名無し
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2015/01/29(木) 18:51:26.21ID:y7Mt9gPC
調律された美しいアナウンスが不意にテラスに流れた
"工場萌え見学会の皆様にご連絡致します〜 只今より、
一階、多目的ホールにおきまして、当工場副長よりご挨拶と、
細やかな歓迎レセプションを開催致します〜 ご参加の程をお待ちして居ります "

"やった〜!"
景気の良い企業には儘あるサプライズ
正直、城塞都市の様なその正門を潜った時から手応えは感じていた
ミウたんにとっては工場見学の大事な目的の1つ
昨年のお菓子工場の時は予想に違わず、大きな菓子福袋が振る舞われた
普通の工業工場でもお茶にお茶受け位は期待できる
こんな未来都市の様な巨大工場なら、否が応にも期待が高まる
(お寿司… は流石に無いか… でもショートケーキは硬いでしょ! )
思わず綻ぶ表情を何とか引き締め、今来たエスカレーターに向かうミウたん
"!? "
ふと立ち止まると、何事かを思案してテラスの奥に駆けて行く
"ミウ姫、先に頂きますぞ〜 "
"ふふっ… ちょっとお手洗いに… "
ミウ姫とは、この『工場萌え同好会』に於けるミウたんの愛称である
別にミウたんが言わせた訳では無い 唯一の女性である彼女は姫扱いなのである
尤も、面食いなミウたんにとって家臣達は恋愛の対象にはなり得なかった
何より、ミウたんするとって大事なのは色気より食い気である
せっかくのお呼ばれ、少しでも多く新鮮な栄養を吸収出来る様に、
老廃物は絞り出しておきたかった

『ジョバババババ…… 』
"遥か〜 望み〜 叶え〜たまえ〜… "
今日の善き日をミウたんなりに神に感謝しながらハンカチをくわえ手を洗う
軽やかなステップでトイレを出たミウたんは、広いエントランスの
フルハイトガラスに写る自分の姿を凝視した
"ふふん… 姫か… 確かに可愛いもんね!"
生来の自惚れ屋であるミウたんは、辺りに人気の無いのを良い事に、
右腕を後頭部に回し、腰を突き出して、左手を拳銃の要領で前方にパンッ!
とやる我流カワイイアイキャッチを披露する
"…………ん……? "
同時に自称とびきりカワイイウインクを決めたミウたんは違和感に固まった
0036創る名無しに見る名無し
垢版 |
2015/01/29(木) 18:55:47.41ID:y7Mt9gPC
"………あれ? "
違和感の正体は直ぐ分かった ガラスに写るもう一人の自分
ピンクのぱっつん前髪、ピンクのベストの一張羅
そこに写る自分はカワイイアイキャッチを返さない
"えぇぇっ!? "
ミウたんは血の気が引いて行くのを感じた
ガラスに写るもう一人の自分は、ただ寂しげな笑みを浮かべて立ち尽くしている
"そ、そんな……!? "
状況が理解出来ない 目の前に写る自分は……誰?
"キ……キャァァ!! "
混乱と恐怖が悲鳴となって口から飛び出た それが彼女の身体を動かした
一目散に駆け出し、エスカレーターを跳ね降り、案内板の矢印が指す
多目的ホールに飛び込んだ

"……で、ありまして、当工場では…… "
副工場長の挨拶の最中、乱暴に扉を開け放ち、崩れる様に転がり込むミウたんに
「家臣」達の何人かが怪訝な表情を向ける
"まだ、ティータイムは始まってはございませんぞ… "
そんな冷やかしの後に静かな含み笑いの輪が広がった
みんなは当然、ミウたんの最大の楽しみが何なのかを理解しているのだ
"……それでは当工場のPV等を観賞頂きながら、暫くご休憩下さい "
漸く息が収まって来た頃、お茶とお菓子の観交会となった
"……姫、顔色が悪いですぞ……? "
同好会の重鎮の1人がミウたんの目の前にカップケーキの乗った皿を
差しながら声を掛けた
"う、うん… ちょっと気分が悪くて…… "
"えぇ!? 姫がケーキに食いつかないとは… 重症ですじゃ! "
別の1人が心配そうにミウたんの顔を覗き込む
"ううん… ちょっと休めば大丈夫よ…… "
食べる事に於いて他の追随を許さぬ情熱を見せてきた「姫」の異変に、
同好会の面々が心配の面持ちで近付いて来る
まさかいい歳をしてトイレでお化けに出会ったとは言えない…
ミウたんは努めて明るい表情を作り、アイスティーに口を着けた

"医務室で少しお休みにならると良いでしょう "
"!? "
静かな女性の声が聞こえた
"私、当工場の秘書課に属します雛豆と申します "
0037創る名無しに見る名無し
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2015/01/29(木) 18:58:21.89ID:y7Mt9gPC
声の主は黒いレディーススーツに身を包んだ美しい女性だった
"広い構内でお疲れになる方も多いのですよ "
"い、いえ… 大丈夫です… ちょっと休めば… "
"いえ、お客様に万が一の事があっては一大事です "
雛豆と名乗った女性は強い力でミウたんの腕を掴んだ
"そうだよ姫、ケーキは取っておいてあげるから少し横になってきなさい "
同好会の面々も言葉で後押しをする
"は、はい… それじゃ、お言葉に甘えて… "
そこまで迫られれば断るのも困難である ミウたん自身、先程の出来事が
疲労による幻覚の可能性を否定出来なかった
(少しだけ休んで、バスに戻ろう… )
ミウたんは雛豆に背中を押されながら多目的ホールを後にした

中庭に面した長い廊下を行く二人 辺りに人影は無い
どれだけの距離を歩いただろう 道中、雛豆は一言も言葉を発しなかった
体調の不良を訴えている者にこれ程の距離を歩かせるのか…
ミウたんはほんの少し不愉快になっていた
突き当たりに壁が見え、程無く建屋の奥へ続く曲がり角に差し掛かる
"……………… "
そこは今までの人工的明るさが微塵も感じられない、狭く薄暗い通路だった
"どうした? 歩け "
"えっ…? "
確かに雛豆の声だった 先程とは別人の様な冷たく無愛想な声
ミウたんは雛豆の顔を思わず見詰めが、雛豆は何事も無い様にじっと前を
見詰めている
"早くしろ!"
そう言うとミウたんの背中をグイと押した
"ちょ…ちょっと!"
流石にミウたんが抗議の声を上げようとする
"痛ッ!"
それに対する雛豆の反応はミウたんのブラウスの襟首を掴んで強引に
引きずる事だった
"きゃっ!? ちょっと! 放して!!"
その華奢な見掛けに寄らず、雛豆の腕力は強大だった
いや、手慣れていた、と言った方が正しいかも知れない
間もなく目の前に重厚な金属の扉が見えてきた
どう考えても医務室のそれでは無い 大きな軋みを上げて、扉が左右に開く
"やだ! やだ! 放して!"
必死の抵抗虚しく、ミウたんと彼女を引きずる引きずる雛豆はその扉の中に
消えて行った
0038創る名無しに見る名無し
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2015/01/29(木) 19:01:13.09ID:y7Mt9gPC
水蒸気が吹き出す音とピストンの摩擦音が木霊する
噎せ返る熱気と湿度 赤いハロゲンランプが辺りを毒々しく照らす
あの近未来的でハイセンスな外界とはまるで真逆な暗く薄汚れた世界
不粋なプラント群の中央、小さな作業テーブルのあるそこまで、
ミウたんは引きずられて来た
"放せぇ! 放してぇぇ!"
ミウたんの悲鳴は金属が擦れ合う騒音に掻き消された
雛豆が顎をしゃくると、プラントの影から白衣に身を包んだ人影が
わらわらと現れた
"放し……ぶふぇ!?"
唐突に突き放されるミウたん 床に転がる彼女の元に白衣達が殺到する
たちまち手足を押さえられ、作業テーブルの上に拘束された
"やめて! 変態! 何をする気!?"
エロ妄想には人一倍造詣が深いミウたんは、早くも最悪のシナリオを
想定して頬を赤らめる
"黙れ! イレギュラーが! 故郷の情景も忘れたか!"
雛豆の凛とした声がミウたんの足掻きを制した
"イレギュラー…? 故郷…?"
雛豆がゆっくりとミウたんの側に寄る
"自分の使命も忘れて、のこのこ工場行脚か…!?"
"!?……な、何言ってるの? 人違いでしょ!?"
当然の抗議、投げ掛けられる言葉の意味が分からない
"相当重症だな… 早速オーバーホールを実施する!"
雛豆はそう言うと、勢い良くミウたんのブラウスを胸元まで捲り上げた
"ひゃぁっ!?"
ミウたんの白い肌、臍穴と平なお胸がハロゲンランプに赤く染まる
"ひゃぁっ…じゃない!! 「店員さ〜ん、扉が開いてるよ〜」…だろ!!"
ミウたんにはもう訳が分からなかった
萌える工場を見に来ただけなのに…! なんでこんな事に…!
"左停止ボタン、確認!"
動揺するミウたんを他所に、雛豆はミウたんの右乳首をつねる
"きゃぁぁぁぁぁっ!!?"
"中停止、確認!"
"ぎょぇぇぇぇぇっ!!"
今度は臍穴に指を入れて来た
"右停止、確認!"
"いゃぁぁぁぁぁっ!?"
間髪入れずに左の乳首がつねられる
"レスポンスは正常の様だな… "
雛豆は満足そうな表情を浮かべた顔をミウたんの側に近づけて来た
0039創る名無しに見る名無し
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2015/01/29(木) 19:04:05.52ID:y7Mt9gPC
"うぅ…… ヒック…… もう… もうやめて… うぅぅ…… "
余りの恐怖と恥辱に、遂にすすり泣きを始めるミウたん
"………少しは思い出したか……?"
"………?"
その雛豆の声は優しかった
"………お前は2年前に此処で産まれたのだ…… "
"はっ………? ち、違うよ…! 私は能登半島の付け根の……… "
"それはお前の嫁ぎ先だ "
雛豆の手が優しくミウたんの前髪を掻き上げる
"…………? 嫁ぎ………先?"
"お前の使命は、嫁ぎ先の○ハンで、養分達の諭吉と精液を絞り取る事だった筈だ… "
"…………諭吉………?"
ミウたんの頭の中に黒いモヤモヤが広がって行った
なんだろう、この感覚… 何かが… 何かを… 思い出しそうな………
"姉妹には会わなかったか…? 役目を終え、返品され、処分される、
お前の姉達に…… 新しい命を与えられ、再び使命を果たしに行く妹達に…… "
"………姉…妹………………!?"
ミウたんの脳裏に、あのトイレの先のエントランスでの恐怖体験が甦る
同時に頭が割れそうな激痛、そして何処かの見知らぬ光景が、
フラッシュバックの様に目の奥に浮かび上がった
"……うぅ……わぁぁ………あぁ…!"



流れる天井… 通り過ぎる水銀灯の数を無意識に数えていた
ベルトコンベアーの上に自分が居ると気付いたのは暫く後だった
いつの間にか、隣に誰かが寝ている気配を感じた
いや、ずっと前からそこに居たかも知れない
誰か等という興味は無い どうせ大した驚きは無い 何故かそう思った
やがて暗い小部屋に飲まれて行った そこで誰かに歌を教わった気がする
優しい歌声だった 良い歌だった
数字の羅列も覚えさせられた 意味は分からなかった
テーブルの回し方も習った 遠隔通信の仕方も学習した
小部屋を出ると狭い段ボール箱に入れられた とても寒かった 寂しかった
膝を抱えて踞る私を誰かが覗き込んだ
"さぁ… たっぷり絞り取って来い…… "
雛豆だった
0040創る名無しに見る名無し
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2015/01/29(木) 19:07:26.27ID:y7Mt9gPC
"いゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!"
作業テーブルの上で激しく身を捩るミウたん
"思い出した様ね… "
"……そんな…! 私は… ワタシハ……!"
"そう… お前は…… スナイパイ… スナイパイのミウ!"
"ワタシハ…… ワタシハ…… スナイ…… スナイ…… うぅぅぅぅ!!"
再び激しい頭痛がミウたんを襲う 自分が自分でなくなる様な恐怖
(嫌だ! 私は私! 何者にも成りたくない! 助けて…! 誰か!!)
その時、誰かの声が聞こえた… 様な気がする…
その時、誰かの顔が浮かんだ… 様な気がする…
"お父さん…… お母さん…… 先輩…… 先生…… ゲンさん…… "
白濁していく意識の中、確かに誰かの気配を側に感じた
大事な、大事な存在 これまでの自分を支えてくれた愛しい人々…
そう、私は…… 私は……!
"……私は…… 須内ミウ! こけし職人の須内ミウ!! 私は私! 私が何者かは
私が決める!! 私は須内ミウ!!"
ミウたんの叫びがプラントの中を木霊した
"どうやら強烈なゴト行為をされていたみたいね… "
雛豆は眉間にシワを寄せて口角を吊り上げる
"ハーネスか裏ロムでも仕込まれたか…… 下皿から!"
そう言うと、力任せにミウたんのミニスカートを引き摺り下ろす
"キャァァァァァッッ!!"
しまむらの三枚500円の白無地パンティが露になる
"なぁに、心配要らない… 今すぐ下皿から指を突っ込んで、中を丹念に調べてやる… "
雛豆は顔を近付けると、長い舌でペロリとミウたんの頬を舐めた
"い、いゃぁぁぁぁっ!!"
雛豆の指がミウたんのパンティの中に滑り込んでくる
"だ、駄目ぇ!! 誰かぁぁぁぁぁっ!! "
"姫!? 姫!!"
"ああんっ! ダメェェェェ!!"
"姫!? ミウちゃん!? "
身体が強く揺さぶられる
"うぅん…… 姫……? ミウちゃん……? うぅ… うん?"
"大丈夫かい? なんか…… 凄くうなされてたけど…… "
"ふぇ…… ? あれ……? 此処…… は……?"
0041創る名無しに見る名無し
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2015/01/29(木) 19:12:39.50ID:y7Mt9gPC
目の前には見慣れた同好会の「家臣」達の顔があった
"もう直ぐ姫の家ですぞ "
"あ、あれぇぇ…… "
遠心力がミウたんの身体をシートに押し付ける
バスがカーブを曲がり、フロントガラスの向こうにピンクのミウたんハウスが見えて来た
"な、なんだ…… 夢かぁ…… "
"ハハハッ 随分うなされてたけど、大丈夫?"
"酔っぱらったでござるか〜 "
姫を案じた家臣達の安堵の声が方々で上がった
バスがブレーキを掛け、ドアがエアーを吐いて開いた
"また再来月ね〜 "
"ブログアップするからね〜 "
"お疲れ様でした〜 "
窓越しに手を振りあって別れの挨拶を交わす なんだか色々あったが今回も楽しかった
"ふぅぅぅん…… "
大きな伸びをして天を仰ぐミウたん 変な夢を見ちゃた…
工場に萌えるのも程々にしないとね… そんな呟きを胸に、首を回しながら玄関を潜る
『チャリン… 』
"ん!?"
ミウたんの反応は早かった 地面に転がる小銭の音
ミウたんがこの世で大好きな音の1つである 素早く足元を探す
ポケットに小銭でも入っていたか… 今のミウたんには10円も無駄には出来ない
"ターゲット確認! そこね!!"
伸び放題の庭草に浮かぶ飛び石 その影に見える鈍い光沢
ミウたんはそれに手を伸ばした
"……ん…… あれ? なんだこれ……?"
それは想像した物では無かった 大きなMの字が刻まれたコイン
"なんだこれ…… どこから落ちて…… "
不思議そうに繁々と手にしたコインを見詰めミウたん
西の山嶺にのし掛かる太陽が、彼女の長い影を、ミウたんハウスのピンクの
外壁に投げ掛けた
それはまるで、天に祈りを捧げる聖女の様に見えた
0042創る名無しに見る名無し
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2015/06/15(月) 20:32:03.55ID:1uWdxlZI
『星狩りの夜に』



冬の澄み渡る夜空 宝石箱をぶちまけた様な満天の星空
その幻想的輝きに心奪われるのは人間だけではない
"こんな星の綺麗な夜は激チャンスにゃん "
遠く街の明かりが一望できる丘の展望台 茂みの中から姿を現したのは、
お下げ髪が特徴のプリシラ ミント目に属する幼女、
この丘陵を根城にする野良である
"チャンス… かも……?"
その後を追う様に、同じ様な小さな影が2つ現れた
緑色の頭髪から、それが同じミント目に属するラムネ種だと分かる
3匹の野良幼女は展望台のベンチの1つに仲良く並ぶ
中央に陣取るプリシラが、手にした長い竹竿を星の瞬く夜空に向け、高く掲げた
"右にゃん! 左にゃん! 中にゃん!"
鳴き声に合わせて竹竿が揺れる
"若干、右みた〜い!"
"チャンスだよ〜 "
今度は左右のラムネ達がプリシラを励ます様に鳴き声をあげる…
良く晴れた新月の夜、野良幼女達が時折見せる謎の集団行動
『星狩り』
低知能故にその非合理的な活動が散見される彼女達
そんな中でもとりわけ見る者に加虐心を抱かせるのが、この『星狩り』である
野良幼女愛好家達の研究によれば、この『星狩り』と呼ばれる行動は、
中途半端な知性故に貨幣経済の最底辺に組み込まれた彼女達が、
極度の貧困から這い出様と一僂の望みを託し、一攫千金を夢見る姿なのだという
宝石の様に輝く夜空の星を我が物にし、BOOK・OFF辺りに持ち込んで大枚を得る
それが人に似て人に在らざる生物、野良幼女か夢見る、余りに荒唐な立身術
だが、果たして誰が彼女達のその姿を滑稽と笑う事が出来ようか?
人も皆、いつか起こると期待する何かの奇跡を心の支えに、日々道化の如き
生き様を晒し続けているのではなかろうか?
彼女達の吐く白い息が、深夜の刺す様な冷気の中に溶けて行く
熱気を帯びた6つの瞳が、濃紺の星空の中に瞬いている
『キラッ☆』
""!!""
奇跡、とはその発生が極めて稀な事を意味し、決して起こらぬという事ではない
正に彼女達は今、その奇跡を引き起こしたのかも知れない
0043創る名無しに見る名無し
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2015/06/15(月) 20:34:25.21ID:1uWdxlZI
"げ、激熱にゃん!!"
"うわぁぁぁ…!"
"だ、だ、大好きだよぉぉぉ!!"
今、確かに1つの瞬きが、プリシラの突いた竿の先で夜空からこぼれ落ちた
それは明るく大きな軌跡を描きながら、展望台から伸びる丘陵の向こうに落ち行った
"い、急ぐにゃん!"
"取られたらダメみたぁ〜い!"
弾かれた様にベンチから飛び降り駆け出す3つの影
彼女達の脳裏には、夢にまで見た小倉マーガリンパンを口一杯に頬張る己の姿が
キラキラエフェクトの中に浮かんでいたに違いない





湿気を含んだ生ぬるい風が、甘ったるい花の香りを運んで来る
明かり取りの隙間から流れて来るその気だるい空気がびん娘は大嫌いだった
決して寝心地の良く無い、固く広いだけのベッド
沐浴場とそれを隠すカーテン 僅かな雑貨が無造作に収まる小さな棚
それがびん娘の世界の全てだった
後は懐かしくも朧気な幼き日の思い出と大きな重い首輪 それだけが彼女の所有物 毎日決まった時間に豪華で栄養のある食事を与えられる
無造作にフォークを突き立て口に運ぶ 感慨は無い
死なない為に食べる だが果たして生きている意味があるのか?
嘗ては彼女にも食卓を囲む家族が居た様な気がする
それを思い出そうとすると頭が痛む 自分の中の何かが、記憶をなぞる事を阻害する
『ブゥゥゥゥゥ…』
石壁に仕掛けられたブザーがなる 日が暮れる頃、びん娘は外界へ召される
ブザーの脇にはカメラが付いており、きちんと品定め出来るシステムになっている
びん娘は最高ランクである「カーニバル」に位置付けされている
彼女の指名料は支配階層にとっても決して安い物ではない
それでも彼女の指名は途切れる事は無い
既に沐浴を済ませていたびん娘は、彼女の世界と外界とを隔てる鉄格子の前に立つ
『どっきどきゾーン!』
スピーカーから流れる脳天気な声に合わせて、それがゆっくり開く
びん娘はまるで魂の無い人形の様な形相で、その先のスポットライトの中を進む
前方にぼんやりとでっぷりと脂肪を蓄えた初老の男の姿が浮かび上がる
これから二時間、望まぬ快楽に身を任せれて、びん娘の1日は終えるのだ
0044創る名無しに見る名無し
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2015/06/17(水) 18:57:10.89ID:iS3xnRx8
"はぁ… はぁ… はぁ… "
背丈程もある大きな草の葉が鞭の様に全身を打つ
だが、二人は走る速度を緩める事はしない ここを抜ければ発射場は目と鼻の先
"うわぁっ!?"
地を這う木の根に足を取られてびん娘は豪快に転倒する
この日4回目の転倒 無理も無い、走る事自体、数年ぶりである
"だ、大丈夫!?"
びん娘の手を引く形で先行していた彼女は慌て泥まみれのびん娘の顔を覗き込む
"大丈夫だよ!"
"少し… 休もうか… "
"平気だよ!"
"ここまで来れば… きっと逃げ切れるよ… "
びん娘を励ます彼女の顔にも疲労が浮かぶ 朝から走り通しの二人
"少しだけ休もう… "
びん娘の呼び掛けに彼女は笑顔で頷く
銀色の長い髪を2つに結わえた彼女達 傍目には区別も困難な程の瓜二つ
それが寄り添い合って、大きな広葉樹の根元で休息を取る
"ねぇ びん娘は自由になったら何がしたい…?"
"…………自由に……なったら……?"
びん娘は困惑した 物心付いてからそんな事は夢想した事もない
"お…… べる娘は……?"
"…………… "
びん娘の逆問いに、べる娘と呼ばれた彼女も言葉を詰まらす
同じ境遇を生きてきたのだ 漸く手に入れる自由への戸惑いも同じであろう
"びん娘といっしょに… 幸せになりたい…… "
絞り出す様な声でべる娘は答えた
疲労と緊張が落ち着いてきたびん娘は、前方に咲く大きな赤い花に気付いた
甘ったるいあの匂い びん娘の嫌いだったあの香りは、この花が嗅ぐわす物だった
だけど何故だろう あんなに嫌ったその花の匂いが、今はとても心地よく感じられた
"そろそろ行こうか…?"
今度はびん娘がべる娘の手を引いた 幸せになる、びん娘の生きる目標ができた
偶発なのか、何者かの故意なのか、それは今日も変わらぬ筈のびん娘の1日を
激変させた 夜明けと共に突然立ち込めた煙 何時もは脳天気な音声を響かす
スピーカーが緊張を孕んだ声で火災の発生と何かの伝達を繰り返す
何かの焦げる臭いの中で、びん娘は朝食に出されたウインナーにフォークを
刺していた 外界に興味を持ちたくなかった あの嫌いな甘い香りが打ち消されている事に喜びさえ感じていた
だが、運命はびん娘に興味を持っていた様だった
0045創る名無しに見る名無し
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2015/06/17(水) 18:59:20.81ID:iS3xnRx8
『ギギギギィ…… 』
普段は勝手に開く事の無い鉄格子 それがゆっくりと開いて行く
"…………?"
自然と熱くなる己の下腹部 悲しき条件反射を努めて無視する
視線の先、薄い煙の中を走り抜けて行く、幾つもの影
『緊急的避難処置である 各体各自、施設敷地内に限り避難を許す!』
スピーカーが野太い声を響かす
『繰り返す、避難は施設敷地内に限る! 敷地外への移動は逃走と見なし、処分する! 』
びん娘にも何となく分かる 自分は… 自分達は「商品」なのだろう
もうすぐそこまで死が迫っているのだろう
大事な商品が使い物に無くなるのを避ける為の、避難という名の資産保全
びん娘は他人事の様にぼんやりと檻の外を眺めていた
こんなに居たのか、煙の中を駆けて行く自分と同じ境遇にある「商品」達
逃げた先に何があるのか…? 何から逃げるというのか…?
もうすぐ来るという「死」だけが、永遠の自由を与えてくれる事を
びん娘は無意識に感じ取っていた
"びん娘!? びん娘!!"
煙の中から自分の名を誰かが呼ぶ びん娘はハッとなった
「びん娘」… 自分の名である筈のそれが呼ばれたのは何年ぶりだろうか?
そう「びん娘」 私は「びん娘」…… ここではずっと「フリー嬢113号」
と呼ばれていた
"びん娘!! 会いたかったよ!"
煙の中から姿を現したのは、長い銀髪を束ねた自分の生き写し…
"……………お……… お姉………… ちゃん………?"



『繰り返す! 自分達の首に付けられた物の意味を忘れるな!』
そんな警告の音声を背中に受けながら二人は、施設を囲う高い塀の一角、
腰の高さ程の植え込みの中に飛び込む
"言われた通りだよぉ!"
姉は… ずっと昔、一緒に連行された双子の姉は、泣き出しそうな歓喜の声を
上げると、その先の塀を構成するレンガの中の色の違う1つを手で崩した
その向こうにぽっかり、人1人が潜れるだけの穴が口を開けた
"行こう!"
姉の声に無言で頷いた まだ録に会話も交わしていない
懐かしい筈なのに、どこか他人行儀が抜けない 無理も無い
一緒に暮らしていた時間よりもずっと長い時間をこの施設で別々に過ごしてきた
その存在を決して忘れていた訳ではない 悲しくて思い出したくなかったのだ
0046創る名無しに見る名無し
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2015/06/23(火) 09:23:28.75ID:A73urjTc
姉… べる娘の客だった その男はべる娘に脱走をけしかけた
曰く、可哀想な君達を救いたい、仲間が秘密の脱出口を築いている、
別の仲間がその日、この施設に火をかける、宇宙港から電波の届かぬ他の星へ逃げろ
半信半疑だった 否、信じるつもりは毛頭無かった
それまでもべる娘達に同情を寄せる者が皆無な訳では無かった
だが、そいつらの同情は上部だけの、べる娘により良いサービスを求める為の出汁であった
大人は… 男は皆鬼畜…!!
それがべる娘の… この施設で暮らすフリー嬢の総意であろう
だがその男は何度も何度もべる娘を諭した その男はべる娘の身体を求め無かった
ただただ自由の素晴らしさと、べる娘達の不遇な境遇を悲しんだ
(この男だけは違うのかも…… )
べる娘の心の中の大きな氷が、ほんの少し溶け出していた
そして何度目かの訪問でべる娘は脱出を決意した
生き別れの双子の妹が、まだこの施設で生きている事を知ったのも大きな理由だった
物心付いてから、鬼畜どもの性欲を満たす事しかしてこなかった彼女でなくとも、
それがこの施設の長の座を狙った権力闘争の末の陰謀だったと気付くのは
不可能であったろう 結果的に自由に手を掛ける事が出来るのも事実ではあった



"あれだ!"
べる娘の声が弾む 森を抜けた丘の上から見下ろす宇宙港
果てしなく広いその施設の一角に、今にも飛び立たんとエンジンに火を灯す貨物船
"急ごう!"
二人は頷合うと丘を一気に駆けて行く あの輸送船のコンテナに紛れ込み、
星の海原に飛び出すのだ 行く先が何処かなど分からない
それでもよい そんな事はどうでもよい これから二人で生きて行くのだ
生まれ変わるのだ 幸せになるのだ
反重力エンジンが独特の高鳴りを始める 離陸は近い
二人はいよいよ力を込めて硬い滑走路を蹴る もう少し… もう少し…!

その時の姉の顔を、びん娘は決して忘れる事は出来ないだろう
『シャンランララン……… 』
"うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!"
べる娘の首輪の甲高いメロディと彼女の上げる悲鳴はほぼ同時に聞こえた
"お…… お姉……! べる娘!!"
"わぁぁぁ…… 何でぇ!? 後少しぃぃぃ! 後少しなのにぃぃぃぃ!!"
腹の底から絞り出す様なべる娘の絶叫 重い首輪に付けられた大きなデジタルセグ
それが勢い良く回転を始めた それが何なのか、フリー嬢だった二人には良く分かる
0047創る名無しに見る名無し
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2015/06/23(火) 09:25:42.99ID:A73urjTc
"いい事? 何があってもここから出ちゃ駄目よ!"
普段はただただ優しい母が初めて見せた厳しい表情
幼い二人はそれだけで既に涙が込み上げて来る
"来たぞ!"
普段は頼もしい父親の声は明らかに上擦っていた
びん娘とべる娘はクローゼットの中で得体の知れない恐怖に震え、
互いの身体をきつく抱き合っていた
"!!?"
玄関先で父親が誰かと言い争っている
『ドンッ!』
"嫌ぁぁぁっ! 何故です!? 何故…!"
何かが弾ける音と母の悲鳴が聞こえた
"下賤民の分際で…!"
聞いた事の無い男の声が足音と共に部屋の中に響く
(こ、怖い!!)
二人は更に互いを強く抱き締める
"娘達は何処だ? お前も死にたいのか? "
(死ぬ……!? )
"お願いします! 娘達だけは!!"
(お母さん!?)
"ババァに用はねーんだよ!"
"ぎやっ!? "
"お、お母さん!!"
母の悲鳴に遂に二人はクローゼットの中から飛び出す
"そんな所に居たのか〜 よしよし、上玉だな "
"あぁ…! お願いします! 娘達は…!"
『ドンッ!』
さっきと同じ嫌な音が聞こえた 母が二人の前でゆっくりと崩れ落ちた
"お母……… さん……?"
"フンッ 無礼打ちだ! 手間を掛けさせやがって! おい、娘達を連れて行け!"
"や、やだぁ!! お母さん!! お母さん!? お父さん!!"



"いいか? お前達の仕事は高貴なる指導階層の方々の日々の労を慰める事だ "
(お母さん… お父さん… )
其処には沢山の、まだ少女と呼ぶにも幼なすぎる少女達が集められていた
べる娘とは入り口で引き離されてしまった 裸にされ、身体検査をされた後、
"なんだよ! 「カジノ」かよ!!"
そう毒付いて、検査員の男は荒々しくべる娘を別の部屋に引き摺って行った
"べ、べる娘!!"
"びん娘!!"
幼い二人には互いの運命を変える力など、ある筈が無かった
0048創る名無しに見る名無し
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2015/06/30(火) 17:33:20.29ID:Y8L0fuQn
"これからお前達はフリー嬢だ フリー嬢はだなぁ…w "
下卑た笑みを貼り付けて、教官という男はおぞましい文言をまだ年端も行かぬ
彼女達に吐き掛けた
"やだぁ! やだよ、そんなの!!"
明朗なある娘が反抗した その場にいる全ての少女達の想いの代弁だった
"……逆らう者はこうなる "
そう言うと教官は合図をした 二人の男がその娘に無理矢理大きな首輪を着け、
そして離れた所に立つ柱に彼女を縛り付ける
『シャンランララン〜……』
取り付けられた彼女の首輪から唐突にメロディが流れる
同時にその首輪に付けられたデジタルセグが変動を始める
3つの数字が順番に変動して行く
"や、いやぁ…!? 怖い! 怖いよぉ!"
不吉な何かを感じ取った娘は悲痛な叫びを上げる
7… 7……… 7
デジタルセグの数字が3つ揃った
『ふぅぅわぁっ!!』
「ドーーーーーン!!」
強烈な閃光と衝撃、耳をつんざく炸裂音
""きゃぁぁぁぁっ!?""
煙と衝撃に晒された少女達の悲鳴が収まった後、あの娘が縛り付けられていた
柱にはどす黒い血糊と正体不明の肉片がこびり付いていた
"これからお前達全員に、この素敵な首輪をプレゼントしてやる
逆らう者、逃走する者はさっきの娘の様になる! 一生懸命働けよ〜
指名が取れなくなるまで働けば必ず自由にしてやる! グッハッハッハッ〜!"
明くる日、びん娘は初めての指名を受ける
そして三年後には、最上ランクフリー嬢、「カーニバル」に昇格するのだった
びん娘は幾度となく死のメロディを聞いてきた
自由を求め、逃走を謀るフリー嬢を、首輪は確実に仕留めて来た
そしてそれは今、再会したばかりの姉の首元でけたたましく地獄の旋律を
奏でているのだ



"べる娘! べる娘!?"
びん娘は姉の首輪に力一杯爪を立てる 両腕に人生で最大の力を込めた
それが無意味な事である事は分かっていた 決して外れる事は無い
だが、それをせずには居られ無かった 後少し… そう、後少し…!
この星さえ脱出すれば… 遠隔操作の電波も届かない宇宙の彼方に行けば…
0049創る名無しに見る名無し
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2015/06/30(火) 17:35:56.55ID:Y8L0fuQn
"……いいよ、びん娘…… "
"!?"
べる娘はもう落ち着いていた うっすらと笑みを浮かべながら、
爪の間から血を流すびん娘の手を首輪から引き離した
"気付かれたよ 時間は無いよ びん娘は絶対に逃げ切って… "
べる娘の首輪のデジタルセグがリーチを賭けた
ほんの一瞬の沈黙、べる娘の瞳は優しかった あの幼き日の様に…
次の瞬間、べる娘はくるりと踵を返し、勢い良く駆け出して行った
彼女が振り返った瞬間、何かの飛沫がびん娘の頬に冷たい刺激を与えた
"べる娘ぉぉっ!?"
"びん娘ぉ… 絶対に… 絶対に幸せに "
『ふぅぅわぁっ!』
姉の後ろ姿が閃光の中に消えた
"きゃぁっ!?"
強烈な衝撃波にびん娘は吹き飛ばされ、硬い滑走路の上を転がった
"べる娘ぉ…… お姉ちゃん…… 何で…… "
よろよろと起き上がったびん娘は人生最大の絶叫を上げた
"私も殺せぇぇぇ!! 何でぇぇぇ!? 何でべる娘だけぇぇぇっ!!"
叩き付けられた衝撃で節々が痛む身体を引き摺って、目の前のコンテナの隙間に潜り込む
"…………私が…… 私が… 「カーニバル」だから…………?
べる娘は…… お姉ちゃんは…… 「カジノ」だから………?"
フリー嬢生活の中でも少しずつ大人になっていったびん娘は、何となく理解していた
フリー嬢のランキングが容姿だけに拠らない事を…
瓜二つの姉が最下位に区分けされた理由…
べる娘は性器に先天性の変形があったのだ
それは人並みの恋愛、結婚、性生活、そして出産をするのには特に障害では無かった
だが、フリー嬢として支配階層の慰み者になるには粗悪品と分類された
フリー嬢ランクを上げ、より高い指名料を取る事が、唯一とも言うべき
フリー嬢達の生きる縁だった フリー嬢に与えられる住環境や食事はランキングに
拠って決められており、
確約の無い何時の日かの「自由」も、より高い指名料を取る高ランク嬢が
より近い位置に居ると思われた
だが、姉のべる娘はそんな悲しい縁にすらすがれず、
ただただ代わりの直ぐきく最下層のフリー嬢として、乱雑に汚され続けて居たのだ
びん娘はコンテナの冷たい外壁に背中を滑らせ、力無く崩れ落ちた
"殺せ…… 殺して…… "
「カーニバル」だから容赦する訳では無いだろう
だが、些かの躊躇は有ったのかも知れない びん娘の首輪は沈黙を続ける
0050創る名無しに見る名無し
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2015/07/01(水) 17:34:53.75ID:z9DrNcUs
コンテナがふわりと持ち上げられる感覚がびん娘の身体に伝わる
漸く取り戻せる筈だった自由 だが、奇跡の再会を果たした最後の家族を
目の前で失い、びん娘の目の精気が失せていく 一体何の為に生きるのか…
昨日までと同じ疑問が再び頭を過る
(幸せになってね… )
その時、べる娘の最後の言葉が頭の中に反芻した
"べる娘ぉ……… "
びん娘の号泣は反重力エンジンの高鳴りに掻き消されていった





"この先に間違い無いにゃん!"
"ふつうじゃないんだよ〜 "
雑木林の中を遮二無二駆けて行く野良幼女達 未だ興奮覚めやらず、
機関車の様に白い息を弾ませて隊列は疾走して行く
目指す林の奥の空はほんのりと淡い光を湛え、恰も最終列車の到着を待つ
ターミナル駅の様
もうすぐ眼前に広が筈の奇跡の光景に想いを寄せる野良幼女達
困窮に喘ぐ日常に漸く訪れた非日常 待ち焦がれた昨日とは違う日
だがそれは本来、野生に生きる者として研ぎ澄まされている筈の野良の本能を
鈍らせ、感性を曇らせた
そしてそれは大自然に於ける普遍的な営みの中の敗北者になる事を意味していた
彼女達は林の奥から己らを凝視する、野蛮な肉食獣の赤く光る両眸に
気付く事が出来なかった
"にゃん!!?"
突如、先頭を行くプリシラの身体が宙を舞った
高い杉の木立の中を小さな身体が飛んで行く
"す〜ご〜い〜〜 "
"若干、高いみたい〜?"
後に続いていたラムネ達は、同輩が突如見せたアクロバティックパフォーマンスに
ただただ純粋に呑気な感嘆の声をあげる そもそも彼女らの野生の本能など
大した物ではないのかも知れない
"大物ゲット〜〜! ピロロロロ〜〜!"
"!?"
だが、然しもの彼女達も、直後に木立の闇の中から姿を現した肉食獣の姿に、
漸く自分達が「獲物」に成らんとしている事に気付く
0051創る名無しに見る名無し
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2015/07/01(水) 17:36:54.83ID:z9DrNcUs
"久しぶりのお肉〜 この時期にしては良い型ね〜 "
幸いと言うべきか、獣はラムネ達には目をくれず、宙を漂うプリシラに舌舐めずり
をする 賢いこの獣は余計なターゲットには興味を示さなかった
ラムネ達は逃げ出したい衝動に駆られるが、身体が恐怖に凍り付き
身動き出来ない ただ互いの震える腕を引き合うのが精一杯であった
"お、下ろしてにゃん… 助けてにゃん… "
頭上の同輩の力無い声 知能の低い野良幼女にも、先程のアクロバットが
この獣の罠による物だと理解出来た
"やっぱりプリシラか〜 これは尻肉の叩きか魔女鍋だなぁ〜?"
獣は物騒な独り言を呟きながら、傍らの木に結び付けられたロープを解く
するすると網に絡まれたプリシラが降りて来る
あれが地上に降りた時が同輩の最後である事はラムネ達にも理解出来た
ラムネ達の脳裏に、キラキラと目を輝かせ、今夜は激チャンスにゃん!、
とラムネ達の塒に誘いに来たプリシラの姿が浮かぶ
生き馬の目を抜く野良生活、全てが生存競争の強敵という過酷な環境の中で、
いつも何かとつるむ事の多かった3匹 馴れ初めはもう覚えていないが、
紛れもない「家族」だった3匹 その家族の1匹が今、肉食獣の餌食に成らんと
している ラムネ達はどうしても彼女を見殺しにする事が出来なかった
"あ、あう〜〜… "
"ん?"
恐怖を振り払い、恐るべき獣が纏うスカートの裾を引くラムネ
"プ、プリシラを食べたらダメみた〜い "
そこで漸くその小さな存在に気付いた肉食獣
"食べないでくれたら… あれ〜… "
"ん?"
少ない語彙で必死に願いを伝える野良幼女達
彼女達の指差す先は先程まで目指していた、あの林の奥の淡い光
恐らくは自分達の見つけた宝物と同輩を交換しようという提案なのだろう
相手の同意もなく先に宝の所在を明かす辺りは、低い知能の限界なのかも知れない
"ん……? なんだろ〜… あれ…… "
だが、彼女達はツキには恵まれていた様だ
恐るべき肉食獣は目の前の小さな獲物より、その指差す先の朧な輝きに
見事に興味を引かれた
"げ… 激チャンスにゃん…? "
"若干、いいみたい… "
吸い寄せられる様に林の奥に足を進める肉食獣の背後で、
野良幼女達は互いに抱き合い、小さな声で危機が去るのを祈るのだった
0052創る名無しに見る名無し
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2015/07/03(金) 18:15:51.24ID:WdF+sOIu
また、あの日の夢を見た…
頬を伝う涙の不快な感触 皮肉にもそれが今夜もびん娘を悪夢から解き放つ
寝室に漂う深夜の空気は張り詰める程冷たい筈なのに、
びん娘の身体は激しく脈打つ心臓によって汗ばむ程に火照っていた
"グスン…… "
小さく鼻を啜って、硬いソファーベッドからゆっくりと上半身をもたげる
私はあれから少しでも「幸せ」になれただろうか?
これが私達の望んだ「幸せ」だろうか?
そんな筈は無い 毎夜の様に悪夢にうなされ、運命を呪い、後悔を続ける…
それが更なる罪悪感をもたらし、びん娘の心の中を掻きむしる
(やはり一人では…… )

びん娘の旅は長くもあり短くもあった 放浪と呼ぶべきかも知れない
魂の放浪… 目的も目標も無く、ただ身を揺蕩わせた
誰かに声を掛けられた気もするし、肌を重ねた気もする…
全てが朧で曖昧な記憶だった 漸く得た自由… だがそれは何の感慨も無かった
(なんの為に生きるのか……?)
またあの疑問が脳裏を過った
幾日が… 或いは幾月が過ぎただろうか、びん娘は銀河の果ての小さな
惑星に辿り着いた 塩化ナトリウムと酸化水素の広い海、
青色の空が特徴的なとても美しい未開の惑星だった
初めてその景色を見た時、漸くびん娘の心の奥に微かな光明が射し込んだ
もしかしたら微笑んでいたかも知れない その位、この星の景観はびん娘の
荒んだ心を癒したのだ 土着の支配生物は何とか意思の疎通が計れる
程度の知性だったが、びん娘は此処で「幸せ」を探し求める事にしたのだ
『地球』…… 星の支配生物は自らの惑星をそう呼んだ
「丸い地面」という意味らしい 如何にも未開な非文明的センスだと思った
だが、そんな彼らの純朴さが、びん娘の心を慰めるには好都合だった
彼らと歌を唄ったり、踊りを躍ったり、地酒を酌み交わしたり、
時にはパチスロなる原始遊戯に興じたりもした
だが、びん娘の心の中の黒い影が完全に消える事は無かった
一見、幸せの様に見える明るく楽しそうなその振る舞いは、
ともすればびん娘の豊満な胸板を張り裂いて姿を現そうとする、
黒いモヤモヤを押し込める為の無意識な作為の側面があったのだ
0053創る名無しに見る名無し
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2015/07/03(金) 18:17:56.53ID:WdF+sOIu
自分は幸せに成らねばならない… その思いが常にびん娘を支配した
あの宇宙港に響いた姉の絶叫 片時もびん娘の耳から離れる事は無かった
夜の戸張が降りて、一人町外れの住家の玄関を潜るびん娘
明かりも点けず、玄関のドアに凭れかかる
自然と溢れてくる涙を拭ったのは幾日になるだろうか…
"……何でお姉ちゃんはあの時、私の前に現れたの………?"
地球に来てから無数に繰り返されてきたびん娘の呟き
"お姉ゃんと出会わなければ…… びん娘は幸せなんか探す事も無かったのに…… "
すすり泣きが暗く静かな室内に響く
"一人では…… 幸せになんかなれないよ…… "

ソファーベッドから起き上がったびん娘は洗面台の蛇口を捻る
涙に濡れた顔を両手に掬った水で洗う 冷たい感触が心地良かった
顔を上げ、大きく深呼吸をする 夜の孤独と静寂は唯でさえ弱ったびん娘の心を
更に繊細で傷付き易い物にする
強く成らねば… そう思わなければびん娘の心は、この星の重力に押し潰されて
しまいそうだった
その時だったーーーーー

『シャンランララン… 』
"ヒッ!!? "
突如静寂を打ち破り、大音量で室内に木霊する聞き覚えのあるメロディ
自分の立てるそれ以外、聞こえる音などある筈のない空間
そこにけたたましく響く怪音 びん娘は驚きの余り文字通り飛び上がった
思わず暗い室内を見回し、音の源を探す そして己の滑稽さを噛み締めた
幾度となく耳にしたそのメロディ それは勿論、己の首元から流れてきているのだ
だか何故? もう遠隔操作の電波は届かない筈…
『ナナセグチャンス…!』
びん娘の動揺とは裏腹な能天気なボイスが儀式の始まりを告げた
首輪のデジタルセグが変動を始める
"……!? ………!?? "
それはあの日、自分達の運命を弄ぶ悪魔達に叫び、望んだ物だった
その筈だった だか、宇宙の果てでの束の間の安寧と人生の自問自答は
そんな彼女に当時の覚悟を忘れ去らせていた 自分は生き延びた
そして姉の分まで生きる それが今のびん娘を動かす原動力になっていたのだ
0054創る名無しに見る名無し
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2015/07/08(水) 01:16:38.48ID:VdReuJTQ
『7…… 』
最初のセグが停止した びん娘の背筋に悪寒が走る
死を恐れる訳ではない ただ、心の準備が出来ていないのだ
『7…… 7…… 』
2つ目のセグが停止する びん娘の歯がカタカタ音を立てた
震えていた 怖くない筈なのに… お姉ちゃんの所に行きたい筈なのに…
『プルプルプルプル… 』
3つ目のセグが長い変動を続ける 心臓が掴まれた様に痛い
"……た、助けて…… お母さん…… お姉ちゃん…… "
びん娘の震える唇から溢れた微かな悲鳴
そんな… そんな筈は… 怖い……? 怖いよ……! 怖い!! 死ぬのはイヤ!!
びん娘は祈っていた 救いを求め、母に姉に神に…
最早びん娘には、あの日の気丈な姿は片鱗も無かった
そこに居るのは恐怖に戦く、か弱い1人の少女
生への執着を取り戻した、ごく普通のどこにでも居る少女だった
『7…… 7…… ……6』
静寂が再び辺りを支配した 何秒か何分か、びん娘は彫像の様に固まった
まま動かなかった 動けなかった ゆっくりと瞼を開け、己の首元を見遣る
数字は揃わなかった そんな事もあるのか? 何かが彼女の爪先に垂れた
それが顎からしたる膨大な汗だと気付くのに時間は掛からなかった
"…………ふぅ……はぁぁ…… "
破裂せんばかりに膨らんだ肺から漸く息が吐き出された
同時にびん娘の身体から力も抜けて、その場にゆっくりと崩れ落ちた
助かった……の? 誤作動……なの? だとしたら、やはりこの首輪がある限り…
『シャンランララン…!』
"きゃゃぁっ!? "
びん娘の巡らす様々な考察は一瞬で吹き飛ぶ 再び流れる死のメロディ
"な、なんなのぉ!?"
彼女の動揺を他所に勢い良く変動を再開するデジタルセグ
助かった… のではないのか? 誤作動… ではなかったのか?
では一体、一体何が私の身に… この首輪に何か…!?
『7…… 』
"い、嫌…… "
『7…… 7…… 』
"もうやだよ! 止まってぇ! 止まってぇぇっ!! "
『7…… 7…… 8』
"うぅ…… もうイヤ…… 何なの… 何なのよぉ!!"
頭を抱えて絶叫するびん娘
(お願い、夢なら醒めて…… こんな… 今更こんな事って…… )
0055創る名無しに見る名無し
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2015/07/08(水) 01:18:25.78ID:VdReuJTQ
だが、びん娘に訪れた悲劇は悪夢では無く、更には始まりに過ぎなかった
"!?"
突如、曇りガラスから射し込む強烈な光 部屋の中は一瞬で昼間の様に明るくなる
咄嗟に眩い光の中に細めた視線を向ける そこには金色に輝く物体があり、
強い光はそれから発されていた それはゆっくりと揺蕩いながら、
恰も部屋の中を物色するかの様に隅々まで光の帯を走らせる
"な… 何……? "
続けざまの恐怖に、既に声を荒げる気力も失せたびん娘
その蒼白な顔を金色の光が撫でる
怪物に頬を舐め上げられた様な不快感が、びん娘の背筋に悪寒を走らす
不意に静寂を意識した それまで低いハミング音が響いていた様な気がする
同時に射し込む光がその力を失っていき、窓の外で小さな点に収縮すると、
次の瞬間には再び闇が辺りを支配した
"……………… "
びん娘はじっと窓の外を凝視した 何者かの来訪を察した
恐らくは望まぬ客人であろう
『ガチャガチャ… 』
"!?"
玄関のドアノブが激しく捻れ、そして止めれた筈の鍵を造作も無く外した
軋みを上げてゆっくりとドアが開いていく びん娘は喉の渇きを覚えた
"ビン娘… アイタカッタヨ… "
"!!? "
懐かしい声と共にその主がドアの向こうからか細いシルエットを現した
"お…… お姉…… べる娘ぉ!!? "
びん娘の声は完全に裏返っていた そこには紛れもないその人の姿があった
そんな馬鹿な!? べる娘は… お姉ちゃんはあの時確かに…!
"ビン娘… イッショニカエロウ… マタ、フタリデクラソウ… "
"べ、べる娘…… べる娘なの!? 本当に!? 生きて居たの!? "
死んだと思っていた姉との奇跡の再会 つい先刻までのおぞましい出来事など、
一瞬で頭の中から掻き消えていた
"べ、べる娘〜〜〜!!"
否、本当は消えてはいなかったのだろう だからこそ、懐かしいその姿に
心の箍が外れたのだった 何年ぶりかの歓声を上げ、飛び跳ねる様に
べる娘に抱き付くびん娘
"あ、あ、あ、会いたかった… 会いたかったよ…… べる… 娘……!?"
だが、見詰め合うべきべる娘の瞳には光が無かった 生気が無かった
漆黒のガラス玉… それは比喩では無く、実際の質感としてそうであった
0056創る名無しに見る名無し
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2015/07/14(火) 18:36:25.68ID:SwJr/fdK
"べる…… 娘……? "
混乱が不安を呼び戻す びん娘には最早、目の前の彼女に姉の息吹きを
感じる事が出来なかった
"ハッハッハッハッ… "
"ヒッ!? "
開いたままのドアの向こうから突如響いた笑い声
べる娘は無意識に飛び退る
"感動の姉妹の再会… 堪能させて頂きましたよ "
闇の中から姿を現したのは1人の中年の男だった
細い身体に高い上背、そこに濃紺のロングコートを纏わせる優男
長い前髪の間から覗く鋭い眼光と歪な笑顔
べる娘の背中越しに向けられたその不気味な表情に、びん娘は思わず身震いした
"初めまして… でよろしいのかな? 貴女のお話はお姉さんから伺っていましたよ "
"…………?"
びん娘は必死に状況を飲み込もうと努力した
だが、目の前の人形の様な生気の無い姉の姿と不敵な男の存在、
立ち続けに起こる怪異を結び付ける事が出来なかった
"申し遅れました 私、フリー嬢飼育施設長のクニモトと申します "
"!!!"
"伝説のカーニバルランク、びん娘嬢… 遥々お迎えに上がりましたよ…! "
"い、いゃぁぁぁぁぁっ!!"
びん娘の中で点と線が繋がった 心の奥底では首輪が鳴ったその時から
繋がっていたのかも知れない ただ、それに気付きたく無かったのかも知れない
男の浮かべる不気味な笑みはびん娘には悪魔のそれに見えた
"さぁ… 私達と帰りましょう 貴女の身体の予約は3年先まで
埋まっているのですよ "
"嫌… 嫌、イヤイヤイヤッ!!"
こんな日が来る可能性を全く否定していた訳ではない
ただ、例えその日が来ても、精一杯逃げて、力一杯抵抗して、そして最後は潔く死を選ぼう
そんな覚悟を胸に秘めていた それが生き延びた自分の務めだと…
だが、実際にその日が来てみれば、自分は死に怯え、ただ震える事しか出来ない
情けのない存在でしかなかった
ただ1日でも長生きして、少しでも幸せにありつきたいと願う、
鈍愚な恥さらしでしかなかった そう自分を責めるしかなかった
男が手にした小さなスイッチを押した
『シャンランララン… 』
"ひぃぃぃぃぃっ!!?"
0057創る名無しに見る名無し
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2015/07/14(火) 18:38:51.28ID:SwJr/fdK
首元のデジタルセグが三度変動を始めた
"使えないなら殺すだけですよ "
男が歪んだ口角を更に歪に吊り上げて見せた
"お、お姉ちゃん…! た、助けて…!"
震える声で未だ入口に佇むべる娘に助けを求めた
だが、べる娘の生気のない瞳はびん娘を捉えず、中空をただぼんやりと見詰めるのみ
"残念ですがお姉さんに自我は存在していません…
それなりに努力はしましたが、脳梁と前頭葉の一部しか再利用出来ませんでしたよ
一応、同情はしていますよ… 起爆させた当人としてね フハハ…!"
"………………お姉…… ちゃん…… "
びん娘は再び己の無様を激しく嫌悪した冷静に考えれば分かる
あの閃光の中に消えたべる娘が生きてる筈などないのだ
あのガラスの様な瞳は正に作り物だったのだ
"こ、殺せぇぇぇ…! 早く… もう殺してぇぇぇっ!!"
絶望がびん娘の心をほんの少し強くした 否、更に弱くしたとも言える
死だけがこの狂気の現実から逃れる唯一の術だと理解したのだ
"ふふっ 死にたい者を殺すなど何の面白味も無い… "
『7…7…5… 』
呆気なくセグは外れて停止した びん娘の魂の叫びにも男は顔色1つ変えず、
コートのポケットからもう1つのボタンを取り出す
"では、貴女の代わりに… "
『シャンランララン… 』
再び流れる死の調べ その源は探すまでもなかった
目の前に佇むべる娘の首元で、かつて彼女の命を奪ったそれが、
あの日と同じ様に旋律を奏で始めた
"……べる娘!"
目の前の彼女は魂を持たない人形…
それを理解しても尚、再び閃光の中に姉を見殺しにしたあの恐怖が甦る
更にそんなびん娘の心を見透かした様な男の残忍な言葉が、
びん娘の弱った心を完全に打ち砕く
"お姉さんに自我はありませんが、ちゃんと生きてますよ!
お姉さんの脳の残骸はキチンと貴女の声に反応している筈です
見殺しにするのですか? あの日、黒焦げでボロボロだったお姉さんは
必至に生きたい、死にたくないと願っていましたよ ハッハッハッ!"
"やめろぉぉぉっ!! やめてぇぇぇぇっ!! お願いぃぃ… やめてよぉぉぉ…… "
0058創る名無しに見る名無し
垢版 |
2015/07/17(金) 02:42:52.19ID:4Q7lthKS
最高っす!もっとおねげえします!
0059創る名無しに見る名無し
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2015/07/22(水) 20:08:01.72ID:P6QkxKi2
"やめて欲しけりゃ大人しくフリー嬢に戻れよ糞アマ!!!"
耳をつんざく男の怒号 正に鬼の形相、先刻までの紳士ぶった姿はもうそこに無かった
全て理解できた この男が姉の欠片を集めて残酷な人形を造った理由…
所詮、自分などが幸せになれる筈など無かったのだ
勝てる筈などない相手 一度フリー嬢となった者に自由も権利もある筈が無いのだ
"う……うぅ…… うぅぅ……"
両瞼から零れた出た涙を追う様に、びん娘はその場に崩れ落ちた
"理解はできたか、ズベ公? 血を吐かされなかっただけ感謝しろよ "
吐き掛けられる男の侮蔑にも、最早反応を示さないびん娘
"どぉれ… それじゃ、検品といきますかね…"
そう言うと男はコートを脱ぎ捨て、ズボンのベルトを緩めた
"!?"
"半年…… ぶり位だからな… きちんと『商品』としての価値が保ててるかを
確かめるのは、責任者として当然の務め…… "
"痛いっ!?"
男はその突然の行動に戸惑うびん娘のツインテールの片方を乱暴に掴み上げる
無理矢理立たせられるびん娘 空いた男の片手がびん娘の形の良い顎をしゃくり上げる
"さぁ やって見せなさい カーニバルランクのサービスを…!"
ゾッとする程の冷たい笑顔でびん娘の顔を覗き込む男
びん娘は男の要求を理解し、全てを観念し
てゆっくりと自らの纏うネグリジェの
肩紐をずらして行った

ーーーーーその時だった

"ぐわっ!?"
鈍い衝撃音の後に男の顔が歪んだ そのまま崩れ落ちる男の背後に彼女が居た
"えっ……!?"
スツールの足を掴んで佇む彼女… 男の背後から脳天に強烈な一撃を
食らわせたのは、魂の無い人形の筈だった彼女… べる娘だった
"お… お姉…… ちゃん…!?"
"ビンコ…… ニゲテ…… "
相変わらず感情の無い無機質な表情 だが彼女の口から出た言葉は、
紛れも無い妹の身を案ずる姉のそれであった
思考機能は失われた… 男の言葉を信じ無くとも、あの閃光と衝撃の中に消えた
彼女の身を冷静に思えば、いくら無学なびん娘でも理解せざるに得なかった
たがら今度は、べる娘の取った行動と口を突いて出た言葉を、
咄嗟に理解する事が出来なかった 無理も無い
何せ全ての元凶とも言うべきこの男ですら、不意を打たれた訳なのだから…
0060創る名無しに見る名無し
垢版 |
2015/07/22(水) 20:13:57.87ID:P6QkxKi2
無機質な漆黒のガラス玉と、熱い涙に潤む灰色の瞳…
それでも姉妹は確かに視線を交わした それで全てが通じた… そんな気がした
少なくとも、びん娘はそう思った
"お姉ちゃん…… "
首輪の下品な光の点滅にべる娘の白い頬が色鮮やかに染まる
不思議と悲しみも絶望も無かった 寧ろ、姉と再び巡り会う事が出来た、
この歪で悪意に満ちた奇跡に感謝すらしていた
何故直ぐに足元に踞る男に止めを刺さなかったのか、という問いは余りに過酷であろう
今、びん娘の頭にあるのは姉に掛けるべき次の言葉を見つける事だけだった
だがそれはやはり最善な判断では無かった
"……の野郎!!"
"!?"
突如びん娘の視野を黒い影が覆う そして次の瞬間、鈍い衝撃音と共に
文字通り人形の様に吹き飛ぶべる娘の姿
"なんで勝手に動きやがる!? ふざけた真似を!"
後頭部を擦りながら毒付く男 所詮は小娘の与えられるダメージでしかなかった
壁際まで飛ばされ、力無く横たわるべる娘に男は歩み寄る
"まさか妹を助けようと…? お前に思考能力など無いはず…!"
そう言うと腰に巻いたホルダーから銃を抜き、その先をべる娘に向ける
"だが、俺に歯向かう奴は…! どのみちお前はもう用済みだ…! "
男にとって此処にいる二人は自分に逆らう筈の無い、従順な存在の筈だった
だからべる娘の行動に衝撃を受けたし、背後のびん娘の存在にも警戒など配らなかった
"ぐわっ!?"
今度は男が吹き飛んだ 渾身の体当たり
そのままびん娘は倒れたべる娘を肩に抱き、開いたままの玄関を抜けて行く
"はぁ、はぁ!"
疾走とは程遠い 時期に追いつかれるだろう それで構わなかった
びん娘は笑っていた 気が触れたのではない 嬉しかったのだ
もう1人で逃げたりしない これで良い こうしたかった
一緒に死のう…! 自由に向かって死んで行けば、きっと来世は自由に生きる事が
出来る筈…! 願わくば、べる娘… また貴女と姉妹として生まれたい!
0061創る名無しに見る名無し
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2015/07/25(土) 08:54:05.84ID:fkt+O0BK
"あははっ あ〜〜あ 情けねぇな俺… 面倒くせぇ! もういい…!
お望み通り、姉妹仲良くミンチにしてやらぁ ! はははっ!"
背後から男の嘲りが聞こえる 起爆装置を高々と掲げる男の姿が脳裏に浮かんだ
べる娘の腰に回したびん娘の手に、べる娘の手が触れた
握られた気がした びん娘も握り返した
"お姉ちゃん… ありがとう…"
その場に立ち止まり、べる娘を包容した 彼女の首のデジタルセグに
今、7がテンパイし、一際大きな煽りを辺りに響かせた…



(ターゲット確認…!)



『ドンッ!』
"ぐわぁぁぁぁぁっ…………"
"宇宙人ゲット〜〜〜!!"
"!!?"
炸裂音と閃光の代わりに響いた鈍い銃声、男の断末魔と女の絶叫
思わず向けた視線の先で、胸から鮮血を噴く男が虚空を掻きむしり、
苦悶の表情で膝から崩れ落ちた
"地球の平和はこのスナイパイ、ミウが守る! 大勝利〜!"
闇の中から小柄な土着生物の女が現れた 手にした原始的な火薬銃
どうやらこの女が男を背後から狙撃したようだ
びん娘は呆気に取られたまま立ち尽くす
この星の知的生物は大抵びん娘に友好的だったが、この個体とはとても
そうとは思えない 「宇宙人」に対する激しい敵意 ハンターに親でも殺されたか…
次は私達の番だろう それでも良い あの憎い男を葬ってくれたのだ
心残りも無くなった 今度こそ、2人で一緒に天国に…
"これがユーホーなの…!? 凄い…! 私、歴史の現場に立ち会っている…!"
野蛮で未開な女が興奮の声を上げて近づいてくる
生まれ変わってもこんな原始人には成りたくないな…
そんなたわいも無い事を想像して、びん娘の口元が少し緩んだ
"……ひぃっ!? う、嘘でしょ…!?"
突如女が取り乱した そんなに自分達の存在が意外だったのか…
憎い宇宙人に自分と同じ位の女がいて動揺でもしたのか…
"……ちょっとこれ…… 人間じゃない!?"
女が動揺した原因は倒れて事切れた男だった
"嘘でしょ…!? 私… ひ、人を殺しちゃった…!! 何で…!? てっきり宇宙人かと……!"
どうやらこの女は倒れた男を自分の仲間と誤認している様だ
0062創る名無しに見る名無し
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2015/07/25(土) 08:56:03.36ID:fkt+O0BK
"や、やややや… 嫌…! 刑務所になんて入りたく無い!!"
そう言うと女はずるずると後退りを始め、数瞬後には振り向き全力疾走で
闇の中に消えて行った
一体何者だったのか… 何がしたかったのか…
夜の森に静けさが戻り、倒れた男と姉妹だけが残された
"………ねぇ べる娘… どうしようか…?"
腕の中の姉に頬を寄せて呟いた 本当にどうしてよいか分からなかった
唐突に予期せぬ形で訪れた自由…
"……ほんの少しだけ…… 一緒に「幸せ」を探して見ようか……?"
べる娘は何も答えない ただ満天の星空が2人を優しく静かに照らしていた





『ピンポ〜ン… 』
"すいませ〜ん 佐川急便で〜す! ……すいませ〜ん!"
1日中閉めきられた寝室のカーテン ベッドの上で頭から布団を被るミウたんは
身動ぎ一つしない ミウたんの脳裏には、玄関先に屯するスーツ姿の刑事の姿が
浮かんでいた
"嫌…… 嫌…… あれは間違いなの…… 刑務所になんて入りたく無い…… 私は無実……"
0063創る名無しに見る名無し
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2015/12/17(木) 02:24:05.04ID:8Bhg6Etd
人里離れた山奥の、更に奥のずっと奥…
今はもう誰の記憶にも残っていない、小さな廃村がある
朽果てた藁葺き屋根の家が数件
それらを結んでいた村道は、背丈程もある深い雑草に覆われていた
最後の村人が姿を消したのは、どの位前の事だったか…
今はただ緩やかな時の流れが、小川のせせらぎと共に静かに時節を移ろわせて行くのみ……

の筈だった

『ぽんぽこぽこぽん、ぽこぽこぽん…』

何処からともなく聞こえてきた、その余りにもふざけた調べが、清寥とした廃村の空気を掻き乱す

「にんげんさんの匂いがするよ」

ヒメムカシの穂先が揺れる

「にんげんさんが帰って来るよ」

セイタカアワダチソウの茂みが擦れ合う

廃された筈のその村で、確かに聞こえた人の声…
一陣の風が吹き抜け、雑草の原にに波紋を描くと、何者か達の気配は消え、再びそこは先刻までの静寂を取り戻した





「サッポロ一番、やっぱりベースはこれよね!」
ミウたんは手にした"サッポロ一番"と印字された袋麺の空袋を振って見せる
シャカシャカと軽い摩擦音を空袋が奏でる
「ミウ、そいつで一体、何袋分あるんでぃ?」
「これで8袋分かなぁ?」
「おいおい、随分手間が掛かるんだな」
「そうでもないわ サッポロ一番は日本で一番ありふれた袋麺なのよ だいたい何処の公園のゴミ箱にも1つ位はあるわ(ミウたん談) それにサッポロ一番は加工がおざなりだから、砕け易くてお溢れにもありつけ易いのよ(ミウたん談)」
「ミウは相変わらず、食い物に関しては博識だぜぇい」
夜の戸張の降りた河川敷 サラサラと流れ行く水の足音だけが木霊する
葦原の開けた一角、小さな焚き火を囲む3つの影…
懐かしいこの場所で、懐かしい顔に会いたくて、ミウたんは遥々やって来たのだ
0064創る名無しに見る名無し
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2015/12/17(木) 02:25:36.38ID:8Bhg6Etd
「味の決めてはやっぱり… やっぱりチキンラーメン!」
ミウたんは後ろに置いた南京袋から、新たに空袋を取り出す
「チキンラーメンは人気が無いから(ミウたん談)なかなか手に入らないんだけど、麺自体に味付けがしてあるから袋滓麺には欠かせないわ」
そう言うと"チキンラーメン"とプリントされた縞模様の袋を傾ける
パラパラと乾麺の欠片がサッポロ一番の袋の中に溢れ落ちる
「さ・ら・に… 今日は私からコレを差し入れよ!」
得意気に鼻の穴を広げてミウたんが次に取り出したのは"味塩コショウ"
それを二種類の乾麺の欠片が混ざりあったサッポロ一番の袋に一振りする
「ミウは気が利くでぃ そいつは獲物の調理にも役立つんでぃ」
「でしょ!? そう思って二人の分、買って来たんだ」
「なんだ、結局金を使わせちまったじゃねーか」
「そんな水臭い事言わないの!」
ミウたんは焚き火に掛けられた空き缶を軍手で掴む
そして湯気の立つ中身を空袋にゆっくりと注いでいく
ミウたんが編み出した簡易食【袋滓麺】
今夜はそれを、河川敷に暮らす二人への御披露目を兼ねてミウたんが振る舞う
なんと言っても元手が掛からないこの料理は、フリーランサーである二人には嬉しい筈だ
気に入って貰えたら嬉しい…
そんな思いでミウたんは、袋の中身を箸代わりの椿の枝でかき混ぜる
袋の中から小生意気にも、一端のラーメンの匂いが漂う
「よし、出来たわよ!」
「旨そうじゃねーか」
「ラーメンなんて10年振り位でぃ!」
ミウたんはふやけて柔らかくなった麺を、皿代わりの空袋に取り分ける

「「いっただきま〜す!!」」

弾んだ声が河川敷に響く
「旨いっ!」
「懐かしい味でぃ!」
二人の反応は上々だ
だが、ミウたんは椿の枝に絡めた滓麺を掲げると、黙ってそれを見詰める
「どうしたんでぃ、ミウ?」
その声にミウたんはうっとりした表情で答える
「ほら、こうして夜空の星々に照らして見ると、スープを纏った麺がキラキラ輝いて… まるで宝石の首飾りみたい……」
0065創る名無しに見る名無し
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2015/12/17(木) 02:27:02.40ID:8Bhg6Etd
遥か白鳥座の方角に向けられた滓麺は、コクーン星雲の電離水素が放つ淡い薄紅色と、デネブとアルビレオの目映い輝きに彩られて、さながら大宇宙に浮かぶペアシェイプのネックレスの様だった
「ミウはあの頃とちっとも変わらねぇな」
3人の底抜けに明るい笑い声が、穏やかな川の流れに伝って、広大な葦原に広がっていく…

川辺を縄張りにする、フリーランサーのハンター達
そのハンターギルドの重鎮、インチキべらんめぇ口調が特徴の元花火職人ドンさん
ゲンさんの相棒、大きな体駆の持ち主、元大工のゲンさん
そしてこけしアーティスト志望の統失持ち、ミウたん…
それぞれが止むに止まれぬ訳あって、流れ着いた川辺の土手…
短くはあるが同じ時を過ごした3人…
時に大きな猪と格闘し、時に不良中学生と対峙した
日常の中の非日常を好んで生きるミウたんにとっても、この川原で過ごした数週間の思い出は、かけがえの無い大切な宝物だった
ミウたんにとって此処は紛れもない第三の故郷ななだ
川を跨ぐ産業道路の大橋の橋梁 行き交う車のタイヤが唸り声を響かせる
今、その袂のドンさんの塒で、藁枕を並べ横になる3人…
その姿は紛れもなく、一つ屋根の下に暮らす《家族》の姿だった

「明日はミウの力を借りて、久々の大物を狙うんでぃ」
「狩りなんて久しぶり〜 楽しみだわ〜」
「おいミウ… 遊び半分で事に当たれば、大きなツケを払う事になるぞ」
「分かってるわよ〜 でも、またみんなと一緒に狩りに行けるなんて、まるで夢みたい……」
数ヶ月ぶりに《帰郷》を果たし《娘》に対し、ドンとゲンは大物狩りを提案した
狩りは自給自足を是とするハンター達にとって生活の礎である
時に協力し、時に競い合い、そうして3人を結び付けたのも狩りであった
ターゲットは最近この河川に住み着いたクロコダイル…
何処から逃げ出したのか、おおよそ5メートルもの全長を誇る大物
狡猾で狂暴な性格のそれは、既に河原のフリーランサーを幾人もその胃袋に納め、
討伐に向かった腕利き達を何人も帰らぬ存在にしていた
0066創る名無しに見る名無し
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2015/12/18(金) 02:11:31.24ID:fZ/nRJab
ドンとゲンも、この大物のとの対峙の時が近づいている事を感じていた
河原でのフリーランサー暮らしを続ける為には、避ける事のできない戦いであった
そんな時に姿を現した、嘗てのギルメンであるミウたん
宿命の時を感じるのも無理は無かった
何故を危険な戦場に《愛娘》を引ふき連れて行くのか…
堅気に生きる者達の常識に照らせば、それは狂気の沙汰以外の何物でもないだろう
だが、河原に生きるハンター達にとっては、狩りとは生きる事そのものなのである
娘を歓待する宴の肴を得る為、何より明日を生きる糧を得る為、彼らは躊躇なくミウたんに加勢を求めたのだった



「ミウよ… 寝ちまったのかでぃ……」
鈴虫と鳴き声と微かな寝息が、アスファルトを擦るタイヤの音の合間に聞こえて来る
ドンは橋桁の底を眺めながら続けた
「ミウよ… おめぇはもう、ここに来ちゃならね〜でぃ……」
一陣の風が、土手の青草を撫でて川を渡っていく
「おめぇには、未来があるんでぃ… 俺達とは住むべき世界が違うんでぃ……」
「……スゥ…… ……スゥ……」
傍らに眠るミウたんは、静かな寝息で答える
ドンは構わず続ける
「おめぇが本当に狩らなきゃいけねぇ相手は… ドスファンゴでもクロコダイルでもねぇ… 早くいい男を射止めて、女の幸せを手に入れるんでぃ…… 明日の獲物で開く宴が… 別れの盃代わりでぃ……」
産業道路を行く長距離トラックが響かせたけたたましいクラクションで、ドンさんの言葉の最後は掻き消された
0067創る名無しに見る名無し
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2015/12/19(土) 18:41:37.47ID:YknBZtDP
河原に流れ着いた竹と蛸糸で自作した短弓、それが彼女がMー16と呼ぶ、ミウたんの得物である
「よぉ〜し!」
弦を指で弾いて、久しぶりの感触を確かめるミウたん
このMー16から繰り出す必殺のスナイプショットで、嘗ては "河原のハイエナ娘" の異名を轟かせたものだ
「そろそろ仕掛けるでぃ!」
リーダードンの掛け声で、一同は朝霧に霞む丸石畳に一歩を踏み出す
川面を渡る、ひんやりと張り詰めた空気が肌に心地良い
多くは語らずとも、その手筈は皆、身体で理解できている
昔と同じ、ゲンが煽って、ミウが反らして、ドンが仕留める…
まさに板に付いたコンビネーション
大きく川幅が広がり、流れが澱む葦原の手前、ドンは立ち止まり二人に目配せする
黙って頷き、それぞれの持ち場に向かう
無言で朝霧の中に姿を消して行く各々の姿は、まさに歴戦の兵とも言うべき風格を漂わせていた

ドンは得物の三尺手筒に五寸玉を仕込む
尿から作った硝石、煙草の吸殻、薪の消し炭で拵えた強烈な一発
こいつで葦原から追い立てられてくる獲物に必殺の一撃を食らわすのだ
昔取った杵柄 仕掛け花火のドンは、この大川の畔で尚健在である

昔取った杵柄ならゲンも負けてはいない
ぶちかましのゲンの異名の象徴、得物の大木槌は大木の切り株を連想させる
今、その大木槌の柄を握り、静々と葦原を掻き分けるゲン
やがて開けた視線の先、川岸に堆く積み上がった丸石の小山見えた
間違いない…
ゲンはそこから漏れる禍々しいオーラを感じ取ると、その小山の頂きに大木槌を振り上げる
「フンッ!!」
気合いと共に降り下ろしたそれは、火花と衝撃音を残し、一抱えもある丸石達を四方に飛び散らす
大きなな黒い影が、矢の様な速度で川の中に飛び込んだ
巨大な波飛沫と波紋が川辺に広がる
百戦錬磨のゲンも、その余りの威圧感に、冷たい汗が背中を流れて行くのを感じた
「ミウ……!」
例えようの無い胸騒ぎがゲンの胸を締め付けた
0068創る名無しに見る名無し
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2015/12/19(土) 18:41:38.22ID:Z0j5LteN
河原に流れ着いた竹と蛸糸で自作した短弓、それが彼女がMー16と呼ぶ、ミウたんの得物である
「よぉ〜し!」
弦を指で弾いて、久しぶりの感触を確かめるミウたん
このMー16から繰り出す必殺のスナイプショットで、嘗ては "河原のハイエナ娘" の異名を轟かせたものだ
「そろそろ仕掛けるでぃ!」
リーダードンの掛け声で、一同は朝霧に霞む丸石畳に一歩を踏み出す
川面を渡る、ひんやりと張り詰めた空気が肌に心地良い
多くは語らずとも、その手筈は皆、身体で理解できている
昔と同じ、ゲンが煽って、ミウが反らして、ドンが仕留める…
まさに板に付いたコンビネーション
大きく川幅が広がり、流れが澱む葦原の手前、ドンは立ち止まり二人に目配せする
黙って頷き、それぞれの持ち場に向かう
無言で朝霧の中に姿を消して行く各々の姿は、まさに歴戦の兵とも言うべき風格を漂わせていた

ドンは得物の三尺手筒に五寸玉を仕込む
尿から作った硝石、煙草の吸殻、薪の消し炭で拵えた強烈な一発
こいつで葦原から追い立てられてくる獲物に必殺の一撃を食らわすのだ
昔取った杵柄 仕掛け花火のドンは、この大川の畔で尚健在である

昔取った杵柄ならゲンも負けてはいない
ぶちかましのゲンの異名の象徴、得物の大木槌は大木の切り株を連想させる
今、その大木槌の柄を握り、静々と葦原を掻き分けるゲン
やがて開けた視線の先、川岸に堆く積み上がった丸石の小山見えた
間違いない…
ゲンはそこから漏れる禍々しいオーラを感じ取ると、その小山の頂きに大木槌を振り上げる
「フンッ!!」
気合いと共に降り下ろしたそれは、火花と衝撃音を残し、一抱えもある丸石達を四方に飛び散らす
大きなな黒い影が、矢の様な速度で川の中に飛び込んだ
巨大な波飛沫と波紋が川辺に広がる
百戦錬磨のゲンも、その余りの威圧感に、冷たい汗が背中を流れて行くのを感じた
「ミウ……!」
例えようの無い胸騒ぎがゲンの胸を締め付けた
0069創る名無しに見る名無し
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2015/12/20(日) 17:32:25.78ID:Hj1mwoR1
飛沫を打つ音がミウたんの耳にも届いた
(大きい…!)
元ハンターとしての経験が、ミウたんの脳内に警鐘を鳴らす
ニセアカシアの木陰に身を潜ませたミウたんは、緊張に震える手で、Mー16の弦に笹竹の矢を番える
どんな凶大な生物にも必ず弱点はある
そこを見極め、確実に突けるか…
戦いは肝は常にシンプル、それがミウたんの学んだハンターの極意だ
倒す必要はない
ゲンさんが煽った獲物を、ドンさんの元に反らせばよいのだ

『ガボッ』

何かが水面を打つ音がした
次いで湿った川縁の泥を踏み締める音がする
奴が来た…!
ミウたんは覚悟を決めて木陰から身を乗り出す

「うしょぉぉぉぉっ!?」

思わず上げたミウたんの悲鳴は裏返る
デカイ…! デカ過ぎる!
それはミウたんの記憶にある、水族館で見たそれとは桁違いの化け物だった
(こんなの勝てる訳ないでしょょょっ!?)
朝日を浴びて黒光りする重厚な鱗…
無数に飛び出す、小刀の様に鋭く尖った牙…
金属質の鉤爪を備えた太い四肢が、濡れた大地に深い足跡を残す…
まさに恐竜、まさに怪獣
"死の予感"
その鈍い光を湛えた肉食獣の双瞼と視線を混じり合わせた時、ミウたんは小学三年生の夏にカツオノエボシの群れに飛び込んだ時以来なるそれを感じた
化け物の一歩は予想外に速かった
「ひっ!?」
獲物にならんとしているのは間違いなく己の方だった
激しく大地を踏み鳴らしながら、化け物はミウたんとの距離を詰める
「いゃぁぁぁぁぁぁんっ!!」
半年に及ぶシャバ生活がミウたんのハンターとしての魂を曇らせていたのも事実だろう
だが相手が悪過ぎるのもまた事実だった
渾身の逃走は懸命な判断と言わざる終えなかった
0070創る名無しに見る名無し
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2015/12/21(月) 20:15:02.12ID:E5NtpbOG
うわぁぁぁぁっっっ!!」
闘争心の放棄は恐慌を生み、無様な被捕食者としての姿を河原に晒す
だがしかし、化け物の力強い足音は瞬く間にミウたんとの距離を縮める
クロコダイルはミウたんの想像の遥か上を行く健脚だった
(もうダメ〜〜〜!!)
身体中の穴から様々な体液を噴出しながら、ミウたんは次の瞬間、己の臀部を捉えるであろう化け物の牙を想像して、その激痛に身構えた
(お母しゃん! お父しゃん! しぇん輩! 麗羅たん! ゲンしゃん! ドンしゃん!)
丸石に足を取られ、壮大に転けるミウたん
そのまま頭を抱え丸くなり、愛する者達の名を心で連呼した

「…………?」

痛撃は訪れ無かった
直近にまで迫ったかに思えた怪物の足音、それはミウたんの背後から急速に遠ざかる
(た、助かったの!?)
顔を上げ振り向くミウたん
確かに、彼方の笹竹の原を猛スピードで掻き分ける、漆黒の怪物の横面が見えた

「ふぅぅぅぅぅ…………」

まさに風船から空気が抜ける様に、肺の中の二酸化炭素を吐き出すミウたん
「ほぇぇ 生きとる…」
両手を宙空に捧げ、五体が尚も満足である奇跡を噛み締める
緊張と共に身体の力が抜け、そのまま丸石畳に倒れ込む……ミウたんの視線先に、戦慄の光景……化け物がミウたんを見逃した理由が飛び込んでくる
「!!」
化け物は気紛れを起こした訳では無かった
その漆黒の岩弾が向かう先、笹原の開けた先に座り込む、セーラー服の少女!
「に、逃げて!!」
ミウたんは思わず絶叫した
この狡猾な化け物は、より確実に仕留められる獲物として、ターゲットをミウたんから彼女に切り替えたのだ
そしてその化け物の判断には本能的な裏付けがあったのだ
腰が抜けたかの様に、迫り来る化け物を凝視しながらも逃げ様としない少女
否、実際には身を捩り逃げ様としていた
化け物から遅れる事数瞬、それが叶わぬ理由をミウたんも漸く理解した
彼女の右足を捉えて離さぬ蔦草の輪
フリーランサーが仕掛けた、小型動物捕獲用の罠
それが河原に、彼女の死へのプレリュードを響かせていたのだ
0071創る名無しに見る名無し
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2015/12/22(火) 16:10:00.60ID:76+o1yzX
ミウたんは飛んだ

葦原を撫でる疾風の如く、その身体は化け物の後を追った
恐怖は無かった
少女を救おうとする気持ちでも無かった
偽善では無い 無意識だったのだ
否、厳密に言えばそれは…… ハンターの本能だった!

「そこねっ!!」

勢い良く地面を蹴り、大きな跳躍を見せたミウたんは、その最頂点でMー16の弦を弾く
無駄の無い一連の動きの中でつがえられていた竹の矢は、今まさに少女の柔らかな太ももに牙を突き立てんと大顎を広げた化け物の右目に吸い込まれる

『ヴォォォォォッッッ』

まさに恐竜の咆哮
どんな強靭な生物にも必ずあるその弱点を見事に射抜かれ、今それは巨大な体駆を丸石畳にのたうち回す
だがミウたんのハンターとしての本能は、この戦いの決着がまだ着かぬ事を察していた
この化け物をこの程度のダメージで倒せる筈がない
鮮やかな前転で着地の衝撃をいなすと、その勢いのまま、連続でんぐり返しで暴れる化け物の脇をすり抜ける
「んぎゃぴっ!」
途中、丸石の一つに後頭部を強かに打ち付けるがご愛嬌
そのまま化け物と、未だ恐怖に固まる少女の間に颯爽と割って入る
そして彼女を背中に庇いながら、ミウたんは凛々しく立ち上がった
先ずは化け物の標的を自分に戻さなければ…
ミウたんは再びMー16に矢をつがえる
動きを止め、冷静さを取り戻したかに見える化け物は、無事な右目に復讐の標的を確かに捉える

『ギュュォォォォォェッッッ!!』

向けられる強大な敵意
(ゴクリ……)
甦った筈のミウたんの闘争本能が再び揺らぐ
(や、やっぱり怖い…!)
余りに巨大な補殺者の前に、ミウたんのつがえる竹矢は只々無力に見えた
ミウたんは腰を低くすると、一度矢を外し、空いた手で地面を撫でる
(あった…)
少女を拘束する蔦草の罠 それが結ばれた棒切れを握り、渾身の力で引き抜く
まさに火事場の馬鹿力 地面に刺された棒切れはズリズリと姿を現す
「逃げて!」
0072創る名無しに見る名無し
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2015/12/23(水) 17:41:06.57ID:XGuFvmzz
ミウたんは背中越しに叫ぶ
何はともあれ、彼女を逃がさなければ行動の自由も儘ならい
背後で少女の動く気配がする それと同時に化け物も動いた
獲物を逃がさんとする本能か、電光石火の勢いでミウたん達との間を詰める
(は、早い!!)
そのスピードはミウたんの想像を越えていた
必死に矢をつがえるが…
(間に合わない!)
化け物はその大顎を広げてミウたんに襲い懸かる
唾液に濡れた長い牙が、朝日を浴びてギラギラと輝く
今度こそ終わった… ミウたんはスローモーションの様なその光景を目に焼き付けていた

『パァァァァァン!!』

その時、河原に響く乾いた炸裂音
大顎を広げた目の前の化け物が、小さく跳ねた様に見えた
同時に熱気を帯びた風がミウたんの頬を撫で、続いて火薬の匂いがミウたんの鼻を擽った

「ドン… さん…!!」

その姿は見えずとも、ミウたんの脳裏には、煙吹く得物の手筒花火を抱え、仁王立ちするドンさんの姿が浮かんでいた
次の瞬間、化け物はくるりと背を向け猛突を開始する
予想通りその背中は煤け、鱗が禿げ落ち、血が滲んでいた
そしてその向かう先には、ミウたんの予想通り色褪せた法被姿のドンさんの姿が…
(助…… かった……)
ミウたんの身体から再度、へなへなと緊張と力が抜けて行く
背後から浴びせられた強烈一撃に逆上し、復讐せんと突進する化け物…
だが、ミウたんはドンさんの身を案じる事は無かった
戦いは終わった
フォーメーション2…
ミウたんが釣って、ドンさんが煽って…
笹原から飛び出た影が、ドンさんとの距離を詰める化け物に飛び掛かる
「フンッ!」
大木槌の懇親の一撃、それは見事に化け物の脳天を粉砕する
ゲンさんが仕留めた
0073創る名無しに見る名無し
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2015/12/24(木) 17:48:38.04ID:BL2Ye4Lx
「ふぅ… 間一髪って所だったでぃ?」
「大丈夫か、ミウ? いくら何でも無謀だぞ!」
「ホントでぃ! あれ程独り善がりな戦いはするなと言った筈でぃ!」
それぞれの得物を撫でながら、2人はへたり込むミウたんの元に歩み寄る
「で、でも… あの子を見殺しになんて出来ないよ!」
確かに無謀だったかも知れない
だがミウたんに自責の念は無かった
「「……あの子」でぃ?」
互いの顔を見合わせる、ドンとゲン
「ここで罠に掛かってた女の子よ!」
ミウたんは背後を振り返る
だが、その広い河川敷に3人の他に人影は無かった
「………………」
あの状況である
逃げて、と言われて全力で逃げたのだろう
別にお礼など欲しくはない
あの子が無事だった
それだけでミウたんの心には、ハンターとしてのえもいわれぬ充足感が広がっていったのだった

パチパチと炎が薪を砕いていく
戦いすんで日が暮れて…
夜の帳の降りた河川敷の一角、その炎に照らし出される幾つもの影
仕留めたクロコダイルをぶつ切りにして網で炙り、みなで小銭を出し合って購入した大五郎を煽る
大川の河川敷に平和が戻ったのだ、ミウたん達ははその喜びを自分達だけの物になどしない
普段はライバルであるハンター達を招いての祝勝会
明日をも知れぬフリーランサー暮らし
夜が明ければまた、僅かな糧を巡って生き馬の目を抜く様な厳しい生存競争が始まるのだ
一夜限りの儚い安らぎ
それでも、いや、だからこそ、3人は… 河原に生きるハンター達は、今夜のこの宴を大いに楽しんだ
ある者は黙々と不足したカロリーを補う
その陰でゲンさんは、放った止めの一撃を身振り手振りで大袈裟に再現して見せる
嘗て一世風靡の二軍だったと嘯く向こう岸に住まう男は、陽気なコサックダンスを披露して皆を沸かせる
長年ハンターコンビを組んだという相方をこの化け物に因って失ったという男は、皆に背を向け、一人夜空に杯を捧げていた
0074創る名無しに見る名無し
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2015/12/25(金) 22:05:17.77ID:lsmpZU2V
そんな思い思いの宴の姿を、少し離れた所から見ていたミウたんは、一人慣れた手つきでクロコダイルを捌くドンさんの背中にそっと近付く
「ドンさん、あたし、もう行くね…」
「!? ……お、おう……」
もう一晩位ゆっくりしていけ… それが自然に言える人生なら、どんなに素晴らしかっただろう……
「……おい、ミウ………」
ドンは昨夜掻き消された決別の言葉を、改めて伝える事にした
それだけが… ただそれだけが… 可愛い『娘』の為にしてやれるただ一つの事…
「ドンさん! あたし、ハンター辞めないからね! また絶対来るからね!!」
ミウたんはいたずらっ子の様な不敵な笑みを浮かべて、そのドンの機制を制した
「ミウ…… おめぇ………」
ドンはもう何も言わなかった
ミウたんも何も言わなかった
堤防を駆け上がった頂でミウたんは大きく手を振る
漸く気付いたハンター達が各々ミウたんに手を振り返し、別れを惜しんだ
一筋の流れ星が夜空で一瞬煌めき、河原に生きる者達を仄かに仄かに照らしあげた



『ぽこぽん……』

その小さな影は、闇の中から遠ざかるミウたんの背中をじっと見詰めていた
0075創る名無しに見る名無し
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2015/12/26(土) 22:12:53.86ID:cwqMd5JV
「……という感じで、貴方の様な方にオススメなんですよ〜 月々僅か3千円で、1ヶ月2回までおは天の損失を完全補填致するんですぅ〜……」

ピンクのベストにピンクのミニスカート
文字通りの一張羅に身を包んだミウたんが夜の街を行く
底の磨り減ったピンクのスニーカー
ミウたんのお気に入りのそれが、鈍い音を立ててアスファルトを叩く
今日も獲物を捕らえる事が出来なかった
街に生きるミウたんの今の生業、保険外交員
聞いた事もない様などマイナーな保険会社だったが、面接も無く、書類審査だけで誰でも入社可能というネット求人の触れ込みに引かれ応募し、早3ヶ月…
未だ契約の一つも取れず、当然給料も得られない
それどころか、インセンティブなんたらという名目で毎月会社に5千円を納めさせられる
そう言えば面接も無かったので、自分の勤めるその会社の場所も知らない…
私は本当に保険外交員なのか…? 本当に会社員なのか…?
人生再起を賭け、空き缶集めと自販機の小銭漁りで何とか蓄えた貯金も間もなく尽きる
1日歩き回って草臥れた重い足を引き摺り、ミウたんは帰宅の途に着く
自動改札を抜け、ホームに滑り込んで来た列車のドアに吸い込まれる
客の疎らな車内、そのシートに腰掛け、ミウたんは対面のガラス窓に写る己を見詰める
このままでは、再び河原での狩り暮らしに戻らざる得まい
だが、それで良いのかも知れない
ミウたんはつい先日の出来事を思い出す
ドンさん、ゲンさん、ハンターのみんな…
貧しくはあったが、生きている実感に溢れていた狩り暮らし…

私が戻りたい所は一体……

込み上げて来る何かから逃れるかの様に、ミウたんは肩掛け鞄の中から今日の夕食、ハムチーズランチパックを取り出す
河原に居た頃はあんなに焦がれたその味
だが、車内で貪る今はそれに何の感慨も得られない
何故かクロコダイルの肉が焼ける匂いを微かに感じながらそれを平らげたミウたんは、疲れからか何時しか手刷りに寄りかかり、静かに夢の中へと引き込まれてて行った…
0076創る名無しに見る名無し
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2015/12/27(日) 21:53:17.91ID:IAr/PxLM
ドアを開けたら冷たい空気〜♪ し〜ろい
息、広がった〜♪

朝日を浴びてキラキラと輝く大海原
それを左手に眺めながら、ミウたんは大きなハンドルを握る
漁港で仕入れた鮮魚を満載して、目指すは街の魚市場
女だてらに颯爽と4トントラックを操るミウたんはみんなのアイドル、人気者だ

さぁ 走り出そう、夜明けの街へ〜♪ 朝が始まる、朝がはじま〜る〜♪

港から並走していたカモメがミウたんに別れを告げ、大きく空へと舞い上がった
仕事はキツいけれども充実した毎日
自分を待っててくれる人、喜んでくれる人がいる幸せ…
人生ってこんなに素晴らしい物だったのね…!

い〜つぅまでも〜 どこ〜までも〜♪ は〜しれ、走れ…… 『次は… 扶桑…』 ……のトラック〜♪

(………んん……?)

は〜しれ、走れ…… 『扶桑… 扶桑…』 ……のトラック〜♪

(違う… そこは違……)



「!!」
夢の世界から引き戻されたミウたん跳び上がり、慌て辺りを見回す
まずい、寝過ごした
薄暗い車内には既に自分以外の客は居ない

『プルルルルル……』

発車ベルの音
ミウたんは反射的にドアから飛び出る
直後にそのドアは閉まり、列車はスルスルとホームを去って行く





「…………ここは…… 何処……?」
0077創る名無しに見る名無し
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2015/12/28(月) 20:55:46.15ID:cKtKZp0+
そこは見知らぬ小さな駅だった
暗い街灯が弱々しい光でホームを照らす
そこにミウたん以外の人影はない
何も見えない 何も聞こえない
駅の外は闇の世界 静寂が支配する世界
暗い森と細い道路が星明かりにうっすらと浮かび上がる

「何処なの…? ここ……?」

どれ程寝過ごしたのか、ミウたんはスマホを取りだし時間を確認する
時刻は7時半… 列車に乗って30分程しか立っていない…
スマホの電波は圏外…
そんな時間でこんな僻地に……?
列車を間違えた……? いやそんな…… それにしたって……
ミウたんは軽いパニックに陥る
とにかくここが何処だか確認しなければ…
ミウたんはホームの中央に隣接する小さな駅舎に向かう

「扶桑…… 駅……?」

聞いた事もない駅名だった
駅舎は待合室に切符入れが置いてあるだけの無人駅だった

「そ、そうだ…… 折り返しの列車……」

ミウたんは待合室の壁に貼られた時刻表に飛び付く

「………? ………!?」

それは長い年月に晒されたかの様に茶色く変色していた
文字は剥げ、所々に穴が空き、判読が不能
その前に到底最新版のそれには思えない
いくら無人駅とは言え、時刻表も更新しないなどという事があり得るだろうか?

「……………………」

ミウたんはいよいよ自分の置かれた状況に不安になっていく
とりあえず駅を出よう 流石に民家位はある筈 そこでタクシーでも呼んで貰おう
出費は痛いが、早くここから逃げ出したい
何故かは分からないが、自分は此処に居てはいけない気がする
ミウたんは何かに追われるかの如く足早に駅舎を飛び出し、其処から伸びる細い道路の上を宛も無く駆け出した
0078創る名無しに見る名無し
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2015/12/29(火) 22:42:38.58ID:mEs6LoVz
宵闇の世界を何処までも続く細い道
ポツリポツリと立つ、暗くか弱い街灯の光が、道標の様にでミウたんを誘う
その淡い光に照らし出される黒い森と深い道草の茂み
そこから聞こえる微かな虫の声
恐らくミウたんの人生に於いて、白熱灯の光と虫の声にここまで心を励まされた事は後にも先にも無いだろう
それだけミウたんの心は不安と緊張に押し潰されそうになっていたのだ

「ハァ… ハァ… ハァ…」

小走りだった歩調は何時しか全力疾走になっていた
行けども行けども民家はおろか、人の暮らす気配すらない
暗い街灯が照らす黒い森と細い道、それが何処までも何処までも遥かに続く

「何処なのここ… 何なのこれ…」

いよいよ不安は恐怖に、そして恐慌へと着実ステップアップしていく
悲鳴を張り上げたい衝動を徐々に押さえられなくなる
目に見えない恐ろしい何かが牙を剥いて、己の背中のずきそこまで迫って来ている
そんな錯覚を覚える
怖い… 誰か… 助けて…!!

「!!」

それはどれ程の距離を走った頃だろうか
ミウたんの視界のずっと先、細い道の連なる先に、街灯とは明らかに違う光の粒が現れた

「お家だ! 人家だ! 助かったぁ!!」

緊張と疲労でカラカラの喉とは対照的に、ミウたんの瞳は溢れる涙に潤む
地面を蹴るスピードが増す
不意に周りの黒い森が開け、田園が広がり始める
間違いない、ここは人の住む土地だ
考えて見れば当たり前のその状況判断も、幾分生まれた心の余裕に因るものだ
見る間に光は大きくなり、田んぼに囲まれた数軒の民家が浮かび上がってくる
道はその直中に真っ直ぐ続き、遂にミウたんはその最も手前にある民家の門先へと辿り着いた
「ハァ… ヒィ… フゥ……」
両手を膝について大きく肩で息をするミウたん
もう大丈夫だ
何とか息を整え、改めてその民家に目を向ける
0079創る名無しに見る名無し
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2015/12/30(水) 23:02:26.58ID:zP4RTDWU
典型的な田舎の古い農家といった家構え
農具を納める木造の納屋、穀物を納める白壁の土蔵、小さな畑、それらを内包する広い庭の先に、合掌造りの趣のある母屋
その格子窓からぼんやりと明かりが漏れている
ミウたんは小さく咳払いすると、その母屋へと庭に歩を踏み出した

「あ… あの… 夜分すいません…! 道に迷った者ですが…!」
呼鈴的な物を発見出来なかったミウたんはその玄関先で声を上げ、ガラスの引戸を軽くノックした
「…………はい……」
若い女性の澄んだ声がして、程無く引戸が音をたてた
「あの、すいません! 電車に乗り過ごして、道に迷いまして…… 申し訳ないんですけど、タクシーを呼んでは貰えないでしょうか…?」
そこに姿を現したのは、長い黒髪を後ろに束ねた美しい女性だった
年の頃はミウたんと幾らも変わるまい
ただ怪我でもしたのか、右目を覆う眼帯が痛々しかった
「それは難儀だったな… だが残念ながら、この村にタクシー会社はない…」
気の強そうな口調だったが、ミウたんは悪い印象は受けなかった
芯の強そうな落ち着きからは頼もしさをも感じた
「あの… この際、遠くても構いません あっ もし電車が… 上り方面の電車がまだあるなら、そちらを教えてくれませんか?」
あの暗い道を引き返すのは気が引けるが、遠方からタクシーを呼ぶ出費は流石に痛い
最悪、駅までタクシーで引き返すという手も…
何時如何なる時でも下衆い金勘定は忘れないミウたん
だが黒髪の女性の返答はそんなミウたんの想像の斜め上を行った
「タクシーを呼ぶにも電話がない 電車はもう走っていない」
電話が無い… 幾ら田舎とは言え、そんな所帯が未だこの日本にあったのか…
「あの… でしたら、電話のあるお家を教えて貰えませんか?」
そうは見えないが、経済的な理由なのかも知れない
ミウたんは極力女性を傷付け無い様に、イントネーションに気配りをして返した
「この村には電話はない」
「……………………」
0080創る名無しに見る名無し
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2016/01/02(土) 14:22:40.28ID:fIzJuQIP
さしものミウたんも、心にもたげたる一抹の疑心を無視する事が出来なくなってきた
ひょっとして私を馬鹿にしているのか…?
余所者に冷たい閉塞した村のあれか…?
吉幾三でもあるまいに、電話の無い村など存在するものか…!?
取るべきリアクションに躊躇するミウたん
ここでブチギレても問題の解決にはならないし、かと言ってここまで塩対応の相手にこれ以上へつらうのも…
そんな刹那なミウたんの気の迷いは、女性の取った次の行動によって打ち消された
「今宵はうちへ泊まるがいい 大した持て成しは出来んが、米と布団ぐらいは余分がある」
「……へっ? あぁ いや、でも……」
てっきり余所者の自分を厄介払いしていると思っていたミウたんは面食らう
「遠慮は要らん」
そう言うと、女性は背を向け引戸の向こうへ消えていった
「………………」
貧しき星の元に生まれたが故、清く正しく図々しく育ったミウたんとは言え、流石に見ず知らずの人の家にお泊まりするのは気が引けた
しかし、電話も無く、電車無く、携帯の電波も届かないこの辺鄙な田舎では、他にすがるべき術も見出だせ無かった
(はっ!? もしかしてこの女性は同性愛的な嗜好の持ち主で、可愛い私を百合乱暴する目的で…!?)
一瞬もたげた何時もの統失的被害妄想
だが鼻腔を擽る何かの甘い匂いと、再び背中に感じ始めた何者かの気配にそれは打ち消された
「お、お邪魔… します……」
意を決して恩義に預かる事にし、女性の後を追って引戸を潜った

広い土間とその上がり口の向こうに、小さな炎が踊る囲炉裏が見えた
その煙が登っていく藁葺き屋根とそれ支える古く太い梁
壁にはこれまた年代物の農具が並べられており、それらを梁から垂れた白熱電球がぼんやりと照らし上げていた
飾り気も無いが見苦しい物も無い
まさに日本昔ばなしの世界…
成る程、電話が無いという話も頷ける
「夕飯はまだなのだろう? 私も今からなのだ」
女性はそう言うと、ミウたんに囲炉裏端の席を進め、そのまま奥へと姿を消した
0081創る名無しに見る名無し
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2016/01/05(火) 19:35:01.49ID:jn2A1FLS
「ど、どぞ… お構い無く……」
柄にも無く恐縮しながら座布団の一つにお座りするミウたん
温かい…
囲炉裏の火がこんなんにも温かい物だったなんて……
お構い無く、とは言ったものの、その火の上で湯気を吹く鍋の香りに思わず腹の虫が鳴く
想定外の激しい運動と極度の緊張、そしてそこからの解放を経たミウたんの胃の中に、電車内で食したランチパックなど微塵も残っていなかった
女性が盆の上に二組の椀と湯飲みを乗せて現れた

「口に合うかは分からぬが、身体は温まるぞ…」
そう言って鍋の中身を椀に注ぎ、ミウたんへと差し出した
「あ、ありがとう… ございます!」
大根、人参、葱に白菜… 様々な野菜が出汁中でとろとろと絡み合う
長い時間を懸けてゆっくりと煮詰まれた事が一目に分かるその雑炊
ミウたんはそれに二度小さく息を吹き掛け、口へと運ぶ
「お、美味しい!」
生意気にも料理には一家言あり、野菜の切れ端ソムリエを自認するミウたんは、初めて食する囲炉裏料理に感嘆の声を上げた
あんな野菜の切れ端(ミウたん談)からここまで甘味を引き出すとは…
世辞抜きに素直な感想が口を突いた
「すまんな、客など来る土地ではないのでな…」
女性はそう言うと自ら椀に口を着けた
ミウたんはその言葉に頭を振ると、改めて家の中を見回した
古い農具の一式を除けば、これと言って生活臭のする物は無い
そう言えば彼女以外に人の気配もしない
「あの… ここに1人で住んでるんですか?」
「ん? …あぁ 妹が居る 今日は外出していてな… そろそろ帰って来ても良い頃だが……」
若い姉妹で2人暮し…
流石に無神経なミウたんも何か複雑な事情を察し、それ以上身の上を尋ねるのを止める事にした
「あっ いっけない!!」
ミウたんか突然上げた大声に女性も少しだけ仰け反った
「自己紹介がまだでしたね! ごめんなさい、ご飯まで頂いちゃてから…… 私、ミウです 須内ミウ こけしアーティストなんです!」
椀を置き、姿勢を正してミウたんは女性に向き直った
「ミウ…… ミウか…… 良い名だな」
それだけ言うと、女性は再び椀の中身を啜り始めた
「あぁ… そうか… 私か… そうだな、私は…… ミオだ」
0082創る名無しに見る名無し
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2016/01/06(水) 09:43:08.12ID:NiQYWj7E
朝の光がが杉の木立の中を差し込んでくる
森の粒子がその中を妖精の様に踊る
アミヤは車体の下に潜り込み、組んでおいた枯れ枝の束にライターで火を着けた
小さな炎が立ち上ぼり、周りの空気を温める
夏が過ぎ、朝晩の気温は大分下がった
速度戦に於いては暖気の時間でさえ惜しまねばならない
「主任? 早いですね」
寝癖でボサボサの頭を掻きながら若い男が顔を覗かせた
「総員起床! 出撃だ!」
車体の下から這い出たアミヤはそのまま愛機のドアハッチを上げ、運転席の後ろ、彼女の座である司令長席に陣取る
「はっ!? 今日の業務は8時からの予定では?」
「向かい風に変わった この機を逃すな」
「は、はい!」
「それと伍長…」
「?」
アミヤは隊の宿舎であるプレハブ小屋に駆け出そとした若い男を呼び止めた
「大尉だ… 主任では無く、大尉と呼べ!」
「は… はい、大尉! 直ちに召集をかけます!」
アミヤは走り去るその背中から、遥か前方、丘陵の頂きを包む今尚暗い森へと視線を向けた
嘗てはしがない受信料金集金人だった自分
流れ流れて今は訳あり武闘派集団の頭
狩りの相手が個人から組織になっただけ
(運命とは皮肉なものね……)
アミヤは不敵な笑みをその森の中の何者かに向けた
0083創る名無しに見る名無し
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2016/01/08(金) 02:08:37.42ID:RyV8El07
「青鷺、準備良し!」
「こちら水楢1、異常無し!」
「水楢2、感度良好!」
無線機に次々飛び込む僚車の声
運転席の男が軽く首を捻り、肩越しに後部座席に視線を送る
「………主は見返りを求むぬ、永遠と悠久のアルマジロ………」
その視線を感じたエマは、膝の上に広げ読み入っていた書物をやや不機嫌そうに閉じた
「マルヨンイチゴー… ゲルプチーム、地獄の釜の大掃除の為、粛々と前進開始します… パンツァーフォー…」
「赤狐、パンツァーフォー!」
「「パンツァーフォー!!」」
運転手が復唱し、無線の向こうで僚車が答えた
4台の重機が黒煙を上げて前進を開始する
ディーゼルエンジンの高鳴りとキャタピラが枯れ枝を踏み潰す音が、早
朝の森に木霊する
一昨日までの進撃で自らが切り開いた森の中
その中の道とも呼べぬ荒れ地の間隙を、再び4台のマシーンが唸りを上げて突き進む
「直ぐにばれますよ 各車に周囲を警戒させて下さいね」
前方の運転手にそう伝えると、エマは狭い座席の背凭れに寄りかかり、装甲板の隙間から見える外の景色に目を移した
風向きの変化を利用した奇襲
ディーゼルの匂いは誤魔化せても、ドラム缶を叩いて歩く様な騒音を撒き散らしていては大した意味もあるまい
僅か1週間前、ここは針葉樹が生い茂る美しい森だった
それが今は爆撃を受けたかの様な無惨な荒野が広がるのみ
空だけが少しだけ広く感じる様になった
無粋だ… この醜い金属の獣の轍が、嘗て此処に存在した調和の全てを踏み潰した
だがそれがいい…
(美しい物を見ると、壊したくなるんですよね……)
そんな呟きに反応したかの様に、エマの乗する重機が杉の倒木をガクンと乗り越える
『ピピピピピッ ピピピピピッ』
エマの膝元にある指揮官用の無線機が鳴る
そのレシーバーを取ると、何時にも増して自信に溢れたあの女の声が聞こえてきた
「こちらブラウチーム、アミヤ 予定通り進撃開始 連中の体制が整う前に決着を付ける!」
0084創る名無しに見る名無し
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2016/01/10(日) 22:37:42.39ID:au1wzZ+u
アンタの知能と腕を買いたい
車載電装部品の製造工場の一角、はんだ滓を産廃用ドラム缶に放っていたエマに掛けられた声
長い蒼髪の生意気そうな女
1週間前に派遣会社からやって来た不器用な手直し検査要員
貴女は何者? 私の何を知っているの?
それまでの人生、誰1人として興味を持つ事の無かった自分に関心を寄せる怪しい女…
誰にも負けないと心の内で自負していた、エンジニアとしての腕と明晰な頭脳…
それを初めて見抜いた貴女は何者…?
いいですよ… どうせ先の見えたつまらない人生…
私を知る者の為に捧げましょう…

『カコンッ!』

装甲板が何かを弾いた
先頭の青鷺が進路を変える
「聞こえているの? エマ中尉!?」
「聞こえていますよ 接敵開始です できるだけこちらで引き付けますよ」
そう言って無線を切ると直ぐさ自身の部下に指示を飛ばす

「あれは陽動です 無視させて下さいね 敵の主力はあの丘陵の先ですよ」
伐採整地用のブルトーザーが2台、クローラダンプを改造した放水車が2台
それが根潤井建設土木作業部、特別業務課所属請負実務班、一個小隊の編成である
放水車は現場の土埃を押さえる散水の他に、重要な任務がある
それが妨害工作の排除である
全ての車両は改装され、窓やエンジン周りを装甲板で覆われている
さらに放水車には高圧ポンプと改造放水銃が搭載され、作業車両の護衛にあたるのだ
特別業務課とはそういう極めて特殊でデリケートな案件を扱う部署であり、そして今まさに、エマ達はその只中に居た

『カキンッ!』

再び装甲板が金属音をあげる
石礫… 敵の妨害手段である
通常の重機なら窓ガラスにひびが入ってもおかしくは無い
だが、小隊の重機を囲む装甲板の前にはほとんど無力である
「先頭に出ますよ あの稜線を薙ぎます」
0085創る名無しに見る名無し
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2016/01/13(水) 15:34:55.37ID:2MPvuEN3
そう言うとエマは頭上のハッチを開け、立ち上がる
その脇には改造放水銃が鎮座する
エマの意見と知識が取り入れられた強力な排除兵器である
有効射程30メートル、直撃されれば大人とて吹き飛ばされ、無事には済むまい
高圧ポンプのスイッチを入れ、コックを開く
エマは銃に掛かったゴーグルを装着すると、その先を前方に連なるなだらかな丘陵へと向けた
エマの乗する赤狐と、もう1台の放水車青鷺が速度を上げる
丘陵の向こうから石礫が降り注ぐ
全てはエマの予想通り
部隊を散らして足止めして、後はキャタピラに石や倒木を差し込んで擱座を狙う、連中の常套手段
事実、これまで似た様な手段で何両もの重機が走行不能に陥れられた
工期の延滞による損害は計り知れない
幾つかの至近弾がエマの顔をかすめる
「無駄ですよ」
次の一瞬、ガラス玉の様に無垢で精気の無かったエマの瞳が怪しく光った
「バラしますね…!」
『ボンッ!』
大砲にも似た衝撃音
エマの構える銃の先から白い水線が排出された
それは見事に丘陵の頂きを捉え、その付近の土塊を大量の木葉や枝と共に宙空に舞い散らした
「隠れても無駄ですよ」
そのまま銃口を振り、稜線を薙いでいく
青鷺も放水を開始する
二本の水線が丘陵上を行き来し、忽ちそこは猛々と煙の様に湧き立つ水飛沫に包まれた
それが収まり、木葉が再び舞い降りる頃には、稜線の向こうは完全に沈黙していた

これまで飲まされてきた煮え湯のお返しとばかりに、逃げる敵を追わんとアクセルを踏み込む運転手をエマは制した
「一度引きますよ 私達の任務は陽動です」
戦いの醍醐味は敵を屠る瞬間では無く、己の手のひらで踊らす時なのだ
少なくともエマはそう思う
「あちらに美しい白樺の群生がありました あれを滅茶苦茶に犯します」
再びハッチに潜り込み冷酷に言い放つと、エマは読み掛けの書物を取り出し、その栞をまさぐった
「ゆっくり、時間を賭けて辱しめてあげてくださいね 今日中に読み終わりたいんで…」
0086創る名無しに見る名無し
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2016/01/18(月) 19:56:42.70ID:M/lJcLZH
>>1
こんなん誰も読んでへんで?

ここはお前の自由帳ではない

こんなん誰も読んでへんで?

ここはお前の自由帳ではない

こんなん誰も読んでへんで?

ここはお前の自由帳ではない

こんなん誰も読んでへんで?

ここはお前の自由帳ではない

こんなん誰も読んでへんで?
0087創る名無しに見る名無し
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2016/01/18(月) 19:57:44.37ID:qW3vh2KG
>>1
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こんなん誰も読んでへんで?

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0088創る名無しに見る名無し
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2016/01/18(月) 19:58:26.66ID:XV9ixUci
>>1
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ここはお前の自由帳ではない

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0089創る名無しに見る名無し
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2016/01/18(月) 22:13:01.79ID:w6LSttsR
「SMAP×SMAP」一部生放送正式発表 フジテレビで©2ch.net
1
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「SMAP×SMAP」一部生放送正式発表 フジテレビで©2ch.net
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0001 Charlotte ★ 転載ダメ©2ch.net
  フジテレビは18日、分裂危機の渦中にあるSMAPのメンバーが揃うレギュラー番組、同局
「SMAP×SMAP」(月曜後10・00)が同日、一部生放送になることを正式発表した。
SMAPのメンバー5人が視聴者にメッセージを送る。ジャニーズ事務所も同じく発表。
同事務所はファクスで「多くのファンの皆様、関係各社の皆様、そしてマスコミの皆さまを大変
お騒がせ致しました事、深くお詫び申し上げます」と騒動を謝罪し「メンバーの口から直接、
現在の心境を語らせていただくことが、せめてもの誠意を尽くせることと考え」と生放送に
踏み切った理由を説明した。

 ジャニーズ事務所が発表した文書全文は以下の通り。

平素より大変お世話になっております。

この度は弊社所属アーティスト「SMAP」に関する問題により、多くのファンの皆様、関係各社の
皆様、そしてマスコミの皆さまを大変お騒がせ致しました事、深くお詫び申し上げます。

先週より報道されております騒動につきまして、社内協議を重ねました結果、今まで支えて下さっている
ファンの皆様をはじめとする、より多くの皆さまに5人のメンバーの口から直接、現在の心境を語らせて
頂く事が、せめてもの誠意を尽くせることと考え、SMAPの5人がレギュラーを務めさせて頂いて
おります唯一の全国放送番組でございます、フジテレビ系列「SMAP×SMAP」の1月18日
(月)22:15〜放送の内容を一部変更頂きまして、生中継にて5人の現在の心境を語らせて
頂きたいと考えております。

尚、本人達の口からSMAPを支えてくださっている全国の皆様に直接お話をさせて頂きたいという
意向での生中継でございます為、事前の内容に関するお問い合わせやご取材依頼につきましては、
一切お答え、ご対応はできません事、予め御了承頂きたく存じます。またこの件に関する記者会見の
予定もございませんので、あわせてご了承頂きたく存じます。

何卒ご理解、ご協力の程よろしくお願い申し上げます。

株式会社ジャニーズ事務所

http://headlines.yah...0000116-spnannex-ent
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Rock54: Caution(BBR-MD5:0be15ced7fbdb9fdb4d0ce1929c1b82f)
0090創る名無しに見る名無し
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2016/01/18(月) 22:15:16.75ID:O/eM93L7
ゲーム好きの男の身体的、行動的特徴 

※顔が異常に白い 
※目が細く、離れている 
※唇も薄い
※声が高い 
※指は細く長い
※人と喋る時は最初に「えー…」と言う 
※鼻が低い 
※撫で肩 
※自転車が好き 
※むっつりスケベ 
※犬と猫なら猫が好き
※ラーメンと牛丼なら牛丼が好き
※特に名前の無い短髪の髪型 
※薄いペラペラのビニールジャンパーが一張羅
0091創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/01/19(火) 09:58:41.37ID:eugPFVNT
「間も無く最頂点を越えます」
運転席の伍長が告げる
「このまま速度を維持、一気に突っ切わよ」
ぺリスコープを覗きながらアミヤは答える
「最後尾の2両が遅れています 一旦、進軍を停止すべきでは?」
「落伍は捨て置きな 速度が命よ この先の渓谷に奴らの拠点が必ずある 奴らも直ぐに陽動に気付くわ それまでが勝負よ」
重心が前に移り、丘陵を越えた事が体感出来た
鬱蒼と繁る針葉樹の森の中、その狭間の山道を4つの重機が爆走する
全てが改造放水車で構成されたブラウチームの目的はただ一つ、この1ヶ月に渡り開拓工事の邪魔をしてきた敵の排除である
自然保護団体か、はたまたライバル企業の手先か、その素性は知らぬ
知る必要も無いし、知りたくも無い
だが何者であっても、この "土嚢際の雌豹" の異名をとる凄腕武闘派ネゴシエーターアミヤ様の面子を、1ヶ月に渡って潰し続けた代償は利息を付けて払って貰う
アミヤには夢が、野望があるのだ
この様な所で足踏みしている場合では無い

『ガコッ!』
『ガツン! カキン!』

石礫が先頭を行くアミヤの乗車に降り注いだ
「ほら、お出ましよ!」
アミヤは勢い良くハッチから身を乗り出し、そして間髪入れずに放水銃を木陰に放つ
強烈な水流が辺りの杉を揺らす
ここまで進入を許せば最早身を隠す場所は乏しい
明らかに抵抗も軽微、手薄、そして混乱の様相を見せる

「あれよ! 2時の方向!」
アミヤの視線の先、森の少し開けたポイントに小さな掘っ立て小屋が見えた
不器用に細い丸太を組み上げただけの、みすぼらしい山小屋
奴らのアジトだ 伍長が車体をそれに向ける
(ジ・エンドね!)
勝利を確信したアミヤ その視線が閃光を捉えた
「当たらないわよ!!」
反射的に首を傾げたアミヤ
その白い頬をかすめたのはロケット花火
最後の取って置きだったのだろう
宜しい、そちらがその気なら…!
0092創る名無しに見る名無し
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2016/01/20(水) 12:31:17.57ID:3jNpGJFQ
頬から流れる真紅の一条をそのままに、アミヤは放水銃をその掘っ立て小屋の開口窓に向ける
アミヤを仕留め損ねたそいつと目が合った… 気がした
「堕ちなっ!!」
魂を乗せた一撃が掘っ立て小屋に吸い込まれ、そしてそれを爆散させた
遅れた僚車が戦場に殺到し、掃討戦が開始された
方々で放水に晒された杉の木立が悲鳴の様な軋みを上げる
アミヤは車内から取り出し模造銃を構えて下車すると、ゆっくりと掘っ立て小屋だった残骸に近付く
爪先で崩れた丸太の一つを蹴り退ける
「フンッ」
そこに奴の姿は無かった
アミヤはブラウチームの象徴、己の乱れた青いマフラーの一方を肩に巻き直すと、再び車上の人となった
0093創る名無しに見る名無し
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2016/01/21(木) 20:17:57.78ID:+lR1T9mJ
最高です!素晴らしいです!

応援してます!
0095創る名無しに見る名無し
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2016/01/24(日) 19:41:38.72ID:aqbRxe2p
「おりゃ!」
『スコンッ』

「とりゃ!」
『パスンッ』

東の空が白み始めた頃、農家の庭先に響く謎の掛け声と軽い衝撃音
ミウたんが鉈を振り下ろすと、薪が気持ち良い迄に真っ二つに割れる
こけし職人、須内ミウを舐めないで貰いたい
木の幹から木塊を切り出すのがこけし造りの第一歩だ
そんな言葉を胸に刻んで、1人悦に入るミウたん
一泊一膳…? 一晩一万…? とにかく恩返しだ
ミウたんは知っているのだ 旅人は泊めて貰ったお礼に早朝から薪を割る事を
ミウたんの好きな時代劇の世界では常識である
そう言えばミウたんの憧れ、カルロス田中衛門にもそんなエピソードがあった
薪割りの傍ら、鉈だけで見事なこけしを造るのだ
ハイキャリアを自負する今のミウたんでも、鉈一つでこけしを造るのは至難の技
流石はカルロス田中衛門と言った所である

「客人、早いな」
ミオが縁側から姿を現した
「一晩一万の恩義ですよ! ほら、こけし職人ですから!」
ドヤ顔で庭の一角に積み上がる割れた薪の山を見遣る
「一晩一万…? せっかくだが、 薪割り機があるのだ そんな無理はしなくて良い」
「……えっ……」
「今、朝飯にする もう少し横になると良いだろう」
そう言うとミオは庭先の小さな畑から大根を引き抜き、土間へと消えて行った
横になれと言われても、既に早朝薪割りで身体はマックスボルテージである
今度こそ一泊一膳の恩返しと、ミウたんはミオの後を追う
小さな洗い場と釜戸があるだけの簡素な台所
ミオは大根の泥を流すと、まな板に乗せて刻み始める 慣れた手つきだ
「私も何かお手伝いを…!」
ミウたんの声に振り向いたミオは、笑顔で釜戸の上の土鍋に視線を向けた
米を炊いてくれと言う事だろう
(よし!!)
ミウたんは気合いを入れて腕捲りをする
自炊の腕ならミオに負けてはいない
0096創る名無しに見る名無し
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2016/01/25(月) 14:01:25.27ID:/kU85O4L
『シャコシャコシャコ……』

洗い場で米を砥ながらミウたんは尋ねた
「ところで妹さんは…?」
昨晩はあれから奥の間で布団を与えられ、直ぐに寝入ってしまった
疲れもあったし、早起きして恩返しする意図もあった
妹さんが帰宅した気配は感じられ無かったが、今朝のミオを見る限り大して心配している風でも無い
「あぁ 結局帰ら無かった 何、心配は要らん 後で様子を見てこよう」
口振りからするに心当たりでもあるのだろう
思春期にありがちなプチ家出の常習犯と言った所か…
ミウたんはやはり余計な詮索はせず、研いだ米を土鍋に移し、釜戸に備えた
「ありがとう 母上の仕込みが良いようだな」
一瞬、聞かれもしない身の上を語りそうになったが、何とか己を抑え、薄い苦笑いをミオに返した

「ご馳走様でした〜!」
「お粗末様だったな」
「とんでも無い! 大根を葉っぱまで余す所無く活用するミオさんのお手並み、同じ野菜ソムリエとして感服しました!」
「……? ソム……?」
「ふぅ… すっかりお世話になりまして、本当にありがとうございました」
そろそろ頃合いも良しと見て、ミウたんは暇を申し出る
思い起こせば昨夜は散々な目に遇ったが、それでもこうして純朴な人の優しさに触れ、貴重な農家での民泊体験も出来た
ミオの手料理はお世辞抜きに美味しかったし、野菜ソムリエを自認するミウたんにとって刺激になった
「あの… もし良かったら、私とお友達になってくれませんか?」
ミウたんは上京以来、友達と呼べる存在を得られる事は無かった
同じ年頃の子と触れ合う機会も少なかった
これも何かの縁、棚から塩大福
ミウたんは何故か波長の合う気がするミオとの邂逅に運命的なものを感じ、思い切ってフレンド申請を出した
「友達… か…… 分かった、これから我らは友達だ」
「ありがとうミオさん」
「ふふ… ミオで良い」
ミウたんは決めた 今度はミオをミウたんハウスに招待しよう
今度はミウたんの手料理を振る舞い、同じ天井を見詰めて夢を語り合おう
ミウたんの脳裏には、早くもミオをもてなす様々なサプライズイベントが浮かんでいた
0097創る名無しに見る名無し
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2016/01/26(火) 19:14:47.21ID:VgOsUaqy
「うん、それじゃ、本当にそろそろ帰るね」
「ミウ、すまんが、一つ頼まれてはくれはないか?」
「うん?」
「さっきも言ったが、妹の様子を見てこようと思うのだが… 入れ違いになる可能性も無くは無い… すまぬが、しばらくここで留守居をしてはくれぬか?」
漸く出来た友達からの初めての頼み事、むげにする事など出来よう筈が無い
それに一晩一膳の恩義もまだ返していない
「うん、任せて! 私も妹さんにも会って見たいし!」
「そうか、すまぬな」
ミオは出会ってから一番の笑顔をミウたんに見せた
「遅くはならぬと思う 大した物は無いが、そこら辺の物は好きに食して良い」
「大丈夫よ でも、あの干し芋だけは頂こうかな」
台所の隅に吊るされていた干し芋を目敏く見つけたミウたんは、それを確認しながら、土間から出て行くミオの背中を見送る
引戸に掛けた彼女の手が止まり、ゆっくりと此方に向き直った
「ミウ… 昨晩、この土地には客人が来ないと言ったが… 実は招かねざる客が訪れる事がある」
不意に神妙な顔付きでミオは語り出した
「招かねざる… 客……?」
その言葉に若干緊張を孕んだミウたんの問に、ミオは静かに頷きを返した
「この所、この辺りの畑を荒らす猪が出てな… 我が家の畑もやられている…」
「猪…?」
「あぁ 大きく気性の荒い奴でな 村に怪我人も出ている」
「怪我人…!」
「あぁ もしも現れたなら、そこにある弓矢で追い払うのだが…」
ミオの向けた視線の先、土間奥の壁の一角に、確かに年代物で重厚な弓矢が飾られていた
「だがミウ、お前は素人だ 決して手荒な真似はしては成らぬ もし猪が現れて畑を荒らされても、お前はじっとこの屋敷に籠ってやり過ごすのだ」
「えっ…? う、うん……」
弓矢から視線を戻したミウたんに、ミオは安心させるかの様に笑顔を見せた
「では行ってくる」
「うん… いってらっしゃい!」

ミオの足音が庭の向こうに消えて、静寂の中に取り残されたミウたん
それまでは感じなかったが、一人なるとこの屋敷の中途半端な広さに寂寥感を感じずには居られ無かった
もし自分が此処で暮らし、そして独りぼっちになったら…
きっとミオは妹の事をずっと心配していた筈だ
突然の来客の前ではそんな素振りは微塵も見せず、ただひたすら難儀していた自分を労ってくれたミオ…
そんな彼女のこの一晩の心の内を察すると、鈍感なミウたんも心が強く締め付けられるのだった
そしてそんな弱さを見せぬ彼女が頼りにし、預けてくれた留守
猪如き現れたとして、どうして息を潜めてやり過ごす事など出来ようか!
河原のハイエナ娘の名が廃る、何が会っても守り抜かなくては…!
0098創る名無しに見る名無し
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2016/01/27(水) 17:53:04.96ID:nI0496h7
ミウたんは土間奥に向かい、そこに飾られた年代物の弓を手に取る
ずっしりとくる重みと、手に吸い付く様な握り心地
漆なのか、黒く塗り上げられた胴は官能的な迄に美しい湾曲を見せる
それでいながらそこに刻まれた細かな傷跡は、この胴が幾度と無く弦を張り、弓を飛ばしてきた事を物語っていた
美しき野獣… そんな言葉がふと浮かぶそれは、ミウたんの得物、Mー16とはまさに似て非なる物だった
だが、それを手にしたミウたんの心の中では、メラメラとハンターとしての本能が炎を上げていた
これならやれる! これならやれる筈!
もしあの時、自分の手元にこれがあれば、あのクロコダイルを仕留めたのは自分だった筈!
ミウたんは弓胴の端に結ばれた弦を解くと、その端を弦輪に掛ける
そしてそれを指で摘まみ、思い切り引いてみる
強烈は反発力がミウたんの右手を震わす
(よし、やれる!)
ミウたんの自信は確信へと変化した

「!!」

その時、庭先で何者かの気配がした
(いや、ちょっ…! 早すぎるでしょ… タイミング伺い過ぎでしょ……!?)
臆した訳では無い
ただ機先を制され動揺しただけだ
主のが家を離れるタイミングを伺うとは不逞奴である
次の瞬間には落ち着きを取り戻したミウたんは大きく深呼吸をして、土間の引戸の隙間から庭の向こうを見遣る
さながら腕の立つ素浪人と言った風格で、その庭先に殺気を向ける

「………………」

何も居ない
だが、ミウたんのハンターとしての臭覚は獲物の気配を間違い無く感じ取っていた
一旦奥に戻り、その壁に飾られた矢筒から三本の矢を抜き取る
その二本をくわえ、一本を弓につがえると、左足で引戸を開け、ゆっくりと庭へと歩を踏み出した
ドスファンゴ…
嘗てそんな名の大猪と対峙した事もあった
ミウたんはまだ駆け出しハンターだった頃を思い出す
今の私はあの頃の鼻垂れスナイパーではない
0099創る名無しに見る名無し
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2016/01/28(木) 20:30:03.26ID:Y9AoDeZY
(何処からでも来い…)

白壁の土蔵の陰、納屋の裏、山茶花の垣根の隙間…
ミウたんは感覚を研ぎ澄まし、見えない標的の気配を探る

「!!」

一瞬、その垣根の一角が僅かに揺れた

(そこか!?)

ミウたんは素早く矢先をその垣根に向ける
キリキリと弦を退く指に力を込める
垣根の上に小さな黒い影が姿を見せ始めた
次の瞬間、そこから覗いたのは少女の顔だった
(あっ!?)

ミウたんは慌て弓を下ろす
迂闊であった
猪に対する警戒心から、すっかり来訪者の全てをそれと思い込んでいた
これはいけない
怖がらせてしまった 悪い事をした
留守を預りながら、本当の客人にとんだ粗相をしてしまうとは…
客は来ないと言っても、近隣住民の訪来ぐらいは予想出来た筈…

「ごめんなさい!」
ミウたんは垣根の向こうの少女に声を掛ける
歳の頃は十四、五歳と言った所か、大人しそうな、肌の白さが印象的の短い髪の少女だった
「……………」
少女は気を損ねたのか、ミウたんの謝罪にも反応を見せず、じっと此方を見詰める
「あぁ 私? 私、ミウ ミオさんの友達で… ミオさんなら今ちょっと出掛けているの それより本当にごめんね…!」
「……………」
少女はその言葉にも反応を示さない
ただじっとミウたんを見詰める
気まずい雰囲気にミウたんはポリポリと頭を掻く
「あ、あの… 近所の子かな? 最近、ここら辺に悪い猪が出るって聞いたて… それで……」
その言葉が終わるか終わらぬかのうちに、少女は再びゆっくりと垣根の向こうに身を潜めた
「……………ふぅ」
ミウたんは柄にも無く落ち込んでため息をつく
近所の家の庭から弓を向けてくる見知らぬ女…
完全に危険人物に思われただろう
あそこのお宅のミオさん、変なお友達とお付き合いしているみたいね…
そんな噂話をされるかもしれないミオの事を思うと、ミウたんは己の軽はずみな行動をますます後悔するのだった
0100創る名無しに見る名無し
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2016/01/30(土) 21:33:14.97ID:TsqeCBwW
(…………とりあえず干し芋でも食べよう)

どこら辺がとりあえずなのかは知る由も無いが、気分転換をしたいのもは事実だった
それはミウたんが干し芋の白い粉の正体に思いを馳せながら、玄関への一歩を踏み出した時だった

『ヴゥゥゥゥ…… ブゥゥゥゥ……』

「………………」

向かって右前方、ミウたんの視野の外、物置納屋の影からそいつの唸り声がした
ミウたんは不思議なぐらい冷静だった
否、冷静に成らざるを得なかった
狩り暮らしの中で叩き込まれた戦いのセオリー
先手を取られた者は動じてはならない
動じれば次の瞬間には餌食になる
あのクロコダイル戦で改めて思い知らされたその戦訓が、ミウたんの精神と肉体を制御した
あの時と同じミスはしない
いや、厳密に言えば既にミスは犯していた
人に弓矢を向けた事、それに動じて緊張の糸を切らした事
だからこそ、再び無様な道化は演じまいと心に決めたのだ

そう、だからこそっ!

視野の済みに黒い影が踊り、荒い鼻息と共に地面を蹴る蹄の音が近付くこの瞬間を読み取っていた

『タンッ』

ミウたんは真後ろに飛び退る
半瞬前までミウたんが存在した空間を猪の獰猛な牙が切り裂いた
たなびくピンクのミニスカートが猪の鼻先をかすめる
その様はさながら女闘牛士
必殺の勝機を逃した猪は勢いを殺して体勢を立て直すと、再び猪突猛進を繰り出さんと向きを変える
だがその目に映ったのは、冷気を感じる程の鋭い眼差しで此方に弓を引くミウたんの姿だった

『プンッ』

弦から放たれた一閃が真っ直ぐに猪の眉間を貫く
……事は無かった
それは猪の頬をかすめて、その背後に立つ黒松の幹に突き刺さった

「ヒヒンッ!」

ミウたんの殺気と痛撃に驚いたのか、猪は大きく嘶くと飛び上がる様に向きを変え、垣根の向こうへと逃走して行った
0101創る名無しに見る名無し
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2016/01/31(日) 17:59:49.28ID:Fw6imYDj
「まだ子供じゃない」
ミウたんは弓を下ろすと、垣根のずっと向こう、林の中へと駆けて行く猪の背中を見送る
外れた訳では無い 外したのだ
無益な殺生はしない
それもまた、狩り暮らしを送る者の基本である
まだ若いあの個体が畑を荒らすそれなのかは分からないが、猪にも訳あっての事だろう
先にあの子の生活圏を荒らしたのは人間の方かも知れないし、何より一人立ちして間もないであろう若い猪が形振り構わず必死に生きようとする様に、ミウたんは微かな親近感も覚えていた
恐らくは人間の怖さも身に染みて、もう里にも出ては来るまい
命まで奪う必要は無いのだ
ミウたんは黒松に刺さった矢を引き抜くと、ミウたんなりの訳に基づきミオ家の台所を改めて荒らす事にした



そんな背中を垣根の隙間から見送る幾つかの小さな影
それは視線を戻し互いを見詰め合うと、小さく頷き合った





『ピ〜ヒャララ… ピピ〜ピヒャララ… ピ〜ヒャララ……』

何処からか祭囃子が聞こえてくる
「う……ん?」
遠くで人の声がする 賑やかな喧騒がする

「…………はっ!!」

ミウたんは囲炉裏端で飛び起きた
(あちゃちゃ… 居眠りしちゃった… 留守番にならないよ…)
頭をポリポリ掻きながらミウたんは立ち上がる
あれから干し芋を拝借したミウたんは新たな一食一芋の恩義として、家の床磨きとミオとその妹の為のご飯を炊いていたのだ
その疲れもあっていつしか囲炉裏端で居眠りしてしまった
(今、何時だろ…?)
いつの間にか辺りは薄暗くなっていた
祭囃子が近付いて来る
ミウたんは土間に降りると玄関の引戸から外に出た
「うわぁ〜 すご〜い」
0102創る名無しに見る名無し
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2016/02/02(火) 19:47:25.61ID:gKUHdwfX
丁度ミオの家の前をきらびやかな神輿が通り過ぎて行く所だった
垣根の向こうで殆ど沈みかけた夕日を浴びて、金色の屋根とその上の鳳凰が踊っていた
「おぉ ミウ、丁度良い所に来たな」
「あっ ミオ… さん」
いつの間にか帰って来ていたのか、ミオが庭先から声を掛けてきた
「お祭りなんですか〜?」
ミウたんはミオの側に歩み寄る
「…の練習だ 祭は来週末に開かれるだろう」
二人の視線の先で神輿が一際高く舞い踊る
澄んだ掛け声が夕暮れの空に木霊する
寂しい集落だと思っていたが、意外と人がいた様だ
そこでミウたんは思い出す
「はっ! そう言えば妹さんは?」
「あぁ あそこで神輿を担いでいる 心配を掛けたな」
ミウたんは頭を振った
良かった どうやらプチ家出は終了した様だ
「あっ それと……」
ミウたんは神妙な表情になって言葉を紡いだ
「ごめんなさい あの… 今日… 猪を退治しようとして……」
「話は聞いている 気にする事は無い 当人も気にしてはいない」
ミウたんはほっと胸を撫で下ろす
「米まで炊いてくれた様だな すまない さぁ 夕食にしようか」
神輿が遠ざかり、ミオはそれを見送ると玄関へと歩き出す
「い、いえ 流石にもう帰ります 今度、改めて遊びに来ますよ!」
「まぁ そう言うな ゆっくりしていけ」
ミオは振り向きもせず引戸の向こうに消えて行く
ミウたんはミオの厚意に心から感謝しながらも、改めて暇を願う事にした
誰も待っている者は居ないが、道に迷った者が二日も宿を得る訳にはいかない
その位の常識は弁えているつもりだ
今度は友人としてきちんと遊びに来たいのだ
「いえ、ミオさん 私はやっぱり帰ります 上りの電車、何時頃ですかね?」
ミオの後を追い、白熱電球に明かりを灯すその背中にミウたんは語り掛けた
「電車はもう走っていないと言ったであろう」
「えっ? いくらなんでも終電、早すぎますよね?」
0103創る名無しに見る名無し
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2016/02/03(水) 19:11:20.37ID:6ToPayF3
昨夜ミウたんが此処に迷い込んだ時は今よりずっと遅い時間だった
また終電の筈が無い
そこまでして私を引き留めたいのか
ミウたんはミオのお誘いが本心である事に、心の中が温かくなっていくのを感じた
これまでの人生で、ここまで私を好いてくれた人は三人位しかいない…!
だが、次のミオの言葉にミウたんは固まる
「電車はもう三十年走っていない 詳しくは無いが、多分、廃線というものだろう」

「…………はい?」

初めはミオの悪ふざけと口元が緩み掛けたミウたんだったが、その脳裏に昨夜あの寂れた駅舎で見た時刻表がフラッシュバックする
「いや… だって昨日私… 確かに…」
そこまで言ってミウたんは、はたと手を打つ
「そうだ、隣町の駅ですよ! 昨日は随分走っちゃたんで〜! 隣町の駅から帰ります! なんだ〜 私勘違いしちゃってた〜 ほんとは昨日帰れたのかも〜」
小さく舌を出して苦笑いするミウたん
ミウたんの中の三大可愛いジェスチャーの一つである
「まぁ とにかく今日は泊まっていけ 妹もお前にお礼がしたいそうだ」
「……お礼?」
その時、背後の引戸が開いて誰かが飛び込んで来る気配がした
「改めて紹介しよう 私の妹の…… そうだな…… ヨシカだ」
振り向いたミウたんの目の前に佇む少女
彼女は笑顔を浮かべてお辞儀をして見せた
「…………あれ? 貴女は何処かで……?」
0104創る名無しに見る名無し
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2016/02/07(日) 16:56:05.53ID:7fPg8RNo
「ふざけないでよ! 話が違うわ!」
アミヤはスチールテーブルに両拳を叩き突ける
「ソレハ、お前達と前の雇用者とのケイヤクでゴザル 某に履行義務はゴサラヌ」
紅毛碧眼の女は凭れた椅子を横に向けると足を組み直した
「職務をスイコウすればケイヤクは延長、成功ホウシュウもオシマヌ… 何がフマンでゴザル?」
長い髪を指で弄びながら、鋭い視線をアミヤに向けて句を次いだ
「あたし達がこれまで汚い仕事をこなしてきたのは、その日が来れば必ず一部上場企業、根潤井建設に正規雇用されるとの約束があってこそよっ 少なくともそう言ってあたしは部下達を集めて来たわ それを今更…!」
「フンッ 世迷い言を… セイシャインなどに拘るのは東洋のサルどもだけでゴザル!」
女は立ち上がると腕を背中に組み、広くは無いその室内を闊歩し始めた
「部下達は納得しない! 離れる者も出てくるわよ!」
アミヤはその後ろ姿に尚も食い下がる
恫喝では無い
文字通り危険な最前線でリスクを被る実務班員は、ただ金欲しさの為に集まった者ばかりでは無い
その言葉に立ち止まった女は踵を返し、アミヤの前へと歩み寄ると、その端正な顔をアミヤの鼻先へグイと近付けた
高い鼻頭がアミヤのそれをかすめる
「ソレヲ纏めるのがヌシの仕事でゴザル デキヌと言うなら他にやらせるダケでゴザル! お前達の嘗ての上司のようにな!」
刺す様な視線を数瞬アミヤと交じり会わせると、女は再び深い背凭れの椅子に腰を降ろして背を向けた
何かを言い掛けたアミヤだったがその言葉をぐっと飲み込み、黙ってドアのノブに手を掛けた



「早かったですね」
事務棟のプレハブから出て来たアミヤが後部座席に乗り込むのを待って、運転席の伍長が声を掛ける
適当な反応を返すアミヤの暗い表情を読み取ってか、伍長はそれ以上は何も話さなかった
一ヶ月前に開墾した森林には既に大量の建築資材が運び込まれ、何台もの本物の重機が唸り声を上げていた
その合間を縫って、二人の乗るジープは再び最前線へ戻って行く
新しい高速道路の建設だそうだ
アミヤにはどうでも良い話である
国内最大手のゼネコンの根潤井建設が外資に買収されたのは今年の初めだった
0105創る名無しに見る名無し
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2016/02/08(月) 21:15:02.72ID:GM3MLKrn
公共事業の削減で青息吐息であるとは聞いていたが、外資の傘下に収まるのは予想外だった
末端のそれまた請負であるアミヤ達には影響の無い話であると思っていた
寧ろ外資系の実力主義的社風になれば、アミヤ達無頼の傭兵集団が日の目を見れる時が早まるかも知れない、そうとさえ思っていた
事実、社内の意思伝達のスピードと業務遂行への圧力は前にも増した
ミラという若い女が買収先から派遣され、アミヤ達の直属の上司となり、実務班を酷使した強行開発を押し進める
自分達が重宝されている… アミヤはそう考え、期待に応えようと奮戦してきた
今日も件の妨害工作の排除を報告に訪れた
激励と見返りの保証を求めたアミヤだったが、その期待は裏切られた
作戦遅延の叱責と更なる強行進軍の命令…
ミラとその派遣元の言う実力主義とは、力で全てを解決せよ、という意味であった

「………………」

何時の日か一流企業の正社員になれる…
その為に今は汚い仕事を黙ってこなす…
そう言ってアミヤは部下達を集めて来た
そういう言葉に乗る連中だからこそ、どんな仕事でも非情に徹しこなしてこれた
アミヤは彼等に同情している訳ではない
連中はただ、己が社会の底辺からのし上がる為の駒に過ぎない
同じ境遇にある連中ならば、アミヤの言葉に耳を傾け忠誠を誓う、そう思ったのだ
アミヤは彼等に同情はしていない
ただ強い連帯感は抱いていたのだ
その薔薇の花片の様な美しい唇は、どうしても彼等に抱かせた希望を裏切る言葉を紡ぐ事が出来なかった





「どうぞ、納豆です」
ヨシカが盆の上の小鉢をミウたんの膳に乗せる
「ありがとう」
ミウたんのお礼に笑顔を返すと、ヨシカも囲炉裏端の一方に腰を降ろす
昨夜よりちょっぴり賑やかな今夜の夕げ
白熱電球より明るい囲炉裏の炎が、三人の頬に紅をさす
「まさか、ミウがヨシカの命の恩人だったとはな 改めて礼を言わせてくれ」
ミオは膳の前で膝に手を乗せ、恭しく頭を下げた
釣られる様に傍らのヨシカも深々と頭を下げる
「お礼はもう十分ですよ! 結局二日もご厄介になっちゃったし でも、こんな運命の巡り合わせもあるんですね!」
ミウたんは興奮を抑えられなかった
電車を乗り過ごし、道に迷って何とか辿り着いた先が、まさかあの河原で出会った少女の家だったとは!
こんな偶然があるものか?
あるとすれば偶然そのものに意思があるとしか思えない
偶然がその意思でミウたんをここに導いたとしか思えない
ミウたんでなくとも、こんな奇跡の再会を体験すれば興奮せずには居られまい
0107創る名無しに見る名無し
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2016/02/09(火) 17:58:48.56ID:X80t5UAZ
さっきコンビニ行ってきたんだけどさ、雨のせいか人が全然いないの。 
んで適当にカゴに飯突っ込みつつレジに向かったのね。 
ふと気づいたら俺の後ろにおっさんが並んでるの。 
俺の買い物の量がちょっと多かったから、 
(あー、店員さんもう一人出てこないかな)とか思ってたら 
後ろのおっさんがなんか戦闘力がどうたらとかブツブツ言ってんの。 
よく聞いたら、 
「馬鹿な・・・まだ上がるだと・・・!?」とか言ってて、 
(頭おかしいのかなこのおっさん)とか思ってチラチラ見てたら、 
そのおっさん、レジの値段のとこ凝視しながら 
「この俺より上がいるだと・・・っ!」って。 
これはあれか。お前ベジータか。 
店員さんにも聞こえててツボに入ったらしく(;゚;ж;゚; )こんな顔になってレジ打つ始末。 
それでレジ打ち終わって、店員さんが 
「お会計、2180円に、なり、ます」って言った瞬間、そのおっさん 
「カカロット・・・お前がナンバーワンだ・・・!」 
店員さん死亡。 
俺も死亡。 
おっさん、あんたがナンバーワンだよ。
0108創る名無しに見る名無し
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2016/02/09(火) 17:59:38.79ID:X80t5UAZ
さっきコンビニ行ってきたんだけどさ、雨のせいか人が全然いないの。 
んで適当にカゴに飯突っ込みつつレジに向かったのね。 
ふと気づいたら俺の後ろにおっさんが並んでるの。 
俺の買い物の量がちょっと多かったから、 
(あー、店員さんもう一人出てこないかな)とか思ってたら 
後ろのおっさんがなんか戦闘力がどうたらとかブツブツ言ってんの。 
よく聞いたら、 
「馬鹿な・・・まだ上がるだと・・・!?」とか言ってて、 
(頭おかしいのかなこのおっさん)とか思ってチラチラ見てたら、 
そのおっさん、レジの値段のとこ凝視しながら 
「この俺より上がいるだと・・・っ!」って。 
これはあれか。お前ベジータか。 
店員さんにも聞こえててツボに入ったらしく(;゚;ж;゚; )こんな顔になってレジ打つ始末。 
それでレジ打ち終わって、店員さんが 
「お会計、2180円に、なり、ます」って言った瞬間、そのおっさん 
「カカロット・・・お前がナンバーワンだ・・・!」 
店員さん死亡。 
俺も死亡。 
おっさん、あんたがナンバーワンだよ。
0109創る名無しに見る名無し
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2016/02/09(火) 18:00:26.22ID:X80t5UAZ
さっきコンビニ行ってきたんだけどさ、雨のせいか人が全然いないの。 
んで適当にカゴに飯突っ込みつつレジに向かったのね。 
ふと気づいたら俺の後ろにおっさんが並んでるの。 
俺の買い物の量がちょっと多かったから、 
(あー、店員さんもう一人出てこないかな)とか思ってたら 
後ろのおっさんがなんか戦闘力がどうたらとかブツブツ言ってんの。 
よく聞いたら、 
「馬鹿な・・・まだ上がるだと・・・!?」とか言ってて、 
(頭おかしいのかなこのおっさん)とか思ってチラチラ見てたら、 
そのおっさん、レジの値段のとこ凝視しながら 
「この俺より上がいるだと・・・っ!」って。 
これはあれか。お前ベジータか。 
店員さんにも聞こえててツボに入ったらしく(;゚;ж;゚; )こんな顔になってレジ打つ始末。 
それでレジ打ち終わって、店員さんが 
「お会計、2180円に、なり、ます」って言った瞬間、そのおっさん 
「カカロット・・・お前がナンバーワンだ・・・!」 
店員さん死亡。 
俺も死亡。 
おっさん、あんたがナンバーワンだよ。
0110創る名無しに見る名無し
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2016/02/10(水) 19:10:08.84ID:c/tIhKKS
さっきコンビニ行ってきたんだけどさ、雨のせいか人が全然いないの。  
んで適当にカゴに飯突っ込みつつレジに向かったのね。  
ふと気づいたら俺の後ろにおっさんが並んでるの。  
俺の買い物の量がちょっと多かったから、  
(あー、店員さんもう一人出てこないかな)とか思ってたら  
後ろのおっさんがなんか戦闘力がどうたらとかブツブツ言ってんの。  
よく聞いたら、  
「馬鹿な・・・まだ上がるだと・・・!?」とか言ってて、  
(頭おかしいのかなこのおっさん)とか思ってチラチラ見てたら、  
そのおっさん、レジの値段のとこ凝視しながら  
「この俺より上がいるだと・・・っ!」って。  
これはあれか。お前ベジータか。  
店員さんにも聞こえててツボに入ったらしく(;゚;ж;゚; )こんな顔になってレジ打つ始末。  
それでレジ打ち終わって、店員さんが  
「お会計、2180円に、なり、ます」って言った瞬間、そのおっさん  
「カカロット・・・お前がナンバーワンだ・・・!」  
店員さん死亡。  
俺も死亡。  
おっさん、あんたがナンバーワンだよ。
0111創る名無しに見る名無し
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2016/02/10(水) 19:11:02.21ID:c/tIhKKS
さっきコンビニ行ってきたんだけどさ、雨のせいか人が全然いないの。  
んで適当にカゴに飯突っ込みつつレジに向かったのね。  
ふと気づいたら俺の後ろにおっさんが並んでるの。  
俺の買い物の量がちょっと多かったから、  
(あー、店員さんもう一人出てこないかな)とか思ってたら  
後ろのおっさんがなんか戦闘力がどうたらとかブツブツ言ってんの。  
よく聞いたら、  
「馬鹿な・・・まだ上がるだと・・・!?」とか言ってて、  
(頭おかしいのかなこのおっさん)とか思ってチラチラ見てたら、  
そのおっさん、レジの値段のとこ凝視しながら  
「この俺より上がいるだと・・・っ!」って。  
これはあれか。お前ベジータか。  
店員さんにも聞こえててツボに入ったらしく(;゚;ж;゚; )こんな顔になってレジ打つ始末。  
それでレジ打ち終わって、店員さんが  
「お会計、2180円に、なり、ます」って言った瞬間、そのおっさん  
「カカロット・・・お前がナンバーワンだ・・・!」  
店員さん死亡。  
俺も死亡。  
おっさん、あんたがナンバーワンだよ。
0112創る名無しに見る名無し
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2016/02/10(水) 19:11:51.43ID:c/tIhKKS
さっきコンビニ行ってきたんだけどさ、雨のせいか人が全然いないの。  
んで適当にカゴに飯突っ込みつつレジに向かったのね。  
ふと気づいたら俺の後ろにおっさんが並んでるの。  
俺の買い物の量がちょっと多かったから、  
(あー、店員さんもう一人出てこないかな)とか思ってたら  
後ろのおっさんがなんか戦闘力がどうたらとかブツブツ言ってんの。  
よく聞いたら、  
「馬鹿な・・・まだ上がるだと・・・!?」とか言ってて、  
(頭おかしいのかなこのおっさん)とか思ってチラチラ見てたら、  
そのおっさん、レジの値段のとこ凝視しながら  
「この俺より上がいるだと・・・っ!」って。  
これはあれか。お前ベジータか。  
店員さんにも聞こえててツボに入ったらしく(;゚;ж;゚; )こんな顔になってレジ打つ始末。  
それでレジ打ち終わって、店員さんが  
「お会計、2180円に、なり、ます」って言った瞬間、そのおっさん  
「カカロット・・・お前がナンバーワンだ・・・!」  
店員さん死亡。  
俺も死亡。  
おっさん、あんたがナンバーワンだよ。
0113創る名無しに見る名無し
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2016/02/12(金) 11:34:09.98ID:GtpazGdd
是非ともお礼をさせてくれ、というミオの言葉が無くても、ミウたんはこの奇跡の再会を通り過ぎるそよ風の様なただの思い出にはしたくなかった
当然の事をしたまで、ミウたんはミオとヨシカの厚礼にそう言って答えた
嘘では無い あれは自分の戦いだったのだ
ミウたんが欲したのは決して報酬や見返りでは無く、この運命の巡り合わせが起こした奇跡を今暫く味わう事だったのだ
だから今晩もう一晩、ミオとヨシカの家に世話になる事にしたのだ
恩人として礼せよ、という意味ではない
今夜は友達として泊めてくれと

「ミウがそれ程までの弓の使い手だったとはな… 差し出がましい事をして恥ずかしい限りだ」
「そ、そんな事無いですよ! 私のは我流ですし…」
そう言ってミウたんは土間の奥の闇に目を凝らした
「あの立派な弓はミオさんの物でしょ? しっかり手入れがされているし、きっと私なんかよりお上手な筈ですよ!」
「実は一度も引いた事が無いのだ」
ミオは苦笑いを浮かべながら湯飲みを口に運んだ
「えっ でも、いつも猪を追い払ってるんですよね」
「んん? あぁ 私のは格好だけだ」
「は… はぁ…?」
そんな二人のやり取りを見ていたヨシカがクスクスと笑い出した
それに釣られてミウたんとミオもクスクスと笑い出した
何がおかしい訳ではないが、そんな雰囲気に和やかさを感じたのだ
「ご馳走様でした〜!」
贅沢ではないが、心の籠った夕げはそんな暖かな空気の中で終了した



「ふぅ〜 いい湯加減でした〜」
お風呂もご馳走になったミウたんは、バスタオルを頭から被り、寝所である奥の間の襖を開ける
丁度ヨシカがミウたんの為に布団を敷いている所だった
「ありがとうヨシカちゃん 今夜は眠らせないよ! いっぱいお喋りしようね!」
ふざけた口調のミウたんの言葉に、はにかむ笑顔で返すヨシカ
どちらかと言うと引っ込み思案で大人しそうな印象の彼女
それがミウたんには可愛い妹の理想像に映った
「ヨシカちゃんは中学生なのかな?」
布団を敷き終わり、その傍らにちょこんと正座するヨシカは、そのミウたんの言葉にも恥ずかしそうに微笑むばかり
0114創る名無しに見る名無し
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2016/02/13(土) 16:55:54.76ID:C9FuMMUK
「そう言えばヨシカちゃんはあの河原で何をして居たのかな?」
「……………………」
またしても言葉を返さないヨシカ
じっと俯き、膝の上に置いた己の拳を見詰めている
些かミウたんも扱いに困り出した
ひょっとして余計な気を使わせてしまったのか?
対人恐怖症だが命の恩人の願いには逆らえず、必死に笑顔を作ってるとか…?
はっ まさか… 私が百合的趣味の持ち主で、命の御代を身体で返せ的なニュアンスと勘違いして……!?
得意の統失的妄想全開で独り頬を染めるミウたん
まぁ でもこんな可愛い女の子なら一度位、倫理に背く非生産的行為があっても……
「あの、ミウさん!」
唐突にヨシカに名を呼ばれたのは、そんなレディコミチックなエロ妄想に浸ろうとした矢先だった
「は、はい!?」
そう言えばヨシカに出会って名前を呼ばれたのは初めてだった
ミウたんは若干面食らって返事の声が上擦る
顔を上げたヨシカの顔は上気し、その瞳は潤んでいた
(ごくり……)
ミウたんは唾を飲む
この雰囲気は…… 本当にやるのか、須内ミウ… もう堅気には戻れないぞ…
現実になりつつある妄想の中で、ミウたんの理性と好奇心が葛藤する
やるならやるでやはりここは年上、しっかりヨシカをエスコートしなければ…
少しずつ覚悟を固めたミウたんは言葉を選んで紡いだ
「だ、大丈夫… 大丈夫だよ、ヨシカちゃん… 優しく… 優しくするから……」
その言葉に安心したのか、ヨシカも覚悟を決めた様に後ろに退り、その場で額を畳みに擦り着けた
「どうか…! どうか、私達の村を救って下さい!!」
ミウたんは己の呼吸と脈動が荒くなっていくのを感じた
「いいよ、ヨシカちゃん ヨシカちゃんは何もしなくていいからね…! 痛かったら言ってね…!」
そっと膝立ちし、畳の上に踞るヨシカの肩に手を置いた
「いいえ! 私も… 私達も戦います! 力を貸して下さい!」
「責め…? タチの方が良いの? べ、別に構わないよ…… ハァハァ…… 私達…?」
頭に血が登っていく 顔が火の着いた様に熱い
「あ、ありがとうございます! 私、ミウさんなら絶対にあの悪い人間さん達をやっつけてくれると思ってました!」
「ハァハァ… 人間さん…? やっつける? …………ん?」
聞き慣れないワードの連続に、漸く素面に戻り始めたミウたん
なんだか展開が飲み込めない……
0115創る名無しに見る名無し
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2016/02/14(日) 08:11:47.87ID:iLrRAPly
「ヨシカ!」

その時、勢いよく襖が開け放たれた

「「!!?」」

そこに立っていたのは仁王立ちのミオだった
鋭い眼光がヨシカに向けられる
ミウたんは慌てて弁明する
「ち、違うのミオさん! まだ、まだ何もしてないの! ホントよ! そ、それに私、決して遊び心では…!」
流石に妹に手を出されては心中穏やかではないだろう
ましてやその妹の方から攻めさせて、などと口走られては姉の面目もあるまい
一時のエロ妄想で、また取り返しの着かない騒動が勃発してしまった
ミウたんは己の色んな意味での緩さを恥じた
「ヨシカ… この方が言い伝えの弓取りかどうかを見極める事、そして里を代表して救いを乞うのは私の役目だと言った筈…」
そんなミウたんをガン無視してミオは項垂れるヨシカの元に歩み寄る
そしてその前に屈むと、その肩にそっと手を置いた
「ふふ… すまなかった… お前に余計な気を使わせたな…」
その優しい声にヨシカは顔を上げる
「本来ならもっと早く私が決断すべきだった ただ、可能なら自分達の手だけで守り通したかったのだ 分かってくれ」
頭を振るヨシカの目は溢れんばかりの涙に潤んでいた
完全に置いてきぼりのミウたんは状況が全く飲めず、よく分からないが何となく感動的な気がする美しい姉妹のやり取りを、ただポカンと眺めるだけだった
「では、改めて己の役を果たそう… お前の目に狂いは無い様だ…」
そう言うと、今度はミオが畳の上に正座をし、ミウたんに向き直った
「ミウ… いや、ミウどの…… 里を代表してお頼み致す どうかこの村を救ってくだされ」
深々と頭を畳の上に擦り着けるミオ
「…………えっ? …………救う?」
先程から全く展開に着いていけないミウたんは、つぶらな瞳をただただ屡叩かせる
ミオはゆっくりと頭を上げて真っ直ぐにミウたんを見詰める
「申し訳ない 順を追って話そう 今、この村… 扶桑村は、悪どい人間達によって滅ぼされようとしている」
ミオの真剣な表情と話の内容に、ちょっぴり緊張感が芽生えたミウたんが今度は居直り、背筋を伸ばして頷いて見せる
相変わらず話の展開には着いていけないが、今は友となった彼女の真剣さには向き合わざるを得なかった
0116創る名無しに見る名無し
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2016/02/15(月) 21:37:34.90ID:OnWGvB1P
「我々は何とか抵抗を続けているが、多勢に無勢… 怪我を負って戦列を離れる者も少なくない」
「け、怪我?」
ミウたんの反芻にミオの表情が曇った
ただ事ではない話である
そして当然の反応を示す
「み、ミオさん、あの… 私にも出来る事ならなんでも手伝ってあげるけど…… それは警察とか、役所の人とかに相談した方が……」
その言葉にミオの表情が更に曇る
「我らの味方にはなってくれないのだ…」
「どうして? 怪我までさせられたら立派な犯罪じゃない! だいたいなんでこの村を…!?」
未だ完全に飲み込めないが、煮え切らない話の顛末に憤りを覚え始めたミウたん
訳も無く虐げられる善良な市民を放置する司法や行政などあって良いものか!?
おつむの弱いミウたんでも、そんな不合理が許されない事は理解出来る
「高速道路とやらの建設にこの村が邪魔らしい 既に村の直ぐ外まで普請が迫っている 昔は美しい野山だったのだが…」
そう言って力無く俯くミオ 友が初めて見せた弱さ…
「……つまり…… 政治家とか…… みんなグルって事なのね……」
おつむの弱いミウたんとて童では無い
この国の深い病巣が垣間見れぬ訳ではない
政治家、行政、土建業界… 巨大な利権が絡む公共事業ならば、黒も白になるのがこの国の習わしである
彼等にしてみれば、頑なに土地の明け渡しを拒むこの村の人々こそが悪の存在なのだろう
ミウたんはそのドス黒く醜い権利者達のやり取りを想像して、その全身に悪寒走らせた
それでも尚、ミオの願いを受け入れるには躊躇せざるを得なかった
「ミオさん 私、力になりたいけど… でも私に何が出来るかな…? 」
ミウたんにしては極めて理性的な反応だった
プラカードでデモをする? マスコミに訴える?
相手は警察や行政さえ動かす、強大な権力者達である
無意味だとは言わないが、それが状況を激変させるとも思えない
寧ろしっかりとした保証を勝ち取り、新しい土地で新しい暮らしを考えても…
ミオ達の気持ちを考えれば口には出せなかったが、ミウたんの彼女達を思う気持ちに偽りはなかった
「我らは先祖代々、この土地を守ってきたのだ…」
利発そうなミオは、そんなミウたんの心を読んだかの様に口を開いた
0117創る名無しに見る名無し
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2016/02/17(水) 19:10:17.02ID:bz5SSnIk
「先祖が血と涙を流して守ってきた土地を、我々だけがそれを避けて捨て去る事は出来ない……」
「うん……」
ミオのその深い想いに打たれ、ミウたんも素直に頭を縦に降った
「……でも…」
意を決して絞り出したミウたんの言葉を遮り、ミオは続けた
「この村には古い伝承がある… 嘗てこの村を襲った鬼を退治したという英雄の話…」
ミオは視線を土間の奥へと走らす
ミウたんの視線もそれに釣られる
「その英雄が使ったと伝わるのがあの弓… 凡人には決して引く事が出来ないあの弓…」
二人の視線の先で、壁に飾られた弓が鈍く浮かび上がる
「再び村に危機が訪れた時、あの弓を引く英雄が現れ村を救ってくれるという…」
「ちょ、ちょっと待ってミオさん!」
視線を戻したミウたんは慌てる
「あんな弓、ちょっとかじった事がある人なら…!」
「ヨシカはずっと探し歩いていたのだ そしてミウ、お前が現れた」
ミオも視線を戻し、そしてゆっくりとミウたんのそれに交じり合わせる
「ミオさん!? 私、英雄なんかじゃ…!」
「村に今必要なのは"希望"なのだ…」
ミオの言わんとしている事がミウたんにも分かった
道化を演じろと言うのだろう
それでも尚、余りに唐突で突飛すぎる願いに戸惑うミウたん
「私が引ける事なら、どんなに嬉しかった事だろう……」
ミオは再び視線を反らし、畳の上へとそれを落とす
「いや、たとえ引けたとしても…… 私はもう戦えんのだ……」
ミオゆっくりと右手を己の右目を覆う眼帯へと伸ばす
それを押さえた掌の隙間から一粒の滴が頬を伝い、ミオの膝頭に落ちた
「…………も、もしかしてミオさん…… その目は……?」
出会った時からずっと気になってはいたが、敢えて気付かない振りをしていたそれ
若く美しいミオの右目を覆う無粋な眼帯と、ミオの言葉がゆっくりと繋がり、ミウたんの心の奥底で小さな炎を燻らせ始めた
「お姉ちゃんの目だけじゃない…」
ミオの登場以来口を閉ざしていたヨシカは涙声を振り絞った
「お父さんも… お母さんも… 叔父さんも、叔母さんも…… みんな… みんな…!!」
涙声は嗚咽になり、ついには肩を震わせての号泣となった
押さえつけてきた物が堰を切って溢れる様に…

「嘘でしょ……? いくらなんでもそんな事……」

泣きじゃくるヨシカと必死に唇を噛み感情を圧し殺すミオ
その姿を目の当たりにすれば、その言葉に嘘が無い事など直ぐ分かる
嘘であって欲しかったのだ
0118創る名無しに見る名無し
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2016/02/18(木) 19:16:14.99ID:hF1U22nq
「ミウ… 改めて頼み申す! 私に代わりに村を率いてくれ! 皆の希望になってくれ!」
姿勢を正し、再度深々と額を畳に押し付けるミオ
その姿を前に、ミウたんの心に灯った小さな炎は勢いを増し、メラメラと火勢を盛らせ始める
それは忽ちその心の内を焼き尽くし、身体を巡る血液を沸騰させた
ミウたんも肩を震わせ、唇を噛み締めた
ミウたんは怒りを抑える事が出来なかった
誰に対する物でも無い、自分自身に対する怒りである
取り戻す事の叶わぬ多くを失いながら尚、勝ち目の無い過酷な戦いを続けてきたミオとヨシカ
彼女達はどんな想いで自分に助勢を求めたのか…
どんな想いで自分に伝承の英雄の姿を重ねたのか…
それを自分は… 彼女達の身を案じてと言いつつ、大した思案もせずにつまらぬ常識を振りかざし……
面倒な事に巻き込まれたくは無い… そんな想いが全く無かったと胸を張って言えるだろうか…?
自分が恥ずかしいかった… 許せ無かった…

『バッシィィィィ!!』

ミウたんは渾身の力で己の両頬を張った
乾いた音が室内に木霊する
ミオとヨシカが驚き顔を上げる
「ミオさん… ヨシカちゃん… 一つだけ確認させて……」
ミオはミウたんの瞳を覗き込み、ゆっくりと頷いた
「私は英雄なんかじゃ無い… だから、この村を救える保証は出来ない… それでも… それでも良いなら一緒に戦わせて…!」
その言葉に何かを口にしようとしたミオをミウたんの絶叫が遮った
「いや、戦う! 戦わせて貰う!! 須内ミウ18歳、完全にブチギレ申した!! この村を枕に… この命散らさせて頂く!!」
生まれてこの方、常に何かの運命の導きを感じてきたミウたん
こけし職人、上京、挫折、借金、逃走、河原でのハンターデビュー…
何者かに操られるかの様に、転がされる様にさ迷い歩いた人生…
その意味が漸く分かった
自分はこの義の為に生きてきたのだ
此処で命を散らす為に導かれてきたのだ
己を導いた宿命の輪がゆっくりと閉じていくのを肌で感じた
「ありがとうミウ……」
「ミウさん……」
ミオとヨシカはミウたんの手を取り、それぞれの頬に押し付けた
涙に濡れた肌の感触が、例えようも無く心地良かった
0119創る名無しに見る名無し
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2016/02/20(土) 13:44:55.82ID:vau0ofid
「サーチします…」
小高い嶺の頂から赤外線スコープで辺りの周囲の様子を伺うエマ
その側で模造銃を抱いたアミヤは杉の枯葉に埋もれかけた何かを爪先で蹴りだす
鈍い金属音を響かせて踊り出たのは錆び付いたブリキの水筒だった
傾いた飲み口から水がトポトポと溢れ出す
「……チャンスみたいですね… 敵影は見えませんよ…」
スコープから目を離したエマが呟く
山野の日没は早い
既に闇が支配しつつある森の中、将校斥候に出た二人
そこは昨日まで敵の拠点の張られていた小屋のずき近く
急激な気温の低下を覚えたアミヤはマフラーを口元までたくし上げる
「中尉はどう思う?」
「どう? ……敵さんの動向ですか?」
「いや… 連中の正体よ」
エマはずれた眼鏡を人差し指で整えながらアミヤの背中に近付く
「そんな事を気にするなんて貴女らしくないですね… 上からの指令ですか…?」
アミヤが見抜いた通り、今や彼女の片腕として欠く事の出来ない存在となったエマ
作戦の立案や隊の編成など、重要な案件はほぼ二人で決定していると言ってよい
そんな参謀役はアミヤの言動を訝しがる
「いや… 個人的に気になってね… これ程迄に頑なで組織的な抵抗をする相手は今まで居なかった…」
水を吐き出し終えた水筒を手持ち無沙汰に爪先で弄ぶアミヤ
「何の為に連中は戦うのかしら…? この戦いの先に何を得ると言うの…?」
敵の姿が見えない事に不思議は無かった
文字通りの痛撃を与えたのである
あの戦闘の様相からして怪我人が出たかもしれない 或いはそれ以上のケースさえも…
当然この汚れ仕事に手を染めた時からそんな事は想定の範囲であり、今更それを厭いはしない
会社からも気にする必要は無いと伝えられていた
司法もマスメディアも自由に出来るらしい
流石に本物の銃火器や軍用車両の使用はマズいが、あくまで"業務遂行の過程の不幸な事故"という体なら全てを都合良く揉み消す事が出来るらしい
身の毛のよだつ下衆
アミヤはそう言ってよく自分達の存在を下卑し自嘲した
敵がどれ程純粋で無知な連中なのかは分からない
それでも1ヶ月以上にも渡り交戦を続ければ、自分達が相手をしている連中が如何に常軌を逸した超法規集団である事には気付きそうなものだ
或いは気付いているのかも知れない
それでも激しい妨害工作を止めぬ理由…
0120創る名無しに見る名無し
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2016/02/22(月) 00:11:14.28ID:GMy47KkK
ライバル企業の線はほぼ無い
最早払ったリスクにリターンが見合わない
環境団体の線も薄い
排除された敵がそれを逆手にマスコミや警察に訴えたという報告が無い
姿を見せず、要求も出さず、多大なリスクと損害を払いながら、それすら利用しようとしない敵…
突破されても突破されても防御線を築き直す敵…
百戦錬磨のアミヤをしても、その敵の正体と目的に薄気味悪さを感じずにはいられなかった
それが"恐怖"という感情なら、紛うことなく
この仕事を始めて感じるそれであった
「人が何を考え、何を成そうとし、何を捨て去るのか… 余人には及びもつかない事ですよ…」
アミヤを数歩追い越したエマが再び赤外線スコープに目を当て、森の奥の闇を見遣る
冷血を自認するアミヤでさえ、時として薄ら寒さを感じる程冷静沈着な眼鏡娘
彼女はスコープを覗いたまま続けた
「大尉さん… 貴女は何の為に戦うんです…?」
「? ……そ、それは…………」
不意の質問に言葉を詰まらすアミヤ
「……それは、根潤井建設の正社員になって……」
「……何の為に… です?」
何の為? 唐突に突き付けられたその問の答えを無意識に探す自分に気付いてアミヤは苛ついた
この女のこういう所だけが苦手なのだ
「中尉、あんたは何の為に戦うのさ?」
悔しさを誤魔化す様にアミヤは質問を投げ返した
「さぁ…? 何の為で…きゃっ!?」
その答えは珍しい彼女の悲鳴で帰ってきた
「何よ!?」
アミヤは手首に下げたLEDライトを握り、エマの側に投光する
「……タヌキ…… みたいですね……」
エマは足元のそれを光の輪の中に蹴りだした
小さな獣の亡骸が、糸の切れた操り人形の様にその中を転がった
「可哀想に… 中尉に踏まれては一溜まりも無かったわね」
「止めてくださいな… 私に踏み潰される様なノロマな野生動物なんて居ませんよ」
靴の底に貼り着いた何かを擦り取る様に靴底を地面に擦らしながら、エマは不機嫌そうに撤収を開始した
アミヤはそんな上官無視の規律違反を犯した部下の背中を、笑いを堪えながら追従するのだった
0121創る名無しに見る名無し
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2016/02/22(月) 17:51:32.62ID:b8iVnDb8
『ストンッ!!』

ミウたんの放った矢が黒松の幹に刺さる

「「わぁ!」」

ギャラリーから黄色い歓声が上がる
それに気分を良くしたミウたんは鼻腔を広げ、二の矢、三の矢とつがえて黒松に新たに生まれた篠芽竹の標的に向け放つ

『ストッ! ストンッ!』

小気味良い音を響かせて見事にそれが刺さっていた標的を粉砕すると、更に甲高い歓声が辺りに響く
「さぁ みんなもやってみて!」
ミウたんの声に少女達はぎこちない手つきで思い思いに弓を引く
ミウたんの得物、Mー16と彼女が称して譲らない例のアレを模した手作り弓
明くる日、それを人数分自作させる所からミウたん流弓道の手解きは始まった
ミウたんの手にする和弓とは射程も威力も桁違いに乏しいが、寧ろ素人にはその方が扱い易いだろう
決戦の時は目前まで迫っている
限られた時間で急造の弓部隊を戦力にするには極限まで妥協せざるを得ない

『ヒュン! パラッ パタッ』

少女達の放つ矢は狙いも勢いもバラバラに黒松の周囲に注がれるが、一本も幹に鏃を突き立てる事は出来なかった

こんな女の子達に…
伝承の英雄役を志願し、村に殉じる事を誓ったたミウたんではあったが、ミオから手勢として預けられたまだ年端もいかない彼女達の姿を目の当たりにして胸を詰まらせた
村の大人や男達は全て主力として前線に駆り出され、そして数日前から連絡も途絶えたそうだ
最早村を守れる手勢はミウたんの他にはミオとヨシカと目の前の彼女達だけである
何とか大人や男達が戻るまで堪えなければ…
プチ家出だと思っていたヨシカの外泊も、実を言えば夜通し主力部隊との接触と捜索に奔走しての事だった
何とかこの娘達は巻き込みたく無い…
弓の手解きをしながらも、ミウたんはある決意を胸に秘めていた
弓の訓練はあくまで自衛の為であり、いざとなればミウたん1人が前線に立ち、命と引き換えに大立ち回りを演じるつもりなのだ
悪の手先の土建業者を何人も病院送りにさせれば、流石に大事になり計画の見直しに繋がるかもしれない
可能性は低いが、最早それ位しか縋れる物もない
ミオやヨシカの村を思う気持ち、親族を失った怒りには共感するが、同時にこの娘達が命を賭けてまで戦う必要は無いとミウたんは考えていたのだ
0122創る名無しに見る名無し
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2016/02/23(火) 17:33:22.68ID:ZYtznuBC
「ダメダメ! もっと竹輪の穴に明太マヨネーズを通す様な気持ちで!!」
具体的過ぎるミウたんの指導にも素直に頷き、何度も何度も弓を引き矢を放つ少女達
そんないたいけな姿を見詰めるミウたんの前に、不意に手拭いが差し出された
「!? あっ 貴女は!?」
見れば昨日、生垣の向こうで危うく射殺しかけたあの少女が、微笑みながら両手を差し出していた
「あ、ありがとう き、昨日はごめんね!」
改めて昨日の非礼を詫び、差し出された手拭いを受け取るミウたん
少女は頭を振って更に明るい笑顔を向けてくる
「私が噂のミウよ お名前は?」
「名前…? えっと…… アー… カー… サー… サーニャ… です…」
「? ふふっ 面白い子だね ハーフさんかな?」
そのミウたんの問いに、身を捩りながらはにかむというよく分からないリアクションを返すサーニャ
「でも昨日は死んだと思いました……」
そう呟く彼女の白い頬に貼られた絆創膏
「弓を引く時は気をつけなきゃ駄目よ」
急に教官の顔に戻るミウたん 初心者がやりがちなミス
身を守る為の術で己を傷付けては意味はないのだ
ミウたんの言葉にサーニャはちょっぴり真顔になって敬礼すると、仲間達の訓練の輪へと飛び込んで行った
受け取った手拭いで滲む汗を拭うミウたんの視線の先に、索敵と情報収集から帰還したヨシカの姿が現れた
小柄だが運動神経抜群の彼女はそういう役目にうってつけの存在だった
ミウたんは可愛い部下達に訓練の続行を命じると、今から始まる筈の作戦会議の為、ヨシカの足音を背に母屋へと歩を向けた



薄暗い奥の間に備えられた小さな仏壇
その前に座したミオは傍らの鈴を優しく打つと、目を閉じ静かに手を合わせた
その背中の先で、ミウたんとヨシカもやはり目を瞑り手を合わせる
数十秒の沈黙の後、ミオは二人に向き直る
先祖代々村長を勤めてきたというミオの家計
その歴々の御霊が見詰める前で、村の運命を賭けた最終決戦の軍義が始まった
0123創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/02/24(水) 16:55:29.13ID:y+X53lZG
敵情を視察したヨシカの口から語られたのは、村の先1キロまで迫った開拓団の威容と荒廃した山野の惨状だった
それに対峙している筈の大人達の安否を問うミオに対し、ヨシカは俯いて首を振った
一人の姿も確認できなかったらしい
ミオも表情を沈めて沈黙する
「ここの大将はミオさんでしょ!? 大将が沈んでては駄目よ! みんなきっと無事な筈よ! 私達が信じなきゃ!!」
努めて大声を張り上げるミウたん
何の根拠も無いが、戦うと決めた以上、出来る限り前を見なければならないのだ
生き馬の目を抜く河原暮らしが、ミウたんを一人前の戦士に変えていた事を、本人ですら自覚してはいなかった
ミウたんの励ましにミオも顔を上げ、コクりと頷いてみせる
その表情はもう頼もしい何時ものミオだ
「今までの行動パターンから言って、相手は週明けの明日朝には進軍を開始してくるだろう この距離では正午前にはこの村に殺到してくる」
ミオは皆の前に広げた地図に位置関係を大まかに印していく
「あの巨大な普請車輌を前面に押し出されては我等に勝ち目は無い 」
今度はミウたんがコクりと頷く
「敵の前線と村の中間… この小川を挟んだ丘陵に陣を引いて迎え討つ ここならあの鉄の獣も動きを緩めざる得ない そこで可能な限り痛撃を与えるのだ」
「最終防衛ラインって事ね…」
戦力差は余りに膨大で取れる手段は限り無く少ない
最早作戦の是非を問う段階ではない やるしかないのだ
三人は互いに顔を見合わせると力強く頷いた
「明日、早朝に立つ 今宵は早めに休んでおけ!」
大将ミオの言葉で最初で最後の軍義は散会となった





「ふぁ〜 やっぱり一汗流した後のお風呂は気持ちいいわね〜」
「ミウ… お主を巻き込んでしまった事… 改めて詫びさせてくれ…」
あれから部隊の訓練の総仕上げに入ったミウたん
何とか弓を真っ直ぐ飛ばせる迄になった教え子達に明日朝までの休息を命じ、今、ミオと同じ湯船に浸かる
到底戦力にはならないだろうが、それで良い
自分の村の為に戦おうとした記憶だけを留めておいて貰いたいのだ
0124創る名無しに見る名無し
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2016/02/25(木) 17:55:24.02ID:QBmRCh+f
「お詫び? どうして? これは私が自分で決めた事よ」 
「ふふ… ミウ、お前は気持ちの良い奴だな さぞや友も多かろう 良い男も居るのであろうな」 
ミオが自分の肩を撫でると湯船に波紋が広がった 
「ふふん 良い男か… まぁ尊敬する男の人は二人ほどいるけどね〜」 
ミウたんは今頃焚き火を囲んでいるだろうその二人の姿を夢想した 
「なんと二人もか… まぁ 尊敬できる者が居るのは良い事だな」 
「ミオさんだって誰か良い人が居るんでしょ?」 
自分が出会った女性の中でも、例の先輩に匹敵する程美しいミオを、男達が放って置く筈がない 
「……あぁ そうだな… 年の暮れに夫婦の契りを交わした許嫁が居る…」 
「わぁ 素敵〜! 羨ま…………」 
途中まで口にして、ミウたんは己という生き物の軽薄さを改めて憎悪した 
何故に私はここまで無神経で知性の乏しい生き物なのだろうか? 
気まずい沈黙が湯気と共に浴室に漂う 
「……生きて居ればの「絶対に生きてるよ!!」 
聞きたくないミオの言葉を遮って発したミウたんの絶叫が浴室に木霊した 
「……ふふ そうだな… 信じねばな……」 
そのやり取りで幾らか解けたが、依然流れる重い空気 
そんな二人に助け船を出すかの様に、窓の外から賑やかなお囃子が聞こえてきた 
「始まった様だな 」 
ミオが呟いた 
「あれ? お祭りは来週の筈じゃぁ?」 
「ふふ… 繰り上げたのだ 来週まで村が無事な保証も無いしな それに……」 
言葉途中でミオが一足先に湯船から上がる 
湯に火照られても尚神々しい迄に白い裸体がミウたんの視界を遮る 
釣られる様にミウたんもミオの後を追い湯船を出る 
「ヨシカがどうしてもミウに参加して欲しいと言ってな…」 
「私に…?」 
「ヨシカなりにせめてもの恩返しのつもりなのだろう 戦勝祈願とでも思って参加してやってくれ…」 
タオルを身に巻いたミオが髪の湿気を拭いながらミウたんに向き直った 
「うん! 喜んで!」 
「ミウさん! お迎えに参りました!」 
「ヒィッ!?」 
ミウたんのその返事を待っていたかの様に唐突に脱衣所の引戸が開かれ、そこに捻り鉢巻に法被姿のヨシカが現れた 
あられもない姿のミウたんは、取り分け隠す必要も感じない貧相なその身体を小生意気にも腕で包む 
0125創る名無しに見る名無し
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2016/02/26(金) 18:05:53.22ID:6oJXsPTe
「どうぞ、祭装束です! こちらをお召し下さい!」
一片の邪心も感じないに和やかな笑顔で自身が纏うそれと同じ法被を差し出すヨシカ
「あ、あ、ありがとう… 楽しみ… だな…」
もう嬉しくて楽しくしょうがない、そんなヨシカのオーラに完全に気を呑まれたミウたんは片手にそれを受け取ると、そそくさと袖を通す
濡れた身体に纏わり付く法被 その丈は明らかに短い
脱衣所の全身鏡に写る自分の姿は、下半身を露出した法被姿の間抜けな痴女…
下品なアダルトビデオのパッケージのそれ宛ら…
「あぁ… あれ……?」
困惑したミウたんが法被の裾を伸ばしながらヨシカに目をやると、これまた屈託の無い笑顔で2本の帯を差し出した
1つは鉢巻で… もう1つは……
そこでミウたんはヨシカの下半身の格好に気が付いた
「これって… もしかして……」
困惑するミウたんに着替えを終えたミオが声を掛けた
「褌は初めてか? 神輿を担ぐには法被に褌が古来からの習わし… 私が身に付けてやろう」
(あぁ やっぱり…)
ミオはミウたんの代わりに褌を受け取るとミウたんの背後に回り、慣れた手付きでそれをミウたんの下半身に巻き付ける
未経験の強烈な束縛感がミウたんの恥ずかしい部分を刺激する
エロ妄想には人一倍造詣深いミウたんだが、今流石にそれに浸る心理的余裕は無かった
「ヨ、ヨシカちゃんは… 恥ずかしく… ないの…? この格好……?」
目の前で背伸びをし、ミウたんの頭に一生懸命鉢巻を巻いていたヨシカはそれを終え、一歩飛び退ってニコニコと答えた
「パンツじゃ無いから恥ずかしく無いもん!」
「……そ、そうなんだ……」
「ほらっ 出来たぞ!」
ミオはミウたんの背中をぱんっと叩いた
再び全身鏡に写る己を見遣るミウたん
そこには素人盗撮ハプニング企画ビデオのパッケージにも似た自分の姿が写っていた
「ミウさん素敵!」
「なかなか似合ってるぞ、ミウ」
二人の朗らかな笑顔とは対照的に、ミウたんの額には無数の縦縞が描かれるのであった
0126創る名無しに見る名無し
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2016/02/27(土) 18:06:53.48ID:e15L/dc8
『ピ〜 ピ〜 ピ〜ヒャララ〜』

締太鼓と篠笛を先頭に神輿はゆっくりとミオ宅の庭を出立する
当然奏者も担ぎ手も残された少女達ばかり、ヨシカとミウたんとその可愛い部下達である
最早見送る者も存在しない村中の一本道を、丘の頂きにあるという神社まで奉納しに行くのだ
ヨシカと共に担ぎ手の先頭を努めるミウたん
頭一つ分背の低い彼女達に合わせながら、腰を屈めて無人の村道を練り歩く
まるでこびり付いた厄を削ぎ落としていくかの様に、ミウたんの記憶のライブラリーも走馬灯の様に様々な過去の情景を浮かばせては押し流す

瞼の母… 父の失踪… こけし職人の夢… 上京と望郷… 出逢い… 別れ… 挫折…
流れ流れ、墜ちに墜ちて、何時しか河原の狩り暮らし…
豬と戯れ、鰐と格闘し、何とか現世に泳ぎ戻れば、いつの間にか跡形も無く消え去った夢の欠片達…
時に追われ、人に追われ、金に追われ、現実に追われ、辿り着いた先は見知らぬ山奥の無人駅…
数奇な運命、悟った天命、契りを交わして修羅へと踏み込み今、褌姿で神輿を担ぐ…

「ミオさんはやらないんですか?」
ミウたんのその問にミオは笑って答えた
「良い年した女がそんなはしたないな格好ができるか」


(いったい何やってんだろ、私……)


一番星がその神社の遥か天空に輝く頃、村一番の神事は滞りなく終了した





「出撃は翌朝6時! 本社は明日の諸君の活躍を殊更注視しているぞ! 必ずやその功に報いる事だろう! 本日は終業、明日に備え英気を養え!」
アミヤの号令に隊員達は銘々その場を離れて行く
最前線に程近いベースキャンプ
その中で一際大きい指揮所兼用のアミヤのテント
そのシェードの下、1人残ったエマが頬杖をついてテーブルに広げた地図を眺める
「最終目的地の旧扶桑駅までは直線で5キロ 500メートル先の小川を越えれば後は平坦な道のり、日没迄には到達できそうですね… 」
0127創る名無しに見る名無し
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2016/02/28(日) 17:07:46.69ID:IF3+6Vvz
「成る程、仕掛けて来るならその川縁ね」
アミヤはエマの対面に腰掛け、魔法瓶からカップにコーヒーを注ぐ
「いえ、けっこうです… 結局、妨害工作の主は旧大泉鉄道の関係者って事で確定なんですかね…」
差し出されたコーヒーを断り、エマは眼鏡の位置を整える
「それ以外には考えられないでしょ? 何れ本社の調査部が全容を明らかにする筈よ」
小さな甲虫が吊るされたランタンに当たりテーブルへと落ちた
「愚かですね… 高速道路の建設を阻害した所で、もう誰も住んでいない土地の潰れたローカル鉄道なんて…」
「知ってる? 大泉鉄道の敷設って、根潤井建設の最初の主管事業だったそうよ」
アミヤはカップを手に立ち上がると、旧大泉鉄道の廃駅があるという北の空を支配する宵闇を睨んだ
根潤井建設が担当する施工エリアの北限
そこはアミヤ達の戦いの最終目的地でもある
「虚しいものね こうして苦労を重ねて作り上げる高速道路も、いつの日かきっと役目を終え、人の記憶からも消えていく… 人の世は忘却という名のの塵の積み重ねね…」
「忘れ去られていく者の精一杯の抗い… なんですかね…」
エマはアミヤに肩を並べて同じ闇の空を見詰める
二人の目にはそこに見えない筈の廃駅が見えていたのかも知れない
「名もない雇われ掃除屋達が、時代に取り残された者達の悲鳴を聞く… 滑稽な人の世の縮図といった所ですかね…」
「…………明日は長い1日になりそうね」
アミヤはコーヒーを飲み干すとエマを残し、テントの中へと身を潜り込ませる
「あらっ?」
「!?」
背中の向こうで突如上がったエマの声
普段は滅多に聞かせない調子外れなその声にアミヤの動きは止まる
「どうしたの?」
肩越しに振り向いた視線の先で、宵闇を見詰めたままのエマが答えた
「……いえ… 今… 遠くで祭囃子が聞こえた様な……」
「ふふ… 敵さん、祝勝の前祝いでもやってるつもりなんでしょ 生意気ね …或いは今生の別れを悼む惜別会かしら…」
アミヤも無意識に耳を澄ますが、彼女の耳にその音色は聞こえなかった
「……小川の向こうに扶桑村という、今は誰も住んで居ない廃村があるらしいですね… 神輿祭が有名だったらしいです……」
「もう、やめてよそういうのは!」
アミヤは急に語気を荒げ、不機嫌そうにテントに潜り込んだ
0128創る名無しに見る名無し
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2016/02/29(月) 19:25:49.30ID:5+d1D/eY
「青鷺、準備良し!」
「黄玉、発進準備完了!」
無線機から飛び込む僚車の声
「さぁ我等も神のパンプキンパイをバラしに行きますよ… パンツァーフォー」
ハッチから身を乗り出していたエマは司令車に向かい小さく敬礼すると運転席の真後ろ、車長席に潜り込んだ
「赤狐、パンツァーフォー!」
運転手が復唱し、無限軌道が軋みを上げな
がらのたうち始める
エマ率いる3台の装甲散水車が先陣を努め、その後を装甲作業車が続く

「うちらも行くわよ!」
それを見送ったアミヤの声が狭い戦闘室に凛と響く
「紺蛍、パンツァーフォー!」
アミヤの乗車両と2両の僚車は、赤茶けた粘土質の土壌に描かれた先行部隊の轍を斜めに横切り、一足先に杉の木立の中に突入していく
槌と金床… 今回も敵の動きを的確に読んだ二人の必勝戦術
エマ達が囮を務め敵の注意を引き付け、アミヤ達が背側を突くのだ
「大尉、この戦いが終われば本社は我々を本採用してくれるのでしょうか?」
操縦舵を握る伍長がペリスコープを除きながら声を上げる
「そういうのは死亡フラグというのよ、伍長 先ずは任務をこなす事だけを考えなさい」
アミヤには微かな希望があった
アミヤの上げた敵に関する報告書により、本社の上層も実務班の激闘と貢献の事実に気が付いた筈だ
少なくとも一定の配慮はなされる筈…
契約社員の地位程度ならありつけるかも知れない
それをステップアップに……
そこまで考えてアミヤは頭を振った
死亡フラグだ… 先ずは戦いを勝利のうちに終わらせるのだ
アミヤはハッチから頭を出すと、双眼鏡を昨夜見た北の空の下へと向けるのだった

「見えましたよ あの斜面の下が小川です その対岸の稜線に間違いなく潜んでいますよ」
エマは落ち着いた声で無線を飛ばす
部隊は杉林の外れ、小川の流れる土手を出前に戦列をゆっくりと組み直す
目的は敵を釣り出す事である
出来るだけ大袈裟に目立つ様に攻撃体制を整える
「あれで隠れてるつもりなんですかねぇ」
ペリスコープを覗くエマはその中央で木陰から此方を覗く人影を捉えていた
0129創る名無しに見る名無し
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2016/03/01(火) 19:41:44.22ID:XMLbBP2g
杉の木立の間を小動物の様に縫ってヨシカが飛び込んで来た
「来ました! 5台! こっちに大砲を向けてます!」
息を切らせながら捲し立てる
小川から少し離れた林の中、幾つかの椅子が並べられただけの形だけの本陣
「よしっ…!」
明らかに緊張を孕んだミオの声を合図に、その椅子に腰を掛けていた3人は立ち上がる
ミウたんは和弓の弦を弦輪に通し指で弾く
ミウたんにより弓部隊の副長に任じられたサーニャは、一足先に後方に控える部隊の元に走る
ミオは金細工の美しい鍔を備えた日本刀を左手に握る
村長の家に代々伝わる名刀らしい
刀の心得は無いが、村長の名代として大将を努める今、その意気地だけでも示さんと持参したのだ
「ミオさん、前線の指揮は私に任せて!」
「いや、ミウだけに危険に晒す訳にはいかない お主の盾になるのが私にできるせめてもの事だ」
ミウたんは自身が先を行こうとするミオの肩を掴み制した
「ううん 大将はあくまでミオさんなんだから! 大将はどっしり構えてなきゃ!」
「しかし…! 」
「ミオさん、私、負け戦をするつもりはないわよ!」
その言葉に漸くミオは静かに頷く
ミウたんの言うことが尤もだと思ったし、何より戦えぬ自分がミウの足手まといになる事が嫌だった
ちょうどミウたんの可愛い弟子達が量産型M-16を手に3人の脇を前線と向かう
「ミウ… 皆を… 頼む!!」
ミオの叫びに今度はミウたんが黙って頷き、
少女達の背中を追って走り出した

ミウたんは小川を望む丘陵の頂きを目指して走る
やがて金属の獣達が上げる咆哮と倒される樹木の悲鳴が聞こえてきた
追い抜いた少女達を途中の木陰に待機させると、ミウたんは1人、頂上付近の木の根元に飛び付き、そこからみえる小川の対岸を偵察した
2台のブルトーザーが手当たり次第に樹木を押し倒す
3台の見慣れぬ工事車両がその間を動き回り、草木の茂みを踏み均す
その車両の上部にはヨシカの言う"大砲"らしき物が見えた
瞬く間に均されていく雑木林
ウたんの目にはそれが渡河の為の足場作りに見えた
手慣れた素早い整地作業もそうだが、それ以上にミウたんを驚かせたのが各車両を隙間無く覆う金属板の存在だった
0130創る名無しに見る名無し
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2016/03/02(水) 19:44:49.53ID:wGChz1Fe
「くっ……」
ミウたんは思わず唇を噛む
如何に和弓が強力であると言っても、到底金属板を射抜ける程のものではない
襲撃に対する備えは万全の様だ
ミウたんの刺し違えの覚悟は変更を余儀無くされる
そうこうする内にブルトーザーが大量の土砂と倒木を土手へと押し出してきた
スロープだ 渡河が始める
ミウたんは下方に合図をし、サーニャを呼ぶそして駆け寄って来た彼女に、事前に準備させておいた麻布を部隊に配布するよう命じた
「火を… 点けるんですか…? 火事になりますよ!」
ミウたんのその目的を聞き、おっとりとした印象の彼女も流石に声を荒げた
「大丈夫よ 生木は燃やそうとしたって燃えないわ バリケードができれば良いのよ!」
河原でのフリーランサー暮らしで得た知識
どれだけ火起こしに苦労した事か…
あの手の建設重機にもゴムや配線が随所に用いられている事ぐらいミウたんにも分かる
無理して炎に突っ込めば無事には済むまい
躊躇させれば幾らかの時間稼ぎにはなる筈
そして時間はミウたん達の味方だ
サーニャの指揮の元、稜線の影に一列になって矢をつがえる少女達
ミウたんはその一人一人の元に寄り、矢に巻かれた麻布に火を突けていく
麻布には蝋が擦り着けられてあり、瞬く間に赤い炎が上がる
「……よしっ 今よっ!」
稜線の頂きから身を乗り出したミウたんは、今まさに急造のスロープを下らんとする重機群を認めて号令を発する

『ヒュン! ヒュヒュン!』

少女達の放つ矢はやはり勢いに不足し、対岸に辿り着く事無く、小川のながれる谷の中に落ちていく
だがそれで良い
小川の縁には落葉が堆積していた それに火矢が次々と飛び込む
忽ちあちこちで白い煙が上がり、次いでメラメラと炎が立ち登る
瞬く間に小川を挟む炎のカーテンが産み出された



「ずいぶんと荒い手を使うんですね? それだけ後が無いという事ですね…」
先頭を行くエマの乗車両が炎のカーテンに阻まれる
「でも、学習はできないんですね…」
そういうとハッチを開け身を乗り出し、放水砲のコックを捻る
「当然本来の使い方も出来ますよ…」
0131創る名無しに見る名無し
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2016/03/04(金) 17:06:11.49ID:yGnxt3nk
放水砲から放たれた水塊はあの日稜線を薙いだそれとは異質な物だった
極局地的集中豪雨… そう形容できる様な拡散散布であった
忽ち炎のカーテンは本体の落葉ごと文字通り消し飛ばされる
「或いは無駄水を使わせる算段ですかね…?」
ずれた眼鏡を整えながらコックを逆に向ける
それまでの豪雨が一瞬にして集約し、一条の白線に姿を変える
今度はあの時のそれだ
「無駄弾を使わせられてるのは、あなた方ですけどね…」
エマはハッチの奥に身を沈めながら放水砲の砲口を対岸の稜線に向ける
後に続く僚車も放水を開始する

『ドドドドドッ!』

頂きの腐葉土が一瞬にして剥ぎ取られる
凄まじい水流が轟音と風圧を伴って駆け抜ける
「危ないっ!」
ミウたんの掛け声に身を屈める少女達
一同の頭上に大量の泥水が降り注ぐ
「やったな〜……」
河原生活に於いてさえも記憶に無い程泥まみれになったミウたんは、何とか顔を拭って視界を確保する
「みんな、大丈夫?」
眼下の部下達を見渡すミウたん
怪我こそ無かろうが、皆一様に泥にまみれ、それを拭おうと呻きながら格闘している
まだ少女の彼女達には十分過ぎる精神的ダメージだろう
まさかあんな武器があったとは…
守りは固く、攻めは鋭く、付け入る隙を見つけられない
やはり人間はこれまで対戦したどんな猛獣よりも強敵であった
放水の止んだタイミングで再び小川の流れる谷底を覗くミウたんは、そこで蠢く5台の重機の姿に無力感に苛まされていった



ミオは椅子に腰掛け目を瞑り、日本刀を杖の様に身体の前で支えていた
その前でヨシカが落ち着かない様子の行ったり来たりを繰り返す
二人の耳にも前線の喧騒が聞こえていた
「お、お姉ちゃん… 私も…!」
「伝令と偵察がお前の仕事だ 自分の役目を全うするのだ」
ミオは目を閉じたまま静かにヨシカを制した
彼女の瞼には忸怩たる思いに身を焦がす妹の姿が浮かんでいた
ミオとて同じ気持ちなのだから
0132創る名無しに見る名無し
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2016/03/05(土) 21:54:30.89ID:0Qkc4umH
「ミウは負ける戦はしないと言った それを信じるのだ」
その言葉にヨシカが口惜しそう頷くのをミオは感じ取った

「「!?」」

その時、木立の向こうから微かに響く異音に二人は気付いた
明らかに前線とは違う方向から響く、金属の擦れ合う汚ない音と、灌木を踏み潰す乾いた音…
「お、お姉ちゃん?」
ミオはヨシカの手を引くと、近くで最も太い杉の幹の影に身を隠した
カラスが黒い羽根を散らしながら林のなかを乱舞し始めた



「よし… そろそろ後背を取るわね…」
激しく振動する車内でGPS端末機を手に地図を睨むアミヤ
頃合い良しと見て膝元の無線機のトランスミッターを取る
「緑月、白雉、転身右90度! 奴らの背後を突くのよっ!」
「!? 我等は…?」
運転手の伍長が首を少しだけ捻りアミヤに尋ねた
「私達はこのまま直進よ! もう戦争ごっこは終わり 一気にタッチダウンするわよ!」
その声が聞こえたかの様に、後続の僚車が同時に回頭する
金床にへばり着いた塵 それを潰す槌は2本もあれば十分だろう
後はエマが抜かり無くやる筈
アミヤの狙いは奴らの尻尾を掴む事
本社の調査チームが訪れる前に、連中の素性を暴くのだ
それが自分達の作業単価的存在価値を本社にアピールする事になる筈なのだ…
少しでも"使える奴ら"と思わせるのだ…
アミヤが睨む旧大泉鉄道関係者説 それを立証する鍵がこの奥にある筈…
連中が必死になって守るそこに、連中の根拠地があるとアミヤは踏んだのだ



「まずい… 別動隊があったとは…」
木陰から覗く二人の先で、3両の重機は二手に別れる
「お姉ちゃん!」
青ざめた表情のヨシカがミオの顔を覗き込む
「このままではミウ達が挟み撃ちだ… ヨシカ!走れるか?」
ヨシカは風を起こす程の勢いで頷く
「敏捷なお前なら先回り出来る筈! ミウ達を逃すのだ! 急げ!!」
0133創る名無しに見る名無し
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2016/03/07(月) 18:06:00.98ID:w62B5G70
「お姉ちゃんは?」
早くも一歩を駆け出し掛けたヨシカは慌てて踏み止まり、心配そうにミオを振り返る
ヨシカはミオが早まる気がしてならなかった
「あの1台を追う あれは村に向かうに違いない!」
「そんな…! 無茶よっ!」
「心配するな 分かっている お前達が来るまで何とか時間を稼ぐ! だから急ぐのだ!」
再び頭で風を切り、ヨシカは灌木の中へと飛び込んで行った
「………………」
その後ろ姿を見送ったミオは視線を前に戻すと日本刀の鯉口を握り、大分先行を許した1両の後を追った



浅い小川を難無く渡り切った5台の重機は、その圧倒的暴力性を誇示するかの如く丘陵の裾を無秩序に往復する
ミウたんにはそれが角度の浅い登坂ポイントを探している様に見えた
「えいっ!」
駄目元で放った矢はやはりその車体に突き刺さる事無く、爪楊枝の様に弾かれ、金属の軌道の下に飲み込まれていった

(斯くなる上は…)

ミウたんは悲壮な覚悟を決めた
背後に控える泥だらけのサーニャを呼び指令を与える
「残念だけど、ここを抜かれるのは時間の問題だわ サーニャちゃんは皆を連れてミオさんの所に戻って 絶対に落ち延びるのよ!」
「そ、そんなっ! 隊長は!?」
「私は今から肉弾戦闘を挑むわ 可能な限り時間を稼ぐ 大丈夫、あんなのクロコダイルに比べれば可愛い物よ!」
精一杯の笑顔でウインクをし、強がって見せるミウたん
はっきり言って勝算は無い 何か妙案がある訳でも無い
遠距離攻撃が効かないなら間合いを詰める、というドンさん仕込みの戦いの技
それを実践する以外にやれる事が思い付かない
ミウたんは逃げる訳にはいかないのだ
どうしてミオに顔を合わせる事ができようか?
相手は想像を超える戦いのプロだった
だからと言って伝承の弓取りがおめおめと尻尾を巻いて逃げ帰る理由にはならない
死地に活路を見出す、という言葉もある
もしかしたら、美少女である自分の姿を直近で見た敵が戦意を喪失するかも知れない
そう思ったら何となくそうなりそうな気がしてきた
そうだ! これ、凄いナイスアイデアだ!

ミウたんも追い詰められていたのだ
0134創る名無しに見る名無し
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2016/03/10(木) 18:07:38.67ID:/QxB+B25
だが、当然サーニャは納得しなかった
「隊長一人を置いて逃げるなんて出来ません! 私達も村の為に戦います!」
二人のやり取りを聞いていた少女達がサーニャの後ろに終結する
皆、その目に強い決意の光を湛えていた
「だったら逃げて生き延びるのよ! 生きていれば、何処にでも何度でも村は作り直せるわ… そこでまたみんなで新しい御輿を担ぐのよ!」
負けじと目を見開き、そう言い放って少女達を諌めるミウたんは思った
今、私は最高に格好いいと……

「……この村じゃなきゃ… 駄目なんです……」

サーニャは俯いてポツリと呟いた
「ずっと約束してきたんです この村を守るって… ずっと守ってきたんです……」
何処からか漏れ始めた啜り泣き
やがてそれは合唱となって無粋な金属獣の咆哮の合間に流れ始めた
流れる涙が少女達のその泥だらけの頬を拭った
「……みんなは良く戦ったわ… 誰も貴女達を責めたりしない……」
ミウたんは両手を目一杯広げて可愛い部下達を抱き込んだ
彼女達も四方からミウたんに抱き付く
「それに…… 私は最後の最後まで希望は捨てないよ… だから、みんなも早まらないで… ここは… ここは一旦引くのよ…… ねっ?」

『プシャャャャッ!!』

その時、谷底から再び放水攻撃が開始された
水の剣が杉の枝を薙ぎ払い、飛沫と供にミウたん達の頭上に降り掛かった
「さぁ! 行くのよ! サーニャちゃん、みんなをお願い!」
そう言うとミウたんは彼女達を降りほどき、崖下へと身を踊らせた
「隊長ーーー!!」
サーニャの絶叫を背に受け、ミウたんは一気に丘陵を駆け降りる
水線がミウたんを捉えんと集中するが、余りの速度に追い付く事が出来ない
「とりゃっ!!」
最後の一歩は助走をつけたの大跳躍
あのクロコダイル戦で見せたそれより遥かに高い飛翔でミウたんは谷底の小川の畔に舞い降りる
そのまま前転で勢いを殺すと、起き上がる拍子に右手の和弓に矢をつがえる

『ピュン!』

1台の重機が放水砲をミウたんに向けるのと、和弓の弦が風を切るのは同時だった
ハッチから不用意に身を乗り出していた射手はその速度と精密さを完全に見誤った
「ひぃっ!?」
首筋を霞める篠竹が紅の一条をそこに刻む
崩れれる様に慌てて車内に身を沈める
0135創る名無しに見る名無し
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2016/03/13(日) 18:05:31.44ID:5hM+4EU0
ミウたんは一所に留まらない
突然の乱入者を轢き潰さんと必死に回頭する2台のブルトーザーの間を駆け抜ける
ミウたんを追う2台はそのままお互いをブレードで激しく打ち合う
この狭い谷底でこの間合いならイニシアチブはミウたんの物だ
鈍重な重機達は常時動き回るミウたんを捉える事が出来ない
だかミウたんも手を拱いていた
この凶大な化け物を仕留める術が思いつかなかった
先程の一矢で取り敢えずあの厄介な放水砲は沈黙させる事はできた
だがあの様な好機はそうそう訪れまい
鉄の装甲板の中に潜られては手も足も出ない
どうやらこの自分の可愛さに平伏す気配も感じられない
軈て疲労に足が止まるその時が抵抗の終わる時になるだろう
それまで1分1秒でも……



「まるで"ランボー"ですね…」
ペリスコープから一連の様を見ていたエマは感心して呟いた
「"ごっこ"にお付き合いしてあげるのも、この位にしておきなさい…」
そして味方の不甲斐ない立ち回りに失望して呟いた
「各車、ターゲットを中心に扇状に後退… 間合いを取りますよ…」
慌てる事を知らないエマはトランスミッターを手に冷静な指示を下す
見えない糸が操るかの様に、重機群は一斉に散開する
「青鷺、黄玉、砲撃準備… 射線にターゲットを収めて下さいね…」
放水車のハッチが開き、射手が砲口を離れたミウたんに向ける
「水楢1、水楢2、両翼を迂回して土手沿いにターゲットに接近して下さい… ゆっくりでいいですよ…」
2台のブルトーザーが放水車の後背を回り込む
「それじゃあ、私達が踏み潰しますよ…」
その声に運転手がアクセルを踏み込む
エマの乗車がスルスルと散開陣を抜け出しミウたんに迫る
まさに手足の如く部隊を自在に操るエマ
彼女にとってはミウたん捨て身の肉弾戦も、イレギュラー要素にすらならなかった
スリットからターゲットを覗くその眼鏡の奥底が怪しい光を放った
0136創る名無しに見る名無し
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2016/03/14(月) 19:34:57.57ID:CThLOi6Z
「くぅ〜……」
弓を構えたミウたんは周囲を伺いながら歯ぎしりをする
一旦は混乱に落とし入れたと思った重機群は突如統制を取り戻し、ミウたんと間合いを取り始める
離れられてはダメ… 必死に乱戦に持ち込もうとするが、ミウたんが近付く端から加速をつけて離れていく
鳥籠の中の鳥…
必死にもがいても重機群の形成する見えない籠から出る事が出来ない自分の姿をミウたんはそうイメージした
十分な間合いから放水砲が此方に向けれるとイニシアチブは完全に移行し、疲労もあってミウたんの動きは守備的に、そして緩慢になっていく
いつの間にか背後に回り込むブルトーザー
ミウたん完璧に包囲されジリジリと今し方跳び落ちて来た土手際にまで追い詰められる
(ダメだぁ……)
いつになく弱気となったミウたんに向かって、1台の放水車が前進して来る
キャタピラが谷底の丸石を踏み拉く
金属の身体が鳴らす関節音が谷間に響く
何故だろう、その時ミウたんの脳裏にふと懐かしい光景が浮かんだ

(そう言えばここ… あの河原にそっくりだなぁ……)

ジリジリと迫り来る放水車を前にミウたんは胸の中で呟いた
あの河原にも、こんな丸石が沢山あったな…
そんな事を思いながら、その中の大きめの一つにどっかりと腰を下ろす
(ドンさん達、元気かなぁ…?)
宛も無くぼんやりと向けた視線の先で、器用に火を起こすドンさんの姿が見えた気がした
その先では無許可で釣り上げた鮎を誇らしげに掲げるゲンさんの姿も見えた気がした
貧しく辛かったが、それでも常に何かワクワクする事が起きていた退屈の無い日々…
楽しい毎日… そう呼んでも良かったかも知れない
ミウたんの表情には笑顔があった
貧困と孤独に苛まされた幼い日々…
こけし職人を目指し出て来た東京での悪戦苦闘…
様々な出会いと別れ…
天命を知り、得る事のできた死に場所……
自分の人生は意外と悪く無かったのかも知れない
その時、一陣の風が谷間を駆け抜け、ミウたんのぱっつん前髪を揺らした
願わくば、次も"自分"として生まれたい
ミウたんは背筋を伸ばし迫る放水車に向き直った
0137創る名無しに見る名無し
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2016/03/16(水) 01:09:54.81ID:Ai3NLH46
「隊長〜!!」
丘の上からサーニャの絶叫が響き、次いで無数の石礫が降り注いできた
その幾つかが放水車の装甲を叩き、軽い音を響かせる
ミウたんの可愛い部下達は未だその場を離れていなかった
彼女らなりに精一杯の助勢のつもりなのだろ
ミウたんはそんな彼女達に向けて左手を伸ばすと、拳を握りその親指を立てた
そしてきっと見えないだろうがウインクをして見せた
心意気は伝わった筈
こんなにも自分を慕う可愛い部下達…
ミオ、ヨシカ、そして彼女達に出会えて本当に良かった
彼女達の未来の礎になるなら、この命惜しくはない

金属の軌道が迫る
間もなくあの下に己の肉体は踏み躙られるだろう
痛みや苦しみはほんの一瞬である
せめて彼女達に見苦しく無く、堂々とした最後を見せてやりたい
古の伝承に伝わる弓取り、須内ミウの死に様、とくと御覧あれ…!
目を瞑り、息を止めれば1秒位な筈だ…
あの無限軌道に肉が挟まれ引き千切られ、あの重量の下で骨がバラバラになるのだ…
下手に動いて中途半端に轢かれればかえって苦しむ事になる…
身体の中心で軌道を受け止めなければ…
もしちょっとでも動いて身体の芯を外れれば最悪だ…
下半身だけ潰されて死ぬに死ねないとかは避けたい…
苦しみ抜いてゆっくり死ぬだけとかは流石に勘弁…
肉だけ持っていかれて骨が剥き出しとか…
逆に骨だけ折れてゴム人形になるとか嫌だ…



そもそも本当に一瞬で死ねるのか…?

もし運転手がサイコパスで途中でブレーキを掛けたら…?

きっと痛い事は痛いんだよね…?

いや痛いでしょう… 潰れんだよ…!? 身体が潰れるんだよ…!?

きっと悲鳴が出ちゃう… 内臓も出ちゃう… ゲーも出ちゃう… ウンチもきっと出ちゃう…

痛い痛いってなっちゃう…… 苦しい苦しいってなっちゃう……

うわぁぁぁぁぁ…… どうすれば良いの……?

怖いよ〜…… 痛いのヤダよ〜…… 痛いの無理ぃ〜………!




「や、や、や…… やっぱり無理〜〜〜!!」

ミウたんのその動きは速かった
まさにスリッパの下から逃れるゴキブリの様に、四つん這いでキャタピラの寸前から遁走する

「痛いのヤダァァァァァッ!!」
0138創る名無しに見る名無し
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2016/03/17(木) 12:54:09.57ID:22onlwNn
そのままの勢いで一気に丘の斜面を駆け登る
放水車からその背中目掛け攻撃が開始されるが、余りの速度に至近弾にすらならない
そのスピードはこの日ミウたんが見せた紛れも無い最速であった

「ハァ… ハァ… ハァ…」

見事、降りる時間とほぼ同等で丘を登り切ったミウたんは肩で大きく息をつく
「隊長………!」
「…………………」
そんなミウたんにサーニャは渾身の力で抱き付いた
部隊の少女達もそれに続く
ミウたんを中心に築かれたスクラム
ほんのりと温かい湿り気を服越しに感じた

「…………………」

ミウたんはそんな彼女達に発すべき言葉を見つける事が出来なかった
ただただ気まずかった 会わせる顔が無かった
あれだけ大言壮語で見得を切って、よもやおめおめ尻尾を巻いて、しかも鮮やかなゴキブリスタンスで帰ってくるとは……
きっと彼女達も内心笑っているに違い無い…
これからもう何を言っても説得力なんて無いわこれ…
何が隊長だよ… 何が礎だよ… 何が死に様だよ……
あぁ 恥ずかしい…
最初からあんなデカイ口叩くんじゃ無かった…
やっぱ素直に死んだ方が良かったなこれ… 今からもう一回死にに行くかな……

理想に描くカッコいい自分と無様な現実の自分…
そのギャップに居た堪れず、ただ遠い目で過ぎる筈もない、その気まずい空気が過ぎ去るのを待つミウたん

「ミウさん!!」

だが幸いな事に、意外な乱入者の登場によってその気まずい空気は運良く取り除かれた

「ヨシカちゃん!?」

しかしそれは別の意味で空気が変わる事を意味していた
伝令役の彼女が息を切らせてやって来た理由…
それは彼女の口を通さずとも、その肩越し向こうから迫り来る、2台の無粋な鐵の化け物の姿で理解できた
「時間を稼がれてたのは私達の方だったんだ…」
0139創る名無しに見る名無し
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2016/03/18(金) 02:02:16.45ID:1yGWVoDV
その呟きに答えるかの様に、今度は谷底の化け物達が咆哮を上げ、一斉に登坂を開始する
「隊長!?」
「ミウさん!?」
居合わせる少女達の幾つもの視線がミウたんに注がれる
「ヨシカちゃん、ミオさんは!?」
「林の出口に向かったもう1台を追って行きました! 多分、村に向かってるって!」
ミウたんは唇を噛む
朝から幾度も噛み続けた唇の端は既に赤く腫れ上がっていた
全ては相手の術中通り これが戦いの玄人と素人の違いなのか…?
だがそれに感心し、手を拱いている訳にはいかない
「みんなで1度村に戻ろう! ミオさんも危ない!」
一つを除いて少女達の首が一斉に縦に振られた
「でも…」
その一つの主、サーニャが何かをいい掛ける
既に退路は塞がれ、包囲に陥りつつあるのだ
無傷で全員が撤退出来る保障はない
ミウたんは勿論、彼女の言わんとする事を理解していた
「遠回りでも峰伝いに逃げるわよ! 木立の間を縫って行けば接近はされない筈!」
今度は全員が首を縦に振る
「サーニャちゃん、私と火矢を放ってあいつらの目を眩ませるわよ! ヨシカちゃん、みんなを先導して!」
そこにいるミウたんはもう、あの無様なゴキブリスタンスのミウたんでは無かった
細やかで的確な指示を即座に下し、部下達に躊躇無く行動を取らせる事の出来る優秀な上官だった
どちらが本当のミウたんか… いや、きっとどちらも本当のミウたんだろう
ミウたんも村の少女達と同様、この短期間の訓練と戦闘で戸惑い、挫折し、そして成長していく最中にあったのだ



林を抜けた先は草蒸す湿地帯だった
澄みきった青空の下、セイタカアワダチソウとすすきの群生が織り成す絨毯の上を風が漣を描いて通り過ぎる
いよいよ秋も深まってくる…
そんな長閑で場違いな思いがアミヤの胸に過る程、そこは先刻までの戦場の緊張とは無縁の世界だった
人里離れた初秋の原野…
絵に書いた様なその美しい風景の中では、それ切り裂く無限軌道の唸りでさえ交響詩の一節に聞こえる…
柄にも無く乙女的情緒をほんの少し刺激されたアミヤは、それを振りほどく様に頭を振る
するとその視線の先にそれが飛び込んできた
0140創る名無しに見る名無し
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2016/03/21(月) 23:50:23.86ID:bdLlI84u
(!?)

アミヤは直ぐ様、操縦舵を握る伍長に指示を出す
湿地に刻まれた2本の轍は向きを変え、その先に広がる低木の茂みの中へと吸い込まれて行った

「こんな所に村が……」

訪問者を迎えるかの様に左右に居並ぶ朽ち果てた木造住居
その中をハッチから半身を乗り出したアミヤの乗車が進む
昨夜のエマの言葉をアミヤは思い出した
(これが… 扶桑村……?)
明晰な彼女の脳裏に鳥瞰図が浮かぶ
ここが扶桑村なら目的地の扶桑駅は目と鼻の先
予想よりも速く進撃した様だ
それと同時に、エマが聞いたという祭囃子の事が脳裏に浮かんだ
アミヤは珍しく身震いする
見る影もない廃墟と化した廃村には、長い間人の立ち入った形跡すら無く、多分アミヤの生まれるずっと前からその時を止めている様に感じた
嘗て村の中心道であったであろうそこに、車高よりも高く伸び生えたセイタカアワダチソウを無限軌道が踏み倒す
村だった物を囲む湿地帯は、もしかすると休耕田の成れの果てなのかも知れない
「ヒィ〜…… なんて言わないわよ…」
この世の全ての物に命が宿り、神が宿るというのなら、そこに充満するのは紛れもない"死の匂い"だった
長居は無用…
アミヤは脳内の俯瞰図から位置関係を掴み取り、運転席の伍長に取舵を指示する
説明されなければもう、それがそうとは分からない山茶花の垣根の影から拳大の石礫が飛来し、アミヤのこめかみを痛打したのはその時だった

「ぎやっ!?」

「大尉っ!?」

重機の軋みすら掻き消す程の短く大きな悲鳴に運転席の伍長も反応する
側頭部を押さえるアミヤの右手の隙間から鮮血が滴る
一瞬遠退く意識に車内に沈み込もうとした身体を、血に濡れたアミヤの右手が支える
「やりやがったなぁぁぁ………!!」
縮んだバネが弾ける様な勢いでアミヤは放水砲のコックを叩くと、砲口を山茶花の垣根へと向けた
0141創る名無しに見る名無し
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2016/03/22(火) 17:56:44.09ID:eo6sZUTI
「伍長! 3時に回頭! 全速!!」
アミヤの号令に放水車が回頭するのと、その放水砲が射撃を開始するのは同時だった
再びその影から放たれた石礫を飲み込んで、白い濁流は山茶花の枝葉を粉砕し舞い散らす
アミヤは逆上していた
そしてそれを自制しようとも思わなかった
怒りや憎しみ常には己の活動源だった
相手がその気なら、自分も遠慮する事も無いのだ
(……コロシテヤル!!)
放水砲が粗方山茶花の枝をもぎ取る頃、その惨めな姿を晒す裸木の列の中に放水車は踊り込んだ
殺してやる…! その思いは操縦舵を握る伍長も同じだった
伍長はアミヤに上官として以上の、特別な感情を抱いていた
アミヤの手に掛かる前に自分が必ず殺す!
アクセルペダルをベタ踏みする伍長と放水砲の射撃を止めないアミヤは、その足下の無限軌道の下で、憎むべきその相手が命を消失させた事に気付かなかった

「くそっ! 逃げ足の早い奴っ!!」

突き抜けた垣根だった物の先は、1本の古い黒松とすすきの原の湿地が広がるだけだった
毒突くアミヤは悔し紛れにハッチの裏を拳で叩く
だがもう良い 勝負は決まったのだ
今頃はエマが敵の主力を殲滅しているだろう
後は自分がタッチダウンを決めれば良いだけだ
丁度その時、膝下の無線機が呼び出しのシグナルを発した
一つ深呼吸して何時もの落ち着きを取り戻したアミヤはレシーバーを取り、エマの作戦
終了報告を受ける



「………な… なんですって!?」

しかしアミヤは再び落ち着きを失った
0142創る名無しに見る名無し
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2016/03/23(水) 21:34:24.06ID:5LqqtHv+
「散水は控えて下さいね… 狙撃の機会を窺ってますよ…」
きつい登板をよじ登ったエマは方々で燻る炎に、敵の狙いを読み取る
放水砲の弱点は射撃の為に車外に身を乗り出さねばならぬ事
木陰からのスカイプには格好の標的になる
無線で僚車に警戒を促すとペリスコープ越しにその敵の姿を探す
丁度そこに"槌"役の2台が合流する
立ち込める煙に視界が遮られる中、エマの覗くペリスコープに丘陵の峰伝いを行くミウたん達の背中が写った
「小癪な真似を…!」
近接戦闘を予想させて拙速な行動を躊躇させ、更に遠回りする事で包囲を掻い潜る…
策略に於いて下等だと見くびっていた敵の思わぬ小細工…
それに翻弄されたと知ったエマの眼鏡の奥が光る
(こんな… ザコに……!)
ゴキブリを潰し損ねた様な不快感に気を害した彼女だが、心の中で小さな舌打ちをした後には何時もの冷徹な策士の顔に戻っていた
「どうせ彼らの逃走先は分かっていますよ… 林の出口に先回りです もう戦いは終わりですよ…」





「ミウちゃん、あやかと一緒に例のイチゴゲロ焼き、食べに行くのだ!」
風呂敷で器用に教材を包み、帰り支度を整えるミウたん
終業の鐘と共に、廊下と教室を隔てる窓の一つから満面の笑みのあやかがひょこりと顔を出し、その側に座するミウたんに声を掛ける
「クスクスッ…」
クラスに薄ら笑いの輪が広がる
ミウたんは余りの恥ずかしさに頬を染めて俯くが、あやかは容赦しない
「あやか楽しみだったのだ〜! やっとお小遣い貰ったのだ〜! イチゴゲロ焼き楽しみなのだ〜!」
「「ブハッハッハッ!」」
ついに爆笑の渦が巻き起こる
ミウたんは少し顔をあげて上目遣いにあやかを睨むが、あやかは楽しくてしょうがない、といった無邪気で爛漫なだけの笑顔を返してくるのみ…
それが級友達の更なる大爆笑を誘い、ミウたんは居たたまれず教室を飛び出す
0143創る名無しに見る名無し
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2016/03/28(月) 19:21:30.83ID:zdvvSoi3
「ミウちゃん、歩くの速いのだ! イチゴゲロ焼きは逃げないのだ!」
ミウたんは最早小走りに近い速度でアスファルトの上を行く
それに必死に追い縋るあやかの表情は尚も喜色に満ちている
「ミウちゃん! そっちはお店の方向では無いのだ!」
そんなあやかの掣肘を無視して歩を進めるミウたんの表情は、彼女とは対照的に暗く刺々しかった
「ミウちゃん…? なんで怒っているのだ?」
そう、ミウたんは怒っていた
特殊学級のあやかに馴れ馴れしくされるのが腹立だしかった
否、馴れ馴れしくされるのは良いのだ
雨の校庭に生まれる水溜まりを、スコップで築くミニ運河で繋いで壮大な大地のアーティファクトを創造する、という共通の趣味を持つ仲間であり、昼休みをぼっちで過ごす惨めさから解放してくれる大切な存在なのだから
ミウたんが許せないのは、級友達の前で仲間の様に振る舞われる事なのだ
あやかはミウたんの唯一とも呼べる友達である
だが、みんなに友達と思われるのが恥ずかしかったのだ
イチゴゲロ焼きってなんだ!? イチゴパフェ焼きでしょ!?
そりゃ見た目は一瞬ゲロっぽいけど… 貴女は女の子でしょ!?
可愛い筈の私と時間と空間を共有するお友達でしょ!?
もっとこう… 漫画みたいな… 女の子同士のお洒落でおしゃまな…
ミウたんは遂に駆け出した
お友達だけど、みんなには知られたくないお友達…
なんだそれ……?
ミウたんは怒っていた 腹立だしかった
こんなに純真で、明るくて、自分を慕ってくれる、愛らしくて愛しい友達を恥ずかしがる自分が許せなかった
自分の寂しさを紛らわす為だけに知恵故障な彼女を利用する、下衆な自分が腹立だしかった
「駆けっこなのだ? あやか、負けないのだ〜!」
ほんの一瞬、怪訝な表情を浮かべたあやかだったが、次の瞬間には彼女の低容量のメモリーはその理由を見失っていた
田園を貫く長い一本道を疾走する二つの影
西の空に傾いた太陽がその影を引き伸ばし、金色の稲穂の絨毯に投げ掛ける
背中越しに聞こえる楽しそうなあやかの笑い声に、何時しかミウたんの表情も解れていった
悲しみの逃避行は、何時しか楽しい駆けっこ競争へと姿を変えていた

ゴメンね、あやかちゃん…
もう二度と…
見捨てたりなんてしないよ…
突き放したりなんてしないよ……
0144創る名無しに見る名無し
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2016/03/29(火) 11:17:01.28ID:N4bOCOhB
「いい加減にしろ!!」
ミウたんは走りながら隣のサーニャを怒鳴りつけた
彼女に抱く、初めての負の感情だった
余りの怒気に先行する少女達が思わず足を止め振り返る
「止まっちゃダメ! 走って! 駆けっこ競争じゃなわよ!!」
今度は自分達に放たれた怒号に、少女達は雷に打たれたかの様に再び走り出す
道無き道を越え、体力を使い果たし、這う這うの体で何とか抜け出した林の先
そこに待って居たのは、完全に撒いたと思われたあの重機群だった
ミウたんの思考は戦いの終始、完璧に相手に読み切られていた
完敗を認めざる得なかった
包囲を脱する為の遠回りは全く意味の無い物になった
それどころか体力と時間を無駄に消耗し、尚且つ身を隠せる遮蔽物に乏しい湿地帯に追跡戦の舞台を移してしまった
そうで無くとも疲れ切った少女達の脚力では、この疲れ知らずの鐵の化け物を振り切る事は困難であろう
そこでサーニャは囮を志願した
ミウたん達の取る事の出来る数少ない選択肢の一つである
確かにサーニャが犠牲になって敵の攻撃を惹き付ければ、他の少女達の安全は格段に保たれるだろう
成る程、それによって失われる戦力の喪失、対費用効果を考えても、ミウたんやヨシカよりサーニャが適任と言わざるを得ない
極めて合理的な判断であり、それ故にミウたんは激怒したのだ
彼女の自己犠牲の精神は心打たれたし、ミウたんに託す思いに心震わせた
だがそれは同時に、ミウたんに対する最大限の侮辱と捉える事ができた
ミウたんは戦いの初めから、彼女達全員を無事に戦禍から逃す事をその目的にしていたのだ
もう誰も見捨てず、もう誰も犠牲にしない
たとえしがない河原のインチキハンター、或いは無名のアーティスト擬きであっても、それが女ミウたんが心に誓った思いである
それを温室栽培の様な小娘に否定されてたまるか!
ミウたんの予想外の強い叱責に目を潤ますサーニャ
ミウたんは今度は笑顔を湛えて隣を行くその左肩を叩くとウインクして見せた
それでもう十分伝わった
サーニャももう駄々をこねる事も無かった
一際大きいセイタカアワダチソウの株を標に、ミウたんは部下達の列から離脱する
今度こそ自分の時間だ
肩に懸けた弓から弦を解くと、高く生い茂る雑草の茂みの中をそれで薙ぎながら突き進むのだった
0145創る名無しに見る名無し
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2016/03/30(水) 22:41:41.36ID:Xti71hiS
「ほらっ 10時の方向です」
ペリスコープを覗くエマは獲物の痕跡を見逃さない
風に揺れるすすきの穂先が見せた微かな不自然を目敏くスコープに収め、運転手に操舵の指示を出す
エマの読み通り、のこのこと林を這い出て来た御一行
待ち伏せるエマ達の存在に明らかに動揺し算を乱していた
何故動きを読まれたのか? ピンポイントを押さえたこの洞察力にさぞや驚いた事だろう
樹海は文字通り大海の如し
必死に遠回りをしても、人が長距離を移動できる経路は自ずと限定される
ましてや退却の方向がわかるなら先回りも難しい事ではない
1度はしてやられた相手の鼻を見事明かせてやった思いに、エマの自尊心は大いに回復される
そのまま押し潰しても良かったが敢えて泳がせた
必死に逃げ込むであろう敵の本丸の正確な位置を炙り出したかったし、何よりこの生意気な獲物をいたぶり、痛めつけたかった
草むらの中を必死に駆け回り、何とか追跡者を撒こうと涙ぐましい努力を続ける惨めな敗北者達を付かず離れず追い回す
ジャングルに暮らす草食獣がサバンナに飛び出れば、最早肉食獣の牙を逃れられる道理などあろう筈が無い
まさに今のエマと逃走者達の関係そのものであった
エマの乗車が向かう先がふと明るくなった
直ぐにそれが剥き出しの大地の照り返しだと分かった
雑草の茂みがもうすぐ途切れ、身を隠す術を失った獲物達が無防備な姿を現す…

(手を上げたって容赦しませんよ…)

ひれ伏し泣き叫び、無様に慈悲を乞う哀れな敵の姿…
エマはそれを夢想し、それが実現するまでの数瞬間、例え様の無い恍惚感に身を浸していた

そしてそれは遂に姿を現した

手にした弓に弦を掛け直し、纏わり付く草葉を払い落とし…

エマに向かってあっかんべーをかますミウたんの姿が……



「!!」
0146創る名無しに見る名無し
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2016/04/01(金) 20:26:50.21ID:9QoNG/WI
謀られた…… またしても…… この私が……!
エマは瞬時に理解した
同時に身体中の血が逆流して行くのを感じた
目の前が霞んで行くのを感じた
必死に頭を振ってそれを取り除いた

「こ… こっ…… こんなっ……! こんなザコにぃぃぃぃぃっ!!」

エマの絶叫が狭い戦闘室に木霊する
耳をつんざくその声に運転手が思わず頭を抱える

「追えぇぇぇぇっ!! 殺せぇぇぇぇぇっ!!」

背中を向け再び逃走を開始したミウたんの姿が、エマの目にはスキップをかましている様に見えた
エマの逆上に応える様に放水車は加速を開始する
瞬く間に縮まる距離
それを左右に転向して再び広げるミウたん
あらゆる行動がエマの目には挑発に映った

「解体してやりますよっっっっ!!」

遂に堪え切れなくなったエマはハッチを開けて放水砲のコックを叩く
1度ならず、2度までも……
エマのプライドをズタズタに切り裂いたこの短髪女を己の手で直に葬る事にした
最大流量を後頭部に叩き付ける
明晰なエマの頭脳は標的を確実に仕留める方策を体感的に思い描く
だが、それはいつもの冷静沈着なエマでは無かった
運転手がエマを諌める声を上げるのと、この瞬間を待っていたミウたんが振り向き様に矢を放つのは同時だった

「んあっ!?」

一線が秋の済んだ空気を切り裂いた
0147創る名無しに見る名無し
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2016/04/04(月) 15:42:51.79ID:OEe+9g9h
辺りを包む宵闇の中、遠く篝火の灯りがミウたんを誘う
どれ程の距離を走ったか…
間違いなく人生最長の大マラソンであったろう
とかくこの山村にやって来てからと言うもの、ミウたんは良く走った
きっと少しは痩せたに違いない…
極限の疲労で義足の様に感覚の鈍くなった足を引き摺りながら、ミウたんは薄ら笑いを浮かべた
漸く笑みを浮かべられる余裕が生まれてきた
何とか帰ってきたのだ
ミウたんは胸を撫で下ろした
それは村に辿り着いた安堵と、そこがまだ無事に存在してくれたという安堵の、二重の意味があった
一矢を報いたミウたんだったが、それが敵の執拗な追撃を呼んだ
村に… 部下達に敵を近付ける訳にはいかず、道無き道を駆けずり回り、なんとかそれを凌いできた
太陽が西の地平に傾く頃、漸く敵は追撃を諦める
無くしたと思った命を今日1日は取り留める
今、仲間達が待つ本陣… ミオの邸宅の門をふらつきながら潜る
ここが無事ということは皆が無事だということ…
ただそれだけでミウたんは自分で自分を誉めたくなった

「ただ… い…… ま……」

余計な心配を掛けじと可能な限りの空元気を振り絞り、努めて明るい声を上げる

「……隊長!」
「ミウ隊長!」

庭先に所在無げに庭先に屯していたサーニャ達が、その声と姿に反応し黄色い歓声を上げる
暗い篝火の灯りの元でも彼女達の顔が明るくなって行くのが分かった
足取りの覚束なさを隠し切れないミウたんを支えるかの如く、少女達はミウたんの元に駆け寄り取り囲む

「みんな無事ね…!? 良かったぁ……」

啜り泣きが方々から聞こえ、それに釣られる様にミウたんの目頭が熱くなった
「そうだ… ミオさんは……?」
先に戦線を離脱した彼女の事だけが、ミウたんの唯一の気掛かりだった
冷静沈着な彼女なら無茶などした筈ではあるが…
0148創る名無しに見る名無し
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2016/04/05(火) 16:28:02.85ID:bZseDrZS
ミオの名に反応して周りの少女達が息を飲んだのと、縁側にヨシカが姿を現したのはほぼ同時であった
ヨシカはミウの姿を認めて笑顔を見せるが、そこに暗い影を忍ばせているのが直ぐに分かった
ミウたんの胸が早鳴った
ミウたんの人生史上、嫌な予感の外れた事は無い…
囲みの緩くなった少女達を押し退け、ミウたんはヨシカの元に駆け寄る
「よ、ヨシカちゃん… ミオさんは…!?」
近付けばヨシカの瞳が赤く泣き腫らされているのが分かった
そんなヨシカはミウたんの問いに薄い笑顔で答えると、手のひらを奥の間に向けた
「や… やだよ… そんなっ!?」
靴を投げ抜き縁側をよじ登る
そのまま襖を勢い良く開け放つ

そこにはあの頼もしいミオの背中があった

「よ… 良かった…… なんだ… ミオさん、無事…………? 」

肺に溜まった空気と共に吐き出した安堵の声は、ミウたんの意思によって途中で制止された
ミオの肩越し、畳みの上に白布を被せられ横たわる一人の…… 遺体……
はっとなったミウたんはあわてて振り返る
……みんな…… みんな居る… みんな… 無事よね……?
一人一人の顔を見詰めてそこに居ない誰かを探す嫌な作業…
幸いと言うべきか、だがそこに見ない顔は無かった
ではこの骸は一体……

「ミウ… 今日は苦労を掛けたな…… 無事で何よりだ……」

蝋人形の様に微動だにしなかったミオが、少し顔を傾けてミウたんに労いの声を掛けた

「み、ミオさん…… その方は……?」

生来のバカポジティブを自認するミウたんとて、遺体を前にして平然として居られる程、鈍感では無い
溜まった唾を何とか飲み込みながら言葉を紡いだ

「すまぬ… 本来はお前を労わねばならぬ立場なのだが……」

再び前を向いたミオの顎から雫が垂れるのをミウたんは見逃さなかった

「すまぬが…… 少し一人にしてはくれぬか……」

その言葉が終わる前にミウたんは襖を閉じた
程無くしてその向こうから啜り泣きが聞こえ、やかでそれは大きな嗚咽となった
ミウたんは脱ぎ捨てた靴を拾うと、庭の奥、黒松の根本に腰を掛け、膝頭の間に顔を埋めた
0149創る名無しに見る名無し
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2016/04/06(水) 20:05:27.90ID:SscKwVDB
発炎筒の赤い光が大きく揺れる
ローターの音が大きくなる
やがてそれが生み出す風が辺りの草原に漣を打ち、直ぐに嵐を巻き起こす
薄暮の空に更に暗いシルエットを浮かび上がらせたヘリは、ゆっくりとランディングを開始する

「……やっぱり私は役立たずのゴミですね…… ゴミは解体されるべきですね……」

ストレッチャーの上に乗せられたエマは掠れた声を絞り出す

「……特別休暇よ… 少し休んで読書でもして来なさいよ……」

右肩を覆う包帯に血が滲む、痛々しい彼女の姿をアミヤは直視出来なかった
着陸したヘリのハッチが開き、エマはストレッチャーごとそこに吸い込まれる

「あのぱっつん前髪…… 油断出来ませんよ……」

人一倍プライドの高い彼女が己の敗けを認めてまでも紡いだ短い一言
それが参謀としてのせめてもの役を果たそうとする彼女の想いである事をアミヤは感じ取った

「もう喋るな……」

言葉が震えるのを必死に押さえる彼女には、そう返すのが精一杯だった
アミヤと同僚達の沈痛な視線がエマを見送る
ハッチの奥から人影が現れる
遠くバルーン照明の薄明かりに真紅のコートが浮かび上がる
それを纏った女はすれ違うエマには目もくれず、つかつかと大股でアミヤの元に歩み寄る
「ケガはサセテモ負わされるなと、ナンドモ申し付けた筈でゴザル…」
高い鼻頭をアミヤの眼前に突き付けるミラの視線は完全に鼻垂れ小僧に向けるそれである
「……全ては私の責任「アタリマエでゴザル!!」
アミヤの懺悔を遮ってミラの怒号が響いた
だがアミヤは何の憤りも感じ無かった
事実、全ての責任は隊長である自分に由縁し、その責めを問われるのは当然であるからだ
「オヌシをイササカ買い被っていたヨウデゴザル…」
顔を離したミラは長い腕を組んで言葉を吐き捨てた
何も言い返せなかった
これ程の戦力差があれば、有能な上司なら部下に手傷など負わせなかった筈である
最も、ミラの怒りの原因が大事な部下に怪我を負わせた事に由来する物で無い事は分かっている
0150創る名無しに見る名無し
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2016/04/08(金) 17:57:45.80ID:QpGfk3Ns
この女にはこの女なりの戦いのステージがあり、今回の一件が彼女にとってのマイナス点なるという事なのだろう
アミヤとて社畜の端ではある その程度の理は理解しているつもりである
だからと言って当然、それが己の責任の回避に繋がる理由にはならない
「しかし、敵の制圧は時間の問題… 明日には決着を着けて見せる…!」
最早敵の最終防衛ラインは抜いたのだ
組織だった抵抗は不可能であり、後は残兵を排除するだけなのだ
「その必要はナイでゴザル…」
だがミラの反応は冷たかった
「イマゴロ本社から呼び寄せた執行ブタイが扶桑駅シュウヘンをセイアツしているコロでゴザル」
「!?」
「テキの潜伏先も赤外線エイセイにてサッチズミでゴザル」
「これは…! これは私達の仕事よ! 余計な手出しは無用だわ!」
アミヤはこの日、始めて感情を露にした
ここまで苦労を積み重ね、やっとの思いで手中に収めかけた勝利をみすみす横取りされて堪るものか!
この勝利にはアミヤの… エマの… 部下達の未来が懸かっているのだ!
「ダレニ向かってクチヲ利いているでゴザル…?」
ミラは再びその白磁の様な滑らか肌を持つ顔をアミヤに近付ける
「オマエハもうヨウズミでゴザル…」
侮蔑の視線が彼女の頬を舐め回す
「………………!」
アミヤ言葉にならない何かを吐き出そうとするが形にならなかった
ただ強く握りしめた拳の爪だけが強烈な痛覚を感じさせていた
「コノサキ、5キロの距離にあるハイソン… そこがテキのネジロでゴザル…」
背中に腕を回したミラはアミヤの視線をかわすかの様に、その睨み付ける彼女の左肩際に歩を進めた
視線をかわされたアミヤの脳裏に、昼間奇襲を受けた廃村の光景が浮かび上がる
馬鹿な…? 残兵以外の気配は無かった筈……
百戦錬磨を自認する自分が敵の潜伏を見逃したのか…?
やはり私は……
「ミョウチョウ、農薬サンプ用のラジコンヘリの不慮のツイラクで、ムラにヒソンダ工作員タチはアワレな中毒シをムカエル…… ソレデ全て終わりでゴザル……」
明確な冷気を感じたその言葉に、思わずミラの横顔を見遣るアミヤ
文字通り凍り付く彼女とは対照的に、ミラの表情は艶かしいまでに輝いていた
「……そ、その仕事は…… 私達に……」
彼女に抱いた得体の知れない恐怖を押し殺しながらアミヤは今一度機会を乞うた
どうせ汚れたら手だ 今更躊躇する必要など無い
「オマエハ用済みだとイッタハズ…」
だがくるりと背中を向けたミラの答えは冷談だった
「ホンジツ付けで実務部隊はカイタイ… 所属タイインは全員カイコでゴザル」
アミヤの背後でざわつきの波紋が起こった
「ちょっ!? ちょっと待って! 何故部下達も!? あいつらは懸命に戦った! 首にするなら私だけにしなさいよっ!」
何故か分からない
何故かは分からないが、アミヤは自分にとっては駒に過ぎない筈の部下達がぞんざいに扱かわれるのが許せなかった
「オマエハ…… オマエタチハ…… クビでゴザル!」
振り向いたらミラはそれだけを言うと、ローターの回転数を急激に上昇させていくヘリへと乗り込んだ
再び風が吹き荒み、アミヤ達だけが残された
0151創る名無しに見る名無し
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2016/04/11(月) 19:13:38.16ID:RJR3zbA5
通りすぎる夜風で目が覚めた
寝るつもりは無かったが、疲労と緊張の連続に身体は正直だった
途中、サーニャが肩を叩きに来た所までは覚えている
心地よいと言うべき季節は大分過ぎた
肌寒さに思わず膝を抱き締める
ふと背後に気配を感じた
傾げた首の視界の隅に白いスニーカーが見えた
「風邪をひくぞ…」
ミオが優しい声を掛けてきた
ミウたんは返事代わりにわざとらしく鼻を啜ると、膝を抱いたまま星空を見上げる
デネブとアルビレオは今日もそこに瞬いていた
「ミウ、改めて礼を言わせてくれ…」
ミオは静かにミウたんの隣に腰を下ろした
そしてまたミウたんと同じ様に秋の夜空を見上げる
「ありがとうございました……」
ミオの言葉は二人の間をそよぐ夜風に乗って満天の星空に消えて行った
「河原で見る星空も綺麗だったけど、ここから見る星空も本当に綺麗ね…」
都会を離れた里山の美しい星空はミウたんの心を強く打った
「ここは本当に良い所ね… 高速道路なんて要らないね…」
鈴虫の鳴き声が清らかな調の様に近くに遠くに流れてくる
「ミオさん… 力になれなくてごめんね……」
「何を言う… 十分過ぎる程、力をくれたではないか……」
ミウたんはミオの横顔を見遣る
コクーン星雲の電離水素の輝きの様に、ミオの瞳に淡い光が宿っていた
「明日の早朝、最期の電車が出る 皆で送ろう ミウ、お前は自分の世界に戻るのだ…」
「最期…? なんだ、やっぱり電車あったんだ」
「あぁ… 明日は特別に列車が走るのだ 最期の特別な電車だ… 遅かれ早かれ、この村の運命は決まっていたのだ」
寂しげなミオの言葉にミウたんは視線を夜空に戻す
「ミオさん達は…… これから……?」
一度は帰るべき所を失い、文字通り路頭に迷ったミウたんだからこそ、ミオ達の行く末が案じられてならなかった
「星空は何処から見ても綺麗なものだ」
その声は存外明るかった
「新しく扶桑村を作るとしよう」
ミウたんは再びミオの横顔を見詰める
その顔は憑き物が落ちたかの様に爽やかだった
「うん… 私にも手伝わせて……」
ミウたんの声にミオも視線を合わせる
そして小さく頷いた
「あやつの最期の言葉は、ミウに言われた言葉と同じだった… 新しい村を起こせと……」
今度は先にミオが視線を星空に戻す
「だが分かって欲しい… 我等の意地を見て欲しかったのだ… 決して約束を忘れてはいないという事を… 誰かに知って欲しかったのだ……」
あやつ、というのが白布で覆われていた骸の事だと直ぐに分かった
「もしかして… あの人は……」
ミウたんは外れ様の無い答えを予想し、俯いて訊ねた
「あぁ 馬鹿な奴め… たった一人で良い格好を見せ様と……」
言い終わると同時にミオは立ち上がり踵を返す
「もう休め… 身体に障るぞ……」
そう言い残して彼女の姿は再び母屋の中へと消えて行った

「ミオさん… 私、ケジメだけは着けてくるね……」

その後ろ姿にそう呟いて、ミウたんは黒松の下を後にした
0152創る名無しに見る名無し
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2016/04/13(水) 19:12:22.57ID:kD+HmUSk
東の空が微かに淡い乳白色を湛える頃、アミヤはそっとテントを這い出る
ベースキャンプの置かれた丘の頂
その役目を終えた重機と工具が恰も亡骸の様に黒い影を佇ませる中、それを縫う様に歩を進める
「大尉……」
仄暗い闇の中から呼び止められ、反射的に足を止める
「もう大尉じゃ無いって言ってるでしょ」
星明かりに白い息が浮かんだ気がした
「……こんな時間にどちらへ?」
草を踏む足音が2歩、背後の重機の陰から近付いた
「アンタこそ、そんな所で何をしてるの?」
姿は見えずとも声の主は分かる
「……貴女が急に居なくなる様な気がして… 此処でずっと見張っていました……」
背後の足音がアミヤを追い越して傍らの丸太木に腰を下ろした
「……というのは冗談で… あれからちっとも眠れなくて……」
昨夜はあれから細やかな酒宴が催された
別宴という訳でもない
1つの仕事を終えた後の、何時もの慰労の宴
いつの頃からか始まった班の伝統行事 打ち上げという奴だ
誰も愚痴を溢す者は居なかった アミヤを責める者も居なかった
否、正確には存在したが、それは何時もの下らない酒の席での戯言の延長線上に過ぎなかった
何時もの面々との何時もの馴れ合い…
下品で騒々しくて生産性の無い全くの無為な時間の浪費…
多分アミヤは、この集いが好きでは無かった
多分というのは、その記憶を遡るにはもう余りに膨大な蓄積を経てしまっていたからだ
昨夜のそれも、それまでの雰囲気とまるで変わらなかった
それはまだ現実を受け入れられないといった心境の現れだったかも知れないし、受け入れたく無いという願望の現れだったかも知れない
ただ1つだけ違うとすれば、アミヤの傍らでブツブツと聞いてもいない昔の思いで話を聞かせるエマの存在が無い事だった
「そう… 実は私も眠れ無くてね… ちょっと夜風を浴びに行く所よ…」
そう言って丸太木の上の影の脇をすり抜ける
「あたし… アンタから追いかけられる理由でもあったかしら〜……」
子供をあしらう様な口調でその影… 元伍長をからかうと、獣道を辿って丘を下り行く
「!?」
不意にアミヤの右手が後ろに引かれた
思わずバランスを崩した彼女の身体はしかし、強靭な反発力によって支えられる
アミヤは元伍長の腕の中に居た
0153創る名無しに見る名無し
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2016/04/15(金) 10:39:23.20ID:M4ibdEsv
「大尉…… いや… アミヤ…… 俺は…!」
暗がりの中に熱い吐息を感じた
アミヤを抱く力が強くなる
「俺はこのまま… このまま貴女と別れるなんて……!」
元伍長の顔が近付いてくるのが分かった
その鼻頭をアミヤが右手の人差し指で制する
「さっきはもう大尉じゃないって言ったわね? あれは嘘よ… 正式な辞令が来るまでは私はアンタの上官よ…?」
微かな笑いを含んだ余裕あるあしらいに、若い伍長は二の句を失う
「これから私の大事な… 最後の大仕事があるのよ… 邪魔は許さないわよ」
「待って! 俺も…! 俺も一緒に戦う!」
アミヤの言わんとする大仕事の内容を伍長は瞬時に予見した
「駄目よ… これは私のケジメ… 実務班じゃない… 私の… アミヤの戦い… 一人じゃなくちゃ、意味が無いのよ…」
「でも! でも危険だ! 無茶です! あいつら、中尉の事だって…!」
再び近付いた伍長の顔をアミヤは両掌で優しく包んだ
「私は前に進むのよ… 何度でも立ち上がる… その為には此処で逃げる訳にはいかないのよ……」
「大尉……」
アミヤの両手首を今度は伍長が優しく握った
「私は勝って帰ってくるわよ…! その時が新しいアミヤチームの誕生よ! 新しい戦いの場所に向かうのよ! その時は伍長… アンタにまた側に居て欲しい… だから… だから今は私を信じて見送って……」
白み始めた東の空が大きく頷く伍長の顔を仄かに浮かび上がらせた
アミヤは伸びをしてその頬に軽い口付けをすると背中を向け、獣道を力強く下って行った
丘の上にはそれを見送る伍長と、アミヤの長い髪が残した淡い柑橘の薫りだけが残された





芒の穂が朝日を浴び、金色に輝く
その間中を貫く畷の彼方、そこ蠢く小さな影
ミウたんはもうきちんと認識していた
それが決着を着けるべき相手であり、それが自身と同じ目的を持って迫り来る事を…
ミウたんは肩に掛けた和弓を外すと弦を張る
漸くその長い黒髪と蒼いマフラーを視認出来る距離まで近付いた時、ミウたんは歩みを止めた
0154創る名無しに見る名無し
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2016/04/16(土) 17:26:49.00ID:7/C4AgEc
それに呼応するかの様に相手も足を止めるその手に握られたエアライフルの銃身が射し込む朝日に鈍く輝く
暖められた地表の空気が上昇し、上空の乾いた空気を競り落とす
それが夜明けを告げる一陣の風となって、二人の間を流れて行った

「あんたっ… 名前はっ…?」

黒髪の女が先に口を開いた

「ミウよ… 須内ミウ! 貴女はっ?」

『バシュッ!!』

返答はエアライフルの発砲音だった
予備動作を極限に省略した手練れの早撃ち
咄嗟の横飛びを放ったミウたんの肩先を銃弾がかすめる
不意打ちによってイニシアティブを奪われたミウたんは、そのまま横転して畷脇の茂みへと潜り込む
後を追う様にエアライフルの弾丸が茂みに次々と撃ち込まれる

「やったな〜!」

ミウたんは腰の矢筒から一本を抜き取ると、適当に狙いを定めて弦を弾く
茂みの陰から山なりの弾道で相手を襲う曲射撃
命中精度は落ちるが、こちらの姿が見えない分、相手も回避が取りづらい

『パシッ! パシッ!』

直ぐ様エアライフルの弾丸が茂みを突き抜け、ミウたん耳元をかすめる
千切られた草の葉がヒラヒラと紙吹雪の様に舞い踊る

(埒が明かない…)

発射速度と取り回しでは相手が上
このまま受け身に回っていては勝機は無い
威力なら此方が上なのだ 一撃を浴びせれば勝てる!
ミウたんは冷静に状況を分析すると、覚悟を決めて行動に移る
素早く茂みの中を進み場所を変える
丁度相手の側面を取った位置まで移動すると、傍らに落ちていた礫を先程まで陣取っていた辺りに放り投げる
礫が音を立てて草を撫でる

『パシッ! パシッ!』

直ぐ様エアライフルの射出音が響く
この瞬間を待っていた
ミウたんは矢を番えると勢いよく身を起こす
視線の先に無防備な横姿を晒すターゲットがいる…… 筈であった
0155創る名無しに見る名無し
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2016/04/16(土) 20:32:52.54ID:7/C4AgEc
あんこ『おい、マミ! バカな真似はやめろよ!』

マミさん『だってもう死ぬしかないじゃない!』

屋上の手刷りの向こう、今にも宙に身を投げ出そうとするマミさんを、必死に説得する何時もの面々

あんこ『考え過ぎだぜマミ! 誰もお前の体重の事なんて気にしてないぜ!』

さやか『そうですよ! 60キロなんてけっこう普通ですよ! ねぇ!?』

きっかけは午前中に行われた健康診断
大台突破という、誰にも知られたくないマミさんの秘密は、診断書を取り違えたまどかの手によって公にされたのだ

マミさん『ホントは影で笑い者にしているの、私知っているのよ!』

あんこ『いい加減にしろよマミ! …おい、お前達ももっと説得しろよ!』

さやか『誰だって体重もウエストもありますよ! マミさんってほんとバカ!』

ほむら『貴女を非難できる者なんて誰も居ない… 居たら私が許さない…』

まどか『ウェヒヒ! 私もマミさんみたいな素敵な大福餅になりたい!』

マミさん『…やっぱり死ぬしかないじゃない!!』

ほむらに羽交い締めされて退場するまどか

あんこ『……た、多少デブってた方が女は魅力があるんだぜ…!』

さやか『杏子のバカ! そこはデブってるじゃなくて、ぽっちゃりって…!』

ほむら『むしろ脂肪が厚い方が、生物学的には優性にあると言えるわ…』

さやか『ちょっと暁美さん!? デリカシー無さ過ぎるでしょ!?』

まどか『ウェヒヒ! まん丸いマミさんに私、憧れてるんです!』

マミさん『…やっぱり死ぬしかないじゃない!!』

再び強制退場させられれるまどか

さやか『デミさん! …じゃなかった、マミさん! お願いだから落ち着いて!』

マミさん『…やっぱり死ぬしかないじゃない!!』

ほむら『1度脂肪がついてしまったら、もう救われる望みなんてない… だから前向きに…』

マミさん『…やっぱり死ぬしかないじゃない!!』

あんこ『お前、ただその台詞が言いたいだけなんじゃねーのか…?』

マミさん『だって死ぬしかないじゃない!!』

まどか『ウェヒヒ! 私、頭弱い子でごめんなさい! ウェヒヒ!』

マミさん『絶対に許さない!!』

5人の茶番劇は日暮れまで続いたという
0156創る名無しに見る名無し
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2016/04/17(日) 12:01:37.51ID:WKJXoOir
「あっ!?」

咄嗟の回避は今度は間に合わなかった
ミウたんの右上腕に激痛が走るのとエアライフルの射出音が聞こえるのは同時だった

「うぐぐぅ……」

押さえたブラウスの袖が血に滲む
完全に動きを読まれていた
最初の不意打ちから薄々は感じていた
あの女はただ者ではない…
自分とは違う本物の戦いのプロだ…
ミウたんは傷みと悔しさに唇を噛み締める

「怪我の具合はどうかしら?」

勝ち誇った女の声が茂みの向こうから聞こえてきた

「こっちに来て確かめてみたら…」

一際大きい芒の根株の陰に身を潜め、ミウたんは答える

「いや… 遠慮しておくわ…」

女の声に被って撃鉄を引く音が聞こえた

「顔を見せなさいよ… 眉間を撃ち抜いて、楽に死なせてあげるわ…」

右腕の焼け付く様な傷み…
女の持つ銃に十分その威力がある事は間違いなかった

「銃なんて棄てて掛かって来なさいよ… 私が怖いの…?」

ミウたんは最大限の言葉で女を挑発すると、此れ見よがしに和弓と矢筒を高々と放り投げる
そして残った矢の一本を膝で折ると、その鏃を左手に握りゆっくりと立ち上がる
女がミウたんの眉間に狙いを定める

「ねぇ? 引き金を引くだけで十分なの? 私を八つ裂きにしたいんでしょ?」

ミウたんは口角を吊り上げ、嘲る様な視線で女を睨む

「私は腕を怪我しているわ… 貴女なら十分勝てるでしょ?」

だか女は反応を示さず、ゆっくりと引き金に指を掛ける

「 ……そんなに私が怖いの? その大きいのは飾りなの? 大きいのがそんなに偉いの!? この千早モドキ! さぁ、掛かって来なさいよ!」

ミウたんの怒号が凛として原野に響く
0157創る名無しに見る名無し
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2016/04/18(月) 18:49:42.77ID:NRvXVu6K
「……このぉぉっ………!!」

女は一言唸ると銃を振り上げ、そのまま彼方に投げ捨てた
そしてコートの奥からダガーナイフを取り出すと顔前に構える

「アンタなんか怖く無いわよっ! ぶっ殺してやるっ!!」

憤怒か緊張か興奮か、震える手に握られたダガーナイフを振りかざし、女はミウたんに襲い掛かる
ミウたんに勝算がある訳では無かった
ただ、あのままの状況では100%殺られていた

(1%あれば……)

恐怖を払い、震えを抑え、縋る思いでかました挑発にまんまと乗ってきた女
だか、手負いのミウたんが圧倒的に不利である事に変わりは無かった

「このぉぉぉっ!」

女がミウたんに飛び掛かる
ダガーナイフの鋒がミウたんの鼻先をかすめる
ミウたんも左手の鏃を振るおうとするが、女はそのまま身体をぶつけてミウたんを押し倒す
ミウたんには無い、ふくよかな女の膨らみが
ミウたんの呼吸を塞ぎに掛かる

(だ、第三の腕が…!?)

片腕が使えないミウたんにとっては絶望的戦力差
私にも第三の腕があれば……
ミウたんは己の身の貧相さを改めて呪った
尤も、それを"第三の腕"と意識するのはミウたんだけであり、その女にとっては戦いに邪魔な脂肪の塊でしかなかった
鏃を握った危険な左手を押さえ付けたその女は、再び勝利を確信しナイフを振りかぶる
ミウたんは咄嗟に膝頭で腹上の女の背中を蹴り飛ばす
緩やかながら斜面だった事もあり、女はバランスを崩して前転する
その隙を見逃さず立ち上がったミウたんが、今度は伏せる女に飛び掛かる
だか突き立てた鏃は寸での所で回避され、草の根が覆う地面に突き刺さる
次の瞬間、強烈な蹴りがミウたんの脇腹を薙ぐ
無様に地面を転がるミウたんは何とか飛び退り間合いを取って追撃を逃れる
0158創る名無しに見る名無し
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2016/04/19(火) 14:44:54.95ID:aKrEGe2z
「はぁ… はぁ… 中々やるわね… 私の名はアミヤ!」

言い終わると同時にステップで一気に間合いを詰め、ナイフを横薙ぎに振るう
ミウたんのぱっつん前髪が数本、宙に舞った

「……アミヤ……? 貴女… 何処かで……?」

再び飛び退り間合いを広げるミウたんは記憶の底をなぞる
見た目と印象は大分変わったが間違いは無い、ミウたんはこの女に覚えがあった
何よりこの厚かましく此れ見よがしに揺れる"第三の腕"に覚えがあった

「ふんっ 昔の事は何もかも忘れたわ! 今はしがない雇われ掃除人! …それもアンタを倒して終わりよっ!!」

アミヤは地面を蹴り、ナイフを握った右手をミウたんの眉間目掛けて全速で突き出す
その動きは読んでいたミウたんが、華麗なハイキックでナイフを弾き飛ばす
アミヤは慌てて横転し、飛ばされたナイフを拾い上げる

「ねぇ、どうして? どうしてこんな事をするの?」

ミウたんは敢えて好機を見送り、落ち着いた声でアミヤに訊ねた
どうしても知りたかったのだ その理由が

「どうして?」

アミヤは拾い上げたナイフを手の中で踊らせながら復唱した

「どうして平気で人を傷付けられるの? 命を奪えるの? お金の為なら何でも出来るの?」

美しい自然を執念深く破壊し、歯向かう者には決して容赦はしない…
ミウたんにはどうしてもその動機が理解できなかった
悪に徹する事ができる理由が分からなかった
勿論、ミウたんとて聖人君子では無い
時には人の物をくすね、時には欲望に身を任せた
咎を責められ追われる事、一度や二度では無かった
ミウたんも人である以上、業を積む事を避ける事はできなかったのだ
いや寧ろ、こけしアーティストという修羅の道を歩んで来た彼女だからこそ、他人より殊更多くの業を積んできたかも知れない
…と言うより、見方によっては自進んで業を積みに行った、とさえその人生は表現できるかも知れない
そんな… そんなミウたんであっても、この利権事業に絡んだ彼らの開き直りとも取れる一連の暴力性を理解するのは不可能であった
一体、何が彼らをそこまでさせるのか…?
0159創る名無しに見る名無し
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2016/04/21(木) 05:51:00.73ID:FfJa0xIj
1 名無しさん@お腹いっぱい。 転載ダメ©2ch.net sageteoff 2016/04/21(木) 01:00:13.20 ID:4ShPiQeJ
             ,,斗rfF至至灯
          ,ィ幺圭圭圭圭圭j
        ィ幺圭圭圭圭≫―┴ミー-、
    _z〜 ̄⌒`寸圭≫'"      `⌒`ヽ、  こ二
   /         )a                 \  ノ
   ノィ         /     / /    ハ    ヽ   イ
   弋  /⌒Y⌒ヽ   / /     / }ヽ    、
      )ハ{{ _{^)_  )}  / / /  / /} /⌒ト    }  {⌒}
      /⌒(_ 、_)≪   ィ7⌒ // ノ _,,_ jノ  /    ̄
      乂_/し、)   )) { i i /      イ芯Y}  /-、   ``/
       {(_乂__シ  ト{ {/ _    {じ:} ハ /::ノハ
        ̄ \ヽ {}_/〉 y'"⌒`    `''゙ {ノ/  〉
     / ̄ ̄`く _/(iJ<フ>   ┌ チ   ノ   / フ}
     {/⌒   /" ̄`〈-〜‐-   二 -‐'"ーt''"〜'" )
      廴二ニ、}    ノ-⌒ヾ二}l{/〜<   ヽ_彡"-、
        r''" ̄ {   ハ )   }''"不゙\`ー、     ⌒ヽ }
      廴彡ィ乂 -〜<_ イ  =}}= ) ノ      _)ノ
     γ_ ノ_ノ       {个ー-≠‐イ彡、
      { (   ̄      _〉:::}}:::王{〈 {  ヽ
        \        >⌒7-ミ十ヘへ   \
             / /  i`"l  \`ー、-く_
            く  〈=ミ_j  l__彡=〉/ゞっ)
             >ーr┘└rr-┘} ̄
            //ニミl::l::l::l::| !:T:T!
            {{〜、::{:l::l::lリ l::l::l::|
                乂__ノ `ー'゙ |:l::l::|
                       「iミY7
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巴マミにありがちな事 3 [無断転載禁止]&#169;2ch.net
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0160創る名無しに見る名無し
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2016/04/21(木) 06:07:21.86ID:yziRNFEI
1 名無しさん@お腹いっぱい。 転載ダメ&#169;2ch.net sageteoff 2016/04/21(木) 01:00:13.20 ID:4ShPiQeJ
             ,,斗rfF至至灯
          ,ィ幺圭圭圭圭圭j
        ィ幺圭圭圭圭≫―┴ミー-、
    _z〜 ̄⌒`寸圭≫'"      `⌒`ヽ、  こ二
   /         )a                 \  ノ
   ノィ         /     / /    ハ    ヽ   イ
   弋  /⌒Y⌒ヽ   / /     / }ヽ    、
      )ハ{{ _{^)_  )}  / / /  / /} /⌒ト    }  {⌒}
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0161創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/04/24(日) 10:55:33.04ID:ZYzAzx8w
「どうして… ねぇ〜…… それじゃあ聞くけど、アンタはなんで卵をたべるのさ?」

「……?」

「あたしは食べたいから食べる… それじゃ理由にならないかしらっ!」

言葉を吐き捨てると同時に再び跳躍からの突きを繰り出すアミヤ
彼女の動きに慣れてきたミウたんは幾らか余裕を持ってそれをかわす

「アンタだって食われる方の身からしたら悪魔に映るのよ」

「何の話よっ!? 意味が分からない!」

間合いを広げて向き直るミウたんはキッとアミヤを睨み付ける

「アンタだって今まで誰かを犠牲にして… 踏み台にして生きてきたんじゃない! ただそれを意識しない様にしてきただけで!」

「私はお金の為に他人を傷付けたりは…… しないっ! ……してないっ! ……そんなにはっ……!」

「ふふっ 何の為に犠牲にされるのか… そんなの、犠牲になる方からしたらどうでもいい理屈じゃない!」

今度はアミヤがミウたんを睨み付ける

「……ち、違う! 私は……!」

「違わないわ」

冷たい言葉がミウたんの肺腑を刺す

「私は… 無駄になんかしないっ! 誰かの犠牲を… 命を… 卵を無駄になんかしないっ!」

ミウたんが絞り出したその言葉の成分は、己に効かせる物が多分だったかも知れない

「だからあたしも… 無駄になんかしないっ!」

アミヤは足元の土塊を蹴りあげた
反射的に顔を背けるミウたん

「あっ!?」

踝への痛撃の後、身体がバランスを崩して倒れる
ミウたんの見せた一瞬の隙をアミヤの足払いが捉えた
咄嗟に起き上がろうとするミウたんの上半身を、アミヤの臀部がドッシリと捉えた
必死に突き出した左手の首をアミヤの右手がガッツリと抑え、そして膝頭のしたに捩じ込んだ
0162創る名無しに見る名無し
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2016/04/29(金) 23:07:29.66ID:msCIuFBb
最早これまで…

やはり戦いのプロ、所詮ミウたんの敵う相手ではなかった
ずき目の前に勝ち誇ったアミヤの顔があった
長い髪の先と、微かに荒い鼻息がミウたんの頬に当たる
アミヤは上半身を起こすと、両手に握ったダガーナイフを高々と振りかぶる

(ゴメンね… ミオさん… ヨシカちゃん… サーニャちゃん… みんな……)

ミウたんは静かに瞼を閉じた

「……私の命…… 役に立ててね……」

「フンッ!!」

ミウたんが最期の言葉を呟くのと、アミヤがナイフを振り下ろすのは同時だった
ミウたんは何故か清々しい気持ちだった
後悔はもう無かった そして傷みも感じ無かった

(さような…… みんな…… 大好きだよ……)

不意に腹上の圧力が溶けた
「……?」
薄らと瞼を開けたミウたん
その視線の先に、抜ける様な秋の青空と長い髪を靡かせるアミヤの顔があった
一瞬だけ視線が交わった気がした
「………あれ?」
アミヤは無言でミウたんを跨ぎ、背中を向けて歩き始めた
漸く上半身を起こした呆然とその後ろ姿を眺める
「急ぎな! もう直ぐ農薬散布のラジコンヘリがアンタらのアジトの村に墜落するわ 積んでるのは農薬じゃなくて毒ガスよ」
「!?」
その物騒な言葉にミウたん漸く我に帰る
慌てて起き上がると、纏わり付く草葉を払い落とす
地面に穿つ深い穴を見つけた
「……まっ… まって…!」
ミウたんは咄嗟にその後ろ姿を呼び止めた
「別に情けを掛けた訳じゃないわ… アンタより負かしたい相手が居ただけ……」
振り向きもせずそう言うと、拾い上げたエアライフルを肩に担ぎ、アミヤは再び畷の上を歩んで行く
「どうして? どうして私を… 私達を助けるの?」
後を追って茂みを抜けたミウたんは、再度その後ろ姿に問い質した
風がを切るアミヤの肩の先で青いマフラーな端がはためく
0163創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/05/04(水) 16:11:47.04ID:O1gHoSX0
「……早くしないと手遅れになるわよ…… ホラッ」
その言葉尻と重なってヘリコプターのリズミカルなローター音が聞こえて来た
青空に光を放つ飛翔体が現れた
「!?」
ミウたんは駆け出した
アミヤの真意は計り兼ねるが、嘘を言っていない事だけは分かった
拳で語り合ったミウたんは、彼女の人となりを感じ取っていた
数歩駆け出した所でミウたんは足を止め振り返る
「……私、お礼なんて言わないからっ! 貴女の事、絶対許さないからっ! 次に会った時は、あのマウントから再戦よっ!!」
既に大分遠くなったその後ろ姿に大声で叫ぶ
多分聞こえた筈だが、アミヤは何の反応も示さず畷の奥へと消えて行った
再びミウたんは駆け出す
もし間に合わなければ、二重の意味であの女に負けた事になる…
ミオの為、ヨシカの為、サーニャの為、みんなの為…
そして何より自分の為…!
ミウたんは大地を蹴る足裏に一際力を込めた





「あぁ! 隊長だ!」
「帰って来ましたぁ!」
集落の入り口に聳え立つ銀杏の巨木
その根本で二人は彼方より駆けて来るミウ隊長の姿を認めた
早朝からその姿が見えない事にミオ以下少女達は胸騒ぎを覚えた
よもや一人復讐へと向かったのではないか…
昨夜の出来事が彼女を思い詰めさせてしまったのか…
ミオは己を責め、その姿を求めて四方に斥候を放とうとした矢先、村の入り口で警戒の任に就いていた彼女達がミウたんの帰還に遭遇したのだった
流石は隊長… 偵察がてらの長い散歩だったのだ…
…程度に解釈し手を振り出迎えた彼女達だが、そのミウたんの浮かべる緊張に張り詰めた面持ちに思わず振る手を止める

「…急いで! みんなを村の外にっ! ここは危ないっ!!」

駆け抜け様、少女達に指示を与えたミウたんはそのまま村の大通りを疾走し、ミオの邸宅へと飛び込んだ
0164創る名無しに見る名無し
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2016/05/08(日) 10:36:09.31ID:N2K6mXTS
「「ミウ!」ミウさん!」

縁側の先で顔を付き合わせ、事後の策を練っていたミオとヨシカらは、その姿に驚きと安堵の入り交じった声をあげる
「何処へ行っていたのだ? 心配したぞ!」
ミオは荒れた息を必死に整えるミウたんに近付き、その肩を撫でる様に叩いた
「ミオさん! 直ぐに…! 直ぐに逃げなきゃっ!!」
苦しそうに唾を飛ばしながら何とか言葉を絞り出すミウたん
「どうした? 何があったのだ?」
ヨシカとサーニャも近寄り、ただ事ならない様子のミウたんの顔を覗き込む
「あ…… あれっ…!」
肩を大きく揺らしながら彼方天空を示す指の先に、日光を浴びて輝く飛翔体の姿が現れた
程無くして不気味なホバリング音が近付いてくる
「ヨシカ! サーニャ! 皆を村の外に! ミウは渡しに掴まれ!」
聡明なミオはその状況だけで迫る危険の質を見抜いた
やはり賢い二人も状況を飲み込み、弾かれる様に門を飛び出して行く
「ミウ… 最後までお前には助けられてばかりだな…」
そう言うとミオはミウたんの腕を掴んで一気に背中に担いだ
「だ、大丈夫だよっ! 一人で走れ…」
「最後の最後ぐらい、お主を助けさせてくれ」
ミオはミウたんを背負い、山茶花の垣根の隙間に身を踊らせた
畑の畦道に繰り出すと、あちこちから同じ様に少女達が飛び出して来るのが見えた
背後のホバリング音が徐々に大きくなり、そして異様な風切り音に変わる
「みんなっ! あの丘の上にっ!」
ミオの背中でミウたんが叫ぶのと、その背後で大きな炸裂音がしたのは同時だった
「急いでぇぇぇっ!!」
ミウたんの絶叫が秋空の下に木霊した





「みんな無事か? 欠員は?」
這う這うの体で丘の上に転がる少女達にミオは声を掛ける
サーニャが一人一人の無事を確認して回る
ヨシカだけは眼下彼方の村… 今、一条の煙が立ち昇り、毒々しい紫色の霞に覆われたその様を眺めていた
煙の下でチロチロと燃え上がった炎は見る間に大きくなり、辺りを手当たり次第侵食していく
村が炎に包まれるのは最早時間の問題であった
0165創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/05/10(火) 09:47:44.26ID:RTewZh5T
「ヨシカちゃん……」
ミウたんはその側に寄り添い、彼女の肩を抱き寄せた
「全員無事です 欠員ありません」
サーニャの報告に頷くと、ミオも視線を村へと向けた
いつの間にか少女達もミウたんとヨシカの周りに集まり、燃え朽ちていく村を見送っていた
誰も何も話さなかった 何の音も聞こえなかった
ただ無限に続いていくかの様な沈黙だけがその場を支配していた

「これで良かったのだ… 最後の人間が去ったその時に… あの村は亡びていたのだ…… 姿だけを在りし日のまま取り繕うなど… それこそ幽鬼の所業……」

その沈黙を破ってミオがポツリと呟いた
「ミオさん…?」
振り向いたらミウたんと目が合うと、ミオは笑顔を浮かべて続けた
「さぁ 今度はミウ、お主を送ろう! 最後の列車の発車時刻が近付いている!」
その声に周りにの少女達も立ち上がる
「う… うん! 私も自分の大切な場所に戻るよ!」
その時、再び青空に無粋なホバリング音が響き渡り始めた
見遣ればヘリコプターが三機、日の光を跳ね返しながら彼方より近付いて来る所であった
「さぁ 追手も現れた 急ぐぞ! 競走だ!」
ミオはそう言うと再びミウたんを背負い上げ、丘の道を勢い良く駆け降り始めた
「ちょっ!? ちょっとミオさん!? もう大丈夫だって!」
背中の上で慌てるミウたんを尻目に、楽しそうな少女達がその後ろに連なり始める
「これが新しい扶桑名物のミウ神輿だ 新しい村を作ったら、お主をモデルに御神体を作ろう」
ミオは悪戯っ子の様に背中のミウたんに囁いた
「そ、そんなっ… 御神体だなんて……」
「ミウさん… 私達の事、忘れないで下さいね…!」
傍らでミウたんの尻を支えるヨシカがはにかむ
「勿論よっ! 落ち着く先が決まったら、またあの河原にやって来てね! あそこなら直ぐに会えるよ!」
「隊長直伝の弓の技… きっと受け継いでいきます!」
反対側で支えるサーニャが涙声を絞り出す
「あはは… そんな大した物じゃないわ それにもう… 役に立たない方が嬉しいな」
「ミウよ… この村に来てくれて本当にありがとう…」
再びミオが感謝の言葉を紡ぐ
「御先祖様もきっと許してくれるよ! みんなは良く戦ったわ!」
ミウたんは自分の身体に、まるで扶桑村の先祖が乗り移ったかの様な錯覚を覚えた
0166創る名無しに見る名無し
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2016/05/11(水) 10:40:05.94ID:jZrDte9w
「お主がそう言ってくれるのなら代え難い救いだ」
ミオが呟いた時、ミウたん神輿の一行を先導し、露払い役を演じていた少女達が足を止めた
高い視点を得ていたミウたんはその理由にいち早く気付く
「あいつらだ! あいつらの仲間が居る!」
いつの間にか目前まで近付いていた扶桑駅の周辺に、見覚えのある重機群とツナギ姿の作業着達が集結していた
「なぁに、駅舎なんてただのモニュメントだ」
ミオは動じる事もなく旋回すると、線路が走る土手道の急勾配をよじ登って行く
「ミオさん下ろして! もう本当に大丈夫だよ」
ミウたんの願いは聞き入れられず、少女達に押し上げられてミウたん神輿は土手道の頂きに立った

「………ほぇ?」

そこは背の高い雑草が遥か彼方まで続く、不思議で殺風景な空間だった
所々に露出した錆ついて赤茶けたそのオブジェが無ければ、そこが電車道だとは誰も思わないだろう
社会的常識に乏しいミウたんでも、凡そそこが現役で使用される環境に無い事は直ぐに理解できた
だがしかし、つい数日前に彼方の駅に降り立ったのも紛れもない事実…
ミウたんは狐に摘ままれたかの様な表情で困惑する
「来ましたよ!」
サーニャの声が背後から響いた
ミオが振り向き、ミウたんの視界に1両の古ぼけた気道車がゆっくりと迫って来る
それは駅から離れた何もないこの場所に、滑り込む様に音も無く停車した
「さ、最終列車って……?」
思わず呟くミウたんはそこで漸くミオの背中から降ろされた
「さぁ もう発車の時刻だ… さらばだミウ…」
エアーの吹き出す音がしてドアがスライドするのが分かった
「ちょっ!? ちょっと待ってコレ… まさか貸し切り?」
その問いには誰も答えず、ヨシカとサーニャがミウたんの両手を取って乗り口へと誘う
今一つ状況を飲み込めぬ中、背中を押される様に乗り込むミウたん
再びエアーの噴出音がして、ドアがするするとスライドした
その古い車両は窓を開く事ができた
ミウたんは近くの席の窓を押し上げ身を乗り出す
「みんな、さようなら… 力になれなくてゴメンね…」
ミウたんの言葉に皆は銘々に穏やかに首を振った
軽い震動が伝わり、景色が動いて行く
0167創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/05/12(木) 19:17:19.35ID:2Ny2cXlg
「ありがとうミウ……」
ミオが小走りに列車に並走する
少女達も後に続いた
「ううん… こちらこそ… ありがとう… 扶桑村の人間に代わってお礼を言うよ… ずっと… 守っていてくれてたんだね…… ありがとう!」
ミウたんは窓から突き出した頭を深々と下げた
「ふふっ… なんだ… 気付いていたのか…? 何時からだ…?」
徐々に速度を上げる列車にミウたんと少女達は引き離されて行く
「お神輿を納めた神社… 珍しく狸を奉ってた…」
「ミウ…! お主が来てくれたお陰で最後の祭りができた…!」
「何時かまた、会えるよね…!」
小さくなるミオ達に大声で叫ぶ
それに手を振って応えるミオ達

「ミウゥゥゥ!! 列車の前に何が見えるっっっ!?」

ミオの絶叫が微かに響いた

「ほぇ!?」

思わず進行方向に視線を向けるミウたん
そこで迫り来る断崖絶壁の存在に気付いた

「ほぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!?」

ミウたんは奇っ怪な絶叫を上げるのと、唐突な浮遊感がその身を包むのはほぼ同時であった

「うぎぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」





「お客さん、起きて下さい! 終点です!」
誰かが肩を小突く
「う…… ううん……?」
「お客さん!」
「はいっ!?」
目の前に厳つい制服姿の男が立っていた
「こ… ここは…?」
ミウたんはハッとなって辺りを見回す
薄暗いそこにはミウたんとその男他には誰も居なかった
「ハッ!? 私に何をするつもり!? まさか… エロ同人みたいに乱暴する気…!?」
「終点ですよ! 早く降りて下さい!」
怒気を隠さぬ男に促され、ミウたんは慌てて列車のドアを飛び出す
ひんやりとした夜風がぱっつん前髪を撫でる
そこは見知らぬ山間の無人駅……では無く、ミウたんが三ヶ月に一回は寝過ごし流される、終点のターミナル駅であった
人気は乏しいが、不夜城の如き喧騒が宵闇の向こうから伝わってくる
そこは紛れもなく、ミウたんが暮らす大都会の片隅であった
0168創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/05/13(金) 11:09:04.38ID:K6DahhYV
(夢なんかじゃ無いよね……)

跨線橋に繋がる階段を一段抜かしで駆け上がるミウたんは、その頂きで立ち止まり後ろを振り返る
夜空に聳える高層ビル群の合間に、丸い月がぽっかりと浮かんでいた





「ハイ、カ〜〜〜ット!!」
「ヒイッ!?」
向き直ったミウたんの眼前に突き出された黄色いメガホンから、何処か聞き覚えのある声が大音量で放出された
「あ、貴方は……」
「いや〜〜〜 相変わらずのいい演技だったよ〜〜〜!!」
「別に何にもしてませんけど…?」
「いいの、いいの〜! ナイスドキュメントタッチ! 寝過ごして辿り着いた先は不思議の村でした〜! こりゃ大ヒット間違い無し!!」
「…………えっ?…………」
「勿論今回も君の先輩の紹介でね〜 早速この後、本編の撮影に入るからね!」
「…………本編?…………」
「そう、都会に降りてきた狸ちゃん達との異種百合乱交姦シーン! 今回は前後編の超大作AV! 金掛かってるよ〜!!」
「…………何処から?…………」
「んっ!?」
「…………何処から撮影?…………」
「何処からって… 河原でホームレスと拉麺啜ってる所から…」
「…………しろっ…………」
「えっ!?」
「…………いい加減にしろぉぉぉおぉぉぉっっっ!!」

ミウたん渾身の右ストレートがチョビヒゲの顔面にめり込んだ





徒で我が家に帰る為、怒りに振える肩で風を切り、大股で夜の街を闊歩するミウたん
その後ろ姿を銭湯の瓦屋根から見詰める小さな影が幾数…
何故か鼻頭を小さな手で頻りに擦る一頭が合図をすると、その影達もまた、宵の闇へと紛れて行った……
0170創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/05/18(水) 22:45:36.94ID:/fEb3svZ
あやかちゃんと遊ぼう



「そろそろ晩御飯なのだ あやかの腹時計は正確なのだ!」&#160;
徐に立ち上がるあやか&#160;
「あやか、お家に帰るのだ 熱々のほいこーろーがあやかの帰りを待ってるのだ!」&#160;
この池沼も流石に自分の置かれた状況が飲めたのだろう&#160;
硬く閉ざされた鉄扉&#160;
確かめなくとも施錠されている事は理解出来る様だ&#160;
つまり今の独り言は俺への訴えなのだ&#160;
尤も、彼女はちゃんと俺に話掛けたつもりなのかも知れないが…&#160;
「早く帰らないと、お姉達に怒られるのだ…」&#160;
扉の前で突っ立ったあやかは、ちらりと俺の方に視線を向けた&#160;
「さっきも言ったけど、あやかちゃんはもうお家には帰れないよ」&#160;



養護学校帰りのコイツを拉致るのは簡単だった&#160;
「君の大好きなさやかお姉ちゃんが、おっぱいイタイ病で入院したんだ 一緒に病院へ行こう!」&#160;
その台詞だけで、涙を浮かべながら俺の車に飛び乗って来た&#160;
「さやか姉は何処なのだ!? やっぱりあのおっぱいは病気だったのだ〜!」&#160;
どう見ても病院には見えない郊外の一軒家&#160;
コイツは俺の生活臭に溢れるそこを縦横無尽に走り回っていた&#160;
「さやか姉、何処にも居ないのだ!」
「あぁ あれは嘘だよ そんな事よりお菓子を食べないか? その後、一緒にドンジャラで遊ぼう あやかちゃんはパイ遊び得意だろ?」&#160;
山盛りのクッキーとミルクティー、ドンジャラを目の当たりしたコイツは一瞬にして向日葵の様な笑顔に変わった&#160;
0171創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/05/18(水) 22:46:15.50ID:/fEb3svZ
「どうしてそんなイジワル言うのだ!? あやかはお家に帰りたいのだ…」&#160;
あやかの目が再び涙に潤んできた&#160;
「あやかちゃんはパイ遊びが好きなんだろ? 実は僕も好きなんだ…」&#160;
俺はゆっくり立ち上がり、あやかに近づいて行く&#160;
それに合わせて後ずさるあやか&#160;
涙目の中に如実に警戒の色が滲んでいる
こんな池沼にも雌としての危険予知能力はあるらしい&#160;
「ただ、僕のパイ遊びは麻雀パイじゃなくて… あやかちゃんのオッパイを使うんだ…!」&#160;
「イヤ〜〜〜ッ!!」&#160;
予想以上に早い動き&#160;
伸ばした俺の両手を掻い潜り、あやかは部屋の奥に逃れる&#160;
(池沼の癖に…!)&#160;
完全にコイツを嘗め切っていた俺は、それにプライドを激しく傷つけられた&#160;
「あやかはまだお子様なのだ! まだエッチな事はしちゃダメなのだ! エッチは大人になって、大好きな人のお嫁さんになってからなのだ!」&#160;
コイツ、完全に自分の性に目覚めてやがる…&#160;
池沼のクセしやがって、そういう意識はしっかりちゃっかり根付いている訳か…
池沼の分際で、俺をケダモノ扱いか…&#160;
可愛い私の魅力にメロメロの、モテないキモオッサン(笑)扱いか…!&#160;
この池沼が…! 池沼の分際で…!!&#160;
俺の中で何かが弾けた&#160;

「うぉぉぉぉぉっ!!」&#160;

「うわぁぁっ!? さやかブホッ!!?」&#160;
0172創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/05/18(水) 22:47:16.34ID:/fEb3svZ
あやかはその人の名前を最後まで叫ぶ事が出来なかった&#160;
ダッシュの助走をつけた強烈な右ストレート&#160;
それを顔面に受け、ゴム毬の様に弾け飛び、そのまま襖を破って隣室まで転がって行く&#160;
「あぅ…… わわぁ…… いひゃい… いひゃい… のだぁ……」&#160;
滝の様に鼻血を垂れ流す顔面をもたげるあやか&#160;
鼻を押さえた掌が血にまみれているのを見た彼女は、本格的に恐慌に見舞われていく&#160;
「うひぁ…… あわわぅ…… いゃぁ……」&#160;
万年敷きの煎餅布団を巻き込みながら、あやかは尻で後退りを始める&#160;
俺はその距離を大股を詰める&#160;
「やぁぁぁっ…! こにゃいで…!」&#160;
口を切ったのか、呂律の回らぬその様があやかの池沼ぶりに輪を掛け、そして俺の加虐心に更なる油を注ぐ&#160;
「あやかちゃん… どうして僕にぶたれたか分かる?」&#160;
壁際に追い詰められたにも拘わらず、直もゼンマイ人形の様にその身体をモチモチと後退させようと足掻くあやかの前にしゃがみ込む&#160;
「やめちぇ…! やめてぇぇ…… まどかぁ姉…… ヒック…」&#160;
余程さっきのパンチが堪えたのだろう&#160;
恐らく生まれて初めて振るわれたであろう暴力&#160;
肉体的ダメージより、精神的ダメージがより甚大の様だ&#160;
俺に向けられている筈の視線は定まらず、言葉を発する度に口角から泡を飛ばす&#160;

『ビシャァァァッ!! 』&#160;

「ブァァッ!!」&#160;

強烈なスパンクがそんなあやかの頬を捉える&#160;
涙と体液に濡れるあやかの頬は良い音色を響かせた&#160;
「質問には答えろよズベ公!! ここにはお前を甘やかしてくれるおねーちゃん達は居ねーんだよ!!」&#160;
「うわぁん…! うわぁぁぁっ… まどかぁ… さやかぁ…!!」&#160;
おねーちゃん、という台詞があやかの崩れた心を更に粉砕した様だ&#160;
「僕が怒った理由… それは、あやかちゃんが可愛すぎるからだよ!」&#160;
突然の告白にもあやかは反応を示さない
言葉にならない呻きと啜り泣きを繰り返すばかり…&#160;
当然と言えば当然か、俺の行動は池沼のあやかには余りに理解不能であろう&#160;
0173創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/05/18(水) 22:47:48.35ID:/fEb3svZ
「あやかちゃん、パンツを脱ごうか…?」&#160;

やはり反応を示さない&#160;
散々、甘やかされて生かされてきたのだろう&#160;
嫌な事はやらなくて良い… そんなふざけた人生哲学をお持ちなのだろう&#160;

「脱げって言ってんだよっ!!」&#160;

「ブハッ!?」&#160;

俯くあやかの顔面にショートアッパーをお見舞いする&#160;
「もう一度だけ言うぞ… パンツを脱げ…!」&#160;
「うぅぅうぅ……」&#160;
一瞬の躊躇の後、あやかはスカートの裾に手を伸ばす&#160;
そして腰を捩りながら、ゆっくりとその手を太股の方へずらして行く&#160;
膝頭まで捲れた制服のスカートの裾&#160;
あやかの両手にエスコートされて、薄桜色のそれは姿を現した&#160;

(!! )&#160;

池沼の分際で色気づきやがって…&#160;
俺の想像と異なり、それは大人の女が身に付ける様な、卑猥で官能的な、男を悦ばせる為のそれであった&#160;
純白のガキパンツに派手なション滲みが広がると予想していた俺は、不覚にも海綿体の反応を抑えられなかった&#160;
この池沼に、2度までも性癖を嘲笑われた…&#160;
そんな妄想染みた屈辱感&#160;
俺の中のモヤモヤが再びどす黒く変色していく&#160;
「可愛いパンツだね… 良く似合うよ… お姉ちゃんが選んでくれたのかな…?」
努めて冷静を装う&#160;

「答えろよっ!!」&#160;

「うぅっ!?」&#160;

無防備なドテ腹に拳を叩き込む&#160;
やり場の無いイライラ… 場の支配者は俺なのだ&#160;
俺は腹を押さえて苦しむあやかのスカートを捲り上げる&#160;
「きゃぁっ!?」&#160;
張りと水々しさに溢れた若い肌、淡雪の様に白いあやかの下腹部が露になる&#160;
その中央では、ムチムチの太股と形の良い臀部の付け根で、ひとむらの茂のみが青々と光沢を漂わせていた&#160;
これまでとは明らかに違う俊敏な反応&#160;
あやかは慌てスカートを下ろすと、膝を抱えて丸くなる&#160;
0174創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/05/18(水) 22:48:35.46ID:/fEb3svZ
「……あやかちゃん… オナニーしようか…」&#160;

「!? 」&#160;

殴り飛ばされてから俺の呼び掛けに反応を示さなかったあやかが、初めて反応を見せる&#160;

(ニヤリ… )&#160;

予想通り… 初めて俺がイニシアチブを握った気がした&#160;
この女… 知能はカタワビッコだが、あっちの方だけは健常者なのだ&#160;
「あやかちゃん、毎日やっているんだよね…」&#160;
再び視線を伏せ、俯くあやか&#160;
池沼の性力は底無しとも言う&#160;

「答えろっ!! 絶対答えろっ! ここは絶対答えろっ!」&#160;

「グハッ! イタッ! イヤァッ!!」

猛烈なストンピング&#160;
もう彼女の見える範囲の肌は、ほぼ全て赤く腫れ上がっていた&#160;
「うぅ…………」&#160;
「……?」&#160;
頭を押さえながら、あやかは右手の人差し指を立てた&#160;
「……1回?」&#160;
俺の問に頷くあやか&#160;
「なんに1回 なんだい?」&#160;
「しゅ…… 月に1回…… なの… だ… ブハッ!?」&#160;
俺の爪先があやかの股間にめり込む&#160;
「しゅ… 週に… 1回…」&#160;
拳を振り上げ睨み付ける&#160;
「ヒッ!? 毎日… 1日… 1日1回… なの… だ……」&#160;
俺は自分でも薄ら寒くなる程の作り笑顔を浮かべると、傍らに転がっていたゴミ箱をひっくり返して、その上に腰掛けた&#160;
「信じられない位スケベなんだね、あやかちゃん! じゃあ、やって見ようか! 上手に気持ち良くなれたら、お姉ちゃん達の所に帰してあげるよ!」&#160;
0175創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/05/18(水) 22:49:05.22ID:/fEb3svZ
そう言うと足元に転がっていたドンジャラのパイを1つ、あやかの元に放り投げた&#160;
それを無視して、上目遣いで俺の様子を伺うあやか&#160;
俺が何処まで本気なのか? 本当にやらせる気なのか?&#160;
あやかの視線は余りの不安と絶望にくすんで見えた&#160;
「やれって言ってんだよっ!! それとも腹が裂けるまで犯してやろうかっ!? スケベなあやかちゃんはレイプの方がお望みなのかなっ!?」&#160;
あやかの悲しみの溢れる瞳がゆっくりと閉じられた&#160;
漸く自分の身に降りかかった悪夢を理解し、絶望を受け入れた様だ&#160;
ゆっくりとゆっくりと座り直し、体制を整えると、更にゆっくりとした動きで&#160;
スカートを捲り上げていく ギリギリ際どいラインまで捲ると、一旦手を止め、&#160;
もう1度俺に視線を向ける&#160;
そして俺の眼光に慈悲の断片すら無い事を確認すると、徐に股の間に両手を伸ばした&#160;
「見えないよ! 俺の前でお股を開くか、前歯を全部折られるか、どっちかを選んでね!」&#160;
あやかはもう抵抗しなかった&#160;
僅かに体の向きを変えると、スカートを更に&#160;
たくし上げる&#160;
再び神々しいまでに卑猥な下腹部が露になる&#160;
そして膝を立てると体育座りになる&#160;
俺の目の前であやかという雌の本体が押し広げられる&#160;
ほとんど無毛 ほんのり赤らむ薄い恥肉&#160;
己の心臓がはち切れんばかりに高鳴っていくのが分かった&#160;
「綺麗だよ… あやかちゃん…」&#160;
0176創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/05/18(水) 22:49:43.89ID:/fEb3svZ
必死に余裕のある所を見せる&#160;
実際、綺麗だった 間違い無く処女であろう&#160;
「さぁ、早くやりたまえ…!」&#160;
荒い呼吸を抑えながらあやかを促す&#160;
あやかは目を瞑ったまま、再び伸ばした両手の指で秘所をまさぐりだす&#160;
何本もの白い指が、あやかのデリケートな部分を上から下から、慣れた動きで蹂躙していく&#160;

「……………」&#160;

彼女の頬の赤らみは殴られたせいだけではあるまい&#160;
「どうしたの? 全然気持ち良さそうじゃ無いね?」&#160;
「……あ ……あ ………ああ……」&#160;
俺の言葉に行為の目的を思い出し、取って付けた様にわざとらしい声を絞り出す
「そういう猿芝居はいいから! 馬鹿にしてんの!? やっぱりレイプの方が良いの!? この変態ドスケベ!!」&#160;
足の裏で床を蹴る&#160;
ビクッとなったあやかの指の動きが早く大きくなる&#160;
この状況で気持ち良くなれ、と言うのは確かに酷だろう&#160;
俺が同じ様な事をされたら、間違い無く立たない&#160;
それでもコイツは池沼だ&#160;
神が魂を入れ忘れた、人に似て人成らざる存在なのだ&#160;
「ほらっ そこのドンジャラパイでも使いなよ パイの扱い、得意だろ?」&#160;
多分、俺の表情は悪魔のそれだったろう&#160;
あやかは無言で傍らのパイを拾い、己の生殖器の入口に押し当てる&#160;
もう考える事を止めたのかも知れない&#160;
狭い肉壁の間に白いパイが出入りを繰り返す&#160;
まさに慣れた手つき&#160;

(本当にオナニー狂いなんだね、あやかちゃん )&#160;

満足気にその様を眺めていた俺は、肉とプラスチックが発する摩擦音が次第に変調していく事に気付いた&#160;
(!? )&#160;
予想はしていたが、まさかここまで早いとは…&#160;
あやかの性器は明らかに潤いを帯びてきていた&#160;
コイツはやはり、ガチの池沼なのだ…!&#160;

「あっ…… ああっ… ああん……」&#160;
0177創る名無しに見る名無し
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2016/05/18(水) 22:50:16.22ID:/fEb3svZ
あやかの口から漏れて来る、先程の猿芝居とは全く違う湿った雌の嬌声&#160;
半開きの瞳は高熱を得たかの様に力無く、その視線は宙空をさ迷う&#160;
性器に擦り着ける程度だったパイは何時の間にかあやかの中にどっぷりと埋もれる様になり、時に垣間見えるそれと彼女の指は妖しい粘液にテカテカと輝いていた&#160;
「あ… あやか… ちゃん……」&#160;
目の前の艶かしい光景に俺の股間は張り裂けんばかりに怒張する&#160;
こんな池沼に俺は…! こんな池沼に…! あぁ やっぱりあやかは愛おしい!&#160;
あやかは左手を上着の中に滑り込ませ、徐にその小さな乳房をまさぐり始める&#160;
まるで眼前に俺など存在しないかの様に快楽を貪り始めた&#160;
実際、既に眼中には無いのだろう&#160;
池沼にとって性の快楽は絶大なのだ&#160;

「あ… あぅ… ……やか… さやか……」&#160;

「!?」&#160;

微かなその声を聞いた時、初めは未だ家族の助けに期待をしているのか、それとも恥辱を受け入れた事に対する家族への背徳心から来る懺悔かと思った&#160;
だが、虚ろな瞳で無心に性感帯を刺激する様に理性の欠片は見られない&#160;
(…………!? )&#160;
俺は思い浮かんだある妄想を確かめる為に、優しくあやかに話し掛けた&#160;
「あやかちゃん… 何時も見たいにやってみな…… お姉ちゃんがやってくれる見たいに!」&#160;
「あぅぅぅ…! しゃ… さやか姉っ…!」&#160;
あやかの動きが激しくなる&#160;
性器に指を突っ込んだまま、大きく腰を上下に動かす&#160;
発情した雌猫の様な嬌声を上げる&#160;
俺の予想は当たっていた&#160;
今思えば、コイツの姉に対する依存とも言うべき執着は、仲の良い姉妹の範疇を越えていた&#160;
とんだ爛れた関係…&#160;
コイツが姉を求めたのか、姉がコイツをオモチャにしたのか…&#160;

「あっ あっ あっ… さやかぁっ!」&#160;

粘着質の卑猥な摩擦音が部屋中に響く 色んな体液を撒き散らすあやか&#160;
間もなく絶頂に達するのだろう&#160;
今まで何度、こうやって姉にイカされてきたのだろう&#160;
姉を何度イカせてきたのだろう&#160;
あやかとその姉が身体を重ねる姿を妄想し、俺はズボンから剥き出した己の陰茎を激しく擦る&#160;

「うっ…! うぅ さ、さやか〜!!」&#160;

「あっ あやか〜!!」&#160;

あやかと俺が果てたのはほぼ同時だった
まるで事後の様に、荒い2人の息遣いだけが木霊する&#160;

「あやか… お家に帰るのだ…… ほいこーろーが冷めちゃうのだ……」&#160;

重そうな身体をゆっくりもたげるあやか

「さっきも言ったけど、あやかちゃんはもうお家には帰れないよ」&#160;

これから俺がお姉ちゃんの代わりになってあげるからね…&#160;

あやかちゃん……!!&#160;
0178創る名無しに見る名無し
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2016/05/18(水) 22:50:24.92ID:/fEb3svZ
そんな妄想を終えて、行きつけの2スロ店を後にする&#160;
毎日、年老いた母から毟り取る二千円であやかと戯れるのだけが俺の生き甲斐&#160;
職無し、金無し、彼女無し…&#160;
麻雀物語がこの店から消える時、俺のこのモードBにすら移行しなかったベタピン人生も終演を迎えるだろう&#160;
穴だらけの駐車場に翻る登り&#160;

『明日、新台入れ替え! シンデレラブレイド2』&#160;

……胸に過る不吉な予感……&#160;

………まっ とりあえず全員ペンペンするまでは打ち込んで見るか…
0179創る名無しに見る名無し
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2016/05/21(土) 21:35:46.96ID:zNTFL/ka
神楽ちゃんとも遊ぼう



「なんや、なんや!? 一体どないしたん!? 何の騒ぎや?」&#160;
好物の回転焼きを頬張りながら商店街を闊歩する神楽の前に、黒山の人だかり…&#160;
「おぉ? 詩音か〜、どないもこないもあらへんがな〜…!」&#160;

大型ショベルカーが一軒の古びた駄菓子屋の前で、その巨大な鎌首をもたげる&#160;
無謀にもその前では腰の曲がった老婆が両手を広げ、それに必死に対峙する&#160;
「こらぁ! やめんか〜!」&#160;
人混みを掻き分け現れた神楽が、その両者を制する&#160;
「話は聞いたで〜、東京者! 此処はウチの神社の門前町や! 勝手な真似はさせへんで!」&#160;
突然現れた邪魔者に、俺はしぶしぶユンボを降りる&#160;
「じゃあ、この婆さんが滞納している『うまい棒』代、締めて360万! 代わりに払って貰おうじゃねーか!」&#160;
「ふんっ 釣りは要らへん! …式神! 陀狼慈狼!!」&#160;
一瞬の事だった&#160;
神楽の手から放たれた白い紙人形、それが俺の眼前でくるりと踊る&#160;
鈍痛、衝撃、気が付くと俺は地面に横たわり、商店街の狭い青空を見ていた
「うまい棒代が360万やて? どこの世界の話や!」&#160;
耳に聞こえたのは、そんな神楽の捨て台詞とギャラリーの拍手喝采だった…&#160;
0180創る名無しに見る名無し
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2016/05/21(土) 21:36:21.44ID:zNTFL/ka
「う… うぅ…… うん……?」&#160;
「気が付いたかね? 神楽… 」&#160;
「あれ…… 此処は……? ウチ……?」&#160;
そこは小さなハロゲンランプが照らす、ほの暗い空間だった&#160;
か細い光源と空間を形成する壁以外、何も見えない&#160;
重く、そして白濁する意識が徐々に覚醒していく&#160;
「んっ!?」&#160;
漸く神楽は自分の手足が拘束されている事に気付いた&#160;
背中一面に壁の感触 そこに大の字に張り付けられていたのだった&#160;
日没前の御勤め、境内の落ち葉を竹箒でかき集めて火をくべり、 晩秋の木枯しから身を温め様とした所までは覚えている&#160;
嗅いだ事の無いような、甘い匂いがした気もする…&#160;

「昼間はよくも恥を掻かせてくれたね…」&#160;

先程も聞こえた気がするその声&#160;
神楽はハロゲンランプの向こうから1人の男の輪郭が現れるのを見た&#160;
「あんたは… 確か……」&#160;
「まさか式神使いなんてマジシャンが実在するとはね… おかげでとんだ赤っ恥… そして俺の菓子問屋は倒産した… このお礼はたっぷりさせて貰うよ!」&#160;
復讐の時は来た&#160;
この小生意気な女を恐怖と恥辱に慄かせてやる…&#160;
俺は神楽の尖った顎を指でしゃくりあげる&#160;
「はっはっはっ」&#160;
だが神楽の見せた反応は、俺の期待を真っ向から裏切った&#160;
「何が可笑しい?」&#160;
「東京者は女の扱いかたも知らんようやな〜 ちょっとエッチビデオの見過ぎちゃうんか?」&#160;
口角を吊り上げ、哀れみすら漂わせた、ゴミを見る様な侮蔑の視線を俺に向ける&#160;
「調子に乗るな!!」&#160;
俺は神楽の巫女装束に手を掛ける&#160;
そしてその胸元を力一杯に抉じ開けた&#160;
ぼろんっ まさにそんな効果音を上げて、神楽の余りに豊満な乳房が露になる&#160;
小顔な神楽の頭部に匹敵するかの様な、圧倒的質量&#160;
それでいて見事な釣り鐘形に均整は保たれ、張りのある白い肌には青い血脈がうっすらと浮かび、薄紅色の乳輪が一層栄えて見えた&#160;
0181創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/05/21(土) 21:36:50.85ID:zNTFL/ka
「どやっ? なかなかの物やろ?」&#160;
だがそれでも尚、神楽の余裕は崩れなかった&#160;
(こいつ…! )&#160;
俺の焦りを見透かしてか、神楽は更に挑発を重ねる&#160;
「あんた… こんなおっぱい見た事あるん? まさか… 童貞さんちゃうやろな?」&#160;
「!!!」&#160;
人には触れてはならない一線がある それに触れたら後は命のやり取りしかない&#160;
俺は目的を変更した&#160;
もういい、目の前のこの女を廃人にする事にした&#160;
俺は徐に肩掛け鞄のファスナーを開ける&#160;
「なんや? オモチャでイタズラか? ホンマしゃーないのぉ〜 男ならチンコ挟んでみいや! あぁ 人前には出せん粗チンか〜w」&#160;
俺は怒りに張り裂けそうなこめかみの血管を宥めつつ、鞄から取り出したそれの封を切り、帰りの新幹線で… と思って買って置いた『墨よし』の備え付け竹串を外し、それでゆっくりとその中身をかき混ぜ始めた&#160;
「んんっ…? なんやこの臭い… きっついなぉ…」&#160;
初めて神楽の表情に曇りが掛かった&#160;
だがそれはこの臭い対する条件反射であり、恐怖のそれとは程遠い&#160;
だがそれで良い&#160;
恐怖は予期せぬ方がより破壊力が強まるのだ&#160;

「神楽ちゃ〜ん 大阪の三大名物と言えば何かな〜」&#160;

「なんや急に、気色ワルい… 大阪の三大名物つーたら、たこ焼き、お好み焼き、根性焼きやろうな!」&#160;
状況が状況だけに、少しおつむの具合が心配になる程の余裕っぷり&#160;
これが浪速テイストなのか…&#160;
俺は手の中のそれが仕上がったのを確認し、反攻開始の狼煙を上げた&#160;
「ホント大阪の食べ物は身体に悪いジャンクフードばかりだね〜 そんな物ばかり食べてるから神楽ちゃんみたいに、おっぱいだけ成長して脳ミソスカスカになるかな〜?」&#160;
「なんやて!?」&#160;
「ほうら、日本人ならやっぱりこれでしょ! 頭も良くなるよ!」&#160;
そう言うと、手に握ったそれの中身を神楽の柔肉の上にぶっかけた&#160;
0182創る名無しに見る名無し
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2016/05/21(土) 21:37:17.74ID:zNTFL/ka
「な、な、な、な、な……!? ま、ま、ま、ま、ま、さか… これ…!?」&#160;

「あぁ… 神楽ちゃんの真っ白炊きたてふっくらおっぱいにはやっぱり納豆だね!」&#160;
「いゃ……! いゃ…! いゃぁぁぁっ!! やめて! 取って! これ外してーー!!」&#160;
「なかなか良い悲鳴じゃないか、神楽ちゃん そんなに納豆が嫌いかな?」&#160;
「臭いぃ! キモいぃ! こんなの食べ物じゃないぃ!!」&#160;
身悶える神楽の深い胸の谷間を、茶色の引き割り達が列を成して進んで行く&#160;
神楽の白い肌と柔肉がポリグルタミン酸によって凌辱されていく&#160;
「だ、駄目!! アカン! これだけはホンマにアカン!!」&#160;
初めて見る神楽の取り乱した姿&#160;
激しい悶えに彼女を拘束する枷が鈍い音を立てる&#160;
そうこうしているうちに、良質タンパクの群が、神楽の細長いい臍穴に迫る
「いゃやぁぁっ! こ、殺してぇぇぇっ!! うちを殺してぇぇぇぇなぁっっ!!」&#160;
肌にまとわり付く濃厚な粘液の、筆舌にし難い不快な感触&#160;
つい先程までのあのふてぶてしい態度が一変、完全に錯乱状態の神楽&#160;
「いゃぁっ!! 納豆いゃぁっ!!」&#160;
美女の艶かしい悶絶姿&#160;
だが、本来大好物である筈のそれを見る俺のテンションは急激に萎み、心は冷えていった&#160;



「………そう言うのはいいんだよ………」&#160;

「!? 」&#160;

俺のボソリとした呟きに、神楽の身悶えが一瞬静止する&#160;
「大阪人だから… 関西人だから… 納豆が嫌い… 嫌いな筈… そういうステレオは、ホント萎えるんだよ……」&#160;
「!?…… 嫌や……! 助けてぇな! ウチ、納豆はホンマにアカンねん!」&#160;
目に涙を浮かべながら、それでも必死に納豆の凌辱から逃れ様と身体をくねらす神楽&#160;

「そういうのはヤメロって言ってんだよっ!!」&#160;

「ヒッ!? 」&#160;

俺の怒号が、その広くはない部屋にキンキンと木霊する&#160;
0183創る名無しに見る名無し
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2016/05/21(土) 21:37:26.20ID:zNTFL/ka
「………こんな寒い日は暖かい部屋でおコタに入って、フグザクを突つきたいね……」&#160;

「!? 」&#160;

「今頃、赤石山の紅葉はきっと見事だろうな… 」&#160;

「!! 」&#160;

「今年の太鼓祭りも、さぞや勇壮だった事だろうね…」&#160;

「……………」&#160;

俺はゆっくりと深い深呼吸をすると、神楽に背中を向けて続けた&#160;
「神楽ちゃんは忘れちゃったのかな… あの瀬戸内の青い空を… コンビナートの夜景を… 懐かしい人々の優しい笑顔を……」&#160;
「うぅ………」&#160;
神楽の顔色が如実に変化していく&#160;
何かを思い耽る様に、力無い視線が宙空をさ迷う&#160;
「あぁ… 忘れたんじゃないのか… ゴミの様に投げ捨てて、唾を吐いたんだっけ…」&#160;
「そんな事してない!! 忘れてなんか…! 捨ててなんかしてない!!」&#160;
今度は神楽が大声を張り上げた&#160;
「捨ててない? それじゃ、今の神楽ちゃんは一体何なの? インチキ大阪弁を話して、大判焼きを回転焼きと言い張って、郷里の大スターを無視して熱狂阪神ファンを装い、おまけに巫女装束からおっぱい丸出しで納豆嫌いを必死に演じる神楽ちゃんは!?」&#160;

「ううっ…………」&#160;

神楽はガクンと頭を落とした&#160;
ヒタリと垂れる何かの滴が彼女の足元に斑点を描く&#160;

「だって… だってみんなバカにするんや… 大阪で上手にやって行くには… こうするほか、無かったんや…」&#160;

遂に観念し、ありのままの姿を見せてきた神楽に俺はゆっくりと振り返る&#160;

「新居浜の何処が大阪に劣ってると言うんだい? 大阪なんてキチガイと糖質の集まりだろ(原文ママ)! 新居浜をバカにしてるのは大阪の奴じゃない! お前自身だろ!」&#160;

「!!」&#160;

頬を打たれた様な衝撃に、神楽はくしゃくしゃに泣き晴らしたその顔をあげる&#160;
「うぅ ごめんなさい…! ごめんなさい…! 神楽が間違っていました! もうインチキ大阪弁なんて使いません! 愛媛出身も隠しません!&#160;
野球は巨人、回転焼きは大判焼き、納豆はこれからも毎朝食べます!」&#160;
開けた巫女装束から巨大なおっぱいをさらけ出し、それを揺らしながら号泣する神楽の姿は、今までで見た彼女の中で一番美しかった&#160;
エセ浪速の式神使いは文字通り廃人になったのだ&#160;



「まさかおまいさんも新居浜の人だったなんて… 東京者だなんて、おまいさんもウソつきやわ…」&#160;
枷を外された神楽がポツリと呟いた&#160;
気のせいだろうか、ほんのりと頬が染まっている気がする&#160;
「えっ… 俺は福島の人間だけど?」&#160;
「えっ……?」&#160;
「言っとくけど、愛媛より福島の方が全然都会だからね! 赤ベコも可愛いし! でも東京だといろいろバカにされるから、東京人を装ってるんだ! つーか本物の東京人になったべよ! 」&#160;
「………べよ?」&#160;
余りの都会派オーラに晒された由縁か、硬直して動けない神楽の尻を一撫でし、俺は大阪パチ打ちの聖地と言われる、マルハンなんば本館に向かってスキップをかますのだった&#160;
後に神楽は式神パペット漫談で一世を風靡し、なんばグランド花月のスターダムにのしあがるが、それはまた別の物語である
0184創る名無しに見る名無し
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2016/05/23(月) 06:18:31.21ID:yNm9Uf5N
「スッタン細胞は…… ありま〜すょ!」&#160;
フラッシュライトの嵐が吹き抜ける&#160;
シャッターが刻む音が会見場に指定された大会議室に木霊する&#160;

「信じて下さ〜〜いょ」&#160;

「ちょっと… 頭を整理してからぁ…」&#160;

「………なるほどぉ〜…」&#160;

マスコミ記者からの矢の様な質問責め&#160;
元来のんびりとした性格の彼女がそれを掻い潜るのは至難な技であった&#160;
大粒の汗が額の上で宝石の様に光っていた&#160;





「おかしいなぁ……」&#160;
試験管を振る彼女の手に力がこもる&#160;
檻平研究所の主任研究員、Dr.レムと言えば、科学界では名の知れた存在である&#160;
若く美しい彼女の存在は檻平研究所の看板であり、そしてその研究者としての実績は日本の、否、世界の生命医学界の歴史に大きな足跡を残すと称えられていた&#160;

『スッタン細胞』ーーーーー&#160;

彼女の情熱と数々の偶然が生み出した、奇跡の万能細胞&#160;
その発見から彼女の一挙手一投足は科学界の注目の的となり、&#160;
プロジェクトリーダーとして製造技法の確立を目指す頃には、その存在は広く世間に知れ渡る事になる&#160;
やがてはノーベル賞か、国民栄誉賞か…&#160;
順風満帆に思われた科学者人生&#160;
だがある日、その幸運と栄光の日々は終演を迎える&#160;
0185創る名無しに見る名無し
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2016/05/23(月) 06:19:13.46ID:yNm9Uf5N
"レムプロジェクトリーダーに論文捏造疑惑"&#160;

ネット掲示板の書き込みを端に発した唐突のスキャンダル&#160;
衆人羨望の天才美人科学者は、一夜にしてペテン師の烙印を押されたのだ&#160;
檻平研究所は彼女にスッタン細胞の再生産と記者会見での釈明を命じる&#160;
最早、彼女に向けられる視線は懐疑と侮蔑に満ちていた&#160;
何かの手違い… 決して嘘ではない… もう一度造り出してみせる…&#160;
疑惑を晴らす事は難しくはない&#160;
その筈だった&#160;
だが、あの日確かに彼女に奇跡をもたらした創命の女神は、二度と微笑む事はなかった&#160;

「もう… らめれす……」&#160;

彼女が試験管をテーブルに投げ出すのと、プロジェクトメンバーの1人が血相を変えて研究室に飛び込んで来たのはほぼ同時だった&#160;



その日が来た時の為に、と取り置きしていたシャトー・マルゴー&#160;
グラスに注いだそれにカプセルを2つ沈める&#160;
特別な存在である彼女にのみ与えられた、研究所内のプライベートルーム
遠く摩天楼の夜景がその窓に映る&#160;
見慣れた筈のそれが、今宵は何故かとても眩しかった&#160;
こうするしかない…&#160;
彼女の上司にあたる副センター長の自殺
遂に自分の不始末が1人の人間を… 尊敬する上司を死に追いやった&#160;
スッタン細胞なんて… 天才科学者レムなんて… 初めから存在しなかったのかも知れない…&#160;
彼女は自嘲の笑みと涙を浮かべ、マルゴーを飲み干す&#160;
そしてお気に入りのソファーに寝そべると、子供の頃から大好きだったムーミンの絵本を広げた&#160;

「………ふぁぁ……… 眠いなぁ〜……」&#160;

睡眠薬が溶ければ、その下から現れる青酸カリが、更に深く穏やかな眠りにレムを誘う筈だ…&#160;
0186創る名無しに見る名無し
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2016/05/23(月) 06:19:42.85ID:yNm9Uf5N
『ジリリリリリリッ!! 』&#160;

けたたましいベルの音が鼓膜を刺激する

『侵入者、エリア3に到達! 戦闘員は配置に着け! 』&#160;

そんな声が聞こえた気がする&#160;
「うぅん…? うん……!?」&#160;
否応なしに意識を掻き回される&#160;
もっと寝ていたい… せめて後2時間…&#160;
ベッドの上で寝返りを打つ&#160;
「……テディ! 起きるアル! 出番アル! …テディ!!」&#160;
面倒くさいなぁ… ニコラが自分を起こしにくる時に碌な事はない&#160;
「テディ!!」&#160;
インターフォン越しの怒号に、漸く覚悟を決めて重い頭をもたげる&#160;



(…………此処は……… 何処……? )&#160;

レムは辺りを見回した&#160;
徐々にはっきりとしてくる意識&#160;
見覚えの無い、だけど何故か親しみを覚える一室&#160;
ベッドとテーブルと、僅かな雑貨が床に転がるだけの薄暗く殺風景な空間…&#160;
「テディ! 起きろ! 起きるアル!!」
再び響いた怒号に反射的に飛び起きる&#160;
ニコラ… 何故か分からない 何故か分からないが、レムはその声の主を知っていた&#160;
そしてテディ… それが自分を呼ぶ名でである事も…&#160;

(それにしても…… 眠いなぁ……… )&#160;

「漸く起きたアルか!? 急ぐアル! IJAのエージェントアル!」&#160;
SFチックなスライドドアが開くなり、お団子頭の女性が捲り立てる&#160;
初めて見る、だけどやはり何処か懐かしいその女性…&#160;

(……夢を見ているのかなぁ……? )&#160;

レムは無意識にそのお団子頭の後に続いて行く&#160;
「おい、大丈夫アルか!? しっかりするアル! もうベリコとビクシアが殺られたアル… あの女、ただ者ではないアル!」&#160;

(あぁ… ベリコとビクシアが逝ったか… )&#160;

初めて聞く名前… なのにやっぱり彼女達の顔が脳裏に浮かぶ&#160;
「仇は討つアル… 八つ裂きにしてやるアル!」&#160;
ニコラの声は怒りに震えていた&#160;
そしてやはり自分の胸にも、熱い感情が込み上げてくる&#160;
0187創る名無しに見る名無し
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2016/05/23(月) 06:20:47.50ID:yNm9Uf5N
(…………仇は……… 討つ! )&#160;

エリア4とエリア5を繋ぐ其処は中空のヘリポートでもある&#160;
此処を抜かれれば組織の中枢、そして中央制御室へのアクセスを許す事になる&#160;
「あのスコールとレオーネまで……」
傍らに立つニコラの声に先程までの力は無かった&#160;
組織最強のスコールとレオーネまで瞬殺する侵入者&#160;
命を賭して… 何とかイメージ出来るのは刺し違える姿だけ…&#160;
「……テディ……」&#160;
ニコラの視線が自分に注がれる&#160;
「……?」&#160;
「……なんだ、その…… お前とコンビを組めて…… 楽しかったアル……」&#160;
ニコラが右手を差し出してきた&#160;
死を覚悟した者の所業である&#160;
出会って数十分… 何の思い出もありはしないが、何故かその手を払う気にはならなかった&#160;

「き、来たぞ!」&#160;

ヘリポートの向こうに遂に姿を現した侵入者&#160;
僅かに残った戦闘員達が悲壮な戦いに挑み、そして散っていった&#160;

『女豹』ーーーーー&#160;

その姿はまさにそんな言葉がピッタリだった&#160;
しなやかなボディにフィットした漆黒のエナメルスーツ&#160;
白い肌と炎の様な真っ赤な頭髪&#160;
そしてそこに誇らしげに飾られた猫耳バンド…&#160;
"冥府のスパイガール"の異名をとる、IJAの凄腕エージェント『ミゥ』&#160;
その名前だけはやはり何故か知っていた
羽を持つかの様な人間離れした跳躍で、彼女は最後に残った2人の前に踊り出た
0188創る名無しに見る名無し
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2016/05/23(月) 06:21:14.41ID:yNm9Uf5N
「死ぬアル! てやぁぁぁっ!?」&#160;

ニコラの突きは十分な速度と重さを持っていた様に思えた&#160;
無助走からの脅威的な宙転&#160;
ミゥは一瞬でニコラの背後をとる&#160;
「うわっ!?」&#160;
そのままニコラの背中に蹴りを入れ、彼女を吹き飛ばすと、&#160;
今度はレムの眼前にヒタヒタと迫り来る
「………やるんですかぁ…?」&#160;
恐怖は感じなかった&#160;
この世界は青酸カリの毒で破壊されつつある脳が見せる幻影であると彼女は判断していた&#160;
痩せても枯れても生命学の権威である&#160;
己の脳が造り出す三文芝居、冥土の土産にそれを見届けるのも一興&#160;
「ふわぁ…… 眠いなぁ………」&#160;
大きな欠伸を掌で押し込める&#160;
それが挑発の様に映ったのかも知れない

『タンッ!』&#160;

女豹は生意気な獲物を仕留めるべく、地面を蹴ってレムに襲い掛かる&#160;
「テディ!」&#160;
眼前に迫ったミゥの小悪魔の様な不適な笑みが一瞬で消えた&#160;
何かが視界の外を転がって行く&#160;
コンクリートの上に寝そべるミゥと、その括れた腰にしがみ付くニコラの姿&#160;
それがそれを追ったレムの両眼が捉えた光景だった&#160;
吹き飛ばされながらも必死に体制を立て直し、寸でのところでミゥに食らい付くとは、流石は幹部戦闘員最速を誇るニコラ&#160;

「……っかはっ!?」&#160;

視線が合い、何かをレムに言い掛けたニコラの笑顔が苦痛に歪んだ&#160;
レムは見た&#160;
ミゥが太もものホルダーから取り出したバタフライナイフを、ニコラの腹部に吸い込ませるのを…&#160;
肝臓を確実に捉えた、疑う余地の無い致命傷…&#160;
生命学者のレムには分かる&#160;
次の瞬間にはニコラの瞳は輝きを失い、腸壁の傷から吹き出した肝臓の大量出血がその口を突いて溢れ出し、卒倒する筈だ&#160;
「!? 」&#160;
0189創る名無しに見る名無し
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2016/05/23(月) 06:22:06.92ID:yNm9Uf5N
だが、ニコラの取った行動は天才科学者レムの予想を覆した&#160;
「テディ…! 打てぇ! 打つアルゥ!! その銃でぇ… 打てぇぇぇっ!!」&#160;
口と腹を鮮血に濡らしたニコラは、自らを貫いた禍物を持つミゥの手首を握り、その身体に覆い被さる&#160;
その行動はミゥにとっても意外だったのだろう、初めて焦りの表情をその美顔に浮かべる&#160;
レムもミゥもニコラの意図が理解出来た
レムの得物、ピーカン銃…&#160;
照射地点を数千度の灼熱に包み込む&#160;
それで己ごと敵を葬れというのだ&#160;
作戦としては極めて合理的&#160;
もうニコラは助からない ならばせめて敵の足止めを… という事だ&#160;
レムは手元のピーカン銃に視線を落とす
これもそう、経緯は分からないが、多分これが私の得意武器なのだ&#160;
レムはゆっくりとその銃口を絡み合う2つの影に向ける&#160;
それを見たニコラが優しい笑顔を見せた
何故なんですぅ? 何故貴女は逃げなかったんですぁ?&#160;
逃げられたのにぃ? 逃げなければ、こうなる事は分かっていたのにぃ…?&#160;
この夢の中の貴女は… 懐かしい貴女は、一体誰なんですぉ…?&#160;
抜け始めたニコラの魂と握力&#160;
その手を振りほどいたミゥが、引き抜いたサバイバルナイフを滅茶苦茶にニコラに突き立てる&#160;

「…………… 」&#160;

「…………?」&#160;

ニコラの口が声に成らない言葉を紡ぐ&#160;
だがレムにはその声が確かに聞こえた&#160;
ピーカン銃の閃光が辺りを包み、そして静寂が戻った…&#160;





『ピィィィィ〜! 』&#160;

何処かで耳障りな笛の音が響いている&#160;
「うぅん…… もうちょっと…… せめて後1時間…… ………ん!?」&#160;
涎が手の甲を流れる不快な感触に頭を上げたレム&#160;
「あれぇぇ…………?」&#160;
ストーブの上のヤカンが一際大きく笛を鳴らす&#160;
「……………夢…… かぁ………」&#160;
其処はいつもの安アパートの一室&#160;
科学者を夢見るレムの青春の住み家&#160;
大きな伸びをして眠気を振り払うと、ヤカンを外し、ペヤングの淵にその中身を注ぐのだった&#160;





薄壁1枚隔てたその隣室で、俺の人差し指が華麗にenterKeyを叩いた&#160;
乾いた音が心地よく響く&#160;
今日も今日とて声優"平野綾"に対するヘイトバッシングに余念は無い&#160;
たった今も、2ちゃんとふたばに平野叩きのスレを立てたばかりだ&#160;
俺の毎日は、俺の純心を踏みにじったこの糞ビッチへの復讐で終始する&#160;
奴のCDを粉砕して噛み砕く様をニコ動にアップしたのは何年前だろうか…&#160;
この糞ビッチが社会から抹殺され… そして俺の部屋の玄関先に白無垢姿で現れるまで、俺の憎しみが消える事は無い&#160;
時刻は午前1時… 科学者を目指し勉学に励むレム、そして平野への愛憎をたぎらす俺…&#160;
2人の叩くキーボードの音が軽やかな二重奏となって、ボロアパートに流れた
0190創る名無しに見る名無し
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2016/05/24(火) 13:51:02.77ID:bi4AUIUx
「…………nnn9#nmvmaよmfew?……jgt25umd2なgJaa;………」&#160;

情報集積回路に重大な障害&#160;

「…………step3 enter→ error error error…… jndmnnnn2なはtjndb>at?$………」&#160;

自己修復プログラム動作不能&#160;

「…………2/100%…… set fgnw@dー 1… 1… 1… 1… 」&#160;

バックアップバッテリー供給不良&#160;

コンポストの内容物を取り出して… ダストハブラインに…&#160;
何時から此処にいるのだろうか…&#160;
もう数年前からの様な気もするし、ほんの数瞬前の様な気もする…&#160;
記憶を司るメモリーに甚大な障害があるとアラート&#160;
それが原因か時間的感覚が掴めない&#160;
それだけではない&#160;
光学サーチが出来ない 熱感知も出来ない&#160;
メンテナンスチップがメーカーサポートをしつこく要求している事だけが分かる

「………ありがとう…… 2012………」&#160;

「!?」&#160;

次の瞬間、補助動力電池が働いた&#160;
私の生体センサーが電圧を感知する…&#160;

「………お帰りなさいませ……… 坊っちゃ…… ま………」&#160;
0191創る名無しに見る名無し
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2016/05/24(火) 13:51:54.02ID:bi4AUIUx
格子硝子から射し込む眩し光…&#160;
それが多分、私が初めて集積した外部情報…&#160;
MEI-DO2012… それは私のシリアルネーム&#160;
その下の細かい数字は、今年産まれる姉妹の数と、自分の産まれた順番を表している&#160;



マスター、奥様、坊っちゃま…&#160;
私の仕える立花家はマニュアルにもある様な、典型的な核家庭でございました&#160;
「ディナープレパレーション… レリーズ」&#160;
私の指示に電子調理器機達が元気良く答える&#160;
「凄〜〜い!」&#160;
坊っちゃまはとても興奮なされておりました&#160;
「凄い時代になったわね〜」&#160;
奥様は何度も頷き、目を細めてらっしゃいました&#160;
「ははっ それなりの値段だからな〜」&#160;
旦那様は何故か御自慢気でらっしゃいましたね&#160;
「お待たせ致しました… お召し上がり下さいませ…」&#160;
私のプレゼンしたディナーがお気に召されるかどうか、注視しておりました&#160;
緊張しているの? 奥様のそんな言葉を覚えております&#160;
ユーザー様のライフカラーとわたくしのプログラムカラーが一致するかは、とても大事な項目でございます&#160;
「おっ 美味しぃ〜!!」&#160;
坊っちゃまの満足気な笑顔で、わたくしはこのまま立花家へのご奉公が出来ると確信致しました&#160;
0192創る名無しに見る名無し
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2016/05/24(火) 13:52:15.74ID:bi4AUIUx
「ランドリーレーション、102ーB… スウィーピングレーション、ルンバV…」&#160;
お屋敷の使用家電類はお世辞にも新型とは呼べず、些か扱いには苦慮しておりました&#160;
酷い者では基礎言語でのやり取りさえ不可能な者も居りました&#160;
それでもご家族のお役に立てる様、最善のプログラムを立案し、優雅でゆとりある暮らしをご提供してきたと自負しております&#160;

奥様がお屋敷に戻られなくなりましたのは、お仕えしてから4年と187日後の事と記憶しております&#160;
御理由を推測する機能はございませんが、その以前から旦那様とのご意見の相違が御有りだったと、この記憶にはタグ付けされております&#160;
ご家庭に於ける坊っちゃまの発言数は、その日を境に著しく減少されました&#160;
更には旦那様が御公務の都合でお屋敷を留守になさる事が増え、坊っちゃまはいよいよ寡黙になられした&#160;
お食事を採られぬ事も御有りで、生体としての成長期に在られた坊っちゃまの御体調を案じておりました&#160;
奥様の御離館、坊っちゃまの生活環境の悪化…&#160;
わたくしは自分の使命が果たせぬ不甲斐なさに自責を痛感し、プログラムの再構築の必要を感じておりました&#160;

「……泣いているの……?」&#160;

坊っちゃまはその様な質問をなさいました&#160;
坊っちゃまが通常よりやや高めの体温を持つ御手で、私の頭部前面の光学センサーを何度も御拭いになりました&#160;
その頃から旦那様の帰られぬ夜は、わたくしの大腿部を枕代わりになされてお休みになる事が度々ありましたね&#160;
0193創る名無しに見る名無し
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2016/05/24(火) 13:52:35.65ID:bi4AUIUx
旦那様が御亡くなりになられたのは、わたくしがお仕えしてから18年と22日目の事でした&#160;
わたくしには死という概念は理解出来ませんが、坊っちゃまの発言数が必然的に減少する事を憂慮せずには居られませんでした&#160;
しかし旦那様のご葬儀の際に、坊っちゃまに寄り添われる女性の方を拝見し、坊っちゃまを憂慮する存在が自分以外に居た事に安堵致しました&#160;
結果的にその方を新しいお屋敷の奥様… 坊っちゃまの奥方としてお迎え致しましたのは、とても合理的な判断だと感銘致しました&#160;
わたくしの大掛かりなアップデート、OSの更新があったのもこの頃でした
確かこの年は2回に渡って、かなり細部までプログラムの構築、各種パーツの更新をして頂きました&#160;
お陰様で最新型の家電器類との意思の疎通が幾らか可能となりました&#160;

坊っちゃまの御子様が誕生されたのは、わたくしがお仕えしてから21年と93日目、お二人目の御子様が誕生されたのは23年と225日目でございましたね&#160;
最新鋭の情操知育コンピューターとの連動の為に、対応OSを搭載したMEI-DO2035が迎えられたのもこの年でございました
2035はとても優秀で、わたくしの代わりにお屋敷の家事全般を見事に取り仕切り致しました&#160;
同シリーズの姉分として誇り高い思いでございました&#160;
この頃にはOS仕様の変更により、わたくしはお屋敷の家電器類との意思の疎通がほぼ不可能になっておりました&#160;
最新シリーズへの切り替えには、まさに絶妙のタイミングでございました&#160;
0194創る名無しに見る名無し
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2016/05/24(火) 13:53:00.02ID:bi4AUIUx
坊っちゃまの御公務が多忙になるにつれ、亡くなられた旦那様同様、お屋敷に帰られなく日々が増えました&#160;
しかし垣間見る限り、奥方様と御子様方は坊っちゃまの様に御発言が滞る事も無く、御食欲にも変わりは無い様でした&#160;
わたくしはこの頃、お屋敷内の業務を全て2035に移譲致しました&#160;
わたくしの業務は、お屋敷のお庭の片隅にある物置小屋で、唯一意思の疎通が図れる電子コンポストに、僅かに排出される生ゴミとお庭の落葉を処理させるに留まっておりました&#160;
出先からお帰りになられる坊っちゃまは、何時もそんなわたくしに声を掛けて下さいましたね&#160;
ただ間もなく、完全回収型調理器機と自立型環境管理器機の登場により、電子コンポストの役目が無くなりますと、わたくしは自ずと坊っちゃまにお目にかかる機会が得られ無くなりました&#160;
暗い物置小屋の小窓から季節の移ろいを眺めるのは、些か物足りない物がありました&#160;
恐らくあの女性達が坊っちゃまと御家族の留守を狙い、お屋敷に侵入してこなければ、わたくしは二度とそこから出る事は無かったでしょう&#160;
わたくしの型遅れのOSでもその位は分かります&#160;
これでも世に産み出された時は、人類史の奇跡と賞賛されたと記憶しております
0195創る名無しに見る名無し
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2016/05/24(火) 13:53:26.76ID:bi4AUIUx
「……ここにミケール・ハインツの麻雀パイが…」&#160;

レオタードに身を包む三人の女性 噂の怪盗三姉妹…&#160;
私の電波回線は仕様変更でとうの昔に沈黙しておりましたから、その情報は恐らく2035から得た筈です&#160;
彼女達の目的がお屋敷の財物と知って、黙って見ている訳には参りませんでした
「お待ちしておりました、ご主人様… いえ、怪盗風上三姉妹様…」&#160;
わたくしは恐れながら、物置小屋の朽ち掛けた扉を破壊し、彼女らの前に立ち塞がります&#160;
突然の妨害者の登場に三姉妹は驚きは隠せません&#160;

「行くわよー!」&#160;

リーダー格とおぼしき明朗な女性が跳躍しました&#160;
彼女達は退散より、私との闘いを選んだ様です&#160;
わたくしには自己防衛プログラムがあります&#160;
ロボット三原則に明記された権利でございます&#160;
型遅れのロートルとは言え、生身の… それも女性に不覚をとるつもりはありませんでした&#160;
わたくしの光学センサーが迫り来る女性の姿をしっかりと捉えます&#160;

「お料理の時間です!」&#160;

敵を簡単に料理する… そんな意味なのでしょうか、わたくしの防衛プログラムは右手首部を開口し、カウンターネットの射出を選択しました&#160;
出来れば怪我などさせたくはありません 司法機関に引き渡すのが最善です&#160;
ですが、攻撃を受け地面を転がったのはわたくしでした&#160;
お恥ずかしい事に、わたくしの右手首の射出部は赤茶色に錆び、蜘蛛の巣が張っていました&#160;
わたくしの認識以上に、わたくしのボディは老朽化していた様です&#160;

「何なのだ!? 凄いポンコツなのだ!」&#160;

一番年少と思われる女性が私の頭部に高硬度の物質を叩き突けます&#160;
光学センサーの1つとジャイロが破壊されました&#160;

「凄い年代物ですわぁ! 動いてる所、初めて見ましたわぁ!」&#160;

そう言いながら、最年長とおぼしき女性が重量のある攻撃を加えてきます&#160;
マイターギアの何個かが破損し、立ち上がる事が出来ません&#160;

「キテるキテる〜!」&#160;

眼球を血走らせたリーダー格の女性が、鍛え上げられた蹴りをわたくしのボディに炸裂させます&#160;
何かの配線がショートし、同時にアラート発令&#160;
自己修復プログラムが自動構築を始めました&#160;
最後… に…? 三姉妹は私の頭部に庭石を一つ一つを叩き突け始めました&#160;
四回目の打撃でわたくしのOSは緊急避難的シャットダウンを決行しました&#160;

次に意識が立ち上がった時、屋敷から走る閃光を見ました&#160;
そして2階の窓から吹き飛ばされる三姉妹の姿…&#160;
そうでした お屋敷には優秀な妹分が居るのでした&#160;
忘れていた訳ではありません 何故でしょう?
初めから彼女に任せれば、難なく侵入者を撃退出来たのに…&#160;
これでは物置小屋の扉を破壊した申し訳が立ちません&#160;
つくづく自分の不甲斐なさに気が滅入ります&#160;
私の回路とセンサーはずっと前から壊れていたのかも知れません&#160;
否、壊れていたのでしょう… 現に今… 私は電熱回路のショートを… 自分のボディが焼けるのを… 補助動力電池の作動と…&#160;
0196創る名無しに見る名無し
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2016/05/24(火) 13:53:35.08ID:bi4AUIUx
坊っちゃま… maeem2ぜtu… でしょう… 身体が痛い…&#160;
痛みなど…… jma>-55gi… 筈… なのに……&#160;
坊っちゃま…&#160;
わたくしは……&#160;
まだ…… まだ…… お役に……&#160;
わたくしはまだ……&#160;
坊っちゃまの…… お側に……&#160;
死に…… たく………&#160;





男はあちこち黒焦げて、内部の構造も露になったそれをゆっくりと抱き抱えた&#160;
その時、それの潰れた光学センサーの痕から何かの雫が溢れた&#160;
男は無意識に其を空いた手で拭う 男にはそれが涙に見えたのだ&#160;
ロボットが泣く筈は無い…&#160;
男は気を取り直すと、そのシリコンとセラミックで構成された骸を門の外、産廃置き場に投棄した&#160;
明日の9時には業務ロボットが、ありふれた産業廃棄物の1つとして回収する事だろう…&#160;





その一部始終を見ていた俺は男が去ると、放置されたMEI-DO 2012だった物を素早く自分のボロアパートにお持ち帰りする&#160;
そしてまだ温もりの残るそれに、3Dプリンターでこさえたスクール水着を着用させると、一晩中、そのボディの隅々に顔面を押し付け、喉が焼けるほどハスハスするのだった…&#160;
翌朝、業者に回収されたMEI-DO2012はリサイクルされ、後に『びん娘』と言う変わった名で新しい生を得る事になる&#160;
そして俺は今日も、駅前のラディカルエレクトリックパーソナルショップ、ハイパーコメリの合成餃子の試食で飢えを凌ぐのだった
0197創る名無しに見る名無し
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2016/05/29(日) 22:26:13.68ID:eKNwoRo9
金型成形機が今日最後のロット、奥村の変態どデカプッシュボタンを吐き出す&#160;
後はこいつを箱に詰め、検品ラインに運べば本日のノルマは終わる&#160;
(一服するか… )&#160;
後は退場時間までのリラックスタイム&#160;
俺は缶コーヒーを乾いた喉に注ぎながら、最近娶った新妻『びん娘』に思いを馳せる&#160;
休出上がりの疲れを妻の元で癒したいが、一時間で俺の週給が吹き飛ぶという余りの塩対応ぶりに、"萌え豚穀潰し"の異名をとった流石の俺も二の足を踏む&#160;

「お疲れッス、先輩」&#160;
「おう…」&#160;
茶髪にピアス 今どきのヤンチャな若者&#160;
俺を先輩と呼ぶのは、二ヶ月前に入社した新入りである&#160;
母校の後輩にあたり、指導員として教育を任された関係から、昵懇の仲になっていた&#160;
「どうです先輩? これから家に来ませんか? ほらっ かみさん紹介したいって言ってたじゃないッスか」&#160;
「あ…… あぁ…」&#160;
そう言えば前に飲んだ時そんな約束をしたな&#160;
正直、余り気乗りはしない&#160;
それは決して俺が非モテで、ブサ面で、年期の入った中年童貞で、若い新婚夫婦のイチャイチャを目の当たりにしたく無い、という荒んだ感情からでは無い&#160;
素直に迷惑を掛けたくは無いのだ&#160;
0198創る名無しに見る名無し
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2016/05/29(日) 22:26:51.46ID:eKNwoRo9
「よしっ! じゃあ、かみさんに連絡しとくッス! 今夜は三人で鍋でも突つきましょう!」&#160;
「あぁ… そうだな… 邪魔するか…」&#160;
屈託の無い爽やかな笑顔で俺を誘う後輩を邪険に出来なかった&#160;
俺には作れない、この爽やか笑顔で女も落としたのか…&#160;
どうせ俺の新妻は、俺の財布の中身にしか興味が無い&#160;
たまには暖かい家庭の温もりでも味わうか…&#160;
俺は立ち上がり水銀灯のスイッチを落とすと、後輩と共にロッカーに向かった&#160;



「これ、自分のかみさんッス 見せましたっけ?」&#160;
工場からの帰り道 後輩は俺にスマホの待ち受けを見せる&#160;
だが、生憎スマホの待ち受けにかみさんの姿は無く、代わりに見覚えのある二次元嬢は姿が…&#160;
「お前も麻雀物語、好きなのか?」&#160;
「えっ? あぁ はい! 勿論愛してますw」&#160;
てっきり俺とは無縁のリア充世界の住人かと思ったが、まさかコイツも同じパイリストだったとは…&#160;
麻雀物語という共通の趣味は、俺と後輩の仲を更に親密にした&#160;
互いに思い出と自慢話に花を咲かせると、後輩の家までの道のりは大分短く感じた
小洒落た四階建てのマンションの二階 その一室が若い夫婦の愛の巣だった&#160;
後輩は自ら玄関の鍵を開けると俺を先に通した&#160;
0199創る名無しに見る名無し
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2016/05/29(日) 22:28:26.59ID:eKNwoRo9
「お邪魔します…」
「今、お茶入れますんで寛いで下さい」
どうやら後輩のかみさんは留守の様だ&#160;
恐らく買い出しにでも出掛けてるのだろう
やはり気を使わせてしまったか…&#160;
オレンジ色のカーペットと石榴色のカーテンが明るい印象のリビング
寡婦暮らしの俺の殺風景なそれとは漂う空気からして違う
リビングの奥にベッドルームが見える シングルベッドが1つ
あの小さなベッドで、若い夫婦が夜な夜な底抜けの肉欲を貪り合っているのか…
俺の童貞イマジネーションが早鐘を打ち始めた 股間の仁王像が熱り立つ
無意識に部屋に充満している筈の雌のフェロモンを嗅いでしまう自分が悲しい&#160;
「おっ…?」
部屋を隅々まで舐め回す様に見定める俺の視界に、その部屋には似使わぬ、ある筐体の影が飛び込む

「お前、実機まで持ってるのか?」

散々ホールで対面してきた麻雀物語2
こうしてお洒落な部屋で改めて見ると、そのケバケバしくもゴテゴテしい姿に、得体の知れない薄ら寒い感情も沸いてくる
俺の愛と憎しみを吸い付くしたコイツと、こんな所で対面するとは…&#160;
「えぇ…? はい…?」
盆に湯気の立つカップを3つ乗せて、台所から後輩が現れた
「それじゃ、改めて紹介します ウチのかみさんのパイコです」
そう言うと後輩は筐体のベットボタンを押す
デモ画面が飛び、そこにあの特徴的な浮遊する魔乳神の姿が現れた
「………? あぁ? あぁ…?」
余り面白くは無い冗談&#160;
嘗てはあやかを嫁認定していた俺には正直笑えない
「パイコ、此方が前に話した、お世話になってる先輩だ」
だが後輩は俺の戸惑いを気にせず、液晶の中のパイコに俺を紹介(?)する
「コイツ、人見知りでw さぁ 直ぐに鍋の用意をしますよ!」


「………………」
0200創る名無しに見る名無し
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2016/05/29(日) 22:29:57.55ID:eKNwoRo9
俺の心の奥底にマグマの様な熱い蟠りが広がっていく
(ひょっとして… コイツ、俺を馬鹿にしているのか… )
女の噂を聞かない冴えない中年
パチスロだけが生き甲斐 それも二次元の萌えスロばかりを好む、見事な豚っぷり…
見るからにリア充のコイツは、そんな俺を内心蔑み、からかう為にこの席を用意したのか…?
きっと何処かにカメラが仕込まれて、仲間内で笑い者にする魂胆に違いない…!
土鍋にに野菜と魚介を溢れさせながら後輩が戻ってくる
「おい…! お前、俺を馬鹿にしているのか…! 」
俺は怒りを隠さなかった 顔は紅潮していたに違いない
「………!?」
俺の怒気に一瞬キョトンとした後輩は直ぐに土鍋をテーブルに置くと、傍らの麻雀物語に怒号を浴びせる
「おい、パイコ! またお前は…! 先輩に失礼だろ! また俺に恥を掻かせるのか!?」
その怒気は俺のそれを上回っていた
「……………」
俺のリアクションが予想と異なった事がイラついたのか、職場では見せない荒々しい姿
普段から可愛がってきた後輩の、隠されていた
様々な素顔を見せ突けられ、俺の不快感は頂点に達していた
「………もういい、帰る!」
俺は立ち上がると、駆ける様にマンションを飛び出し帰宅の途に着いた
途中、俺のスマホに後輩から電話やメールが頻りに飛び込んで来た
どれも謝罪や弁明を繰り返す内容
カメラの向こうの仲間の手前、主役に引き返して欲しいのだろう
俺はいよいよ不愉快になり、明日以降の奴に対する扱いに思案を巡らせた
プライベートはともかく、職場ではまだまだ半人前 俺をコケにした事を後悔させてやる…!
0201創る名無しに見る名無し
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2016/05/29(日) 22:30:39.53ID:eKNwoRo9
結果的に次の日、奴は出社して来なかった&#160;
それどころか連絡さえ着かないようだった&#160;
明くる日、上司が奴のマンションを訪ねたが、奴の姿は無く、ただテーブルの上に手付かずの鍋が置いてあったそうだ&#160;
あの後、何があったのか…&#160;
気掛かりではあったが、俺は奴の記憶を努めて消した&#160;
もう何の感情も抱かない事にした&#160;
そして次第に職場で奴が話に上がる事も無くなっていった&#160;



『……が、男性の死体らしき物を発見 警察は遺体が先月から行方不明になっている…… 』&#160;

奴が一部白骨化した姿で発見されたのは、それから暫くたってからだった
職場にマスコミが取材に来た&#160;
テレビで見覚えのあるレポーターに何度かインタビューされた&#160;
警察にも事情聴取された&#160;
特に最後に出会ったのが俺という事で、疑惑の目を向けられたりもした&#160;
それも1ヶ月程度の騒ぎだった&#160;
事件は迷宮入りの兆候を見せ、再び人々の記憶から消えていったのだった&#160;



「あぁ… 分かった 他には? うん、大丈夫だよ ははっ」&#160;
あれから俺のライフスタイルも大幅に変わった&#160;
あれ程好きだったパチスロも、今では大分ご無沙汰だ&#160;
一刻も早く家に帰りたいのに生憎お使いを頼まる&#160;
切らしたという卵を手に下げ、玄関のチャイムを鳴らす&#160;

「よくぞ帰って来たであ〜〜る」&#160;

「ただいま! パイコ!」&#160;

この笑顔を見ただけで一日の疲れは吹き飛ぶ&#160;
むちむちボディが織り成す、昇天物の裸エプロン&#160;
しかし最早エプロンは只の前貼り&#160;
俺を喜ばせる為だけに、この冬も間近にボロアパートで、ほぼ全裸待機していたのだ&#160;
可愛い奴め! 可愛い過ぎて生きるのが辛い!&#160;
「ご飯にするあ〜〜る? お風呂にするあ〜〜る? ……それとも!?」&#160;
全てを言い終わるより早く、俺はパイコを担ぎ上げ、居間のクッションマットに押し倒す&#160;
「パ、パイコ〜!」&#160;
エプロンの肩紐を下ろし、露になった2つの巨大な肉饅頭の間に顔をめり込ませる&#160;
顔全体を包む生暖かい脂肪の感触&#160;
何とも言えない甘い香りが鼻腔を突く&#160;
柔肉の塊の間から微かに覗く俺の頭を、パイコは優しい手つきで撫でた&#160;

「寂しかったかい、パイコ? そうだ… 今度、上司に君の事を紹介しよう… きっと驚くぞ〜 俺にこんなに美しいかみさんが居ると知ったら〜 ふふふっ…」&#160;

パイコの背中に回した両腕で、その細い体駆を潰れる程に抱き締める&#160;
魔乳が心地よい圧力を俺の顔面に伝播させる&#160;
今宵も2人は年甲斐も無く、何度も果てる事だろう&#160;

「……なぁ、パイコ…… あんな若造より… 俺の方が断然良いだろう……?」

色とりどりの鮮やかなLEDが、俺の部屋の無粋な壁紙を、桃源郷の様に染め上げた
0202創る名無しに見る名無し
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2016/05/31(火) 01:14:48.55ID:XaLp65IH
ヨシテル「気がついたか、ヒデヨシ!」

ヒデヨシ「…!? ヨシテル様… ここは…!?」

ヨシテル「産業道路沿いによくある、下品で寂れたモーテルとか勝手に言い張ってる、所謂エッチ用ホテルだ」

ヒデヨシ「エッチ… ホテ…? ど、どうしててそんな所に!?」

ヨシテル「くっ… それをわらわの口から言わせるのか」

ベッドから起き上がろうとするヒデヨシ

ヒデヨシ「…イタッ!?」

ヨシテル「動いてはいかん! まだ腹の傷が塞がっていない!」

ヒデヨシ「うぅ… あれは夢じゃなかったんだ……」

ヨシテル「すまぬ… まさかホントにポン刀で腹が裂けるとは……」

ヒデヨシ「………助けてくれたの……」

ヨシテル「助けるも何も…」

ヒデヨシ「くっ!?」

ヨシテル「痛むのか!? どれ… いかん、傷が広がっている」

ヒデヨシの臍下を真横に走る切創から血が滲む

ヒデヨシ「うぅ……ん」

ヨシテル「今、手当てしてやる!」

そう言うとヨシテルはヒデヨシの腹に顔を押し当て、傷の上に長い舌を伸ばす

ヨシテル「ぺーろぺろ…」

ヒデヨシ「はうっ!?」

ヨシテル「我慢しろ! 消毒せねば死ぬぞ! …ぺーろぺろ」

ヒデヨシ「くすぐった… い…よ! ヨシテル様…!」

ヨシテル「くすぐったいのは治り掛けの証だ! ぺーろぺろ…」

ヒデヨシ「しみる…! しみるよ!」

ヨシテル「!? いかん、こんな下にも切創が! …ぺーろぺろ」

ヒデヨシ「きゃぁぁぁっ!? そこはっ!!」

ヨシテル「動くな!殺すぞ!! …ぺーろぺろ」

ヒデヨシ「や、やめてぇぇぇっ!! いやぁぁぁっ!!」
0203創る名無しに見る名無し
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2016/06/06(月) 06:00:09.90ID:vU/SkG0H
波瀾万丈ドキュメント 〜私達は萌えスロキャラだった〜

TBS系列28局ネット ナレーション東山紀之


初夏を思わせる陽気の平塚野球場&#160;
そこに続々と姿を見せる可憐な美女達…
今からここで行われるのはアイドルのコンサートではない&#160;
パチスロメーカー合同トライアウト…&#160;
戦力外通告を受けた萌えスロキャラ達が、再就職を目指す面接会場だ&#160;

「カワイイ僕がここに居るのは何かの間違いなんだにゃ…」&#160;

番組が密着したのは業界屈指の人気メーカー、平和オリンピアをこの春解雇されたアーニャたそ、19歳&#160;
同社の人気シリーズ、『麻雀物語』の最新作に於いて初のレギュラーを獲得した彼女だったが、平和オリンピアは同作の不振を理由に彼女を解雇した&#160;

(カワイイ僕はまだまだやれるんだにゃ… 僕を解雇した事を後悔させてやるにゃ…)&#160;

不完全燃焼の思いがアーニャたその足を、このトライアウトへと向けさせたのだ&#160;



トライアウトは投手と野手に分かれた実戦形式で行われる&#160;
投手は1イニング、野手は2打席とその間の守備…&#160;
与えられるチャンスは少ない&#160;
投手登録のアーニャたそは4回にマウンドに上がる&#160;
最初のバッターは元NETのユウ&#160;
現役時代から全く衰えを見せぬストレートで簡単にツーストライクを取ると、最後は得意のチェンジアップを外角に沈めて空振り三振を奪う&#160;
立ち上がりの感触はまずまずの様だ&#160;
だが、次に迎えるバッターは元SNKで三作品もの主演を勤めるなど、4番で活躍した実績を持つ神野みこし…&#160;
強打者の登場に力んだのか、アーニャたそはノーストライクツーボールとカウントを悪くする&#160;
どうしても欲しいストライク…&#160;
そんな思いで甘く入った3球目を神野は見逃さない&#160;
快音を響かせ打球は三塁線を抜けて行く
神野は一気に二塁へ…&#160;
いきなりのピンチ、マウンド上のアーニャたそは大きく肩で息をする&#160;
続くバッターは元KPEのラビィ 初球が狙われた&#160;
ピッチャー返しの打球は二遊間を抜けて行く&#160;
神野が三塁を蹴る&#160;
更にここでセンターの元同僚ナツがボールを後逸&#160;
バッターのラビィまでもがホームに帰る
更にナツが追い付いたボールを雨水用排水管に誤挿入&#160;
今度は討ち取った筈のユウまでもがホームベースを駆け抜ける&#160;
信じられない不運も重なり、いきなりの3失点…&#160;
更にこのナツの後逸が順押し特リプの薄い所を引き、まさかの超倍チャンス突入&#160;
変換保留の連打に5倍、7倍、8倍、10倍、更には忍保留に撫子保留まで加わって、まさかまさかの158倍! 3×158で474失点!&#160;
自身のスロキャラ人生でも記憶に無いという3桁大量失点にマウンド上で呆然と天を仰ぐアーニャたそ…&#160;
ここで交代を告げられ、彼女のトライアウトは事実上終了した&#160;
試合終了後、スポーツタオルに顔を埋め球場を後にするアーニャたそに我々は声を掛ける事が出来なかった&#160;
0204創る名無しに見る名無し
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2016/06/06(月) 06:01:12.66ID:vU/SkG0H
トライアウト… ここで萌えスロキャラ生活に復帰できる者は極僅か…
かつて自身も萌えスロキャラとして一時代を築き、現在はセガサミーHDのスカウト部長を勤める神無月葵は現在の萌えスロキャラ事情をこう語る
「今現在、パチンコ・パチスロを取り巻く環境は悪化の一途を辿っています
そんな中で手っ取り早く集金の見込める萌えキャラの需要は加熱気味と言っても良いでしょう
それだけに競争とサイクルも激しく、市場需要のど真ん中を突かなければ、この世界で生き残るのは至難と言えるでしょう」

翌日、我々取材陣の前に姿を現したらアーニャたそは、もう初めて出会った時のふてぶてしい面構えの彼女だった

「今回はほんの肩慣らしなんだにゃ… 秋にはきっと本気の僕をお見せできるにゃ…」

これから一夏、みっちり身体を絞って秋のトライアウトに望むという彼女
その時には一回り成長した彼女と、更なる強力なライバル達に出会う事が出来るだろう
我々はアーニャたそと再会を誓って平塚野球場を後にした



東山「華やかなりしパチスロ業界 しかしその影では波瀾万丈の人間ドラマが繰り広げられているのです 彼女達の頑張りが、私達に大きな夢と勇気を与えてくれている事を忘れないでおきましょう」



来週のこの時間は…
「あの天然美少女が常夏ハワイで珍道中! 『ナツのちょっぴり南国育ち!』をお送りします!』
0205創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/06/11(土) 15:59:41.11ID:uOlPhsmx
愛染阿吽


「いくよ、エリー」&#160;
「うん!」&#160;

水分を吸った木綿が川面から突き出た丸石を強かに叩く&#160;
心地好い衝撃音が昼下がりの渓谷に甲高く木霊する&#160;
合いの手を打ったもう一方が素早くそれに丸木棒を叩きつける&#160;
藍色の汁が滲み出し、丸石の面を伝って清澄な流れに一筋を加えた&#160;

エリーが絞ってマリーが叩く…&#160;

老舗染め物屋を切り盛りする若い双子の姉妹&#160;
里では知らぬ者の居ない評判の働き者にして器量好しだ&#160;
両親を早くに亡くした彼女達は、今日も二人手を携え、店の前を流れる小川で染め物仕事に精を出す&#160;





「いくよ、エリー」&#160;
「うん!」&#160;

エリーが塞いでマリーがくすねる…&#160;
今、マツキヨで油取り紙とデジタル体温計を万引きしようとする彼女達に、かつての清純な面影は無かった&#160;
息の合った連結プレー&#160;
エリーが定員の目を遮り、マリーが目当ての商品を下着の中に詰め込む&#160;
これをAmazonで転売して、今日の日銭を稼ぐのだ&#160;

「お客さん、ちょっとこっちに…」&#160;

なに食わぬ顔でレジを抜けようとする小娘どもを俺は見逃さない&#160;

「何でこんな事をしたの? 初めてじゃ無いよね?」&#160;

アルミテーブルとパイプ椅子 それに段ボール箱が所狭しと積み上げられた狭い事務所内&#160;
俺の詰問にも双子はふてぶてしい態度を見せ、反省の色など微塵も無い&#160;

「舐めてんじゃねーぞ!!」&#160;

『バチンッ!!』&#160;

俺はバイトを遅刻して反省文を百枚書かせていた隣のアーニャたその頬を思い切り張る&#160;

「ひぃっ!?」&#160;

竦み上がり抱き合う双子&#160;
効果覿面、この手の相手に下出は禁物だ&#160;
0206創る名無しに見る名無し
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2016/06/11(土) 16:00:13.42ID:uOlPhsmx
「うぅ… そんなに私達が悪いの…? 私達だって好きでこんな……」&#160;

啜り泣きを交えながら双子は身の上話を始めた&#160;
ある日やって来た環境団体とその顧問弁護士が双子の人生を狂わせた&#160;
川を汚染する藍染を直ちに停止しろ 下流の漁民の被害を賠償しろ&#160;
金が無いなら身体で払え 取り敢えず家財は没収する&#160;
着の身着のまま逃げ出した双子&#160;
飢えを凌ぐ為、かつて反物を染めたその手を、やむにやまれず犯罪に染めたのだ&#160;

「…………………」&#160;

俺はもう何も言えなかった&#160;
一体誰がこの哀れな小娘達を責められると言うのか…&#160;
そもそもパチスロに負けたむしゃくしゃで川にシアンを撒いたのは俺だし…&#160;

「取り敢えず、取った物は出しなさい… 君達には若い 技術もある 人生は幾らでもやり直せる筈さ… 今日は許してあげるからお帰り…」&#160;

「うぅうぅぅぅ…… ごめんなさい… ありがとう…」&#160;

俺の優しい言葉に双子は声を詰まらせた
もう大丈夫だろう きっと二人は更正する筈&#160;
俺は双子の後ろ姿を見送ると、マリーが下着の中に隠した商品を余す所無く舐め回すのだった
0207創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/06/16(木) 11:16:07.33ID:KL+1F4Lc
>>1&#160;
『毎日在日のふりしてスレ立てしてるけど、最近みんなの食いつきが今一つ…』
『何だか在日になりきるのも疲れてきたな… そろそろ仕事探そうかな…』
そんな徒労感、感じていませんか?

もしかしてそれ、"マンネリズム症候群"かもしれません!

マンネリズム症候群は、中年ネトウヨの実に70%が罹患する、歴とした心の病です
次の症候群特徴リストに当てはまるポイントは無いか、自分自身で問診してみましょう!


※片言日本語がおざなりになっている

在日としてスレ立てする為の基本中の基本、たどたどしい片言日本語
最初の頃は意識して誤った接続語を連発するなど凝っていたのに、いつの間にか面倒くさくなって、適当に語尾を誤字にして置けばよい等と、完全におざなりになって居ませんか?
2ちゃんネラーはノリを重視する生き物です
初めから盛り上がら無い、スレ主のやる気の無い空気の漂うスレには立ち寄りません
もう一度初心に帰って、初めてスレを立てる在日の気持ちになってスレ立てして見ましょう

※ あからさま過ぎるジャップ連呼

在日なりきりスレの醍醐味は、スレの途中で貴方(スレ主)が在日(設定上)である事を、己の墓穴という体で明らかにする所にあります
典型的なのがジャップ発言
しかしマンネリズム症候群に陥り感性が鈍ると、レスを求めるあまり初っぱなからジャップ、ジャップと連呼しがちになります
これでは所謂"溜め"が出来ず、スレ全体が盛り上がりに欠けてしまいます
"ジャップは最後のアイラブユー"を合言葉に、スレに溜めを作る癖をつけましょう

※ブサヨ在ってのネトウヨスレ

スレの伸びには欠かせない煽り役
在日なりきりスレなら、さしずめブサヨ(ネトウヨ用語録より)がその任を引き受けます
煽りはスレ的には憎ましい存在ですが、彼らが居なければスレは独り善がりになり、結局伸びず仕舞いに終わります
憎いブサヨも貴方(スレ主)にとってはお客様
いきなり「チョン乙」などとレスしては、スレの展開も捗りません
世論を煽るべき貴方(スレ主)の方が先に顔面キムチレッドになっては笑い話になってしまいます
耐性を付ける努力をしましょう

※途中で直ぐに飽きる

せっかくスレを立てたのに、十分もするとレスを着けるのが面倒くさくなる…
他の人が立てたスレが気になりだす…
これでは数字が赤くなるまでレスしてくれる人が居なくて当然です
こんな事を繰り返していては、2ちゃんねるに於ける在日なりきりスレ全体の信用を損ねる事になりかねません
最後のレスが付いてから、最低30分はスレの保守に気を配りましょう


以上が代表的なマンネリズム症候群の特徴及び問題点です
貴方は幾つ当てはまりましたか?
これを参考に、明日からも充実したより良い在日なりきりスレを立てて行きましょう!
0208創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/06/16(木) 11:17:10.39ID:KL+1F4Lc
>>1
『毎日在日のふりしてスレ立てしてるけど、最近みんなの食いつきが今一つ…』
『何だか在日になりきるのも疲れてきたな… そろそろ仕事探そうかな…』
そんな徒労感、感じていませんか?

もしかしてそれ、"マンネリズム症候群"かもしれません!

マンネリズム症候群は、中年ネトウヨの実に70%が罹患する、歴とした心の病です
次の症候群特徴リストに当てはまるポイントは無いか、自分自身で問診してみましょう!


※片言日本語がおざなりになっている

在日としてスレ立てする為の基本中の基本、たどたどしい片言日本語
最初の頃は意識して誤った接続語を連発するなど凝っていたのに、いつの間にか面倒くさくなって、適当に語尾を誤字にして置けばよい等と、完全におざなりになって居ませんか?
2ちゃんネラーはノリを重視する生き物です
初めから盛り上がら無い、スレ主のやる気の無い空気の漂うスレには立ち寄りません
もう一度初心に帰って、初めてスレを立てる在日の気持ちになってスレ立てして見ましょう

※ あからさま過ぎるジャップ連呼

在日なりきりスレの醍醐味は、スレの途中で貴方(スレ主)が在日(設定上)である事を、己の墓穴という体で明らかにする所にあります
典型的なのがジャップ発言
しかしマンネリズム症候群に陥り感性が鈍ると、レスを求めるあまり初っぱなからジャップ、ジャップと連呼しがちになります
これでは所謂"溜め"が出来ず、スレ全体が盛り上がりに欠けてしまいます
"ジャップは最後のアイラブユー"を合言葉に、スレに溜めを作る癖をつけましょう

※ブサヨ在ってのネトウヨスレ

スレの伸びには欠かせない煽り役
在日なりきりスレなら、さしずめブサヨ(ネトウヨ用語録より)がその任を引き受けます
煽りはスレ的には憎ましい存在ですが、彼らが居なければスレは独り善がりになり、結局伸びず仕舞いに終わります
憎いブサヨも貴方(スレ主)にとってはお客様
いきなり「チョン乙」などとレスしては、スレの展開も捗りません
世論を煽るべき貴方(スレ主)の方が先に顔面キムチレッドになっては笑い話になってしまいます
耐性を付ける努力をしましょう

※途中で直ぐに飽きる

せっかくスレを立てたのに、十分もするとレスを着けるのが面倒くさくなる…
他の人が立てたスレが気になりだす…
これでは数字が赤くなるまでレスしてくれる人が居なくて当然です
こんな事を繰り返していては、2ちゃんねるに於ける在日なりきりスレ全体の信用を損ねる事になりかねません
最後のレスが付いてから、最低30分はスレの保守に気を配りましょう


以上が代表的なマンネリズム症候群の特徴及び問題点です
貴方は幾つ当てはまりましたか?
これを参考に、明日からも充実したより良い在日なりきりスレを立てて行きましょう!
0209創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/06/21(火) 10:58:33.22ID:/t1DhYEe
「あやかちゃん、今日も一人なんだw」

夕日に長い影を棚引かせ、一人庭先で団子虫と戯れるあやかは、不意に投げ掛けられた俺の言葉に振り返る

「!?…… 1人じゃないのだ! もうすぐお姉達が帰って来るのだ!」

屈託の無い笑顔&#160;
大好きなお姉達がもうすぐ帰ってくる…&#160;
自分の発する言葉の内容で、自分自身が恍惚に浸る
まさに池沼の成せる技&#160;
俺は間髪入れずに、そのあやかの細やかなヘブン状態に水を差す

「そのお姉ちゃん達は今日、二人でショッピング&ランチに行った訳だけど、あやかちゃんは連れて行って貰えなかったんだw」

「……どうしてそんなイジワル言うのだ? あやかはお子様なのだ お子様は良い子にお留守番なのだ!」

イジワルを言われた認識はあるらしい
だが、イジワルをされてる認識は無い様だ

「ふ〜〜ん で、そのお子様あやかちゃんのクリスマスのご予定は?」

俺は話題を振る

「お姉達とパーティーしたり、ゲームしたり、プレゼント交換するのだ!」

再びハイビスカスの様な眩しい笑顔を見せるあやか
ぶち壊したい、この笑顔…!
0210創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/06/21(火) 10:59:30.22ID:/t1DhYEe
「そんな事、去年も言ってたよねw で、お姉ちゃん達は結局彼氏とオールナイトw あやかちゃんは一人寂しくカップラーメンディナーw」

「こっ…… 今年は… 今年はちゃんと約束したのだ! あやか、ちゃ〜んと良い子にしてたのだ! 今年は大いに盛り上がるのだ!」

去年のクリスマス、ブレーカーを落とされた極寒の部屋の中、涙と鼻水を流しながらワカメラーメンを啜るあやかの姿&#160;
窓から覗き見たそれを思い出すだけで、俺の体内を熱い奔流が駆け廻る

「お姉ちゃん達、クリスマスから新年まで海外だってさw」

もう我慢できん
そろそろ本気で行く

「嘘なのだ! おじさんは嘘ツキなのだ! だいっキライなのだ!!」

続けざまの雑言に聞こえた事だろう
流石のあやかも、目に憤りの炎を立ち昇らせる

「お姉ちゃん達さ、あやかちゃんを連れて歩くの恥ずかしいんだってw 一緒に居ると疲れるんだってw」

「……嘘なのだ…! 嘘っぱちなのだ! おじさんは馬鹿なのだ……!」

「あやかちゃんってさ、急に歌ったり踊ったりするらしいじゃんw? 会話もろくに噛み合わないらしいじゃんw? お姉ちゃん達、愚痴ってたよw」

「!!」

あやかの表情が固まる
確かに歌ったり踊ったりが大好きな自分
でもなぜこのおじさんはそれを知っているの?
目の前のおじさんの言葉が、急に真実味を帯びてあやかの心に響き始めた
0211創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/06/21(火) 11:01:54.92ID:/t1DhYEe
「あやかちゃん、特殊学級なんだよね?」

「ち、違うのだ…! 仲良し学級なのだ…!」

「それを特殊学級って言うんだよ、バ〜カw」

「……ちが…… 違うのだ…… 馬鹿って言う方が…… 馬鹿… なのだ……」

あやかの言葉尻が震え始めた
それが俺の加虐心の堤防を遂に決壊させた

「最初に馬鹿って言ったのお前だろ、糞馬鹿! お姉ちゃん達さ、お前の事、キライなんだって! 死んで欲しいんだって! お前のせいで幸せになれないんだって!」

「…………!」

あやかは目を見開き、呼吸を止めた
もう俺の言葉を、イジワルなおじさんの雑言とあしらう事が出来なくなった様だ
尤も、俺は真実しか言っていない訳だが…

「最初は酷い事言うな〜、って思ったけど、今のやり取りで分かったw やっぱお前、生きてる価値ねーわw」

「……………ううぅ……… グスン…… あやか…… ズクッ…… 良い子にゃのじゃ…… ううぅ」

ついに口をへの字に曲げて啜り泣きを始めたあやか
だが容赦はしない

「悪い子だよ、大飯食らいの役立たず! ウンコ&経血製造機!」

「……あやか…… もうご飯…… うぅ… 少ししか… 食べにゃい…… にょだ… グスッ」

そんな事、俺に言ってどうなるのかw?
やはり池沼の思考は常人には図りかねるw

「まだ食う気かよw? 吊って来いよw お姉ちゃん達に迷惑かけんなw な、首吊って来い」

「………ううぅ うわぁぁぁぁぁぁぁぁん !! うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっん!!」

遂にあやかも決壊した
0212創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/06/21(火) 11:12:09.59ID:IDKY4mD3
信じていた大好きな姉達の裏の顔、心の内
見たくない、聞きたくないそれを見せつけられ、聞かされて、あやかの精神は崩壊した
だけどあやかちゃん…
俺は何一つ、嘘なんか言っていないよ…
悪いのは全部あやかちゃん…
そんなに可愛く知恵故障に生まれたら、幸せになんか成れっこないよねw?
0213創る名無しに見る名無し
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2016/06/21(火) 11:13:06.63ID:IDKY4mD3
「ほらっ さっさと着替えて吊れよ! お姉ちゃん達、帰ってブハッッッ!!?」

強烈な衝撃が俺の脳天を襲った
次の瞬間、俺は少し高い所から下界を見下ろしていた
背後から俺に踵落としを決めたさやかと、泥人形の様にゆっくりと崩れ落ちる俺
そしてあやかに駆け寄るまどか



「あやか、怖い思いをしたわね…」

「もう大丈夫よ、あやか!」

「うぅ… お姉……? うぅぅ…… ぐすっ… あやか、生まれて来て… ごめんなのだ…… ひくっ」

「なっ… 何を言ってるの、あやか! 冗談でも怒りますわよ!」

「そうよ! あやかが謝る事なんて何も無いじゃない!」

「………お姉……? なんだ… やっぱり嘘っぱちだったのだ……! ぐすんっ… あやか、お姉達が大好きなのだ!」

寄り添う姉達に目一杯抱き付くあやか
ぐじょぐじょに濡れた笑顔が遠く街灯の明かりに照らされ、宵闇の中に咲く白百合の様に浮かび上がった

「何があったのか存じませんけれど、わたくし達が貴女を不必要に悲しませてしまった様ですわね…」

「そうね、あやか… これから沢山… 罪滅ぼし、するわね……」

「罪滅ぼしなんて要らないのだ! あやかはお姉達がずっと側に居てくれれば、それで良いのだ!」

あやかはその温もりを味わうが如く、己の小さな身体をぐいぐいと姉達に押し付ける
二人の姉は、そんな妹の身体を優しく包み込んだ

「いいえ… 罪滅ぼしは必要ですわよ……」

「そうよ…… 簡単に終わらせなんかしないわ……」
0216創る名無しに見る名無し
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2016/06/23(木) 22:06:09.07ID:q/JoYyMx
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃     Q. 巴マミ(ともえ まみ)とは――  ┃
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   ┃     Q. 巴マミ(ともえ まみ)とは――           ┃
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        __〃^ミ、__,,,,….,,,,_
    /⌒{{=ミィ幺圭圭圭圭ミ≧z..、
   ⌒>《_≧{≫”'” ̄  ~`”’寺圭ミ└  ←オシャレなベレー帽
   / ((>””         / ``寸圭心、
  /ィ .//  /      ノ    `寸ミ沁  ←頼れる理想の先輩
   ∨ /  ,:’   / / ヽ  `:,   ゙寸l私
   / /  斗‐‐// /  ⌒ト、i !   Y仞  ←明晰な頭脳
   / /  ,’  ∠  {/  二,,, i i }   }  }少゙
   { {  { { ,ィi然     テ斧≧jノ} j!  j!  }  ←眩しすぎる金髪
    弋 人i {!i.)ll}       わ戔心 ;  /  ノ
    \ rハ弋ソ     弋;;;;;;タノ /^)ノ  ←癒しのタレ目
    f⌒「{{_{゙i⊃      ⊂ニ/彡,斗‐'”⌒}
    辷弋::::::ト.、_ `ー ”   _,.ィ/  -―__〉  ←聞く者を魅了するお姉さんボイス
   }⌒ヽrミニ彡}<∀/>ニ、/ ,.ィ<孑””~}
   ニ二>j /仁ニ(7ー-┐ \ミァ”_,.ャ≦ }  ←マミマミしたい美乳
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 { 〃 ̄ } ゝ_,,.::jj \>`ヒ o],,.._`ー‐””⌒ヽ  }  ←円環の理に導く縦ロール
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   (ヾ/`ミメ.:.:.:./孑三ミ}.:.:.\〃ilaミ}  ←白魚のような繊細な手
   `^{::::::`ミ三ヾノl  レ辷ニ彡(/⌒”
     `”`ー 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:0be15ced7fbdb9fdb4d0ce1929c1b82f)
0217創る名無しに見る名無し
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2016/06/23(木) 22:08:47.43ID:q/JoYyMx
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0218創る名無しに見る名無し
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2016/06/23(木) 22:11:52.64ID:q/JoYyMx
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        /´            爻:::::::::爻    〈/  V彡' / i|.斗 iキ‐V爻く/、>/
       /           / ,爻:::::::::爻メx,  }__ . イフ  小 | l \V:爻x. /
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  /   n              /  爻::::::::::爻:::::::::::::7¨ ̄/  /{____V  ヽ:::::::::爻x
./  く`o勹  n      /  爻::::::::::爻xメ爻ム '´  / 丁 丁 丁 |     \:::::::::爻x
ヽ   く人> <`oク 米  ,   ,爻:::::::::爻  /     / | {  l  |  ヽ \\::::::::爻x 
 丶.     く/、>   /   爻:::::::::爻 /  / / イ   |   .   . l i ヽ く⌒}〉:::::::::爻
   \        /    爻::::::::::爻 んぅ rく  / /:|.   { . .ヽ   ヽ}_厂`}_ノ爻::::::::::::爻
     \     /     爻:::::::::::爻  {ノ /)' /: :.!    .   :ヽ : . .、 : : :小 ´爻爻メ^
      ` ー '         爻::::::::::爻   /  / {__ノ: : :.|    、   }i  : :ヽ: : :.l: \
                 爻:::::::::爻  /  /′ |!   |     }   l|    ヽ: :l: : : :>、
                爻::::::::爻  /  /′  jj イ⌒ヽー‐ 、廴_ ||      }i|/、 )
                 爻爻^  ノ 斗ァ 爪ィ〈⌒'⌒`ー'⌒)_r‐〉`丁7ー┬く丁 〉’´
                     `て__/廴ノ⌒'´ヽ.        `Y⌒廴人_ イ´
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                                .          廴___ ノ|
                                 '.  , -‐┬┬..Vi::i::i:::i::i|
0219創る名無しに見る名無し
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2016/06/24(金) 00:25:27.48ID:r1YZJgN9
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        ./" ..::::::::\_:/    /    ノ .,' ',    ヽ     |  雅   法  |
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      ´ ノ ノ|::::::::じ|   ./ '| ./ //   .|/}    i       |  参   女  |
         ̄ |ハ∧ソマ  i  |/         i /  ./     |  上  マ ..|
          r´  ̄寸、 ヾ、‐-‐´   `‐-‐ |/ ./.x'⌒ヽ ∠  ♪   ミ   |
          { _.  \_ゝ`//   '    //ムイ//   }.  \____/
         ._ 乂_ ヽ   マ>    ー'   .< ./ /   /ノ, - 、
       /,  ̄\二ヘ   }  K|` ‐-‐ ´|>   f.   / ̄/   ヽ
     _ "' - 、  \∧r‐y^テ< マ ̄V ̄ ノ>^T" ヽ/_-/   /ソ
   r´__"_'ー-ム.   } / {// ┌─【】─┐ .|//  ',  f   //y⌒ヽ、
   ∨ /  ̄"'寸_ノノ   V . └/i||i\┘ .V/  ',  ゝ、.// ヽ.  }
    \i       r'゙   ノ  .//i||i\\  V   `丶   ̄  ./ /
               弋  Y.    ̄  i||i   ̄   Y    }     //
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              ト 八       .i||i    ..:::::八ー┤
     r= 、_   ┌L_iゝ:::_:::::::_:⊂⊃:::_::::::_:ノ |__」    /`ヽ、 _
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レ|_ハi∧     ヽ< __/::::} i::::[二二]::i {:::::::\       / ./ ./:::::::::/i::::}
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       .\\./ヽ        \=i||i=/    \       / ./:::::::/
         .\|\ \        \__/               / ./::::/ ←決めポーズをとりつつ
             ̄ \ \    //    \     /  ̄ ̄._//|    スカートから武器を出す
        ./\  ..i\ \ ./.         \. /./ ̄/ ̄|└┘.|     魔法少女の洗練された
       ////\. |. \_∨         ∨/  ./  .|.!i  |     全く隙のない身のこなしだ!
        /////^./\| ..|/、______,r\|  /    |.!i  |
      //ヽ/ ///ハ. \________./  /     .|.!i  |ζ
       //\   \// V         ||          /    .|.!i  |ξ 
     .///./ /\// ..ヘ'" ̄ ̄ ̄"' ||.'" ̄ ̄ ̄"./      |.!i  |ヾ 
0220創る名無しに見る名無し
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2016/06/24(金) 01:30:23.60ID:r1YZJgN9
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          ||l|      }`爻::::::爻ム文>、   ヽ  \ |  } ヽ'ノ     l
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          |||}        i爻:::::::爻 }   / '  ,ム┴‐ ァ'´ ニム     ∧
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         / /′        爻:::::::::爻 /`く´ く   二三}ノミ 、 {    n  }
         /ノ          爻:::::::::爻ノ   〉´入   /イ} ト、{ヽノ爻 <`oク ,
        /´            爻:::::::::爻    〈/  V彡' / i|.斗 iキ‐V爻く/、>/
       /           / ,爻:::::::::爻メx,  }__ . イフ  小 | l \V:爻x. /
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                 爻:::::::::爻  /  /′ |!   |     }   l|    ヽ: :l: : : :>、
                爻::::::::爻  /  /′  jj イ⌒ヽー‐ 、廴_ ||      }i|/、 )
                 爻爻^  ノ 斗ァ 爪ィ〈⌒'⌒`ー'⌒)_r‐〉`丁7ー┬く丁 〉’´
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0221創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/06/24(金) 04:00:08.08ID:MxTKhYtJ
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                     .| .く/、>::  |  八 j´    行j下 |ノ/
                     〉   八::. |,ィf下`       V少 ノ/
               ノ:´: ̄:`ヽ{(\   衣 ノ;少      ,,,,, ト、
.               }== \\_\ \\`",,,,,,   ` _   /j!ヽ
               〈二二フ .::::::ヽ/\ \    r   ノ /// }
         r_、_ ,       .__>::::::ノ´{\}`⌒>-`__/ニ"/ ,/─ 、
           {r‐‐、_}、   } ̄\\::ノ   }≧ {- 、{oo、 ど`ヽ)>、ヽ } ⌒ヽ !
          j,二 、ヽ\ ュ. : : \}    「 ̄ ̄ ミ 、\ーくヽ._`Y/´ `^’`ヽ/
          { ァrr‐'’  ヽ   \::/   ノ―― 、  \ヽ}i ヽ.∨   丶 ハ
          \|i|  ヽ  ヽ メxメxィ /      \  \} ヽ廴i /      i
          ||l|      }`爻::::::爻ム文>、   ヽ  \ |  } ヽ'ノ     l
          ||l|       爻::::::爻 ̄`ヽX\iノ     `}  |   V    ヽ{
          ||l|        爻::::::爻ヽ   ヽ-} /    ノ  | _}     ヽ
          |||}        i爻:::::::爻 }   / '  ,ム┴‐ ァ'´ ニム     ∧
           ' j,ノ        |爻:::::::::爻!  /´ /,. -―┴rく__   〉      ∧
         / /′        爻:::::::::爻 /`く´ く   二三}ノミ 、 {    n  }
         /ノ          爻:::::::::爻ノ   〉´入   /イ} ト、{ヽノ爻 <`oク ,
        /´            爻:::::::::爻    〈/  V彡' / i|.斗 iキ‐V爻く/、>/
       /           / ,爻:::::::::爻メx,  }__ . イフ  小 | l \V:爻x. /
.    /            /´爻:::::::::::爻::::爻爻/  斗'  /.| | ∧  'V:::::::爻
  /   n              /  爻::::::::::爻:::::::::::::7¨ ̄/  /{____V  ヽ:::::::::爻x
./  く`o勹  n      /  爻::::::::::爻xメ爻ム '´  / 丁 丁 丁 |     \:::::::::爻x
ヽ   く人> <`oク 米  ,   ,爻:::::::::爻  /     / | {  l  |  ヽ \\::::::::爻x 
 丶.     く/、>   /   爻:::::::::爻 /  / / イ   |   .   . l i ヽ く⌒}〉:::::::::爻
   \        /    爻::::::::::爻 んぅ rく  / /:|.   { . .ヽ   ヽ}_厂`}_ノ爻::::::::::::爻
     \     /     爻:::::::::::爻  {ノ /)' /: :.!    .   :ヽ : . .、 : : :小 ´爻爻メ^
      ` ー '         爻::::::::::爻   /  / {__ノ: : :.|    、   }i  : :ヽ: : :.l: \
                 爻:::::::::爻  /  /′ |!   |     }   l|    ヽ: :l: : : :>、
                爻::::::::爻  /  /′  jj イ⌒ヽー‐ 、廴_ ||      }i|/、 )
                 爻爻^  ノ 斗ァ 爪ィ〈⌒'⌒`ー'⌒)_r‐〉`丁7ー┬く丁 〉’´
                     `て__/廴ノ⌒'´ヽ.        `Y⌒廴人_ イ´
                                ヽ        '.       |
                              
                                
0222創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/06/24(金) 04:42:39.57ID:MxTKhYtJ
マミさん基本スペック

年齢 男児着床率 女児着床率 着床率合算
15歳 1/16 1/14 1/8
20歳 1/15 1/12 1/7
25歳 1/14 1/11 1/6
30歳 1/16 1/10 1/7
35歳 1/9 1/7 1/4

※高確抽選
1ヶ月中約1週間で着床高確(年齢差無し)

※ボーナス
リアルボーナス 22歳以上で半年に1度、7月と12月の頭に自動当選(期待値平均約2万5千枚)

※天井機能
65歳以上で毎日0.1%の割合で抽選 当選時は天国確定
0223創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/06/24(金) 09:57:03.62ID:MxTKhYtJ
                    --───- 、
                        , '"         丶
                       /      /     .:!   \
        デコスケ      /       /    .:::|    ゙:、
.      次スレやぞワレ   /              .::::ハ  ヽ\、
                     :'        | ,|    .::::/  ∨   ! ',\
                    ...|  n .|  |/|/|   /:::/ '"⌒|,ハ|i|
                     .| <`oク:  ィ"|⌒ //    __j  | | リ
                     .| .く/、>::  |  八 j´    行j下 |ノ/
                     〉   八::. |,ィf下`       V少 ノ/
               ノ:´: ̄:`ヽ{(\   衣 ノ;少      ,,,,, ト、
.               }== \\_\ \\`",,,,,,   ` _   /j!ヽ
               〈二二フ .::::::ヽ/\ \    r   ノ /// }
         r_、_ ,       .__>::::::ノ´{\}`⌒>-`__/ニ"/ ,/─ 、
           {r‐‐、_}、   } ̄\\::ノ   }≧ {- 、{oo、 ど`ヽ)>、ヽ } ⌒ヽ !
          j,二 、ヽ\ ュ. : : \}    「 ̄ ̄ ミ 、\ーくヽ._`Y/´ `^’`ヽ/
          { ァrr‐'’  ヽ   \::/   ノ―― 、  \ヽ}i ヽ.∨   丶 ハ
          \|i|  ヽ  ヽ メxメxィ /      \  \} ヽ廴i /      i
          ||l|      }`爻::::::爻ム文>、   ヽ  \ |  } ヽ'ノ     l
          ||l|       爻::::::爻 ̄`ヽX\iノ     `}  |   V    ヽ{
          ||l|        爻::::::爻ヽ   ヽ-} /    ノ  | _}     ヽ
          |||}        i爻:::::::爻 }   / '  ,ム┴‐ ァ'´ ニム     ∧
           ' j,ノ        |爻:::::::::爻!  /´ /,. -―┴rく__   〉      ∧
         / /′        爻:::::::::爻 /`く´ く   二三}ノミ 、 {    n  }
         /ノ          爻:::::::::爻ノ   〉´入   /イ} ト、{ヽノ爻 <`oク ,
        /´            爻:::::::::爻    〈/  V彡' / i|.斗 iキ‐V爻く/、>/
       /           / ,爻:::::::::爻メx,  }__ . イフ  小 | l \V:爻x. /
.    /            /´爻:::::::::::爻::::爻爻/  斗'  /.| | ∧  'V:::::::爻
  /   n              /  爻::::::::::爻:::::::::::::7¨ ̄/  /{____V  ヽ:::::::::爻x
./  く`o勹  n      /  爻::::::::::爻xメ爻ム '´  / 丁 丁 丁 |     \:::::::::爻x
ヽ   く人> <`oク 米  ,   ,爻:::::::::爻  /     / | {  l  |  ヽ \\::::::::爻x 
 丶.     く/、>   /   爻:::::::::爻 /  / / イ   |   .   . l i ヽ く⌒}〉:::::::::爻
   \        /    爻::::::::::爻 んぅ rく  / /:|.   { . .ヽ   ヽ}_厂`}_ノ爻::::::::::::爻
     \     /     爻:::::::::::爻  {ノ /)' /: :.!    .   :ヽ : . .、 : : :小 ´爻爻メ^
      ` ー '         爻::::::::::爻   /  / {__ノ: : :.|    、   }i  : :ヽ: : :.l: \
                 爻:::::::::爻  /  /′ |!   |     }   l|    ヽ: :l: : : :>、
                爻::::::::爻  /  /′  jj イ⌒ヽー‐ 、廴_ ||      }i|/、 )
                 爻爻^  ノ 斗ァ 爪ィ〈⌒'⌒`ー'⌒)_r‐〉`丁7ー┬く丁 〉’´
                     `て__/廴ノ⌒'´ヽ.        `Y⌒廴人_ イ´
                                ヽ        '.       |
                              
                                
0224創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/06/24(金) 09:58:09.73ID:MxTKhYtJ
                    --───- 、
                        , '"         丶
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        デコスケ      /       /    .:::|    ゙:、
.      次スレやぞワレ   /              .::::ハ  ヽ\、
                     :'        | ,|    .::::/  ∨   ! ',\
                    ...|  n .|  |/|/|   /:::/ '"⌒|,ハ|i|
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                     .| .く/、>::  |  八 j´    行j下 |ノ/
                     〉   八::. |,ィf下`       V少 ノ/
               ノ:´: ̄:`ヽ{(\   衣 ノ;少      ,,,,, ト、
.               }== \\_\ \\`",,,,,,   ` _   /j!ヽ
               〈二二フ .::::::ヽ/\ \    r   ノ /// }
         r_、_ ,       .__>::::::ノ´{\}`⌒>-`__/ニ"/ ,/─ 、
           {r‐‐、_}、   } ̄\\::ノ   }≧ {- 、{oo、 ど`ヽ)>、ヽ } ⌒ヽ !
          j,二 、ヽ\ ュ. : : \}    「 ̄ ̄ ミ 、\ーくヽ._`Y/´ `^’`ヽ/
          { ァrr‐'’  ヽ   \::/   ノ―― 、  \ヽ}i ヽ.∨   丶 ハ
          \|i|  ヽ  ヽ メxメxィ /      \  \} ヽ廴i /      i
          ||l|      }`爻::::::爻ム文>、   ヽ  \ |  } ヽ'ノ     l
          ||l|       爻::::::爻 ̄`ヽX\iノ     `}  |   V    ヽ{
          ||l|        爻::::::爻ヽ   ヽ-} /    ノ  | _}     ヽ
          |||}        i爻:::::::爻 }   / '  ,ム┴‐ ァ'´ ニム     ∧
           ' j,ノ        |爻:::::::::爻!  /´ /,. -―┴rく__   〉      ∧
         / /′        爻:::::::::爻 /`く´ く   二三}ノミ 、 {    n  }
         /ノ          爻:::::::::爻ノ   〉´入   /イ} ト、{ヽノ爻 <`oク ,
        /´            爻:::::::::爻    〈/  V彡' / i|.斗 iキ‐V爻く/、>/
       /           / ,爻:::::::::爻メx,  }__ . イフ  小 | l \V:爻x. /
.    /            /´爻:::::::::::爻::::爻爻/  斗'  /.| | ∧  'V:::::::爻
  /   n              /  爻::::::::::爻:::::::::::::7¨ ̄/  /{____V  ヽ:::::::::爻x
./  く`o勹  n      /  爻::::::::::爻xメ爻ム '´  / 丁 丁 丁 |     \:::::::::爻x
ヽ   く人> <`oク 米  ,   ,爻:::::::::爻  /     / | {  l  |  ヽ \\::::::::爻x 
 丶.     く/、>   /   爻:::::::::爻 /  / / イ   |   .   . l i ヽ く⌒}〉:::::::::爻
   \        /    爻::::::::::爻 んぅ rく  / /:|.   { . .ヽ   ヽ}_厂`}_ノ爻::::::::::::爻
     \     /     爻:::::::::::爻  {ノ /)' /: :.!    .   :ヽ : . .、 : : :小 ´爻爻メ^
      ` ー '         爻::::::::::爻   /  / {__ノ: : :.|    、   }i  : :ヽ: : :.l: \
                 爻:::::::::爻  /  /′ |!   |     }   l|    ヽ: :l: : : :>、
                爻::::::::爻  /  /′  jj イ⌒ヽー‐ 、廴_ ||      }i|/、 )
                 爻爻^  ノ 斗ァ 爪ィ〈⌒'⌒`ー'⌒)_r‐〉`丁7ー┬く丁 〉’´
                     `て__/廴ノ⌒'´ヽ.        `Y⌒廴人_ イ´
                                ヽ        '.       |
                                .          廴___ ノ|
                                 '.  , -‐┬┬..Vi::i::i:::i::i|
0226創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/06/24(金) 10:13:48.03ID:MxTKhYtJ
《良くある質問》

Q、さっきからマミさんが指をくわえてお腹を擦ってんだけど…?

A、CZです 美味しいご飯をご馳走して、マミさんの歓心を買いましょう(婚姻期待度0.5%)

Q、USJステージまで行ったけど、マミさんが退屈そうで演出に発展しない… 帰った方がいい?

A、ダメです 前兆濃厚です レストランに向かいましょう レストランのドアが花火柄なら、ワルノミグイの夜は目の前です

Q、最近一段と丸みを帯びたマミさんが、やたら酸っぱい物を欲しがるんだけど、これってもしかして…!?

A、ただのモード示唆です 甘い物ばかり与え過ぎです
0227創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/10/03(月) 19:18:04.12ID:Buyv32Sb
   __   ,イー_- 、_
                  r ´ ̄    `.Y  /,.イ} <
             ,...{∨Y  , rー  ̄  ー.、{ .∩ }}r-、 .ミ
            z'´ Nrリ ´        .、 Y .rト/ .}} ミ_
            イ |レ'.r  .ィ    ト、  l N ゝ}=<  ゞ
            イ ノ_./ .,' .ハ   |_乂  .l Nヽト、}}  ミ  __  まどかだと思った?残念!マミちゃんでした
      __    イィレ{  .{乂_ ∨ .i|´三\_|  lヽト_´r-> ´ __\
     }´     ̄`<N  .ムr芒、ヽ .リ.' .fしハ .|  ト,} `>'  /二ニ=<
     ,.<二二>、  〉ハ .ハ{ {しj .∨ ゝ-' /} ./ノ  \./7/  ___ ゝ
    } __ _ ̄ Y./ ヘ{ ト≦  '    ノイ /'     Z 、r≦_ -―  ̄`ヽ
  r t−――≦>/   /,代   、__ノ  _イ /    r-、  ` ̄ ̄  ̄`ヽ }
  ゝ、_≦´ ̄ ̄/    / .| i:|` ー.t--__コr7ハ{r.⌒ヽ { .}         _ノノ
     ̄`   .7 ̄しイ⊥m'Vリ`ヽyトー‐ ´|´| r⌒ ノ ∠.1
         /   ノ ̄え{|   /./ ,イ   |、_|.r' /、 y .ハ
         `> 、 __.え.{|  rトイ_∪.t-く >rXゝ廴 Y__ノノ〉
              ヾ┴∨ゝイt>´  |||  〉ーヘ>〜´   ._
                 .{  .| |     l|! ,'   _  -‐ ニ-ッ|
                 ハ  .l l    ji|! ∧  / r ´ ̄  ノ |
           _ -‐ 、  ハ  .}.}   l||  {l.|  /./   ,r<r '´
         < rー  ̄` \ .} .|.|   !|, .ハ.トy∠ヘ≦ニ´、    _ r ==ニ二__ー┐
                r-.>ヘ .|.|   |r− 、V//  }ー- _ヽvr '< ´         ̄`
            _ /r、/  .} .|.|    l   r‐fjヘ__ト、ー三‐ へ ヽ
           /  `ュ{、r  /  .|.|    .ト、   .ト、  ̄/    ハハr、
          .// ./ /__./ト、  |.|    _l|lハ  |  .< _      } } ヘ
         r{ {   ̄`´ __ \\| |  /´/'´マ`└‐ ´   ̄ − __// .ハ 〉
       ./´Y| |   _ ‐ ´   \.|.|´rイ     マ  ヘ       _≧  .L}_
       (´/ l l_ /_      l `´ /      マ .ハ    r'_r 'イ/ 、  |
0228創る名無しに見る名無し
垢版 |
2016/10/04(火) 18:07:25.78ID:8yDOiTQM
                 __   ,イー_- 、_
                  r ´ ̄    `.Y  /,.イ} <
             ,...{∨Y  , rー  ̄  ー.、{ .∩ }}r-、 .ミ
            z'´ Nrリ ´        .、 Y .rト/ .}} ミ_
            イ |レ'.r  .ィ    ト、  l N ゝ}=<  ゞ
            イ ノ_./ .,' .ハ   |_乂  .l Nヽト、}}  ミ  __  マミさんだと思った?残念!デコスケでした
      __    イィレ{  .{乂_ ∨ .i|´三\_|  lヽト_´r-> ´ __\
     }´     ̄`<N  .ムr芒、ヽ .リ.' .fしハ .|  ト,} `>'  /二ニ=<
     ,.<二二>、  〉ハ .ハ{ {しj .∨ ゝ-' /} ./ノ  \./7/  ___ ゝ
    } __ _ ̄ Y./ ヘ{ ト≦  '    ノイ /'     Z 、r≦_ -―  ̄`ヽ
  r t−――≦>/   /,代   、__ノ  _イ /    r-、  ` ̄ ̄  ̄`ヽ }
  ゝ、_≦´ ̄ ̄/    / .| i:|` ー.t--__コr7ハ{r.⌒ヽ { .}         _ノノ
     ̄`   .7 ̄しイ⊥m'Vリ`ヽyトー‐ ´|´| r⌒ ノ ∠.1
         /   ノ ̄え{|   /./ ,イ   |、_|.r' /、 y .ハ
         `> 、 __.え.{|  rトイ_∪.t-く >rXゝ廴 Y__ノノ〉
              ヾ┴∨ゝイt>´  |||  〉ーヘ>〜´   ._
                 .{  .| |     l|! ,'   _  -‐ ニ-ッ|
                 ハ  .l l    ji|! ∧  / r ´ ̄  ノ |
           _ -‐ 、  ハ  .}.}   l||  {l.|  /./   ,r<r '´
         < rー  ̄` \ .} .|.|   !|, .ハ.トy∠ヘ≦ニ´、    _ r ==ニ二__ー┐
                r-.>ヘ .|.|   |r− 、V//  }ー- _ヽvr '< ´         ̄`
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       (´/ l l_ /_      l `´ /      マ .ハ    r'_r 'イ/ 、  |
0239創る名無しに見る名無し
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2017/07/11(火) 14:15:19.48ID:icdxf+Tx
「おらぁっ! さっさと犯っちめぇ!!」
「スゲェ〜!!」

男達の騒声が、狭い物置小屋に木霊する

「やめてぇぇぇぇぇっ!!」
「嫌ですぅぅぅぅぅっ!!」

乙女達の痛々しい悲鳴も木霊する

「…………………………」

しいなだけはその狂宴から少し離れて、明かり取りの窓から射し込む夕陽に照らされていた



『バタンッ!!』
0240創る名無しに見る名無し
垢版 |
2017/07/11(火) 14:16:22.31ID:icdxf+Tx
その時、物置小屋かの扉が勢い良く破られた

「プ、プロデューサー!!」

しいなの待ち望んだシルエットが、その切り取られた四角の中に浮かんだ

「なんだテメェ… グハッ!!」

男が一人宙を舞った

「野郎っ! …ブグッ!?」

近寄った男が、同じ様な軌跡を描いて吹き飛んだ

「やっちめぇ!!」

リーダー格の掛け声で、男達は一斉にプロデューサーに飛び掛かる

「グベッ!」
「ギャッハ!?」
「ウボッ!!」

圧倒的かつ一方的な暴力の発揮であった
危険な破砕音を響かせて、伸びた男達が折り重なる

「……くっそぉぉぉ!」

最後に残されたリーダー格は、懐からバタフライナイフを取り出すと、それを腰に固めて突進する
0245創る名無しに見る名無し
垢版 |
2017/12/27(水) 09:58:03.13ID:C1Z7QFDy
家で不労所得的に稼げる方法など
参考までに、
⇒ 『武藤のムロイエウレ』 というHPで見ることができるらしいです。

グーグル検索⇒『武藤のムロイエウレ』"

BQO6H2VS2L
0246創る名無しに見る名無し
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2018/01/14(日) 09:38:38.10ID:gpk9TOXU
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0247創る名無しに見る名無し
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2018/01/14(日) 09:39:53.59ID:gpk9TOXU
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0248創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/01/14(日) 09:40:22.89ID:gpk9TOXU
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0249創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/01/14(日) 09:40:47.33ID:gpk9TOXU
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0250創る名無しに見る名無し
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2018/01/14(日) 09:42:55.47ID:gpk9TOXU
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0251創る名無しに見る名無し
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2018/01/14(日) 09:49:44.99ID:gpk9TOXU
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0252創る名無しに見る名無し
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2018/01/14(日) 18:23:04.99ID:gpk9TOXU
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0253創る名無しに見る名無し
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2018/05/21(月) 06:37:06.65ID:tRZnwP6O
知り合いから教えてもらったパソコン一台でお金持ちになれるやり方
参考までに書いておきます
グーグルで検索するといいかも『ネットで稼ぐ方法 モニアレフヌノ』

PVN99
0254創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/07/03(火) 21:13:10.76ID:f1dClnnX
BB0
0255創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/10/17(水) 16:10:10.77ID:ZU7x6aHX
中学生でもできるネットで稼げる情報とか
暇な人は見てみるといいかもしれません
いいことありますよーに『金持ちになる方法 羽山のサユレイザ』とはなんですかね

FFS
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