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マルチジャンルバトルロワイアルpart20
0001創る名無しに見る名無し
垢版 |
2010/08/19(木) 21:27:59ID:Xaw0wCT2
様々な作品のキャラを使った上での、小説及び映画で有名なバトルロワイアルの企画を行おうというスレです。
小説・漫画・アニメのキャラが入り乱れていることから、マルチロワという名前になりました。
略して○ロワ。別に見るのに●はいりません。
この企画はリレーSS企画であり、ルールさえ守っていただければ、どなたでも参加可能です。
ルールの項に目を通していただき、分からないことがあれば気軽に本スレで聞いてみてください。
キャラ同士による殺し合いという内容のため、苦手な方は気分を害する恐れがあります。
読み進める際にご注意を、また自己責任でお願いします。

【過去スレ】
いろんなジャンルの作品キャラでバトルロワイアル
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1220604468/
マルチジャンルバトルロワイアル part2
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1221055898/
マルチジャンルバトルロワイアル part3
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1221229891/
マルチジャンルバトルロワイアル part4
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1221405474/
マルチジャンルバトルロワイアルpsrt5
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1221749250/
マルチジャンルバトルロワイアルpart6
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1221924153/
マルチジャンルバトルロワイアルpart7(実質8)
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1227019873/
マルチジャンルバトルロワイアルpart8(実質9)
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1230130775/
マルチジャンルバトルロワイアルpart10
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1232931721/
マルチジャンルバトルロワイアルpart11
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1235147692/
マルチジャンルバトルロワイアルpart12
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1235724325/
マルチジャンルバトルロワイアルpart13
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1237380564/
マルチジャンルバトルロワイアルpart14
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1241420923/
マルチジャンルバトルロワイアルpart15
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1243945342/
マルチジャンルバトルロワイアルpart16
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1247322362/
マルチジャンルバトルロワイアルpart17
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1249651246/
マルチジャンルバトルロワイアルpart18
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1254322108/
マルチジャンルバトルロワイアルpart19
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1259755793/
マルチジャンルバトルロワイアルpart20
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1268938717/301-400

【したらば】
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/11860/
【wiki】
http://www26.atwiki.jp/marurowa
【予約について】
 ・通常5日。延長は2日まで。(合計7日まで)
 ・したらばの予約スレで予約してください
【全キャラクター共通・スタート時の持ち物】
  地図、コンパス、懐中電灯、筆記用具、水と食料、名簿、時計、ランダム支給品1〜3
【MAP】
  (p)ttp://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7e/70/405fccc08ebbff8b539e6e47e7acf801.png
   上が北、一マス一km四方、端はループしています。(例:A-1から北へ行けばH-1に出る)
0329哀愛逢ドリーマーズ  ◆GOn9rNo1ts
垢版 |
2012/12/13(木) 22:05:31.14ID:Y/IKIxWI
井波にとっての終わりの始まりといっても差支えのない殺戮を前にして、新庄は

……逃げないよ。

目を、逸らさない。
血も、死体も、ここから連鎖する運命も、彼女の意思は止められない。
獏の見せる過去に対して『今』の彼女に出来ることは、少しでもゼロのことを知るだけだと知っているから。
今一番の脅威となる彼の能力を、癖を、性格を、見極めることでしか死んでいった者たちへの供養にならないと分かっているから。
この惨状に対し、湧き上がる感情は

……どうして?

「……ナナリー」

理由は分かる。
サカキが指摘した通り、大切な人間――ナナリー・ランペルージが死亡したからだ。
主催に対抗する道から優勝へとスタンスを移行したのは、復讐のためだろうか。
ナナリーを殺した人間に対する復讐。
ナナリーを助けられなかった人間に対する復讐。

……どうして?

しかし、例え優勝しても主催者であるギラーミンが願いをかなえる可能性はほとんどない。
新庄でも考え付くその発想を、先ほどまで一癖もある二癖もある男たちと情報戦を行っていた聡明な男が得ていないはずがない。
それでも、ナナリーを生き返らせるという蜘蛛の糸を手繰り寄せるような奇跡を願うのは

「すまない。私の……いや、俺のせいで」

……愛していたんだね。

彼女のいない世界など、ゼロにとってはどうでもいいのだろう。
馬鹿なことを、と新庄は思わない。
人は愛する者のために、大切な人のために、なんだってする。
それが意味のないことだと分かっていても。
それがどれだけ犠牲を強いることだと分かっていても。

……こういうのは、理屈じゃないんだ。

世界の破滅を救おうとする『全竜交渉部隊』と戦ってきた異世界の住人の中には
世界よりもただ一人の愛すべき人を殺した者への復讐を果たすことを優先している人間もいたのだ。
死はそれだけ心を黒く染め上げ、意思を雁字搦めに縛り付ける概念だ。
それが理由もなく唐突に起こったものであればなおさらのこと。
だからこそ、死んだ人間を生き返らせるという禁断の果実はゼロのような男でさえも魅了する。

……それでも、君は間違ってる。

愛する人のために、血を浴びるのは間違っている。
全てを道連れに、破滅の道を進んでいくのは間違っている。
新庄運切は悪役の正逆として、正しくない間違いを認めない。
新庄運切は間接的に井波を殺された者としても、復讐を認めない。

「だけど待っていてくれ。俺が必ずナナリーを救う……だから――」

……だからボクたちは君を止めるよ、ゼロ。
0330哀愛逢ドリーマーズ  ◆GOn9rNo1ts
垢版 |
2012/12/13(木) 22:06:15.52ID:Y/IKIxWI
◇ ◇ ◇



浮上する。夢から覚める感覚が全身を支配する。
クリアになった視界の中心に、佐山の顔があった。
意識を失う直前に前のめりになっていたので、いつの間にか距離が縮まっていたのだろう。
さもすれば互いの息さえも感じあえる位置で、佐山はおもむろに口を開き手を大きく横に広げ

「中々大胆だね、新庄君」
「……何処も触ってない?おっぱいとかお尻とかもっとすごいところとか」
「どうやら君の中の私像を上方修正する必要がありそうだ」
「今ので更にちょっとボクの中で君が低くなりつつあるよ……」

はあ、と溜息をつきかけて、新庄は表情を引き締める。
今なら獏の見せた夢について語り合うことで先ほどの問いを誤魔化せるのではないか。
そういった気弱な考えは、無しだ。

「佐山君、質問良いかな」
「いいとも」

切り込むことに少し胸の鼓動が早くなる。それでも言葉は止まらない。
今しかできない、今だからこそ話せることだ。先延ばしにすることは、出来ない。
すう、と小さく息を吸う。外からの隙間風は止まない。肺が冷たい空気に満たされる。
吐いた。


「小鳥遊君を二階に置いてきたのは、なんで?」


「彼にはまだ心の整理が必要だ。そして二階にいれば仮に戦闘になったとしても流れ弾にやられる心配は少ない」

予定された台本を読み上げるようにさらりと紡がれた佐山の一言に、新庄は

「それは本当のことだろうけど真実じゃないよ、佐山君」

眉尻を下げ、困ったような笑みを見せた。

「ほう、どうしてそう思うのかね、新庄君」
「佐山君の言ってることは合理的だし、正しいと思う。でもいつもの佐山君ならこう言うと思うんだ。
『泣き寝入りをしている男の尻を蹴っ飛ばし、私たちの側に連れてくる』ってね」
「ほほう、それはまたエキセントリックな思考形態を持った人間だね、常識人たる私には想像もつかないよ」
0334哀愛逢ドリーマーズ  ◆GOn9rNo1ts
垢版 |
2012/12/13(木) 22:08:40.30ID:Y/IKIxWI
「佐山君」

佐山の左胸を新庄は見た。
狭心症。佐山の持つ持病に対して思いを馳せて。
本当は誤魔化すべきなのかもしれない。
見て見ぬふりをするべきなのかもしれない。
佐山ならば上手く事を運び、もっと良い解決法を出すのかもしれない。

「君は厳しいし頭おかしいことよくするし僕には理解できないことも多いけど」

だけど。
それでも自分には。
誠実に、真っ直ぐに、真剣に。

「大切な人を失う苦しみを、誰よりも知ってるはずだよ」

彼と向き合うことしか出来ない。

「井波さんと小鳥遊君がどういう関係だったのか、僕にはよく分からない」

表面上の話はいくつも井波から聞いた。
小さいものが好きとか、井波を虫以下のように扱うとか、愚痴ばかり聞かされていた気もする。
だけど、井波の小鳥遊に対する本当の気持ちを、多分自分は聞けていない。
聞かないまま、終わってしまった。此岸と彼岸に別れてしまった。
多分それは、小鳥遊にとっても、同じことで。
小鳥遊は永遠に、井波の気持ちに応えられない。向き合えない。

「でも、今の小鳥遊君の気持ちを佐山君は痛いほど理解してるはず」

別れの言葉も言えぬまま死んでしまった父。
真意を理解できず死んでしまった母。
佐山御言は両親を亡くし、ふせぎこんでいた時期があった。
それはまさしく、この場においての小鳥遊宗太だ。
覚悟もなく、理由もなく、理不尽に、奪われる。

「だから」

言うべきか迷う。
取り返しのつかないことを口走ろうとしているという自覚が、あった。
だけど、ここまで来て逃げは無しだ。


「だから佐山君は、出来る限りボクと小鳥遊君を会わせたくないんだね」


小鳥遊は井波を亡くし、一方佐山は半身である新庄と再会し、共にある。
残酷なその違いは、軋轢を生み、過ちをも生みかねない。
やり場のない悲しみは直線的な怒りへと変わる。
不条理を憎む心は自制を捻じ曲げ、自らも不条理をよしとする。
かつて両親を亡くした佐山が一人の女と過ったように。
小鳥遊宗太が過ちを犯さないという保証は、どこにもない。
0335哀愛逢ドリーマーズ  ◆GOn9rNo1ts
垢版 |
2012/12/13(木) 22:09:18.30ID:Y/IKIxWI
「ボクのために」

新庄運切はどんな時でも正しく、優しい。
だからこそ、井波を失った小鳥遊にとって、佐山と行動を共にしてきた小鳥遊にとって。
佐山御言の半身である新庄は、佐山御言が追い求めてきた新庄は、毒でしかないのだ。
彼の発する怨嗟の声に対して、彼から染み出す絶望の念に対して。
優しく、正しくあろうとする新庄は。
小鳥遊と同じく、井波という大切な友人を失ったばかりの新庄は。
あまりに無力で、無抵抗な、サンドバックだ。

「そして――小鳥遊君のために」

そして同時に小鳥遊は、新庄を傷つけてしまったという後悔の念を抱くだろう。
衝動的な行動は自己嫌悪を招き、自己嫌悪は更なる鬱屈を生む。
そうした負の悪循環がぐるりぐるりと回り始めると、もう誰にも止められない。
バトルロワイヤルという不安定に過ぎる環境の中で、そういった人間は危険すぎる。

「さっきの喧嘩も小鳥遊君の膿みを出すだけじゃなくて、矛先を佐山君に向けるためだったんじゃないの?
意識がなくなるまで殴りつけたのは、小鳥遊君とボクの両方とも気遣ってくれてたからじゃないの?」

佐山が小鳥遊を挑発しなければ、新庄が自分の消耗も顧みず小鳥遊を助けようとして……二人の間で過ちが起きていたかもしれない。
だからこそ、佐山は自ら憎まれ役を買って出たのだ。
小鳥遊の鬱屈した気持ちを受け止め、殴り合い、昇華するために。
新庄を小鳥遊から遠ざけ、お互いの心の傷を広げないために。
彼は、大切な人を守ることに比べれば自分の心などいくらでも切り刻める。
例え大切な人に――小鳥遊に嫌われようと、憎まれようと、小鳥遊と新庄を両方守るためならばそれを厭わない。

佐山御言は大切な人を想う時に、小心者になれる人間だ。
佐山御言は大切な人を守るために、手段を問わない人間だ。
自惚れだとは思わない。自分が小鳥遊と共に、佐山に大切な人だと扱われているという自覚はある。

そして

「でも」

新庄運切もまた、佐山御言を大切に思っている。

「守られるだけは嫌だよ。背負われるだけは嫌だよ」

いつもの佐山ならばここまで過保護な素振りは見せないし、また勘付かせもしないだろう。
しかし、殺し合いという空間の中で「いつも通り」を貫き通すのは、難しかった。
今この場には、彼を支えてくれる大勢の仲間も、考えをまとめる時間も存在しない。
だから佐山は悪役として己を犠牲にしてでも新庄を、小鳥遊を守ろうとしていると新庄は思う。

「ボクは君を何もかもから守りたい。ボクは君の抱えている重荷を一緒に背負いたい」

それでも、何もかもがいつも通りにいかない世界の中で、新庄は言う。
正逆の存在として。隣に並び立つ者として。
0337哀愛逢ドリーマーズ  ◆GOn9rNo1ts
垢版 |
2012/12/13(木) 22:09:54.26ID:Y/IKIxWI
「もっとボクと、一緒にあろうとしなきゃ、嫌だよ」

いつも通りで、ありたいと。

「佐山君」

あらゆる動きを止めた佐山をこちらから抱きしめる。
触れる衣服や肌を冷たいと思い、更に強く抱く。
少しでも温めてあげたい。少しでも近づいてあげたい。
ドクンドクンと、心臓の鼓動が聞こえる。
刻むテンポが早くなるのはお互い様だ。

「佐山君、さっき言ったよね。『私にだけは嘘はつかないでほしい』って」

井波の死を、新庄は佐山の腕の中で悼んだ。
泣き、叫び、悲しみを吐き出した。
佐山に同じことをしてほしいとは思わない。

「ボクも、佐山君の心に、嘘をついてほしくない」

だけど、彼にだってあるだろう心に秘めた何もかもを、聞いてあげたい。
感情を律し理性によってあらゆる事に臨む佐山を。
今だけでも、少しだけでも、解き放ってあげたい。

良いんだ。

「今だけは、さらけ出しても良いんだ」

それが新庄運切の、正しくあるべき者の、やりかただ。

「…………私は」

佐山はいつもの饒舌ではなく、噛みしめるように言葉を選ぶ。

「私は、小鳥遊君と井波君のことを、哀しく思う」

ヴァッシュやゾロに見せていた自信は本物だった。
だけど、自信があるからと言って哀しみが消えることはない。後悔は消えることがない。
分かっていた。
過ぎたことを過ぎたことと割り切れるような人間は、両親の死を何時までも引きずってはいない。
救えたかもしれない人間を目の前で失ったということを、彼は決して忘れない。

「しかし、それと同時に……私は君と再会できて嬉しいとも思っている」

半分以下になってしまった参加者たち。
恐るべき戦闘能力を持つ、殺し合いに乗った者たち。
そんな状況の中、半身である新庄と再会できたということを嬉しいと感じないわけがない。
0339哀愛逢ドリーマーズ  ◆GOn9rNo1ts
垢版 |
2012/12/13(木) 22:10:53.30ID:Y/IKIxWI
「私は哀しくて、愛しい」

大切な人を失った小鳥遊宗太を哀れに思う心と。
大切な人である新庄運切を愛しく思う気持ちと。
相反する二つの感情は決して溶け合うことはない。

「小鳥遊君は私の大切な友人だ。新庄君は私の大切な人だ」

「このままでは、私はどちらかを」

少し、迷い
新庄の、真っ直ぐな瞳を見て

「新庄君を選び、小鳥遊君をさらに傷つけてしまうかもしれない」

新庄運切という愛する人の前だからこそ、出来ること。
二人しかいない世界で、抱え込んだ弱さを吐き出していく。

新庄は腕を上に伸ばし、佐山の頭をなでる。
何かあると佐山が自分によくしてくれることだ。
新庄運切は何時だって弱虫で、泣き虫で。
今だって、井波の死を乗り越えることなど出来そうにない。

それでも

「確かにボクは、弱いかもしれない」

目は、逸らさない。

「小鳥遊君に酷いことを言われたら、きっとボクはとても傷付く」

だけどね、と

「ボクは、佐山君が傷つくところを何もせず見ているだけの方が、もっと傷付くよ」

続く言葉は、少し震えていて

「二人で一緒に、傷付こうよ」

視界が歪む。目元が熱い。
いけない。
どうして自分はまた涙が出そうになっているのか。
今は自分が佐山を支えてあげなければいけないのに。

「ご、ごめんね、ボクまた泣きそうに」

「ありがとう、新庄君」

おかげで、吹っ切れた。

口には出さない。出さずとも分かり合えるのが今宵一番の有り方だ。
佐山の腕が新庄の背中に回され、抱きしめられる。
お互いに抱き合う形になったことで二人の距離はますます近くなる。
0342哀愛逢ドリーマーズ  ◆GOn9rNo1ts
垢版 |
2012/12/13(木) 22:11:58.05ID:Y/IKIxWI
佐山は、今更に赤くなっていく新庄の顔を美しいと感じ。

「私は、君と共に傷つく道を歩もう」

佐山は、強く押し付けてくる新庄の肢体の温かさを心地いいと感じ。

「小鳥遊君のこと、ゼロのこと、他のなにもかもすべて」

佐山は、分かり切っていたことを再確認する。


「私は君と、共にありたい」


佐山御言は、新庄運切の全てを、愛していると。


「ホントに?」
「ああ」
「ホントにホントに?」
「誓うとも」

じゃあ、一緒に誓おうか。

「「Tes.」」

Tes.テスタメント。我ら、誓約せり。
佐山と新庄の世界における、誓いの言葉。


「――ずっと一緒だよ、佐山君」


「――そうでなければ嫌だよ、新庄君」


熱を持った、身体のせいか。

隙間からずっと吹いていた荒風が、さっきよりも少しだけ温かく感じた。
0345哀愛逢ドリーマーズ  ◆GOn9rNo1ts
垢版 |
2012/12/13(木) 22:13:46.93ID:Y/IKIxWI
◇ ◇ ◇



「……ん?」

新庄は少し、違和感を感じた。
こちらの背中を抱いている佐山の腕が、少しずつ、少しずつ、位置を変えてきているような。

「佐山君?」

何も答えない佐山の代わりに、彼の腕が片方は新庄の尻に、もう片方が回り込み新庄の胸に触れた。
最初は軽く、触れるか触れないかのちょっとした接触を繰り返し。

「…………佐山君?」

ゆっくりとした手つきで軽く掌を押し込み、変形する新庄の局部の柔らかさを確かめる。
二度三度と、少しずつ力を込めていき、その行為が「揉む」という域に達してから

「実にまロい……!」

新庄は佐山の治りかけている右手を爪を立てて強く握りしめることで、変態に対する返答とした。

「佐山君」
「ききききみは風見のようなバイオレンスガールではなかかかかかったはずだががががが」

悲鳴のような声を上げる佐山を、新庄は冷ややかな視線で射抜きながら

「今は、駄目だよ」
「ほう、君と私の睦まじきパーフェクトコミュニケーションを阻むものがどこにあると」
「ゾロさんと早く合流しないと嫌な予感もするし古城の仕掛けは全く調べてないし小鳥遊君もそろそろ起こしてあげないとだし」

佐山はふむ、と数秒間顎に手を当てて

「何も問題はないな」
「佐山君今、頭じゃないところ使って考えたでしょ」
「ははは、新庄君は私の下半身に興味がおありかねねねねね!」

再度強く握り込め、悲鳴を上げさせ、黙らせる。
あっ、この方法意外と便利かも。いつもみたいにネクタイ絞めなくても良いし。

「…………お預けかね」

本気で残念そうな無表情をする佐山を見て、溜息ひとつ。

「…………しょうがないなあ」
0348哀愛逢ドリーマーズ  ◆GOn9rNo1ts
垢版 |
2012/12/13(木) 22:15:09.23ID:Y/IKIxWI
新庄は目を逸らし、少し頬を上気させながら

「佐山君、跪いて」
「いつの間にそんな女王様的キャラになったのかね」

きゅっと握り、佐山が神妙に黙ったところで

「ボクと同じ高さまで来て」

佐山は新庄よりもずっと背が高い。
だから、佐山は言われたとおりに立膝となり新庄を見下ろさない高さまで下がった。

「目を閉じて」
「君と同じ目線まで来たというのに目を閉じろとは」
「は・や・く」

握られては逆らいようもない。
言われるままに目を閉じる。訪れるのはランタンの光さえ届かない完全なる暗闇。
見えないことにより鋭敏になった感覚がとらえるのは、新庄の大きくなった息遣いと早鐘を打つ心臓の鼓動だ。

「新庄君、緊張しているならば佐山式緊張緩和法を――――」

続く言葉を発しようとする唇を、塞がれる。
あたたかく、やわらかい感触が佐山を包み込んだ。
慣れていないのかたどたどしく行われる行為に対し、佐山は頭の中で一人カーニバルを行いつつ

…………新庄君の方から、というのも良いな。

10秒にも満たない時間で、二人は分かたれる。
目を開けると、顔から湯気が出そうな新庄が微笑みで佐山を迎えてくれた。

「今はここまで、ね?」

恥ずかしがっているのか、新庄はそっぽを向きながら

「ゴタゴタが片付いたら続きをしてあげるから」
「続きをしてもらう、の間違いではないのかね」
「またそんなこといっ―――んむぅ!?」

こちらを見ていない新庄を隙有りと見て、佐山は彼女の顔を両手で瞬間的にホールド。
驚き戸惑っている彼女の顔もまた美しいと思いつつ、強引に唇を奪う。
むーむー唸りながら表す抗議の表情は、あえて無視。なんだろうと一回は一回だ。
新庄が正しく佐山に与えをくれるというのならば。
佐山は悪役として、新庄を奪うことでその返しとする。

……共にあるというのは、そういうことだろう?

たっぷりと一分間以上重なり続け、舐め、絡ませ、吸い上げ、送り……離した。
膝を震わせ息を荒くする新庄に対し、佐山は余裕の表情で

「続きを楽しみにしているよ、新庄君」

「はっ、はっ、はあ……さ、佐山君の変態!エロ猿!宇宙人〜!」
0353哀愛逢ドリーマーズ  ◆GOn9rNo1ts
垢版 |
2012/12/13(木) 22:16:26.99ID:Y/IKIxWI
ぷっくらとほっぺたを膨らませながら、ぼこすかと背中を叩いてくる新庄運切を愛しいと感じるのは

もはや後ろではなく、こちらの隣に並び立とうと歩みを早くする悪役の正逆を頼もしいと感じるのは



――――いつもどおりに、だよ。
0356哀愛逢ドリーマーズ  ◆GOn9rNo1ts
垢版 |
2012/12/13(木) 22:17:44.89ID:Y/IKIxWI
【A-2 居館一階 廊下/1日目 真夜中】
【佐山・御言@終わりのクロニクル】
[状態]:全身打撲、左腕欠損(リヴィオの左腕)、右腕の骨に皹、全て回復中
[装備]:つけかえ手ぶくろ@ドラえもん(残り使用回数2回)、獏@終わりのクロニクル、治療符@終わりのクロニクル
[道具]:基本支給品一式×5(二食分の食事を消費)、S&W M29 6インチ 5/6@BLACK LAGOON、予備弾丸26/32
     空気クレヨン@ドラえもん 、防災用ヘルメット、 ロープ、防火服、 カッターナイフ、黒色火薬入りの袋、
     ミュウツー細胞の注射器@ポケットモンスターSPECIAL、双眼鏡、医薬品多数、ライター、 起源弾@Fate/Zero(残り28発)、
     クチバの伝説の進化の石(炎、雷、水)@ポケットモンスターSPECIAL、 空気ピストル@ドラえもん、
     メリルのハイスタンダード・デリンジャー(2/2)@トライガン・マキシマム 、排撃貝@ONEPIECE、
     デリンジャーの残弾20、 鉄パイプ爆弾×4、治癒符2枚@終わりのクロニクル、ジャバウォックの右腕@ARMS 、伊波の首輪、ハクオロの首輪
[思考・状況]
0:新庄君はやはり素晴らしい。
1:古城の仕掛けを調査する。
2:夢について新庄と話し合う。
3:ゼロへの対処を決める。
4:首輪を解体し、構造と機能を調べる。
5:地下を探索する。



※小鳥遊が女装させられていた過去を知りました。
※会場内に迷宮がある、という推測を立てています。
※地下空間に隠し部屋がある、と推測を立てています。
※リヴィオの腕を結合したことによって体のバランスが崩れています。
 戦闘時の素早い動きに対して不安があるようです。
※地下鉄を利用するのは危険だと考えています。
※○の窪みに関しては、首輪は1つでいいという仮説を立てています。
※ハクオロのデイパックの中身はまだ確認していません。
※水銀燈に関してはヴァッシュと再合流後、検討しようと考えています
※ヴァッシュ達との合流のため、狼煙のルールを決めました。
  1、使用するのは早くても日の出後。
  2、地下の探索が終了し、合流の必要が生じた場合に狼煙を上げる。
  3、1本の煙を確認した場合は早急にE−2駅へ、もしも駅が禁止エリアだった場合は隣のホテルへと向う。
  4、2本の煙を確認した場合はその時の次の放送までに集合場所へと向かう。




【新庄・運切@終りのクロニクル】
[状態]:健康、顔に腫れもの、精神的な疲労、全身にダメージ(小)
[装備]:尊秋多学園の制服、運命のスプーン@ポケットモンスターSPECIAL
[道具]:支給品一式(食料二食消費、水1/5消費)、コンテンダー・カスタム@Fate/Zero
     コンテンダーの弾薬箱(スプリングフィールド弾26/30)
[思考・状況 ]
0:恥ずかしいなあもう。
1:伊波さん、ボク頑張るよ。
2:夢について佐山と話し合いたい。
3:佐山とここから脱出する。
4:ブレンヒルトについてはまだ判断できない。
5:人殺しはしない。


※小鳥遊宗太については、彼の性癖とかは聞いています。家庭環境は聞いていません
※新庄の肉体は5:30〜6:00の間にランダムのタイミングで変化します。
 変化はほぼ一瞬、霧のような物に包まれ、変化を終えます。
 午前では女性から男性へ、午後は男性から女性へ変化します。 現在は女性。
※参戦時期は三巻以降です
※まひるに秘密を話しました。次の変化のときに近くの人に話す必要は…
0357 ◆GOn9rNo1ts
垢版 |
2012/12/13(木) 22:18:19.76ID:Y/IKIxWI
以上で投下を終了いたします
支援してくださった方、ありがとうございました
0359創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/12/13(木) 22:27:14.40ID:gYKafRYn
投下乙です!

うーんエロい(小学生並の感想)
どちらも大事で、どちらも失いたくない。
でも傷つくことからは逃げられない、だから二人で背負おう。
いい話だったのに最後の小学生並のエロ行動で台無しである、うーんこの佐山。
ここも決意が固まって参りましたなあ……
0360創る名無しに見る名無し
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2012/12/13(木) 23:09:52.00ID:RWTBR0oP
投下乙です!

うおお、これはあまりにも佐山、あまりにも新庄君…!
今まで余裕な顔をしつつ進む悪役、佐山の間違いを正せるのはやはり新庄君しかいない
というか、佐山は道を選び取る際悩み迷いつつも決断するんだということと、その間違いを正しく間違わせるのが新庄君だということを、
互いに対であることを改めて実感した。そうだよ、この二人はこんな感じだ…!
そんな凄いシリアスな流れの後にさらりとエロを行う所もこの二人だが、ちょっとマテやおいw

あ、あと誤字報告です
井波→伊波
0361創る名無しに見る名無し
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2012/12/14(金) 04:54:30.92ID:YGPgg+U1
すげえー、まじすげえ
上のほうでも言われてるけどこれなんて終わりのクロニクル
佐山が佐山で新庄くんが新庄くんで、雰囲気とか掛けあいとかいちゃらぶとかオチとかそのものすぎる!
やっぱいいなあ、この二人
一人ひとりもいいんだけど、やっぱりこの二人がいいわ
0362創る名無しに見る名無し
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2012/12/14(金) 23:15:52.04ID:Yq8sE/kI
投下乙!
うおお、なんだこの二人だけの空間は……!
新庄くんの可愛さがやばいね。
獏を使っての上条さんとか詩音とか懐かしいキャラも出てきて、面白かったです。
小鳥遊と伊波の関係と対比すると、佐山と新庄くんはそりゃあ複雑な気持ちだからなぁ。
この先、この二人のどちらかが先に死んでしまったらどうなるのだろうと思った…!
0364これより先怪物領域  ◆OQO8oJA5SE
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2012/12/16(日) 23:36:15.65ID:5xC48d2K
「ブオォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
 オォォォオオオオォォォオオオオオオオオオオヲヲオオ
 オォォォオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!!!」



怪物の絶叫が夜の静寂を引き裂く。
場所は森林。多種多様な樹木が月明かりすら遮断し、深い闇を形作る。
その場所(ステージ)でチョッパーの巨体は生い茂る木々を薙ぎ倒しながら、クレアに襲い掛かる。
その姿はまるで神話に出てくる魔獣だ。
怪物たちを統べ、人々の安寧を破壊する悪夢の象徴。
物語からそのまま出てきたような怪物に対し、クレアは冷静にオートマグの引き金を引く。
マグナム弾を食らっても巨獣は怯みもしないが、そんなことはクレアも百も承知だ。
狙いは僅かに殺がれたその勢いにある。
銃撃によってできた一瞬の隙を突いて、赤毛の男はチョッパーに肉薄する。

「――スタープラチナッ!」
『オラオラオラオラオラオラオラオラッ!』

スタープラチナの突き(ラッシュ)。
一撃でも常人を撲殺して有り余るほどのパワーを、連続して巨体に叩き込む。

「何ッ!?」

だが、クレアがその攻撃で得たのは手ごたえではなく困惑だった。
手になじんだあるべき感触――肉を叩き、骨を砕く感触が微塵も伝わってこない。
そしてその正体を瞬時に察知した。
厚い毛皮と分厚い筋肉。二重構造の鎧が突き(ラッシュ)の衝撃を全て殺していたのだ。
そしてその隙を逃すチョッパーではない。

「……オオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

絶叫が大気を震わせ、丸太よりも太い腕が唸りを上げてクレアを襲う。

「チッ、"時よ止まれ"ッ!」

時間停止は僅か一瞬。
その刹那にまるでサーカスの軽業師のように身を翻し、距離をとる。
空を切るチョッパーの攻撃を尻目に、空中でディバックを漁り、着地と同時に構える。
その手に握られたのはスーツケースとは名ばかりのウェポンラック。
クレアからしてみれば未来の超兵器だが、あの馬鹿げた重量の十字架に比べればまだ常識的なシロモノだ。
内蔵された兵装のうちロケットランチャーを選択し、構える。

「さぁて、これはどうだ?」

放たれたロケット弾は白煙の尾を引き、獲物を狙う。
対するチョッパーはただ腕を振い、ロケット弾を叩き落した。
だがあまりに速く振るわれた腕は爆発するより速くロケット弾を弾き飛ばした。
0366これより先怪物領域  ◆OQO8oJA5SE
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2012/12/16(日) 23:37:52.57ID:5xC48d2K
「――ほう。なら、これはどうだ?」

怯むことなくロケット弾を連射するクレア。
それに対してチョッパーが行ったのは先ほどと同じ圧倒的質量と速度による力任せの回避運動。
なぎ払ったロケット弾同士が偶然、ぶつかり合い、空中で爆発する。
熱と炎が空気を伝わり、彼らの肌を焼く。
だがそれもこの怪物の前では大した意味を持たない。
巨獣は爆炎を掻き分け、そのまま攻防一体の突撃を仕掛ける。

「チッ」

舌打ち一つ。迫り来る豪腕をかわす為、体を倒す。
だがクレアの想像よりもわずかに速く振るわれた腕に、肩がわずかに触れた。
たったそれだけだ。それだけなのにクレアの体は弾き飛ばされる。
圧倒的な質量差が、明確な凶器となってクレアを襲う。

「くっ……!」

体勢を崩しながらもスーツケースから放たれる徹甲弾。
胴体に炸裂――だがなんと言う耐久力だろうか。
人の体を吹き飛ばす鉄鋼弾を受けても、目の前の怪物はなお突進してきた。
この距離では時間停止しても間に合わない。

「守れ!」

とっさに出現させた幽波紋の腕を交差させ、防御体勢をとる。
スタープラチナの剛力とクレアの体術。
その二つを合わせれば怪物の拳を受け切ることなど造作もない。
相手が相手が常識内の存在であれば、だが。
そして今、クレアが相対しているのは、正真正銘の規格外のバケモノだった。

「ブオオオオオオオオオオオォォォォオオオオオオオオオ……!」

汽笛のような嘶きと共にクレアの予想を超えた超スピードで腕が振るわれる。

「ガッ……!?」

ダメージを受け流すタイミングを完全に外された。
超人技とも言うべきクレアの技量すら無効化するほどの圧倒的なパワーとスピード。
真正面から振るわれた腕はクロスガードを易々と貫通し、凄まじい衝撃をクレアの体内に叩き込む。
有り余るエネルギーはそれだけに留まらず、まるでクレアの体はゴミのように吹き飛ばされる。
そしてそのまま生い茂る木々に叩き付けられた。

「カ、ハッ」

肺から無理やり空気が搾り出される。
一瞬形飛んだ意識を回復させた次の瞬間、クレアが目にしたのは迫りくる魔獣の爪。
鉄の味がする液体を口から吐き出しながら、迫る追撃を危ういところでかわす。
だが追撃は終わらない。チョッパーの腕が連続して振るわれる。
嵐のような猛攻を紙一重のところでかわしながら、クレアは思う。
0368これより先怪物領域  ◆OQO8oJA5SE
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2012/12/16(日) 23:38:52.72ID:5xC48d2K
ここに着てから変な奴らと散々戦ってきた。

変な力を使う白髪頭。
スタンドを使う妙な髪型の男。
二丁拳銃を構えた凶暴女。
けったいな拳を持った野獣のような男。
赤目と黒目の吸血鬼もどき。
妙な獣どもを操る金髪の子供。
異常なほどに戦い慣れしたけったいな言葉遣いの男。

だが目の前にいるモンスターはそのどれとも違う、文字通りの人外であると。
その存在自体がクレアの知る常識を超越した存在なのだと理解した。

(――だったらさて、どうする?)

クレアは再び思考する。
目の前の化け物は技量を無効化するほどのパワーとスピード、
そして銃弾程度はものともしない圧倒的な防御力を持っている。
如何にクレアが超人的な身体能力をもっているとしても、生身の男が勝てる理屈などありはしない。

一方でコンディションも最悪だ。
馬鹿力で叩きつけられ、恐らく肋骨には皹が入っている。
さらに先程額を切ったようだ。左の視界が赤く染まっている。
どう見ても絶体絶命。ならばどうするか。
方法は一つ、

「少し、本気を出すか」
0370これより先怪物領域  ◆OQO8oJA5SE
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2012/12/16(日) 23:39:41.67ID:5xC48d2K
つぶやきと同時、スタープラチナが大きく振りかぶる。
いかにスタープラチナといえど目の前の怪物に打撃は通じない。
その目標は――地面。
近距離パワー型の怪力は反動でクレア自身の体を宙へと放り投げた。
さらに迫る追撃。だが今度は防御せず再び拳を振り上げる。

「おおおおおおおおおっ!」
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」

ぶつかり合う拳と拳。
強度は互角だが体重差でクレアは弾き飛ばされる。
だがこれこそが彼の逃走経路。
チョッパーの力を利用し、更に距離を稼ぐ。
しかし稼げた時間はたったの数秒。それほどまでに目の前の怪物は非常識な身体能力をしているのだ。
だがそれだけでクレア=スタンフィールドには十分であった。

「ああ、単純なことだ。
 足りないのならばたせばいいだけのことなんだからな」

刹那、空中のクレアのシルエットが膨れ上がる。
その正体は彼がディバックから取り出したのは複数の銃器だった。
右手にカラシニコフ、左手にロベルタのスーツケース。
そしてスタープラチナの両手に構えられた二重牙(ダブルファング)。
クレアが選択したのは、四本の腕による四門の重火器操作。
二挺拳銃使い(トゥーハンド)、三本腕の処刑人(トライパニッシャー)に続く四門の破壊者(フォースデトネイター)がそこにいた。

「これに耐えられるか、怪物(モンスター)?」

言葉と同時、トリガーが引かれ4つの銃口が一斉に火を噴いた。
それは実質時間にしてみればたったの数秒。
だがマズルフラッシュだけで周囲がはっきり映るほどの超連射にはそれだけで十分だった。
例え優れた筋肉の鎧があろうとも、皮を、肉を、骨を削ぎ、一片の肉塊に変えてしまう鉄の嵐が巻き起こる。

回避不能の面攻撃に対し、チョッパーがとった行動は、更なる加速だった。
今のチョッパーに知性はない。
だが意識を超えた超直感――野性と呼ばれるそれは危機を前にして最善の方法を選択した。
つまり彼は左手を盾として、更に加速したのだ。
結果、鉄の豪雨にさらされ、左腕は抉られ骨まで粉々になっていく。
だが、それだけだった。
左腕破壊に費やされた数秒。その数秒があれば今のチョッパーには事足りる。
強化された脚力の前にはこの程度の距離は意味を成さないのだ。
目の前の敵を叩き潰す。ただそのためだけに残された右腕が振り上げられ、

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォオオオ!」

絶叫とともに叩きつけられた。
ドンという大きな音とともに、粉々に砕かれ、ごちゃごちゃした中身がぶちまけられる。
少し前まで機能していた"それ"は、あまりにもあっけなく意味を成さないものへと変貌した。
0372これより先怪物領域  ◆OQO8oJA5SE
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2012/12/16(日) 23:41:06.53ID:5xC48d2K
「残念だったな」

――クレアの持っていた、スーツケースが、だ。

銃弾の雨をかいくぐったチョッパーに対し、弾丸の残っていたスーツケースを惜しげもなく投げ捨てた。
更に一瞬の隙を作るために。
その目論見は成功し、クレアは一瞬の好機を得る。

飛び散る残骸の中を一直線に、まるでロケットのように飛び出すクレア。
その奇術のタネはクレアの足に踏みつけられた奇妙な貝殻。
そう、クレアは噴射貝(ブレスダイアル)の上に立っていた。
超人的なバランス能力を持つクレアにしてみれば朝飯前の芸当だ。

「――穿て、スタープラチナ」

スタンドの指を突き出した。
流星指刺(スターフィンガー)とも呼ばれるスタープラチナの指による刺突。
それに噴射貝(ブレスダイアル)の推進力が合わさり、クレアは一発の弾丸となった。
ダイアルの加速、スタンドのパワー、クレアのスキルが合わさった一撃。
更にそこにチョッパー自身の相対速度も加わり、魔獣を仕留める必殺の魔弾は狙い違わず魔獣の左胸に突き刺さる。

「ガァ……ッ! あああああああああああああああああああああああああ!」

だが、それでもチョッパーは腕を振り上げる。
スタープラチナの指は人間と同じ程度。
その程度の長さでは肥大化した筋肉に阻まれ、心臓まで到達していない。
その数秒さえあれば、むしろ懐に飛び込んできたクレアは格好の獲物に他ならない。

「その生命力は素直に尊敬するな。だが俺には勝てん」

だがクレアはすでに次の行動に移っていた。
クレアの手にいつの間にか握られたのは先ほどまで手にしていた拳銃、オートマグ。
その銃口が向けられるのは、穴。
既に消したスタンドの残した赤黒い穴。
その一点に口付けるような繊細さで、銃口をやさしく重ねる。

「お前は強かった――だが、これで終わりだ」

引き金が引かれ、銃弾は怪物に止めを刺す杭のように心の臓を穿った。
どんな防御も無効化する一撃を食らい、ついにチョッパーの巨体は崩れ落ちた。


*    *    *
0375これより先怪物領域  ◆OQO8oJA5SE
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2012/12/16(日) 23:42:14.69ID:5xC48d2K
*    *    *




「ク……ハァ……」

クレアは苦しげに息を吐く。
連続して時間を止めたせいか疲労が激しい。
あの回復薬には頼れない以上、どこかで一旦休憩をとらなければいけないだろう。
それに銃弾も一気に使った。できれば補充しておきたいところだが……

「……まぁ、無いモノねだりをしてもしょうがないか」

周囲にあるのは破壊された森だったものしかない。
さっきの場所まで戻ればあの飛び散ったガラクタの中に何かあるかもしれないが、そこまでしてなかったら飛んだ無駄骨だ。
だがそのとき、周囲を見回していたクレアの鼻は異常を嗅ぎ取った。

(……焦げ臭い?)

今はまだ僅かではある……、が確かに火の臭いがする。
恐らくは先ほど爆発したロケット弾が森に着火したのだ。
何時になるかはクレアにもわからない。だが少なくともここは火に包まれるだろう。
ならばこの森に長居する意味は無いと判断し、踵を返す。

「ま……て……!」

だがそんな彼を引き止める声があった。
振り向けばそこには小さい獣人が、地面に這いつくばったままこちらを睨んでいた。

「まだ生きていたか。本当に面白いな、お前」

体内に直接弾丸を叩き込んだのだ。
普通なら即死だというのにまだ動いている。本当に驚くべき生命力だ。
……だが、自分が手を下すまでも無くもうすぐその命も尽きる。
凄腕の殺し屋"葡萄酒(ヴィーノ)"にはそれが感覚で理解できた。
戦いはまだ続く。銃弾を消費する必要も無い。

「動くと辛いだけだぞ。お前はもう――」
「そんなの、医者である俺が一番わかってる!」

叫ぶごとに血を吐き出す。血と一緒に命まで吐き出されていくようだ。
だがチョッパーにとってそれは些事でしかない。
問いたださねばならないことがあるのだ。

「なんでだ! なんでなんだよ!
 レッドは……俺たちの仲間は! フィーロって奴に助けられたんだ!
 そのフィーロが言ったんだ! クレアって奴は信用できるって! なのに……なのにお前は!」
0376これより先怪物領域  ◆OQO8oJA5SE
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2012/12/16(日) 23:43:09.22ID:5xC48d2K
仲間の遺志を継ぐチョッパーにとって、友達(なかま)の信頼を裏切り続ける男は許せないものだった。
一方でその言葉でクレアは彼らの持つフィーロの情報を理解した。
そして彼がこの大地で、どのように行動していたかも。
 
「……ああ、そうだな。アイツなら口ではどういうか知らないが、見ず知らずの人間を助けるぐらいやるだろう。
 それこそ何でもないことのようにな。だが ――」

言葉が切れる。

「――だが、死んだ。こんな場所で、誰かに殺されてな。
 フィーロが死んだ今、ガンドール兄弟は何があろうと助けなきゃならない。
 そのためにはこんな訳のわからない場所で足踏みしている場合じゃない。
 俺は二度も同じ失敗を繰り返せるわけがない――繰り返させるものか」

チョッパーは気づく。その瞳に浮かぶ色に。
そこには色々な色が渦巻いていた。
もう取りこぼさないという決意があった。こんな現状に対する怒りがあった。
そして何よりも――悲しみの色があった。大事な物を失った、まるで親鳥を失った雛のような埋めようのない喪失の悲しみが。

「……そのためなら、俺は怪物でかまわないさ。
 "線路の影をなぞるもの(レイル・トレーサー)"……いや、名なんていらないな。ただの"怪物"で問題ない」

目の前の男は涙なんて流していない。
でもその顔にかかった血が描く軌跡は、まるで――。

「じゃあな、ご同類(モンスター)。お前は俺を少しは本気にさせた。そのことは十分に誇っていい」

言葉を最後に、靴音が遠ざかる。
その冷たい響きがここにはもう用がないと雄弁に語っていた。
たった一人森の中に残されたチョッパー。
傷だらけのその体は最早何も出来ることがない。
――いや、

「まだ……だ……」

震える腕を意志だけで動かし、土に何かを書き残す。
書ききれているのか、それすらも曖昧なままで。
この行為に意味があるかどうかもわからない。
誰かが見るのかもわからないし、この場所に誰か来るのかもわからない。
でも最後の一瞬まで足掻きたかった。

――書ききった。
そう思った瞬間、全身から力が抜けた。
もう指一本も動かす力も残っていない。
徐々に遠くなる意識の中、脳裏に次々と人の顔が浮かぶ。
0378これより先怪物領域  ◆OQO8oJA5SE
垢版 |
2012/12/16(日) 23:43:43.49ID:5xC48d2K
……ヒルルク、くれは
俺を俺として育ててくれた人たち。
……ルフィ、ゾロ、サンジ、ナミ、ウソップ、ロビン、フランキー
大好きな海賊団の仲間たち。
……レナ、グラハム、レッド、ライダー、リカ、ウルフウッド……
この世界で出会った仲間たち。
大事な、大切な人の顔が次々と浮かんでは消えていく。

でも最後にぼんやりと浮かぶのはあの怪物の目だ。
――寂しそうだった。まるで、あのときの俺みたいに。
大事な人を失った目だった。必死に足掻いている目だった。

ああ、もし俺がもしヒルルクみたいにすごい医者だったら、あの怪物の心も癒してあげられたのかな。
あの時、全部の憎しみや悲しみから救ってくれたドクターやくれはやルフィみたいに。
怪物を友達を失った悲しみから助け出てあげれたのかな。
真っ赤な涙を流す、赤い髪の怪物を。

でもやっぱりできなかった……
ああ、やっぱり俺は、未熟だったよ……。

(チクショウ……悔しいな……助けられないのは、悔しいよ……ルフィ……ドクター……)

その思いを最後に、ガフ、と小さく血を吐いて、その小さな体は二度と動かなくなった。




【トニートニー・チョッパー@ONE PIECE 死亡】
【残り14人】


     *      *      *
0381これより先怪物領域  ◆OQO8oJA5SE
垢版 |
2012/12/16(日) 23:45:03.49ID:5xC48d2K
     *      *      *


"もしも"の話をしよう。

"もしも"、彼の隣に黒髪の少女がいたとしたら。
"もしも"、彼が金髪の少女と親しくなっていたとしたら。
"もしも"、彼がこの場所で幼馴染の少年と再会していたとしたら。

"もしも"、彼の隣に誰かいたならば、彼は人の領域にいたかもしれない。
無茶苦茶で、嵐のようで、でも誰かを確かに愛していて。
主人公たちのハッピーエンドに花を添えるような少しお茶目な世界の中心だったかもしれない。

だがここにいる彼は一人だった。
笑いあう友人も、その心を知る女もここにはいない。
たった一人きりの世界にいるのは、ココロを閉じ込めた怪物だった。

怪物(クレア)は戸惑わない。
故にその歩みは止まらない。
彼の歩む先に広がるのは大舞台。人の領域を超越した怪物たちのオンステージ。

ああ、これより先――怪物領域。


【H−2/1日目 真夜中】
【クレア・スタンフィールド@BACCANO!】
[状態]:疲労(中)、全身に打撲
[装備]:スタンドDISC『スター・プラチナ』@ジョジョの奇妙な冒険、スプリングフィールドXDの弾丸×7、拳銃の予備弾×30
    二重牙@トライガン・マキシマム(20%、70%)、AMTオートマグ(0/7 予備弾×15)
[道具]:支給品一式×5<クレア、一方通行、レヴィ(一食消費、水1/5消費)、クリストファー、カルラ>、未確認支給品(0〜1)
    クリストファーのマドレーヌ×8@バッカーノ!シリーズ、ミカエルの眼の再生薬×3@トライガン・マキシマム
    噴風貝(ジェットダイアル)@ONEPIECE、応急処置用の簡易道具@現実、痛み止め
    パ二ッシャーの予備弾丸1回分、ロケットランチャーの予備弾頭2個
    ○印のコイン、AK47カラシニコフ(0/40、予備弾40×3)、蓮の杖@とある魔術の禁書目録
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、ギラーミンから元の世界へ戻る方法を聞き出す。
 1:優勝のために他の参加者を殺す。迅速に、あらゆる可能性を考慮して。
 2:フィーロを殺した相手が分かったら、必ず殺す。
 3:スター・プラチナに嫌悪感はあるがある程度割り切っている。
【備考】
 ※参戦次期は1931~特急編~でフライング・プッシーフット号に乗車中の時期(具体的な時間は不明)
 ※ほんの一瞬だけ時間停止が可能となりました。
 ※梨花が瞬間移動の能力を持っていると思っています。
 ※名前を聞いていなかった為、カズマとクリスの死を知りません。
 ※もう一度ミカエルの眼の再生薬を服用すれば、命に係わるかも知れないため使用しないほうがよいと思っています。
 ※○印のコインの意味は不明です。使い道があるのかもしれませんし、ないのかもしれません。


 ※【H-2】の森には火が回り始めています。
 ※【H-2】にチョッパーの書置きが残されています。内容は不明で、読めるかどうかも定かではありません。
0382これより先怪物領域  ◆OQO8oJA5SE
垢版 |
2012/12/16(日) 23:45:54.76ID:5xC48d2K
これにて投下終了となります。
矛盾点などありましたらお願いします。

なお、投下宣言を忘れていて申し訳ありませんでした。
0383創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/12/16(日) 23:54:25.09ID:iFzTjm8q
投下乙!
暴走チョッパーはかなり惜しいところまでいったけど、あと少し足りなかったか。
それでも最後の最後でクレアを気遣うチョッパーの優しさは良いなぁ。安らかに眠ってくれぇ。、
そしてスタプラにもダブルファング持たせるってのにしびれた!想像すると凄いカッコいいなぁ。
もしクレアが対主催だったら凄い頼り甲斐あるけど、ここでは一人だもんなぁ……うーん色々と考えてしまう。
0384創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/12/16(日) 23:59:54.74ID:JhFVWtxv
投下乙です!
怪物チョッパー強い!パワーとスピード持った巨体ってそれだけで驚異的すぎる
と思ったらクレアも負けじと本気出して、四門の破壊者!?なんだこの怪物合戦は…!
僅差で負けちゃったけどチョッパー、お前は頑張ったよ……最後に思い出す皆の顔にホロリ
チョッパーのダイイングメッセージとか、一人ぼっちのクレアは傷ついた身体でどこまでいくのかとか気になることが多すぎる!
0385創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/12/17(月) 00:32:03.76ID:b9XvnTJI
投下乙です!

やはりチョッパーは届かなかったか…
チョッパーもかなり強かったが、それ以上にクレアが強すぎる
クレアの強さが圧倒的すぎて、逆にクレアのむなしさが際立つ気すらするよ
最期まで優しかったチョッパー、安らかに眠ってくれ…

マーダー陣は全員埋められぬ虚しさを抱えて、一体どこまで向かうのか
その先に何を見出すんだろうか…先が気になる
0392 ◆pSc/w7EBTk
垢版 |
2012/12/21(金) 18:38:29.15ID:SqjdEM8k
ロロノア・ゾロ投下します
0394貴方を瞼が憶えている ◆pSc/w7EBTk
垢版 |
2012/12/21(金) 18:39:24.09ID:SqjdEM8k
その男を止めるものなど、何もなかった。
人生の内で最も下らない出来事が、人生の内で最も大きな爪痕を残してから。
空腹、痛み、困難、敗北、屈辱、絶望。
死の恐怖ですら、男の足を止めることはできなかった。
そして、男自身に止まるつもりなど毛頭無かった。
「世界一の剣豪になる」という、どこにあるかもわからない目標に向かって突き進むのだから。
止まっている時間など、ほんの一瞬ですら必要無かった。
息を吸い、血が流れ、身が動く限り。
彼は、ただひたすらに前を向いて進むだけ。
足を止めるブレーキなんて必要ない。
あの日、心に誓ったときからそんなものはへし折っていた。
だから男は止まらない、いや止まれないはずだった。
こんな訳も分からないところで、へし折ったはずのブレーキを見つけるまでは。

彼の足を止めたのは「喪失」というブレーキだ。
あの日、大親友かつ絶対に越えると誓った友を失った日にへし折ったはずのブレーキ。
そのブレーキがいつの間にかそっくりそのまま元通りになっていて、今の彼の足を止めていた。
「世界一の剣豪になる」まで、こんな訳の分からないところで止まっている時間などあるわけがないのに。
彼は、止まってしまった。

この場所で、二人の男が死んだ。
嘘が上手くて、逃げ足が早くて、狙ったモノは外さない、行く行くは勇敢なる戦士を志す男が死んだ。
夢に向かってまっすぐで、自分の気持ちに正直で、どこまでも強くなり続ける、自分を海賊に誘った男が死んだ。

死人は蘇らない。
それは、あの日から知っていることだ。
どれだけ声をかけても、どれだけ涙を流しても、どれだけ起こそうとしても。
死人は、起きあがらない。
分かっているのに、分かっているのに。
あの日へし折ったはずの「喪失」のブレーキは、キリキリと金属音を上げながら彼の足を止めていく。

やがて、男はあの日ぶりに完全に足を止めた。

ぐるりと周りを見渡す。
あの日以来目に入れることがなかったモノが次々に飛び込んでくる。
世界で一番の大剣豪になると誓った幼き頃の自分。
腹が減って死にそうなときに食べた砂利まみれの飯。
曲芸士から始まり猫背やなんやと妙ながらも自分の前に立ちはだかってきた敵たち。
戦いの中を共に潜り抜けていった仲間たち。
男のそんな「過去」が視界に広がり、浮かんでは消え、浮かんでは消えていく。
そして最後に、男の目に映った「過去」は。
鷹の目に斬られる自分の姿と、動かない体となった幼なじみの姿。
その二つが、交差するように同時に映った。

全ての「過去」が霧のように立ち消えた後、遠い遠いところに見覚えのある顔が映る。
長鼻の男を初めとした横一列に並ぶその集団は、彼が「喪」った者達だった。
笑っているのか、泣いているのか、よく分からない顔で。
彼らは、じっと男を見つめていた。
0395貴方を瞼が憶えている ◆pSc/w7EBTk
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2012/12/21(金) 18:39:56.57ID:SqjdEM8k
ふと、目を覚ます。
そこに並ぶのは顔ではなく、ありふれた現実。
先ほど同行者と別れた場所、城の入り口から見える風景だった。
「もし、あたりを探索するなら左手を絶対に城の外壁から離さないで下さいね」
史上最悪の方向音痴である彼が、城の近辺の探索という困難なミッションをこなすことが出来たのはそんな一言のお陰である。
別れる間際に何回も何回も何回も重ねて忠告しておいた甲斐があったというものだ。
そんな同行者のお陰で、奇跡的に彼は城の入り口に再び戻ることが出来たのだ。

そして来るべき戦いに備え、城の入り口で精神統一を行っていた。
だが、実際は心を無にして落ち着くどころかこのザマである。
「ガラにもねえな……」
はぁ、と溜息をこぼしながら手で頭を押さえつける。
この殺し合いという場で、近い人間の死をいくつも見てきた。
誰も彼も、強制された殺し合いという「くだらない事」で命を落とした。
男がそれを見届ける度に、ある場面が脳裏にちらつく。
「くだらない事」で命を落とした彼女の姿が、彼らと重なるように浮かび上がって来る。

何故か?

彼らと少女を結びつける物、こうなるはずでは無かった死に逝く者の「無念」という思いがあったからだ。
何人もの人間がこの場でそれを遺し、ある者はそれを託しながら死んでいった。
この男も例外ではなく、何人もの死を目撃し、何人もの無念を託された。
「無念」が彼に遺される度に、重なるようにもう一度託される「無念」があった。
それは「下らない事」で命を落とし、大きな「夢」を見ていた少女の「無念」だ。
あの日に受け止めた物が再び遺され、一だったそれは積み重なり、やがて「過去」へと姿を変えて彼の足を止めていた。

それを理解しているのか、いないのか。
男はゆっくりと息を吸い込み、少しずつ吐き出していく。
そして目を大きく見開き、一本の刀を横に薙ぐ。
風切りの音だけが、無音の空間に響きわたる。
だが、男はその一薙ぎで確かに"斬って"いた。
男の体に重くのし掛かっていた「無念」を。
「悪いな」
瞳に、迷いはない。
「てめェらにゃ、構っちゃいられねえんだ」
世界一の剣豪になるという、彼の誓い。
他人に引きずられることもなく、何よりも真っ先にかなえなければいけない夢。
そして、何よりも真っ先に晴らすべき無念。
他者の死をきっかけに振り返った過去を通じ、思い出した映像と共に改めて体に刻んでいく。
「俺は先に進む、お前等を置いて行く」
忘れられないことがある。
忘れてはいけないことがある。
忘れられるはずもないものがある。
他の何かを背負う前に、背負えるだけの器を作らなくてはいけない。
そしてそれには、成し遂げねばならないことがある。
「"無念"で終わらしちゃいけねェモンが、あるからな」
あの日の、そして今この瞬間の誓いを胸に、彼は前を向く。
「まあ、見てろよ」
にいぃ、と自信に満ちた笑顔と共に、腕に巻き付けていた黒いバンダナを解く。
それをいつもより少しきつめに頭に巻き付け、軽く頬を叩いて決意の証を作る。
続けて両手と口に刀を構え、彼の象徴である"三刀流"を作る。
だが一つだけ、いつもとは違う事がある。
それは四本目の刀、心の中にある固い"決意"という刀が。
魔神の如く古城の入り口に立ちはだかる彼を、突き刺すように支えていた。
0396貴方を瞼が憶えている ◆pSc/w7EBTk
垢版 |
2012/12/21(金) 18:41:05.03ID:SqjdEM8k
.
来るべき決戦の準備を整え、彼は宣言する。

「零でも何でもブッた斬って、生き残ってやるぜ」

"不敗"を。



止まらない、止まれない、くたばる暇すらない。

もう一度「喪失」のブレーキをへし折り、彼は前へ行く。

進んで進んで進むだけ。

邪魔な物は斬ればいい。

だから殺しに乗る奴も斬る。

この「くだらない事」を考えた奴も斬る。

そして、前に進む。

必ず、手にするために。



男、ロロノア・ゾロが目指すはただ一つ。



【A-2・古城跡入り口/1日目 真夜中】
【ロロノア・ゾロ@ワンピース】
[状態]疲労(中)、全身にダメージ(中)(止血、消毒、包帯済み)、左腿に銃創(治療済み)、右肩に掠り傷、腹部に裂傷、全て回復中
[装備]八千代の刀@WORKING!!、秋水@ワンピース、雪走@ワンピース、治療符@終わりのクロニクル
[道具]支給品一式×2(食料7/12、水7/12消費)、麦わら海賊団の手配書リスト@ワンピース、迷宮探索ボール@ドラえもん、
    不明支給品(1〜3)、一方通行の首輪(血がこびりついている) 、ARMSのコア(ジャバウォック)@ARMS
[思考・状況]
 1:"敗"けない
 2:"背負う"為、"前"へ進む
 3:ルフィ(死体でも)、チョッパーを探す
 4:首輪の秘密が気になる。
 ※参戦時期は少なくともエニエスロビー編終了(45巻)以降、スリラーバーグ編(46巻)より前です。
 ※雪走が健在であったことに疑問を抱いています。
 ※八千代の刀@WORKING!!は僅かにですが歪んでいます。



短いですが投下終了です。
修正として>>395の冒頭に空白の行を三行追加とさせてください。
何かありましたらどうぞ。
0397創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/12/22(土) 02:33:36.86ID:drlh+R0c
投下乙です!
ゾロは自分の過去と出会ったのか、こいつも色々喪ってるからなあ…
それでも無念を斬って前に進む姿は男前
喪失のブレーキをへし折って不敗を誓う剣豪は、果たして魔王に不敗を貫けるのだろうか
0398創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/12/22(土) 08:20:50.67ID:94IsbJRi
投下乙です!

やだ…ゾロかっこいい…!(キュン
冗談っぽくいってみたが、冗談抜きに格好いい
正直迷子ばかりのキャラだと思っててすまん!とんでもなく男前だ!

捜索対象のチョッパーも無念の死を遂げてしまったが、
その無念も受け取って進めたらいいな
0404創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/12/27(木) 01:32:02.51ID:XG2td/DP
支援絵乙ー!
気づいたらロワ復活しててびっくり。
俺もそのうちなんか投下できれば……
0409創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/12/29(土) 07:27:14.46ID:C6hE611J
○ロワ書き手は(書けという感情に)裏表がない優しい人たちばかりでしたね!
0410創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/12/30(日) 22:49:48.12ID:khjtqgeZ
しかしいよいよ放送か…感無量だ
第三回〜第四回放送までもいろいろ動いたよな
0411創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/12/30(日) 23:28:52.70ID:S0vEpizK
ナインと真紅死亡話好きだなー。
あの話も3回放送〜4回放送の間だと思うと確かに凄い動いたな。
0412創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/12/30(日) 23:48:26.77ID:E6Ui9jUa
真紅とブレンさんのよかったなぁ
二人らしく誇り高くて、それがラッドの目を覚まさせ、美琴に受け継がれていくのが凄くしみた
その続きである裏表トリーズナーズも好きだ

キャラの背負うものが重くなって
全体的にしんみりと切なく深い話が多かった感じがする
死亡話も切ないんだよな
0413創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/12/31(月) 00:04:43.45ID:66+p5VpU
レナとチョッパー、梨花ちゃまとニコ兄の初期からコンビが連続で落ちたのも印象深かった
「友達ふたり、できてんで」とかもう、もうね…

新しく生まれたのが天使コンビというのが面白いw
そしてロワでもやらかしてくれたな夫妻は!
直前までまじめな話なのにいつのまにかエロくなっていた、何を言っているのか(ryな気分だったぜ
0415創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/12/31(月) 00:41:09.12ID:haZRbzVN
あれで原作再現だから相変わらず終わクロはなんとまぁww
○同盟連続落ちは厳しいものがあったけど、残ったライダーとグラハムに期待だ。
でも、ビリビリって組んだ相手がよく死ぬよね……w
0417創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/01/01(火) 00:46:42.66ID:D16AjfZU
あけおめ!
去年はまさかの復活だったから今年もこの勢いでいってほしいな!
0418 ◆hqLsjDR84w
垢版 |
2013/01/02(水) 03:02:59.74ID:IFiB39p3
予約スレに書きましたが、一度予約を破棄しました。
待ってくれていた人もいたのに、申し訳ないです。
0421 ◆hqLsjDR84w
垢版 |
2013/01/04(金) 17:29:55.68ID:qGeYnOkp
書き終わったので、用を済ませてざっと読み返して今夜中に投下します。
0425第四回放送 ◆hqLsjDR84w
垢版 |
2013/01/04(金) 21:15:35.13ID:qGeYnOkp
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【0】


「『存在』を規定するのはなんだと思う? 『環境』? 『資質』?」





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