【BL】ボーイズラブ・やおい創作総合【801】
ボーイズラブ・やおい関連作品を総合的に扱うスレです。
一次でも二次でも、小説からイラスト・漫画まで、なんでもどうぞ。
ここは全年齢板です!
−どんな時でも腐女子、腐男子の心を忘れずに逝きましょう−
◇前スレ◇
【腐】やおい・お耽美・ボーイズラブ【BL】
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1229760468/
◇お約束◇
・投下の際は、最初に属性や作品傾向等を記入しましょう。
(ショタ、青年、学園もの、社会人もの等)
・雑談も大歓迎です! だが、しかし! 作品が投下された直後の雑談は控えてください。
・苦手だなと思った作品はあえて読まない、批評しない!
・感想、アドバイスには作者さんへの配慮を忘れずに。
・荒らしにはをスルーを徹底しましょう! ― レオン・デュランダール ―
そしてそれが―恐らくは、自らが王子として、つい1年程前まで暮らしていた小さな国と、その国を治めてい
た父である国王を滅ぼした強大な力を持つ、隣国の皇太子の名であったことを、自らの記憶から消し去ろう
と努めていた。
一方のレオンも、今は立場の違いから、滅多に会うことも叶わなくなった、大切な親友―エル・ユーグ・ディ
アスの面ざしに似た、この少年の名前―それが、自らと自分自身の父王の手によって、滅亡に追いやられ
た小国の王子と同じものであることに気付いていた。
その小国の王を打ち取ったのは、レオンが初めて上げた、誇るべき武勲だったのだから、忘れる筈など無
かった。 ― ディア・マリ・スイール ―
その際に、戦火を逃れながらも、行方が知れなくなっていた、その小国の唯一人の王子は、まだ年端がい
かない年齢ながらも、金髪碧眼の整った容姿を兼ね備えた、大変聡明な少年だったと聞いている。
レオンは、自らの脳裏によぎったその記憶を振り切るように、思い直す。
自分は、あの場面に遭遇していたら、例えそれが誰であれ、あの酷い境遇から救い出すために、その相手に
立ち向かっていっただろう。 だから、何をどう考えても同じだ。
今は、ただ、彼、ディアの身の上をしっかりと救うことだけを考えるべきなのだと―。
二人の少年のそれぞれの想いの交錯は、今、ここから始まったばかりだ。
そして、それこそが、これから始まる大きな変革の兆しへとつながっていくのだ。
その出来事は、また別の物語として語り継がれていく―。
-END- とあるSSにインスパイアされて、主人公の性別を変えて書いたらこんな風に
結局あんまり二人が幸せになっていない気もしますが、まあ、幸せになってほしいものです >>48
投下乙です!!
すごくしっかりしたSSが投下されていてびっくりしたw
少年×少年ということで、ここに投下してくれたのかな?
ちょっと勿体ない気もするので、勇気を持ってageてみるw
また気が向いたら投下してくださいな 駈け出しの社会人のお兄さん×男娼の少年という組み合わせでこれから投下
後半、少しだけえっちいかも 「ああ、貴方が今日、俺を買った人なのか。 じゃ、とっとと初めようか。
俺、今日は、終わったら、ここに泊らないで、家に帰りたい気分なんだ」
俺の目の前に立っていた少年は、そう言って微笑むと、自らが着ていたTシャツを何の躊躇いも無いかの
ように、あっさりと脱ぎ始めた。
そして、そのTシャツを、この部屋のでかいベッドの上に、脱ぎ棄てるようにして放り投げた。
既に上半身に何も身につけてはいない、その少年の艶やかな肢体は、同性の俺からみても、端正で、美し
いという形容詞のほかに思いつく言葉は無かった。
17,8歳位の少年にとっては、理想的とも言える彼の肉体は、しなやかかつ、程良い筋肉を備えた大型の
美しい猫科の獣を思わせる雰囲気を漂わせていた。
また、少年の短く整えられたプラチナブロンドの髪と、少しばかり怜悧な印象を与えているアイスブルーの瞳
の整った面立ちは、正に美少年と呼ぶに相応しい容姿だと思った。 「ちょっと、待ってくれ! 俺は、君を呼んだ覚えなんかないんだ!」
俺はその少年に慌てながら声をかけた。後で思うと、その時の俺の様子は、きっと滑稽だったに違いない。
だが、海外出張で訪れたその宿泊先で、仕事を終えて自らの泊っている部屋に帰ってきたら、見ず知らず
の美少年がいて、しかもいきなり服を脱ぎ始めたら、きっと誰だって驚くと思う。
そう、俺と彼が出会ったのは、正にそういう状況だったのだ。
俺は今年、25歳になったばかりだが、父の稼業を継ぐ立場にあるため、今回、通訳として、この海外での
商談に同行していた。
仕事柄、宿泊していたホテルのランクは、いつもの通り、申し分のないものだ。
それに、専門用語が飛び交う中で通訳をこなしたり、相手先や周りの連中に気を遣ったりと、それなりに多
忙なスケジュールを終えて、これからようやく一息つけると思いながら、宿泊先のこの部屋に帰ってきた矢
先の出来事だったのだから、驚くなと言われても無理がある。 「えっ、あんたが今夜の俺の相手じゃないの?」
少年の方も俺のその言葉に驚いたように、上半身裸のままで、俺を見つめていた。
彼はそれから、ジーパンのポケットに片手を突っ込んで携帯を取り出すと、何処からかのメールらしき画面
を確認してから俺に言った。
「ああ、ミスター、申し訳ない、確かに俺の相手は、貴方じゃなかったみたいだ。
どうやら、連絡ミスみたいだね。俺の代わりにはもう、他の奴が行ってるってさ」
彼は俺に対して、少し申し訳無さそうな表情で微笑んだ。
それから、ついさっき、自らが脱ぎ捨てたTシャツを拾って、手早く着ると、彼はこの部屋から早々に立ち去
ろうとしていた。
彼はベッドルームの扉の前に立っていた俺とすれ違うようにして、外の廊下へと、つながる扉の方へと足早
に歩いていく。 「待てよ!」
彼が俺とすれ違ったその瞬間、俺は、彼の片方の肩を掴むようにして、呼び止めていた。
後から思い返しても、その時、どうして彼を呼び止めたのか、明確な理由は思い出せない。
とにかく、彼をそのまま帰すのは嫌だったからだとしか言いようが無い。
彼が俺に肩を掴まれて振り向いた瞬間、彼のアイスブルーの瞳と、俺の黒い瞳の視線が間近で重なり合う
よう至近距離の中で、お互いを見つめ合うような格好になった。
「……何?」
そんな状況にも関わらず、彼は冷静にアイスブルーの瞳で射るように、俺を見つめながらそう言った。
「君は……自らの身体を売る仕事をしているのか」
「そうだよ」
後から思えば、誰もが呆れたくなるような俺のその質問に対して、彼は自らの瞳に宿る強い意思と誇りを崩
すことなく、端的にそう答えた。 「……なんでそんな……」
彼のそのあっさりとした返答に、俺は思わず小さな声で、母国語でそうつぶやいた。
彼のような容姿と身なりもそれなりに整った少年が、そんなことを生業にしているとは、にわかには信じがた
かったからだ。
そうなのだ。彼は、ホテルのコンシェルジュがこの部屋に通しただけあって、ラフな格好をしてはいたが、決し
て、薄汚れた身なりなどでは無かった。
「なんでって、決まってるだろう。
俺と、俺にとって、大切なものを守りたいからだよ。 俺は、この場所でこうして生きていく為に、してるんだ。
あんたこそ、何の為に働いてるんだ?」
ほんの少しの間だが、驚きを隠せないと言った表情をしていた俺に対して、彼は射るような視線で俺を見つ
めたまま、そう言った。
彼は、俺が小さな声でつぶやいていた、その言葉の意図を読み取っていたようだった。
いかにもヤングエグゼクティブらしいといった感じに見せるために丁度良いといった位には、仕立ての良いビ
ジネススーツを着てはいるものの、黒髪黒目で年齢よりも幾分幼く見える、良家のご令息といった風貌の俺
に対し、彼は、少し意地の悪い問いかけをしている子供のような表情で、ほん一瞬だけ、微笑んだ。
それから、自ら肩に乗ったままになっていた、俺の手を振り払うようにして退けると、再び廊下へとつながる
扉の方へと歩いていこうとする。 「おい、待てよ!」
「何だよ!」
彼は、今度は、彼の片手を取るようにして、引きとめようとしていた俺の手を振り払うようにして、俺の方へと
振り返った。
「俺が……俺が、今夜、君を買うって言ったら、君はここに、このまま居るのか」
彼は、俺が馬鹿正直な気持ちで言ったその言葉に対して、一瞬驚いたような表情をしていた。
だが、彼は、その場で短く息を吸い込みながら、一呼吸置くと、先程と同じように冷静な表情を取り戻し、俺
に対して、挑むような視線を投げかけたまま言った。
「そうだよ。ただし、俺を一晩買うには、
あんたが今、泊まっているこの部屋の代金の倍は、積んでもらわないとならないけどね」 「いいよ、君を買おう。 とりあえず、これは手付け金だ」
俺は、彼の挑むような視線を受け止めながら、自分のスーツの内ポケットに入れたままにしていた、札入れ
に入っている札束―その場に持ち合わせていた現金の全てに等しい額を彼の手元へと差し出した。
彼は再び驚いたような表情で、その札束を見つめてから、俺の顔へと再び視線を上げた。
「あんた……本気なのか? ……いいよ、分かった。あんたに買われてやるよ、来な!」
俺をほんの暫くの間、見つめてから、彼はそう言うと、手元に差し出された札束を受け取ることも無く、きび
すを返すように、この部屋のベッドルームへと向かって歩いて行った。
彼が俺の側を通り過ぎていく、その様子を振り返るようにして、俺はベッドルームへと足を向けた。
そこには、先程と同じく、俺が一人で寝るには、少し寂しく感じる位に立派な大きさのクイーンサイズのベッド
がある。
そして、そのベッド端には、そこ座りながら、先程と同じように射るような視線で俺を見る少年の姿があった。 「あんたは、俺を買ったんだ。俺を好きにしていい」
少年は、自らの側に立ち止って、そのまま一歩も動かずにいた俺を見上げて、先程よりも熱を帯びた、ほん
の少しだけ、潤んでいるかのようにも見える瞳で俺を見つめながら、そう言った。
恐らく少年は、今まで毎晩のようにして、数多くの男達から受けてきた、あの行為を、これから俺がすぐにで
も施し始めるのだと思っていたのだろう。
だが、彼の瞳が潤んでいるその理由は、その先に在る快楽を期待してのものなどでは決して無く、自らの誇
りを犠牲にしてまでも、大切なものを護るのだと言っていた、その決意と覚悟の表れのようだと、俺は思って
いた。
「金はいいのか?」
「あんたを信用して後払いにしてやるよ。さあ、俺を抱くといい」
俺の問いかけ対して、彼はそう言うと、俺の腰の辺りに手を伸ばし、俺の身体を自らの方へと手繰り寄せる
ように引き寄せる。
それから、彼は俺の腕を取って、そのまま自らの身体の方へと引いた。 それは、恐らく、俺がベッドの上へと倒れ込み、彼の上へと、そのまま覆い被さるような体勢になるようにと、
仕向けていく為の所作なのだろう。
彼は同時に、もう片方の手を俺の頬へとあてて、そのまま顎の辺りをなぞるようにした後で、俺の胸元のネ
クタイを軽く引きながら、彼自身の身体をベッドに預けるように、ゆっくりと後ろへと倒してゆく。
彼が自分自身の身体を後ろに倒していくのに合わせて、彼にネクタイを引っ張られたままの俺は、自然と彼
に覆い被さるような姿勢になっていった。
俺の身体の動きにタイミングを合わせるようにして、自らの身体をゆっくりと後ろへと倒してゆくその様は、本
当に小慣れた男娼の仕草のように見えたが、よく見ると、俺のネクタイに添えられたその指先は、少し震え
ていた。
「なあ、無理してそんなことしなくていいよ。それより、君の名前を教えてくれないか」
俺は自らの片方の手を優しく添えるようにして、彼の震える手首に添えると、その腕をシーツの上へと降ろ
しながら、そう言った。
彼は、抵抗するでもなく、無言のままで、暫くその体勢のまま、俺の顔を見つめていた。
まあ、体躯では、かろうじて俺の方が勝っていたから、あまり抵抗する気になれなかったのかもしれないが。 「マリア」
小さな声でそう言った彼の言葉を聞いて、俺は彼に問いかけるように、再びその言葉を繰り返した。
「……マリア?」
「俺の男娼としての渾名だよ、お兄さん」
彼は、俺を見上げるようにして、見つめたまま、小さく微笑みながらそう言った。
その言葉を聞いて、今度は、俺の方が一瞬無言になった。
男娼にして、慈悲深き聖母の名を渾名に戴くだなんて、滑稽な話だとは思うが、この少年が、その美しい容
姿と躯で、数多くの男達に対して、これまでにもずっと、慈悲にも勝る快楽を与えてきたのだと考えれば、逆
にこれ程相応しい渾名は、無いようにも思えた。
「俺の名前は、それで呼んでくれればいいよ。で、あんたの名前は何ていうの?」
「俺は、聖人って言うんだ」
「ふうん、マサト、貴方は日本人なんだろ?」 彼のその言葉に俺は、再び驚いて、彼を見つめた。
「どうしてそんなこと、解るんだ」
「こんなことをやっていても、昼間はそれなりの教育を受けてるんだよ。お兄さん」
俺に組み敷かれたその体勢のまま、彼はにっこりと笑いながら言った。
「なあ、マリア、君の本名を教えてくれないか」
「それは俺が、貴方を本当に気に入ったら教えてやるよ、お兄さん。
さ、早く本気で俺を抱いてくれないかな。
俺はね、今日は早めに仕事を終わらせて、一度家に帰りたいんだ。
兄さん、あんたは割と綺麗な顔立ちと身なりをしているし、俺の仕事の中では、これは楽な方だから。
あんたは、俺に対して、何か気兼ねしてるようだけど、俺を抱くのに躊躇う必要なんか全く無いんだよ」 彼の本当の名前を聞こうとしたことが、よほど気に食わなかったのか、彼は俺を再び挑発的な鋭い視線で
見つめてそう言った。
それに対して、俺の方も彼を挑発するような口ぶりで返事を返す。
「それは無理だな……俺は、今夜、君に、ここに居てもらうっていう条件で、君を買ったつもりなんだよ。
だから、今夜は君を家に返すつもりは無いな」
「……何、馬鹿なこと言って……」
彼は俺のその言葉に驚いたような、半ば呆れたような表情を見せた。
ただ、彼は、俺の言葉を聞いて、少し苛々した気分になったらしく、俺のネクタイを先程よりも少し、強め引っ
張り、俺の顔を自らの顔の前へと寄せるようにする。
彼が相変わらず俺に組み敷かれている状況には変わりはないので、俺達は、再び互いを強く見つめ合うよ
うな格好になった。
彼の瞳からの強い視線に構うことなく、俺は真っ直ぐに彼を見つめながら、話を続けた。 「それに、俺は、君を抱くつもりは無いんだ。 君も俺に抱かれたいなんて、本気で思っていないだろう?
俺が君を一生涯、買い取るから。君が心無く誰かに抱かれる事なんて、もう無くなるんだ。俺は、本気だよ」
「……えっ……!」
その驚きを現わす小さな声を発した瞬間、彼は、俺のネクタイを引っ張っていた手の力を自然と抜いた。
彼は、本気で驚きを隠せないといった表情で俺を見つめている。
俺の言葉を冗談だとでも受け取ったのだろうか?
でも、その時、口にしていた俺の言葉に、嘘偽りは全く無かった。
そうなのだ。俺には彼を抱く気など元から全く無かった。
ただ、先程、初めて彼の姿を目にしてから、無意識のうちに、彼を何とかこの境遇から救い出したいと思っ
ていただけだ。
「……っ! そんなの……嘘だ!!」 彼は、俺を真下から見上げた、その姿勢のまま、信じられないといった表情で、声を上げた。
無理もない。
きっと、今までにも、客である男達と身体を重ねる度に、甘い睦言を囁かれてきたのだ。
そして、それが現実になることなど、絶対に無いと、自らに言い聞かせてきたのだろうから。
今、急に俺の言葉を信じろと言うのには無理がある。
それでも、俺は自分の言葉が嘘偽りでは無いことを信じて欲しかった。
俺は、もう一度、自らの正直な気持ちを心の底から込めるようにして、彼にその言葉を告げる。
「俺は、本気だよ」
「嘘だ……嘘だよ……こんなの嫌だ……」
俺のその短い言葉を聞いた後、彼の瞳からは、自然と涙が零れ落ち始めていた。
それは、きっと無意識に零れ落ちたものなのだろう。
彼は、その涙を拭う事なく、俺を見上げるようにして見つめながら、泣いていた。
こんな風に優しくされてから、その掌を返されるような事があるのなら、
それは、心が悲鳴を上げる程に痛い。
だから自分に構うなと。
彼の瞳は、俺にそう告げているように思えた。 俺は、自らの下に組み敷いたままの少年の乱れた金色の髪を額から除けるようにしてそっと撫でた。
「……っ」
たったそれだけのことで、少年の背中は、ほんの少し怯えるように、震えて撥ねた。
俺は、そんな彼を見つめながら、自らの指で、その目尻から零れる涙を掬う。
その場で安心しろと言っても無理なのは、十分に解っていたが、少しでも彼に安心して欲しかった。
「どうして? 嘘じゃないから。君はもう、泣かなくて良いんだ。頼むから……もう泣くな」
そう言った俺は、自らの心に従うように、彼の整った曲線を描く額へと、そのまま、そっと口付けていた。
その俺の口付けに、彼の背中が再び小さく震えて撥ねた。
「……や……マサト……頼むから……俺にそんなに風に優しくしないで……」
彼は、俺からの視線を避けるようにしながら横を向くと、未だに涙に泣き濡れた横顔を俺に晒しながら、小さ
な、その場から消え入りそうな声でそう言った。 「俺が君を気に入ってしていることだから、もう、気にするな」
「……っ、あ……」
俺は、彼に対して言葉さえならない、この自分自身の内側から強く湧き上がってくるかのような、情熱的とさ
え言える親愛の情にも似た気持ちを行動で示したくて、彼のしなやかな躯を抱えるようにして抱きしめた。
それから、俺は、自分の身体と彼の身体の隙間が無くなるかのように、互いの身体を重ね合わせ、先程よ
りも強く抱きしめるようにしてから、彼の額へともう一度、口付けを贈った。
先程、彼を本気で抱く気など全く無いと言っていた筈で、事実そんな風な気持ちは全く無かった筈なのに、
今、俺は、彼に対して何故だかそうせずにはいられなかった。
そんな俺の気持ちを見透かしたのか、俺の腕の中にいた少年は自らの両腕を俺の首筋の辺りへとまわし
て、今度は、彼、自らが俺を強く抱くようにして、そのしなやかな身体を俺の方へと寄せた。
「……頼む……から……俺を抱いて……」
彼は俺の耳元で、まるで小さな子供が大切な願い事をするように囁いた。
小さな声に魅かれるようにして、俺が再び彼を見つめると、そこには、その瞳に真摯な光を宿す、少年の姿
が在った。
そして俺は、彼の真摯な蒼い瞳を見つめながら―その柔らかな唇へと口付けた。
【END】 −The Sequel−
その夜、結局、俺は、そのまま彼を抱くことになった。
あの出来事からは、もう既に何年かが経ったが、今も変わらず聖母は俺の傍で微笑んでいる。 投下終了
後半だだ甘な気もしますが、楽しんでいただければ良いかなと あと、今までの作品を創作発表板@wikiの保管庫に収録してくださった方がいるようなので、
一応、ご案内
【BL】ボーイズラブ・やおい創作総合【801】
作品まとめページ
http://www26.atwiki.jp/sousaku-mite/pages/898.html
収録してくださった方、乙でした。
これからもどうぞよろしくお願いします。 >>68
おぉ! 投下乙です!!
読み応えのあるSSが続けて投下されるとは嬉しい限りだw
一見すると少年の方が強気で、大人っぽいとこが好きだなw
またの投下をお待ちしてます!
まとめページの方にも収録してきました
ご報告まで >>68
乙です!
ここのところ定期的に投下があってなんか嬉しいなw >>11の続きを6レス程投下
前回とは逆の相手方視点でちょっと短めのお話です。 ずっと。
弟分のように思っていたのだ。
それが何時から、それ以上の感情を伴って見るようになったのか、はっきりとは覚えていない。
だが、一見冷たそうに見える、プラチナシルバーの短く整えられた髪とアイスブルーの瞳の同室の少年−
ヴィットーレ・ディ・イエッリ−彼がその容姿に似合わぬ、屈託のない笑顔で微笑む度に、魅かれていって
いた気はする。
あいつは、そういう意味では、本当に天然なのだ。自分の何気ない表情や仕草が一体どれ程の人々を惹
きつけているのかなんて、全く自覚していないのだろう。 「……んっ、あぁっ……トォガ……や、ぁ……」
これだよ。
奴は先程も俺の隣のベッドで、こんなにも悩ましげな寝言をあげて、俺の名を呼びやがった。
その日、元々眠りの浅かった俺は、その声に呼び覚まされるように、目をあけた。
そして、それは、俺が眠り初めてから、まだ余り時間が経っていないうちの出来事だったので、ある意味当
然のように、まだ辺りは暗く、夜の闇に包まれたままだった。
今は、ちょうど、真夜中を少し過ぎた位の時間帯のようだ。
全くどんな夢を見てるんだか……。
俺はそう思いながら、自分自身の長くて、鬱陶しい長い髪をかきあげながら、ベッドから上半身を起こし
て、奴が眠るベッドの方へと振り返る。 あー、案の定、ブランケットが奴の身体の上に掛ってないよ……俺にブランケットを引き剥がされた夢でも
見てるんだろうか、こいつは……
奴のそんな姿を見た俺は、ため息をつきながら、自分のベッドから静かに立ち上がって、奴のベッドの傍
へと歩いて行き、その一見華奢に見える奴の身体へと、そっとブランケットをかけてやる。
「……んう……やぁ……ん……あぁっ、トーガぁ……」
俺がブランケットをかけて、奴の顔を覗き込むようにした瞬間、見ているこちらの方が切なくなるような、ま
るで、情事に喘ぐ美少年といった風な表情をしながら、奴は小さな声で、そう呟いた。
もちろん、それも寝言だし、表情だって、寝苦しさ故のものだろう。
俺は、多少、呆れるような気持ちを伴いながら、再びため息をついた。 それから、再び、奴の整った顔へと自らの顔を寄せて、奴の額へと軽くキスをしてから、その場を離れる
と、近くの窓をほんの少しだけ開けて、冷たい夜の空気が入るようにした。
窓を開けた途端に、少しずつ入って来る秋の気配を伴った、穏やかな風が、俺の長いプラチナゴールド
の髪を掬っていく。
奴の所為で、ほんの少しだけ熱を帯び始めていた自分の身体とっても、その冷たい風は心地良かった。
ここは、全寮制の男子校の寮棟の一室なので、今、俺が、気分を変るために外に行きたくとも、基本的
にこの部屋の外に出ていくことは難しい。
この真夜中の時間帯でも、シャワー室やラウンジなど、自室以外の場所も寮内であれば、基本的出入り
自由なのだが、こんな真夜中なには、それこそ、世間一般で言う、不謹慎な逢瀬を重ねている生徒も幾人
かはいるということを識ってはいるので、そういう輩に遭遇したくないだけの話だが。
世間一般では、そんな色恋を絡めた逢瀬を男同士で、なんて、不謹慎だと思うのだろうが、そういう性的
な代償行為を欲する傾向が強い年頃にある若者−しかも男だけを集めて長いこと寮生活を送るなかで、そ
うなるなと言われも、決して自己擁護する訳ではないが、少し無理があると思う。 全く、俺が同室じゃなかったら、お前なんか、すぐにそういう輩に手を付けられていたと思うぞ。
俺は、そう思いながら、先程とは変わって、もう既に、安らかな寝息を立て始めていたヴィーの方へと振り
返った。
まあ、こいつは、見た目よりも相当強いので、そう簡単には、手籠にされたりはしないと思うけど。
本当に……どうしてこんな奴を好きになっちゃったんだか……。
それこそ天使のような微笑みを浮かべて眠る奴を見ながら俺は、そう独りごちた。
俺は外の空気を入れるために、少しだけ開けていた窓を閉めると、自分のベッドへと戻って、腰を下ろし
てから、ベッドサイドテーブルに置きっぱなしにしていたミネラルウォータを一口飲んだ。
それから、手近に置いてあった携帯音楽プレーヤーを手にして、イヤホンを耳にすると、お気に入りの曲を
かけながら、横になる。
もちろん、奴の悩ましい声をこれ以上、聞かなくても済むようにするためだ。 「まあ、何にせよ、俺が護れるうちは、必ず、お前を護ってやるよ」
今は静かな寝息を立てているであろう、本来の護衛対象ではない、その少年の背中に向かって、俺は小
さな声でそう告げた。
それは、唯一人、俺のみが知る、奴への告白になるのだろう。
【END】 セリフだけは、ちょっと頑張ってみましたw
しかし、相手方の方が以外と冷静で書くのが難しかったよ……
>>79
続きキター!!
ヴィーが可愛いw 可愛いよ、ヴィットーレ!!
投下乙でした!
またの投下を楽しみにしてるよw ___
,;f ヽ
i: i
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| | ///;ト,
| ^ ^ ) ////゙l゙l;
(. >ノ(、_, )ヽ、} l .i .! |
,,∧ヽ !-=ニ=- | │ | .|
/\..\\`ニニ´ !, { .ノ.ノ
/ \ \ ̄ ̄ ̄../ / .
ttp://minus-k.com/nejitsu/loader/up73565.jpg 思い付きで投下
ひたすら暗くてごめん
短いくせに鬱属性高いです 「ああぁあぁぁあ!!」
ただ、叫ぶことしかできない
君が一体何をしたと言うのだ
互いが同じ性だという
ただ、それだけで
僕が君を
君が僕を
互いに心通わせ
互いに愛おしく思い
ただ、一度、愛しあったという
ただ、それだけで 永遠に君に会えなくなるなんて
君を永遠に失うなんて
この怒りと哀しみを
抱えたまま、僕は何処へ
何処へ
僕は、今、ただ、泣き叫ぶ
君の面影を求めて
−end− SSにするにはあまりにも悲惨になっちゃったので、
とりあえずネタとして晒そうかと
本当にすみません……
四谷シモーヌのオウムネタ(青山弁護士・早川×上祐マイトレーヤ)を
上祐本人に見せる企画をニュースサイトがやってるw
ttp://www.tanteifile.com/diary/2010/10/11_01/
動画もあるwwwやたら出版社にこだわる上祐wwwwwww
ttp://www.youtube.com/watch?v=EOmURXkBGZo
確かに同人誌じゃないから本人に見せるのはアリっちゃーアリなのかね?w
シモーヌの同人は昔からアレなんでまーいーとして
こんなトンデモ本を商業出版した太田出版がトチ狂ってるよなwww >>85
投下乙です!
このスレは、シリアスでもばっちり受け止めるから大丈夫!
SSもぜひぜひ投下しちゃってくださいw >>73の続き?を投下
今度は、護衛対象の御方に新たな同室の友人ができてからのお話です。
おい、話がちょっと先に進みすぎだろっ!とは思いますがご容赦ください。 「ごめん……俺は……君のことが好きなんだ……」
僕の隣に座っていた少年は、その瞳から不意に涙を零しながらそう言った。
彼は何時から、僕に対して、そんな気持ちを傾けてくれていたのだろうか。
今、この瞬間まで、僕はその想いに全くと言って良い程、気付いていなかった。
それでも、彼が今までずっと、その想いを伏せたままで、僕に対しても、誰に対しても、分け隔て無く、そ
れこそ、常に普通の友人と一緒にいる時と何ら変わりが無いかのように、接してくれていたことを思うと、胸
が痛くて、張り裂けそうになった。
自分がその時、どんな表情をしていたのか、良くは覚えていない。
ただ、僕は、つい先程、彼が僕にしてくれたのと同じように、彼の頬にそっと手を添えると、彼に対して、自
らキスを贈っていた。
「ミカ……エル……僕も……君が好きだよ」
僕は彼の唇へと短くキスをした後で、やっとの思いで、自らの気持ちを小さな声で彼に伝えていた。
そうなのだ。
僕の方こそ、まるで宗教画の天使のようだと形容するに相応しい容姿を持つ、この金髪碧眼の少年の
笑顔に出会ってから、もうずっと、普通の友人に対する想い以上に好きだという感情を抱いてきたのだ。
それは、当然、僕が一方的に持っている感情だし、決して恋愛感情にまでは至らないものだと、自らに言
い聞かせてきた、いわば叶わぬ想いだと思っていたものなのに。 僕が小さな声でようやく口にした、その言葉を聞いてから、彼は、一瞬、驚いたような表情のままで、僕を
見つめていた。
それから、彼は、ほんの少しだけ蒼みがかった色を残す僕の黒い瞳に視線を合わせるようにして、相対
する僕の表情と、その言葉には嘘偽りが無いのだということを認識すると、本当にほっとしたような表情を
見せた。
そして、僕が好きだと言ったその言葉よりも、嬉しい事なんて、他には無いのだとでも言いたげな表情で、
僕に向かって、いつものように屈託のない笑顔で微笑んだ。
僕は、彼のその優しい笑顔に対して、どう振舞って良いのか解らなくなった。
おまけに、彼とそのまま目線を合わせているのが、気恥ずかしくなった僕は、不意に自らの瞳を閉じた。
「……っ!」
それを見計らっていたかのように、彼は先程、初めて僕に対してキスをした時と同じように、僕の頬へとそ
っと手を添える。
僕は、彼の暖かな掌が僕の頬へと触れたれだけで、その場から全くと言っていい程、動くことができなくな
っていた。
そして、僕がその場から動くことができないと思っていた、その瞬間、上手くタイミングを合せるようにし
て、彼は僕の唇へと優しく口付けた。
「……っあ!!」
僕は瞳を閉じたまま、抵抗らしい抵抗をみせることも無く、彼の口付けをそのまま受け入れていた。
その口付けは、徐々に、先程の軽く触れ合うようなキスとは異なる、大人同士の熱を帯びた抱擁へと繋
がる、互いの吐息さえも深く交わるものへと変わっていく。 「……ん、あぁっ!!」
彼が僕の唇を一度、解放した瞬間、僕は自分でも恥ずかしくなるような、小さな悲鳴にも似た声をあげな
がら、無意識のうちに彼の肩へとしがみつくと、自らの身体を彼の方に預けていた。
僕のそんな様子に構う事無く、彼は僕の制服のネクタイを緩めると、シャツのボタンを2つ程外し、その所
為で露わになった僕の首筋へとキスを降ろす。
「……ふ、あぁっ!!」
生まれて初めてそんなことをされた僕は、訳も解らず再び小さな声を上げた。
だた、彼の唇が触れる度に、触れられたその部分が熱い。
まるで、熱に浮かされるような感覚が僕の中へと注ぎ込まれていくように熱い。
「……く、あぁっ!! ……んっ!!」
彼の舌先がほんの少し触れてから、今までとは異なる、甘く噛まれるようなキスを首筋に施された僕は、
たったそれだけのことなのに、また声をあげていた。
その時僕は、本当に―自分でも自分の事をどう制したら良いのか、全くと言っていい程、解らなくなって
いたのだと思う。
後ろで一束に束ねていた僕の真っ直ぐで長い黒髪が邪魔になったようで、彼は、自らの手で僕の髪を梳
くようにして、反対側の肩へと寄せた。
それから、彼は再び僕の首筋へと丁寧にキスを施してから、そこから更に下の胸元へと唇を移動させて
いく。 「……っあ!! ……っ、や……ミカ……エル……」
そこまできて、僕はようやく、彼の行為を拒む言葉を必死になって口にしていた。
ここは、この場所は、寮棟の僕等の自室ではない。
今、この自習室には、僕等二人しかいないのは、解っている。
それでも、不意に誰かがこの部屋の外を通るかもしれなくて、なおかつ、こんな有様を見咎められるかも
しれない状況の中で、これ以上の行為に及ぶなんて、絶対に無理だ。絶対に嫌だ。
僕は、そう思いながら、もう殆ど力の入らなくなっていた自らの腕で、必死に彼の肩を押し戻す。
「……お願い……だから」
僕のその声に、彼は、はっとしたように、顔を上げると、僕を真っ直ぐに見つめた。
彼でもこんな風に我を忘れることがあるんだな……。
などど、僕は急に呑気なことを思いながら、彼と顔を合わせたまま、その場でぼんやりと彼を見つめてい
た。 「……済まなかった。俺は一人で先に部屋に戻るよ。
アカリ、本当に申し訳ないんだけど、
俺よりも少し後で、部屋に帰って来るようにしてくれるかな? その……本当にごめん、待ってるから」
つい先程までの行為を思い返した所為か、彼は顔を真っ赤にしながら、僕にそう告げた。
「……あ、うん、解った。僕は後から行くようにするよ」
その言葉に合わせるように、僕は、彼に返事を返しながら、乱れた制服の襟元を直す。
彼は、僕が制服の乱れを直し終えたのを見ると、ほっとしたように、ため息をつき、申し訳なさそうな表情
で僕の額へと軽くキスをした。
それから、彼は先程、この部屋に来た時に脱いでから、反対側の椅子に掛けたままにしていた、制服の
ブレザーを手にすると、ふわりとそれを羽織りながら、そのまま自習室を出ていった。 自習室を後にしていく彼の後ろ姿を見送り、部屋の扉を再び閉めた後で、この部屋に一人きりになった
僕は、ようやく、少しあたふたしていた気持ちから解放された所為か、無意識のうちに大きなため息をつい
ていた。
その時僕は、はたと気付いた。
僕と彼は、今、二人で、寮の同じ部屋で、過ごしている訳で……
その部屋で僕を待っているって、ことはその、えっと……その……
……これから僕は一体、どんな表情をして、あの部屋に帰れば良いっていうんだぁ!!
嬉しいような、泣きたいような、複雑な気持ちになりながら、僕は再び大きなため息をついた。 ―― 一方、それから遅れること数分後の寮棟内では ――
彼―ミカエル・レアン・ダイ・クと僕―海堂 朱里の部屋の前で、プラチナシルバーの髪とアイスブルーの
瞳の少年―ヴィットーレ・ディ・イエッリが僕等の帰りを待っていた。
ヴィットーレは、廊下の向こう側から唯一人で帰ってきた、彼の護衛対象でもある、主 ― ミカエルの姿
を目に留めると、彼の表情から何かに気付いたように、微笑んだ。
それから、ミカエルの方へと歩いていき、互いがすれ違うようになったその瞬間、その相手に向かって軽く
声をかける。 「ミカ、一度だけだ、一度だけは、見逃してやるよ」
「煩いよ、君は」
二人は、すれ違い様に互いの拳で軽く肩を小突き合うとそのまま反対の方向へと歩いていった。
結局、僕はその後で、そのまま自習室へと迎えに来たヴィットーレに連れられて、寮の自室へと戻った
が、その間、二人の間でそんなやり取りがあったということは、もちろん全く知らなかった。
そして―寮の自室に戻ったその日の晩に、僕とミカエルの間でどんな約束が交わされたのかは、ここでは
秘密にしておきたいと思う。
【END】 ぎりぎりのところを狙ったはずなのに、なんだか詰めが甘い気が……
>>80
ヴィットーレを気に入ってくださってありがとう! 感謝です! >>89
おぉ! 3作目の投下乙です!
護衛対象の御方が意外と積極的で、しかも攻めとは……
こちらのカプの今後も楽しみだなw 某長編演劇少女漫画の主人公2人の性別を変えて書いてみました。
いや、そのほかの設定も若干、変えてます。
そういうものでも大丈夫って方は、よろしかったら、どうぞー 彼にだけは……どうしても負けたくない。
僕は前の鏡に写る自らの姿を見ながら思った。
彼と、そのたった一つの役柄を巡り、互いに切磋琢磨するようになってから、もう、何年経っただ
ろうか。
その舞台は、ようやく試演にこぎつけてはいたが、正式公演に向けたキャストはまだ決定されて
はいない。
僕等は、今、その役柄を巡り、本当に最後のたたかいを繰り広げている最中なのだ。 「本当に……小さい頃からの夢だったんだ……絶対に諦めたくないんだ」
僕は鏡の中に写る自らの姿に語りかけつるように、小さな声でそう言った。
その僕の姿は、今、僕の目には、ぼんやりとしか映っていない。
ここは、ある劇団の稽古場の一角だ。
僕は、この前の稽古の際に、うかつにも転んでしまい、照明機材に頭を強打するような怪我をし
た為に、一度、検査入院をしたのだ。そして、その頃から、少ずつ眼を悪くしていた。
今となっては、こんなに目の前の自らの姿でさえ、良くは見えていない。
「それでも、諦めることなんかできない」
僕は、誰もいないこのスタジオで、自らに言い聞かせるようにそう呟いてから、その役の振り付け
を演じ始める。
既に数えきれない程の練習を積み重ねてきた、その役柄にあわせた舞いをただひたすらに、無
心で踊り続ける。
今の僕に出来ることは、ただ、それだけしかないからだ。 僕は、誰もが知る名女優と映画監督の一人息子として、生まれた。
母親譲りの明るい色の髪と、どちらかと言えば、中性的なこの容姿の所為もあって、演劇の世
界では、王子様と呼ばれる程度には、持て囃されてきた。
だがそれも―周りの期待に応える為に、僕が人一倍の稽古を重ねてきた、この成果があっての
ことなのだ。
そのことは、僕自身が一番良く理解している。
そして―父と母も仕事で忙しく、結局、僕は、たった一人だというあの孤独な感情に押しつぶさ
れそうになった時でも、演劇だけが、演劇に打ち込むことだけが、僕の唯一の救いになってきた
のだ。
だからこそ―
僕は、小さい頃から憧れ続けたその役を、真の表現者でなければ、演じる事ができないと言わ
れてきたその役を、どうしても、自らの手で演じたかった。
その役を演じることを熱望し、もう、ずっと―努力を積み重ねてきたのだから。 僕は、そんな風に思いながら、演技に無心になれくなっていた自分に嫌気がさして、ふと舞うこと
を止めた。
僕がこんな風に思い悩んでいるこの瞬間にも、彼は―もう、この役柄の真意を掴み、いつものよ
うに、まるで、その役柄の魂が乗り移ったかのような、迫真の演技を掴みかけているのだろうか。
彼は、僕自身が努力と修練で身につけてきた、美しい型を基本とする演技などではなく、そう、
天性の―人を惹きつける演技というものを彼は無意識のうちに、知り得ているかのように、僕には映る。
彼の平凡な容姿と、役柄を表現するための技術力が未だ伴わないことから、彼のことを三流
役者などと嘲笑っている人々もいた。
だが、僕は、彼のその迫真の演技こそが、真の演劇者に至る過程の中で、どれ程に難しいこと
であるか、演技者としての本能で、理解しているつもりだ。
恐らく、ライバルという意味でなら、僕は、彼と彼の演技をこの世界で、一番愛しているだろう。
彼に対する僕のこの感情は……ただ、それだけのものだと思いたかったのかもしれない。 「アユムさん、そろそろお帰りになりませんと、奥さまが心配されますよ」
その稽古場のドアが開く音と、僕を迎えにきた執事の声に、僕は、自分自身が直面する現実
へとふいに引き戻される。
「ああ、わかったよ。支度をしてから戻るから、もう少しだけ、控室で待っていてもらえるかな」
「かしこまりました」
自分の眼があまり見えていないことなど、あまり気にもかけていないという様子を保ちながら、僕
が執事へとそう声をかけると、執事の方も慣れたもので、僕の気持ちを慮って、そつの無い返事
だけを返してくれる。
執事の後ろ姿を見送った僕は、もう既に頭に叩き込んである『稽古場から控室までの道のりを
眼が見えている人々と変らぬ様子で帰るという演技』に集中するために、小さく息を吸い込むよ
うにしてから、呼吸を整える。
「北島真矢……僕は、君には、君にだけは、負けられないんだ」
僕は小さな声でそう呟くと、稽古場を後にした。
【了】 最初は、以外といけるんじゃない? と思ったのに、あんまりBLっぽくならなった気が……
お目汚し失礼しましたー 面白い試みでの投下乙ですw
原作でも、二人で泊まりこみで演技指導受けたりしてるし、確かになんとか
なりそうな気もするねw これから2レス投下
属性は特にありませんが、ひとりHものです。
うん、でも、表現はぎりぎり全年齢板だと思うんだ。
そんなのでもよろしかったらどうぞ 「……っ、うっ……あぁっ!」
自分でも馬鹿だと思うけど、声が止められない。
あんたとの事を想う度に、こんな風に自分でも止められない程に、おかしくなる。
そして、こんな風に、自らの手を自らの中心へとあてがうことになるのだ。
あんたの事を想う度に、あんたが俺の胸に刻みつけた、あの封印が疼く。
あの封印が切なくて、甘くて、狂おしい程の感情を呼び醒ます。
「……ふ、あぁっ!」
その渦巻くような熱を帯び、沸きあがる感情に堪りかねて、自らの胸元へと手を這わせれば、
あんたに全てを覚え込まされた俺の身体が、それだけで満足する筈もない。
「ん……ああっ!」
結局は、こうして自らで泣く程に、自分の身体を弄ぶことになるのだ。
ただ一人で、こんなことをする破目になるのだ。
解っているのに。 「ん……ふ……っ、あぁ……」
俺が声をあげる度に、余裕で微笑んでいた、あんたを想い出す。
あんたは、こんな風に身を焦がす俺を情けない奴だと微笑うのだろうか。
「…っ、ふ……や、っあ!!」
そうだよ、あんたは
どうして俺を……
どうして俺を一人でおいて逝ったんだ!!
「……っあ、もう……嫌……だ……嫌なんだ……」
それでも、そう思いながらも、俺は泣きながら、
俺が気を失い果てるまで、全てを奪い尽くすように
愛してくれた、あんたを想って、
ただ、一人、その熱にうかされながら、
ただ、一人、その熱に狂わされながら、
自らを絶頂へと、あんたに一番近い場所へと、導くのだ。
−end− BLはファンタジーなんだからねっ!
一人で何をしてるのかなんて、深く考えちゃいけないんだぜw メリーさんVSしがない大学生。
そんなにホモホモしくないですごめんなさい
「わたし、メリーさん」
携帯電話を通話ボタンを押すと、単調な声が響く。マイク越しに聞こえる喧騒からして店にでもいるのだろうか。
「いま、街にいるの」そう一言付け加えると電話は勝手に切られた。
十数分後。
「わたしメリーさん」またかかってきた。今度はカンカンと踏切の音。
何処かで迷子にでもなったか、と心でため息をついた所でまたスピーカー越しに
「いま、家に向かっているの」とだけ聞こえて、電話が切れた。
グツグツと鍋の中身が音を立てる。もう良いくらいかな、と蓋を開け湯気に煽られながらジャガイモの欠片に菜箸を通す。そろそろルーを出してこよう。
「わたしメリーさん」三回目の電話。
「今日はシチューだぞ、とっとと帰って来い」
「今、でっかい犬に吠えられた」若干声が震えている。怖かったのだろう。電話が切れる。
ルーを手で割って鍋に放り込むとぶつぶつと大きな泡が立ってルーがどろどろに溶ける。
かくして野菜と鳥肉の水煮はめでたくホワイトシチューに進化した。めでたしめでたし
布巾で手を拭いていると、後ろで声がする。
「わたしメリーさん」
「おかえり」振り向くと、程よく透けた少年が鍋を覗こうとしていた。
「シチューだって聞いたから走ってきた」肩が上下して、頬が少し赤い。
「いい加減趣味の悪い悪戯はやめて欲しいんですが」
「やだ」
「というか本名を思い出してください」
「思い出してたらここにはいないよ、馬鹿」口の減らない餓鬼だ。
「メリーさん」はたぶん中学生のピチピチの亡霊だ。
悪戯で「わたしメリーさん」を掛けている最中に事故で死んだ…というのは本人談。
その拍子に自分の本名やら家族やら全て忘れてしまったというのだから尚更タチが悪い。
今日もまた死んで暇なのをいい事に、「プチ・自分探しの旅」へ出かけていたらしい。毎日毎日勉強漬けの大学生からすれば羨ましい限りの優遇である。
「で、何か手がかりは有ったのか?」
「・・・むはひからいぬはきはいみたい」勝手にコタツへ入りシチューをほお張りながら「メリー」が答える。というかいつの間にシチューよそいやがった。やっぱり幽霊ってすばしっこいのか。
突っ込み所は山々だったが、早くコタツに入りたいので自分の分のシチューをよそうと早々にキッチンを後にした。
「あ、そうだ」
これあげる、と紙袋がコタツの上に置かれる。何かの景品らしい。
袋を開けると、フェルト地の羊のぬいぐるみが入っていた。
「…ひつじ?」
「ん、メリーさんといえばやっぱ羊じゃん」
「…どうやって取ったんだよ」お前お金持ってないじゃん、と突っ込む。
「んー?ないしょ」にぃっとまだ幼い顔で笑う彼が恐ろしい。そしてゲーセンの人ごめんなさい。
羊の顔をまじまじと見つめる。プラスチックのくりくりとした目が俺を見つめ返す。
「…そっくりじゃん、お前に」
「マジで!?ってかウルトラねーよ」
「お前、人間じゃなくて案外羊の霊かもしれないな。犬嫌いだし」
「いや普通に人間だから…あ、元人間か」
こうして俺とメリーさんの一日は過ぎてゆく。
出来るならもう少しだけ成仏しないで欲しい、と少なからず思う俺がいる。
何だかんだで、メリーさんのいる生活は楽しい。
【END】 メリーさんが本当は乳臭い少年だったらこの世はヘブンだと思って書いてみました。
いかに絡み無しでBLっ気を出すかを試みてみましたが見事な惨敗っぷりです…
お目汚し失礼しました。 水嶋ヒロは比喩の部分などを、村上春樹やリチャード・ブローティガンから
パクったようだが、パクリきれていないという。 エロ絡みじゃないけど、ストーリーの設定的に、『両性具有』要素のあるネタ考えてるんですが、
スレ的には受け入れられるでしょうか? もともと耽美的なものまでカバーするスレだと思うので、OKだと思う
投下を楽しみに待ってるよw 俺も125知りてええええええええええええ
頼むううううううううううううううううう
眠れねええええええええええええええええ >>26のシチュをお借りしてSSを書こう!と思ったら、なんか違うものになったけど投下
少年×青年で、一応、サイキックファンタジー風味
よろしかったらどうぞ 「お帰り」
エントランスのドアを静かに閉めた瞬間、そう声をかけられた少年は、ほんの一瞬、僅かに肩を竦め
て、相手の方へと振り返った。
相手の方へと、振り返った瞬間、短く整えられた少年の淡い空色の髪が真夜中過ぎの暗闇の中で
揺れる。
「うん、ただいま。まだ、起きてたんだ」
少年は彼のことを待っていたプラチナブロンドの青年に向かって、何事も無かったかのように、微笑
んだ。
それから、羽織っていたモッズコートとジャケットを脱ぎ、それを近くのコートハンガーに無造作に引
っ掛けると、両手に嵌めていた黒い革手袋を外して揃えて持ち、軽く俯いてから、小さく息をつい
た。
その間、彼を見ていた青年の方はと言えば、先程、一度、少年に声をかけてからは、一切、声を発
していない。
ただ、静かな表情で、目の前の相手に対して少々きつい印象を与えている、自らの青銀の瞳の
視線の先を、淡い空色の髪の少年の方へと、合わせたきり、そのまま、じっと彼を見つめていた。
「うっ! ……ごめん!! ……えっと、……予定より、その……ちょっと……手こずって」
その気まずい雰囲気に耐えられなくなった少年は、自らの顔を思い切り良く上げ、視線を青年の
方へ向けると、自分の非を認めて早々に謝った。
そんな少年の様子を見て、青年は壁に寄り掛かったまま、軽く溜息をついた。 「……で? 途中まで付けられてた?」
「うん。相手を撒くのにちょっと時間がかかった」
自分が投げかけた質問の答えを聞くと同時に、青年は少年を自らのもとへと引き寄せた。
その弾みで、少年が手に持っていた手袋が彼の手を離れ、小さな音を立てながら、床へと落ちた。
青年はそれに気を留める事なく、目の前の少年が無事であることを確認するように、しなやかな
その少年の身体をそっと抱きしめた。
「……エル、良いけど、あまり心配させるな」
「……ん、ごめん……」
エルにとって、自分とたった三つしか年が違わないのに、目の前の青年は、十五になったばかりの
自分自身と比べると、随分と大人びて見えた。
いつものことではあるのだが、この青年のしっかりと体躯で、こんな風にして抱きしめられると、エル
は、いつも自分自身がどうして良いのか判らなくなる。
彼にこんな風にされると、普段は自分の内に完全に封じ切っている、熱く激しい感情が急に引き出
されるような気がする一方で、とても切ない、痛みを伴うような感覚さえも、一緒になって、エルの心
中をひどくかき乱しながら、覆ってゆくような気がするからだ。
だから、エルは青年自身が自らその腕を振りほどいてくれるまで、いつもその場で、身動きひとつす
ること無く、青年に自らの身体を委ねたままでいることが多かった。
それに、こうして青年に抱きしめられながら、互いの体温を感じている、この時だけは、自分が紛れ
もなく、命ある生命のひとつなのだと実感できているような気がしたからだ。
ただ、それは、この青年が、エルの背中にある、あの証の解放を求めたりしない場合に限られては
いたが。 「ん……シオン、駄目だ! ……嫌だ! ……俺の背中には手を出すなと言った筈だ!!」
シオンと呼ばれたその青年の腕が、一層力強く自分自身の背中へと廻された、そのとき、エルは、
彼の腕の中で、喘ぐようにして、その行為の制止を求めた。
それと同時に、普段の自らの腕力にも、全くもって遠く及ばない、頼りないといった程度の力しか
出せていない分自身の手をシオンの腕へと重ね、彼の行為を止めにかかる。
だが、シオンは、そんなエルの言葉や仕草にも慣れているらしく、その腕の力を緩める様子は無い。
それどころか、エルを抱きしめるその体勢を保持したまま、エルの躯のその場所に、更に力をかけな
がら、エル自身の意識がその一点へと向かうように仕向けていく。
それと同時に、シオンはエルの耳元でいつものように、甘い声で囁く。
「エル、もう、誰も見ていないのだから、大丈夫だ」
「……っ、う……嫌だって、ば……」
この状況になると、今、エルの背中にかかるシオンの腕の力が弱まることは、エル自身がシオンの
意思に従うまで絶対にありえない。
エル自身も、そんなことは、何度も経験しているから、解りきっている。
それなのに、毎回、無駄な抵抗を試みる自分が、こんな隙を見せることなど、本来なら、絶対に無
い筈なのに、唯一、シオンにだけは、幾度かこんな目に遭っていても、尚、全くもって敵わない自分
が、本当に嫌になる。 「……く……うっ、嫌だ……あぁっ!!」
「……エル、本当に嫌?」
耳元で囁かれる、シオンの優しく心地良い声と、自分自身の背中へと、徐々にかかってくる、熱く、
痺れるような、それでいて、身体の芯が疼いてくるような熱量を帯びた感覚が、いつものように、エ
ルの意思と思考力を少しずつ、削ぎ取るようにして、鈍らせていく。
「……うぁ……っあ、や、嫌っ!……っ、あ!」
「エル、もう、それを自分の能力で抑えるな、俺は、今、君のそれが見たい」
こんな風に、シオンからそれを解放することを肯定され、促されたとしても、嫌なものは嫌だ。
だから、エルは、エルなりに、いつも自分が保つところまでは、必死でその言葉への抵抗を試みる。
エルの背中にかかるその掌の力は、普通、世間一般の人々が、感じるものとしては、大きな痛み
を伴うものではないし、彼自身にとっても、肩を壊したりする類のものではない。
それでも、彼自身の身体が、世間一般で言うところの人間と大きく異なるものであるという、あの
証が、シオンの力の所為で抑え込めなくなる。だから、嫌なのだ。
「あっ……もう……嫌だ……や、あぁあっ!!」 自分の背中が、徐々に熱を帯びていくその激しい感覚に耐えかね、エルがシオンの力に抗うこと
を止めた瞬間、それは彼の背中に現れた。
彼の背中へと現れたそれは、虹色の透き通った輝きを持つ4枚の大きな羽根だ。
それは、彼が身につけている衣服などを損なうことなく、その背中に唐突に出現していた。
恐らく、エルが自身の能力を併せることによって、他には影響が及ぶ無事の無いようにとの配慮
をしたのだろう。
そして、その光輝く羽根が背中に在るというだけで、元から端正な姿をしているエルは、傍から見
ている者には、彼自身が現実の世界には存在しない神々しい次元からからやってきた、精霊や
妖精といった類の存在のようにさえ、思わせた。
だが、エル自身は、自分がそういった類の者ではないことを、自覚している。
そう、自分は、この世の金持ちの気まぐれと、その莫大な資金と、遺伝子科学などの最先端技術
の全てを注ぎ込まれた結果として生まれた、人工生命体なのだということを。
それ故に、この容姿と、その羽根を背中に封じ、なおかつ、普通の人間には成しえない奇跡を成
す力 ー そう、俗にサイキックといわれる能力 ― を持ち合せているのだから。
同じ能力持ちの彼、シオンに自らの本来の姿を晒すという、ただ、それだけのことなのに、それで
も、自分が人工生命体であることを改めて実感することになる。 「っ、あぁ……」
「相変わらず、美しいな」
シオンはエルを抱きしめたまま、背中に現れたその羽根に目を遣りながら、そう言った。
シオンが幾度となく、エルのこの在りのままの姿が好きだと言ってくれていても、正直、エルにとって、
この姿の自分自身の存在自体が受け入れ難い。
だから、嫌なのだ。
エルにとって、これを改めて認識することは、未だに、この上ない嫌悪感に満ちたものだ。
それに、これを自分の意思から外れたところで、シオンに引き出されるのは、毎回、無駄に抗う所為
からか、自らの身体に大きく負荷がかかる。
また、直後にほんの少しの間ではあるが、自分自身の身体がとても気だるくて、普段のようには動く
ことなど出来はしない状態に陥るということが、エルがこれに嫌悪感を抱く状況に更に拍車をかけた。
シオンは、エルのそんな気持ちを知ってはいたが、それでも、今となっては、自分だけが良く知ってい
るこの少年の在りのままの姿をただ、純粋に見たいと、そう思ったから、無理を承知で、その背中へ
と自分の能力の一遍を充てた。
そうでもしない限り、エルは、滅多なことでは、この美しい羽根を纏った姿を見せてくれはしない。
今回は少々無理矢理が過ぎただろうかと、幾分反省をしながら、自分の腕の中で、未だに少し震
えるようにして、身体を預けたままでいるエルの体調を気遣いながら、シオンは声をかけた。 「……エル? 済まなかった。まあ、何とか大丈夫そうかな……
羽根が出現していても、君の能力は、まだコントロール出来ているみたいだね」
「……この鬼っ!! アンタには、これが無いから……だから解んないんだよ!!」
エルは、シオンの腕に支えられ、抱きしめられたその状態のまま、相手に向かって、少し投げやりな
気持ちになりながら、そう言った。
彼と同じように、遺伝子科学の粋を集めて生み出された身の上であることには、代わりは無いのに、
シオンの背中には、羽根が無かった。
それとあわせて、シオンがその身に兼ね備えている特殊能力の方が、自らの能力よりも秀でている
という現実が、エルの心の深い処に在る傷を抉る。
そう、自分は、どちらかといえば、裕福な身の上の人間の観賞用として役割も果たすようにと、創ら
れた存在なのだということを改めて思い知らされる気がするのだ。
その上で更に、自分自身が、所詮、権力者達の気まぐれによって生み出された存在なのだというこ
とを改めて、突き付けられている気さえする。
そんなことも全て解っている癖に、エルが嫌がるその背中の羽根を度々見たがるこの青年の気持ち
など、エルには、全くもって理解できなかった。
だから、いつもは絶対の信頼を寄せている存在だとしても、今、この瞬間は、この青年の傍から、と
にかく離れたかった。 「シオン、もういいから、手を放せ」
「まだそんなこと言える状況にはないだろう、無理はするな」
エルはそう言って、シオンの腕を振りほどこうとしたが、やはりまだ足元がおぼつかない為に、すぐに
よろけそうになった。
その様子を見かねたように、シオンは再び自らの片腕でエルをしっかりと支えると、それ同時に、空
いている方の手をエルの羽根の根元辺りへと添える。
「……っ、うぁ!! ……触るなっ!!」
「何で?」
「……何で、って……真顔で聞くな! 馬鹿!」
エルの身体のその場所は、唯でさえ、まだじんわりとした熱く疼くような感覚を残し続けていた。
だからこそ、今、シオンには、絶対にそこに触れて欲しくなかった。
相手に今、ほんの少し、触れられただけで、こうなのだから、もう暫くの間とはいえ、このままこうして、
シオンに身体を預けていなければならないのかと思うと、エルはそれだけで気が遠くなりそうな気持ち
になった。 「……っ、ぁ! ……触るなって、言ってるだろ!!」
そんなエルの言葉を耳にしても、シオンは感覚が鋭敏すぎるままになっている彼の身体を抱きしめ
ることを止めなかった。
ただ、いつものようにエルの身体をしっかりと受け止めるようにして、彼の心と身体に拡がっている
熱を帯びた感覚が落ち着いていくのを静かに待っていた。
それでも、今日は何故か、エルの身体に籠る熱が引いていく様子は一向に無かった。
むしろ、こうしてシオンに抱きしめられていればいる程、エルの身体の熱は、昂っていくような気がし
た。
自らの身体の傍に、相手の身体の熱を感じている状況に在るというだけなのに、自らの身体が受
けるこの感覚が生み出し、もたらしていく、痺れるような熱量の力から受ける影響の方が大きい。
それは、背中だけではなく、全身に熱く、疼くような感覚として、拡がったまま、和らいていく気配は
一向に無かった。
それどころか、その熱さは、エル自身に、再び自らの身体の芯へと向かってゆく、痺れと熱量を増
していくような感覚さえ起こさせた。 「……シオン……もう、いいから……俺……このまま、アンタと居ても、落ち着かないから……」
「エル、俺の前では、もう、そんな風に振舞わなくて良いから」
「……えっ、何……」
エルが少し顔を上げた瞬間、シオンは、エルの唇を塞ぐようにして軽く口付けた。
エルがそれに驚いて口を開けた瞬間、シオンは、その柔らかな唇を割って、更にほんの少しだけ
深く口付けるようにしてから、それを止めた。
「……っ、どうして……!!」
唇を解放されたエルは、今、この状況で、自らが持て余す程の熱を既に帯びている自分自身の
身体に対し、その感覚を更に強くするような口付けを相手から施されたことに、ただ、驚いていた。
今までにも、身体の芯が熱く融けていくようなこの感覚の中で、まるで何かに焦れているかのよう
な自分の姿を、今、目の前にいる相手に情けなく晒すことになったことは、確かにあった。
それでも、彼は、シオンが、エルにこんなことをしたことは、今までに一度も無かった。
彼は、今までずっと、エルの気持ちと身体の状況を推し量るように、待っていてくれただけなのだ。
互いが、互いにとって、ただ、それまでの関係でしか無い筈なのに。 エルは熱を帯びた感覚を引きずっている所為で潤んでいる瞳で、自らの気持ちを諮りかねている
のだとでも言いたげな表情のまま、シオンを見つめていた。
そのエルの視線に応じるように、シオンは自らの眼差しを再びエルの方へと向けた。
それから、ほんの少しの間を置いて、シオンは小さな声で呟くように、その言葉を告げた。
「君が好きだから」
「……なに言って……」
相手から突然告げられた言葉に対して、エルは、ただ、相手を見つめることしか出来なかった。
嘘だ。だって、いつだって、俺の方が、一方的にアンタに身体を預けているだけで。
ただ、それだけの関係なのに、アンタが俺を好きだなんて、そんなの、絶対にあり得ないだろう。
エルのそんな戸惑いを乗せた想いは、言葉にさえならかった。
その様子を黙って見ていたシオンは、エルのしなやかな線を描く身体を再び引き寄せるようにして、
彼を抱きしめる腕に力を入れ直してから、強い意志の宿る真摯な眼差しを改めてエルへと向けた。 「もう一度、言おうか?」
「……もう、いい……」
エルは、シオンに対して、それ以上の言葉を掛けることなく、シオンの肩越しに自らの腕を絡め、相
手の身体を抱き返した。
それが、今のこの自分が抱えている感情に最も近しく、それを素直に表した行為だと思ったからだ。
今は、ただ、目の前の相手の身体から感じるこの体温だけが、エルが欲する全てだった。
そして、それは、自らが此処に存在する唯一の証のように思えた。
その気持ちを察したように、シオンは自らの腕の中に留まっている、エルの身体を強く抱きしめ直す
と、その唇へと再び口付けた。
それが、今、相手に示すことができ唯ひとつの証だから。
【END】 久々に書いたらなんか色々難しかったよ!
お目汚し失礼しました 投下乙です
二人の距離感が良いですねー
楽しませていただきましたw >>127の続きを投下
青年×少年で、サイキックファンタジー風味
今回分だけでも一応、読めるようになっているはず…
よろしかったらどうぞ 窓から見える空が青い。
こんなに、雲ひとつ無く晴れ渡った日の朝だというのに、青年の隣で眠る淡い空色の柔らかな髪と
端正な顔立ちをした、その少年が目を覚ます気配は、一向に無かった。
そもそも、昨晩、少年が帰って来た時刻が真夜中過ぎではあったので、まあ、これはこれで、仕方な
いか、などと思いながら、流れるようなプラチナブロンドと青銀の瞳の精悍な顔立ちをした青年は、
今日、何度目かの溜息をついた。
そうして、今、このベッドの上で、少し背中を丸めるような姿勢になりながら、相変わらず、穏やかな
顔つきで眠り続けている少年の方へと改めて目を遣った。
これまで、この少年と付き合ってきた経験から察するに、少年は、今、このまま彼が起きれば、その
瞬間、ひどく不機嫌な表情をすること、この上ない格好で眠っている。 少年が、今、身に着けているのは、そもそも穿いていた少し細身のカーゴパンツと、申し訳程度にかかるブランケットのみだ。
この年頃の少年としては、見た目にもバランスがとれた柔らかな筋肉を兼ね備え、滑らかな線を描く
彫像のような美しさを見せているその上半身には、何も身につけてはいない。
まあ、それは、昨晩、少年自身が、上半身に何か着たまま寝るのは、鬱陶しいので、脱がせてくれと
言った所為なのだが。
更に、若干背中を丸めたような姿勢のままで眠っている、少年の背中には、彼が普通の人間と異な
る者であるということの最大の証となっている、四枚の透明な羽根が出現していた。
今、少年は、今、本来であれば、彼が滅多に見せることのない、生来の姿のままで、眠りに落ちてい
たのだ。
朝の陽射しを受け、様々な色合いで淡い光を反射している透明な羽根を身に纏ったその少年の姿
は、昨日の真夜中に見ていた時よりも、より一層、その姿が何か現実離れした存在のようにも思え
た。
また、それは、少年本人にとっては、少年自身が自分の存在を酷く否定しがちな要因をともなって
いたが、他人から観賞されるという趣向を踏まえて創られた、人工生命体としての彼の端正な容姿
もあって、この殺風景で、決して広ない部屋では、彼の存在が相当場違なものにも感じられる。 「まあ、このままだと、昨日、何かあったのかと疑いたくなる光景にはあるかな……」
青年は、ベッドに片肘をつき、自らの上半身を少し起こしたその姿勢のまま、溜息をつきながら、小
さな声で独りごとを言った。
それでも、少年の方は、先程から、同じベッドの上で背中を丸めるようにして、眠り続けたまま、起き
る気配など全く無い。
「……にしても……本当に相当、疲れてたのかね? 無防備もいいところだと思うぞ、エル」
エルと呼んだその少年の反応が無いことを承知の上で、青年は小声のまま、続けてそう声をかけた。
そうなのだ、エルがいつもは自身の能力をもって封じている羽根を晒した本来の姿のままで、こんなに
も無防備な状態でいることは、極めて珍しい。いや、むしろここまでの状況は無かったといっていい。
エルが自らの意思で背中の羽根を彼に見せてくれたのは、二人が研究所を出ることになったあの時
だけだったし、その後は、その場の状況に応じて仕方なく、というものばかりだった。
そういった時でさえ、羽根を封印しても差し支えない状況に戻れば、即座にそれを封じていたというの
に。