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マルチジャンルバトルロワイアルpart20
0001創る名無しに見る名無し垢版2010/08/19(木) 21:27:59ID:Xaw0wCT2
様々な作品のキャラを使った上での、小説及び映画で有名なバトルロワイアルの企画を行おうというスレです。
小説・漫画・アニメのキャラが入り乱れていることから、マルチロワという名前になりました。
略して○ロワ。別に見るのに●はいりません。
この企画はリレーSS企画であり、ルールさえ守っていただければ、どなたでも参加可能です。
ルールの項に目を通していただき、分からないことがあれば気軽に本スレで聞いてみてください。
キャラ同士による殺し合いという内容のため、苦手な方は気分を害する恐れがあります。
読み進める際にご注意を、また自己責任でお願いします。

【過去スレ】
いろんなジャンルの作品キャラでバトルロワイアル
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1220604468/
マルチジャンルバトルロワイアル part2
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1221055898/
マルチジャンルバトルロワイアル part3
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1221229891/
マルチジャンルバトルロワイアル part4
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1221405474/
マルチジャンルバトルロワイアルpsrt5
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1221749250/
マルチジャンルバトルロワイアルpart6
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1221924153/
マルチジャンルバトルロワイアルpart7(実質8)
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1227019873/
マルチジャンルバトルロワイアルpart8(実質9)
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1230130775/
マルチジャンルバトルロワイアルpart10
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1232931721/
マルチジャンルバトルロワイアルpart11
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1235147692/
マルチジャンルバトルロワイアルpart12
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1235724325/
マルチジャンルバトルロワイアルpart13
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1237380564/
マルチジャンルバトルロワイアルpart14
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1241420923/
マルチジャンルバトルロワイアルpart15
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1243945342/
マルチジャンルバトルロワイアルpart16
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1247322362/
マルチジャンルバトルロワイアルpart17
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1249651246/
マルチジャンルバトルロワイアルpart18
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1254322108/
マルチジャンルバトルロワイアルpart19
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1259755793/
マルチジャンルバトルロワイアルpart20
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1268938717/301-400

【したらば】
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/11860/
【wiki】
http://www26.atwiki.jp/marurowa
【予約について】
 ・通常5日。延長は2日まで。(合計7日まで)
 ・したらばの予約スレで予約してください
【全キャラクター共通・スタート時の持ち物】
  地図、コンパス、懐中電灯、筆記用具、水と食料、名簿、時計、ランダム支給品1〜3
【MAP】
  (p)ttp://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7e/70/405fccc08ebbff8b539e6e47e7acf801.png
   上が北、一マス一km四方、端はループしています。(例:A-1から北へ行けばH-1に出る)
0002創る名無しに見る名無し垢版2010/08/19(木) 21:52:29ID:Xaw0wCT2
参加者リスト

0/6【うたわれるもの@アニメ】
●ハクオロ/●エルルゥ/●アルルゥ/●ベナウィ/●カルラ/●トウカ
3/6【BACCANO!@小説】
●フィーロ・プロシェンツォ/●エルマー・C・アルバトロス/○ラッド・ルッソ/●クリストファー・シャルドレード/○グラハム・スペクター/○クレア・スタンフィールド
1/6【ひぐらしのなく頃に@アニメ】
●前原圭一/●竜宮レナ/●園崎魅音/○北条沙都子/●古手梨花/●園崎詩音
0/5【スクライド@アニメ】
●カズマ/●劉鳳/●ストレイト・クーガー/●橘あすか/●無常矜侍
1/5【ローゼンメイデン@漫画】
●桜田ジュン/●真紅/●翠星石/●蒼星石/○水銀燈
2/5【ワンピース@漫画】
●モンキー・D・ルフィ/○ロロノア・ゾロ/●ウソップ/○トニートニー・チョッパー/●サー・クロコダイル
0/4【ジョジョの奇妙な冒険@漫画】
●東方仗助/●広瀬康一/●吉良吉影/●ジョルノ・ジョバァーナ
1/4【とある魔術の禁書目録@小説】
●上条当麻/○御坂美琴/●一方通行/●土御門元春
1/4【ポケットモンスターSPECIAL@漫画】
●レッド/●イエロー・デ・トキワグローブ/●サカキ/○ミュウツー
2/3【終わりのクロニクル@小説】
○佐山・御言/○新庄・運切/●ブレンヒルト・シルト
2/3【トライガン・マキシマム@漫画】
○ヴァッシュ・ザ・スタンピード/●ニコラス・D・ウルフウッド/○リヴィオ・ザ・ダブルファング
1/3【Fate/Zero】
●衛宮切嗣/●アーチャー(ギルガメッシュ)/○ライダー(イスカンダル)
0/3【BLACK LAGOON@漫画】
●レヴィ/●バラライカ/●ロベルタ
1/2【コードギアス ナイトメアオブナナリー@漫画】
●ナナリー・ランペルージ/○ゼロ
0/2【ドラえもん@アニメ】
●ドラえもん/●野比のび太
1/2【WORKING!!@漫画】
○小鳥遊宗太/●伊波まひる
0/1【ARMS@漫画】
●高槻巌
0/1【あずまんが大王@漫画】
●春日歩

 16/65
0003創る名無しに見る名無し垢版2010/08/19(木) 21:56:33ID:Xaw0wCT2
【バトルロワイアルのルール】


 1.【基本ルール】
 全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が優勝者となる。
 優勝者のみ元の世界に帰ることができる。
 また、優勝の特典として死者の蘇生などのどんな願いも叶えられるという話だが……?
 ゲーム開始時、プレイヤーはスタート地点からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置される。
 プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。


 2.【首輪】
 参加者には設定されたルールを破った場合に備え、爆発する仕掛けの首輪の装着を強要する。
 首輪は以下のルールを破った場合に爆発し、その者の命を奪う。
  A-バトルロワイアル会場の外へと出ようとした場合。
  B-後述される禁止エリアの中へと侵入した場合。
  C-24時間連続で死者がでなかった場合、参加者全員の首輪が一度に爆破される。


 3.【放送】
 バトルロワイアル中、ロワの進行状況(誰が死んだか)と禁止エリアを報告する放送が定時毎に会場内へと流される。
 放送が流れるのは、「0時」「6時」「12時」「18時」の6時間毎、1日4回。


 4.【禁止エリア】
 放送から1時間後、3時間後、5時間にマス目で区切られた会場のエリアが1エリアずつ禁止エリアとなる。
 禁止エリアはゲーム終了まで解除されない。 これは直前の放送でそれぞれ発表される。


 5.【支給品】
 参加者にはバトルロワイアルを生き抜くための道具や武器が支給される。
 プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。サーヴァントの宝具も同様。
 ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
 ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給され、「デイパック」にまとめられている。
 「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。主催者の手によってか何らかの細工が施されており、明らかに容量オーバーな物でも入るようになっている。四●元ディパック。
 「地図」 → MAPと、禁止エリアを判別するための境界線と座標が記されている。【舞台】に挙げられているのと同じ物。
 「コンパス」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
 「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
 「水と食料」 → 通常の成人男性で二日分。肝心の食料の内容は…書き手さんによってのお楽しみ。SS間で多少のブレが出ても構わないかと。
 「名簿」→全ての参加キャラの名前のみが羅列されている。ちなみにアイウエオ順で掲載。 (尚、テンプレやwiki編集ではわかりやすさ重視で作品順名簿で表記しています)
 「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
 「照明器具」 → 暗闇を照らすことができる。ランタン、懐中電灯など、なぜか統一されていない。
 「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが1〜3個入っている。内容はランダム。


 6.【最後に】
 以上以外のルールは存在せず、参加者間に禁じ手は存在しない。
 また、生き残りゲームではあるがその途中で手を結んだり、徒党を組むこともルール違反には当たらない。


 7.【書いてみたいという方へ】
 当企画はリレーSS企画です。なのでルールを無視した作品の投下は受け付けていません。ご注意ください。
 書き手として参加する場合のルールはこちらですので目を通してみてください。
 分からないことがあれば気軽に本スレで質問をどうぞ

 ルール説明のリンク>http://www26.atwiki.jp/marurowa/pages/56.html
0006創る名無しに見る名無し垢版2010/08/21(土) 00:08:00ID:nj+COg3i
即死回避しないと
0014創る名無しに見る名無し垢版2010/09/04(土) 19:57:21ID:UJ6F6D2o
保守
0016創る名無しに見る名無し垢版2010/09/05(日) 21:26:32ID:i6t6o7kQ
暗黒面に堕ちたセワシでもいいし
パラレルワールドからやって来たのび太でもいい。
黒幕が見つからなかったら、オリキャラ出すしかないなw
0018創る名無しに見る名無し垢版2010/09/16(木) 17:06:28ID:dYaXV1hY
保守
0019創る名無しに見る名無し垢版2010/09/16(木) 19:47:37ID:o5DYx1Fu
先日読み始めて昨日読み終わった…
すごい面白いしみんなかっこ良すぎる…!!うおおお
手が勝手に動いたのでちょっとだけ描いてみた…!
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1394
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1395
○ロワ好きだー!!
0020創る名無しに見る名無し垢版2010/09/16(木) 20:12:24ID:92zR1pA3
すげえええええええ!
マ、マジすっげえええええええ!
超すっげえええええええええええ!


嬉しいけど、語彙がたらねえ!w
0021創る名無しに見る名無し垢版2010/09/16(木) 20:18:57ID:PPYDREr3
俺は今…夢を見ているのか…良い夢だ
超超GJ!どいつもこいつも格好良すぎるぜ!
0022創る名無しに見る名無し垢版2010/09/16(木) 21:11:01ID:bb9b87Fu
おお……梨花ちゃま可愛い
カズマさんマジバーニング。そしてラズロとクーガーは熱かったな。
とりあえず挿絵収録とかやってますが、これも収録させてもらっていいですかね?
あと、ヴァッシュ銀様、マーダーカルテットの絵持ってる方いませんでしょうか。
収録し忘れた―orz
0023創る名無しに見る名無し垢版2010/09/16(木) 21:50:39ID:o5DYx1Fu
な なんと…!挿絵、嬉しい限りです…!!ぬおお!
あんなのでよろしければ宜しくお願い致します…!
0024創る名無しに見る名無し垢版2010/09/16(木) 23:20:42ID:KzwDb7aw
いやあ、素晴らしい絵でしたね

WORKING好きなのだがこのロワにいると
「八千代と佐藤は奉仕マーダーだろうな」
「相馬は扇動だろうな」
「山田は強マーダー相手に調子に乗って1話退場だろうな」
「ぽぷらは対主催のマスコットなんだろうな」
と考えてしまうから困る
0026創る名無しに見る名無し垢版2010/09/17(金) 22:37:26ID:3yuJdAc9
>>24
毒されてんなw自分もだが。
店長がどうするのかがどうしても思いつかない
一番に食料が足りなくなりそうではあるw
0029創る名無しに見る名無し垢版2010/09/18(土) 22:19:46ID:m7kgUgFs
そんな新ジャンルはいやだw
そういやロワで食料の奪い合いって発生しないよな
ルフィとかみたいな大食いキャラって結構いそうなのに
0030創る名無しに見る名無し垢版2010/09/19(日) 01:20:29ID:W4qcNkQC
# 想いと涙と
# 裏表トリーズナーズ(後編)
# Believe
# 一人では解けない 真実のパズルを抱いて。
#赤目と黒面
の五作品に挿絵を挿入しました。
あとイラストの保管庫コーナーも追加。
0031創る名無しに見る名無し垢版2010/09/19(日) 21:44:27ID:prAO49zS
wiki編集乙!
目を離してる隙にこんなに素晴らしい支援絵が……!
絵師さんの人超GJ!!
0035創る名無しに見る名無し垢版2010/09/24(金) 02:59:57ID:Mjkz8ILQ
あちこちのパロロワ見てるが挿絵つきなんて初めて見た
しかも絵上手いし嬉しすぎるw
0041創る名無しに見る名無し垢版2010/10/23(土) 15:05:22ID:tDRHT1le
今日から読み始めてみようと思うんですが、ルート分岐の仕組みはどうなってるんでしょうか?
まずどのルートから読めばいいですかね・・・?
0042創る名無しに見る名無し垢版2010/10/24(日) 02:16:26ID:VU3Ry4NY
そんなに複雑じゃないし、wikiのA-1かB-1を読んでいけばいいと思うよ。
ちなみに今一番進んでいるのはB-1ルートで、おそらくここが本流になると思う
0045創る名無しに見る名無し垢版2010/11/08(月) 22:42:12ID:aI4B5sW7
自分も待つ!!
>>19でかいたクリストファーの目を間違えていた事に今更気付いたので修正をば
それと魂と右手がとまらないので+何枚かです…!地図の画像とか勝手に使わせて頂きました…!
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1514
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1515
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1516
何周しても飽きぬ○ロワ好きだアアアアアア
0047創る名無しに見る名無し垢版2010/11/09(火) 00:46:04ID:+iJcFFmo
うぉおおおおスゲェ!GJ!マジGJ!
かいぶつのなく頃に、漫画化すると本当に格好いいなぁ
紅い子と社長コンビ好きだったよ……

そしてまさか死者スレネタが漫画化w
通りすがりのリーマン自重しろww
0048創る名無しに見る名無し垢版2010/11/09(火) 01:18:13ID:u9rXbBiA
すげぇ!ひたすらGJ!!
あぁ、絵に載っているコンビのどれもが好きだけど、どれももう見ることが出来ないのか
……ロワは本当に非情やで!
ってかヴィーノ怖すぎだろ、あんなの目の前に出てきたら間違いなく腰抜かすわ

自分もここの復活を、ひたすら待ってます!
0049創る名無しに見る名無し垢版2010/11/09(火) 20:51:24ID:AAQyAGUp
おおおおおやべええええかっけえええええええ
○は色んなコンビがあったよなあ、懐かしすぎて涙が出そうだぜ……
そしてまさかの漫画化!クレア怖いよクレア(ガクブル
0050創る名無しに見る名無し垢版2010/11/10(水) 21:45:02ID:C79Xc8tV
今気付いた!
これは凄いなぁ……金ぴかと圭一のコンビ好きだったよ
いつもGJですー!
0054創る名無しに見る名無し垢版2010/11/20(土) 18:54:42ID:t8Nm8ykt
くそ、規制かかってた! しかもイラスト保管しそこねた!
wiki収録したいんでできれば再うpプリーズ!
0055創る名無しに見る名無し垢版2010/11/20(土) 20:18:56ID:Cc5xveEp
よ、予約……だと……!?
ィイヤッホゥーーッ!!
久々の予約にwktkが止まらない……!
0057創る名無しに見る名無し垢版2010/11/25(木) 01:57:14ID:EdKHEIM6
!予 約 … !!!うおおお楽しみすぎる…!!!
>>54 ドゾー!
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1557
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1558
ttp://loda.jp/mitemite/?id=1559
0059創る名無しに見る名無し垢版2010/11/27(土) 13:19:35ID:Ywwkqx1E
急用につき破棄らしい。
ただ、予約がなければ改めて書き上げるみたいだから大丈夫だろう。
0061創る名無しに見る名無し垢版2010/12/07(火) 02:16:46ID:c68nRB6R
用事あるからって予約破棄しといて、1週間以上経ってもまだ投下してないのか
最初から書く気なかったんだな
0066創る名無しに見る名無し垢版2010/12/26(日) 12:01:45ID:7x//COKL
プレゼントは鉛玉だなww投下乙!
トナカイとサンタ服はわかった、しかし後ろのマッチョ空気嫁www
0067創る名無しに見る名無し垢版2010/12/28(火) 03:10:45ID:qaKtYC1w
このサンタ達は間違いなくいいものを運んできてはくれない

ってかこれじゃあ子供が泣くわ!
0071創る名無しに見る名無し垢版2011/01/02(日) 00:30:57ID:enISkCzr
ふとのぞいたらすごいのきてた
あけおめ投下乙!
にぎやかでいいな
そして後ろの筋肉たち自重しろwww
今年は盛り上がりますように!
0075創る名無しに見る名無し垢版2011/01/06(木) 15:30:33ID:l9ubYNn6
うおおおおおおすげえええええええ!!!
りかちゃんの裸はふいたなあ…w
あの忘れえぬ日々には涙腺がやばいな…
ホントGJ!!!!
0076創る名無しに見る名無し垢版2011/01/07(金) 22:09:53ID:F+ZkgU9Y
おお、これは良いぜんr(パニッシャー
リヴィオはかっけえなあ。師匠とウルフウッドがやけに寂しく見えるぜ
0077創る名無しに見る名無し垢版2011/01/17(月) 16:11:54ID:E9q//YX3
ほしゅ
0078創る名無しに見る名無し垢版2011/01/27(木) 08:11:06ID:jP0L0CNQ
保守
0079創る名無しに見る名無し垢版2011/01/30(日) 22:22:58ID:6dSuOdky
もしこのまま予約が来なければ別の○ロワ開催しようかしら?
リスタートではなくて
無かった事にするのはもったいないほどここは凄いし
0081創る名無しに見る名無し垢版2011/01/31(月) 04:59:01ID:0CN7Y/KA
    ィ";;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;゙t,
     彡;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ
     イ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;r''ソ~ヾ:;;;;;;゙i,
     t;;;;;;;リ~`゙ヾ、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ノ    i,;;;;;;!
     ゙i,;;;;t    ヾ-‐''"~´_,,.ィ"゙  ヾ;;f^!   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     ト.;;;;;》  =ニー-彡ニ''"~´,,...,,.  レ')l. < おまえは何を言っているんだ
     t゙ヾ;l   __,, .. ,,_   ,.テ:ro=r''"゙ !.f'l.   \____________
      ヽ.ヽ ー=rtσフ= ;  ('"^'=''′  リノ  
    ,,.. -‐ゝ.>、 `゙゙゙゙´ ,'  ヽ   . : :! /
 ~´ : : : : : `ヽ:.    ,rf :. . :.: j 、 . : : ト、.、
 : : : : : : : : : : ヽ、  /. .゙ー:、_,.r'゙: :ヽ. : :/ ヽ\、 
  :f: r: : : : : : : : !丶  r-、=一=''チ^  ,/   !:: : :`丶、_
  : /: : : : : : : : :! ヽ、  ゙ ''' ''¨´  /   ,i: : : l!: : : : :`ヽ、
 〃: :j: : : : : : : ゙i   `ヽ、..,,__,, :ィ"::   ,ノ:: : : : : : : : : : : :\
 ノ: : : : : : : : : : :丶   : : ::::::::: : : :   /: : : : : : : : : : : : : : : :\
0082創る名無しに見る名無し垢版2011/02/07(月) 19:53:29ID:jGuhqU8g
ほしゅ
0083創る名無しに見る名無し垢版2011/02/08(火) 03:44:45ID:iZXiO31+
2ndってことか?
まあ好きにすればいいんじゃね
お前にリーダーシップでもあるんなら成功するかもしれないし
0089創る名無しに見る名無し垢版2011/03/11(金) 20:51:46.66ID:Snvof70j
地震が……

皆さん無事ですか?
0091創る名無しに見る名無し垢版2011/03/12(土) 01:44:53.85ID:d39wGOdY
地震の話はスレ違いなんで余所でやってください
というかこんなとこに書いてもしょうがないだろ、人もいないのに
0094創る名無しに見る名無し垢版2011/04/02(土) 22:58:50.39ID:BjA0b3mt
ほしゅ
0095創る名無しに見る名無し垢版2011/04/11(月) 22:35:54.28ID:IM+dH9WA
保守するのはやめない
0098創る名無しに見る名無し垢版2011/04/23(土) 07:20:03.67ID:vpxp4SSI
保守
0099創る名無しに見る名無し垢版2011/04/27(水) 05:50:21.89ID:APCNTSt4
保守
0100創る名無しに見る名無し垢版2011/04/29(金) 08:21:46.17ID:++HSrqi1
保守〜
0101創る名無しに見る名無し垢版2011/05/04(水) 10:04:23.43ID:2lovpCo+
保守!
0102創る名無しに見る名無し垢版2011/05/12(木) 05:39:51.08ID:hg7irVYI
保守
0103創る名無しに見る名無し垢版2011/05/14(土) 09:21:04.13ID:Q9IT/Pl3
保守
0104創る名無しに見る名無し垢版2011/05/19(木) 21:10:56.13ID:uOy2Brxa
保守
0105創る名無しに見る名無し垢版2011/05/19(木) 22:42:04.90ID:KgtlstOC
久しぶりに見に来たけどまだワンピキャラ死んでないのかよ
酷い贔屓だなさっさと殺せ
0111創る名無しに見る名無し垢版2011/06/14(火) 05:51:19.56ID:Fue2o3XK
保守
0114創る名無しに見る名無し垢版2011/06/14(火) 23:49:33.06ID:X4uGwPu2
保守もいいんだが
まずwikiからこのスレへ来れるようにリンク貼りなおしたほうが
良いんじゃないか?
申し訳ないが自分wiki編集のやり方知らないんで提案しかできませんが
0115創る名無しに見る名無し垢版2011/06/19(日) 04:33:32.48ID:dS5xg/zr
>>114
「誰か教えて」じゃなくて、「誰かやって」なんだな
お前も保守としか書き込まない奴と大差ないよ

@編集したい画面を表示する
A画面の上の灰色のバーにある[編集]をクリック→[このページを編集]を選択
Bテキストエリアが表示されるからその部分を編集する
C「非ログインでの編集投稿には〜」の部分に文字列を入力して、[ページ保存]をクリック
0122創る名無しに見る名無し垢版2011/10/18(火) 17:36:39.27ID:r9CDebyp
Fate/Zero アニメ化
WORKING!! アニメ二期
終わりのクロニクル 同作者の境界線のホライズンがアニメ化
ワンピース アニメ新章突入
ひぐらしのなく頃に OVA発売
スクライド ブルーレイ発売決定
とある魔術の禁書目録 映画化決定
ジョジョの奇妙な冒険 第八部連載開始

参戦作品に話題は消えないんだけどこっちはこないなー・・・
0123創る名無しに見る名無し垢版2011/10/19(水) 21:29:11.31ID:C7B4GfKd
こないねー……

Fate/Zero、原作も最高だがアニメで動くとやっぱりいいね
征服王!征服王!

ウェイバーと殺人鬼主従のキャラが良すぎて
投票のときに把握してなかったのが悔やまれるw
0125創る名無しに見る名無し垢版2011/10/26(水) 21:37:51.67ID:bcfdv2NG
WORKINGこのロワ読んでた頃は全然知らなかったけどすげー萌えるな
ぽぷらとかも出てれば良かったのに
0130創る名無しに見る名無し垢版2011/11/06(日) 11:31:34.47ID:9c8q4Ea9
ルフィもクロコダイルもウソップも死んでんじゃん。
そこまで贔屓されてなくね?
0134創る名無しに見る名無し垢版2011/12/13(火) 02:58:05.79ID:ifz3Tkj8
ピカチュウおらんのか?
0138創る名無しに見る名無し垢版2012/01/25(水) 23:01:41.59ID:7F1n5j0k
征服王とクーガーの兄貴って文化の愛好者同士、もし会っていたら気があったかもしれんなぁ
0147創る名無しに見る名無し垢版2012/11/13(火) 01:30:27.46ID:UmUUFrc6
予約来てるじゃねーか!
0153 ◆Wott.eaRjU 垢版2012/11/16(金) 21:31:21.93ID:sCYgM0AW
凄くお久しぶりです。
ヴァッシュ・ザ・スタンピード、水銀燈を投下します。
0154Wの再会/天使達には羽根がある ◆Wott.eaRjU 垢版2012/11/16(金) 21:32:39.07ID:sCYgM0AW
参加者六十五名による殺し合いが、あと数時間で丸一日経とうとしていた。
二十数時間、一日に満たない時間の内に約五十に上る参加者が既に脱落している。
ある者は殺し合いの阻止を狙い、またある者は参加者の命を狙い、そしてまたある者は自分の信じる道を進んだ。
彼らが死の間際に抱いた感情は千差万別だろう。
その感情に優劣はない。ただ誰にも届かなかった感情、言うなれば想いの残渣だ。
それでも残った参加者は死者の想いを継ぐように、今も殺し合いに身を投じている。


「……遅いわね」

一つの小さな黒い影が小さな言葉を漏らす。
その影は透き通るような銀髪を風になびかせている。
真夜中に溶け込むような漆黒のゴシックドレスが良く似合っている。
小さな少女――否、小さな『人形』は水銀燈と言った。
真夜中の野外に立ちつくす彼女は、待ち人を待っていた。

(なにやっているのかしら、私……)

水銀燈が待ち人と決めた時間は三十分。
待ち人は三十分後に戻ることを約束していたが、一時間以上が経過しても姿を見せない。
彼女が支給された時計で時間を確認した回数はもはや数えきれなかった。
そして彼女が約束の三十分をとうに過ぎた今でも、待ち続けているのには理由があった。

(そうよ。あいつの力は必要よ。私が生き残るために、利用する手はないわ)

他人頼りの自分を認識させられるのは、正直堪えるものがあった。
どんな時でも、自分だけの力を信じてきたことは彼女なりのプライドだったためだ。
しかし、彼女は妥協し、プライドよりも自らの脱落を防ぐ手段を選んだ。
彼女がローゼンメイデンとして生を受けた世界とは違い、ここでは一人で生きていくことはあまりにも難しいのだから。
わかっているだけでも一人、彼女にとって障害となる存在が居る。

(ゼロ……あいつは許せないわ。でも、私だけではどうやっても……勝てない)

殺し合いが始まり、水銀燈が大半の時間を共に過ごした仮面の男はゼロと言った。
ゼロの圧倒的な力はまさに魔人と言えるものであり、サカキと土御門元春を殺した。
恐らくは偽名である彼のことについて、彼女が知っていることはあまりにも少ない。
わかっていることは彼女にはゼロを利用することは出来ず、手にあまる存在であったこと。
そしてゼロの手により、彼女がこの世界でも最も忌み嫌う『ジャンク』にされてしまったことだ。
ゼロのことを考えると、片腕が『あった』箇所が微かに震えるような感覚が走った。
不快な感覚を振り払うかのように頭を左右に振り、彼女はただ前を向いている。
視界に入る影はひとつもない。彼女は依然として孤独なままだ。
0155Wの再会/天使達には羽根がある ◆Wott.eaRjU 垢版2012/11/16(金) 21:33:46.36ID:sCYgM0AW
「まさか、来ないなんてわけじゃあ……」

再び小さな声を漏らす水銀燈の表情は曇っていた。
わざわざ声に出した理由は、その呟きを誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。
表情には明らかな不安が染み出している。
何度も考えて、何度も切り捨てた最悪な考えが現実味を帯びてくる。
待ち人が未だ姿を見せない理由は、何かの事情で遅れているわけではない。
単純な答えは、ただ――来る気がないだけではないのか。
待ち人は仲間達の説得に失敗し、水銀燈を見捨てたということを示していた。

思い返せば水銀燈には思い当る節は幾らでもあった。
待ち人とのファーストコンタクトに大きな問題はない。
同行者のゼロが、自分を見失いそうになった待ち人に言葉と行動で働きかけただけだ。
重要なのは、水銀燈がゼロの元を離れ、古城へ向かった時のことだ。

(伊波まひるを殺した私は、受け入れられない。そういうことでしょうね)

ARMSの力に飲まれ、暴走した少女、伊波まひるを水銀燈は殺した。
水銀燈に殺意はなく、伊波の思惑により引き金を引かざるを得なかったわけだが、その事情は理解されないだろう。
待ち人を取り巻く仲間達は、きっと水銀燈の言い分を理解しようとはしない。
水銀燈が伊波まひるという一人の少女を殺したことは事実だから。
そもそも、伊波が暴走する原因になったのは、水銀燈が彼女の腕を切り落としたためだ。
更に加えるとすれば水銀燈は、待ち人の仲間である、ロロノア・ゾロや新庄・運切らと交戦した。
そんな状況に立たされた自分の言葉が、どこまで信頼に足るのかが水銀燈にも自信はない。
少なくとも逆の立場であれば彼女はこう言い捨て、耳を傾けようとしないだろう。
『おばかさぁん』――言い慣れ親しんだ嘲笑の言葉で、間違いなく。
そう思えば不意に笑いが込み上げてきた。惨めな笑みだった。

(きっとそう……しかたない、のよ)

感情の色は既に不安ではなく、諦めに移り変わっていた。
誇り高き、ローゼンメイデンの第一ドールを知る者が居れば驚いたことだろう。
常に誰よりも自分という存在を信じた水銀燈とはあまりにもかけ離れている。
しかし、これが今の彼女の姿だった。
片腕は無残に千切れ、誇りとも言える漆黒の羽も乱れている。
今の水銀燈が自力で生き残ることが難しいのは、誰よりも彼女自身が痛感している。
だが、結局待ち人は現れず、彼女は一人のままだ。
崩れるように座り込む水銀燈は、最早前を向くことは出来なかった。

期待していたわけではなかった。
どうせ無理だとは思っていた。
受け入れてくれるとは思わなかった。
あの状況で、自分の言葉をそのまま信じる。
その行為がどれだけ無謀かは彼女自身がよくわかっていた。
彼女さえ信じられないのだから。
もし、信じる者が居たらそいつは、ばかだ。
本当の大ばかだ。

だけど彼女には一人だけ心当たりがあった。
彼女の言葉を信用した人間が、大ばかが一人だけ――


「水銀燈!」
0156Wの再会/天使達には羽根がある ◆Wott.eaRjU 垢版2012/11/16(金) 21:34:40.43ID:sCYgM0AW
水銀燈は思わず顔を上げて、声の聞こえた方へ目をやる。
自分の名前が慣れ慣れしく呼ばれたことも気にならない。
薄紫色の双眸が動き、探す――彼を。
待ち人を。一人の青年を。彼女の言葉を信用とした唯一の青年を。
彼女にとって、希望と成り得るかもしれない存在を。



「やぁ――」



息を乱しながら、彼は水銀燈の前まで走ってきた。
漆黒のコートを風になびかせ、彼は額を片腕で拭う。
真夜中でも彼が汗をかいていたことが、水銀燈にはよくわかった。
恐らくは全力で走ってきたのだろう。ただ、自分のために。
彼のそのひたむきさが水銀燈には、どこか自らの手に余るような心地がした。
そして彼が言葉を開く。




「お待たせ」




『人間台風』――ヴァッシュ・ザ・スタンピードはようやく彼女と再会した。



◇     ◇     ◇
0157Wの再会/天使達には羽根がある ◆Wott.eaRjU 垢版2012/11/16(金) 21:35:40.01ID:sCYgM0AW
「――というわけだ。だから僕はサヤマ達と別行動を取り、君についていくよ」

一際大きく生えた木を背にしてヴァッシュがそう話す。
彼は仲間である佐山・御言らと話しあったことを水銀燈に伝えた。
佐山を筆頭とし、ロロノア・ゾロ、新庄・運切、小鳥遊宗太は古城の仕掛けの調査に向かう。
『力が欲しければ戦いの証を一つ提示せよ』、と記された三つの○の窪みの謎を含めての調査だ。
そして仕掛けの謎を調査し終えた後には地下に潜り、探索を行う。
佐山は地下を走る地下鉄はカモフラージュであり、地下空間には隠された部屋があると考えているらしい。
地下空間の広さは把握出来ていなく、探索にかかる時間はめどがたっていない。
そのため時間は指定せずに、ヴァッシュと佐山で持ち分けた黒色火薬の狼煙で連絡を取り合うことを決めた。

使用するのは早くても日の出後。
佐山達が地下の探索を終了した場合に合図し、ヴァッシュが2種類の合図を打ち返す。
直ぐに動ける場合には1本を打ち上げ、E-2駅もしくは隣のホテルへと向かう。
直ぐに動けない場合には2本を打ち上げ、次の放送までに同じくE-2駅もしくは隣のホテルへと向かうという内容だ。

「ふぅん…まあ、私は構わないわぁ。好きにすれば」

しかし、彼女の言葉はどこか心あらずといったものであった。
水銀燈にとって佐山達の事にはあまり関心がないためだろう。
重要なのは敵であるか味方であるか、それぐらいのことでしかない。
もしくは、彼女は自分の感情を迂闊には見せたくはなかったのかもしれない。
ヴァッシュが同行するという事実に対しての感情を。
改めて、確認するように水銀燈が再び言葉を紡いでいく。

「そうさせてもらうよ。それで中央に向かうなら、知り合いや仲間になってくれる人達も探そう。僕達は力を合わせる必要がある」

大木を隔て、ヴァッシュとは反対側の位置に腰かけた水銀燈が言葉を返す。
ヴァッシュが提案したのは未だ見ぬ友好的な参加者との接触だ。
前回の放送で残っていた人数は24人。
その内、ヴァッシュ達一向や伊波まひる、ハクオロを除けば16名が生存している可能性がある。
殺し合いを止めるだけでなく、この会場から脱出する必要もある。
脱出を行う際には、主催者であるギラーミンとの対決は免れない。
ギラーミンが有している力が不明であるため、仲間は多いに越したことがないと考えるのは自然なことだろう。
0159Wの再会/天使達には羽根がある ◆Wott.eaRjU 垢版2012/11/16(金) 21:36:24.94ID:sCYgM0AW
「わかったわぁ。ところで……結局、あいつらはゼロとやりあうってことなのね?」
「ああ、サヤマ達はそう決めた」
「どうかしらねぇ。わたしの情報だから、信用していないだけじゃないのぉ?」

不意に水銀燈が疑問を投げかける。
古城の仕掛けはゼロにとっても調査の対象であり、彼が向かう可能性は高い。
長い間共に行動していた水銀燈が知っている情報であり、ヴァッシュを介して佐山達に伝わった。
殺し合いに乗ったゼロの力は強大であり、出来るものなら避けるべきであろう。
だが、佐山達は古城へ向かうことを断念せず、ゼロと対峙する覚悟を決めた。

「そんなコトはないよ。サヤマは冷静だ…水銀燈が教えてくれたこともしっかりと伝えてある。アイツなら、ゼロのコトも考えているはずだ」

対してヴァッシュは水銀燈の言葉を否定する。
ヴァッシュが佐山・御言という男と共有した時間はそれほど多くない。
それでも彼が悪い人間ではないことはわかるし、何より新庄の仲間というだけで十分だった。
更にゾロという腕の立つ剣士も居ればそうそう遅れを取ることもないだろう。
だからこそ古城の、そしてゼロの件は佐山達に任せられる。
ヴァッシュにもやらなければいけないことが、どうしても確かめたいことがあるのだから。

「まあ、どっちにしろいいわぁ。それにしても意外ね……本当に戻ってくるなんて」
「そっちこそ。僕も、水銀燈がずっと待っていてくれたなんて思わなかったよ」
「……うるさいわねぇ。アンタに用があったわけじゃないわ。アンタの力に用があったのよ」

ヴァッシュと佐山のように、水銀燈とヴァッシュが共有した時間もまたあまり多くない。
短い時間であれども、その間に見せたヴァッシュの抜き撃ちや身のこなしは彼女の目を見張るものがあった。
ゼロに届くかはわからないが、ヴァッシュはきっと役にたつことだろう。

「はは…ヒドイ言われようだなぁ」  
「なによぉ。だったら、どうしてそんなにヘラヘラしてられるのよ」

水銀燈のなげやりな言葉にヴァッシュは苦笑いを浮かべる。
彼女にはヴァッシュの笑みが理解出来なかった。
不快に思うのであれば怒って見せればいい。
力だけにしか価値がないと言われて、プライドが傷つけられたのなら当然だ。
0163Wの再会/天使達には羽根がある ◆Wott.eaRjU 垢版2012/11/16(金) 21:37:54.66ID:sCYgM0AW
「そりゃあ、嬉しいことは嬉しいさ。僕の力を水銀燈が必要としているなら、きっと役に立てることがあるだろうしね」


だが、ヴァッシュには堪えている様子は見られない。
ヴァッシュが何十年以上も地をさすらい、磨いてきた技術は人を殺さないためのものだ。
人を殺さない――すなわち、誰かを守る力が人の役に立てれば嬉しいことはない。
たとえ水銀燈がヴァッシュを利用しているだけであっても、その感情に変わりはなかった。

「僕だけじゃない。リヴィオってヤツも居る。
アイツだってきっと水銀燈の力になってくれるさ」
「リヴィオねぇ……聞いたコトのないヤツだわ」
「アイツも凄く腕がたつヤツなんだ。割と無口なヤツだけど、あれでけっこうお茶目なところがあってさ……。
とにかく、会ってみるとわかるさ」

ヴァッシュが口にしたのはリヴィオという一人の男の名前だ。
リヴィオはヴァッシュの仲間ともいえる存在である。
ただし、正確に言えば元々ヴァッシュが居た『時間』での話しだ。
この殺し合いに集められたリヴィオは、リヴィオであってリヴィオではない。
ダブルファングの異名を持つ、GUNG-HO-GUNSの一員であった頃のリヴィオだ。
ニコラス・D・ウルフウッドが救いだした、『泣きむし』リヴィオではない。

(そうだろう、リヴィオ。外道の、人殺しの技術でも、
誰かを守れるなら嬉しいって、おまえ言ってたもんな……)

だから、ヴァッシュには想像がつかない。
リヴィオが殺し合いに乗り、ウルフウッドを含め多くの参加者を殺害した現実に。
ヴァッシュがその現実に気づくためにはリヴィオと対峙するしかない。
それこそがヴァッシュが佐山達と別行動を取る間に行うと決めたことである。
ラズロとして佐山、小鳥遊、ゾロを襲ったリヴィオに今何が起きているかを確かめる。
だが、その瞬間こそ、ヴァッシュの願いが砕かれる時であるのはなんと皮肉なことだろう。

「せいぜい使えるヤツだと期待しておくわぁ。ローザミスティカも持っていれば好都合だしねぇ……」
「その、ローザミスティカを集めるとどうなるんだい?君達、姉妹の魂のかけらだとは前に言っていたけども」

水銀燈が呟いた言葉にヴァッシュが反応をする。
ローザミスティカとはローゼンメイデンの、生命の源ともいえるものだ。
七つのローザミスティカを一つに集めることで、究極の乙女であるアリスが誕生する。
それが彼女達の創造主であり、『お父様』の願い。
ローゼンメイデンはアリスへの到達を目的とし、薔薇仕掛けの戦いを強いられている。
当然、水銀燈もアリスを目指すために、ローザミスティカは絶対に必要なものだ。
0164Wの再会/天使達には羽根がある ◆Wott.eaRjU 垢版2012/11/16(金) 21:38:39.10ID:sCYgM0AW
「ふん、どうして教えないといけないのかしらぁ?
わたしにとってローザミスティカは、とても大切なもの……それだけよ」


語気を荒げながら水銀燈が言葉を続ける。
アリスになるということは、お父様の願いを叶えるということである。
それは水銀燈がこの世界で唯一愛する、お父様の愛を一身に受けることを意味する。
姿すらも見たことないお父様の願いは、水銀燈にとって神聖なものだ。
他人に知ってもらう必要はない。
今となって、一時間前ほどにヴァッシュに余計なことを喋りすぎたと後悔する。
お父様との約束事に、他人が顔を出すことはあってはならないのだから。

一人目の姉妹として造られながらも、水銀燈には未だ愛が足りていない。
いつまでも続くような夜を超え、求め続けた愛を手に入れるために彼女は生きている。
その譲れぬ愛に関してはどうしても感情的になってしまう。
たとえ自分が片腕を失い、アリスになる権利を喪失した今となってでもだ。

「大切なものか……オーケー、了解だ」
「あら?ずいぶんあっさりと引き下がるのねぇ」

対するヴァッシュの反応は明瞭で潔かった。
ローザミスティカを集めることが、ヴァッシュにとって不都合な事態になることもあるだろう。
たとえばローザミスティカの力で、水銀燈がヴァッシュの油断をつくようなことが起こるかもしれない。
だが、ヴァッシュは拘る様子はなく、深く追求しないままあっさりと引き下がる。
水銀燈にとって都合のよいことだが、ヴァッシュの態度は逆に気に入らなかった。


「あなた……もしかして、私のコトなめているんじゃないでしょうね?
力も弱い、人形でしかない私がどうせ何をしたって自分は殺せないだろうから……。
そんな私が何を言っても気にならない、そう思っているんじゃないでしょうね?」


理不尽とも言える言い分を水銀燈はヴァッシュにぶつける。
自らの無力さ、人形という存在は水銀燈が一方的にこの殺し合いで痛感した事だ。
ヴァッシュには非がない。しかし、水銀燈は元々ヴァッシュの態度が気に入らなかった。
力がある癖に積極的には使わず、誰も殺さないだの綺麗事ばかりを口にする。
そしてただ言葉にするだけでなく、実際に行動に出ることが気に入らない。
自分を殺そうとした相手も、仲間を殺した相手も、水銀燈ですらも守ろうとする。
ヴァッシュの行動がただ、単純な同情からくるものではないかと彼女は感じていた。
0167Wの再会/天使達には羽根がある ◆Wott.eaRjU 垢版2012/11/16(金) 21:40:17.59ID:sCYgM0AW
同情であるなら水銀燈は受け入れられない。
たとえ片腕を失って、ジャンクになろうとも彼女はローゼンメイデンだ。
他人の同情の殻にこもり生きていくことは、堪えられない。


「違うよ」

ヴァッシュが返答する。
言葉と、そしてヴァッシュの浮かべた表情を見て、水銀燈は目を見張った。
ヴァッシュが浮かべた表情は苦笑いではなく、真剣なものだった。
何年、何十年、何百年も遠い何かを見つめていたような、まなざしが物語る。


「――本当に大事なものは、心に結びついたコトは言葉にしにくい時だってある。
だから、僕は君の『大切なもの』を信じる。信じられるさ」


改めて水銀燈はヴァッシュ・ザ・スタンピードについて知っていることは少ないと感じた。
知っていることといえば全て表面的なものだった。
隙がありそうで、実際のところヴァッシュが見せる隙は表面的なものでしかない。
決して心の奥底を見せようとしないヴァッシュだからこそ、心に踏み込んではこない。
言葉による説明を求めず、水銀燈の想いを信じようとしてくれている。
ずっと他人を信じようとはしなかった彼女が、これほどまでに他者から信じられようとするのは初めてだった。


「さぁ、そろそろ行こう。妹さん……真紅にも会えるかもしれないしね」

水銀燈は知る由もないが真紅は既にゼロの手により脱落している。
ローゼンメイデン第五ドール、真紅は水銀燈の妹ではあるが姉妹の関係は良くない。
真紅とはアリスへの到達を競う相手であり、敵対しているためだ。
既に真紅が水銀燈を危険な存在であると、仲間達に知らせているかもしれない。
恐らくこの殺し合いには乗っていない真紅を敵に回すとなると、仲間集めに支障が出るだろう。
真紅の言い分を受け、彼女の仲間達が水銀燈を受け入れてくれないかもしれない。
そう、水銀燈一人ではきっと。
だけど――今は信じようとしてくれている存在が一人だけ居る。
一人だけでも居るのだ。


水銀燈がようやく口を開こうとする。
いつの間にか彼女の表情に諦めは消えていた。
心なしか彼女は、小さな笑みを浮かべていた。


「あなたってほんとうに……おばかさぁんねぇ」


旅が始まる。
一人の人間兵器(プラント)と一人の少女人形(ローゼンメイデン)の旅が。
二人の天使が、大切なものをその手に掴むために。
0169Wの再会/天使達には羽根がある ◆Wott.eaRjU 垢版2012/11/16(金) 21:41:01.16ID:sCYgM0AW
「あ、ところでギンちゃんって呼んでいいかな?」
「殺すわよ」
「デスヨネー」





【B-2 学校近くの森/1日目 真夜中】

【ヴァッシュ・ザ・スタンピード@トライガン・マキシマム】
[状態]黒髪化、左肩に刺突による傷(再生中)、脇腹の痛み、全身に打撲
[装備]ヴァッシュ・ザ・スタンピードの銃 6/6 @トライガン・マキシマム
[道具]支給品一式、拡声器@現実、予備弾丸28発分、佐山のメモ(三回目の放送内容について)、黒色火薬入りの袋×2
[思考・状況]
基本:殺し合いを止める、今度こそ絶対に。
 0:水銀燈を手伝う。
 1:リヴィオを見つけ、殺し合いに参加している場合は止める。
 2:仲間を募る、機会に詳しい参加者を見つける。
 3:ウルフウッドとの合流。
 4:出来れば水銀燈を佐山達のところへ連れ戻したい。
【備考】
 ※原作13巻終了後から参加
 ※サカキ、ロベルタの名前はまだ知りません。
 ※詩音を『園崎魅音』として認識しています。詩音は死んだと思っています。
 ※口径などから、学校の死体を殺すのに使われたのはロベルタの持っていた銃ではないかと考えています。
 ※義手の隠し銃には弾が込められていません。弾丸を補給すれば使用可能です。
 ※伊波、新庄と情報交換をしました。佐山、ブレンヒルト、小鳥遊、高槻、メカポッポ、片目の男(カズマ)の情報を得ました。
 ※水銀燈の左腕が欠損していることに気づきました。
 ※佐山達との合流のため、狼煙のルールを決めました。
  1、使用するのは早くても日の出後。
  2、佐山達の狼煙を発見し次第、ヴァッシュ達が返答の狼煙を上げる。
  3、すぐ向かえる場合、1本の煙をたて早急にE−2駅へ、もしも駅が禁止エリアだった場合は隣のホテルへと向う。
  4、すぐに向かえない場合、2本の煙を立て、その時の次の放送までに集合場所へと向かう。


【水銀燈@ローゼンメイデン】
[状態]:全身に切り傷、左腕欠損(包帯を巻かれている)、右の翼使用不能、全身にダメージ(中)
[装備]:強力うちわ「風神」@ドラえもん
[道具]:基本支給品一式(1食分、水1/10消費)
[思考・状況]
基本方針:元の世界へと戻る、手段は選ばない。
 1:ヴァッシュと共に川沿いに山を下り、市街地で姉妹達のローザミスティカを探す。
 2:ゼロに対抗するための戦力を集める。
 3:ほとぼりが冷めるまで佐山達には会いたくない。
【備考】
 ※ナナリーの存在は知りません
 ※会場がループしていると確認。半ば確信しています
 ※古城内の大広間に『○』型のくぼみがあります。このくぼみに何が当てはまるかは不明です。
 ※魅音(詩音)、ロベルタの情報をサカキから、鼻の長い男の(ウソップ)の情報を土御門から聞きました。
  ※ヴァッシュが佐山達と決めた取りきめの内容を聞きました。
0172 ◆Wott.eaRjU 垢版2012/11/16(金) 21:42:56.34ID:sCYgM0AW
投下終了しました。
支援ありがとうございます。
大体二年ぶりぐらいかな……また人が集まってくれると嬉しいですね。
0173創る名無しに見る名無し垢版2012/11/16(金) 22:04:08.15ID:Jrh823+O
投下乙!
ついに動き出した、○ロワ!
そしてヴァッシュと銀ちゃん!
復活の一話に相応しい転換話だと思いましたっ!
0175創る名無しに見る名無し垢版2012/11/17(土) 00:12:27.02ID:5psJunrv
投下乙です!&おかえりなさい
ブラックエンジェルコンビは合わないようで息が合ってて不思議とニヤニヤ出来るなあ
銀ちゃんとヴァッシュはそれぞれ真紅とウルフウッドの死亡をどう受け止めるのか
そしてお互いに因縁持ちの下手人、ゼロとリヴィオに再び出会うことはあるのか
今後の波乱を予感させるお話でした、銀ちゃん可愛い!
0177創る名無しに見る名無し垢版2012/11/17(土) 23:40:21.12ID:6d6da14x
投下おつです。

まぁ、ヴァッシュは筋金入りのお人よしだからなあ。
ほんきで銀様に手を差し伸べているんだし。
まさか、リヴィオが乗ってるはずないってヴァッシュは思ってるけどそいつ覚悟完了しちゃってるよ、逃げてー!
ほんらいだと最高の相棒になるんだけどここでは最悪の敵っていってもいいし。
最悪、なぶり殺しにされちゃうぞ、ヴァッシュ……。
高確率で会いそうだから心配だなあ、このコンビ。
0179代理投下◇gYicWyTl/M垢版2012/11/18(日) 22:52:51.11ID:JUCJ/NKg
本スレ規制のため、こちらに投下します。
言い忘れましたが予約の分はB−1ルートです。
どなたか代理投下してくださったら助かります。

では投下します。
0181恥知らずの破壊者たち    ◇gYicWyTl/M垢版2012/11/18(日) 22:53:37.79ID:JUCJ/NKg
銃声と煙が道標になった。湖の岸辺で長いこと佇んでいたミュウツーは、我に返ると南の空を見やり、耳をすませた。
そう遠くない位置から轟音が響いていた。弾丸が飛び交う音、男たちの叫び声。そこでは戦いが起きている。

だがすぐにでも動けばいいはずだというのに、彼は動かなかった。
視線を再度下におろし、そこにあるモノを見つめる。足元に転がる少女の遺体を、彼は長いこと見つめていた。

金縛りにあったように動けなかった。死にゆく母を見送るように動かなかった。
物言わぬ少女が堪らなく不憫だった。青白い顔で眠り続ける彼女が哀れだった。
それを殺したのは他ならぬ、自分だというのに。

ミュウツーはそっと目を伏せた。結局彼は少女を埋葬せずにそこを去る。追悼も、謝罪の言葉もそこには残されなかった。
湖に溶けていくような沈黙がそこにはあり、後には少女の固く冷たい身体が転がっていた。
少女の死体は死んだように静かで、黙ってそこに横たわる。その瞳は湖の上を揺らすさざ波も、もはや写していなかった。



0183恥知らずの破壊者たち    ◇gYicWyTl/M垢版2012/11/18(日) 22:54:16.07ID:JUCJ/NKg
身体がどうしようもなく重い。心なしかいつもより超能力の効力が薄い気もする。
ミュウツーは南へ飛んだ。自慢の能力を行使し、空を飛び、戦地へ赴く。

時間が恐ろしくゆったりと流れていた。ものを考えるのに必要以上の時間がかかる。
脳裏に浮かんだのは少女の最期。手にこびり付くのは骨の感触。
眩暈がしそうだ。考えまいと思えば思うほど、今自分がやった行為が鮮明に蘇った。
そしてそれはひどく彼を参らせた。時折彼を足止めするほどに、何度も彼を振り返らせるほどに。
結局、戦いの場所に辿りついたのは、全てが終わった後だった。

狙撃されないよう離れた位置からゆっくり接近していくと、硝煙と焦げた肉の臭いが鼻をつく。
辺り一面に飛んだ血が大地を奇妙な具合に染めていた。とても静かだった。
静かで、何もかもが止まっていて、無表情で……終わりを想わせる沈黙がそこにはあった。

「よォ、アンタか」

乾いた声がミュウツーを迎える。振り向くことなく、背中越しにミュウツーに声をかける男がいた。
その声や後姿には見覚えがあった。数時間前、共に戦うことを誓った同盟者の一人。
リヴィオ・ザ・ダブルファングだ。二丁拳銃使いの凄腕ガンマン。ミュウツーすら惑わす、突出した再生力と破壊力を持つ男。

そう、間違いなくリヴィオ・ザ・ダブルファングであるはずだ。そうであるはずだというのに、ミュウツーにはそれが信じられなかった。
間違いなく同じ姿、同じ声の同一人物。それが信じられぬほどに彼の図体はどことなくすぼんでいて、丸まって、淋しそうに見えた。
まるで行き場をなくした、孤児のようだった。リヴィオはミュウツーに声をかけたっきり、しばらくの間無言のままだった。

点火音が響き、かさついたものが焦げる臭いが続いて流れた。
男はタバコをくわえると大きく煙を吸った。細い煙が立ち上る。男のくすんだ眼がそれを追う。

二人が戦うには互いに些か疲れ過ぎていた。微かな緊張を含んだ沈黙がしばらく続いたが、共に獲物には手をかけない。
リヴィオは暗く繁った森を眺め、ミュウツーは男を眺めている。
そうしてしばらくしたのち、リヴィオは胸のポケットから煙草の箱を取り出し、二、三度縦に振ってから相手のほうへ向けた。


「吸うか?」


ミュウツーは黙って首を振った。

ひとしきりの沈黙の後、喉を鳴らす笑い声。
それもそうだよな。化け物がタバコだなんてそりゃないよな。そう男は言い、しばらくの間笑い続けた。
無理に笑っているような、中途半端な筋肉の引きつりが彼の顔には浮かんでいた。しかしそれも一瞬のことで、煙のようにふと消えてしまった。
0184恥知らずの破壊者たち    ◇gYicWyTl/M垢版2012/11/18(日) 22:55:03.22ID:JUCJ/NKg
また深い沈黙がある。辺りは恐ろしく静かだ。


「襲わないのか?」
『……同盟者だからな』
「同盟か……とっても素敵な言葉だ」


リヴィオは最後にそうつけ加え、また笑った。

無表情でいるミュウツーと、無理してでも笑うリヴィオ。
一体どっちがより傷ついているのだろう。どちらがより悩んでいるのだろう、迷っているのだろう。
ミュウツーは気づく。自分は眼の前の男に同情しているのだと。からっぽに見える男に自分は自らの影を重ねているのだと。

「なんでアンタ殺し合いなんかに乗ってるんだ?」
『……父のためだ』
「父?」

三度目の質問。ミュウツーはその問いかけに正直に答えた。ほとんど反射的といってもよかった。
どこか気の抜けた様子で、リヴィオは空を見上げる。指の間に挟んだ煙草は見る見る間に短くなっていた。
肌を焦がすほど短くなったころになって、ようやく男はそれに気づき、火をもみ消す。
父親、ともう一度確認するように彼は問いかけてきた。ミュウツーはそうだ、とだけ短く返した。その断固とした言い方に、リヴィオもそうか、とだけ返した。

ミュウツーが問いかける。今度は彼が質問する番だった。


『そういうお前は……』
「……なんでだろうか」


一寸の空白。リヴィオは答える。


「殺したいから殺した。殺ししか知らなくて、沢山、沢山殺した」
『……コイツもお前が殺したのか』
「……ああ、そうだ」

ボロ雑巾のように捨て置かれた黒服の男、それを顎で指しながら問うとリヴィオは答えを返した。


リヴィオが言いたいのはなにも“ここ”に来てからのことではないのだろう。それは口調からでもわかることだった。
生まれついてか、環境がか。或いは教育が彼をそうしてしまったのかは定かでない。
だが彼は殺したのだろう。機械のように殺したのだろう。感情を持たない殺人鬼のように、殺して、殺して、殺しつくしたのだろう。
黒服の男も感情一つ動かさず、殺したのだろう。或いは嬉々として殺したのかもしれない。歓喜の金切り声をあげて始末したのかもしれない。
だがそれも終わってしまえばそれまでだ。男にとってはそれだけのことだ。

―――だが本当にそうなのだろうか。
0185創る名無しに見る名無し垢版2012/11/18(日) 22:55:03.74ID:u1checyr
 
0186創る名無しに見る名無し垢版2012/11/18(日) 22:55:37.64ID:u1checyr
  
0187創る名無しに見る名無し垢版2012/11/18(日) 22:56:14.23ID:u1checyr
   
0188恥知らずの破壊者たち    ◇gYicWyTl/M垢版2012/11/18(日) 22:56:52.15ID:JUCJ/NKg
『満足したのか』
「……全然」


リヴィオは指にはさんだライターを長い間回し続けていた。
タバコの箱を手にとって中から一本取り出したがなかなか火をつけなかった。じっと指の間に挟んでいるだけだった。
彼の顔に浮かんだ表情は実に中途半端で、笑えばいいのか、泣けばいいのか、どちらも同時に浮かべようとしているかのように歪んでいた。
リヴィオが言った。ゆっくりと、一言一言考えながら、彼は口を開く。


「殺しても殺しても満たされなかった。この人を殺したら満たされると思った。
 仇打ちをすれば、すぅ……っと気分が満たされると、そう思っていた。
 この人だけは、この人だけは俺が殺してやるんだ。俺が殺さなきゃだめだ。
 そうやって初めて思えた相手だったんだ。
 だけど駄目だ。駄目だったんだ。そう思っていたのに、殺したら、後には……」


次第に声は小さくなり、続きはもはや聞こえない。
沈黙が二人の間を漂った。それは今までのどんな沈黙より深く、暗い、底無しの沈黙だった。


その結果が今のこの空虚さか。その果てがこのありさまか。
リヴィオ・ザ・ダブルファング。力を宿さない瞳と縮んだ背中、萎びれた煙草の臭い。
破壊の果てがこの様か。だとするならば、あまりに惨めではなかろうか。なんて不憫なことではないだろうか。
リヴィオには何も残っていないではないか。振り返る過去すらない。彼を夢見させ、支えるような思い出すらない。

もう彼にはなにもないのだ。空っぽの身体にちっぽけな矜持と、申し訳程度の殺意だけだ。

これがリヴィオだ。これがあの、リヴィオ・ザ・ダブルファングだ。


――だがお前には殺意がある。


ミュウツーは何も言えなかった。零れ落ちかけたその言葉をとどめるのに必死だった。

彼がうらやましかった。それでも突き動かすように残るその殺意が! その執着心が!
ほとんど擦り切れかけているとはわかっている。使い古しの消耗品だ。だがそれでも殺意は殺意だった。
真っ黒で、どす黒くて、だが決して振り返らないし、振り返れない覚悟。

なんと甘美な響きだろう。それをひとえに持ち得たらどれほど素敵な事だろう。
0189創る名無しに見る名無し垢版2012/11/18(日) 22:57:14.49ID:u1checyr
 
0190恥知らずの破壊者たち    ◇gYicWyTl/M垢版2012/11/18(日) 22:57:27.69ID:JUCJ/NKg
戦うための理由はある。それだけを考えてここまで来たのだ。これまで殺して、走り回って、駆け抜けてきたのだ。
今さら後悔だとか、やりなおしたいだとか、そんなことはできやしない。
だが駄目なのだ。できなかった。ミュウツーの奥底にあるカツラの存在が、レッドの笑顔が、アルルゥの声が、自分の感情がッ!

ほんのちょびっとでいいのだ。殺意が欲しい。誰かに立ち向かうだけの、誰かを殺したいと思えるほどの、殺意が!


皮肉だな、そう思ってミュウツーは小さく口角を釣り上げた。
それは笑顔と呼べるものに近かった。悲しくて、醜くて、けれどもそれはどうしようもないほどに、笑顔だった。


リヴィオにはないものをミュウツーが、ミュウツーにはないものをリヴィオが。
殺意はあるのに目的はない。目的はあるのに殺意はない。
全てがちぐはぐだったのだ。悲しくて叫び出したくなるほどに擦れ違っていた、間違っていた。

修復不可能なほどに。もう後戻りはできないほどに。二人の気持ちは壊れきっていた。
一体どうしてこうなったんだろう。二人はただ守りたいものを守りたいと願っただけなのに。


風がどこからともなく音を運ぶと、幾つもの音が一つに入り混じって、淡い闇の中にぼんやりと滲んでいた。
単調な呼吸音は森の静けさに呑まれ消えていく。二人は長いこと口を開かなかった。
リヴィオもミュウツーも、口を閉ざした死体のように、長い間じっと動かなかった。



0191創る名無しに見る名無し垢版2012/11/18(日) 22:57:54.34ID:u1checyr
  
0192恥知らずの破壊者たち    ◇gYicWyTl/M垢版2012/11/18(日) 22:58:34.98ID:JUCJ/NKg
『救いを求めているんだ』
「……救い?」

唐突にそんな声が聞こえた。
問いかけるも、答えは返ってこなかった。代わりにリヴィオは伏せていた顔をあげ、改めて目の前の怪物の顔を見やる。
その奇妙に平坦な視線からは何も読み取ることができなかった。まるで何も考えていないかのようだった。
でも違うとはわかっていた。この目の前の“何か”は、今、リヴィオに『何か』を伝えようとしている。

『俺もお前も、戦うにふさわしいだけの理由を、殺すのに納得のいくだけの救いを……心のどこかで欲している』


―――救い


その三文字の言葉を口の中で繰り返す。救い。
それはリヴィオにとってこの上なく空虚に思えた。馬鹿馬鹿しい戯言だ。腹を抱えて、蹴飛ばしたくなるほどに無意味な言葉に思えた。
だがそうすることはしなかった。身体にその言葉が染みいっていくと共に、彼の脳裏には一人の男が浮かんでいった。

リヴィオは生き残りの中で唯一の知り合いといっていい男の顔を思い出す。
脇に寝そべる牧師の相棒だ。ニコラス・D・ウルフウッドの盟友、ヴァッシュ・ザ・スタンビート。全てを変えていった男のことだ。
ウルフウッドを変え、殺戮の砂漠の世界を変え、そしてこの殺し合いの中ですら、きっと彼は変えようともがき苦しんでいるのだろう。

その赤い外套の男を想い浮かべた時、リヴィオの心に走ったのは卑怯だ、という思いだった。
誰もが何かを諦め、何かを捨てなければいけないというのに、ヴァッシュだけは何一つ捨てていない。諦めていない。
何故彼だけそんな事が許されるのだ。自分だって必死で走ってきた。やってきた。全部を全部、成し遂げようと、ここまで泳いできた。

なのに、なんで。
どうして彼だけは。なんでウルフウッドは。どうしてあの、ヴァッシュ・ザ・スタンビートは。

いつの間にか手に持つ煙草の箱が潰れていた。無意識のうちに握りしめていたらしい。
リヴィオはそれを放り捨てた。唐突に湧きあがった感情が、彼の中で渦巻いていた。
燻り、消えかけた殺意がじりじりと勢いを増していた。
リヴィオは全てをなくしたと思っていた。彼にとって振り返れば、破壊し残したものは何一つないと思っていた。

だがまだあったのだ。
ニコラス・D・ウルフウッドが遺したもの。彼に受け継がれた宿り主。
ヴァッシュだ、と男は無意識のうちに零す。ヤツがまだいる。ヤツがまだ殺し損ねている……、破壊し損ねている……ッ!
0193創る名無しに見る名無し垢版2012/11/18(日) 22:58:57.88ID:u1checyr
 
0195恥知らずの破壊者たち    ◇gYicWyTl/M垢版2012/11/18(日) 22:59:06.31ID:JUCJ/NKg
そこで顔をあげれば視線がかちあった。化け物と見つめあう。彼の視線は一瞬だけぶれた。
動揺からしばらくの間揺れ動くも、やがて悟ったようにその目は落ち着いた。
彼の中に殺意はなかった。リヴィオの様な、自らも焼き尽くすような強烈な想い。その代りに浮かんだのは海の底のような深い覚悟の色。
化け物もまた、戦う理由を見つけた。戦う覚悟が決まった。



救いを欲している。それはミュウツーも同じだ。救われたいのだ、彼だって。
破壊の遺伝子で生まれた生物だ。誰よりも物を上手く壊せるのは彼だ。破壊しか知らず、それだけのために生まれたのだ。
そう、破壊だけで、それだけでよかったはずだ。それだけしかしらなかったはずだ。
けどミュウツーは知ってしまったのだ、それ以外のものを。カツラが教え、レッドが与え、たくさんの人たちがいて……。
それは心苦しめる葛藤だ。人間にも成っていいのか、人間と同じように、心を持っていいのだろうか。
揺れ動く葛藤は決して何物にも属せない、そのくせどちらにも傾けない屈折した自分自身だった。

だが今、それが変わった。
なぜならミュウツーの前にいるのはリヴィオ・ザ・ダブルファング。
男がいる。破壊の化身となった、人間がいる。

それは彼に覚悟を与える姿だった。化け物と呼ばれ続けた自分だ。ポケモンにも成り切れず、人間にも成り切れず、半端ものだった自分。
それを認めてくれた人がいた。ミュウツーにとって“彼ら”は大切な人だった。守りたかった、そして守りたいものだった。

何が人間、何が化け物! リヴィオを見ろ、彼の殺意を見ろ!
よっぽど彼のほうが化け物ではなかろうか! 彼を見て人間だと呼べるものがいるのだろうか!

殺しながら苦しむのは、それが苦しむ行為だと知っているからだ。自分の中でそれを悲しむ心があるからだ。
どうしようもなく自分の一部は人間で、けれども自分は同時にポケモンだ、化け物なのだ。
それがわかったならば、覚悟は決まる。心を捨てずに、心を鬼にすればいい。

カツラは泣くだろう。レッドは怒るだろう。イエローは、アルルゥは……。考えだしたらきりはない。

けれども人でありながら化け物であり続けれるならば……ミュウツーはそうありたい。
心が化け物で入れ物が人間がいる。ならば自分はその逆であってもいいはずだ。
容れ物は化け物でも、心は人間だ。人間だから苦しむのだッ! 他ならぬ、人でありたいと願ったからこそ悩むのだッ!
そしてその姿こそが! 彼らが愛した“ミュウツー”なのだ! 彼らが認めた“自分自身”なのだッ!
0196創る名無しに見る名無し垢版2012/11/18(日) 22:59:28.26ID:u1checyr
    
0197創る名無しに見る名無し垢版2012/11/18(日) 23:00:29.78ID:u1checyr
     
0198恥知らずの破壊者たち    ◇gYicWyTl/M垢版2012/11/18(日) 23:00:48.24ID:JUCJ/NKg
先に立ち去ったのはミュウツーだった。
背中を向けたままの男に、一度だけ視線を向けると、音もなくその場に浮き上がる。
声をかけるべきは最後まで迷った。とても長い時間、迷っていた。
しかし最期までかけるべき言葉は見当たらず、彼はそこを後にする。

不思議と背中を撃たれる気はしなかった。何故だかわからないがそうだと言える、奇妙な確信があった。
心の中で彼に別れを告げる。できることならば彼を殺すのは自分でないことを願った。
最後にこの舞台に立つ者が自分と彼だけになるようなことは……どうしてだか、それだけは嫌だった。

白い化け物が空を飛ぶ。月は薄い影を大地にふらし、やがて森の暗さにその影は紛れ……そしてミュウツーは見えなくなった。
後に残されたのは人間でありながら化け物になった破壊者一人。胸に込み上げる衝動をこらえつつ、彼はポケットに一本だけ残った煙草を味わっていた。


時刻はほとんど12時といってよい時間だった。頭上に上った孤独な月が、まるで街はずれのわびれた街灯のように、辺りを薄暗く照らしている。
月の光はひどくくすんでいて、それにかざした手がいやに黒ずんで汚れているな、とリヴィオは思った。
それは自分の手に見えなかった。誰か知らない人の手を眺めているような違和感があった。
その手はどう見てもこの先誰かを幸せにできるような手には見えなかった。誰かを救うことができる手にも見えなかった。
孤独が彼の胸を締め付ける。男はグッと唇を噛みしめた。

覚悟は決まったのだ。もう迷わない。もう立ち止まらない。
誰も救えなくたっていい。もう自分には救うべき人はいないのだから。
誰を幸せにできなくたっていい。幸せはとうの昔に使い切ってしまった。


幸せはあの懐かしくもタフな日々で充分だ。未来に、自分の幸せはない。


鼓膜には銃声による痛みが微かに残っていた。ウルフウッドを貫いた時の銃声だ。
ミュウツーが立ち去った後には海の底のような沈黙しか残っていない。その寒々としたまでの静寂は尚更、あの一撃の音を、重さを、リヴィオに突きつけた。
容赦なく、そして慈悲もなく。リヴィオはそれを受け止めた。自分の中で、ウルフウッドは二度死んだ。そしてもう蘇らない。

吸い込む空気はどことなくざらざらしている。久方ぶりにすったタバコがまだ体内に残っているのがわかった。
リヴィオは立ち上がりかけた身体を下ろし、その場に座り込んだ。倒れ込む牧師の脇に座り、そしてそっと目を瞑った。

暗闇の中に見えるのは彼が愛した日々、彼が愛した人たち。
それが急速に色褪せていく中、男は黙ってそれを見つめていた。それが擦り切れて見えなくなるまで、ずっと。
リヴィオ・ザ・ダブルファング。彼は大きく煙を吐くと、靴の裏でタバコの火を消した。

立ち上った煙が一瞬だけ月の光を反射させ、それは見事に輝いた。
すぐに霞んで消え去った煙を、男はそれでも長いこと見つめていた。
見つめ続けていた。
0199恥知らずの破壊者たち    ◇gYicWyTl/M垢版2012/11/18(日) 23:01:22.49ID:JUCJ/NKg
【H−3/1日目 真夜中】
【リヴィオ・ザ・ダブルファング@トライガン・マキシマム】
【状態】:ラズロ帰還、両手両足にダメージ、筋肉断裂、全身にダメージ(大)、背中のロボットアーム故障
【装備】:パ二ッシャー@トライガン・マキシマム(弾丸数35% ロケットランチャーの弾丸数1/2) ラズロのパ二ッシャー(弾丸数35% ロケットランチャーの弾丸数0/2)@トライガン・マキシマム
【道具】:支給品一式×9(食料一食、水1/2消費)、スチェッキン・フル・オートマチック・ピストル(残弾20発)@BLACK LAGOON、
     M94FAカスタム・ソードカトラス×2@BLACK LAGOON、.45口径弾×19、.45口径エンジェルアーム弾頭弾×2@トライガン・マキシマム
     ココ・ジャンボ@ジョジョの奇妙な冒険、.45口径弾24発装填済みマガジン×2、.45口径弾×24(未装填)
     天候棒(クリマ・タクト)@ワンピース、ミリィのスタンガン(残弾7発)@トライガン・マキシマム
     三代目鬼徹@ワンピース、コルト・ローマン(6/6)@トライガン・マキシマム
     投擲剣・黒鍵×4@Fate/zero、レッドのMTB@ポケットモンスターSPECIAL、コルト・ローマンの予備弾35、グロック26(弾、0/10発)@現実世界、
     謎の錠剤入りの瓶@BLACK LAGOON(残量 50%)、パ二ッシャーの予備弾丸 1回分、キュプリオトの剣@Fate/Zero
     詩音の首輪、包帯、デザートイーグル50AE(0/8)
【思考・状況】
1:覚悟は決まった。参加者の排除。特にヴァッシュ・ザ・スタンビート。
【備考】
※原作10巻第3話「急転」終了後からの参戦です。
※ウルフウッドの死体はそのままです

【ミュウツー@ポケットモンスターSPECIAL】
[状態]:疲労(小)
[装備]:機殻剣『V−Sw(ヴィズィ)』@終わりのクロニクル
[道具]:基本支給品×3<アルルゥ、仗助、ミュウツー>、どこでもドア@ドラえもん(残り1回)、
    第一の湖の鍵(E−)第二の湖の鍵(−5)
    不明支給品(0〜1)<仗助>、ひらりマント@ドラえもん
    トウカの刀@うたわれるもの、サカキのスピアー@ポケットモンスターSPECIAL
[思考・行動]
 1:覚悟は決まった。生き残り、カツラを救う。
 2:E−5に行く。
【備考】
※3章で細胞の呪縛から解放され、カツラの元を離れた後です。
 念の会話能力を持ちますが、信用した相手やかなり敵意が深い相手にしか使いません。
※念による探知能力や、バリアボールを周りに張り浮遊する能力は使えません。
※ギラーミンに課せられたノルマは以下のとおり
 『24時間経過するまでに、参加者が32人以下でない場合、カツラを殺す。
  48時間経過するまでに、ミュウツーが優勝できなかった場合も同様。』
※カツラが本当にギラーミンに拉致されているかは分かりません。偽者の可能性もあります。
※V−Swは本来出雲覚にしか扱えない仕様ですが、なんらかの処置により誰にでも使用可能になっています。
 使用できる形態は、第1形態と第2形態のみ。第2形態に変形した場合、変形できている時間には制限があり(具体的な時間は不明)、制限時間を過ぎると第1形態に戻り、
 理由に関わらず第1形態へ戻った場合、その後4時間の間変形させる事はできません。
 第3形態、第4形態への変形は制限によりできません。
※概念空間の存在を知りました。
0202創る名無しに見る名無し垢版2012/11/18(日) 23:14:26.32ID:JUCJ/NKg
改めて投下乙!
なんていうか文章がカッコいいなぁ。ミュウツーの感情の表現が特に好きです。
心を捨てようと必死になっていたミュウツーが鬼にする方向で振り切れるなんて……これ、この後どうなるんだよ!続きが気になるなぁ。
ミュウツーの変化が強く印象に残ったけど、リヴィオも面白いことになりましたね。
正直、ウルフウッド殺せたから燃え尽きちゃったかなと思いましたけども、逆にヴァッシュへ執着することで奮い立たせるとは……!
殺し損ねている、破壊し損ねているとか単語のチョイスもカッコいい……!
0203創る名無しに見る名無し垢版2012/11/18(日) 23:20:41.48ID:u1checyr
投下乙!
ここにきて吹っ切れたー!w
幼女一人殺して、ミュウツーもさすがにいままでのままじゃいられんかったか
そしてリヴィオのほうもいいね。前の話と不思議と繋がりを感じるw
0204創る名無しに見る名無し垢版2012/11/18(日) 23:38:52.48ID:gYlbq8Pv
両者共投下乙です!

>Wの再会/天使達には羽根がある
うわあああ、銀ちゃんかわいいよ銀ちゃん!
どこか通じ合うものがあったゼロに裏切られてから、
怒涛のように碌な目にあってない銀ちゃんを包み込むヴァッシュの安定感が凄い

このお人よしさ、単純なようで掴みにくい性格、実にヴァッシュだ
グッとくる深みのあるキャラクターが何とも上手かったです

放送を聞き、リヴィオに会って真相を聞いたらどうなってしまうんだろう…

>恥知らずの破壊者たち
燃え尽き症候群の二人をどうするのかと思ってたが、こんな切なく心に来るような話になるとは
託されてきた温かい心を自ら捨ててきた男と、捨てきれない化け物
マスターの仇をとるための戦いと、マスターを救う為の戦い
似てるようで全く違う立ち位置を上手く対比させて、心理に結び付けてるのが凄い
情景が心に沁みこむような話でした

ああ、しかしリヴィオに救いが欲しい…
0205創る名無しに見る名無し垢版2012/11/18(日) 23:55:55.12ID:53MCGef0
投下乙です

余韻がすごくいい、胸にくる
しかしミュウツーがここまで悲壮な決意を固めてもカツラが偽物かもしれないという悲しさ
報いのない戦いとわかっていながら、リヴィオの救いはその先にあるのだろうか
先が気になる話でした、GJ!
0206創る名無しに見る名無し垢版2012/11/19(月) 21:06:06.86ID:GFVnmzjT
真紅のローザミスティカは絶賛戦闘中の美琴が持ってるよな
翠星石は沙都子として、蒼い子のローザミスティカは回収されてたっけ
0209創る名無しに見る名無し垢版2012/11/21(水) 03:07:32.56ID:iK9o0FrD
投下乙です。

うーん、渋い。リヴィオがタバコを吸うのとか読んでいてしんみりとしてくる。
未来でつかめたはずの幸せはもう二度と手に入ることがないと思うと……。
ミュウツーもアルルゥ殺したらそりゃあ戻れないよな。
此処から先はカツラの為にまっすぐだろうし。
0212Sの選択/仲間はきっとそこに居る ◆Wott.eaRjU 垢版2012/11/25(日) 21:57:49.11ID:IzQMJNzm
闇の中で青い人影がゆらめいている。
スプレーを吹きつけたように染まった青色が嫌でも目につく。
これまた目立つ金髪と合わさり、その存在感をこれでもかと醸し出していた。
そう。非常に鬱陶しいくらいに。

「悲しい……悲しい話をしよう」

青色の作業服を着た男、グラハム・スペクターがぼそりと呟く。
同時に、横に居た小さな少女が頭を抱えるような仕草を見せた。
少女の名は北条沙都子という。
彼女の顔には『また始まった』といわんばかりの表情がはりついている。
グラハムと過ごした時間は未だあまり多くないにも関わらず、彼女にはわかっている。
発作が始まったのだ――と。

「俺は今度こそ命の恩人Aの友人、北条沙都子を守ると誓った。誓い……ああ、俺らしくもない立派で神聖な行いだ。
だからこうして、北条沙都子を連れて人気のない場所までやってきている。誰も居ない、我ながら完璧なまでに順調だ。
そこまではいい。何も問題はない……なかったはずだ。だが、こいつはなんだ?
北条沙都子を命の恩人Aや命の恩人Bへ送り届ける俺の誓いを、邪魔するこいつはなんだっていうんだ!?
俺は、俺はまた約束を踏み倒すのか……そうか、結局俺みたいなロクデナシには無理だと神様が言っているのか。
諦めろと、そういうことなのか……!
さしずめこいつはその神様とやらの差し金か……くそくそくそ、この世界はとことん残酷だ!
俺には約束の一つすらも守ることは出来ないボンクラだ、そう言いたいのか!?
ああ、悲しい……悲しすぎるだろうがあああああああああああああああああああああ!!」

もはや絶叫と言うにふさわしい。
ハイになっていくテンションに合わせるように、グラハムは己の世界で叫ぶ。
思い込みと妄想と想像とその他諸々に加え、スパイスとして機能するネガティブさが彼独特の理論をつくっていく。
そんなグラハムを横目で見る沙都子は呆れたように溜息をつくのだった。

「あーーー!静かにしてくださいまし! 騒いでいたら考えられるものも考えられないですわ!!」

大声を上げてグラハムを戒める沙都子。
彼女の小さな右手には一枚の紙が握られていた。
その紙こそ沙都子とグラハムを立ち止まらせた原因だった。


◇     ◇     ◇
0215Sの選択/仲間はきっとそこに居る ◆Wott.eaRjU 垢版2012/11/25(日) 22:00:25.67ID:IzQMJNzm
『私達はE-6に向かいます』

竜宮レナによって書かれた一枚の紙は数分前、彼女の命を受けた一羽の鳩により沙都子とグラハムに届けられた。
書かれた内容は簡素であるが、沙都子とグラハムを大いに惑わせた。
何故なら二人は消防署を経由し、モール沿いに合流地点であるB-4の民家を目指していた。
合流地点はB-4の民家であると、途中で合流したライダーに教えられていたためだ。

「ライダーさんが私達にウソをついたとは考えにくいですわ。大体、ライダーさんにウソをつく理由はありませんですの」
「そうだな……。あのおっさんでもそれはないだろう」

そう。ライダーは嘘をついたわけではない。
ライダーはレナ、チョッパー、ウルフウッド、梨花――『○同盟』の仲間との取り決めを、二人に伝え損なっていた。
別の参加者に情報が漏れることを防ぐために、決められたルール。
それは『エリアを示す英語、数字は4つずつずらす』というものだ。
何故ライダーが伝え損ねたかというといくつか予想出来るものがある。
合流場所にはライダーも同行するはずだったため、わざわざルールを知らせる必要はないと考えたかもしれない。
また教えるつもりであっても、ライダーがグラハム、沙都子と合流した直後にはクリストファーの死があり、時間がなかった。
更に先刻、ライダーはアルルゥを連れ去ったミュウツーを急遽追いかけることになり、この時も伝える時間はなかった。

「レナさん達に何かあったから……合流場所を変えたところでしょうか?」
「ああ、それにしてもE-6か。あるとしたら神社か……。ん?神社っていうのはなんだ?愉快でおかしなネバーランドへ連れて行ってくれるような場所か?」
「そ、そんな場所じゃありませんの。とにかく、私達はどうするべきかを考えるべきですわ」

沙都子とグラハムにはどうしてレナ達が合流地を変えたかはわからない。
1エリアの違いではなく、B-4からE-6の変更は不自然だろう。
実際は、レナ達は古城の調査も兼ねてA-2に変更したのだが、ルールを知らない二人にその発想を持つのは難しいに違いない。

「そりゃあE-6に行くしかないだろう。命の恩人A達はE-6に行くと言っているんだからな。
だが、そうなると一つ問題が出来てしまう」
「ええ、私達がこのままE-6に向かえば、ライダーさんとアルルゥがB-4で待ちぼうけになりますの。
あの人は私達がB-4に向かっていると思っているでしょうから」
「あんなおっさん知ったことか!!と、以前の俺なら言いたいところだが、さすがのロクデナシでボンクラの俺でも、そうは言っていられないとはわかるぞ。
悔しいがおっさんの腕はなかなかのものだし、アルルゥも連れてくる。
仲間を見捨てるような真似はきっとラッドの兄貴も許してはくれないだろう。だから……このままE-6には行けないな」
「ま、まだ気にしていられてたですのね……。
でも、ライダーさんとアルルゥを見捨てるわけにはいかないのは当然ですわ。
問題はお二人に追いつくか、先にB-4でお二人を待つか……ということですの」
0216Sの選択/仲間はきっとそこに居る ◆Wott.eaRjU 垢版2012/11/25(日) 22:01:11.28ID:IzQMJNzm
沙都子とグラハムの目的地は決まっていた。
レナ達の事情はわからないが、E-6に向かうと書かれている以上、二人もE-6に向かわないわけにはいかない。
ただ、合流地の変更を知らないライダー達とどこで合流するかを考える必要がある。
二人がライダーと別れた地点はG-5であり、ライダーは北へ向かった。
ライダーはアルルゥを保護した後、そのまま中央エリアを通り、E-6に向かうかもしれない。

ちなみに二人が現在居る場所はH-5であり、会場のループを利用すればすぐにB-2に着くことが出来る。
あらかじめB-4でライダー達を待ち、その後全員でE-6に向かうというのも手だ。
もしくはライダーが持っている探知機を当てにし、こちらから再びライダー達と合流し、E-6に向かうという手もあるだろう。


「……おっさんとアルルゥとはさっさと合流したいが場所がわからないとお手上げだ。
悲しい話しだが、この世界は広い……この会場も広い……。
いくらおっさんに探知機という便利な道具があっても、今から追いつくのは難しいんじゃないかと、さっきから俺のなけなしの脳が言っている」
「賛成ですわ。ライダーさんとアルルゥを追って、結局会うことが出来なければ不味い。
更にライダーさんには不思議なお馬さんがあるので、歩くしかない私達とは速さが全く違う。
だったら、ライダーさんとアルルゥと合流出来るように、B-4で先ず待っていた方が確実ですわ!」
「そういうことだ」

結局、二人は前者を選択した。
約束の時間まであまり猶予はなく、確実に合流出来る方を優先したわけだ。
ならば、と言わんばかりにグラハムは歩を速めた。

◇     ◇     ◇
0217Sの選択/仲間はきっとそこに居る ◆Wott.eaRjU 垢版2012/11/25(日) 22:02:01.89ID:IzQMJNzm
「あの、グラハムさん――」

B-4でライダーとアルルゥを待つという方針を決めて数十分後、沙都子が口を開いた。
その声を背中で受けて、グラハムがぐるりと首を後ろへ回した。
相変わらずその瞳はドブ川に沈んだように暗かった。
見慣れた光景に構わず沙都子は続ける。

「クリスさんは…その、どんな人だったんでしょうか?」

沙都子が呼ぶクリスとはクリストファー・シャルドレードの事である。
クリストファーはホムンクルスと呼ばれる、一種の人造人間であり、沙都子にとってこの殺し合いで最初に出会った人物だ。
そして第三回放送の前で、ゼロの手によりこの殺し合いから脱落してしまった。
だが、沙都子はクリストファーがあまり自分のことを話さなかったこともあり、彼について知っていることはあまり多くはない。
クリストファーの知り合いであるグラハムからは、どういう人物に映ったのかを知りたくなったのかもしれない。

「あいつは気に入らないヤツだったな」
「え、ええ!?」

恐らくクリストファーがグラハムのことについて尋ねられても、同じような反応だっただろう。
グラハムとクリストファーは知り合いといっても友好的ではない。
そもそも殺し合った仲であり、互いのことを気に入らないヤツだと言っておかしくはない。
そう。沙都子が想像するような『知り合い』とはまた意味の異なる関係なのだから。

「だが、あいつはリカルドの坊っちゃんの下で働きだしていた。
沙都子も守ろうとしていたし、そういうところは嫌いじゃなかったな。
まあ――全体的には気に入らなかったけどな。というか勝負をつけたいな俺は!
あれ、あいつ死んじまったらもう勝負がつかない……結局勝負がつかないままか……そ、そんな馬鹿な……!」

それでもグラハムにも思うところはあったのだろう。
たとえ殺し合った仲とはいえ、互いに憎み切っているわけではない。
彼なりの評価を付け加えるが、本根は後半の部分に集約しているに違いない。
苦笑いを浮かべながら相槌をうつ沙都子だが、段々と表情が険しくなった。

「守る……そうですわね。クリスさんは最後まで私達を守ってくれました。
今度は私がアルルゥを守る番ですわ」

思い返せばクリストファーには迷惑をかけっぱなしだった。
殺し合いに放りだされ、錯乱した沙都子をクリストファーは保護してくれた。
クリストファーにとって沙都子は赤の他人であるため、保護する義務もなかった。
それでもクリストファーは最後まで見捨てず沙都子の傍に居た。
陽気な声で『友達になってくれるかい』――と残して。
0218Sの選択/仲間はきっとそこに居る ◆Wott.eaRjU 垢版2012/11/25(日) 22:03:17.41ID:IzQMJNzm
「でも、時々どうしても思いますの。
私にはクリスさんやグラハムさん、ライダーさんのような力はありません。
何も力がない私が、本当に誰かを守ることが出来るのかと……」


俯きながら沙都子が思い出していたのは先刻の出来事だ。
沙都子の傍にいたアルルゥがミュウツーによりさらわれてしまった。
ポケモンを駆使しても、ミュウツーを止めることは出来なかった。
『ねーねー!』と叫びながら連れ去られていったアルルゥの姿を思い浮かべる度に、沙都子は自らの非力さを呪っていた。

自分は只の小学生で、際立った力はないのだから仕方ない。
だが、沙都子はクリストファーに託され、アルルゥに誓ったのだ。
アルルゥのねーねーとして彼女を守ってみせると。
だから、自分の無力さはどうしても認めたくはなかった。
認めてしまえば、本当に自分に出来ることは無くなってしまう気がしてならなかった。
それでも、不安という風は常に消えることなく沙都子の胸の中に渦巻いていた。

そんな時、不意に鈍い音が軽い痛みと共に聞こえた。

「い、痛ぁ!」

突然の痛みは頭の辺りからやってきていた。
そして目の前にはグラハムが右腕を、沙都子の頭上に丁度突きつけるように振り下ろしていた。
グラハムに殴られたのだと沙都子は悟った。


「命の恩人Aは、俺の命の恩人の一人だ」


命の恩人Aとは誰だったかと一瞬、沙都子は考えるが直ぐにその顔が脳裏に浮かんだ。
彼女は可愛いものには目がなく、不思議な雰囲気を持っていた。
だけど、ここ一番の土壇場には誰よりも冷静で、皆を引っ張ってくれた。
彼女は沙都子にとって大事な、大事な仲間である――竜宮レナのことだ。
そしてグラハムにとっても、レナはただこの会場で知り合った仲ではない。

「川に流された俺を、命の恩人Aは拾ってくれたぞ。
命の恩人Aにだって、ラッドの兄貴や赤目野郎やおっさんのような力はない。
だが、それでも命の恩人Aは俺を救うことが出来た」

グラハムを表すには『不規則』という言葉がまさに相応しい。
躁と鬱をせわしなく繰り返す彼の行動を、正確に予測するのはきっと不可能だろう。
しかし、そんなグラハムにも常に変わらないことはある。
グラハム・スペクターは、一度受けた恩は忘れない。
そして恩人の友人は、グラハムにとって他人ではない。
0220Sの選択/仲間はきっとそこに居る ◆Wott.eaRjU 垢版2012/11/25(日) 22:04:15.61ID:IzQMJNzm
「沙都子、お前はあいつの仲間なんだろう。命の恩人Aは自分に力がないなんて泣きごとは言わなかった。
そんな命の恩人Aの友人だから、俺はお前を守ると誓った。
だったら、お前も言うな。俺を迷わせるな。俺を失望させるな。お前は命の恩人Aの友人なのだから、自信を持っていろ。
大体、力がなくてもいいだろう。ゼロやギラーミンの相手はこの俺だ。
要するにだ。つまり――」

一呼吸を置くグラハム。
好き勝手に己の理論を展開していく、グラハムだが結局は次の一言に彼の感情は詰まっている。
グラハムの中で存在し続ける、数少ない『ルール』はどんなものにも邪魔はされない。


「――『壊す』のは俺にやらせろ」


『殺す』のではなく『壊す』。
そう言ってのけるグラハムの嬉々とした表情に、沙都子はどこか見知った顔が被った。
一人の実兄と、かけがえのない仲間である一人の少年。
彼ら二人の大きな共通点は、沙都子の味方であったこと。
兄の形身である金属バットを握りしめながら、沙都子はただそう感じていた。



◇     ◇     ◇



力は必要ない。
グラハムはそう言ってくれたが、沙都子は悔しかった。
この殺し合いではいつ自分の命が狙われるかわからない。
グラハムやライダーのように強い力を持っていても、不意をつかれて命を落としてしまうかもしれない。
また更に強い参加者が現れることだってある。
現に、あんなに強かったクリストファーはゼロにより殺されてしまった。
そんな状況だからこそ、自分より幼い者は、自分の身は自分で守りたかった。
しかし、それすらも叶わないのであればせめて何かの役に立ちたい。
グラハムやライダーに対し、戦うこと以外で自分が役に立てれば――と。
そう願っていた。

(っ! そうですわ――)

答えは身近なところにあった。
沙都子は『部活』の活動で日頃から身体を動かしてはいるが、戦闘技術は全くない。
しかし、沙都子が最も得意としている分野がある。
それはトラップに関してであり、トラップの加工も日常的に行っている。
力はなくても、手先の器用さであれば役に立つことが出来るかもしれない。
沙都子には、この場で手先の技術を必要とする作業に心当たりがあった。


(私に、この首輪を外せることが出来れば……脱出に一歩近づきますわ)


沙都子には機械に関する専門的な知識はなく、首輪の解除は難しいだろう。
それでも最初から諦めるような真似はしたくなかった。
きっと、同じような立場なら仲間達も諦めようとはしないだろうから。
そう思えると、不思議と身体の奥底が熱を帯びていくような感触があった。
0221Sの選択/仲間はきっとそこに居る ◆Wott.eaRjU 垢版2012/11/25(日) 22:05:18.26ID:IzQMJNzm
【H−5 南部/一日目 真夜中】

【チーム名:○同盟グラハム組】


【グラハム・スペクター@BACCANO!】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、青いツナギ姿(いくらか傷)、腕に○印
[装備]:包帯、小型レンチ、スモーカー大佐の十手@ONE PIECE
[道具]:支給品一式(一食分、水1/10消費。うち磁石は破損)、スペアポケット@ドラえもん、かぁいい服
    海楼石の網@ONEPIECE、大きめの首輪<ドラえもん>
[思考・状況]
 1:B-4でライダーとアルルゥを待ち、その後で合流場所であるE-6に向かう。
 2:レナ達と合流するまで北条沙都子を守り抜く。
 3:ウソップやレッドを殺した者を壊す。
 4:イスカンダルに敵意。
 5:殺し合い自体壊す
 6:ラッドの兄貴と合流、交渉。兄貴がギラーミンを決定的に壊す!
 7:イスカンダルの勧誘は断固拒否。
【備考】
 ※レッドたちがクレアを信用していることを知りません。
 ※『○』同盟の仲間の情報を聞きました。
 ※ライダーからの伝聞により劇場での顛末を知りました。
 ※オープニングの映像資料を確認しました。




【北条沙都子@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:健康、L3、悲しみ、不安
[装備]:悟史の金属バット@ひぐらしのなく頃に、レッドのニョロ@ポケットモンスターSPECIAL
[道具]:支給品一式×3<沙都子、翠星石、エルルゥ>、グラン・メテオ@ポケットモンスターSPECIAL
    翠星石のローザミスティカ@ローゼンメイデン、翠星石の亡骸首輪つき、蒼星石の足@ローゼンメイデン
    雛苺のローザミスティカ@ローゼンメイデン、庭師の如雨露@ローゼンメイデン
    カビゴンのモンスターボール@ポケットモンスターSPECIAL、ゴローニャのモンスターボール@ポケットモンスターSPECIAL
    アミウダケ@ワンピース、マスケット銃用の弾丸50発、グロック17@BLACK LAGOON(残弾15/17)
[思考・状況]
 0:アルルゥ……どうか無事で……。
 1:グラハムについていって、部活メンバーの生き残りと合流する。
 2:真紅にローザミスティカを届ける。水銀燈には渡さない。
 3:時間に余裕が出来た時に、首輪解除について考える。
【備考】
 ※参戦時期は『皆殺し編』にて、帰ってきた北条鉄平と出会った直後です。
 ※名簿は確認したようです。
 ※雛見沢症候群の進度は具体的には不明。L5まで進行した場合、極度の疑心暗鬼と曲解傾向、事実を間違って認識し続ける、などの症状が現れます。
  説得による鎮静は難しいですが不可能ではありません。治療薬があれば鎮静は可能ですが、この場にあるかどうかは不明です。
 ※真紅、蒼星石、水銀燈に関しては名前しか知りません。
 ※アルルゥの名を仗助から聞きましたが、アルルゥの家族の詳細についてはまだ把握していません(エルルゥ=姉のみ把握しました)
 ※ゼロと情報交換しましたが、どこまで教えられたかは不明です。
 ※映画館に行けばDISCの中身を見ることが出来ると思っています。
 ※地下道には何かがあるのではと考えています。
0223 ◆Wott.eaRjU 垢版2012/11/25(日) 22:07:13.23ID:IzQMJNzm
投下終了しました。
支援ありがとうございます。
何かあればお願いします。
0225創る名無しに見る名無し垢版2012/11/25(日) 23:03:55.17ID:GQZbFNr6
投下来てたー!投下乙です!

同盟の慎重さが裏目に出るかと思ったが、そんなことはなかったぜ!
しかしどんなに待ってもライダーは戦闘中、他は死んでて集まる見込みが少ないという…悲しい、悲しい話だ

それにしてもギャグといいシリアスといい、グラハムいいキャラしてるよなぁww
がんばれ沙都子、明るい未来はポケモンマスターサト○にかかっている!…かもしれないw
0226創る名無しに見る名無し垢版2012/11/25(日) 23:46:43.28ID:GQZbFNr6
投下乙です

思えば○同盟も半分以上が死亡か。ロワは無情だ
そんな中でも沙都子とクリストファー、レナとグラハム、
今までのキャラとキャラ同士の思いが連鎖していくのは痺れるなぁ

新たな目標を見つけた沙都子、これが吉と出るか凶とでるのか
0228 ◆OQO8oJA5SE 垢版2012/11/26(月) 22:57:57.89ID:ddAywaMI
どうも、以前4作ほど投下した木っ端書き手です。

本日、トリップ付で参上しましたのは、一つ提案がありまして……
というのも現行のまとめwikiですが、……正直、見づらいです。
○ロワは分岐制を採用していますが、

・現在B−1ルート以外がほぼ凍結状態である
・初見では現行ルート(A−1の178話→B−1ルート)を時系列順に読み進めるということが分かりにくい。
・B−1ルートの現状と死亡者情報の間に齟齬がある状態になっている。
 (ただしA−1ルートとは齟齬がない状態である)

などの要因から、wikiが編集しにくい/読み進めにくい状態となっています。
したがって今回、思い切って、
『現在進行中のB−1ルートに特化した新wiki(仮にB−1wikiと呼称)を作成したい』と思っております。
B−1wikiについて想定している方針は今のところ下の2つです。

・B−1wiki作成後、現wikiとのTOPに相互リンクを張る
・イラストに関しては絵師さんのご意向等があるので現wikiから移植しない

なお、B−1wikiへの移行作業ですが、基本コピペ作業ですので自分一人で可能な作業だと思っています。

以上、問題がなければwiki作成をしたいと思うのですが、いかがでしょうか。
意見をお待ちしております。
以上です。
0229 ◆Wott.eaRjU 垢版2012/11/26(月) 23:12:38.14ID:e8Nz5zLk
提案ありがとうございます。

私は特に異論はないので、作って頂けたら嬉しいです。
何かあれば手伝いとも思いますので、是非ともよろしくお願いいたします。
0231 ◆eVB8arcato 垢版2012/11/28(水) 16:10:47.16ID:TPDsp8nu
提案中失礼いたします。
現在、投票で決めた各パロロワ企画をラジオして回る「ロワラジオツアー3rd」というものを進行しています。
そこで来る12/9(日)の21:00から、ここを題材にラジオをさせて頂きたいのですが宜しいでしょうか?

ラジオのアドレスと実況スレッドのアドレスは当日にこのスレに貼らせて頂きます。

詳しくは
http://www11.atwiki.jp/row/pages/49.html
をご参照ください。
0235 ◆OQO8oJA5SE 垢版2012/12/02(日) 00:17:24.51ID:9S85OxND
はい、では問題なさそうなので作成を始めています。
ラジオまでに完成したいけど難しいかなぁ……

>>231
ラジオ、楽しみにしています!
0239創る名無しに見る名無し垢版2012/12/04(火) 22:57:08.92ID:O7luxNGi
今の予約が投下されれば次の放送にかなり近づくな。
あとはクレアとチョッパーとか古城組かな?
0240 ◆OQO8oJA5SE 垢版2012/12/06(木) 23:11:25.85ID:aQbu3OcH
最新話までwikiで読めないのは問題だと想い、
取り急ぎ移植だけでも……

というわけでB−1ルートwikiです。

ttp://www52.atwiki.jp/multiple/pages/1.html


ひとまず一通り移植作業は終了した……かな?
支給品や個人情報が最新になってないとか
そこらへんは今後ちょくちょくやっていく予定
0243創る名無しに見る名無し垢版2012/12/06(木) 23:36:01.65ID:J0yXgbhM
移植乙です!

読み返してたら夜中〜真夜中は切ない話が詰まってるな
よく考えたらこの怒涛の展開でも、一日たってないんだな…
0248 ◆Wott.eaRjU 垢版2012/12/08(土) 22:43:13.02ID:x3t4VzTe
wiki&地図乙です!


お待たせしました。
美琴、ラッド、ライダー、ゼロ投下します。
0249desire ◆Wott.eaRjU 垢版2012/12/08(土) 22:44:27.88ID:x3t4VzTe
E-5エリア、病院跡地に一人の参加者が立っていた。
男の真名は征服王イスカンダル。
第四次聖杯戦争においてライダーとして現界した英雄だ。
今までライダーはV-MAXを縦横無尽に走らせ、ある場所を目指していた。
だが、ライダーの前には二人の人影が彼の行く先を阻むように構えている。

「お前達、退くのであるなら今の内だぞ?」

片手に持ったファンクフリードの剣の切っ先を正面に据えて、ライダーが問う。
王として悠然たる態度を貫いてきたライダーだが、今の彼には焦りがあった。
ライダーには、ミュウツーに連れ去られたアルルゥを取り戻すという目的がある。
そのためにはこんな場所で時間を使うわけにはいかなかった。
しかし、移動手段として使っていたV-MAXは既に残骸へと姿を変え、周囲に散らばっている。
ライダーが破棄したわけではない。目の前の二人のどちらか、あるいは両方の手によって破壊されたためだ。

「バカ言ってんじゃないわよ。アンタは……ここで倒すわ!」

二つの人影の内、小さい影が甲高い声で叫ぶ。
白のナース服に身を包んだ少女の名は、御坂美琴と言った。
美琴は学園都市に属する超能力者であり、その中でも上位に位置する『レベル5』の一人だ。
そして美琴の周囲には溢れんばかりの電流が迸り、彼女の敵意を示している。
以前行動を共にした衛宮切嗣によれば、ライダーは殺し合いに乗っているらしい。
美琴にとって切嗣は、自分を助けてくれた参加者であり、彼を疑う余地はない。
だからこそ、殺し合いの肯定など出来ない美琴にはライダーを見過ごす理由はなかった。

「いいねぇ。こういうノリは嫌いじゃねぇ、むしろ大好きだ!ここしばらく身体がなまってきたから楽しむとするかぁ!」

もう一人、美琴の隣で嬉しそうに顔を歪ませる男が居た。
彼はラッド・ルッソであり、マフィアグループの用心棒として働いていた男だ。
殺しを好むラッドはこの場でも好きなように殺し回っていた。
そんなラッドが美琴と手を組んだのは、ギラーミンを倒すという目的が一致し、美琴は殺すに相応しくないと判断したためだ。
しかし、ギラーミンを殺すまでにラッドは殺人をしないという約束はしていない。
だからこそ、ラッドは意気揚々と美琴の指示にも従える。
ラッドもまた、美琴がこの殺し合いを止めるという想いと同じように、殺人への欲求を満たそうとしているのだから。

「さぁ、ぶっ放そうぜミコトちゃん!楽しい楽しい時間の始まりだ!」

一本の槍を携えて、ラッドがライダーに向かって弾丸さながらに飛び出していく。
一方のライダーは微かに表情を歪めるが、大きく動じた様子は見せずに正面を見ている。
そして間髪入れずに、ラッドの直ぐ傍を追いぬいていくものがあった。
紫電の光が、ラッドの目の前でチカチカと光を落していく。
美琴の<超電磁砲(レールガン)>が、一つの戦いの合図となった。

◇     ◇     ◇
0250desire ◆Wott.eaRjU 垢版2012/12/08(土) 22:45:16.01ID:x3t4VzTe
迫りくる紫電の弾丸が、V-MAXを一瞬で破壊した攻撃であるとライダーは認識していた。
サーヴァントといえ、力を制限されているこの場では予想以上の傷になるかもしれない。
だが、避けようにもその隙をもう一人が見逃すとは思えない。
更に男が持っている武器は、ランサーが持っていた宝具であるため、侮ることは出来ない。
一瞬の思考を経て、やがてライダーは口角を釣り上げて笑った。
一人の殺人狂と、一つの弾丸を前にしてライダーが選んだ答えはとてもシンプルであった。
元より避けるつもりなど毛頭ない。
征服王は征服王らしく、目前に敵が居るのであれば――蹂躙するだけなのだから。

「この程度では、余は止められんなぁ!」

ライダーは前方へ突き進む。
美琴が放った弾丸に対し、真正面で己の得物を突き出し、その強靱な力で受け止める。
弾丸は目の前の障害を突き破らんとばかりに、閃光と火花を巻き散らすが先へ進めない。
ファンクフリードの剣は、悪魔の身を食べたことにより生まれ、その強度は目を見張るものがある。
象剣の名に相応しい刀身、そして左右に伸びた牙が弾丸を阻み、力同士が拮抗する
やがてライダーはファンクフリードの剣に走る衝撃をものともせずに、横薙ぎに剣を払う。

「ふん!」

弾丸はファンクフリードの剣により振り払われ、明後日の方向へ飛んでいく。
紫電の一撃を難なく弾き返し、ライダーは勢いを殺さず直進し続ける。
目指すはライダーの直線状に位置し、驚いたような顔を浮かべる美琴だ。
だが、不意に殺意を帯びた気配と強烈な風圧をライダーは感じた。

「おいおいおいおい、俺を忘れてもらっちゃあ困るぜ!」

ライダーを阻むようにラッドが、飛び出すような勢いで距離を詰める。
ラッドの動きは弾丸が弾き返されることを見越したかのように、絶妙な頃合いだった。
そしてラッドは両腕で握りしめた破魔の紅薔薇を、ライダーの頭部へめがけて振りおろす。
しかし、ファンクフリードの剣で受け止めたライダーには動じた様子は見せない。
先刻、弾丸を弾いたようにファンクフリードの剣で振り払い、破魔の紅薔薇ごとラッドを吹き飛ばす。

「なんて力だよ、おい! こわいねぇ……こいつはトンだ大物が残ってやがったか!」

ラッドは緩やかな着地を経て、言葉とは裏腹に嬉しそうな様子で体勢を整える。
吹き飛ばされたかに見えたラッドだが、彼は衝撃の瞬間に身体を後方へ浮かせていた。
ライダーの腕力を一瞬で図り、攻撃から防御へ転じる判断の速さは、彼の戦闘センスの高さを窺わせる。
いや、正しくは戦闘ではなく殺しのセンスと言うべきだろうか。
ルッソ・ファミリーの用心棒として磨いた殺人の技術は、ラッドの身体を馬車馬のように動かすことが出来る。

「黙っておれ。今の余は、ちぃとばかし気が短いのでな」
「ハッ!そんなの俺が知ったコトじゃねぇな。いや、こいつは訂正だ。そんなの――俺達が知ったコトじゃねぇなぁ!」

向かい合い、問答するライダーとラッドの間に、力が伴った無数の閃光が降りそそぐ。
ライダーとラッドが後方へ飛んだのはほぼ同時であった。
今まで彼らが立っていた地面には、黒色の焦げ跡が散らばっていた。
電気の放電による攻撃。この場で、そんな能力が使える参加者はたった一人しかいない。
0251desire ◆Wott.eaRjU 垢版2012/12/08(土) 22:46:04.60ID:x3t4VzTe
「ちっ!見かけによらず、身軽ね」

舌打ちをしながら、ラッドの後方に位置する美琴が毒づく。
美琴の前髪は浮き上がり、彼女の顔からは小さな電磁波が走っている。
『超電磁砲』と呼ばれる超能力により、美琴は電気や磁力を自由に扱える力を有している。
先程の電撃も、ラッドの頭上を越えていくような形でライダーを狙ったものだ。
ラッドを囮として、必殺の一撃を与えるつもりだったが、美琴の目論見は外れることとなった。
もっとも、先刻の<超電磁砲>の一撃をライダーが容易く弾き返した時点で外れてはいたのだが。

「なぁに、伊達に征服王とは呼ばれておらん。戦で脚がすくむようであれば、征服など夢のまた夢よ」

体勢を整えて軽口を叩くライダーだが、眼は笑っていない。
征服王の異名が示す通り、ライダーの生涯と戦事を切り離すことは出来ず、彼もまた闘争を愛した。
正面から渡り合い、全力を以て勝利を得ることこそが征服と言える。
しかし、今のライダーはアルルゥを連れ戻すという目的があるため、時間を使うわけにはいかない。
この場でラッド・ルッソ、御坂美琴が自分を狙う理由よりも、アルルゥの身の安全が気がかりだった。
だからこそ、電気という能力に見覚えがあっても、深く追及しようとは考えなかった。

「だったら、夢で終わらせてやろうじゃねぇか!」

招かれるようにラッドがライダーを目指して再び走り出す。
今度は破魔の紅薔薇を振り下ろすのではなく、刃先をライダーに向けて突き出す。
器用に身を逸らすことでライダーは刃先から逃れる。
だが、ラッドは直ぐに腕を引きもどし、二撃目をライダーの分厚い胸板に向けて放つ。
必殺のタイミングともいえる動きであったが、ライダーの対応も速い。
ファンクフリードの剣をかざし、ライダーは二撃目を難なく受け止める。
同時に、ラッドとライダーは笑みを浮かべた。ラッドは大きな笑みを、ライダーは小さな笑みを。
続けて三撃目、四撃目、五撃目、六撃目――破魔の紅薔薇とファンクフリードの剣の応酬は、数を重ねるごとに勢いと速さを増していく。

「はっはっは!なかなかやるではないか。だが、あいにく余には時間がないのでなぁ!」

移動を伴いながら防戦を続けていたライダーが高らかに叫ぶ。
ライダーとラッドの介入者を許さぬ攻防は、既に戦場をE-4エリアに移していた。
そして最早何撃目かわからない紅薔薇を、ライダーはファンクフリードの剣で力任せに振り払った。
生来の腕力、更にサーヴァントとして強化された力はたとえ制限されていようとも強大だ。
ラッドはなんとか紅薔薇を手放さずに済んだが、無防備な姿をさらすこととなった。
その隙を見逃すほど、ライダーは甘くはない。
0252desire ◆Wott.eaRjU 垢版2012/12/08(土) 22:46:45.52ID:x3t4VzTe
「そら、こいつは効くぞ」

鈍い音を伴った一撃がラッドの横腹を打つ。
確かな手ごたえをライダーが知覚した途端に、ラッドの身体は横っ跳びに吹き飛ばされた。
ファングリードの剣と、ライダーの力が合わさったことによる強烈な一撃。
勢いを殺すこともせずに、ラッドの身体は何度も地面に打ちつけられながら転がっていく。
後は後方に控えている筈である、もう一人を突破出来れば目的は達せられる。
そう考えていたライダーに、新たな衝撃が走った。

「いい気にならないでよね!」

ラッドと入れ替わるように、ライダーに対し美琴が踏み込む。
美琴は漆黒に染まった剣を両手に握り、ライダーに向けて振り下ろしていた。

「ふむ、面妙な力よ。先刻の電撃といい……なかなか興味深いヤツだな」

ファングリードの剣で受け止めたライダーがそう評する。
ライダーの表情に浮かぶ小さな驚きは、美琴は遠距離での電撃しか攻撃手段を持っていないと考えていたためだろう。
美琴の力は電気を自由に操るだけでなく、磁力すらも支配出来る。
磁力を制御することで、地面に存在する砂鉄を棒状に集め、武器として生成していた。
砂鉄の剣とでも言った得物は、真っすぐにファングリードの剣を捉えているが、両断には至らない。
たとえ美琴の力で強度が上乗せされていようとも、その現実は変わらなかった。

「っ!このぉ!!」

対して美琴は砂鉄の剣を一瞬の内に解除し、後方へ大きく飛びのいた。
両の足の裏に電磁波を生じ、地面に走る微小な電磁波と反発させることで跳躍の距離を延ばしていた。
砂鉄の剣による不意の一撃が失敗に終わった今、美琴が次の行動へ切り替えるのは素早かった。
美琴は近接戦闘では分が悪いライダー相手に、ただ距離を取ったわけではない。
レベル5である、美琴が得意とする能力の一つは――やはり電気の扱いだろう。
美琴は自らの力の支配に意識を集中し、両腕を前方に突き出す。

「これでも――喰らえ!!」

ライダーの全身を強烈な放電が襲う。
美琴の『超電磁砲』としての放電により白煙が生まれ、周囲に焦げくさい臭いが漂った。
手ごたえを感じた美琴は、その表情に笑みを浮かべる。
たとえ力の行使に不自由を感じるこの場でも、仕留めた感覚を見誤ることはない。
ライダーが強力な力を持っていたとしても、無傷とは考えられなかった。
0253desire ◆Wott.eaRjU 垢版2012/12/08(土) 22:47:34.65ID:x3t4VzTe
「え……?」

しかし、美琴の予想を覆すように白煙の中から飛び出す影があった。
一直線に美琴の元へ詰めより、己の得物を左へ薙ぎ払う。
大柄な見かけに似合わぬ俊敏な動きを、美琴は両の目でしっかりと捉えた。
脳裏に浮かぶ危険信号に従い美琴は両腕を交差するように構え、やがて衝撃を知覚した。


「余を止めるには、まだ足りんなぁ!」

ライダーの怒号と共に繰り出された斬撃は美琴の身体を捉え、彼女の華奢な身体を容赦なく吹き飛ばす。
離れていく美琴を追撃せずに、ライダーは地に足を降ろして、体勢を整えた。

「ちぃ……まあ、無傷とはいかんか」

不機嫌そうに愚痴るライダーの身体には生傷が至るところに見えた。
美琴の感覚には狂いはなく、確かにライダーに傷を負わせていた。
しかし、ファングリードの剣を盾として使い、放電に対して突っ切ってみせたライダーの決断が功を奏していた。
致命傷には程遠く、ライダーが反撃の一手を繰り出すには十分であった。


「さぁ、時間を喰ってしまったが突破させてもらうぞ!」


やや遅れて、姿勢を崩しながらも着地した美琴を見やりながらライダーは宣言する。
言うや否やライダーは再び愛馬、ブケファラスを召喚し、軽やかに飛び乗った。
ブケファラス召喚には魔力を消費する必要があったが、ライダーには時間が惜しい。
アルルゥを連れ去ったミュウツーが飛び立った方角へ、ブケファラスを向ける。

「ま、待ちなさい!」
「貴様とはまた後で勝負をつけてやろう。貴様の力はなかなか面白い」

ファングリードの剣による斬撃の瞬間、美琴は両腕に砂鉄を纏わせて衝撃を殺していた。
それでも衝撃を完全に殺せていたわけではない。
両腕には強烈な痺れが今も残っており、能力の行使に向けて意識を集中するのも難しい。
そんな美琴を尻目に、ライダーはブケファラスの手綱に手を掛けた。

「おう、おっさん。そいつは調子が良すぎるんじゃねぇか?」
0256desire ◆Wott.eaRjU 垢版2012/12/08(土) 22:48:33.85ID:x3t4VzTe
だが、ライダーを制する声が正面から陽気に響く。
声の主はいつの間にか体勢を立て直していたラッドだ。
ラッドをみやるライダーは訝しげな顔を浮かべた。
美琴の時は何らかの力で防御されたことはわかっていたが、ラッドの場合は違った。
脇腹を完全に捉えた一撃であり、肋骨の何本かが折れた感触をライダーは確かに感じ取っていた。
しかし、まるで傷が元通りに治ったかのように、ラッドは平然としていた。

「俺とおっさんは赤の他人だ。俺はおっさんのコトよく知らねぇし、おっさんも俺のコトよく知らねぇはずだ。
だけどよぉ……俺は、わかっちまったんだよなぁ!」

ライダーにはラッドの話しを聞く道理はないが、彼の言葉には引きつけるものがあった。
闘いの最中に、どこか知っている人間と同じような臭いを、ライダーはラッドから感じ取っていた。

「てめぇ――自分は絶対に死なねぇと思ってるだろ?
俺と電気人間ミコトちゃんを相手にしても、余裕染みた顔してやがる」
「ほぅ、余がそう見えるか?」
「そう、その目だよ。自分が死ぬなんてクソにも思ってねぇヤツは、どいつもあんたみたいな目をしてやがる。
そういう目を見せられちゃあ、温厚な俺もつい我慢ならなくなっちまう。
こいつは仕方ねぇよなぁ……殺したくなっちまうのは、仕方ねぇ!」

ライダーの疑惑は確信へと近づいていく。
思えばこの男とは初めて会ったわけではなかった。
最初の、殺し合いが始まる最初の場所で一方的に見かけている。
同時に、目の前の男が誰と似ていたかもライダーにははっきりとわかった。
脳裏に浮かぶは、真っ青な作業着を着た男の影だ。

「だからよぉ、てめぇはこのラッド・ルッソがキッチリ殺してやらぁ! 」

叫ぶや否やラッドはライダーに向かって走り出す。
ラッドの片手に握られた破魔の紅薔薇の切っ先が、ライダーの血肉を求めるように踊る。
対するライダーはラッドをどこか冷めたような目で見やり、そしてブケファラスの手綱に力を込めた。

「否定はせんよ。ならば、余は貴様を痛めつける程度に留めてやろう」
「っ!なめるんじゃねぇぞおっさん!!」

ライダーの言葉を挑発と受け取ったのか、ラッドは感情のままに激昂する。
対するライダーの表情はとても涼しげなものだが、両目には明確な敵意が宿っている。
ライダーの意思をくみ取ったかのように、ブケファラスが地を蹴って、駆け出す。
ブケファラスはミュウツーが飛びたった方角ではなく、ラッドへ一直線に向かっていく。
ラッドの速度、そしてブケファラスの脚力が合わさることで双方の距離はみるみると縮まる。
0257desire ◆Wott.eaRjU 垢版2012/12/08(土) 22:49:24.26ID:x3t4VzTe
「なぁに、ただでは済まさんて。ラッド・ルッソよ、せいぜい――死んでくれるなよ?」

互いの距離が0となろうとする間際、ライダーが冷酷な声を発した。
すれ違いざまにファングリードの剣を掬いあげるように、振り下ろすライダー。
対するように破魔の紅薔薇の切っ先を突きあげるように、振り上げるラッド。
轟音が鳴り響いたかと思うと、両者の衝突は終わっていた。
その場に立っていた者は――誰一人としていなかった。

ラッドの身体は、背にしていた劇場の外壁に強烈な勢いで飛び込み、内部へと姿を消した。
ライダーの身体もまた強烈に地面へ叩きつけられ、何回かの回転を経てようやく止まった。
騎乗していたブケファラスは魔力粒子へ姿を変えて、空に昇っていく。
衝突の爆心地ともいうべき場所には破魔の紅薔薇が、迷い子のように横たわっていた。

◇     ◇     ◇
0258desire ◆Wott.eaRjU 垢版2012/12/08(土) 22:50:10.28ID:x3t4VzTe
死んだかと思った。
瓦礫に埋もれながらラッドが先ず考えたのはそれだ。
ライダーという男は悔しいが、一筋縄ではいきそうにもなかった。
馬は潰せただろうが、それでも明らかに自分の方が傷はでかい。

「ちっ、まったくよぉ……ひでぇところだぜ、ここは」

立ちあがり、身体中についた砂を振り払いながら立つ。
辺りを見回し、自分が居る場所は劇場の中の通路であると大体の辺りをつける。
次に自身の確認。
幸い、身体にはどこも千切れているようなところはない。
仕留めそこなったか――ラッドはそう考えるが、不意に小さく笑った。
仕留めそこなったのは自分の方だった。
美琴が敵として判断したのがなりゆきだったが、ライダーは立派な標的の一人だ。
殺さない理由など、ない。
酒を買いにいくような気軽さで、再びライダーを殺しに向かおうとする。
しかし、ラッドの視界は一つの影を捉えた。

「おいおい、ここで会っちまうとはぁ……案外早かったなぁ」

足音が響き、止まった。
ラッドが声を掛けた人影が言葉を発する。
感情を押し殺したような声を。


「ラッド・ルッソ――貴様と話しがある」


仮面の魔王、ゼロがラッドと接触を試みる。


◇     ◇     ◇
0260desire ◆Wott.eaRjU 垢版2012/12/08(土) 22:50:46.03ID:x3t4VzTe
「っ!ラッド!!」

劇場の方へ美琴が駆け寄ろうとする。
ラッドは気に入らない男であっても、一応は停戦協定を結んでいる仲だ。
いくら頑丈な男とは言え、見捨てることは美琴にとっても後味が悪かった。
このまま身捨ててしまえば命に関わるかもしれない。
それ以前に、即死している可能性だってあるのだから。

「おぉ……まったく、最後まで逃げずに突っ込んでくるとは大した度胸であるな」
「くっ、まだ生きてたの!?」
「当然よ。あのくらいで征服王イスカンダルを倒せると考えてもらっては困る」

美琴は驚きながら、声の方へ頭を向けた。
その先には傷だらけではあるが、しっかりと己の脚で地に立つライダーの姿があった。
片手にはファングリードの剣を、そしてもう片方の手には破魔の紅薔薇を握っている。
破魔の紅薔薇は魔力を打ち消す効力を持った宝具だ。
ライダーの魔力で生成されたブケファラスが消滅した理由はそこにあった。
美琴は身構え、いつでも力を使えるように警戒する。
ラッドが戦えない今、自分一人の力に頼るしかないためだ。
しかし、美琴の意思に反するようにライダーは疑問をよこす。

「時に小娘よ。貴様は何を目的に余と戦った? 敵は全て殺し、ギラーミンの望み通りに動くのか?」

征服王の目には純粋な疑問が浮かんでいる。
その目は美琴には堪らなく不快なものに見えた。

「そんなわけないじゃない! 殺し合いなんて……誰が好き好んでするのよ!」
「ふぅむ、ならばなぜ余を――」
「衛宮さんが言ってたのよ!」

ライダーの言葉を強引に押しとどめる。
何も言わせない。それはライダーでなくても、誰かに自分の言葉を聞いてほしかったのかもしれない。
0264創る名無しに見る名無し垢版2012/12/08(土) 22:54:03.87ID:J1DE2ImK
 
0269desire ◆Wott.eaRjU 垢版2012/12/08(土) 23:05:43.12ID:x3t4VzTe
「アンタはきっと殺し合いに乗っている、危険な人物だってね。
だったら……倒すしかないじゃない!
もうこれ以上、私のせいで、私の前で、誰かが……誰かが死ぬところは見たくないのよ!!」

それは美琴の心からの叫びだった。
ただ実験のためだけに殺されていく自分の妹達。
自分を助ける形で、見えない場所で死んでいった衛宮切嗣とストレイト・クーガー。
自分の目の前で、その命を散らせることとなったブレンヒルト・シルトと真紅。
彼らの死を経験した美琴には、ライダーの言葉を肯定出来る筈もない。

「アンタはラッドだって殺してみせたじゃない!
確かにあいつは危険なヤツよ……でも、だからといって殺すことはなかった。
アンタがあいつを殺したら、私は……私は――」

美琴にとって、ラッドは特別な存在ではない。
出会って数時間でしかも、最初はこちらを殺そうとしてきた男だ。
それでも、ラッドがもし死んでしまったとしたら、美琴は選択しなければならない。


「私は、アンタを殺さないといけなくなる……!
だけど、私は人殺しなんかしたくない……もう、あんなコトはいやなのよ!!」


脳裏に浮かぶのは、自分の電撃により首輪が爆発し、亡骸とした名前もわからない男。
御坂美琴の過ごす日常は、超能力という異能には溢れていても、“殺人”とは無縁の世界だ。
取るに足らないゴロツキが居ても、能力者が引き起こす事件があって、常に自分の力で解決することが出来た。
ただ、目の前に壁があれば乗り越えていくだけだった。
ひたすらに上を目指して、自分の力を信じて努力すればいつだって成長出来た。
こんなにまでも、自分の力の足りなさを実感することはなかった。
だからこそ、誰かを殺さなければ生きていけないこの世界が、美琴にはどうしても堪えられなかった。

「小娘よ、名は何と言う?」

一方、またしてもライダーは美琴の予想を反するように振る舞う。
ライダーは美琴の叫びに微塵も臆する様子は見せていない。

「……御坂美琴よ」

答えてやる義理はなかったかもしれない。
だが、美琴は何故か答えなければいけないと感じていた。
自分の叫びを、ライダーは黙って聞いてくれた。
その事が無性にも引っかかる。この男は殺し合いに乗るような、冷酷な男である筈なのに。
0272desire ◆Wott.eaRjU 垢版2012/12/08(土) 23:06:46.79ID:x3t4VzTe
「美琴よ、余は殺し合いに興味はない」
「ッ!嘘よ! だってラッドは――」
「あやつは生きておる」

一瞬、美琴はライダーの言葉の真意を読み取れなかった。
ライダーは美琴の反応を見届けながら続ける。

「グラハムという男が居てな。ラッド・ルッソとは知り合いだそうだ」

美琴にはグラハムという名前に覚えがあった。
ラッドが口にしていた男で、彼と同じくらいの力を持っているらしい。
そして機械の解体に優れ、首輪の解除にも役立ちそうな参加者であると。

「じゃあ、あんた……そのためにラッドは殺さなかったっていうわけ?」
「はっはっは、そういうことになるであろうな。
余としてもあやつを殺したことでグラハムの坊主が騒いでも面倒ではあるし、あやつの身体はなかなかに興味深い。
そして御坂美琴よ、それは貴様も同じこと。
貴様の電撃は、是非とも我が陣営の力に相応しい」

用心棒として名を馳せたラッドの戦闘技術は非常に高い。
だが、それ以上に本人すらも知らない“不死者”としての生命力をライダーは見抜いていた。
殺すのは惜しく、あわよくばその力を配下におさめようとするライダーの欲求は、この場でも顕在であった。
またブケファラスを失った今、ミュウツーを追うには圧倒的に速度が足りない。
ならば自分達の戦力だけでも蓄えておこうとライダーは考えたのかもしれない。

「だったら……それにしてもやりすぎじゃない。
グラハムって人と知り合いなら、あいつだって考えを変えたかもしれないのに」

ライダーの危険性は置き、美琴はライダーに疑問を投げかける。
ラッドはひとまずは殺し合いの大元である、ギラーミンを倒すことを目的にしていた。
そのためには首輪の解除は必要であり、グラハムとの合流を考えていた。
ライダーが一言、『グラハムと知り合いである』と告げてくれれば、ラッドは戦闘を中止し、ここまで酷いことにはならなかったのではないか。
美琴はそう考えていた。

「……レッドという坊主が居てな。以前、余と行動を共にしていた」
「レッドって……? もしかしてあの子……」

美琴は知っている。
切嗣と共にライダーと名前も知らない男の戦闘に介入した直後、出会った少年だ。
名前も知らない男を殺してしまったショックから、彼には電撃を喰らわせてしまい、そのまま目の前から逃げ出してしまった。
次の放送で少年の名前が呼ばれなかったことから、自分の電撃が致命傷にはならなかったのだとあの時は安心した。
記憶を掘り返す美琴にライダーは、彼女にとって知るよしもない事実を告げる。
0273desire ◆Wott.eaRjU 垢版2012/12/08(土) 23:07:34.41ID:x3t4VzTe
「レッドはラッドに殺されたそうだ。その身を焼き尽くされてな」
「え……?」

美琴には返す言葉が思いつかなかった。
確かにラッドなら殺人を犯してもおかしくない。
自分が関わった人間が、また一人ラッドに殺されていたと考えると心が重かった。
世話になった橘あすかもラッドに殺された。
だけど、美琴は復讐よりもこの殺し合いを潰すことを選んだ。

「レッドは余の臣下ではなく、あくまでも余と同盟を結ぶ立場としてこの殺し合いの脱出を目論んでいた。
余も同じである。同盟を結んだ者達の無念は確かに惜しい。
されど……それすらも越える目的こそが、我が陣営とギラーミンの対決!
それこそが先に逝った者達への手向けとなるだろう!!」

そしてライダーの進む道も、美琴と同じだった。
仲間の復讐よりも、この殺し合いの大元であるギラーミンを倒す。
理想を語るライダーの瞳には、まるで夢を語る少年のように純粋な光があった。
そう。まるでたった一本の右腕だけで、美琴に立ち向かったあの男のように。
何故か懐かしく、力強さを感じる瞳だった。
切嗣に聞かされたライダーのイメージと、現実の彼のイメージには大きな違いがある。
美琴の判断の秤は、片方へは傾きつつあった。

「御坂美琴よ、死者の言葉に惑わされるな!
我らは覇道を歩み、必ずやギラーミンを打ち破る。
その覇道を成すためには、余は貴様を我が臣下として迎えたいと考えている。
さぁ――返答を聞かせてもらおうではないか!」

切嗣の話を美琴は、忘れはしない。
しかし、それよりもこの場で美琴がやるべきことは一つだった。
自分の力で、皆に託されたこの想いで――



「――臣下なんてまっぴらごめんよ。でも、私だって殺し合いは止めたい。
だから……『同盟』を結ぶわ。私の力、皆のために使ってみせる」



御坂美琴は再び、この殺し合いの打倒を誓う。
手をそっと置き、胸に埋められたアヴァロンを抱くように。
誰もが人を殺さなくて済むような理想を、思い浮かべながら。



◇     ◇     ◇
0277desire ◆Wott.eaRjU 垢版2012/12/08(土) 23:08:40.22ID:x3t4VzTe
E-4エリアに存在する劇場は、大きく分けて三つの劇場に別れている。
北劇場、中央劇場、南劇場の三つであり、基本的な構造は同じだ。
三つの劇場は連絡通路で繋がっており、ラッドとゼロはそこを通り過ぎ、北劇場へ入った。
北劇場に至るまでのホールは至るどころ破壊されていたが、劇場内の内装は保たれている。
備え付けの椅子以外にも、あちらこちらに予備用の折りたたみパイプ椅子が置かれていた。
やがて先導する形で進んでいたゼロは劇場内を進み、立ち止る。
やや遅れて歩いていたラッドも、ゼロに倣うように脚を止めた。

「さぁて、今更何の話しかねぇ?なぁ、自称“魔王”さんよぉ!
いや……“不死者”さんと言った方がいいかぁ!?」

軽く地を蹴り、ラッドはボクサーながらにステップを刻む。
ラッドの方にはゼロが今さら何の話しをしようと関係はない。
明確な殺意を以て、ただ殺すことしか考えはない。
ライダーも殺さなければいけないが、ゼロはまた違う。
ゼロは、ラッドが最も嫌う“不死者”であると彼は信じ切っているのだから。

「“不死者”……?まあ、いい。好きなように呼んで構わない。
貴様のような罪人にも、そのぐらいの権利は許そう。
そして、話しなど……ない。貴様はここで朽ちる。」

一方、ゼロにとってもラッドは殺さなければいけない相手だった。
ゼロは愛する妹、ナナリー・ランペルージはラッドにより殺されたと考えている。
細かい内容に差異はあれども、決して間違った認識ではなく、ラッドがナナリーの死の原因となったのは事実だ。
だからこそラッド、美琴、ライダーの戦闘を中央劇場通路内で観察し、ラッドをここまで誘導したのだった。
瓦礫に倒れるラッドをその場で仕留めなかったのは、距離が必要だった。
経緯は不明だが、ラッドと共闘していた御坂美琴が加勢にくることも考えた。
二人が相手でも後れを取るつもりはないが、かかる労力は違う。
速やかに古城へ向かう必要があったゼロは、この場ではひとまずラッドの命を貰う事を考えた。
そして、サンプルとして首輪も手に入れる必要があった。

(奴にも考えがあると思ったが……好都合だ)

素直についてきたラッドの真意は不明だが、ゼロには関係がない。
今度こそラッドの死を見届けるまでは油断するつもりはなかった。
数時間前にゼロはラッドを殺した。確かに殺した筈だった。
不死の酒によって彼こそが“不死者”となっていた事実に気づけなかったためだ。
0279desire ◆Wott.eaRjU 垢版2012/12/08(土) 23:09:41.27ID:x3t4VzTe
「今度こそ首を落とし……ナナリーの仇を取らせてもらおう!」

そう言ってゼロはラッドとの距離を詰める。
いつの間にか右手に握っていた和道一文字を袈裟に振るった。
名工により打ちつけられた和道一文字の切れ味は非常に鋭い。
だが、和道一文字は虚しく空を切った。
それだけでなく、ゼロには視界が大きく揺れ、身体が下へと落ちていく感覚があった。

「そいつは――上等だぜ!!」

ラッドは体勢を屈めたことにより、ゼロの斬撃から逃れた。
ゼロの脚を払った後に起き上がり、続けて横に置かれていたパイプ椅子を掻っ攫い、乱暴に振り降ろす。
床を背にし、苦虫を潰したような表情を浮かべたゼロに衝撃が迫るが、彼は冷静に片腕を突きあげる。
紋章が浮かび上がったゼロの拳がパイプ椅子に叩きこまれ、四散した。
ゼロのワイアードギアス、“ザ・ゼロ”の力は万物を無に帰す。
四散した椅子の残骸を腕で防ぎながら、たまらずラッドは後ろへ跳ぶ。

「おいおいおいおいおい、その力だよ。なんだ、そのインチキな力はよ。
てめぇ、人間様ナメるのもよぉ……いい加減にしろってんだ!!」

ラッドは只逃げているわけではない。
先程と同じようにパイプ椅子を掴み取る。
今度は一つだけではなく両手に一つずつ掴み、折りたたむ。
そして手首を返すことでスナップをきかせ、軽々と投げつけた。
二つのパイプ椅子がグルグルと回りながら、獲物を求めて進んでいく。

「言っただろう。私は“魔王”だと。
只人である、貴様とはくらべられる器ではない!」

両手の反動のみで身体を起こし、立ちあがっていたゼロが構える。
その右手には和道一文字はなく、デイバックも全て投げ捨てている。
あるものは両の拳といった状態だ。
未だ魔王として日が浅いゼロが頼ってきたのは、その強靱な肉体である。
両の拳に浮き上がる紋章が再びギアスを宿し、彼に魔の力を与える。
そしてゼロは数歩の助走を経て、漆黒のマントを翻しながら一迅の風ごとく身体を跳ばす。
0282desire ◆Wott.eaRjU 垢版2012/12/08(土) 23:10:20.99ID:x3t4VzTe
脅威的な跳躍力で跳んだゼロは空中で一つ目、そして二つ目の椅子を叩き落とす。
見透かしたようなタイミングでラッドは更にパイプ椅子の数を増やした。
三つ目、四つ目、五つ目のパイプ椅子が迫るが最早ゼロは止められない。
自らの身体に回転を加え、パイプ椅子をマントで跳ね返しながらラッドを狙う。
だが、それこそが――ラッドにとって最高なタイミングだった。

「もらったぜ、このクソ“不死者”野郎があああああああああああ!!」

渾身の力を込めて、ラッドが右腕を振りかぶる。
数えきれない喧嘩の中で培ってきたラッドの殺しのセンス。
そのセンスを総動員し、突き出した右拳は完全にゼロの左頬を捉えていた。
拳がめり込んだ左頬部分を起点にし、ゼロの仮面にヒビが入っていく。

「っ……だが、こんなものは計算の内に入っている」

だが、その間合いはゼロにとっても狙っていたものだった。
ゼロは右腕でラッドの首根っこを掴み締めあげる。
魔女との契約で膨れ上がった力は絶大であり、ラッドの身体はやすやすと持ちあがる。
拘束から抜け出そうと、必死に抵抗するラッドだが逃げられない。
身体の傷は癒せても疲労が癒えることはなく、ライダーとの戦いによる消耗が響いていた。

「安心しろ、ラッド。貴様は只では殺さない。
そう……ナナリーの苦しみも味わってもらおう!」

そう言ってゼロはラッドの身体を力任せに放り投げた。
そのまま首の骨をへし折ることも出来た筈なのに、ゼロはあっさりと解放する。
ゼロが持つ明らかな余裕をラッドは感じ、再度“殺し”のスイッチを入れ直す。
だが、ゼロの言葉通り、彼はラッドを逃がすつもりはなかった。
ラッドが投げ飛ばされた先にはゼロが、置いたデイバックが転がっている。
デイバックの他に、黄色い影がラッドには見えた。

「魔王ゼロが命じる。10万ボルト、最大出力だ!!」

ゼロの命を受けて、ピカチュウがラッドに10万ボルトを放つ。
あらかじめ劇場に忍ばせていたピカチュウの準備は万端であった。
宙を浮いた状態のラッドは避けることも出来ず、電撃は容赦なくラッドの身体を焦がしていく。
絶叫を上げながら床に倒れ伏せるラッドを、追いかけるようにゼロは追った。
右手には新たな剣、聖剣グラムが握られている。
そして聖剣グラムを逆手に持ち、勢いよく振り下ろした。


「がっあああああ……!て、てめぇ!絶対にてめぇは俺がぶち殺す!!」


聖剣グラムの刀身が容赦なくラッドの背中を突き刺さる。
肉を貫き、骨を砕き、血をその刀身にまぶした聖剣がラッドの身体を離さない。
全身を使ってもがくラッドに対し、ゼロは更に腕を振るった。
聖剣グラムの代わりにその手に握られたのは一振りの刀、和道一文字。


「――そろそろ気づいているのだろう、ラッド・ルッソ」
0283desire ◆Wott.eaRjU 垢版2012/12/08(土) 23:10:55.95ID:x3t4VzTe
新しい鮮血が舞う。
ラッドの絶叫と重なり、酷く不快なハーモニーを奏でた。
しかし、ゼロはただ己の刀を振るう。
まるで虫を解体するかのような冷酷さを以てして完了した。
ラッドの四肢は和道一文字により全て切り落とされた。
そしてゼロは改めて確信した。

「串刺しにされただけでなく、両腕、両脚を失っても貴様はまだ生きている。
それも一度だけでなく、二度も。これは、もはや揺るぎのない事実だ……!」


それはラッドに致命的とも言える事実。




「“不死者”は貴様のコトだろう、ラッド・ルッソ」



そして、一つの世界が壊れた。



◇     ◇     ◇
0284desire ◆Wott.eaRjU 垢版2012/12/08(土) 23:11:27.39ID:x3t4VzTe
わかってみれば簡単なことだった。
魔女との契約により魔王の力を手に入れた自分が殺し合いに参加させられているのだ。
力を制限されていようとも自分の力は全参加者の中でも、最上の位置にあるだろう。
更に出力や時間の制約はあっても、量子シフトによるガウェインの召喚も可能ときている。
そんな自分が参加者として呼ばれているのだから、四肢をもぎ取られても生きている参加者が居てもおかしくはない。
ラッドの言葉を借りるなら“不死者”という参加者が居ても、可笑しくはなかったのだ。
ただし、それが先天的なものか、後天的なものかは定かではないが。

「気分はどうだ?
まさか貴様自身が人間ではなかったとは……とんだ茶番だったというわけだ。
憎むべき存在と自分が同じであったなど、滑稽を通りこして愚の骨頂だな」

様子を見ればわかる。
不死者であることはラッド自身も知らなかったのだろう。
絶叫どころか一言も言葉を返さないラッドが全てを物語っている。
その姿はゼロにとって酷く哀れなものに見えた。

「何か支給品を使った……そういうところか。
だが、まあいい。所詮、只人が命の理を操作するなど、荷が重かっただけだ。
せめて……私が楽にしてやろう」

和道一文字を握った手に力を込める。
ゼロに今度は見逃すつもりはなかった。
たとえ相手がもう抵抗するつもりがなくてもやるしかない。
参加者を減らせる時には減らしておくしかないのだ。
首を落とす覚悟は出来ている。


「では、さようなら――ラッド・ルッソ。
貴様とは案外、死ねない者同士で同じ道を歩めたかもしれないな」


腕をふるい、和道一文字の刀身を振り下ろす。
そう。確かに振り下ろそうとした。
ゼロとC.Cは確かに、ラッドの首を落とそうと考えた。


「――黙れ」


その一言を聞くまでは。



「黙れ死ね黙れ死ね黙れ死ね黙れ死ね黙れ死ね黙れ死ね黙れ死ね黙れ死ね黙れ
黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」



その様子を一言で表すなら――
0289desire ◆Wott.eaRjU 垢版2012/12/08(土) 23:13:22.54ID:x3t4VzTe
「ヒャハハッハハッハッハアッハアハッハハッハハハハッハアハアハハッハアッハハハッハ
アアアアアハアハアアハハハアハッハハハハハハアアアハハッハハハハハッハハハハア
ハッハハハハハアアアハッハアッハアハッハアッハハアハアハハッハアッハハハッハアア
アアアハアハアアハハハアハッハハハハハハアアアハハッハハハハハッハハハハヒャハ
ハッハハッハッハアッハアハッハハッハハハハッハアハアハハッハアッハハハッハアアア
アアハアハアアハハハアハッアアハハハアハッハハハハハハアアアハハッハハハハハッ
ハハハハアハッハハハハハアアアハッハアッハアハッハアッハハアハアハハッハアッハハ
ハッハアアアアアハアハアアハハハアハッハハハハハハアアアハハッハハハハハッハハ
ハハヒャハハッハハッハッハアッハアハッハハッハハハハッハアハアハハッハアッハハハッ
ハアハアアハハハアハッアアハハハアハッハハハハハハアアアハハッハハハハハッハハハ
ハアハッハハハハハアアアハッハアッハアハッハアッハハアハアハハッハアッハハハッハア
アアアアハアハアアハハハアハッハハハハハハアアアハハッハハハハハッハハハハヒャハ
ハッハハッハッハアッハアハッハハッ――――!!」



狂気という言葉ですら、足りなかった。



◇     ◇     ◇
0290desire ◆Wott.eaRjU 垢版2012/12/08(土) 23:14:04.33ID:x3t4VzTe
ラッド・ルッソは狂人だ。
壊れていると言っても過言ではない。
だが、一見無差別にも見える彼の殺しにもルールは存在する。
『自分が死なないと思っている人間を殺す』――それがラッドの殺しの大前提だった。
だからこそ、不死者という存在をラッドはこの世で最も憎み嫌った。


「おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおい!もしかしてあの時か!?
あのふざけた酒飲んじまったせいで、俺が不死者になったっていうのか!?
俺のこの力は、俺が覚醒したお陰じゃねぇのかよ!!なぁ答えろよ、答えろってんだろギラーミンよぉ!!!」


その目は既にゼロを見ていなかった。
ライダーもゼロもラッドにとって殺すべき標的だ。
しかし、ギラーミンへの殺意は、二人に対するそれよりも圧倒的に高まってしまった。
殺意は振り切れてしまっていた。


「ルーアを殺しただけじゃなくて、俺に不死の酒を持たせたって言うのか……ハハ、笑えねぇな。
一体、どこまで俺をナメれば気が済むんだぁ、テメェは!?
クソ、クソクソクソクソクソクソクソクソクソ――クソ野郎がぁっ!!」


口元からは赤い血がこぼれおちる。
不死者といえども流れる血は、普通の人と同じだから。
ただ、ラッドの身体へ戻ろうと血や両腕、両脚が虫のように群がっていこうとすることを除いて。
そんな光景は、ラッドにとって酷く醜く映ったに違いない。
死なない身体という、クソッタレな自分を見せつけられるだけなのだから。


「決めたぜ。テメェは何があっても殺す。マジで殺す。殺して殺して殺して殺して――殺し尽くす。
観念しろよ?俺をここまでムカつかせてくれたヤツはてめぇが初めてだからなぁ……!」


ラッドは今まで自分が不死者だと本当に気づいていなかったのか。
自分の身体に起きた異常について深く考えなかったのだろうか。
彼は狂人とはいえ、馬鹿と評される人種ではない。
恐らく考え、そして止めたのだろう。

――死なない人間なんてどこにも居ない。
ラッドにとってあの日から、それは普遍の事実となったのだから。
誰だって死ぬ。どんな奴だって死ぬ。世界はそういう風に出来ている。
あの誰よりも強かった女は、死んでしまったから。
だからこそ、ラッドは認めるわけにはいかなかった。
自分が死なない人間、“不死者”となったことなんて、ラッドの本能が認めなかった。
0291desire ◆Wott.eaRjU 垢版2012/12/08(土) 23:15:01.53ID:x3t4VzTe
「なぁ、“不死者”さんよぉ。いや“魔王か”……まあどっちでもいいか。
俺はアンタの目から見ると、立派な“不死者”なのか?」

ねじが切れたように大人しくなったラッドが尋ねる。
彼の視線の先には魔王が居た。
ただし、漆黒の仮面はいつの間にか砕け、素顔が晒されていた。
緑髪の、端正が取れた女性の顔がラッドの疑問に答える。

「ああ、お前は普通じゃない。
魔女である私が言うのだから、自信を持ってもいいぞ?」
「へっ!今度は魔女ときたか!
それに魔女なんかに言われても嬉しくもなんともねぇな……そうか、俺が“不死者”か。
だったらよぉ――」

魔女C.Cの言葉を受け流すかのようにラッドは続ける。
口角を釣り上げ、にやけるラッドの顔は普段と変わりなかった。
いつもの、彼が大好きな殺しをやる時に浮かべる笑顔と変わらない。
何一つ変わらない、ラッドの意思がそこにあった。



「俺はてめぇを殺すぜ。だから精々、俺を殺して安心しやがれ。
“不死者”なんていませんでしたってなぁあああああああああああああああああああ!!」
「ああ……そうさせてもらう」


瞬間。
C.Cの握る和道一文字が一つの軌跡を描く。
ラッド・ルッソの意識はそこで途切れた。









【ラッド・ルッソ@BACCANO:死亡確認】
【残り15名】



◇     ◇     ◇
0293desire ◆Wott.eaRjU 垢版2012/12/08(土) 23:15:48.91ID:x3t4VzTe
エリアD-4南部をゼロが歩いていた。
目指すはエリアA-2であり、目的は古城の調査。
ラッドの首輪を回収し、更に御坂美琴達の追撃を警戒し、自身のワープを利用しここまで来ていた。
漆黒の仮面は既に元通りに戻っている。

「やはり“不死者”といえども致命傷は死にいたるか。
そうでなくては、殺し合いなど成り立たない」

ラッドの死はあっさりとしたものだった。
首を落とした途端に、除々に始まろうとした再生も止まってしまった。
やはり永遠の命など眉唾ものなのだろう。
だが、死ねない身体がもたらす悲劇はゼロが誰よりも知っている。
正確に言えば、ルルーシュ・ランペルージと契約した魔女C.Cが知っていた。

「自分の知らないところで、死ねない身体になったとしたら……それは悲しいことだ。
奴もギラーミンによる犠牲者だったのかもしれないな」

ラッドを許したわけではない。
ラッドの罪は死ですらも償えるものではなく、実際にゼロの感情は晴れなかった。
だが、ラッドは望んで命の理から外れたわけではなかった。
不死の身体となったせいで、迫害を受け続けたC.Cの記憶には少なからず、ラッドに対する同情のような感情があったのかもしれない。
そして改めてギラーミンの力の底知れなさをゼロは感じ取った。

「人間を不死にする力……シャルルのギアスのような力か。
やはりギラーミンが保有する力は侮れない。いや、奴の背後に居る力か……」


ギラーミンが約束通り、優勝者としての願いとしてナナリーを蘇らせてくれるならそれでいい。
しかし、決別した時には戦わなければいけない。
相手の保有する力は絶大であり、未だその全容もわからない。
それでもゼロは、進むのを止めるわけにはいかなかった。
ここで諦めてしまえば、自分が蹴落としてきた参加者が無駄になる。
彼らの想いを無に帰して、自分はここまで進んでいるのだから。


「シャルル、マリアンヌ……やはり人間は個でしか生きられないのだよ。
私達は、誰もが違っている。争うことで、互いの明日を求めている。
だからこそ私達も彼らと同じ……ルルーシュはナナリーという明日を、私は死という明日を求めて、まだ歩いて行ける」


故に魔王は己の道を進み。
両の拳をこの先、いくら血に染めようとも構わない。
魔王の本質は戦いを広げていくことなのだから。
ただ、魔王も救いという明日を求めて修羅の道を進んでいく。
0297desire ◆Wott.eaRjU 垢版2012/12/08(土) 23:20:36.15ID:x3t4VzTe
【E−4 劇場周辺/一日目 真夜中】
【御坂美琴@とある魔術の禁書目録】
[状態]:疲労(小)、全身に打撲と擦傷(小)、脇腹に打撲(小)、胴体に貫通傷×3(小)、全て再生中
    多大な喪失感、強い決意、≪体内:全て遠き理想郷(アヴァロン)@Fate/Zero≫
[装備]:薔薇の指輪@ローゼンメイデン、ナース服、コイン。
[道具]:基本支給品一式(食料一食、水1/5消費)、不明支給品0〜2個(未確認)、病院で調達した包帯や薬品類
    コイン入りの袋(装備中の物と合わせて残り88枚)、タイム虫めがね@ドラえもん、首輪(ジョルノ)
    真紅のローザミスティカ@ローゼンメイデン、蒼星石のローザミスティカ@ローゼンメイデン
    ARMS『騎士(ナイト)』@ARMS、真紅の左腕(損傷大)、不思議の国のアリス@現実他、いくつかの本、ナースキャップ
[思考・状況]
0:ラッドとの合流。
1:首輪を解体できそうな人物(第一候補はグラハム)を探す。
2:一人でも多くの人を助ける、アイツの遣り残した事をやり遂げる。
3:人は絶対に殺したくない。
4:自分と関わり、死んでしまった者達への自責の念。
5:上条当麻に対する感情への困惑。
6:ライダーと行動する。
【備考】
 ※参加者が別世界の人間、及び参加時期が違う事を聞きました。
 ※会場がループしていると知りました。
 ※真紅と情報交換し、ローゼンメイデンの事などについて大雑把に聞きました。
 ※あすかと情報交換し、スクライドの世界観について大雑把に聞きました。
 ※地下空間の存在を知りました。地下にループ装置があるのではと推察しています。
 ※会場は『○』の形に成っているという仮説を立てています。
 ※全て遠き理想郷(アヴァロン)が体内にあることを知りません。
 ※ラッドの事を『原石』(天然の能力者)かも知れないと考えています。
 ※参加者についての情報は以下の通りです。
  協力できそうな人物:レナ、沙都子、梨花、ゾロ、チョッパー、アルルゥ、佐山、小鳥遊、グラハム、ウルフウッド
  直接出会った危険人物:ゼロ、ラズロ(リヴィオ)、メイド(ロベルタ)、宇宙人(ミュウツー)
  要注意人物:ライダー、白仮面の男(ハクオロ)、ヴァッシュ、水銀燈(殺し合いに乗っているようであれば彼女を止める)
 ※首輪の機能について、以下のように考えています。
  確実に搭載されているだろう機能:「爆弾」「位置情報の発信機」「爆破信号の受信機」「脈拍の測定器」
  搭載されている可能性がある機能:「盗聴器」「翻訳機」
 ※首輪は何らかの力によって覆われていて、破魔の紅薔薇にはその力を打ち消す効果があると考えています。

【ライダー(征服王イスカンダル)@Fate/Zero】
[状態]:魔力消費(やや大)、疲労(中)、腹部にダメージ(中)、全身に傷(小)および火傷(小)、腕に○印、怒り、焦り
[装備]:包帯、象剣ファンクフリード@ONE PIECE、破魔の紅薔薇@Fate/Zero
[道具]:基本支給品一式×3、無毀なる湖光@Fate/Zero
    イリアス英語版、各作品世界の地図、ウシウシの実・野牛(モデル・バイソン)@ワンピース
    探知機、エレンディラのスーツケース(残弾90%)@トライガン・マキシマム
[思考・状況]
 0:美琴、ラッドと共にミュウツーを追う。
 1:バトルロワイアルで自らの軍勢で優勝。
 2:首輪を外すための手段を模索する。
 3:北条沙都子とアルルゥを守る。
 4:サーヴァントの宝具を集めて戦力にする。
 5:有望な強者がいたら部下に勧誘する。
【備考】
 ※原作ギルガメッシュ戦後よりの参戦です。
 ※臣下を引きつれ優勝しギラーミンと戦い勝利しようと考えています。 本当にライダーと臣下達のみ残った場合ギラーミンがそれを認めるかは不明です。
 ※レナ・チョッパー・グラハムの力を見極め改めて臣下にしようとしています。
 ※『○』同盟の仲間の情報を聞きました。
 ※自分は既に受肉させられているのではと考えています。
 ※ブケファラス召喚には制限でいつもより魔力を消費します。しばらく召喚出来ません(詳しい時間は不明)。
 ※北条沙都子、アルルゥもまずは同盟に勧誘して、見極めようとしています。
 ※現在の魔力残量では『王の軍勢』をあと一度しか発動できません
 ※別世界から呼ばれたということを信じました。
 ※会場のループを知りました。
 ※オープニングの映像資料を確認しました。
0299desire ◆Wott.eaRjU 垢版2012/12/08(土) 23:21:54.38ID:x3t4VzTe
【D−4 南部/一日目 真夜中】
【ゼロ@コードギアス ナイトメアオブナナリー】
[状態]:左前腕に幅広の刺傷(止血、応急処置済み)、疲労(中)、悲壮≪ルルーシュ≫
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式×6(食料一食、水1/5消費)、MH5×3@ワンピース、治療器具一式、防刃ベスト@現実、電伝虫@ONE PIECE×2
    忍術免許皆伝の巻物仮免@ドラえもん、和道一文字@ONE PIECE、シゥネ・ケニャ(袋詰め)@うたわれるもの
    謎の鍵、レナの鉈@ひぐらしのなく頃に、首輪×5(サカキ、土御門、真紅、カズマ、ラッド)、首輪の残骸(圭一)
    ナナリーの遺体(首輪あり)、ビニール袋に入った大量の氷
    螺湮城教本@Fate/Zero、トーチの火炎放射器@BLACK LAGOON(燃料70%)、聖剣グラム@終わりのクロニクル
    モンスターボール(ピカ)@ポケットモンスターSPECIAL、あすかのメモ、不明支給品0〜1個(確認済み)
[思考・状況]
 1:殺し合いに優勝し、ナナリーを生き返らせる。
 2:異形(ミュウツー)は見つけ次第、八つ裂きにする。
 3:ギラーミンを殺して、彼の持つ技術を手に入れる。
 4:自分の身体に掛けられた制限を解く手段を見つける。
 5:『○』対する検証を行うためにも、首輪のサンプルを手に入れる。
 6:C.C.の状態で他者に近づき、戦闘になればゼロへ戻る。
 7:首輪を集めて古城跡へ戻る。
 8:余裕があれば地下を調べる。
【備考】
 ※ギラーミンにはタイムマシンのような技術(異なる世界や時代に介入出来るようなもの)があると思っています。
 ※水銀燈から真紅、ジュン、翠星石、蒼星石、彼女の世界の事についてある程度聞きました。
 ※会場がループしていると確認。半ば確信しています
 ※古城内にあった『○』型のくぼみには首輪が当てはまると予想しています。
 ※魅音(詩音)、ロベルタの情報をサカキから、鼻の長い男の(ウソップ)の情報を土御門から聞きました。
 ※C.C.との交代は問題なく行えます。
 ※起動している首輪を嵌めている者はデイパックには入れないという推測を立てています。
 ※北条沙都子達と情報交換しました。
 ※ナイン、ラッド、ミュウツーの三人がナナリーの死に関わっていると確信しました。
 ※ガウェインの制限はマークネモとほぼ同様です。
  ただしハドロン砲を使用した場合は、再召喚までの時間が、一発につき二時間ずつ増加します。
 ※首輪の機能について、以下のように考えています。
  確実に搭載されているだろう機能:「爆弾」「位置情報の発信機」「爆破信号の受信機」「脈拍の測定器」
  搭載されている可能性がある機能:「監視装置」「制限の発生装置」「首輪表面の保護機能」
 ※首輪表面を覆う金属は、ザ・ゼロのような能力で首輪を解除できないようにするための保護機能だと考えています。
 ※地下空間の存在を知りました。地下に制限を発生させている装置があるかも知れないと考えています。
0303 ◆Wott.eaRjU 垢版2012/12/08(土) 23:25:25.73ID:x3t4VzTe
投下終了しました。
長い間支援ありがとうございます。
途中で時間がかかったのは規制されてました。すいません。
何かあればお願いします。
0304創る名無しに見る名無し垢版2012/12/08(土) 23:36:03.87ID:2Vs9/Fya
投下乙です!
おおおおラッドが死んだ!?
かなり空気だったピカが使われて喜んでたら、なんてこった…!
確かに不死者の事がわかったら性格上必然、だがこんな形でとは…!

そして流石、安定の征服王!
しかしこれって、美琴はラッドが死んだ理由がさっぱりわからないんじゃw
0305創る名無しに見る名無し垢版2012/12/09(日) 20:31:31.66ID:0vC7W5m2
投下乙です

美琴がどんどん立ち直って……!ホロリ
カワイソスのドン底まで落ちたこその台詞が映えるなあ
ラッドがここで落ちるとは……因果応報とはいえ、どこまでも自分の道を貫き通した最期だった

電車といいV-Maxといい、乗り物は壊されるものなのかw
0307創る名無しに見る名無し垢版2012/12/09(日) 21:11:37.48ID:C8sYqw8I
\征服王!/ \征服王!/ \征服王!/
貫録の征服王、そこに痺れる憧れるゥ!

ラッドは自分勝手ながらわが道を突き進んだ最後だからある意味悔いはない…のか?w
死んでないって言われたのに死んでるとか、
豆腐メンタルなビリビリのことも考えてあげてくださいよ!


そしてラジオだヒャッハァアアアア!
0308 ◆OQO8oJA5SE 垢版2012/12/10(月) 02:32:19.64ID:7k7X70eg
投下乙であります。

ラッドついに落ちるか……
ゼロはこれでミュウツー以外への復讐を果たしてしまった訳だがこれからどうなってしまうのか……
一方美琴は誤解もとけ、これから主催として歩めるのだろうか。
これからが楽しみなSSでした。

最速兄貴を含めて様々な方が規制されている現状等をかえりみまして、B-1用したらばを設置いたしました。

http://jbbs.livedoor.jp/otaku/15810/

もしも現行したらばの管理人さんがいらっしゃった場合、
非常に失礼かつ早まった真似をしてしまい、申し訳ありませんでした。
ですが殆ど荒らしもいない現状を省みた場合必要と判断いたしました。
不必要である場合、現したらばに統合することも可能ですので、ご連絡をお願いします。
0309創る名無しに見る名無し垢版2012/12/10(月) 21:22:01.71ID:itAjoOau
したらば乙です!
規制されている方がいるなら移行は問題ないと思います。
というか予約が二つもきてたー!!?
0311 ◆GOn9rNo1ts 垢版2012/12/13(木) 21:56:40.03ID:Y/IKIxWI
お久しぶりです
これより佐山・御言、新庄・運切を投下します
0312哀愛逢ドリーマーズ  ◆GOn9rNo1ts 垢版2012/12/13(木) 21:57:48.33ID:Y/IKIxWI
夜。真黒の世界が顔を覗かせる、暗い舞台。
真っ赤に輝く日は沈み、温かな陽光はどこか遠くに消えていった。
替わりといわんばかりに、せっかちな冷風が8×8の箱庭をビュウビュウと行進し、夜の訪れを大声で報せ回る。

真っ赤な身体が闇夜に映える、灼熱への反逆者を目に留めて。
雷と殺意がバチバチと吹き荒れる廃墟を、早足で通り過ぎて。
紙で作られし、人類の叡智が詰まった巨大な宝物庫には興味なさげに。

息も切らさず、風は矮小な世界を駆け回る。
行き着く先は森の中。ずいぶん遠くまで来たなあと、感慨深げにヒュウと一息。
だけども彼は止まりはしない。止まり方を知らないから。ずっと、ずっと、飽きることなく前を行く。
どこともしれないゴールを探して。閉じた世界の繰り返しを知りもせずに風は走る。走る。
震え上がる草木。引き裂かれた隣り合わせの双葉が、ため息をつきながら離ればなれになっていく。
一枚は人間達の学舎に。もう一枚はふらふらと大きな大きなお城に向かって。
風は迷わず北に向かった片割れのお姫様を追いかける。そちらの方が面白そうだ。
気づけばお城は目の前。格式ばって正面口から礼儀正しく入るなんてのはつまらない。
侵(はい)るならば浪漫として、大泥棒のように鼠の出入りさえ出来ない隙間からだ。

見つけた。

そうと決まれば即断即決、電光石火に不法侵入。
ビュウビュウ、ビュウビュウと鋭い駆け爪を以て辿り着いた秘密の裏口を抜けると。
そこには、一組のニンゲンがいた。

逢引きするのは悪役と正逆の存在。
覗き見している野暮な輩は荒風一吹き。
欠けることなく一対に戻った役者二人は
哀しみを得て、
愛しさを抱き、
世界の中心で、夢を見る。
0313哀愛逢ドリーマーズ  ◆GOn9rNo1ts 垢版2012/12/13(木) 21:59:01.82ID:Y/IKIxWI
◇ ◇ ◇



「適材適所という言葉を知っているかね、新庄君」

言葉の主は白髪の混じったオールバックの頭に小さな猪のような生き物を乗せた青年だった。
ランタンを持ちながら通路を進む足取りは確かなもので、目的地をはっきり定めているように見える。
佐山御言。悪役として世界を救うことを決め、この殺し合いの場でも主催者への反抗を選んだ男だ。

「ええっと……人の能力を見極めて、その人に相応しい仕事とか地位とかを与えることだったっけ?」

オールバックの青年の後ろから返事を返すのは、黒のロングヘアを後ろに流した少女だった。
新庄運切。悪役である佐山に対し正逆の存在であることを望んだ彼女は、殺し合いの場で紆余曲折を経て今は佐山と再会を果たしている。
城には元々の古さに加え先ほどの戦闘の爪痕も色濃く刻まれており、老朽し破損した隙間からは風が零れ出ている。
冷たいな、と浅く自分の身体を抱きながら、新庄は目の前の佐山に言葉を重ねる。

「最近、UCATの新作ゲームで似たようなのやらせてもらったよ。
いくつかのパーツをぐるぐる回しながら隙間を埋めていって、最後にドカンと棒で突き抜けるととっても気持ちいいの。
上手くいかなくて溜まっていくこともあるんだけど、そこをこう、良い感じに調整して一気に溜め撃ち〜ってやると嬉しさも一入っていうか」

録音機を持っていないことを心の底から悔みながら、佐山は振り返り苦笑を作った。

「君のゲーム情報は相変わらず少し遅れているようだが……つまりはそういうことだよ」


「私たちは障害の全消しのために、一時的に別行動を取っているというわけだ」


佐山の発案は単純なものだった。
戦力の補強のために大広間の仕掛けである○を調査することは急務だ。
しかし、今はゼロが何時何処から攻めてくるか分からない状況である。
どれほど手間がかかるか分からない仕掛けに全員で付きっ切りというわけにはいかない。

「だからこそ、ゾロ君にはゼロのような危険人物、また私たちの同盟相手となり得る人物が来た時のために見張りをしてもらう」

ゾロとは先ほど城の入り口で別れた。今は古城の周りを見回っているはずだ。
建物の中よりも外にいた方が古城に近づいてくる人間のことを見つけやすく、また相手からも見つかりやすい。
遠距離武器で狙われやすいというリスクが高い選択ではあるが、その懸念をゾロは笑って切り捨てた。
また、ゾロ本人としても調べ物をしたり一か所で待機し続けたりしているのは性に合わないとして、この案に異論は持っていないようだった。
ゾロのことはそれで解決だ。方向音痴の彼といえども流石に城そのものから離れることはない……はず。
0317哀愛逢ドリーマーズ  ◆GOn9rNo1ts 垢版2012/12/13(木) 22:00:43.29ID:Y/IKIxWI
じゃあ、と少し溜めを含み、新庄は問いかける。

「佐山君」

先ほどから機会を窺い、この案を立てた彼に聞きたかった本題を。

「新庄君?」

空気を察したのか目の前でこちらに向き直る佐山に対し、新庄は前に踏み出しながら言葉を投げかけようとして――


佐山の頭の上で、獏が片手をあげた。



◇ ◇ ◇



佐山御言は暗い部屋にいた。
身体はない。あくまでも視覚だけが浮いている。
獏の見せる過去の中だと佐山は冷静に考えながら

……残念に思うべきか、それともほっとしたというべきか。

新庄は確かに佐山に何かを伝えようとしていた。
愛の告白なのだとしたら狂喜乱舞するのもやぶさかではないが、雰囲気的にそれは無いだろう。
とすると、あの状況あの会話の流れで彼女が言いたかった事柄は

……新庄君は、気付いてしまったのだろうか。

佐山は嘘をついているわけではない。
しかし、彼女に言っていないこと、伝えてはいけない考えは持っている。
それは考えようによっては些細なことで、誰もが気付かぬまま全てが解決することを佐山も望んでいる。
それでも、新庄が勘付いたのだとすれば彼女は佐山の隠し持つ思惑に対して、悪役の正逆として

……私の間違いを、正しに来るのか。

それでいい。彼女はそうあるべき人間なのだから。
間違っている佐山は、正しくあろうとする新庄と共にいたいのだから。
ならば

……この過去を、そのことについて考える執行猶予期間として扱うのはフェアではないな。

新庄も恐らく夢を見ているだろうが、彼女はその中で迷い、揺れはしても結論を変えることはあるまい。
ならば自分も、今は夢という名の過去から何かを得るために動こうと決める。
0318哀愛逢ドリーマーズ  ◆GOn9rNo1ts 垢版2012/12/13(木) 22:01:29.56ID:Y/IKIxWI
……そうと決まれば、状況の把握からだ。

部屋中を見渡す。
まずは場所の把握。
置かれているのは沢山の机や椅子、そしてそれらを見下ろすような位置に置かれた大きな黒板。
十中八九、この場所は古城の南に存在する学校、その施設の一教室と見ていい。
次に時間の把握。
窓の外を見ると未だ太陽はその片鱗さえ見せておらず、この『過去』が真夜中に近い時刻の出来事なのだと理解。
問題はこれが極めて『今』に近しい時なのか、それとも

……この殺し合いが始まったばかりの時間帯なのか、だ。

どちらにせよ、このまま何も起こらないということは今までの経験上ありえない。
最後に把握するべきは何が起こったのか、だ。
佐山は改めて教室の中に視線をずらし、そしてこちらに近づいてくる足音に気付いた。
がらりと開いた扉の向こうからやって来るのは薄い緑色の髪の少女と、ツンツンした頭の少年だった。

「詩音、どうしてこんなとこまで来る必要があるんだ?話ならさっきのところで……」

「あんなところじゃ遠目から見ても他の人から丸見えですよ。
上条さんだって遠くから見知らぬ誰かさんにズキューンってのは嫌でしょう?」

二人とも首輪がはめられていることから参加者なのだろう。
会話と名簿から察するに少年は上条当麻で少女は園崎詩音だと分かる。
上条当麻は第一放送で既に名前が呼ばれている、という情報から類推するに

……この時点で殺し合いは始まったばかり、か。

何もかもが手探りの段階だ。
自分も仲間を得るために尻を揉んだり売られた喧嘩を買ったりしていた。
問題は上条当麻が何故、あと六時間足らずで放送に名を連ねることになったか、だが。

「沙都子は一見気が強そうに見えますが実はとっても弱虫で……」

「一方通行ってやつはかなりヤバい。多分殺し合いに乗って……」

上条と詩音も必要な情報、巻き込まれた知り合いの話や自分の持つ支給品などについて話している。
佐山の記憶が正しければ、彼らの話に挙がる知り合いで『今』でもまだ生き残っているのは竜宮レナ、北条沙都子、古手梨花、御坂美琴の4人。
レナや沙都子は普通の女の子らしいのだが
0320哀愛逢ドリーマーズ  ◆GOn9rNo1ts 垢版2012/12/13(木) 22:02:19.87ID:Y/IKIxWI
「ビリビリ?電撃?えっと、上条君頭大丈夫ですか?」

「だから本当なんだって!詩音も学園都市の名前くらいは聞いたことあるだろ?」

御坂美琴は電撃能力者、「超電磁砲」の異名を持つかなり強い少女らしい。
また上条の話を信じるならば彼の世界では超能力者を開発する学園都市なるものが存在していると言う。
だが、上条の話に対し詩音は首をひねるばかりで

「聞いたことありませんねえ」

……これも異世界同士の違いの弊害か。ならば話も噛み合うまい。

「それに、もしも本当に超能力なんてものがあるのなら上条君は何ができるんです?」

「えっと……右手を使えばどんな異能……超能力でも魔術でも打ち消せるん、だけど……」

尻すぼみになっていく上条の言葉。

……当然だろうな、異能の力を消すためには異能の力を見せなければならない。

だが、異能がなければ彼の異能を見せることはできない。
卵が存在するためには鶏が必要なように、異能を見せるために異能が必要という状況だ。
異能が存在するという証明を行うには、あまりにも向かない力だというほかない。
異能に触れたことのない少し頭のまわる人間ならば、上条が間抜けな詐欺師か妄想癖のあるイタい少年にしか見えないだろう。


「へー…………」

正しくそんなものを見るように軽蔑したジト目になる詩音。
上条はそれに対し慌てた様子で話題を変えようとする。
ここまでのやり取りを切り取ると、上条には失礼だが微笑ましい異世界交流の失敗例の一つにしか見えない。
熱意はあるが少し単直すぎる上条と、冷静に状況を把握し慎重に事を進めようとする詩音。
上手く噛み合えば中々良いコンビになるのではないかと思わせてくれる二人だ。

……さあ、何が起こる。

ただし。
ここからは、殺し合いという残酷な現実を見せられることになるのだが。
0325哀愛逢ドリーマーズ  ◆GOn9rNo1ts 垢版2012/12/13(木) 22:04:02.41ID:Y/IKIxWI
「よし、この話は終わりにしよう!もっかい探してる知り合いの名前だけ確認して、さっさと皆を探しに行くぞ!」

そう言って詩音の知り合いの名前を再確認していく上条の横で。
佐山は見た。見てしまった。
上条に見えない位置で一瞬で冷たくなった表情の下、詩音の口が、手が動き

「もういいか」

……これは、まさか。

佐山がその言葉の真意に気付いた直後。
急いで教室から出て行こうとした上条当麻は、銃を隠し持っていた園崎詩音に頭を撃ち抜かれた。

……そういうことか。

上条当麻を殺した下手人は、園崎詩音。
教室まで誘導したのは他者に殺しの現場を見られるのを避けるため。
話をしたのは少しでも殺し合いを有利に進めるための情報がほしかったのだろう。

「ごめんなさいね、上条君」

虚ろな目がここではない何処か遠くを見つめている。
歪んだ唇からわずかに漏れ出るのはくけけという不気味な笑い声だ。
園崎詩音は……狂ってしまっているように見えた。
それは、仕方のないことなのかもしれない。
いきなり殺し合いをしろと言われて冷静でいられ続ける人間は多くはない。
短絡的な思考に行きついても、他の人間をだれも信用できなくなっても。
このような異常事態では、責めることなど誰もできない。

そう結論付けようとした佐山は、しかし

「私は、悟史君に会いたいんです。だから…その為に、他の人は皆殺します。」

存在しないはずの鼓動が、高鳴る錯覚を得た。

……君は『そちら』を選んだのか。

佐山御言は愛する人間と共に、殺し合いから抜け出す道を選んだ。
園崎詩音は愛する人間のもとに帰るため、殺し合いに参加することを選んだ。
行動は正反対といっても良いが、原動力は変わらない。
佐山と詩音を比べてそれぞれの愛に優劣はつけられない。
ただそこにあるのは結果だけ。佐山御言が生き残り、園崎詩音が死んでいるという事実だけだ。
0326哀愛逢ドリーマーズ  ◆GOn9rNo1ts 垢版2012/12/13(木) 22:04:34.20ID:Y/IKIxWI
もしも

……もしも新庄君が私と出会う前に死んでいたら。

その時、自分はどうなっていただろうか。

……もしも新庄君が今後、私の目の前で死んでしまったら。

その時、自分はどうなってしまうのだろうか。

……園崎詩音の間違いは、私の間違いにもなり得るものだろうか。

分からない。絶対という言葉を、軽々しく使う問題ではない。
ただ今は、全力を尽くし本気を出して新庄運切と共に進んでいくしかない。
自信を持って、余裕の笑みで、世界の中心たらねばならない。

それでも

愛する者のために何かを犠牲にする必要があるとしたら。

……新庄君。

……君は私の正しくない間違いを、止めてくれるだろうか。



◇ ◇ ◇



止められない。
新庄運切には止められない。

黒き暴風が駆け抜ける。
机が飛ぶ。人が飛ぶ。
何かが砕ける音がする。

サングラスをかけた軽薄そうな男――土御門元春が叩き付けられても。
黒いスーツを着こなした威厳のある男――サカキが首を折られようとも。
黒い羽をなりふり構わずはばたかせ逃亡を図る人形――水銀燈の左腕が無残に破壊されようとも。

止められない。何故ならこれは既に起こってしまった過去なのだから。
生きていた土御門が謎の瞬間移動でとどめを刺されるところまで、余すことなく見せられた悲劇。
この出来事が起こったからこそ、水銀燈は古城にやって来て――井波は死んだのだから。
0329哀愛逢ドリーマーズ  ◆GOn9rNo1ts 垢版2012/12/13(木) 22:05:31.14ID:Y/IKIxWI
井波にとっての終わりの始まりといっても差支えのない殺戮を前にして、新庄は

……逃げないよ。

目を、逸らさない。
血も、死体も、ここから連鎖する運命も、彼女の意思は止められない。
獏の見せる過去に対して『今』の彼女に出来ることは、少しでもゼロのことを知るだけだと知っているから。
今一番の脅威となる彼の能力を、癖を、性格を、見極めることでしか死んでいった者たちへの供養にならないと分かっているから。
この惨状に対し、湧き上がる感情は

……どうして?

「……ナナリー」

理由は分かる。
サカキが指摘した通り、大切な人間――ナナリー・ランペルージが死亡したからだ。
主催に対抗する道から優勝へとスタンスを移行したのは、復讐のためだろうか。
ナナリーを殺した人間に対する復讐。
ナナリーを助けられなかった人間に対する復讐。

……どうして?

しかし、例え優勝しても主催者であるギラーミンが願いをかなえる可能性はほとんどない。
新庄でも考え付くその発想を、先ほどまで一癖もある二癖もある男たちと情報戦を行っていた聡明な男が得ていないはずがない。
それでも、ナナリーを生き返らせるという蜘蛛の糸を手繰り寄せるような奇跡を願うのは

「すまない。私の……いや、俺のせいで」

……愛していたんだね。

彼女のいない世界など、ゼロにとってはどうでもいいのだろう。
馬鹿なことを、と新庄は思わない。
人は愛する者のために、大切な人のために、なんだってする。
それが意味のないことだと分かっていても。
それがどれだけ犠牲を強いることだと分かっていても。

……こういうのは、理屈じゃないんだ。

世界の破滅を救おうとする『全竜交渉部隊』と戦ってきた異世界の住人の中には
世界よりもただ一人の愛すべき人を殺した者への復讐を果たすことを優先している人間もいたのだ。
死はそれだけ心を黒く染め上げ、意思を雁字搦めに縛り付ける概念だ。
それが理由もなく唐突に起こったものであればなおさらのこと。
だからこそ、死んだ人間を生き返らせるという禁断の果実はゼロのような男でさえも魅了する。

……それでも、君は間違ってる。

愛する人のために、血を浴びるのは間違っている。
全てを道連れに、破滅の道を進んでいくのは間違っている。
新庄運切は悪役の正逆として、正しくない間違いを認めない。
新庄運切は間接的に井波を殺された者としても、復讐を認めない。

「だけど待っていてくれ。俺が必ずナナリーを救う……だから――」

……だからボクたちは君を止めるよ、ゼロ。
0330哀愛逢ドリーマーズ  ◆GOn9rNo1ts 垢版2012/12/13(木) 22:06:15.52ID:Y/IKIxWI
◇ ◇ ◇



浮上する。夢から覚める感覚が全身を支配する。
クリアになった視界の中心に、佐山の顔があった。
意識を失う直前に前のめりになっていたので、いつの間にか距離が縮まっていたのだろう。
さもすれば互いの息さえも感じあえる位置で、佐山はおもむろに口を開き手を大きく横に広げ

「中々大胆だね、新庄君」
「……何処も触ってない?おっぱいとかお尻とかもっとすごいところとか」
「どうやら君の中の私像を上方修正する必要がありそうだ」
「今ので更にちょっとボクの中で君が低くなりつつあるよ……」

はあ、と溜息をつきかけて、新庄は表情を引き締める。
今なら獏の見せた夢について語り合うことで先ほどの問いを誤魔化せるのではないか。
そういった気弱な考えは、無しだ。

「佐山君、質問良いかな」
「いいとも」

切り込むことに少し胸の鼓動が早くなる。それでも言葉は止まらない。
今しかできない、今だからこそ話せることだ。先延ばしにすることは、出来ない。
すう、と小さく息を吸う。外からの隙間風は止まない。肺が冷たい空気に満たされる。
吐いた。


「小鳥遊君を二階に置いてきたのは、なんで?」


「彼にはまだ心の整理が必要だ。そして二階にいれば仮に戦闘になったとしても流れ弾にやられる心配は少ない」

予定された台本を読み上げるようにさらりと紡がれた佐山の一言に、新庄は

「それは本当のことだろうけど真実じゃないよ、佐山君」

眉尻を下げ、困ったような笑みを見せた。

「ほう、どうしてそう思うのかね、新庄君」
「佐山君の言ってることは合理的だし、正しいと思う。でもいつもの佐山君ならこう言うと思うんだ。
『泣き寝入りをしている男の尻を蹴っ飛ばし、私たちの側に連れてくる』ってね」
「ほほう、それはまたエキセントリックな思考形態を持った人間だね、常識人たる私には想像もつかないよ」
0334哀愛逢ドリーマーズ  ◆GOn9rNo1ts 垢版2012/12/13(木) 22:08:40.30ID:Y/IKIxWI
「佐山君」

佐山の左胸を新庄は見た。
狭心症。佐山の持つ持病に対して思いを馳せて。
本当は誤魔化すべきなのかもしれない。
見て見ぬふりをするべきなのかもしれない。
佐山ならば上手く事を運び、もっと良い解決法を出すのかもしれない。

「君は厳しいし頭おかしいことよくするし僕には理解できないことも多いけど」

だけど。
それでも自分には。
誠実に、真っ直ぐに、真剣に。

「大切な人を失う苦しみを、誰よりも知ってるはずだよ」

彼と向き合うことしか出来ない。

「井波さんと小鳥遊君がどういう関係だったのか、僕にはよく分からない」

表面上の話はいくつも井波から聞いた。
小さいものが好きとか、井波を虫以下のように扱うとか、愚痴ばかり聞かされていた気もする。
だけど、井波の小鳥遊に対する本当の気持ちを、多分自分は聞けていない。
聞かないまま、終わってしまった。此岸と彼岸に別れてしまった。
多分それは、小鳥遊にとっても、同じことで。
小鳥遊は永遠に、井波の気持ちに応えられない。向き合えない。

「でも、今の小鳥遊君の気持ちを佐山君は痛いほど理解してるはず」

別れの言葉も言えぬまま死んでしまった父。
真意を理解できず死んでしまった母。
佐山御言は両親を亡くし、ふせぎこんでいた時期があった。
それはまさしく、この場においての小鳥遊宗太だ。
覚悟もなく、理由もなく、理不尽に、奪われる。

「だから」

言うべきか迷う。
取り返しのつかないことを口走ろうとしているという自覚が、あった。
だけど、ここまで来て逃げは無しだ。


「だから佐山君は、出来る限りボクと小鳥遊君を会わせたくないんだね」


小鳥遊は井波を亡くし、一方佐山は半身である新庄と再会し、共にある。
残酷なその違いは、軋轢を生み、過ちをも生みかねない。
やり場のない悲しみは直線的な怒りへと変わる。
不条理を憎む心は自制を捻じ曲げ、自らも不条理をよしとする。
かつて両親を亡くした佐山が一人の女と過ったように。
小鳥遊宗太が過ちを犯さないという保証は、どこにもない。
0335哀愛逢ドリーマーズ  ◆GOn9rNo1ts 垢版2012/12/13(木) 22:09:18.30ID:Y/IKIxWI
「ボクのために」

新庄運切はどんな時でも正しく、優しい。
だからこそ、井波を失った小鳥遊にとって、佐山と行動を共にしてきた小鳥遊にとって。
佐山御言の半身である新庄は、佐山御言が追い求めてきた新庄は、毒でしかないのだ。
彼の発する怨嗟の声に対して、彼から染み出す絶望の念に対して。
優しく、正しくあろうとする新庄は。
小鳥遊と同じく、井波という大切な友人を失ったばかりの新庄は。
あまりに無力で、無抵抗な、サンドバックだ。

「そして――小鳥遊君のために」

そして同時に小鳥遊は、新庄を傷つけてしまったという後悔の念を抱くだろう。
衝動的な行動は自己嫌悪を招き、自己嫌悪は更なる鬱屈を生む。
そうした負の悪循環がぐるりぐるりと回り始めると、もう誰にも止められない。
バトルロワイヤルという不安定に過ぎる環境の中で、そういった人間は危険すぎる。

「さっきの喧嘩も小鳥遊君の膿みを出すだけじゃなくて、矛先を佐山君に向けるためだったんじゃないの?
意識がなくなるまで殴りつけたのは、小鳥遊君とボクの両方とも気遣ってくれてたからじゃないの?」

佐山が小鳥遊を挑発しなければ、新庄が自分の消耗も顧みず小鳥遊を助けようとして……二人の間で過ちが起きていたかもしれない。
だからこそ、佐山は自ら憎まれ役を買って出たのだ。
小鳥遊の鬱屈した気持ちを受け止め、殴り合い、昇華するために。
新庄を小鳥遊から遠ざけ、お互いの心の傷を広げないために。
彼は、大切な人を守ることに比べれば自分の心などいくらでも切り刻める。
例え大切な人に――小鳥遊に嫌われようと、憎まれようと、小鳥遊と新庄を両方守るためならばそれを厭わない。

佐山御言は大切な人を想う時に、小心者になれる人間だ。
佐山御言は大切な人を守るために、手段を問わない人間だ。
自惚れだとは思わない。自分が小鳥遊と共に、佐山に大切な人だと扱われているという自覚はある。

そして

「でも」

新庄運切もまた、佐山御言を大切に思っている。

「守られるだけは嫌だよ。背負われるだけは嫌だよ」

いつもの佐山ならばここまで過保護な素振りは見せないし、また勘付かせもしないだろう。
しかし、殺し合いという空間の中で「いつも通り」を貫き通すのは、難しかった。
今この場には、彼を支えてくれる大勢の仲間も、考えをまとめる時間も存在しない。
だから佐山は悪役として己を犠牲にしてでも新庄を、小鳥遊を守ろうとしていると新庄は思う。

「ボクは君を何もかもから守りたい。ボクは君の抱えている重荷を一緒に背負いたい」

それでも、何もかもがいつも通りにいかない世界の中で、新庄は言う。
正逆の存在として。隣に並び立つ者として。
0337哀愛逢ドリーマーズ  ◆GOn9rNo1ts 垢版2012/12/13(木) 22:09:54.26ID:Y/IKIxWI
「もっとボクと、一緒にあろうとしなきゃ、嫌だよ」

いつも通りで、ありたいと。

「佐山君」

あらゆる動きを止めた佐山をこちらから抱きしめる。
触れる衣服や肌を冷たいと思い、更に強く抱く。
少しでも温めてあげたい。少しでも近づいてあげたい。
ドクンドクンと、心臓の鼓動が聞こえる。
刻むテンポが早くなるのはお互い様だ。

「佐山君、さっき言ったよね。『私にだけは嘘はつかないでほしい』って」

井波の死を、新庄は佐山の腕の中で悼んだ。
泣き、叫び、悲しみを吐き出した。
佐山に同じことをしてほしいとは思わない。

「ボクも、佐山君の心に、嘘をついてほしくない」

だけど、彼にだってあるだろう心に秘めた何もかもを、聞いてあげたい。
感情を律し理性によってあらゆる事に臨む佐山を。
今だけでも、少しだけでも、解き放ってあげたい。

良いんだ。

「今だけは、さらけ出しても良いんだ」

それが新庄運切の、正しくあるべき者の、やりかただ。

「…………私は」

佐山はいつもの饒舌ではなく、噛みしめるように言葉を選ぶ。

「私は、小鳥遊君と井波君のことを、哀しく思う」

ヴァッシュやゾロに見せていた自信は本物だった。
だけど、自信があるからと言って哀しみが消えることはない。後悔は消えることがない。
分かっていた。
過ぎたことを過ぎたことと割り切れるような人間は、両親の死を何時までも引きずってはいない。
救えたかもしれない人間を目の前で失ったということを、彼は決して忘れない。

「しかし、それと同時に……私は君と再会できて嬉しいとも思っている」

半分以下になってしまった参加者たち。
恐るべき戦闘能力を持つ、殺し合いに乗った者たち。
そんな状況の中、半身である新庄と再会できたということを嬉しいと感じないわけがない。
0339哀愛逢ドリーマーズ  ◆GOn9rNo1ts 垢版2012/12/13(木) 22:10:53.30ID:Y/IKIxWI
「私は哀しくて、愛しい」

大切な人を失った小鳥遊宗太を哀れに思う心と。
大切な人である新庄運切を愛しく思う気持ちと。
相反する二つの感情は決して溶け合うことはない。

「小鳥遊君は私の大切な友人だ。新庄君は私の大切な人だ」

「このままでは、私はどちらかを」

少し、迷い
新庄の、真っ直ぐな瞳を見て

「新庄君を選び、小鳥遊君をさらに傷つけてしまうかもしれない」

新庄運切という愛する人の前だからこそ、出来ること。
二人しかいない世界で、抱え込んだ弱さを吐き出していく。

新庄は腕を上に伸ばし、佐山の頭をなでる。
何かあると佐山が自分によくしてくれることだ。
新庄運切は何時だって弱虫で、泣き虫で。
今だって、井波の死を乗り越えることなど出来そうにない。

それでも

「確かにボクは、弱いかもしれない」

目は、逸らさない。

「小鳥遊君に酷いことを言われたら、きっとボクはとても傷付く」

だけどね、と

「ボクは、佐山君が傷つくところを何もせず見ているだけの方が、もっと傷付くよ」

続く言葉は、少し震えていて

「二人で一緒に、傷付こうよ」

視界が歪む。目元が熱い。
いけない。
どうして自分はまた涙が出そうになっているのか。
今は自分が佐山を支えてあげなければいけないのに。

「ご、ごめんね、ボクまた泣きそうに」

「ありがとう、新庄君」

おかげで、吹っ切れた。

口には出さない。出さずとも分かり合えるのが今宵一番の有り方だ。
佐山の腕が新庄の背中に回され、抱きしめられる。
お互いに抱き合う形になったことで二人の距離はますます近くなる。
0342哀愛逢ドリーマーズ  ◆GOn9rNo1ts 垢版2012/12/13(木) 22:11:58.05ID:Y/IKIxWI
佐山は、今更に赤くなっていく新庄の顔を美しいと感じ。

「私は、君と共に傷つく道を歩もう」

佐山は、強く押し付けてくる新庄の肢体の温かさを心地いいと感じ。

「小鳥遊君のこと、ゼロのこと、他のなにもかもすべて」

佐山は、分かり切っていたことを再確認する。


「私は君と、共にありたい」


佐山御言は、新庄運切の全てを、愛していると。


「ホントに?」
「ああ」
「ホントにホントに?」
「誓うとも」

じゃあ、一緒に誓おうか。

「「Tes.」」

Tes.テスタメント。我ら、誓約せり。
佐山と新庄の世界における、誓いの言葉。


「――ずっと一緒だよ、佐山君」


「――そうでなければ嫌だよ、新庄君」


熱を持った、身体のせいか。

隙間からずっと吹いていた荒風が、さっきよりも少しだけ温かく感じた。
0345哀愛逢ドリーマーズ  ◆GOn9rNo1ts 垢版2012/12/13(木) 22:13:46.93ID:Y/IKIxWI
◇ ◇ ◇



「……ん?」

新庄は少し、違和感を感じた。
こちらの背中を抱いている佐山の腕が、少しずつ、少しずつ、位置を変えてきているような。

「佐山君?」

何も答えない佐山の代わりに、彼の腕が片方は新庄の尻に、もう片方が回り込み新庄の胸に触れた。
最初は軽く、触れるか触れないかのちょっとした接触を繰り返し。

「…………佐山君?」

ゆっくりとした手つきで軽く掌を押し込み、変形する新庄の局部の柔らかさを確かめる。
二度三度と、少しずつ力を込めていき、その行為が「揉む」という域に達してから

「実にまロい……!」

新庄は佐山の治りかけている右手を爪を立てて強く握りしめることで、変態に対する返答とした。

「佐山君」
「ききききみは風見のようなバイオレンスガールではなかかかかかったはずだががががが」

悲鳴のような声を上げる佐山を、新庄は冷ややかな視線で射抜きながら

「今は、駄目だよ」
「ほう、君と私の睦まじきパーフェクトコミュニケーションを阻むものがどこにあると」
「ゾロさんと早く合流しないと嫌な予感もするし古城の仕掛けは全く調べてないし小鳥遊君もそろそろ起こしてあげないとだし」

佐山はふむ、と数秒間顎に手を当てて

「何も問題はないな」
「佐山君今、頭じゃないところ使って考えたでしょ」
「ははは、新庄君は私の下半身に興味がおありかねねねねね!」

再度強く握り込め、悲鳴を上げさせ、黙らせる。
あっ、この方法意外と便利かも。いつもみたいにネクタイ絞めなくても良いし。

「…………お預けかね」

本気で残念そうな無表情をする佐山を見て、溜息ひとつ。

「…………しょうがないなあ」
0348哀愛逢ドリーマーズ  ◆GOn9rNo1ts 垢版2012/12/13(木) 22:15:09.23ID:Y/IKIxWI
新庄は目を逸らし、少し頬を上気させながら

「佐山君、跪いて」
「いつの間にそんな女王様的キャラになったのかね」

きゅっと握り、佐山が神妙に黙ったところで

「ボクと同じ高さまで来て」

佐山は新庄よりもずっと背が高い。
だから、佐山は言われたとおりに立膝となり新庄を見下ろさない高さまで下がった。

「目を閉じて」
「君と同じ目線まで来たというのに目を閉じろとは」
「は・や・く」

握られては逆らいようもない。
言われるままに目を閉じる。訪れるのはランタンの光さえ届かない完全なる暗闇。
見えないことにより鋭敏になった感覚がとらえるのは、新庄の大きくなった息遣いと早鐘を打つ心臓の鼓動だ。

「新庄君、緊張しているならば佐山式緊張緩和法を――――」

続く言葉を発しようとする唇を、塞がれる。
あたたかく、やわらかい感触が佐山を包み込んだ。
慣れていないのかたどたどしく行われる行為に対し、佐山は頭の中で一人カーニバルを行いつつ

…………新庄君の方から、というのも良いな。

10秒にも満たない時間で、二人は分かたれる。
目を開けると、顔から湯気が出そうな新庄が微笑みで佐山を迎えてくれた。

「今はここまで、ね?」

恥ずかしがっているのか、新庄はそっぽを向きながら

「ゴタゴタが片付いたら続きをしてあげるから」
「続きをしてもらう、の間違いではないのかね」
「またそんなこといっ―――んむぅ!?」

こちらを見ていない新庄を隙有りと見て、佐山は彼女の顔を両手で瞬間的にホールド。
驚き戸惑っている彼女の顔もまた美しいと思いつつ、強引に唇を奪う。
むーむー唸りながら表す抗議の表情は、あえて無視。なんだろうと一回は一回だ。
新庄が正しく佐山に与えをくれるというのならば。
佐山は悪役として、新庄を奪うことでその返しとする。

……共にあるというのは、そういうことだろう?

たっぷりと一分間以上重なり続け、舐め、絡ませ、吸い上げ、送り……離した。
膝を震わせ息を荒くする新庄に対し、佐山は余裕の表情で

「続きを楽しみにしているよ、新庄君」

「はっ、はっ、はあ……さ、佐山君の変態!エロ猿!宇宙人〜!」
0353哀愛逢ドリーマーズ  ◆GOn9rNo1ts 垢版2012/12/13(木) 22:16:26.99ID:Y/IKIxWI
ぷっくらとほっぺたを膨らませながら、ぼこすかと背中を叩いてくる新庄運切を愛しいと感じるのは

もはや後ろではなく、こちらの隣に並び立とうと歩みを早くする悪役の正逆を頼もしいと感じるのは



――――いつもどおりに、だよ。
0356哀愛逢ドリーマーズ  ◆GOn9rNo1ts 垢版2012/12/13(木) 22:17:44.89ID:Y/IKIxWI
【A-2 居館一階 廊下/1日目 真夜中】
【佐山・御言@終わりのクロニクル】
[状態]:全身打撲、左腕欠損(リヴィオの左腕)、右腕の骨に皹、全て回復中
[装備]:つけかえ手ぶくろ@ドラえもん(残り使用回数2回)、獏@終わりのクロニクル、治療符@終わりのクロニクル
[道具]:基本支給品一式×5(二食分の食事を消費)、S&W M29 6インチ 5/6@BLACK LAGOON、予備弾丸26/32
     空気クレヨン@ドラえもん 、防災用ヘルメット、 ロープ、防火服、 カッターナイフ、黒色火薬入りの袋、
     ミュウツー細胞の注射器@ポケットモンスターSPECIAL、双眼鏡、医薬品多数、ライター、 起源弾@Fate/Zero(残り28発)、
     クチバの伝説の進化の石(炎、雷、水)@ポケットモンスターSPECIAL、 空気ピストル@ドラえもん、
     メリルのハイスタンダード・デリンジャー(2/2)@トライガン・マキシマム 、排撃貝@ONEPIECE、
     デリンジャーの残弾20、 鉄パイプ爆弾×4、治癒符2枚@終わりのクロニクル、ジャバウォックの右腕@ARMS 、伊波の首輪、ハクオロの首輪
[思考・状況]
0:新庄君はやはり素晴らしい。
1:古城の仕掛けを調査する。
2:夢について新庄と話し合う。
3:ゼロへの対処を決める。
4:首輪を解体し、構造と機能を調べる。
5:地下を探索する。



※小鳥遊が女装させられていた過去を知りました。
※会場内に迷宮がある、という推測を立てています。
※地下空間に隠し部屋がある、と推測を立てています。
※リヴィオの腕を結合したことによって体のバランスが崩れています。
 戦闘時の素早い動きに対して不安があるようです。
※地下鉄を利用するのは危険だと考えています。
※○の窪みに関しては、首輪は1つでいいという仮説を立てています。
※ハクオロのデイパックの中身はまだ確認していません。
※水銀燈に関してはヴァッシュと再合流後、検討しようと考えています
※ヴァッシュ達との合流のため、狼煙のルールを決めました。
  1、使用するのは早くても日の出後。
  2、地下の探索が終了し、合流の必要が生じた場合に狼煙を上げる。
  3、1本の煙を確認した場合は早急にE−2駅へ、もしも駅が禁止エリアだった場合は隣のホテルへと向う。
  4、2本の煙を確認した場合はその時の次の放送までに集合場所へと向かう。




【新庄・運切@終りのクロニクル】
[状態]:健康、顔に腫れもの、精神的な疲労、全身にダメージ(小)
[装備]:尊秋多学園の制服、運命のスプーン@ポケットモンスターSPECIAL
[道具]:支給品一式(食料二食消費、水1/5消費)、コンテンダー・カスタム@Fate/Zero
     コンテンダーの弾薬箱(スプリングフィールド弾26/30)
[思考・状況 ]
0:恥ずかしいなあもう。
1:伊波さん、ボク頑張るよ。
2:夢について佐山と話し合いたい。
3:佐山とここから脱出する。
4:ブレンヒルトについてはまだ判断できない。
5:人殺しはしない。


※小鳥遊宗太については、彼の性癖とかは聞いています。家庭環境は聞いていません
※新庄の肉体は5:30〜6:00の間にランダムのタイミングで変化します。
 変化はほぼ一瞬、霧のような物に包まれ、変化を終えます。
 午前では女性から男性へ、午後は男性から女性へ変化します。 現在は女性。
※参戦時期は三巻以降です
※まひるに秘密を話しました。次の変化のときに近くの人に話す必要は…
0357 ◆GOn9rNo1ts 垢版2012/12/13(木) 22:18:19.76ID:Y/IKIxWI
以上で投下を終了いたします
支援してくださった方、ありがとうございました
0359創る名無しに見る名無し垢版2012/12/13(木) 22:27:14.40ID:gYKafRYn
投下乙です!

うーんエロい(小学生並の感想)
どちらも大事で、どちらも失いたくない。
でも傷つくことからは逃げられない、だから二人で背負おう。
いい話だったのに最後の小学生並のエロ行動で台無しである、うーんこの佐山。
ここも決意が固まって参りましたなあ……
0360創る名無しに見る名無し垢版2012/12/13(木) 23:09:52.00ID:RWTBR0oP
投下乙です!

うおお、これはあまりにも佐山、あまりにも新庄君…!
今まで余裕な顔をしつつ進む悪役、佐山の間違いを正せるのはやはり新庄君しかいない
というか、佐山は道を選び取る際悩み迷いつつも決断するんだということと、その間違いを正しく間違わせるのが新庄君だということを、
互いに対であることを改めて実感した。そうだよ、この二人はこんな感じだ…!
そんな凄いシリアスな流れの後にさらりとエロを行う所もこの二人だが、ちょっとマテやおいw

あ、あと誤字報告です
井波→伊波
0361創る名無しに見る名無し垢版2012/12/14(金) 04:54:30.92ID:YGPgg+U1
すげえー、まじすげえ
上のほうでも言われてるけどこれなんて終わりのクロニクル
佐山が佐山で新庄くんが新庄くんで、雰囲気とか掛けあいとかいちゃらぶとかオチとかそのものすぎる!
やっぱいいなあ、この二人
一人ひとりもいいんだけど、やっぱりこの二人がいいわ
0362創る名無しに見る名無し垢版2012/12/14(金) 23:15:52.04ID:Yq8sE/kI
投下乙!
うおお、なんだこの二人だけの空間は……!
新庄くんの可愛さがやばいね。
獏を使っての上条さんとか詩音とか懐かしいキャラも出てきて、面白かったです。
小鳥遊と伊波の関係と対比すると、佐山と新庄くんはそりゃあ複雑な気持ちだからなぁ。
この先、この二人のどちらかが先に死んでしまったらどうなるのだろうと思った…!
0364これより先怪物領域  ◆OQO8oJA5SE 垢版2012/12/16(日) 23:36:15.65ID:5xC48d2K
「ブオォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
 オォォォオオオオォォォオオオオオオオオオオヲヲオオ
 オォォォオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!!!」



怪物の絶叫が夜の静寂を引き裂く。
場所は森林。多種多様な樹木が月明かりすら遮断し、深い闇を形作る。
その場所(ステージ)でチョッパーの巨体は生い茂る木々を薙ぎ倒しながら、クレアに襲い掛かる。
その姿はまるで神話に出てくる魔獣だ。
怪物たちを統べ、人々の安寧を破壊する悪夢の象徴。
物語からそのまま出てきたような怪物に対し、クレアは冷静にオートマグの引き金を引く。
マグナム弾を食らっても巨獣は怯みもしないが、そんなことはクレアも百も承知だ。
狙いは僅かに殺がれたその勢いにある。
銃撃によってできた一瞬の隙を突いて、赤毛の男はチョッパーに肉薄する。

「――スタープラチナッ!」
『オラオラオラオラオラオラオラオラッ!』

スタープラチナの突き(ラッシュ)。
一撃でも常人を撲殺して有り余るほどのパワーを、連続して巨体に叩き込む。

「何ッ!?」

だが、クレアがその攻撃で得たのは手ごたえではなく困惑だった。
手になじんだあるべき感触――肉を叩き、骨を砕く感触が微塵も伝わってこない。
そしてその正体を瞬時に察知した。
厚い毛皮と分厚い筋肉。二重構造の鎧が突き(ラッシュ)の衝撃を全て殺していたのだ。
そしてその隙を逃すチョッパーではない。

「……オオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

絶叫が大気を震わせ、丸太よりも太い腕が唸りを上げてクレアを襲う。

「チッ、"時よ止まれ"ッ!」

時間停止は僅か一瞬。
その刹那にまるでサーカスの軽業師のように身を翻し、距離をとる。
空を切るチョッパーの攻撃を尻目に、空中でディバックを漁り、着地と同時に構える。
その手に握られたのはスーツケースとは名ばかりのウェポンラック。
クレアからしてみれば未来の超兵器だが、あの馬鹿げた重量の十字架に比べればまだ常識的なシロモノだ。
内蔵された兵装のうちロケットランチャーを選択し、構える。

「さぁて、これはどうだ?」

放たれたロケット弾は白煙の尾を引き、獲物を狙う。
対するチョッパーはただ腕を振い、ロケット弾を叩き落した。
だがあまりに速く振るわれた腕は爆発するより速くロケット弾を弾き飛ばした。
0366これより先怪物領域  ◆OQO8oJA5SE 垢版2012/12/16(日) 23:37:52.57ID:5xC48d2K
「――ほう。なら、これはどうだ?」

怯むことなくロケット弾を連射するクレア。
それに対してチョッパーが行ったのは先ほどと同じ圧倒的質量と速度による力任せの回避運動。
なぎ払ったロケット弾同士が偶然、ぶつかり合い、空中で爆発する。
熱と炎が空気を伝わり、彼らの肌を焼く。
だがそれもこの怪物の前では大した意味を持たない。
巨獣は爆炎を掻き分け、そのまま攻防一体の突撃を仕掛ける。

「チッ」

舌打ち一つ。迫り来る豪腕をかわす為、体を倒す。
だがクレアの想像よりもわずかに速く振るわれた腕に、肩がわずかに触れた。
たったそれだけだ。それだけなのにクレアの体は弾き飛ばされる。
圧倒的な質量差が、明確な凶器となってクレアを襲う。

「くっ……!」

体勢を崩しながらもスーツケースから放たれる徹甲弾。
胴体に炸裂――だがなんと言う耐久力だろうか。
人の体を吹き飛ばす鉄鋼弾を受けても、目の前の怪物はなお突進してきた。
この距離では時間停止しても間に合わない。

「守れ!」

とっさに出現させた幽波紋の腕を交差させ、防御体勢をとる。
スタープラチナの剛力とクレアの体術。
その二つを合わせれば怪物の拳を受け切ることなど造作もない。
相手が相手が常識内の存在であれば、だが。
そして今、クレアが相対しているのは、正真正銘の規格外のバケモノだった。

「ブオオオオオオオオオオオォォォォオオオオオオオオオ……!」

汽笛のような嘶きと共にクレアの予想を超えた超スピードで腕が振るわれる。

「ガッ……!?」

ダメージを受け流すタイミングを完全に外された。
超人技とも言うべきクレアの技量すら無効化するほどの圧倒的なパワーとスピード。
真正面から振るわれた腕はクロスガードを易々と貫通し、凄まじい衝撃をクレアの体内に叩き込む。
有り余るエネルギーはそれだけに留まらず、まるでクレアの体はゴミのように吹き飛ばされる。
そしてそのまま生い茂る木々に叩き付けられた。

「カ、ハッ」

肺から無理やり空気が搾り出される。
一瞬形飛んだ意識を回復させた次の瞬間、クレアが目にしたのは迫りくる魔獣の爪。
鉄の味がする液体を口から吐き出しながら、迫る追撃を危ういところでかわす。
だが追撃は終わらない。チョッパーの腕が連続して振るわれる。
嵐のような猛攻を紙一重のところでかわしながら、クレアは思う。
0368これより先怪物領域  ◆OQO8oJA5SE 垢版2012/12/16(日) 23:38:52.72ID:5xC48d2K
ここに着てから変な奴らと散々戦ってきた。

変な力を使う白髪頭。
スタンドを使う妙な髪型の男。
二丁拳銃を構えた凶暴女。
けったいな拳を持った野獣のような男。
赤目と黒目の吸血鬼もどき。
妙な獣どもを操る金髪の子供。
異常なほどに戦い慣れしたけったいな言葉遣いの男。

だが目の前にいるモンスターはそのどれとも違う、文字通りの人外であると。
その存在自体がクレアの知る常識を超越した存在なのだと理解した。

(――だったらさて、どうする?)

クレアは再び思考する。
目の前の化け物は技量を無効化するほどのパワーとスピード、
そして銃弾程度はものともしない圧倒的な防御力を持っている。
如何にクレアが超人的な身体能力をもっているとしても、生身の男が勝てる理屈などありはしない。

一方でコンディションも最悪だ。
馬鹿力で叩きつけられ、恐らく肋骨には皹が入っている。
さらに先程額を切ったようだ。左の視界が赤く染まっている。
どう見ても絶体絶命。ならばどうするか。
方法は一つ、

「少し、本気を出すか」
0370これより先怪物領域  ◆OQO8oJA5SE 垢版2012/12/16(日) 23:39:41.67ID:5xC48d2K
つぶやきと同時、スタープラチナが大きく振りかぶる。
いかにスタープラチナといえど目の前の怪物に打撃は通じない。
その目標は――地面。
近距離パワー型の怪力は反動でクレア自身の体を宙へと放り投げた。
さらに迫る追撃。だが今度は防御せず再び拳を振り上げる。

「おおおおおおおおおっ!」
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」

ぶつかり合う拳と拳。
強度は互角だが体重差でクレアは弾き飛ばされる。
だがこれこそが彼の逃走経路。
チョッパーの力を利用し、更に距離を稼ぐ。
しかし稼げた時間はたったの数秒。それほどまでに目の前の怪物は非常識な身体能力をしているのだ。
だがそれだけでクレア=スタンフィールドには十分であった。

「ああ、単純なことだ。
 足りないのならばたせばいいだけのことなんだからな」

刹那、空中のクレアのシルエットが膨れ上がる。
その正体は彼がディバックから取り出したのは複数の銃器だった。
右手にカラシニコフ、左手にロベルタのスーツケース。
そしてスタープラチナの両手に構えられた二重牙(ダブルファング)。
クレアが選択したのは、四本の腕による四門の重火器操作。
二挺拳銃使い(トゥーハンド)、三本腕の処刑人(トライパニッシャー)に続く四門の破壊者(フォースデトネイター)がそこにいた。

「これに耐えられるか、怪物(モンスター)?」

言葉と同時、トリガーが引かれ4つの銃口が一斉に火を噴いた。
それは実質時間にしてみればたったの数秒。
だがマズルフラッシュだけで周囲がはっきり映るほどの超連射にはそれだけで十分だった。
例え優れた筋肉の鎧があろうとも、皮を、肉を、骨を削ぎ、一片の肉塊に変えてしまう鉄の嵐が巻き起こる。

回避不能の面攻撃に対し、チョッパーがとった行動は、更なる加速だった。
今のチョッパーに知性はない。
だが意識を超えた超直感――野性と呼ばれるそれは危機を前にして最善の方法を選択した。
つまり彼は左手を盾として、更に加速したのだ。
結果、鉄の豪雨にさらされ、左腕は抉られ骨まで粉々になっていく。
だが、それだけだった。
左腕破壊に費やされた数秒。その数秒があれば今のチョッパーには事足りる。
強化された脚力の前にはこの程度の距離は意味を成さないのだ。
目の前の敵を叩き潰す。ただそのためだけに残された右腕が振り上げられ、

「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォオオオ!」

絶叫とともに叩きつけられた。
ドンという大きな音とともに、粉々に砕かれ、ごちゃごちゃした中身がぶちまけられる。
少し前まで機能していた"それ"は、あまりにもあっけなく意味を成さないものへと変貌した。
0372これより先怪物領域  ◆OQO8oJA5SE 垢版2012/12/16(日) 23:41:06.53ID:5xC48d2K
「残念だったな」

――クレアの持っていた、スーツケースが、だ。

銃弾の雨をかいくぐったチョッパーに対し、弾丸の残っていたスーツケースを惜しげもなく投げ捨てた。
更に一瞬の隙を作るために。
その目論見は成功し、クレアは一瞬の好機を得る。

飛び散る残骸の中を一直線に、まるでロケットのように飛び出すクレア。
その奇術のタネはクレアの足に踏みつけられた奇妙な貝殻。
そう、クレアは噴射貝(ブレスダイアル)の上に立っていた。
超人的なバランス能力を持つクレアにしてみれば朝飯前の芸当だ。

「――穿て、スタープラチナ」

スタンドの指を突き出した。
流星指刺(スターフィンガー)とも呼ばれるスタープラチナの指による刺突。
それに噴射貝(ブレスダイアル)の推進力が合わさり、クレアは一発の弾丸となった。
ダイアルの加速、スタンドのパワー、クレアのスキルが合わさった一撃。
更にそこにチョッパー自身の相対速度も加わり、魔獣を仕留める必殺の魔弾は狙い違わず魔獣の左胸に突き刺さる。

「ガァ……ッ! あああああああああああああああああああああああああ!」

だが、それでもチョッパーは腕を振り上げる。
スタープラチナの指は人間と同じ程度。
その程度の長さでは肥大化した筋肉に阻まれ、心臓まで到達していない。
その数秒さえあれば、むしろ懐に飛び込んできたクレアは格好の獲物に他ならない。

「その生命力は素直に尊敬するな。だが俺には勝てん」

だがクレアはすでに次の行動に移っていた。
クレアの手にいつの間にか握られたのは先ほどまで手にしていた拳銃、オートマグ。
その銃口が向けられるのは、穴。
既に消したスタンドの残した赤黒い穴。
その一点に口付けるような繊細さで、銃口をやさしく重ねる。

「お前は強かった――だが、これで終わりだ」

引き金が引かれ、銃弾は怪物に止めを刺す杭のように心の臓を穿った。
どんな防御も無効化する一撃を食らい、ついにチョッパーの巨体は崩れ落ちた。


*    *    *
0375これより先怪物領域  ◆OQO8oJA5SE 垢版2012/12/16(日) 23:42:14.69ID:5xC48d2K
*    *    *




「ク……ハァ……」

クレアは苦しげに息を吐く。
連続して時間を止めたせいか疲労が激しい。
あの回復薬には頼れない以上、どこかで一旦休憩をとらなければいけないだろう。
それに銃弾も一気に使った。できれば補充しておきたいところだが……

「……まぁ、無いモノねだりをしてもしょうがないか」

周囲にあるのは破壊された森だったものしかない。
さっきの場所まで戻ればあの飛び散ったガラクタの中に何かあるかもしれないが、そこまでしてなかったら飛んだ無駄骨だ。
だがそのとき、周囲を見回していたクレアの鼻は異常を嗅ぎ取った。

(……焦げ臭い?)

今はまだ僅かではある……、が確かに火の臭いがする。
恐らくは先ほど爆発したロケット弾が森に着火したのだ。
何時になるかはクレアにもわからない。だが少なくともここは火に包まれるだろう。
ならばこの森に長居する意味は無いと判断し、踵を返す。

「ま……て……!」

だがそんな彼を引き止める声があった。
振り向けばそこには小さい獣人が、地面に這いつくばったままこちらを睨んでいた。

「まだ生きていたか。本当に面白いな、お前」

体内に直接弾丸を叩き込んだのだ。
普通なら即死だというのにまだ動いている。本当に驚くべき生命力だ。
……だが、自分が手を下すまでも無くもうすぐその命も尽きる。
凄腕の殺し屋"葡萄酒(ヴィーノ)"にはそれが感覚で理解できた。
戦いはまだ続く。銃弾を消費する必要も無い。

「動くと辛いだけだぞ。お前はもう――」
「そんなの、医者である俺が一番わかってる!」

叫ぶごとに血を吐き出す。血と一緒に命まで吐き出されていくようだ。
だがチョッパーにとってそれは些事でしかない。
問いたださねばならないことがあるのだ。

「なんでだ! なんでなんだよ!
 レッドは……俺たちの仲間は! フィーロって奴に助けられたんだ!
 そのフィーロが言ったんだ! クレアって奴は信用できるって! なのに……なのにお前は!」
0376これより先怪物領域  ◆OQO8oJA5SE 垢版2012/12/16(日) 23:43:09.22ID:5xC48d2K
仲間の遺志を継ぐチョッパーにとって、友達(なかま)の信頼を裏切り続ける男は許せないものだった。
一方でその言葉でクレアは彼らの持つフィーロの情報を理解した。
そして彼がこの大地で、どのように行動していたかも。
 
「……ああ、そうだな。アイツなら口ではどういうか知らないが、見ず知らずの人間を助けるぐらいやるだろう。
 それこそ何でもないことのようにな。だが ――」

言葉が切れる。

「――だが、死んだ。こんな場所で、誰かに殺されてな。
 フィーロが死んだ今、ガンドール兄弟は何があろうと助けなきゃならない。
 そのためにはこんな訳のわからない場所で足踏みしている場合じゃない。
 俺は二度も同じ失敗を繰り返せるわけがない――繰り返させるものか」

チョッパーは気づく。その瞳に浮かぶ色に。
そこには色々な色が渦巻いていた。
もう取りこぼさないという決意があった。こんな現状に対する怒りがあった。
そして何よりも――悲しみの色があった。大事な物を失った、まるで親鳥を失った雛のような埋めようのない喪失の悲しみが。

「……そのためなら、俺は怪物でかまわないさ。
 "線路の影をなぞるもの(レイル・トレーサー)"……いや、名なんていらないな。ただの"怪物"で問題ない」

目の前の男は涙なんて流していない。
でもその顔にかかった血が描く軌跡は、まるで――。

「じゃあな、ご同類(モンスター)。お前は俺を少しは本気にさせた。そのことは十分に誇っていい」

言葉を最後に、靴音が遠ざかる。
その冷たい響きがここにはもう用がないと雄弁に語っていた。
たった一人森の中に残されたチョッパー。
傷だらけのその体は最早何も出来ることがない。
――いや、

「まだ……だ……」

震える腕を意志だけで動かし、土に何かを書き残す。
書ききれているのか、それすらも曖昧なままで。
この行為に意味があるかどうかもわからない。
誰かが見るのかもわからないし、この場所に誰か来るのかもわからない。
でも最後の一瞬まで足掻きたかった。

――書ききった。
そう思った瞬間、全身から力が抜けた。
もう指一本も動かす力も残っていない。
徐々に遠くなる意識の中、脳裏に次々と人の顔が浮かぶ。
0378これより先怪物領域  ◆OQO8oJA5SE 垢版2012/12/16(日) 23:43:43.49ID:5xC48d2K
……ヒルルク、くれは
俺を俺として育ててくれた人たち。
……ルフィ、ゾロ、サンジ、ナミ、ウソップ、ロビン、フランキー
大好きな海賊団の仲間たち。
……レナ、グラハム、レッド、ライダー、リカ、ウルフウッド……
この世界で出会った仲間たち。
大事な、大切な人の顔が次々と浮かんでは消えていく。

でも最後にぼんやりと浮かぶのはあの怪物の目だ。
――寂しそうだった。まるで、あのときの俺みたいに。
大事な人を失った目だった。必死に足掻いている目だった。

ああ、もし俺がもしヒルルクみたいにすごい医者だったら、あの怪物の心も癒してあげられたのかな。
あの時、全部の憎しみや悲しみから救ってくれたドクターやくれはやルフィみたいに。
怪物を友達を失った悲しみから助け出てあげれたのかな。
真っ赤な涙を流す、赤い髪の怪物を。

でもやっぱりできなかった……
ああ、やっぱり俺は、未熟だったよ……。

(チクショウ……悔しいな……助けられないのは、悔しいよ……ルフィ……ドクター……)

その思いを最後に、ガフ、と小さく血を吐いて、その小さな体は二度と動かなくなった。




【トニートニー・チョッパー@ONE PIECE 死亡】
【残り14人】


     *      *      *
0381これより先怪物領域  ◆OQO8oJA5SE 垢版2012/12/16(日) 23:45:03.49ID:5xC48d2K
     *      *      *


"もしも"の話をしよう。

"もしも"、彼の隣に黒髪の少女がいたとしたら。
"もしも"、彼が金髪の少女と親しくなっていたとしたら。
"もしも"、彼がこの場所で幼馴染の少年と再会していたとしたら。

"もしも"、彼の隣に誰かいたならば、彼は人の領域にいたかもしれない。
無茶苦茶で、嵐のようで、でも誰かを確かに愛していて。
主人公たちのハッピーエンドに花を添えるような少しお茶目な世界の中心だったかもしれない。

だがここにいる彼は一人だった。
笑いあう友人も、その心を知る女もここにはいない。
たった一人きりの世界にいるのは、ココロを閉じ込めた怪物だった。

怪物(クレア)は戸惑わない。
故にその歩みは止まらない。
彼の歩む先に広がるのは大舞台。人の領域を超越した怪物たちのオンステージ。

ああ、これより先――怪物領域。


【H−2/1日目 真夜中】
【クレア・スタンフィールド@BACCANO!】
[状態]:疲労(中)、全身に打撲
[装備]:スタンドDISC『スター・プラチナ』@ジョジョの奇妙な冒険、スプリングフィールドXDの弾丸×7、拳銃の予備弾×30
    二重牙@トライガン・マキシマム(20%、70%)、AMTオートマグ(0/7 予備弾×15)
[道具]:支給品一式×5<クレア、一方通行、レヴィ(一食消費、水1/5消費)、クリストファー、カルラ>、未確認支給品(0〜1)
    クリストファーのマドレーヌ×8@バッカーノ!シリーズ、ミカエルの眼の再生薬×3@トライガン・マキシマム
    噴風貝(ジェットダイアル)@ONEPIECE、応急処置用の簡易道具@現実、痛み止め
    パ二ッシャーの予備弾丸1回分、ロケットランチャーの予備弾頭2個
    ○印のコイン、AK47カラシニコフ(0/40、予備弾40×3)、蓮の杖@とある魔術の禁書目録
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、ギラーミンから元の世界へ戻る方法を聞き出す。
 1:優勝のために他の参加者を殺す。迅速に、あらゆる可能性を考慮して。
 2:フィーロを殺した相手が分かったら、必ず殺す。
 3:スター・プラチナに嫌悪感はあるがある程度割り切っている。
【備考】
 ※参戦次期は1931~特急編~でフライング・プッシーフット号に乗車中の時期(具体的な時間は不明)
 ※ほんの一瞬だけ時間停止が可能となりました。
 ※梨花が瞬間移動の能力を持っていると思っています。
 ※名前を聞いていなかった為、カズマとクリスの死を知りません。
 ※もう一度ミカエルの眼の再生薬を服用すれば、命に係わるかも知れないため使用しないほうがよいと思っています。
 ※○印のコインの意味は不明です。使い道があるのかもしれませんし、ないのかもしれません。


 ※【H-2】の森には火が回り始めています。
 ※【H-2】にチョッパーの書置きが残されています。内容は不明で、読めるかどうかも定かではありません。
0382これより先怪物領域  ◆OQO8oJA5SE 垢版2012/12/16(日) 23:45:54.76ID:5xC48d2K
これにて投下終了となります。
矛盾点などありましたらお願いします。

なお、投下宣言を忘れていて申し訳ありませんでした。
0383創る名無しに見る名無し垢版2012/12/16(日) 23:54:25.09ID:iFzTjm8q
投下乙!
暴走チョッパーはかなり惜しいところまでいったけど、あと少し足りなかったか。
それでも最後の最後でクレアを気遣うチョッパーの優しさは良いなぁ。安らかに眠ってくれぇ。、
そしてスタプラにもダブルファング持たせるってのにしびれた!想像すると凄いカッコいいなぁ。
もしクレアが対主催だったら凄い頼り甲斐あるけど、ここでは一人だもんなぁ……うーん色々と考えてしまう。
0384創る名無しに見る名無し垢版2012/12/16(日) 23:59:54.74ID:JhFVWtxv
投下乙です!
怪物チョッパー強い!パワーとスピード持った巨体ってそれだけで驚異的すぎる
と思ったらクレアも負けじと本気出して、四門の破壊者!?なんだこの怪物合戦は…!
僅差で負けちゃったけどチョッパー、お前は頑張ったよ……最後に思い出す皆の顔にホロリ
チョッパーのダイイングメッセージとか、一人ぼっちのクレアは傷ついた身体でどこまでいくのかとか気になることが多すぎる!
0385創る名無しに見る名無し垢版2012/12/17(月) 00:32:03.76ID:b9XvnTJI
投下乙です!

やはりチョッパーは届かなかったか…
チョッパーもかなり強かったが、それ以上にクレアが強すぎる
クレアの強さが圧倒的すぎて、逆にクレアのむなしさが際立つ気すらするよ
最期まで優しかったチョッパー、安らかに眠ってくれ…

マーダー陣は全員埋められぬ虚しさを抱えて、一体どこまで向かうのか
その先に何を見出すんだろうか…先が気になる
0394貴方を瞼が憶えている ◆pSc/w7EBTk 垢版2012/12/21(金) 18:39:24.09ID:SqjdEM8k
その男を止めるものなど、何もなかった。
人生の内で最も下らない出来事が、人生の内で最も大きな爪痕を残してから。
空腹、痛み、困難、敗北、屈辱、絶望。
死の恐怖ですら、男の足を止めることはできなかった。
そして、男自身に止まるつもりなど毛頭無かった。
「世界一の剣豪になる」という、どこにあるかもわからない目標に向かって突き進むのだから。
止まっている時間など、ほんの一瞬ですら必要無かった。
息を吸い、血が流れ、身が動く限り。
彼は、ただひたすらに前を向いて進むだけ。
足を止めるブレーキなんて必要ない。
あの日、心に誓ったときからそんなものはへし折っていた。
だから男は止まらない、いや止まれないはずだった。
こんな訳も分からないところで、へし折ったはずのブレーキを見つけるまでは。

彼の足を止めたのは「喪失」というブレーキだ。
あの日、大親友かつ絶対に越えると誓った友を失った日にへし折ったはずのブレーキ。
そのブレーキがいつの間にかそっくりそのまま元通りになっていて、今の彼の足を止めていた。
「世界一の剣豪になる」まで、こんな訳の分からないところで止まっている時間などあるわけがないのに。
彼は、止まってしまった。

この場所で、二人の男が死んだ。
嘘が上手くて、逃げ足が早くて、狙ったモノは外さない、行く行くは勇敢なる戦士を志す男が死んだ。
夢に向かってまっすぐで、自分の気持ちに正直で、どこまでも強くなり続ける、自分を海賊に誘った男が死んだ。

死人は蘇らない。
それは、あの日から知っていることだ。
どれだけ声をかけても、どれだけ涙を流しても、どれだけ起こそうとしても。
死人は、起きあがらない。
分かっているのに、分かっているのに。
あの日へし折ったはずの「喪失」のブレーキは、キリキリと金属音を上げながら彼の足を止めていく。

やがて、男はあの日ぶりに完全に足を止めた。

ぐるりと周りを見渡す。
あの日以来目に入れることがなかったモノが次々に飛び込んでくる。
世界で一番の大剣豪になると誓った幼き頃の自分。
腹が減って死にそうなときに食べた砂利まみれの飯。
曲芸士から始まり猫背やなんやと妙ながらも自分の前に立ちはだかってきた敵たち。
戦いの中を共に潜り抜けていった仲間たち。
男のそんな「過去」が視界に広がり、浮かんでは消え、浮かんでは消えていく。
そして最後に、男の目に映った「過去」は。
鷹の目に斬られる自分の姿と、動かない体となった幼なじみの姿。
その二つが、交差するように同時に映った。

全ての「過去」が霧のように立ち消えた後、遠い遠いところに見覚えのある顔が映る。
長鼻の男を初めとした横一列に並ぶその集団は、彼が「喪」った者達だった。
笑っているのか、泣いているのか、よく分からない顔で。
彼らは、じっと男を見つめていた。
0395貴方を瞼が憶えている ◆pSc/w7EBTk 垢版2012/12/21(金) 18:39:56.57ID:SqjdEM8k
ふと、目を覚ます。
そこに並ぶのは顔ではなく、ありふれた現実。
先ほど同行者と別れた場所、城の入り口から見える風景だった。
「もし、あたりを探索するなら左手を絶対に城の外壁から離さないで下さいね」
史上最悪の方向音痴である彼が、城の近辺の探索という困難なミッションをこなすことが出来たのはそんな一言のお陰である。
別れる間際に何回も何回も何回も重ねて忠告しておいた甲斐があったというものだ。
そんな同行者のお陰で、奇跡的に彼は城の入り口に再び戻ることが出来たのだ。

そして来るべき戦いに備え、城の入り口で精神統一を行っていた。
だが、実際は心を無にして落ち着くどころかこのザマである。
「ガラにもねえな……」
はぁ、と溜息をこぼしながら手で頭を押さえつける。
この殺し合いという場で、近い人間の死をいくつも見てきた。
誰も彼も、強制された殺し合いという「くだらない事」で命を落とした。
男がそれを見届ける度に、ある場面が脳裏にちらつく。
「くだらない事」で命を落とした彼女の姿が、彼らと重なるように浮かび上がって来る。

何故か?

彼らと少女を結びつける物、こうなるはずでは無かった死に逝く者の「無念」という思いがあったからだ。
何人もの人間がこの場でそれを遺し、ある者はそれを託しながら死んでいった。
この男も例外ではなく、何人もの死を目撃し、何人もの無念を託された。
「無念」が彼に遺される度に、重なるようにもう一度託される「無念」があった。
それは「下らない事」で命を落とし、大きな「夢」を見ていた少女の「無念」だ。
あの日に受け止めた物が再び遺され、一だったそれは積み重なり、やがて「過去」へと姿を変えて彼の足を止めていた。

それを理解しているのか、いないのか。
男はゆっくりと息を吸い込み、少しずつ吐き出していく。
そして目を大きく見開き、一本の刀を横に薙ぐ。
風切りの音だけが、無音の空間に響きわたる。
だが、男はその一薙ぎで確かに"斬って"いた。
男の体に重くのし掛かっていた「無念」を。
「悪いな」
瞳に、迷いはない。
「てめェらにゃ、構っちゃいられねえんだ」
世界一の剣豪になるという、彼の誓い。
他人に引きずられることもなく、何よりも真っ先にかなえなければいけない夢。
そして、何よりも真っ先に晴らすべき無念。
他者の死をきっかけに振り返った過去を通じ、思い出した映像と共に改めて体に刻んでいく。
「俺は先に進む、お前等を置いて行く」
忘れられないことがある。
忘れてはいけないことがある。
忘れられるはずもないものがある。
他の何かを背負う前に、背負えるだけの器を作らなくてはいけない。
そしてそれには、成し遂げねばならないことがある。
「"無念"で終わらしちゃいけねェモンが、あるからな」
あの日の、そして今この瞬間の誓いを胸に、彼は前を向く。
「まあ、見てろよ」
にいぃ、と自信に満ちた笑顔と共に、腕に巻き付けていた黒いバンダナを解く。
それをいつもより少しきつめに頭に巻き付け、軽く頬を叩いて決意の証を作る。
続けて両手と口に刀を構え、彼の象徴である"三刀流"を作る。
だが一つだけ、いつもとは違う事がある。
それは四本目の刀、心の中にある固い"決意"という刀が。
魔神の如く古城の入り口に立ちはだかる彼を、突き刺すように支えていた。
0396貴方を瞼が憶えている ◆pSc/w7EBTk 垢版2012/12/21(金) 18:41:05.03ID:SqjdEM8k
.
来るべき決戦の準備を整え、彼は宣言する。

「零でも何でもブッた斬って、生き残ってやるぜ」

"不敗"を。



止まらない、止まれない、くたばる暇すらない。

もう一度「喪失」のブレーキをへし折り、彼は前へ行く。

進んで進んで進むだけ。

邪魔な物は斬ればいい。

だから殺しに乗る奴も斬る。

この「くだらない事」を考えた奴も斬る。

そして、前に進む。

必ず、手にするために。



男、ロロノア・ゾロが目指すはただ一つ。



【A-2・古城跡入り口/1日目 真夜中】
【ロロノア・ゾロ@ワンピース】
[状態]疲労(中)、全身にダメージ(中)(止血、消毒、包帯済み)、左腿に銃創(治療済み)、右肩に掠り傷、腹部に裂傷、全て回復中
[装備]八千代の刀@WORKING!!、秋水@ワンピース、雪走@ワンピース、治療符@終わりのクロニクル
[道具]支給品一式×2(食料7/12、水7/12消費)、麦わら海賊団の手配書リスト@ワンピース、迷宮探索ボール@ドラえもん、
    不明支給品(1〜3)、一方通行の首輪(血がこびりついている) 、ARMSのコア(ジャバウォック)@ARMS
[思考・状況]
 1:"敗"けない
 2:"背負う"為、"前"へ進む
 3:ルフィ(死体でも)、チョッパーを探す
 4:首輪の秘密が気になる。
 ※参戦時期は少なくともエニエスロビー編終了(45巻)以降、スリラーバーグ編(46巻)より前です。
 ※雪走が健在であったことに疑問を抱いています。
 ※八千代の刀@WORKING!!は僅かにですが歪んでいます。



短いですが投下終了です。
修正として>>395の冒頭に空白の行を三行追加とさせてください。
何かありましたらどうぞ。
0397創る名無しに見る名無し垢版2012/12/22(土) 02:33:36.86ID:drlh+R0c
投下乙です!
ゾロは自分の過去と出会ったのか、こいつも色々喪ってるからなあ…
それでも無念を斬って前に進む姿は男前
喪失のブレーキをへし折って不敗を誓う剣豪は、果たして魔王に不敗を貫けるのだろうか
0398創る名無しに見る名無し垢版2012/12/22(土) 08:20:50.67ID:94IsbJRi
投下乙です!

やだ…ゾロかっこいい…!(キュン
冗談っぽくいってみたが、冗談抜きに格好いい
正直迷子ばかりのキャラだと思っててすまん!とんでもなく男前だ!

捜索対象のチョッパーも無念の死を遂げてしまったが、
その無念も受け取って進めたらいいな
0404創る名無しに見る名無し垢版2012/12/27(木) 01:32:02.51ID:XG2td/DP
支援絵乙ー!
気づいたらロワ復活しててびっくり。
俺もそのうちなんか投下できれば……
0411創る名無しに見る名無し垢版2012/12/30(日) 23:28:52.70ID:S0vEpizK
ナインと真紅死亡話好きだなー。
あの話も3回放送〜4回放送の間だと思うと確かに凄い動いたな。
0412創る名無しに見る名無し垢版2012/12/30(日) 23:48:26.77ID:E6Ui9jUa
真紅とブレンさんのよかったなぁ
二人らしく誇り高くて、それがラッドの目を覚まさせ、美琴に受け継がれていくのが凄くしみた
その続きである裏表トリーズナーズも好きだ

キャラの背負うものが重くなって
全体的にしんみりと切なく深い話が多かった感じがする
死亡話も切ないんだよな
0413創る名無しに見る名無し垢版2012/12/31(月) 00:04:43.45ID:66+p5VpU
レナとチョッパー、梨花ちゃまとニコ兄の初期からコンビが連続で落ちたのも印象深かった
「友達ふたり、できてんで」とかもう、もうね…

新しく生まれたのが天使コンビというのが面白いw
そしてロワでもやらかしてくれたな夫妻は!
直前までまじめな話なのにいつのまにかエロくなっていた、何を言っているのか(ryな気分だったぜ
0415創る名無しに見る名無し垢版2012/12/31(月) 00:41:09.12ID:haZRbzVN
あれで原作再現だから相変わらず終わクロはなんとまぁww
○同盟連続落ちは厳しいものがあったけど、残ったライダーとグラハムに期待だ。
でも、ビリビリって組んだ相手がよく死ぬよね……w
0418 ◆hqLsjDR84w 垢版2013/01/02(水) 03:02:59.74ID:IFiB39p3
予約スレに書きましたが、一度予約を破棄しました。
待ってくれていた人もいたのに、申し訳ないです。
0421 ◆hqLsjDR84w 垢版2013/01/04(金) 17:29:55.68ID:qGeYnOkp
書き終わったので、用を済ませてざっと読み返して今夜中に投下します。
0425第四回放送 ◆hqLsjDR84w 垢版2013/01/04(金) 21:15:35.13ID:qGeYnOkp
 ◇ ◇ ◇





【0】


「『存在』を規定するのはなんだと思う? 『環境』? 『資質』?」





 ◇ ◇ ◇
0431第四回放送 ◆hqLsjDR84w 垢版2013/01/04(金) 21:17:02.28ID:qGeYnOkp
 
 
 
【1】


 モニターのスイッチを乱暴に消して、ギラーミンは葉巻に火を点ける。
 ニコチンとタールが肺に染み込む感覚を堪能してから、天を仰いで息を吐く。
 白い煙は室内を僅かに漂っただけで、すぐに天井に吸い込まれていった。
 煙草よりも強い葉巻独特の甘い匂いさえ、根こそぎに飲み込まれてしまう。
 とうの昔に勘付いていた事実が、いまのギラーミンには腹立たしい。
 彼がいる部屋は、窮屈で、無機質で、必要最低限の物品以外は存在しない。
 嗜好品のなかで唯一葉巻だけは許されているが、このように空気清浄機能はやけに優れている。
 また部屋を出ることも許されず、この扱いは奴隷や囚人のそれと大差ない。
 かつては宇宙一の殺し屋とまで称されたというのに、現状はこのザマである。

 なにも――脱獄前と変わらない。

 当然、この仕事が終われば、莫大なマージンが入ってくる。
 そういう契約は交わされているし、『上のヤツら』にしてみればその程度大した痛手でもないだろう。
 契約をいちいち守ってくれる理由もないが、同時に約束を反故にしてくる理由もない。
 そういう輩のほうが支払いがいいことくらい、これまで培ってきた経験でギラーミンは承知している。
 ゆえに、仕事を請けた。
 もとより、職を失った身であったのだ。
 自由を得られるのであれば、飛びつかぬ理由がない。

(『誰でもよかった』……ねえ)

 かつて告げられた言葉が、ギラーミンの脳裏を掠める。
 自分を選んだ理由を尋ねた際、『上のヤツら』はそう言ってのけたのだ。
 辺境宇宙の連中でもなければ、名前を聞いただけで震え上がる――宇宙一の殺し屋に向かって、だ。
 あえて反発を買おうとしてきたような、挑発じみた言い方ではない。
 単に当たり前のことを当たり前に告げるだけの、そんな口ぶりであった。

「けッ」

 不快感を露に吐き捨てて、被っていたテンガロンハットを深く押さえつける。
 全身を包むボディスーツやマントと同色の黒い帽子で、強引に視界を覆ってしまう。
 『上のヤツら』がギラーミンをどう見ているのかなど、とうに分かっていたはずだ。
 それを理解した上で、失ってしまった自由を得るために仕事を請けたのではないか。
 むしろ、膨大な選択肢のなかから自分に白羽の矢が立ったのは、運がよかったと言えよう。
 にもかかわらず、どうしていまになって苛立っているのか。

 ――考えるまでもなかった。

 このこじんまりとした部屋には、殺し合いの会場を映し出すモニターが設置されている。
 六時間ごとの放送時刻をただ待つだけというのも味気ないため、ギラーミンは時折そのモニターを眺めて時間を潰していた。
 さしておもしろいものでもなかったものの、この場には酒も女もないのだから仕方がない。
 当初は野比のび太とドラえもんの二人を追っていたが、どちらも早々に脱落してしまった。
 他に気になる参加者もいないため、適当にザッピングして大きな動きのある映像を眺めるのが恒例となっている。

 先ほどもそうしていたところ、一人の少女が脱落した。
 ギラーミンは彼女の名前を覚えていなかったが、数時間後に読み上げることになるのだろう。
 ともあれ、その少女がギラーミンの癇に障った。
 彼女は死んだ。殺された。
 この場での脱落とは、すなわちそういうことだ。
 別段、驚くことではない。

 が――その態度が問題である。
0434第四回放送 ◆hqLsjDR84w 垢版2013/01/04(金) 21:18:03.43ID:qGeYnOkp
 
 彼女は満足して死んでいった。
 自ら率先して、他人に自分を殺させた。
 体内に魔獣が棲んでいるからといって、他人に引き金を引かせたのだ。

「気に喰わねえ」

 帽子で表情を隠したまま、ギラーミンは歯を軋ませる。
 死に行くなか、少女は安堵の笑みを浮かべていた。
 これでいいと確信しているかのように、微笑んでいたのだ。
 なにより、それが気に入らない。

 死ぬというのに。

 自由を失うというのに。

 どうして、満足しているというのか。

 人間は死ねば、もう終わりだ。
 この仕事を請けて以来、様々な世界について知ることになった。
 それでも、本当にありとあらゆる世界を見てきたというのに、死ねばどうにもならないという点だけは変わらない。
 あらゆる世界における常識を知らぬワケではないだろうに、彼女は死に際に笑ったのだ。

「気に喰わねえ」

 再度、吐き捨てる。
 いや、違う。
 再度ではない。
 再度どころではない。
 もう何度目かになるか分からないほど、毒づいてばかりだ。
 はたして、なにがこんなに気に喰わないというのか。

 ゆっくりと思い返していこうとした――そのときだった。

 微かな物音もなく。
 一切の兆候もなく。

 なにか――形容し難い気配が現れた。

 それも、すぐ近くに。
 この狭い部屋のなかに。
 手を伸ばせば届く範囲に。
0439第四回放送 ◆hqLsjDR84w 垢版2013/01/04(金) 21:19:31.24ID:qGeYnOkp
 
「……ッ」

 反射的に、ギラーミンは腰かけていた椅子から跳び上がる。
 凄まじい速度で、視界を遮っていたテンガロンハットをかぶり直す。

 明らかになった視界の先には、一人の男が悠然と立っていた。
 身に纏っているのは、高級そうな黒いスーツ。
 金色の髪はきめ細かく、背中の半ば辺りまで伸ばされている。
 初対面の男だったが、ギラーミンはその目に見覚えがあった。
 猛禽類を連想させる鋭い目付きは、これまで放送の原稿を手渡してきた三人の男女と同じものだ。
 その三人からも奇妙な雰囲気を感じたが、眼前の男は別格だった。
 彼らは得体のしれないものを隠しているような気配を放っていたが、この男だけは違う。
 すべてを呑み込んでしまいそうな――そんな、得体の知れなさを上回る底知れなさがある。

「いったいなにが気に喰わないんだい、ギラーミン」

 ギラーミンの動揺を見透かしたような笑みを浮かべて、男が尋ねてくる。
 それに対して、ギラーミンは平時と変わらぬ口調を作る。

「…………まだ次の仕事には早いはずだ、四人目さんよ」

 すると、男は大げさに肩を竦めた。
 そんな演技じみた動作ののちに、ゆっくりともったいぶって口を開く。

「この部屋に来たのは四番目だが、私は『四人目』などではない」

 ギラーミンが眉をひそめると、男は聞いてもいないのに説明を始めた。

「母(アリス)の葛藤を移し、それぞれに異なる解答を導き出すように生まれた『キースシリーズ』。
 私は、その長兄たるキース・ブラックの『模造品』だ。決して『四人目』ではないし、また断じて『一人目』でもない」

 真の一人目は、殻のなかに潜んでいた父に呑み込まれた。
 ブラックは自嘲気味な笑みを浮かべながら続けたが、ギラーミンにはその意味を察することはできなかった。



 ◇ ◇ ◇
0443第四回放送 ◆hqLsjDR84w 垢版2013/01/04(金) 21:20:47.16ID:qGeYnOkp
 
 
 
【3】


 ――――ギラーミンが指をほんの少し動かしただけで、銃口を向けられていた扉は消し飛んだ。

 彼の手元で白煙を吐く拳銃の名は、ジャンボガンと言う。
 その名に恥じぬ威力でありながら、反動は驚くほど少ない。
 『上のヤツら』が用意した得物であり、野比のび太が手にしたこともあるらしい。

「大層なもん用意してくれたもんだ」

 満足げに呟いて放送室を一歩出ると、そこには闇が広がっていた。
 闇のなかにいくつか気配があるが、そのいずれもギラーミンの求める相手ではない。
 ゆえに気配のほうに向き直ることもせずに、目指すべき扉へと歩み寄っていく。

「ギラーミン……!? 貴様、いったいどういうつもりだ!?」

 声をかけられたので仕方なく振り返ると、三人の男女がいた。
 これまで三度の放送の度に、原稿を用意してきた連中だ。

「どういうつもりもなにもねェ」

 彼らも、所詮は『上のヤツら』の指示に従っているだけだ。
 そんな操り人形に用はないので、ギラーミンは短く答えることにした。


「テメェらと違って、俺は俺だ。
 俺本人であって、他の何者でもねえ」


 返事を待たず、闇のなかにある一つの扉に駆け寄っていく。
 緊急時用に備え付けられた『上のヤツら』の元に通じる扉だ。
 扉を開けると、眩い光が漏れ出してくる。
 あまりの光度に内部の様子は窺えないが、ギラーミンは躊躇せずに一歩踏み込んだ。
0444第四回放送 ◆hqLsjDR84w 垢版2013/01/04(金) 21:21:49.88ID:qGeYnOkp
 
 
 ――――瞬時に、視界が切り替わる。


 次の瞬間には、ギラーミンはこれまでいたのとは違う場所に立っていた。
 殺し合いの説明を行った大広間でも、窮屈な放送室でも、闇だけが広がる空間でもない。
 完全に異なっている、また別の場所。
 遠く離れた地点なのか、あるいはすぐ近くなのか、そもそも同一世界であるのか否か――
 推測することさえまったく不可能であるが、ともかくギラーミンが求める相手はそこにいる。

 あるいは――在る。
 もしくは――有る。

 なんにせよ、たしかにそこに存在していた。

「よォ……遅れたな」

 そう、遅れた。
 あまりにも、遅れてしまった。
 殺し合いが始まってから二十時間ほど経過しているが、そんな程度ではない。
 二十時間前よりずっと早く、こうして相対するべきだったのだ。
 なぜなら、ギラーミンは決闘者であるのだから。
 すでに大局が決まっていてなお、一対一の決闘を申し込むような男であるのだから。
 なまじ決闘後も生き延びてしまったために、刑務所などに収容されてしまったために、うっかり忘れてしまっていた。

 欲しているのは自由などではない。
 仕事を成し遂げるという成果でもない。

 ただ、納得をしたいのだ。

 戦争屋は生き抜くためにあらゆる手段を使うが、決闘者は――納得がいく結末を得るために手段を絞る。

 なぜ、満足した笑みが気に入らなかったのか。
 そんなものは、一度気付いてしまえば明白だった。
 自分がどういう人間であったのか思い返せば、すぐに分かった。
 なによりそれを求めていたはずの自分が、それを放棄していたからに他ならない。
 ギラーミンがギラーミンであるのなら、他ならぬギラーミン自身を許してはならなかったのだ。

(…………感謝してやるぜ)

 自分自身を思い出すきっかけを与えてくれた男に、ギラーミンは胸中で頭を下げる。
 そうしてから、テンガロンハットを高く掲げた。

「こいつが合図だ」

 言って、テンガロンハットを上空へと放り投げる。
 戦争屋なら問答無用で銃を抜くだろうが、ギラーミンはそれをしない。
 舞い上がった帽子が地面に触れるのを待ちながら、口角を吊り上げる。
 少し前まで苛立たしかった笑みとて、現在のギラーミンには浮かべることができるのだった。



 ◇ ◇ ◇
0446第四回放送 ◆hqLsjDR84w 垢版2013/01/04(金) 21:22:22.05ID:qGeYnOkp
 
 
 
【4】



 闇の広がる部屋に残された三人は、ギラーミンが入っていった扉を見据えている。
 扉の向こうからは銃声はおろか、物音一つ聞こえてこない。
 すでにギラーミンが入ってだいぶ経っているが、はたしてどうなったのであろうか。
 誰一人として口を開こうとせず、闇のなかには静寂が広がっていく。

「――ふふ。この場合、放送はどうなるのだろうな?」

 静寂を破ったのは三人の誰でもなく、放送室から戻ってきたブラックだ。
 三人は目を見開いたのち、合点がいったような表情となる。

「ブラック兄さん、貴方がギラーミンをけしかけたの?」

 問いかけたのはバイオレットだったが、その疑問は三人共通のものであるらしい。
 シルバーとグリーンは驚いた素振りも見せずに、ブラックに鋭い視線を飛ばしている。

「けしかけた? バイオレット、君がなにを言っているのか分からないな」
「その演技に付き合うのにも飽きた」
「辛辣だな、シルバー。
 飽きるほど長い付き合いじゃないだろう。私たちが作られてから、三日と経っていないのだから」

 やれやれと口に出して、ブラックは長い金髪を掻き揚げる。

「私が他人をけしかけたりなどしないことは、『アレックス』の記憶を持つお前がよく知っていることだろう?」

 シルバーの視線が、よりいっそう鋭くなる。
 キースシリーズ随一の威圧感が膨れ上がるが、ブラックは意に介さずに続ける。
0447第四回放送 ◆hqLsjDR84w 垢版2013/01/04(金) 21:22:53.20ID:qGeYnOkp
 
「私は、父とは違う。
 他者の意思に干渉などしない。あくまで、少し言葉を交わしただけだ。
 ギラーミンの造反は彼が勝手にやったことであり、私のあずかり知るところではない。
 ただ、私たちの知るギラーミンという人間らしい行動ではあったが、それはやはり彼自身の『意思』ゆえのものだろう」

 再び、静寂が闇のなかに広がる。
 たっぷり一分ほど待って誰も切り出さないのを確認してから、ブラックは胸ポケットに手を伸ばす。
 取り出されたのは、掌に乗るサイズの小さな砂時計だった。

「命というものは、このように止まることなく落ち続けている。
 我々ARMS適正者とて、いずれすべての砂が落ち切って息絶えてしまう。
 死は避けられないにもかかわらず、こうしてガラスに閉じ込められている。
 自分ではない何者かによって作られた、目に見えないガラスにだ。
 あの男は自らの手で、ガラスを砕きに行った。その結果すべての砂が落ちると承知の上で――な」

 言い終えても、返事はない。
 繰り返したりはせず、ブラックは砂時計を胸ポケットにしまう。

「ではな、放送まで休む予定だったのを忘れていたよ」

 三人に背を向けて数歩踏み出したところで、いきなり呼び止められる。
 キースシリーズの末弟、グリーンだ。

「待って、兄さんッ! もしかして、兄さんは――みんなに『希望を探せ』と言うの!?」

 予期せぬ内容に、ブラックは言葉を失ってしまう。
 しばしの時間をかけて意味を理解すると、思わず笑いがこみ上げてくる。
 どうやら、弟妹たちは随分と壮大な勘違いをしていたらしい。

「なにを言い出すかと思えば、『希望』とは……下らないな」

 どうにか笑みを抑えて、嘘偽りない真実を告げてやる。


「そんなものを探せなど、私は一度として思ったことはないよ」


 断言して、ブラックは闇のなかに消えていく。
 弟妹たちの声が背中へと浴びせられたが、もう止まってやるつもりはなかった。
0452第四回放送 ◆hqLsjDR84w 垢版2013/01/04(金) 21:23:58.45ID:qGeYnOkp
 
 
 
 ◇ ◇ ◇





【5】


 ――――放送の原稿は、時間通りに出現した。





 ◇ ◇ ◇
 
 
 
0455第四回放送 ◆hqLsjDR84w 垢版2013/01/04(金) 21:24:30.88ID:qGeYnOkp
 
 
 
【6】


 殺し合い開始から、ついに丸一日が経過した。
 幸運な、あるいは不運な生存者の諸君、放送の時間だ。
 これまで通りに、禁止エリアと死者を告げていく……が、その前に報告しておくことがある。

 すでに気付いているだろうが、放送の担当者が変わった。
 私の名は、キース・ブラックという。
 単なる進行役でしかないので、別に覚えてもらわずとも結構だ。
 私の名前よりも気になることが、君たちにはあることだろうしな。
 余計な疑問を抱いたせいで殺し合いに支障が出るのも好ましくないので、君たちの抱いている疑問を解消するとしよう。

 ギラーミンは――殺された。

 この殺し合いを企てた首謀者の手によって、な。
 君たちが目の敵にしていたギラーミンは、所詮は表向きの進行役に過ぎなかったというワケだ。
 この私のような替えが、いくらでも利く――ね。

 少し頭の回るものならば、すぐに違和感を抱いたことだろう。
 殺し屋稼業を営めなくなったからといって、このように大それた汚名返上の場など設けるものか。
 だいたい、諸君らほどの手練れを気付かれずに一気にさらえるのならば、殺し屋でなくとも十分に裏稼業で儲けられる。
 殺し合いの首謀者を殺せば願いが叶うというのも、なかなかおかしな話だ。
 裏に願いを叶えてくれる存在がいなければ、そんなものは到底不可能だろう。死人がどうして願いを叶えられる?
 にもかかわらず、ギラーミンが首謀者と疑わぬものが少なからずいたのには、多少驚いてしまった。
 随分と素直で、見ていて微笑ましくなるほどだった。
 諸君らは、もっと他人を疑うことを覚えたほうがいい。
 せっかくここまで生き延びたのだから、下らぬ勘違いで命を落としたくはないだろう?

 …………話題が逸れてしまったな。
 いい加減に、本題に入るとしよう。
 まずは禁止エリアから発表していこう。
 決して復唱しないので、考え込むのはあとにしたほうがよいだろう。
0456第四回放送 ◆hqLsjDR84w 垢版2013/01/04(金) 21:25:10.26ID:qGeYnOkp
 
 
 01:00よりH−6。


 03:00よりC−3。


 05:00よりC−5。


 以上、三エリアだ。
 では、死者の発表に移るとしよう。


 アルルゥ

 伊波まひる

 真紅

 トニートニー・チョッパー

 ニコラス・D・ウルフウッド

 古手梨花

 ブレンヒルト・シルト

 ラッド・ルッソ

 竜宮レナ

 ロベルタ


 メモを取るなどして死者の名を数えているものならば分かるだろうが、残る参加者は十四名となった。
 つまり未だ生存している諸君らは、他の十三名より長生きすればいいということだ。
 盤上に最後に唯一残るコマになるべく、これまで通りに精を出してくれたまえ。



【第四回放送 終了】
【残り参加者 14名】
0460第四回放送 ◆hqLsjDR84w 垢版2013/01/04(金) 21:25:59.05ID:qGeYnOkp
 
 
 
 ◇ ◇ ◇



【2】


「テメェが何人目かなんざ知ったこっちゃねえ。
 ただよォ、『模造品』ってのはいったいどういうことだ」

「喩えでもなんでもない。そのままの意味さ。
 私は、キース・ブラックの肉体と記憶を持つだけのクローンだ。
 君の言う『上のヤツら』に作られた――ね。
 最初に訪れたシルバーも、次のグリーンも、先ほどのバイオレットも同様さ。
 ゆえに我々はとある世界にいる四人のキースシリーズの模造品であって、断じてキースシリーズのオリジナルではない」

「…………」

「ああ、安心していい。
 君はオリジナルだ。殺し合いに呼び集められた不幸な参加者たちもね。
 あくまで、君の言う『上のヤツら』がこの私に真実を話していたとしたら――だがね」

「……たりめェだ」

「当たり前? ふふ、当たり前か。そう思うのか、君は」

「なにが言いてェ」

「いや、大したことじゃないさ。
 ただ、本当に『当たり前』なのかと思ってね」

「なにがおかしいッ!?」

「おかしくはない。ただ、あまりに不自然なだけでね。
 私の言わんとしていることが、本当に分からないのか?
 それは気付かない素振りであって、本当は訊くまでもないのだろう?
 殺し屋として成り上がった聡明な君ならば、とうに勘付いているはずだろう?
 演技などしたところで無意味だ。一度浮かんだものを完全に忘れ去ることなど不可能だ。
 現に、『本人と変わらぬ肉体』と『本人と変わらぬ記憶』を持つクローンが眼前にいるというのに――
 どうして、君は違うと言える? 言い切ることができる? ましてや、なぜそれが『当たり前』になる?」

「……テメェらと違って、本人だという自覚が――」

「自覚、か。
 そんなものは私だってあったさ。クローンであると告げられ、証拠を目の当たりにするまでは。
 君はどうだ? 自らが肉体と記憶を受け継いだクローンである可能性を前にして、それでも本人であると断言できるか?
 君がクローンであるという証拠はないが、しかし本人であるという証拠もまたないはずだ。
 それでも『当たり前』だと言うならば、その発言に至った確たる証拠があったのだろう?」

「それは――」

「それは……なんだい? 続きは出ないだろう? 口籠るしかないだろう?
 いや、構わない。何一つ間違っていない。それで正しい。
 誰一人として、自分が自分であるという証明などできない。
 証明に至る裏付けが足りないし――そんなものは存在しない」
0462第四回放送 ◆hqLsjDR84w 垢版2013/01/04(金) 21:27:16.14ID:qGeYnOkp
「…………」

「さて……そうして考えてみると、どうなのだろうな。
 はたして、君は、本当に、ギラーミンという人間なのか?」

「…………」

「宇宙一の殺し屋として名を轟かせ、野比のび太との決闘に敗北し、宇宙警察に逮捕され、どうにか脱獄を成功させるも殺し屋を続けることは難しくなった――あの、ギラーミンなのか?
 宇宙一の殺し屋として名を轟かせ、野比のび太との決闘に敗北し、宇宙警察に逮捕され、どうにか脱獄を成功させるも殺し屋を続けることは難しくなった――そんな記憶を持つだけの模造品ではないのか?」

「俺は――」

「俺は? 何者なんだい? 君は、いったい何者なんだ? 答えられるのならば、是非とも答えてみてくれないか?」

「…………」

「沈黙か。
 正しい解答だ。本人にせよ、別人にせよ、断定できる人間はいない」

「…………」

「ふむ。考え込むか。
 構わない。放送までは時間があるからな。せいぜい考えてくれればいい」

「…………テメェ、なにがしたい」

「なにが、とは?」
0463第四回放送 ◆hqLsjDR84w 垢版2013/01/04(金) 21:27:47.24ID:qGeYnOkp
 
「そんな情報漏らして、なにを企んでやがる。
 俺が混乱することなんざ、『上のヤツら』は望んでねェだろ。
 少し考えりゃ分かる。今回の件は間違いなく、テメェの独断だろう」

「さすがに察しがいい。
 君が乗り込んで解決しなかった揉め事が、唯一の例外を除いて存在しないだけはある」

「はぐらかすんじゃねえ。答えろ」

「その質問には、我が妹と同じ言葉で返答するとしよう」

「テメェ――!」

「『答える必要はない』」

「…………ッ」

「用は済んだ。
 数時間後に、また訪れるだろう」

「…………待ちな」

「なに?」

「乗ってやるよ、テメェの口車に。
 だが、勘違いするなよ。テメェのためじゃねェ」

 慣れ切った動作で、ギラーミンは腰のホルスターに手を伸ばす。
 銃口を扉に向けると、ずっしりとした重みが腕に伝わってくる。
 随分と久しぶりに銃を握った――そんな気がした。

「他ならぬ俺に、俺が俺だと証明するためだ」



【ギラーミン 存在確認】
【ギラーミン 死亡確認】
0466 ◆hqLsjDR84w 垢版2013/01/04(金) 21:28:42.93ID:qGeYnOkp
投下完了です。
誤字、脱字、その他ありましたら、指摘してください。
支援ありがとうございました。


ちなみに、これまで『私』だったギラーミンの一人称がいきなり『俺』になっているのは原作通りです。
0469創る名無しに見る名無し垢版2013/01/04(金) 23:40:19.95ID:Zku2KavT
投下乙です!

ギラーミンが死んだ!?
ギラーマンだのギラーなんとかとか色々言われてきたがここで退場とは
漫画版のような格好いいギラーミンでした

キースシリーズのみならずギラーミンまで偽物の可能性ありとは、
これは会場全員クローンも可能性ありか

しかしキースブラックが参加者の心も主催陣の心もかき回すなぁ
これは放送後一波乱の予感
0470創る名無しに見る名無し垢版2013/01/05(土) 00:05:14.59ID:z5Qw9vn+
投下乙です!

【ギラーミン 存在確認】が格好いい
最期に決闘者としての意地を貫く、いい最期だった

前回に引き続き存在感が半端ないブラック、真意はどこにあるのやら…

放送で読み上げられる名前を見ていると、
一つ一つドラマがあったのを思い出してホロリとくるな
さて放送開け、参加者は覚悟完了しているのが多い中、揺れ動く主催陣、どちらも一体どう動くのか
0471創る名無しに見る名無し垢版2013/01/05(土) 01:17:53.58ID:qEj3UcLb
投下乙!
あれ、ギラーミンってこんなにかっこよかったっけ……?
まさか放送役が変わるとは思わなかったからびっくり。
ノリノリでギラーミンを煽っていくブラックが素敵でした。
それにしても『上のヤツら』とは一体どういう集団なのだろうか
0473創る名無しに見る名無し垢版2013/01/06(日) 14:09:39.15ID:5Jsdkw9k
放送投下乙です!
最後に自分らしく散っていったギラーミンに敬礼!

おっと、そういえば予約解禁はいつからだろうか……
0474創る名無しに見る名無し垢版2013/01/06(日) 19:08:49.08ID:3PvD0IYu
放送乙です!
ようやく主催関連が進んで来た感じがしますね!

予約解禁日は遅らせるデメリットはあまりなさそうな気がする。
7日の0:00からか8日の0:00からは?
0479創る名無しに見る名無し垢版2013/01/09(水) 22:24:34.41ID:qNdT/Usw
おそらく需要はないが支給品移動をまとめてみた

表記
数字:話数
(→○○) : 次の話でその人物に移動
(○○より) : その話でその人物から取得
* : 初登場
≪○○≫: 破壊or消滅
<○○> : 不明or放置
死亡後の(→○○) : 支給品が一括で移動
0480創る名無しに見る名無し垢版2013/01/09(水) 22:28:29.61ID:qNdT/Usw
6/6【うたわれるもの】
○ハクオロ
026【所持品】:基本支給品一式、不明支給品1〜3個(未確認)
042【装備】:(ミュウツーから)*ガイルの剣(血塗れ)@ポケットモンスターSPECIAL *スモーカー大佐の十手@ONE PIECE
【所持品】:基本支給品一式、不明支給品0〜2個(確認済み)
061【装備】:ガイルの剣@ポケットモンスターSPECIAL スモーカー大佐の十手@ONE PIECE
【所持品】:(トウカから)大型レンチ@BACCANO!、(トウカから)ミュウツー細胞の注射器@ポケットモンスターSPECIAL、
基本支給品一式、不明支給品0〜2個(確認済み)
070【装備】:ガイルの剣@ポケットモンスターSPECIAL スモーカー大佐の十手@ONE PIECE
【所持品】:大型レンチ@BACCANO!、ミュウツー細胞の注射器@ポケットモンスターSPECIAL、基本支給品一式、
*クチバの伝説の進化の石(炎、雷、氷)@ポケットモンスターSPECIAL
091【装備】:ガイルの剣@ポケットモンスターSPECIAL スモーカー大佐の十手@ONE PIECE(→クロコダイル)
【所持品】:大型レンチ@BACCANO!、ミュウツー細胞の注射器@ポケットモンスターSPECIAL、基本支給品一式、
クチバの伝説の進化の石(炎、雷、氷)@ポケットモンスターSPECIAL
0104【所持品】:大型レンチ@BACCANO!、ミュウツー細胞の注射器@ポケットモンスターSPECIAL、基本支給品一式、クチバの伝説の進化の石(炎、雷、氷)@ポケットモンスターSPECIAL
≪ガイルの剣は橋の上に落ちています →橋崩落≫
0123【所持品】:大型レンチ@BACCANO!、ミュウツー細胞の注射器@ポケットモンスターSPECIAL、 基本支給品一式×2<ハクオロ、魅音>、
クチバの伝説の進化の石(炎、雷、氷)@ポケットモンスターSPECIAL、 (魅音より)空気ピストル@ドラえもん (魅音より)メリルのハイスタンダード・デリンジャー(2/2)@トライガン・マキシマム 、
(魅音より)排撃貝@ONE PIECE、 (魅音より)デリンジャーの残弾20
0136【所持品】:基本支給品一式×4、 (切嗣より)コンテンダー・カスタム@Fate/Zero 、(切嗣より)防災用ヘルメット、
(切嗣より)コンテンダーの弾薬箱(スプリングフィールド弾27/30) 、(切嗣より)ロープ×2、(切嗣より)消火器、(切嗣より)防火服、 (切嗣より)カッターナイフ、
(切嗣より)黒色火薬入りの袋、大型レンチ@BACCANO!、ミュウツー細胞の注射器@ポケットモンスターSPECIAL、(→B-4河原(北岸)→美琴より)双眼鏡、
(→B-4河原(北岸)→美琴より)医薬品多数、(→B-4河原(北岸)→美琴より)ライター、 (→B-4河原(北岸)→美琴より)起源弾@Fate/Zero(残り28発)、
クチバの伝説の進化の石(炎、雷、氷)@ポケットモンスターSPECIAL、
空気ピストル@ドラえもん メリルのハイスタンダード・デリンジャー(2/2)@トライガン・マキシマム 、排撃貝@ONE PIECE、 デリンジャーの残弾20、
(→B-4河原(北岸)→美琴より)鉄パイプ爆弾×4、(→B-4河原(北岸)→美琴より)*治癒符5枚@終わりのクロニクル
0148【所持品】:基本支給品一式×4、 コンテンダー・カスタム@Fate/Zero 、防災用ヘルメット、コンテンダーの弾薬箱(スプリングフィールド弾27/30) 、
ロープ×2、消火器、防火服、 カッターナイフ、黒色火薬入りの袋、大型レンチ@BACCANO!、ミュウツー細胞の注射器@ポケットモンスターSPECIAL、
双眼鏡、医薬品多数、ライター、 起源弾@Fate/Zero(残り28発)、クチバの伝説の進化の石(炎、雷、氷)@ポケットモンスターSPECIAL、 空気ピストル@ドラえもん
メリルのハイスタンダード・デリンジャー(2/2)@トライガン・マキシマム 、排撃貝@ONE PIECE、 デリンジャーの残弾20 鉄パイプ爆弾×4、治癒符5枚@終わりのクロニクル
0160【所持品】:基本支給品一式×4、 コンテンダー・カスタム@Fate/Zero 、防災用ヘルメット、コンテンダーの弾薬箱(スプリングフィールド弾27/30) 、ロープ×2、消火器、防火服、
カッターナイフ、黒色火薬入りの袋、大型レンチ@BACCANO!、ミュウツー細胞の注射器@ポケットモンスターSPECIAL、双眼鏡、医薬品多数、ライター、 起源弾@Fate/Zero(残り28発)、
クチバの伝説の進化の石(炎、雷、水)@ポケットモンスターSPECIAL、 空気ピストル@ドラえもん メリルのハイスタンダード・デリンジャー(2/2)@トライガン・マキシマム 、
排撃貝@ONE PIECE、 デリンジャーの残弾20 鉄パイプ爆弾×4、治癒符5枚@終わりのクロニクル
0173死亡
(→佐山)
<大型レンチ@BACCANO! A-2古城跡・庭園に放置>
0481創る名無しに見る名無し垢版2013/01/09(水) 22:29:35.88ID:qNdT/Usw
○エルルゥ
033[装備]:*悟史の金属バッド@ひぐらしのなく頃に [道具]:基本支給品一式・首輪探知機(→バラライカ)、
*アミウダケ@ワンピース *サカキのスピアー@ポケットモンスターSPECIAL、*庭師の如雨露@ローゼンメイデン
057死亡
(→E−2→クリストファー、沙都子)

○アルルゥ
015[装備]:*おはぎ@ひぐらしのなく頃に [道具]:支給品一式、不明支給品(1〜3)
036[装備]:おはぎ@ひぐらしのなく頃に [道具]:支給品一式、(一つ使用)*ニースの小型爆弾×4@BACCANO!、
不明支給品(0〜2)
065[装備]おはぎ@ひぐらしのなく頃に [道具]支給品一式、ニースの小型爆弾×4@BACCANO!、不明支給品(0〜2)
078[装備]なし [道具]支給品一式、ニースの小型爆弾×4@BACCANO!、不明支給品(0?2)
おはぎ@ひぐらしのなく頃に 完食
0118[道具]支給品一式×2<アルルゥ、仗助>、ニースの小型爆弾×4@BACCANO!、 不明支給品(0〜2) <アルルゥ>(→クリストファー)、
(仗助から)不明支給品(0〜1)<仗助>
0130[道具]支給品一式×2<アルルゥ、仗助>、ニースの小型爆弾×4@BACCANO!、不明支給品(0〜1) <アルルゥ>、不明支給品(0〜1)<仗助>
0135[装備]なし [道具]支給品一式×2<アルルゥ、仗助>、ニースの小型爆弾×1@BACCANO!、 不明支給品(0〜1)<仗助> 、*ひらりマント
0150[道具]支給品一式×2<アルルゥ、仗助>、ニースの小型爆弾×1@BACCANO!、不明支給品(0〜1)<仗助> 、ひらりマント
0156[装備](春日→F-2橋付近より)トウカの刀@うたわれるもの [道具]支給品一式×2<アルルゥ、仗助>、ニースの小型爆弾×1@BACCANO!、
不明支給品(0〜1)<仗助> 、ひらりマント
0172[装備]無し [道具]無し
(→E-2林の何処か)
0177[装備]無し [道具](E-2林の何処かより)支給品×2<アルルゥ、仗助>、 (E-2林の何処かより)不明支給品(0〜1)<仗助> 、
(E-2林の何処かより)ひらりマント、(E-2林の何処かより)トウカの刀@うたわれるもの
0183[装備]無し [道具]支給品×2<アルルゥ、仗助>、 不明支給品(0〜1)<仗助> 、ひらりマント、トウカの刀@うたわれるもの 
0192[装備]無し [道具]無し 
(→ライダー)
0193[装備]:無し [道具]:(ライダーより)支給品×2<アルルゥ、仗助>、(ライダーより)不明支給品(0〜1)<仗助>、
(ライダーより)ひらりマント@ドラえもん 、(ライダーより)トウカの刀@うたわれるもの、(グラハムより)サカキのスピアー@ポケットモンスターSPECIAL
0194死亡
(→ミュウツー)
0487創る名無しに見る名無し垢版2013/01/12(土) 16:15:48.25ID:S4X/opr/
アルルゥ、レナ、梨花が死んで
放送で一番ダメージ大きいと思ったサトコがどうなるかも気になるな。
症候群再発なんてこともあるか?
0491ハロー・モンスター ◆Wott.eaRjU 垢版2013/01/14(月) 22:24:34.83ID:c1vBymtH
列車とは人間が数多く発明した中でも素晴らしいものだと思う。
列車は地に寝そべった線路を伝い、どこまでも進んでいく。
道が続く限り、旅を求める人間が居る限り、列車は止まらない。
喜び、怒り、悲しみ、楽しみ。誰しもが持つ感情が、人の数だけ詰まっている。
社会的な身分や肩書による違いはない。列車は、ただ彼らを等しく迎えてくれる。
ただし、列車の運行を邪魔しなければという決まりはある。
もし、それが破られそうになった時は。
その時こそが、『車掌』の出番だ。


思えば案外と気に入っていたのかもしれない。
人の想いを乗せて走る、箱船の番人が。
たとえ本業である便利屋を忍ぶための、仮初の姿としてもだ。
今までの業務で手を抜いたことなど一度もない。
だからこそ、途中で投げ出してしまった仕事は終わらせなければいけない。


決めたのだから。
この仕事は必ず最後までやり通すのだと。
車掌の仕事だからというわけじゃない。
そもそも、もう名前や肩書なんて大した意味は持たないのだから。
ただ、自分が決めた世界のルールを覆すような生き方はしたくない。


数々の名を捨て、一人の『“怪物(モンスター)”』は依然として世界に立っている。



◇     ◇     ◇
0492ハロー・モンスター ◆Wott.eaRjU 垢版2013/01/14(月) 22:25:48.46ID:c1vBymtH
身体の調子はある程度までは戻ってきた。
赤い毛髪を生やした男は、やや暗い表情を浮かべながらそう考えていた。
数時間前の戦闘が、鮮明に脳裏をよぎる。
勝ちはしたものの、彼が支払った代償は確かにあった。
数を減らした弾薬に、背負わされた疲労に、うちつけられた無数の傷。
だが、弾薬以外の問題は既にかなりといっていい程に解決している。
弾薬だって、新しいものがきっとその内手に入るだろう。
なにせこの世界は彼の一部のようなもの。
すぐには難しいとしても、自分の望みを無下にすることなんて出来やしないのだから、

「あー……どうにも調子が狂うよな。勉強にはなったけどさ」

両手を組み、そのまま頭上に上げて軽く伸びる。
伸ばされた身体と共に吐き出された一言は、内容とは裏腹に呆れるほどに軽い。
死線を潜り抜けてきたばかりとはとても思えない言葉だ。
先程のチョッパーだけでなく、彼はこの殺し合いで多くの参加者と戦った。
力を持つ者、持たない者と分け隔てなく戦った彼は、今までにない苦労を味わった。
力を持った者は誰もが一級であり、力を持たない者も最後まで抵抗をしてくれた。
身体が動かしにくい事も含め、ここでは全てが思い通りにいかないことがよく理解出来た。

「丸一日経ったしなぁ。うん、切り替えていこう。俺は――生まれ変わる!!」

不意に何かを振り切るように頭を左右に振り出し、続けて両手で軽く両頬を叩く。
よし、と自らを鼓舞するかのような勢いがそこにあった。
見る見るうちに表情には生気が戻り、両目にも光が浮かぶ。
ちょうど彼が生やしている、燃えさかる赤髪のような色だった。
たとえ本調子ではなくても、彼は『世界』のために止まるわけにはいかないのだから。

「俺を入れて、あと14人。先が見えないわけじゃない」

先程聞こえてきた放送の内容を想起する。
死者の数は今までの放送とあまり変わらず。禁止エリアとやらも既に記録は取ってある。
自分が殺した参加者の名前も聞いたが、今更抱く感情はなかった。
いくら自分に喰らいついてきたとしても、死んでしまえば意味はない。
この会場のどこかで知らぬ内に死んでいった幼馴染のように。
ただ、忘れることは決してしない。それが彼なりの彼らに対する敬意の現れなのだろう。

「そういえばギラーミンってヤツは死んだんだな」

死んだ人間はもう一人居るらしい。
この殺し合いの首謀者ではなく、進行役だった男、ギラーミン。
切り捨てられたのかはわからないが、彼にとってはどうでもいい。
まだ新しく進行役となった、キース・ブラックという人間の方が気にはなる。
先程の放送で色々と好き放題言ってくれた事を、彼は覚えていた。
いつかはお礼をしなければいけない。
キース・ブラックの話しに出た、願いを叶えてくれる存在を確認した後にでも。
0493ハロー・モンスター ◆Wott.eaRjU 垢版2013/01/14(月) 22:26:51.81ID:c1vBymtH
「……まったく、どうしてこんなところに居るんだろうな」

思えば不思議な話だった。
便利屋である自分が、金も貰わずに誰かを殺し回っている。
一銭の金にもならないし、殺してやりたいやつらじゃない。
殺すだけでは飽き足らず、ヘンテコな銃を振り回して、奇妙な人形を引き連れている。
不意に幼馴染達が今の自分を見たらどう思うかを考えたが、直ぐに答えは出た。
きっと笑われて、ぶん殴られる。あいつらならそうに違いないと。
だが、彼はただ殴られるだけで終わる男ではない。
彼なら、殴り返す。殴って、取り戻す。
彼は自らが居るべき場所を取り返すために、人を殺している。

「さてと……しんみりするのはもうなしだ。生まれ変わった俺は一味違う」

死んだ者はもう戻ってこない。
『何でも願いを叶える』という言葉に彼は騙されるつもりはない。
死者が戻ってくる事など絶対に有り得ないと、言われるまでもなくわかっている。
だからこそ、残ったものは取りこぼしたくはない。
まだ生きている筈の幼馴染達の無事をこの目で確認する。
そのために自らの鍛え上げた技術と力以外に、傍らに立つ人形だって利用する。
段々と扱い方に慣れ、時間の止め方のコツも掴めてきたのだから。
やがて、彼の視界に大きな建築物が飛び込む。
どこへ行く理由も目的もなく、ただひたすらに南下し続けていた彼は、表情を崩した。


「“怪物(モンスター)”は“怪物(モンスター)”らしく、お城にでも攻め込むさ。
“騎士(ナイト)”の歓迎の一つでも、あったら嬉しいけどな」


A-2、古城跡。
名前を捨てた『怪物』は、奇しくも同じ『怪物』が待つ場所を見つけた。
そこで待つ『怪物』は、彼が喰らった『怪物』の仲間であることを彼はまだ知らない。




一人の『“怪物(クレア・スタンフィールド)”』は依然として世界を回し続けている。
0494ハロー・モンスター ◆Wott.eaRjU 垢版2013/01/14(月) 22:27:29.18ID:c1vBymtH
【A-2/2日目 深夜】
【クレア・スタンフィールド@BACCANO!】
[状態]:疲労(小)、全身に打撲
[装備]:スタンドDISC『スター・プラチナ』@ジョジョの奇妙な冒険、スプリングフィールドXDの弾丸×7、拳銃の予備弾×30
    二重牙@トライガン・マキシマム(20%、70%)、AMTオートマグ(0/7 予備弾×15)
[道具]:支給品一式×5<クレア、一方通行、レヴィ(一食消費、水1/5消費)、クリストファー、カルラ>、未確認支給品(0〜1)
    クリストファーのマドレーヌ×8@バッカーノ!シリーズ、ミカエルの眼の再生薬×3@トライガン・マキシマム
    噴風貝(ジェットダイアル)@ONEPIECE、応急処置用の簡易道具@現実、痛み止め
    パ二ッシャーの予備弾丸1回分、ロケットランチャーの予備弾頭2個
    ○印のコイン、AK47カラシニコフ(0/40、予備弾40×3)、蓮の杖@とある魔術の禁書目録
[思考・状況]
基本行動方針:優勝し、キース・ブラック達から元の世界へ戻る方法を聞き出す。
 1:優勝のために他の参加者を殺す。迅速に、あらゆる可能性を考慮して。
 2:フィーロを殺した相手が分かったら、必ず殺す。
 3:スター・プラチナに嫌悪感はあるがある程度割り切っている。
【備考】
 ※参戦次期は1931~特急編~でフライング・プッシーフット号に乗車中の時期(具体的な時間は不明)
 ※ほんの一瞬だけ時間停止が可能となりました。
  ※名前を聞いていなかった為、カズマとクリスの死を知りません。
 ※もう一度ミカエルの眼の再生薬を服用すれば、命に係わるかも知れないため使用しないほうがよいと思っています。
 ※○印のコインの意味は不明です。使い道があるのかもしれませんし、ないのかもしれません。
0495 ◆Wott.eaRjU 垢版2013/01/14(月) 22:29:10.77ID:c1vBymtH
投下終了しました。
何かあればお願いします。
0496創る名無しに見る名無し垢版2013/01/14(月) 23:05:19.20ID:KfH8XUei
投下乙です!

うお、ロワにきて味わった苦戦やコンクリートや悲しみや何もかも
一言で区切りをつけてしまえるとは…!
クレアの怖いところは天才的な戦闘力よりなによりこの精神の怪物的な強靭さだなぁ

残念、お城にいるのは騎士じゃなくて剣士だw
そういやチョッパーの最期を仇の口から語られることになるゾロの心境はいかほどか
古城勢にとって一番戦いの相性の悪そうな奴が最初にやってくる、
これは一体どうなるんだ
0497創る名無しに見る名無し垢版2013/01/14(月) 23:24:57.84ID:4j50ESZG
投下乙です!
クレアさっぱりと生まれ変わるの巻。一日経ったのをこう使うとは。
原作最新刊で達人10人相手に舐めプして遊んでたし、何人相手でもガチで負けるビジョンが見えないぞ、この怪物は。
ゾロの技とか佐山の細工とか全部見抜きかねない努力する天才に対して古城組はどう戦っていくのか…
0498創る名無しに見る名無し垢版2013/01/17(木) 02:03:03.20ID:yURhJ7Bp
投下乙!

生まれ変わった、凄い表現だ
今までの諸々を切り捨てるのではなく、切り替える
さてもう一人の世界の中心と出会っても、陽気な怪物は世界を回せるかな
0499 ◆OQO8oJA5SE 垢版2013/01/17(木) 23:36:50.40ID:EfNz4hr2
したらばの方にも書きましたがこちらでも。
このたび延長しましたが、遅れ気味だったところ諸事情により執筆時間がとれず
完成は困難だと判断いたしまして、予約を破棄させていただきます……
楽しみにされていた方、申し訳ありませんでした。
0506創る名無しに見る名無し垢版2013/02/15(金) 00:26:19.08ID:2f+u0Aa+
おお!バレンタイン仕様だ!!
アルルゥ可愛いなぁ。でも二枚目wwwwww

予約も楽しみ!
0508創る名無しに見る名無し垢版2013/02/15(金) 02:37:41.08ID:iJJkBMEh
かわゆす
0512 ◆5ddd1Yaifw 垢版2013/02/17(日) 22:07:14.53ID:SCAdms2i
予約分が完成したので投下します。
0513リスタート・ワールド ◆5ddd1Yaifw 垢版2013/02/17(日) 22:08:16.10ID:SCAdms2i
クエスチョン

小鳥遊宗太にとって、伊波まひるとはどのような存在ですか?

アンサー

――――。



##########



どうして、彼女が死ななければいけなかったんだ。
俺が第一に思ったのは、伊波さんの死の否定だった。
死。消失。デリート。
言葉では様々ではあるが、確かなことは一つ。

伊波まひるとは、もう二度と会えない。

悔しいに決まっている。悲しいに決まっている。
この胸を締め付ける鈍い痛みは、俺の思考力を削ぎとっていく。
君の笑顔をもう見れないという純然たる事実は、俺をへたり込ませるには十分だった。
出会いは碌なものではなかったけれど、俺にとっては思い出となっていたんだ。
そもそも、いきなり殴られるなんて予想もつかないって。
あれはすごく痛かったなぁ……。

ああ、戯言だ。

もう会えないとわかっていながらも、俺はこの戯言――逃避を抑えることはできない。
伊波さんのことを忘れて、前を向くことなんて出来はしない。
伊波さんはよくもわからない怪物に乗っ取られて、一度は助けられたと思ったのに。
結局、死んでしまった。いや、殺された?

殺したのは誰だ? あの銀色の小さな女の子?

殺されたらどうする? 復讐でもするのか?

「できる訳……ないだろッ!」

小さなものを愛する俺にはどうしても、それができなかった。
復讐に身を任せることが一番の逃げ道と理解しているのにもかかわらずだ。
どうあっても、超えてはいけない境界線を超えることを、俺は許せない。
畜生…………。
畜生、畜生、畜生。
俺は……俺は……っ!
0514リスタート・ワールド ◆5ddd1Yaifw 垢版2013/02/17(日) 22:09:45.44ID:SCAdms2i
「ああああっ、ぁぁアアア、がああああああああっ!」

口から自然と叫び声が上がる。
大きな声を叫び散らして。掠れた声を何度も何度も絞り散らして。
そうでもしないとやっていられない。
彼女を失った痛みを少しでも和らげる為にも。

そして、和らげるが故に、優勝という甘美な誘惑に一瞬、心を揺らされてしまった。

きっと、望まない。
伊波さんはこんなこと、望まない。
佐山君達を殺して、俺が優勝して。
君を蘇らせるという願い事を――否定するだろう。
そもそも、優勝するにしても……俺一人で残りの参加者達を倒せるのか?

ノーだ。断言できる。

怪我をしている佐山君にさえ敵わない俺が、できるわけがない。
それでも。それでも。それでも……っ!
俺は君の笑顔を、もう一度見たいんだ。
こんなにも辛いなんて思わなかったんだ。
君がいない世界が寂しいと思ってしまうなんて、ね。

それは何故?
どうして、俺はこんなにも伊波さんの笑顔を見れないことが辛いんだ?
もう一度――彼女の蘇生を考えてしまうくらいに、恋焦がれてしまうんだ?

「もしかして?」

そう、あるはずのない可能性。
俺が小さなもの以外で、12歳以上の年増を好きになる訳がない。
だけど。伊波さんともう会えないと知った今、俺は何を考えていた?
どうにかして、彼女の笑顔を見たいと思わなかったか?
また一緒に、君とワグナリアで働きたいと考えなかったか?
少し顔を赤く染めて微笑む彼女を可愛いと思わなかったか?

「……気づくな、気づくなっ!!!! 気づいたら、戻れなくなる…………っ」

――もう遅い。遅すぎた。
散らばっていたパズルのピースは全て揃ってしまった。
もう、気づいてるはずなんだ。
確かめようがないなんて嘘っぱちだ。
そんなの、俺が作った逃げ道でしかない。
彼女の想いの行方はわからずとも、俺の想いの行方はわかるはずだ。
俺自身が認めたくなくて、逃げているだけ。
0515リスタート・ワールド ◆5ddd1Yaifw 垢版2013/02/17(日) 22:13:00.14ID:SCAdms2i
「俺は、俺は……っ! 伊波さんのことが」

自然と、口から言葉が漏れだしてしまう。
もう、出してしまうしかない。
だって、仕方がないだろう? これ以上は誤魔化しがきかないんだから。
小鳥遊宗太が伊波まひるに対してどう思っていたかって?
そんなの、決まってるだろ……!

「すき、だったんだ――――!」

好きだよ! ああ、好きだったよ!
彼女のことが心の底から好きだった!
そんな彼女が目の前で崩れていくのを見て、俺は思ったさ!
どうしてって! まだ、俺は君にハッキリと好きだって伝えていないのに!

「ごめんっ……ごめん……! 好きって言えなくて、ごめん……!」

もっと、速く。この殺し合いに呼ばれる前に伝えていれば。
俺が勇気を出して、君に向き合っていれば。

「……くそっ。クソっっ!!」

もう過ぎたことだ。伊波さんは死んで、俺はまだ生きている。
俺だけが生きているのだ。
だから――。

「生きてやる……絶対、最後まで生き残ってやる!」

――俺は生きるよ。君が繋いでくれた分まで。
後追い自殺? それだけはやってはいけない。
俺が死んだら、誰が伊波さんの死をワグナリアの皆に、伊波さんのお父さんに伝えられるのだ。
この役目は俺しかいない。否、俺だけしかやってはいけない“仕事”だ。

「このまま不貞腐れてちゃ、いけないよな……!」

結構、時間はかかったけれど。
立ち上がろう。横に君が並び立ってくれないのは悲しいけれど。
心に、君を強く刻み込む。それで、今は我慢しよう。
君の好きなままの小鳥遊宗太でいるから。
他の誰が君を忘れることになったとしても。忘れない、君のこと。

「俺は……伊波さんが好きでした!」

もうすぐ、現実――どうしようもないぐらいにクソッタレっている世界に意識は戻るだろう。
きっと、辛い。何度も君がいない事実に、俺は苦しめられると思う。
ずっと、ずっと。俺は――君を想って痛みを抱えてしまうかもしれないけど。
もう少しだけ、頑張ってみようと思うんだ。
いつか、俺が君の元へと向かう時。
今度は俺から、君に好きだって伝えるまで。
だから、今はまたねって。さよならなんかじゃない、こういう時はいつか会えることを考えた方が楽しいから。
0516リスタート・ワールド ◆5ddd1Yaifw 垢版2013/02/17(日) 22:16:31.70ID:SCAdms2i
「またね、伊波さん」

――うん。またね。

だから、気のせいだろう。
振り返った瞬間、君の笑顔がほんの数秒だけ。
俺の視界に映ったのは……気のせいだ。
だけど。そんな幻でも。
嬉しいと思ってしまった自分の現金さに少し笑ってしまって。

「行ってきます」

君の分まで、俺は進むよ。
ゆっくりでも、前に。


##########



クエスチョン

小鳥遊宗太にとって、伊波まひるとはどのような存在ですか?

アンサー

俺が好きだってハッキリ言える女性です。



【A-2 居館一階 応接間/1日目 深夜】
【小鳥遊宗太@WORKING!!】
[状態]:全身に痛み、気絶中(もうすぐ目覚め?)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式(一食分の食事を消費)、地下の地図、伊波まひるのヘアピン@WORKING!!
[思考・状況]
1:絶対に生き残る。
※獏の制限により、過去を見る時間は3分と長くなっています。このことに気づきかけています。
※地下鉄を利用するのは危険だと考えています。
※放送は聞いていません。
0518創る名無しに見る名無し垢版2013/02/18(月) 00:08:14.45ID:fUJn1aWB
投下乙です!

小鳥遊君がついに認めよったぁああああ!
ああくそ、いなみんが生きてる時に落ちてればいいものが見れたかもしれないのに…いや、性格上無理だなぁ
認めるまでの思考が甘酸っぱい、しかし取り返しのつかない思いを
きちんと正面から受け止める所が男前だよ小鳥遊君!
しかし改めて、殺意を抱くこともできないレベルの小さい物好きって筋金入りだ

モヤモヤ組最後の一人、小鳥遊君も吹っ切れて
古城組を待ち受ける波乱に対する準備が出来た、といえるかな
どうなるか楽しみだ
0519創る名無しに見る名無し垢版2013/02/19(火) 23:42:22.33ID:ECNcQJEX
投下乙!

小鳥遊君ふっきれたか!
いなくなってから気づくとは皮肉だが、ここまでしっかり前を向けたならよかった

いやーでもまさか「俺が好きだってハッキリ言える女性です。」とまで吹っ切れるとは
佐山先生の荒療治がきいたかな
0520創る名無しに見る名無し垢版2013/02/20(水) 00:00:01.08ID:vY1FwXNr
投下乙!
小鳥遊ついに認めよった!
普段なら絶対に認めなさそうだけど、気絶中だからこれはありえる。
これからの佐山との絡みが気になります!
0521 ◆GOn9rNo1ts 垢版2013/03/12(火) 20:51:07.55ID:c9/+iwJB
御坂美琴、ライダー(イスカンダル)を投下します
0522消失証明・存在証明 ◆GOn9rNo1ts 垢版2013/03/12(火) 20:53:07.56ID:c9/+iwJB
『人の存在、もしくは消失は、他者に認識されることで初めてその事実を浮き彫りにする』


◇ ◇ ◇



劇場。
老若男女の役者によって、華やかさをもたらす大道具によって、アクセントを加える小道具によって、あっと驚く様々な仕掛けによって。
恋した少女と結ばれる喜びを、最愛の夫を喪う哀しみを、裏切った親友への怒りを、ハッピーエンドで締めくくられる楽しみを。
そして、それ以外の大げさな細やかな、ありとあらゆる感情さえも。
観客たちに見せて、聞かせて、感じさせる、人が創り上げてきた文化の拡散場。

そんな世界が、壊されていた。

このホールの主たるステージ。その壁はへこみ、幕は穿たれ、床は抉られた上に一部は『消失』している。
ガンマンたちによる決闘の爪痕は、整えられていた演劇の場をいっそ芸術的なまでに戦いの場へと仕立てあげていた。
一方、客席を汚しているのは折れたり曲がったり絶たれたりしていて元の管の形を保てていない鉄や、もはや誰にも座ってはもらえない千切れたクッション材だ。
砕け散り、散乱している材料たちをよくよく観察すれば、それらが魔王の力によって散らされたパイプ椅子のなれの果てだと分かる。
舞台裏では、男女を助ける役を請け負う人形(デウス・エクス・マキナ)が地面に這いつくばっていた。
とある参加者を殺人鬼から救った見返りを求めることもなく、天から現世へと落とされた天使(大道具)は温和な微笑みを地の底に向けて浮かべ続けている。

まるで小さな戦争が起こったかのような、荒れ果てた様相を露わにする空間だった。
舞台は荒らされ、武器の欠片が打ち捨てられ、天からの遣いは神託を寄越すこともなく沈黙を保っている。
無惨に破壊されたモノたちは、この場で行われた戦いの激しさ、苛烈さを己らの欠損した身体を以て語っている。
しかし、それでもまだ足りないと言わんばかりに、この空間に充満しつつあるモノがあった。
ただの戦いではないと、単なる争いではないと。
まるで戦争のようだと表現し得る、行われたのは殺し合いだと証明し得る要素。

死の香りだ。

それは、人と人とが傷つけ合った結果、外界へと剥き出しにされる命の証。
生を奪い合う戦いの、死を与え合う争いの果てに流出し、戦場を赤黒く染める色。

血の匂いだ。

夥しい量の血液が、一人の人間の身体中から零れ落ちていた。
数々の気に食わない人間を殴り倒してきた、両の腕が断たれていた。
死体を踏みつけ生きている人間を足蹴にしてきた、両の脚が切られていた。
いわゆる四肢たる部分が、本体と永遠の別れを余儀なくされ、客席に転がっている。
作り物では決して有りえない生々しいヒトの残骸が、劇場という優雅たるべき世界を完全にぶち壊していた。
0523消失証明・存在証明 ◆GOn9rNo1ts 垢版2013/03/12(火) 20:54:45.70ID:c9/+iwJB
壊れた世界の隅っこで、彼は空(くう)を見上げていた。


スポットライトの当たらない位置で。
見上げる先には、天井がある。
飽きることなく、何かを求めるかのように。
彼は、届かない高みへと獰猛な笑みを送った。

「なんで」

『落ちていた』彼を見つけ、嘆きを漏らした少女の声がした。
男は返答を行えない。いつもの軽口も、狂ったような叫びも、発しはしない。
当然だ。
彼――ラッド・ルッソは「頭と身体を切り離されて」喋ることのできる存在ではない。
不死の力を以てしても、力が制限されるこの空間では五体不満足で生きてはいられない。
四肢が奪われるのみならず一首を切り離されてしまっては、彼に出来ることなど何も残されてはいなかった。

「なんで――――死んでるのよ!」

結論を言ってしまえば。

御坂美琴の、目の前で。

同行者だった一人の男が、世界を壊され、死んでいた。



◇ ◇ ◇



「余は人ってもんを王として束ねる上で、沢山の人間を見てきた」

時間がないのはここに来るまでの話で分かっていた。
ここでただ混乱しているだけでは、征服王が追っていたもう一つの命をも取りこぼしてしまいかねない。

「中には、愛する者に先立たれて屍のようになってしまった者もおった」

それでも、何もせずに立ち去るのはどうしても気が引けた。
死んだらおしまい、さようならなんて別れは、したくなかった。

「ただ死に場所を探して、我武者羅に戦場を駆け抜けた兵もいた」

そんなこちらの空気を敏感に感じ取ったのか、ライダーは一歩を踏み出す。
何をしていいのか分からない、それでも何かしたいという私の想いを代行するかのように。
0524消失証明・存在証明 ◆GOn9rNo1ts 垢版2013/03/12(火) 20:55:45.12ID:c9/+iwJB
「それで、だ」

埋葬をする時間はない。
その代わりに、とでも言わんばかりに。

「こやつは行く先々で誰彼構わず噛みついていたらしい」

物怖じすることなく生首に手を伸ばし、死者の顔を眠りの形へと変えていく。
いつもやっているように。自然な手つきで。

「グラハムの坊主によれば、最初に集められた場所で殺された女はこやつの恋人だったそうだ」

ホールに響く言葉は、決して私に対する慰めなどではないだろう。
ただ、彼自身が感じたことを、そのまま口に出しているだけのこと。

「これはただの憶測にすぎんが、もしかしたらこの男は」

だけど

瞼を閉じ、永遠の眠りについたラッドの顔は


「死にたかった、のかもしれんなあ」


安らかなものに、見えてしまって。


「それでも、私は」


「アンタに生きていて欲しかった」



◇ ◇ ◇



その森は生命に満ち溢れていた。
草木は生い茂り、緑を飾るように色取り取りの花がぽつぽつと咲いている。
虫は地を這い小鳥が空を舞っている。湖を調べれば小魚の影を見ることもできるだろう。
元気いっぱいの少年少女が駆け回り、暇を持て余した大人たちが散策を行うに相応しい、健全な自然環境。

そう。健全すぎる、自然環境。
0525消失証明・存在証明  ◆GOn9rNo1ts 垢版2013/03/12(火) 20:57:59.92ID:c9/+iwJB
お手本のように澄んでいる大気。
誰かに見せるように整えられた景観。
排除されたかのように存在していない害獣、害虫、毒花。
穿った見方をしてしまえば。
参加者たちが不自然だと思わない程度に。
まるで、一つの目的をもってして造られた実験場のような。
まるで、神の手をして完璧たる形に創られた箱庭のような。
『意図をもって互いに殺し合わなければ死人が出ない』ように設計されたような、理想の世界。


つくられた世界の中心で、彼女は空(そら)を見上げていた。


ガサガサと茂みをかき分ける音がしても、彼女は何の反応も起こさなかった。
例え「王様」が迎えに来ようとも、耳をパタパタさせて近づくことも人見知りを発症し離れることもしない。
起き上がることのない彼女の様子を見て、大きな男の陰から息を呑む声がした。

『殺し合い開始から、ついに丸一日が経過した』

無機質な声が難しいお話を始めようとも、彼女の瞳が興味深げに輝くことはない。
なにかを呟くように半開きになった口は、もはや何の呼気も発しはしない。
蟻が、障害物であるかのように彼女の身体を登って、降りていく。

「…………………」

王は何も言わず、悟りきった表情で彼女の前までやって来た。
目線を合わせるようにしゃがみこんだ彼の背中は、普段よりもずっと小さく見えた。
木の枝にとまった小鳥が、淋しげに囀りを奏でる。

「―――――」

男が大きな口から小さく漏らしたのは、いかなる思いを込めた囁きだっただろうか。
彼の言葉は少女に届かず、諦めたかのように開かれた掌の上に零れ落ちていく。
触れた瞼は、生者の手の温かさを拒絶するかのように、冷たかった。

ぱたぱたと動いていた獣の耳は、もう動かない。
ふんわりした尾は、だらりと力無く垂れたまま。
小さな小さな身体は、汚れのない綺麗なままで。
ただ魂だけが散歩に行ってしまったかのようで。

『では、死者の発表に移るとしよう』

結論を言ってしまえば。

征服王イスカンダルの、目の前で。

『アルルゥ』

同行者だった一人の少女が、世界に絶望して、死んでいた。
0526消失証明・存在証明  ◆GOn9rNo1ts 垢版2013/03/12(火) 20:59:20.05ID:c9/+iwJB
◇ ◇ ◇



「……あの」

「そっちはそっちの思惑があって余を止めようとしたのだろ。誤解は互いに存在した」

それでも。
私の放った電撃によって、探知機という便利な道具が壊れてしまったのは確かな事実であり。
もしもイスカンダルが何の邪魔もされずにこの場へ駆けつけることが出来ていたならば、彼女は死なずに済んだのかもしれない。
それに、私が軽率な行動に出なければ、ラッドだって死なずに済んだかもしれない。
それをいうなら真紅だって。ブレンヒルトだって……。

放送という名の、主催者からの絶対的宣告によって。
死なせてしまった、救えなかった仲間のことを思い出してしまう。
仲間のおかげで何度立ち上がることが出来ても、また新たな重みが私を押し潰していく。
仕方のないことだと、どうしようもなかったのだと。
開き直れるほど、私は強くはなかった。

「懺悔も、謝罪も、後悔も、いくらでも後でするが良い」

気弱な考えを、見透かされたのだろうか。
野太い、芯のある言葉が私を現実に引き戻した。
ライダーは、アルルゥの頭を一撫でして立ち上がり

「トニートニー・チョッパー。
ニコラス・D・ウルフウッド。
竜宮レナ。古手梨花」

己が胸に確認するように、静かに彼らの名前を呼んだ。
放送で呼ばれた彼ら彼女らは。死んだと伝えられた彼ら彼女らは。
いずれも、志を同じくする仲間だったのだと。
イスカンダルは毅然とした態度で語った。
彼だって、死んでしまった仲間たちのことを悼んでいるに違いない。
救えなかったおのれの不甲斐なさを、痛感しているに違いない。
だけど、彼は真っ直ぐな眼差しを私に向けた。

「仲間の死から、逃げるのではない。目を逸らすのではない。
背負った上で、進み続ける気概を見せよ!」

叫びは、イスカンダル自身に言い聞かせているようにも感じた。
きっと今まで、この場に呼ばれる以前にも王として沢山の死を、見てきたのだろう。
それでも、何があっても。何十、何百、それ以上の屍を得ながら。
夢を諦めることなく、悲しみに足を止めることもなく。
沢山の想いを抱いて、背負って、進み。
これからもそのつもりで、生き抜いていく。

これはその証明だと言うかのように。
今まで歩いてきた大地の感触を確かめるように、強く一歩を踏み出し。
見たこともないどこかに声を届かせんとするかのごとく、大きく一呼吸を済ませ。
イスカンダルは空に向かって――――吼えた。

「聞いておるのだろう、胸糞悪い神気取りよ!」
0527消失証明・存在証明  ◆VRC931rh5U 垢版2013/03/12(火) 21:00:12.32ID:c9/+iwJB
あの放送で、新たに放送を行った男は言った。
この殺し合いにはギラーミンなど駒のように扱い、殺してしまえる首謀者がいるのだと。
さながら演劇を楽しむ観客のように、語り部にさえもならずに、遥か高みで嗤っているだけの存在がいるのだと証明された。
イスカンダルが行うのは、そんな未だ姿の見えない黒幕に向けた、雷鳴のように響く宣言だ。

「貴様のような臆病者なんぞが『我ら』を折れると思うなよ!」

一転、ニヤリと笑い、大きすぎる手でばしりと私の背中を叩いてくる。
その衝撃に思わずつんのめり、悪態をつきながらも、私は嬉しかった。
ただ、何もかもを失っただけじゃない。新たに得た繋がりもあったのだと。
ヒリヒリする背中の痛みで、実感出来たのだから。

「せいぜい、ぬくぬくと温まったせまーい穴蔵で怯えながら、我が軍勢の到来を待つが良い!」

死んでいった仲間たちの遺志を継ぎ。
生きている仲間たちと力を合わせながら。
立ちはだかる全ての壁を制覇し、蹂躙した暁には。
きっとその場に、到達すると。

征服の限りを尽くしこの世の果てを夢見た、と豪語する『王』は


「貴様は――――――余が首を取る」


高々と、宣戦布告を告げた。
0528消失証明・存在証明  ◆VRC931rh5U 垢版2013/03/12(火) 21:01:02.57ID:c9/+iwJB
「さて、余は往くぞ。着いて来れるか、小娘?」

イスカンダルはこちらに向き直りながら、わざとらしく意地の悪い笑みを浮かべた。
同盟者を試すかのように、いまさら小娘なんて記号で呼んで見せて。
この宣言を聞き、お前の方は何もせずにあとを着いて来るだけか、と。
落ち込み、悲しみ、いつまでも燻っているだけなのか、と。
彼なりに発破をかけているのだと分かってはいるけど――――火が付いた。

もう、大丈夫だ。

「私には『御坂美琴』って名前があんのよ、おっさん」

努力の末に辿り着いた学園都市第三位という肩書を。
超電磁砲≪レールガン≫と渾名される御坂美琴を。

「ナメんな!!!」

いつものようにコインを弾く。
今はまだ届かない高みからこちらを見下ろしてる、誰だか知らないムカつくヤツを狙うように。
散り散りになりながらも未だ残っている、私たち以外の12人の参加者に見せつけるように。
『超電磁砲』として放つ先は、星が輝く夜空の向こう。
轟音を置き去りにして撃ち出されたコインは燃え上がり、闇を切り裂き、光となって。
数瞬の後には、儚く大気に溶けていった。


これが、こんなゲームを思いついた大馬鹿野郎に送る、私なりの宣戦布告。


そして「私はここにいるぞ」とこの世界に見せつける、御坂美琴の存在証明だ。


それでこそ我が同盟者に相応しいと呵呵大笑する大男を見上げ、私はふと、この『王』の有り様を思った。
言葉も、行動も、自分の言いたいことしたいことばかりで、理屈も何もあったもんじゃない。
でも、だからこそ人は彼に惹かれ、魅かれていくのだろう。
奪い取った何もかもを受け入れ、背負っていく巨大な旗頭に、みなが集まっていくのだろう。

脳裏をよぎるのは――――何故か、アイツのツンツン髪だった。

「良い顔になったな、美琴よ」

「とーぜん。負けてなんか、いられないんだから」

出来る限り不敵に、力を籠めて笑ってみる。
子供みたいに夢を追い続ける男に。
どんな時でも諦めず、前を向いて進む馬鹿に。
追いつこうと、そう思った。
0536創る名無しに見る名無し垢版2013/03/12(火) 21:08:41.60ID:WP+Uyor/
支援
0540消失証明・存在証明 ◆GOn9rNo1ts 垢版2013/03/12(火) 21:09:46.55ID:c9/+iwJB
【F−4 湖岸/一日目 深夜】
【御坂美琴@とある魔術の禁書目録】
[状態]:疲労(小)、胴体に貫通傷×3(小)、全て再生中
    多大な喪失感、強い決意、≪体内:全て遠き理想郷(アヴァロン)@Fate/Zero≫
[装備]:薔薇の指輪@ローゼンメイデン、ナース服、コイン。
[道具]:基本支給品一式(食料一食、水1/5消費)、不明支給品0〜2個(未確認)、病院で調達した包帯や薬品類
    コイン入りの袋(装備中の物と合わせて残り88枚)、タイム虫めがね@ドラえもん、首輪(ジョルノ)
    真紅のローザミスティカ@ローゼンメイデン、蒼星石のローザミスティカ@ローゼンメイデン
    ARMS『騎士(ナイト)』@ARMS、真紅の左腕(損傷大)、不思議の国のアリス@現実他、いくつかの本、ナースキャップ
[思考・状況]
0:ライダーの同盟者と合流。
1:首輪を解体できそうな人物(第一候補はグラハム)を探す。
2:一人でも多くの人を助ける、アイツの遣り残した事をやり遂げる。
3:人は絶対に殺したくない。
4:自分と関わり、死んでしまった者達への自責の念。
5:上条当麻に対する感情への困惑。
6:ライダーと行動する。
【備考】
 ※参加者が別世界の人間、及び参加時期が違う事を聞きました。
 ※会場がループしていると知りました。
 ※真紅と情報交換し、ローゼンメイデンの事などについて大雑把に聞きました。
 ※あすかと情報交換し、スクライドの世界観について大雑把に聞きました。
 ※地下空間の存在を知りました。地下にループ装置があるのではと推察しています。
 ※会場は『○』の形に成っているという仮説を立てています。
 ※全て遠き理想郷(アヴァロン)が体内にあることを知りません。
 ※ラッドの事を『原石』(天然の能力者)かも知れないと考えています。
 ※参加者についての情報は以下の通りです。
  協力できそうな人物:レナ、沙都子、梨花、ゾロ、チョッパー、アルルゥ、佐山、小鳥遊、グラハム、ウルフウッド
  直接出会った危険人物:ゼロ、ラズロ(リヴィオ)、メイド(ロベルタ)、宇宙人(ミュウツー)
  要注意人物:白仮面の男(ハクオロ)、ヴァッシュ、水銀燈(殺し合いに乗っているようであれば彼女を止める)
 ※首輪の機能について、以下のように考えています。
  確実に搭載されているだろう機能:「爆弾」「位置情報の発信機」「爆破信号の受信機」「脈拍の測定器」
  搭載されている可能性がある機能:「盗聴器」「翻訳機」
 ※首輪は何らかの力によって覆われていて、破魔の紅薔薇にはその力を打ち消す効果があると考えています。
0541消失証明・存在証明 ◆GOn9rNo1ts 垢版2013/03/12(火) 21:10:35.80ID:c9/+iwJB
【ライダー(征服王イスカンダル)@Fate/Zero】
[状態]:魔力消費(やや大)、疲労(小)、腹部にダメージ(小)、全身に傷(小)および火傷(小)、腕に○印
[装備]:包帯、象剣ファンクフリード@ONE PIECE、破魔の紅薔薇@Fate/Zero
[道具]:基本支給品一式×3、無毀なる湖光@Fate/Zero
    イリアス英語版、各作品世界の地図、ウシウシの実・野牛(モデル・バイソン)@ワンピース
    探知機(故障中)、エレンディラのスーツケース(残弾90%)@トライガン・マキシマム
[思考・状況]
 0:グラハム、沙都子との合流地点へ向かう。
 1:バトルロワイアルで自らの軍勢で優勝。
 2:首輪を外すための手段を模索する。
 3:北条沙都子を守る。
 4:サーヴァントの宝具を集めて戦力にする。
 5:有望な強者がいたら部下に勧誘する。
【備考】
 ※原作ギルガメッシュ戦後よりの参戦です。
 ※臣下を引きつれ優勝しギラーミンと戦い勝利しようと考えています。 本当にライダーと臣下達のみ残った場合ギラーミンがそれを認めるかは不明です。
 ※レナ・チョッパー・グラハムの力を見極め改めて臣下にしようとしています。
 ※『○』同盟の仲間の情報を聞きました。
 ※自分は既に受肉させられているのではと考えています。
 ※ブケファラス召喚には制限でいつもより魔力を消費します。しばらく召喚出来ません(詳しい時間は不明)。
 ※北条沙都子、アルルゥもまずは同盟に勧誘して、見極めようとしています。
 ※現在の魔力残量では『王の軍勢』をあと一度しか発動できません
 ※別世界から呼ばれたということを信じました。
 ※会場のループを知りました。
 ※オープニングの映像資料を確認しました。
0542 ◆GOn9rNo1ts 垢版2013/03/12(火) 21:11:06.74ID:c9/+iwJB
以上で投下を終了します。支援くださった方ありがとうございました。
0543創る名無しに見る名無し垢版2013/03/12(火) 22:41:00.85ID:G7rLheV8
投下乙です!

熱い、これは熱い…!
亡くしたものを受け止め、後悔と無力感で暗く沈む気持ちを吹き飛ばす宣戦布告
喪失によって背負った重さを捨てるのではなく、ただ力に換えて前に進む二人がなんとも眩しい
作中にもある通り、何百の夢を束ねて突き進んでいた王だからこその宣言
これは共についていきたいと思わせる王だ!
ビリビリも今までの散々な道のりを乗り越えての真っ直ぐな決意が、強さを感じさせる
両者ともにこぼし続けた美琴とライダーだからこそ、この宣戦布告は映える…!

しかし語り部にさえならない黒幕は臆病者か
原作でマスターに対して共に戦うことを重視していたライダーからしてみれば、なるほど相当な軽蔑の対象だ
黒幕は謎に包まれまくっているけど、二人には頑張ってほしいなぁ
0544創る名無しに見る名無し垢版2013/03/12(火) 23:23:10.83ID:ad1pSPhm
久々の投下乙!
ライダーかっこいいなぁ!
対主催の要待ったなしの存在感が凄い。
仲間を沢山失った○同盟だけど、ライダーと美琴には頑張って欲しいな
0545創る名無しに見る名無し垢版2013/03/13(水) 18:26:58.22ID:FvhJE/u3
投下乙です。
かっこいい…これぞ、漢の姿ですわ。
真っ直ぐなライダーにそれを追いかける美琴。
いいコンビになっているなあ。
それと、ラッドの死を悲しむってのも胸に来る。
0546創る名無しに見る名無し垢版2013/04/02(火) 22:42:24.72ID:KJN+amcm
避難所にエイプリルフール来てたー!
Dルートはドリームルートだったのか
いい夢見せてもらいました!
0550創る名無しに見る名無し垢版2013/09/26(木) 21:43:46.17ID:GcoSQXmS
だれか・・・いるの?
0553創る名無しに見る名無し垢版2013/10/24(木) 20:53:46.20ID:jKBpRoXo
\(^o^)/
0555オレはここに在り ◆hqLsjDR84w 垢版2013/11/19(火) 13:40:07.56ID:Tl1UHFf5
 
 
 ◇ ◇ ◇


 ミュウツーは、これまで以上の速度で森林を飛行していた。
 先ほどの放送の内容を振り払うかのように、飛行するのに念動力を集中させる。
 そんな思惑とは裏腹に、彼の聡明な頭脳は考えてしまう。

『ギラーミンは――殺された』

 聞いたこともない声の男が、自分と約束をしたはずのギラーミンの死をあっさりと告げた。
 さらに、人を疑うことを覚えたほうがいいと続けた。

 はたして、約束は果たされるのだろうか。
 考えたくないのに、意図せず考えてしまう。
 一度浮かんでしまえば、もう永遠に消えることのない疑問だった。

(わかっていたことだ)

 そういう可能性は、それこそ二十四時間前から考えている。
 それを踏まえた上で、行く道を決めた。
 いまさら、いったいなにを迷うことがあろう。

 ――こきゃっ。

 やけに軽い音。
 柔らかな感触。
 子ども特有のぬくもり。
 小枝でも折るかのようなたやすさ。

 硬い機穀剣を持っているはずの手が、未だ彼女の元にあるかのように錯覚しそうになる。

(……わかっていたことだ)

 勢いよく頭を横に振って、さらに飛行速度を上げる。
 加速した甲斐あってか、ほどなくして森林を抜けて市街地が見えてくる。
 そうしてエリアE−5に足を踏み入れるやいなや、脳内にすっかり慣れた例の声が響く。

 ・━━━見えぬところに真実がある。

 ミュウツーは首を傾げる。
 エリアE−5には半日ほど前にも来ているが、その際はこのようにいきなり声が聞こえてくることはなかった。
 そんな疑問は、すぐに氷解してしまう。
 デイパックに入れていたはずの二つの鍵が浮かび上がり、これまで放っていなかった念動力を帯びているのだ。
 カギを両方揃えた上でこのエリアに来て、初めて作用する仕掛けであったのだろう。
 宙を舞う二つの鍵が空中のある点に突き刺さり、ともに四十五度ほど右に回転する。
 次の瞬間、鍵が刺さった箇所にドアノブが一つずつ出現すると、遅れて巨大なドアが姿を現す。
 怪訝に思うミュウツーをよそに、ドアノブが勝手に回転してドアがゆっくりと開いた。

 ドアに呑み込まれたミュウツーは、いつの間にかこれまでとはまったく異なる世界に立っていた。
 眼前にはこれまで見てきた二つの湖とは比べ物にならないほど大きな湖があり、周囲には青々とした木々が生い茂っている。
 ドアをくぐっただけなのだから、さきほどまでいた場所と遠く離れていないはずなのに、市街地の面影はまったくない。
 高く飛び上がって周囲を眺めても森が広がるばかりであり、また漂っていた血の臭いも掻き消えてしまっている。
 いままでいた場所とはまったく異なる場所で、巨大なドアだけがどこまでも異質だった。

 ――三つの湖に隠された力を解き放て。
0558オレはここに在り ◆hqLsjDR84w 垢版2013/11/19(火) 13:41:06.97ID:Tl1UHFf5
 
(ここがそう……なのか?)

 疑問に水を差すかのようなタイミングで、首輪から電子音声が響いた。
 概念空間に入ったとき特有の警告――ではなかった。

『宣告。宣告。あなたは概念空間【第三の湖】へと入りました』

 さらに、首輪ではない別の方向から声が響く。
 首を動かそうと、念動力を張り巡らそうと、音源は見当たらない。
 かといって、テレパシー特有の感覚もない。

『参加者No.58【ミュウツー】を確認しました』

 そうして――ミュウツーの首輪が外れた。

 やけに呆気なく、すんなりと。
 ミュウツーを二十四時間縛り付けていた首輪は、真っ二つに分かれて落下した。

「……なっ!?」

 思わず声を漏らしてしまったミュウツーだったが、力が漲る感覚で我に返る。
 否、これが本来の彼の念動力が。
 これまでが制限されていたのであって、いまの状態こそがベストコンディションのミュウツー。
 幻のポケモンの遺伝子からカツラが作り出した戦闘特化ポケモン。

 同時に足元に出現したポケモン用の回復アイテムにも驚くべきなのだが、そんなものに驚いている場合ではない。
 首に手をやっても、なんの異物感もない。
 地面に落ちている二つの金属片をわざわざ拾い上げてみると、これが首輪なのは間違いない。

(力を解き放て、とはこういうことなのか!?)

 意図が読めない。
 いったい、なにがしたいというのか。
 しかし、ミュウツーはすぐに心を落ち着ける。
 関係ない。いまさら枷が外れたところで、やることに変わりはない。

 怪訝に思いながらも、すぐに視線は湖の中央へと向かう。
 そこに白銀の刀身と黄金の鍔が鮮やかな宝剣があるのは、先ほど飛び上がったときにすでに確認済みだ。
 辿り着いてみれば、やはりいかなる原理かはわからないが、水面に宝剣が浮いている。

 手に取ってみると――その『真名』が頭に流れ込んできた。

(…………なるほど、な)

 ――第1、第2の湖を解き放つ事により、約束された勝利へと導くだろう』

 テレパシーがフラッシュバックする。
 得物はすでにいくつもあると思っていたが、脳裏に流れ込んできた『真名』とは比べ物にならない。
 まさしく約束された勝利と言っていい。

(約束――勝利。
 そうだ。エクスカリバー、俺は)

 ミュウツーは勝利せねばならない。
 交わした約束のために。
 交わした相手がすでにこの世にいなかろうと、果たされることを信じねばならないのだ。
 ゆっくりと飛んで、湖のほとりまで戻って着地する。
 飛行中は超能力で引き寄せていたエクスカリバーを自らの手で握り、決意を新たにする。
0559オレはここに在り ◆hqLsjDR84w 垢版2013/11/19(火) 13:41:56.58ID:Tl1UHFf5
 
 その瞬間――だった。

 湖が振動し、先ほどまでエクスカリバーが浮かんでいた中心部から機械が飛び出す。
 空中に映像が映し出されたことで、ミュウツーはようやくその機械の正体が投影装置だと気付く。

『ご苦労様。中々の名演技だったよ。
 君のために個室を用意してある。放送までは時間があるからね、それまでは休むといい』

 スクリーンもない空間に映し出すことなどできるのだろうか。
 そんな疑問を抱いたが、すぐに掻き消えた。

『シルバー兄さん……これで良かったの?』

 解決したのではない。そんな疑問が吹き飛ぶ代物が映し出されたのだ。

『ああ。バイオレット、お前にも手間を取らせたな』

 聞き覚えのある声だった。
 かつて、湖になにかがあると仄めかしたテレパシーの主だ。
 最初に映った青年とよく似ているが、彼より一回り年上のようで落ち着いた印象を醸し出している。


『なるほどね。いつの間に人質なんか取ったのかと思ってたけど――――【ホログラムでそう見せかけてただけ】か』


「…………は?」

 遺伝子ポケモンたる彼らしからぬ、あんまりにも人間じみた声が漏れた。



 明かされた真実は、予想だにしないもの――ではなかった。
 予想していた。
 それも相当前から。
 可能性の一つとして。
 わかっていたのだ。
 その可能性もある、と。
 その上で行く道を選んだ。
 その上で殺し合いに乗った。
 その上で――

 ――こきゃっ。

 知らず、エクスカリバーを握る力が弱まる。
 先ほど決意を新たに握り締めたはずの剣が地面に触れる寸前で、どうにか念動力でもって宙に浮かせる。
 再び手元まで戻そうとしたが制御が覚束なく、思いのほか上空まで行ってしまう。
 いつもならば、それこそ両手を動かすように念動力を使えるはずだというのに。
 ましてや首輪が解除されて、本来の力を取り戻しているというのに。

(オレは――どうしてここにいる……?)

 あんな映像を見せられるまで、ミュウツーには確固たるものがあった。
 なんのために生きて、なんのために他を切り捨てるのか。
 胸を張ってとはいえないが、それでも断言できる回答は心のなかにあった。
 主のためにここに在る。その確信があった。
 しかしいまとなっては、そんなものはない。なにもない。
0561創る名無しに見る名無し垢版2013/11/19(火) 13:42:17.98ID:IyR9N7hm
支援
0562オレはここに在り ◆hqLsjDR84w 垢版2013/11/19(火) 13:42:51.72ID:Tl1UHFf5
 
 ――なんのためにここに在る?

 わからない。
 前なら違った。
 けれど、いまはわからない。
 いままでの葛藤はなんだったのか。
 たったの一日、たったの二十四時間。
 その一言では流せぬほど、手を罪で染めてしまった。

 ――なんのために……

 わからない。
 考えたくない。
 考えたところで答えが出るとも思えない。
 それだけはわかっているのに、考えてしまう。

『教えてくれ……マスター……』

 テレパシーを飛ばす。
 返答があるはずもない。
 送った相手がいないのだから。
 返ってくるワケがない――のに。

『ふん、またか』

 無意味であるはずのテレパシーに、返答が届く。

「――ッ!?」

 聞き覚えのある声だ。
 湖へとそそのかし、そして主のホログラムを見せた、あの――

『貴様――ッ!』
『くだらないな。俺のせいだと言うのか?
 違うな。あくまで誘導しただけで、決めたのは貴様だ』
『なにを……ッ』

 なにを。
 なにを――
 なにを、なんだというのか。
 そこから先が、一向に出てこない。
 言い返せないのを待って、男はテレパシーを送ってくる。

『俺は貴様に興味を抱いていた。
 同じく他者に作られた存在であり、そして同じく戦闘生命としての生を強要された貴様に』

 戦闘生命という単語に、ミュウツーの肩が跳ねる。
 前にテレパシーを送ってきたときにも、この男は同じ単語を使っていた。

『かつての俺――いやキース・シルバーは、籠のなかの鳥に過ぎなかった。
 父たる兄に導かれた、母によって定められたすでに決まっている運命に従うだけの、な』
『なにを……言っている』

 これは、ミュウツーの本心だ。
 そのはずなのに、すでに決まっている運命という響きが、やけに頭に残る。

『それは違うな。わかるはずだ。貴様なら。
 父に捕獲されて以来その父の命令に従い戦いに投じ、父と己を縛る呪縛から解かれ自由の身になっても、その有り余る力を持て余していた貴様なら――』
0566オレはここに在り ◆hqLsjDR84w 垢版2013/11/19(火) 13:43:33.18ID:Tl1UHFf5
 
 無言。
 なにも言わないというよりも、なにも返せない。

『己の意思がない。
 父や気を許した存在の指示に従うことはあっても、自らの意思でその力をどのように振るえばいいのかわからない。それが貴様だ』
『ちが――』

 う、と。
 たった一文字を送れない。
 ちょっと念じるだけだというのに。
 なぜか、できない。
 制限などすでにないのに。
 あったところで影響ないほど短い言葉だというのに。

『ここに来てから、貴様の根幹にあったものはなんだ?
 時間は腐るほどあった。
 二十四時間あれば、貴様の頭脳ならどれだけのことを考えられる?
 にもかかわらず、ただテレパシーを飛ばすだけだ。マスターマスターと。
 行動の指針を求めるばかり。教えてもらうばかり。道を聞くばかり。戦闘生命と呼ぶにも値しない。機械となにも変わらない。
 戦闘機械であるのなら、それは単なる兵器に過ぎない。使い手の手を離れて自動的に動くというだけで、その実は使い手を離れていない。繰り人形だ』

 反論を送らねばならない。
 そんなものではないと主張したい。
 それなのに、ミュウツーには歯を噛み締めるしかできない。

『仮に俺がなにもしなかったとして、お前という存在に、他にやることでもあったのか?』
『…………』

 たっぷり五分経過する。
 そんな風に数えられるくらいには冷静なのに、飛ばされる疑問には答えられない。
 いや、考えたくないだけだ。
 考えているクセに。
 考えていないことにしている。

『ふん。やはりな』

 一拍置いて、男が飛ばしてきたテレパシーは荒い口調であった。


『ならば、改めて考えろ。
 他の参加者に二十四時間遅れてッ!
 父はいないッ! 気を許した存在もッ、憎むべきカタキもッ、息絶えたッ! いまッ!』


 改めて、ミュウツーは実感する。
 目を逸らしていた事実と向き直る。
 いまこの場には自分しかいない。
 殺し合いの会場に戻っても、以前からよく知る存在は誰一人としていない。


『たとえ作られた存在であろうと、思考する力があるのならッ! お前にも、自分が心から欲している何かがあるはずだッ!』


 同盟を組んだ相手がいるものの、彼もまた迷っている。
 彼は向き合っていた。
 向き合っているフリをしていたミュウツーとは違う。
 彼に遅れること数時間、いま――目の前にあるものに直面せねばならない。
0567オレはここに在り ◆hqLsjDR84w 垢版2013/11/19(火) 13:44:10.95ID:Tl1UHFf5
 
 
『オレ、は――』


 考える。
 初めて。
 いまになって。
 二十四時間が経過して。
 ようやく、第一歩を踏み出す。
 マスターにどう在るべきか訊くのではなく。
 自らの意思で。
 なにをしたいのかを。
 どう在るべきなのかを。
 なにをするべきなのかを。


『オレは――!』


 まず、過去を思い出す。

 ミュウツーの最初の記憶は、巨大なフラスコのなかから培養液越しに見る世界だ。
 誰もかれもが自分を見ているようで見ていない、そんな冷たい視線。
 唯一、時おりやさしい視線を向けてくれたのが父だった。
 アレがどれだけの期間であったかは定かではないが、とても長かったように思う。
 あの研究所から飛び出し、追っ手を撒き、ハナダシティ郊外に逃げ込んで、静かに暮らそうとした。
 そんな計画は一日と持たなかった。
 研究所以外のところで過ごしたことのないポケモンが、いきなり屋外で過ごせるはずもない。
 生まれ持った戦闘欲と、持て余す念動力が制御できずにいた。
 どうにか払拭しようと、野生のポケモンや通りがかったポケモントレーナーに襲いかかる日々。
 そんな苦しみを終わらせてくれたのは、父とレッドだった。
 そこからの日々は、それまでの日々がやけに長く感じるのとは対照的に、妙に短く感じる。
 対等の存在として触れ合ってくれる一方、将来別れるときのために屋外での過ごし方まで教えてくれた。
 レッドだけでなく、彼の後輩であるイエローも同じように接してくれた。

 そして、いまを見つめる。

 レッドはいない。
 イエローはいない。
 そうして、ミュウツーは人殺しとなった。
 もう、人を殺していない状態には戻れない。
 自己再生で怪我は塞がっても、全身に染み込んだ見えない血は永遠に取れない。
 たとえ帰ることができたところで、これまでと同じ日々は過ごせない。
 帰ることが可能だからといって、帰れるとは限らない。
 あの世界に、いまのミュウツーの居場所は――ない。


『オレは――――!!』


 ◇ ◇ ◇
0570オレはここに在り ◆hqLsjDR84w 垢版2013/11/19(火) 13:45:59.93ID:Tl1UHFf5
 
 
 御坂美琴は、現在進行形で引いていた。
 引いていたと言っても、クジや綱をではなければ、人目でもない。
 いや、ナース服とかいう人目を引く格好はしていたのだが、それはこの際関係ない。
 そういうのではなく、いわゆるドン引き的な意味で引いていた。

「……うわぁ…………」
「どうした、美琴よ。早く乗らぬか」
「あーうん……わかってるわよ、うん」
「……お前、もしかしてびびっ」
「はあーーーーー!? そんなワケないじゃない! 私びびらせたら大したもんよ!」
「此奴はなかなかに大したもんだがな」
「…………うん、見りゃわかる、うん、マジ」

 ライダーが召喚した彼の愛馬・ブケファラスを前に、御坂美琴はドン引きだった。

 彼女の名誉のために言うが、別に馬を見たのが初めてだとかそういうワケではない。
 パッと見それっぽくはないものの、彼女は常盤台中学というかなりお嬢様学校に通っており、乗馬自体に抵抗があるのではない。
 実際に乗ったこと自体はないとはいえ、すぐ近くで見たりはしている。
 ならば、なぜ引くことがあろうか。
 ましてや、このような非常事態である。
 速く移動できるのならば、それに越したことはないではないか。

 美琴自身もそう思っていた。
 そもそもライダーがブケファラスを再召喚をするだけの魔力を回復したと告げた際、急かしたのは美琴である。
 だったら、なおさら乗れよ。失礼だろ。ご飯まだーを連呼しといてすぐ食わねーみたいなもんだろ。
 そう思うだろう。
 正しい。
 すごく正しい。
 それでも、美琴にだって言い分がある。

 考えてみれば当然なのだが、ブケファラスは身長二メートルをゆうに超えるライダーの愛馬である。
 だから、まあ、ね。
 うん。
 すっごいデカいんだ。

(これ、馬じゃないでしょ! いや、さっきも見たけど!! 間近で見ると余計に!!!)

 再び彼女の名誉のために言うが、御坂美琴はバカじゃない。
 レベル5足りうる演算能力とかはおいておいて、普通に一般的な知識はある。
 だから馬を知ってる。
 美琴、馬、知ってる。

 そしてブケファラスの名誉のために言うが、断じてブケファラスが馬っぽくないワケじゃない。
 カバのようにずんぐりむっくりしているワケでも、ヘビのようにぬめってるワケでも、クジャクみたいに妙な色してるワケでもない。
 むしろ美しい。
 見るからに速く走りそうなほど優れた引き締まったボディに、艶やかな漆黒の毛並み、纏う馬具はそのすべてが高級品。
 まさしく馬。
 馬そのものである。
 なんなら馬オブ馬と言っていい。
 ただ、全体的に普通の馬の三倍くらい大きいだけだ。
0572オレはここに在り ◆hqLsjDR84w 垢版2013/11/19(火) 13:46:30.97ID:Tl1UHFf5
 
 
 
「…………ふむ」

 ブケファラスを前に視線を上げたり下げたりするのを繰り返す美琴を見て、イスカンダルはため息を吐いた。
 この反応が意外だったワケではない。
 予想していたのだが、外れて欲しかっただけだ。

(まあ現代日本の小娘であれば、普通はこのようなものか)

 とはいえこのまま時間を浪費する余裕もないので、首根っこ掴んでやろうかと思った――そのときだった。


 ――――東から太陽が昇ってきた。


 六時間ほどフライングしたことに気付いたのか、すぐに再び夜に戻る。

(……なワケあるかッ!)

 当たり前だ。
 それほど大規模な時間操作など、できてたまるものか。

 ただ、『太陽と錯覚してしまうほどの光』が放たれただけだ。

 先ほど美琴が射出したレールガンとは比べ物にならないくらいに、強烈な光が。

 唖然としている美琴をよそに、イスカンダルは思考を巡らす。
 あの輝きには見覚えがある。
 というのも、二度も至近距離で見ているのだ。
 さらに言えば、そのうち一度は自分に目がけて放たれている。

 ゆえに、見紛うはずがない。

 ようやくここまで届いた魔力の残滓が、まさしくあの魔力放出だと雄弁に語っている。
 もはや間違いないという確信が、イスカンダルのなかにはある。
0575オレはここに在り ◆hqLsjDR84w 垢版2013/11/19(火) 13:47:26.41ID:Tl1UHFf5
 
 だからこそ――おかしいのだ。

 いま現在手元にあるランサーの宝具は、常時発動している宝具である。
 対して、『あの宝具』は真名を解放しなくては発動しない宝具なのだ。
 だというのに、使い手である『彼女』はこの場にいない。
 真名解放とは、真名を知っていれば使えるという簡単なものではない。
 特に『あの宝具』のような代物は。

 であるならば、『彼女』がこの場にいるとでも言うのだろうか。
 いや、それもまた考えにくい。
 サーヴァントのクラスではない名で名簿に記されている可能性や、名簿に書かれていないだけの可能性自体はあるが、『彼女』のような参加者がいれば耳に入ってこないはずがない。
 もっと言ってしまえば、出会っているはずなのだ。
 得体の知れぬ殺し合いの首謀者が用意した名簿は信用していないが、イスカンダルはイスカンダル自身の縁を信じている。

 このような狭い会場に、もしもイスカンダルとギルガメッシュとともに『彼女』が詰め込まれていたのならば――引き合わぬはずがない。

 だとすれば、やはり『彼女』以外が使用したことになる。
 本来不可能にもかかわらず、何者かがやってのけたのだ。

(しかもこのタイミング――か)

 残り参加者は十四名。
 死者のペースからすれば、もう殺し合いも終わる寸前だと勘違いしかねない。
 だが、実際はそんなに簡単な話ではない。
 参加者が減れば出会う確率も減る。
 禁止エリアというシステム自体はあるが、会場が狭くなるペース自体は緩やかだ。
 他者の宝具を強引に使用するほどの魔術師ならば、そんなことはよくわかっているはずだ。

 にもかかわらず――真名を解放した。

 魔力を膨大に消費する対城宝具を。
 よりによって、周囲が暗い分だけ余計に目立つ深夜に。

 さて、どうするべきか――

(……む?)

 ここまで考えたところで、イスカンダルは背中に微かな違和感を覚えた。
 振り返ってみれば、美琴がうしろに跨ってぎゅうっと手を回していた。
 どうやら今後の方針を議論する必要も、首根っこを掴んでやる必要もないらしい。

「うむ……まあそうするわな、フツー」

 素っ気なく返したはずなのに僅かに頬が緩んでしまっているのに気付き、イスカンダルはすぐに前に向き直ると思い切り手綱を引いた。


 ◇ ◇ ◇
0576オレはここに在り ◆hqLsjDR84w 垢版2013/11/19(火) 13:48:31.26ID:Tl1UHFf5
 
 
 エリアE−5に、市街地であった名残はほとんどない。
 戦闘の跡がいくつもあるとはいえ、ほんの少し前まではたしかに市街地であったというのに、いまとなっては瓦礫の山だ。
 電柱は倒れ、電線は引き千切れ、街灯は砕け、街路樹は折れ、車は引っ繰り返り、屋根は剥がれ、壁は粉と化し、標識は歪にねじ曲がっている。
 病院などの強固に作られたと思しき建物はいくつか残っているが、それらも表面は焼け焦げてしまっており、ガラスに至っては割れていないものを探すほうが難しい。

 そんな一瞬にして荒廃した街の中心に、ミュウツーは悠然と立っている。
 エクスカリバーの真名解放によって消耗した体力は、すでに回復薬で取り戻した。
 一つしかない道具を使用してしまったが、断じて惜しいとは思っていない。
 戦闘中にあんなものを使う隙はそうそうないので、使えるときに使っただけだ。
 これまでのミュウツーならば、回復薬を保管して身体を休めただろう。
 しかし、いまとなってはその必要はない。

 ――すでに制限は解除されているのだから。

 両手両足がもぎ取られたり、腹に大穴が開く程度ならば、『自己再生』で十分だ。
 回復薬を消費したマイナスよりも、真名解放をすれば根こそぎに念動力を持っていかれることを知れたプラスのほうが大きい。
 あそこまで消耗してしまえば、自己再生でもすぐには追いつかない。
 多少時間をかければ問題ないだろうが、その多少は戦闘においては大きすぎる。

 それに――狙い通りの結果はもたらされた。
 見覚えのある二人の男女が巨大な黒馬を駆って、凄まじい勢いで接近してきているのだ。


『もはや、どこにもオレの居場所はない。
 故郷には帰れないし――過去には戻れない』


 二人と一匹にテレパシーを送り、黄金の剣を持たぬ左手を微かに上げる。

 直後、ミュウツーの周辺が一変した。
 雰囲気などという曖昧な感覚ではなく、見て分かるほど明らかに『変質』した。
 深夜の肌寒い空気が生温かいものとなり、先ほどまでほとんどなかった風と化す。
 その勢いは見る見る増していき、さらに吹く方向までもがことごとく異なっている。
 ほどなくして風は巨大な竜巻を形成し、周囲の瓦礫をも持ち上げてしまう。

 ――――『サイコウェーブ』。

 元来、その名は超能力で形成した波状光線の総称だ。
 いまミュウツーが行っているものとは、似ても似つかない。
 どちらかと言えば、飛行タイプの『風起こし』や、ドラゴンタイプの『竜巻』に近い。
 しかしながら威力が雲泥の差である上に、全体にミュウツーの強大な念動力を帯びている。

 だから、『呼ぶしか』なかった。

 たとえ、同じ名前をした他の技と大幅に異なっていようと。

 『サイコ(超能力)』の『ウェーブ(うねり)』という大枠に、無理やりにでも『当てはめるしか』なかった。 


『だから帰らないし――戻らない。
 これまでの二十四時間のように死を振り撒いて、生を終わらせるだけだ』


 無数の瓦礫を持ち上げる巨大な竜巻の中心で、ミュウツーはエクスカリバーを前に突き出す。
 剣を向けられた先では、巨馬がすでに瓦礫なき大地に蹄を埋め込んで、漆黒の体毛をなびかせながら強引に踏ん張っている。
 その上に跨る巨漢は、竜巻にうろたえる素振りすら見せずに涼しい顔で切り出す。
0577オレはここに在り ◆hqLsjDR84w 垢版2013/11/19(火) 13:49:16.50ID:Tl1UHFf5
 
「余は、貴様が何者なのか知らん。
 いかなる経緯でそのような結論を出したのかも知らん。
 知る気もないし、考えを改めるよう説教してやるほど物好きでもない。
 貴様がその剣の持ち主のように王ならば話は別だが、そうでないのならな。
 ただ単に……この征服王・イスカンダルと考え方が違って気に喰わないという、それだけよ」

 吹きすさぶ強風でさえ、その声を掻き消すことはままならない。
 何千人もの民衆が一堂に会していようと聞き取れるほど通る声で、巨漢・イスカンダルは高らかに宣言する。


「いかなる失態を犯そうと、王ならば帰還して民に武勇伝を語らねばなるまいッ!
 余は帰るし戻るッ! この下らぬ殺し合いは終わらせても、余の夢は終わらせぬッ!!」


 巨漢のまったく臆さぬ声に応えるように、イスカンダルの背中に必死で掴まっている少女もどうにかこうにか首を前に出す。
 暴風に煽られて髪が全部持ち上げられるわ、ナース服がばっさばっさなびいてるわでえらいヴィジュアルになりつつも、やっとこさミュウツーを睨みつける。
 風に負けないようにという気持ちの表れか、二回深呼吸してから大きく口を開いた。


「こちとら、終わりたいとか知ったこっちゃねーーーーーーーーーーーーーーーーーーーわよっ!!!」


 その後大きく開けた口に砂埃でも入ったのらしくやたらむせていたが、とにもかくにもミュウツーまで彼女の声は届いていた。



【E−5 /2日目 深夜】

【ミュウツー@ポケットモンスターSPECIAL】
[状態]:全快、首輪解除、制限解除
[装備]:約束された勝利の剣@Fate/Zero
[道具]:基本支給品×3<アルルゥ、仗助、ミュウツー>、どこでもドア@ドラえもん(残り1回)、
    第一の湖の鍵(E−)第二の湖の鍵(−5)
    不明支給品(0〜1)<仗助>、ひらりマント@ドラえもん
    トウカの刀@うたわれるもの、サカキのスピアー@ポケットモンスターSPECIAL、機殻剣『V−Sw(ヴィズィ)』@終わりのクロニクル
[思考・行動]
 1:戦って死ぬ。
【備考】
※3章で細胞の呪縛から解放され、カツラの元を離れた後です。
 念の会話能力を持ちますが、信用した相手やかなり敵意が深い相手にしか使いません。
※V−Swは本来出雲覚にしか扱えない仕様ですが、なんらかの処置により誰にでも使用可能になっています。
 使用できる形態は、第1形態と第2形態のみ。第2形態に変形した場合、変形できている時間には制限があり(具体的な時間は不明)、制限時間を過ぎると第1形態に戻り、
 理由に関わらず第1形態へ戻った場合、その後4時間の間変形させる事はできません。
 第3形態、第4形態への変形は制限によりできません。
※概念空間の存在を知りました。
※首輪解除による制限解除により、支給品に課せられた制限まで解除されるかは後続の書き手に任せます。


【御坂美琴@とある魔術の禁書目録】
[状態]:だいぶ再生した
    多大な喪失感、強い決意、≪体内:全て遠き理想郷(アヴァロン)@Fate/Zero≫
[装備]:薔薇の指輪@ローゼンメイデン、ナース服、コイン。
[道具]:基本支給品一式(食料一食、水1/5消費)、不明支給品0〜2個(未確認)、病院で調達した包帯や薬品類
    コイン入りの袋(装備中の物と合わせて残り88枚)、タイム虫めがね@ドラえもん、首輪(ジョルノ)
    真紅のローザミスティカ@ローゼンメイデン、蒼星石のローザミスティカ@ローゼンメイデン
    ARMS『騎士(ナイト)』@ARMS、真紅の左腕(損傷大)、不思議の国のアリス@現実他、いくつかの本、ナースキャップ
0580オレはここに在り ◆hqLsjDR84w 垢版2013/11/19(火) 13:50:25.61ID:Tl1UHFf5
[思考・状況]
 0:アイツと戦う
 0:そん次、ライダーの同盟者と合流。
 1:首輪を解体できそうな人物(第一候補はグラハム)を探す。
 2:一人でも多くの人を助ける、アイツの遣り残した事をやり遂げる。
 3:人は絶対に殺したくない。
 4:自分と関わり、死んでしまった者達への自責の念。
 5:上条当麻に対する感情への困惑。
 6:ライダーと行動する。
【備考】
 ※参加者が別世界の人間、及び参加時期が違う事を聞きました。
 ※会場がループしていると知りました。
 ※真紅と情報交換し、ローゼンメイデンの事などについて大雑把に聞きました。
 ※あすかと情報交換し、スクライドの世界観について大雑把に聞きました。
 ※地下空間の存在を知りました。地下にループ装置があるのではと推察しています。
 ※会場は『○』の形に成っているという仮説を立てています。
 ※全て遠き理想郷(アヴァロン)が体内にあることを知りません。
 ※ラッドの事を『原石』(天然の能力者)かも知れないと考えています。
 ※参加者についての情報は以下の通りです。
  協力できそうな人物:レナ、沙都子、梨花、ゾロ、チョッパー、アルルゥ、佐山、小鳥遊、グラハム、ウルフウッド
  直接出会った危険人物:ゼロ、ラズロ(リヴィオ)、メイド(ロベルタ)、宇宙人(ミュウツー)
  要注意人物:白仮面の男(ハクオロ)、ヴァッシュ、水銀燈(殺し合いに乗っているようであれば彼女を止める)
 ※首輪の機能について、以下のように考えています。
  確実に搭載されているだろう機能:「爆弾」「位置情報の発信機」「爆破信号の受信機」「脈拍の測定器」
  搭載されている可能性がある機能:「盗聴器」「翻訳機」
 ※首輪は何らかの力によって覆われていて、破魔の紅薔薇にはその力を打ち消す効果があると考えています。


【ライダー(征服王イスカンダル)@Fate/Zero】
[状態]:魔力消費(中)、腹部にダメージ(小)、全身に傷(小)および火傷(小)、腕に○印
[装備]:包帯、象剣ファンクフリード@ONE PIECE、破魔の紅薔薇@Fate/Zero、ブケファラス@Fate/Zero
[道具]:基本支給品一式×3、無毀なる湖光@Fate/Zero
    イリアス英語版、各作品世界の地図、ウシウシの実・野牛(モデル・バイソン)@ワンピース
    探知機(故障中)、エレンディラのスーツケース(残弾90%)@トライガン・マキシマム
[思考・状況]
 0:アイツと戦う。
 0:そん次、グラハム、沙都子との合流地点へ向かう。
 1:バトルロワイアルで自らの軍勢で優勝。
 2:首輪を外すための手段を模索する。
 3:北条沙都子を守る。
 4:サーヴァントの宝具を集めて戦力にする。
 5:有望な強者がいたら部下に勧誘する。
【備考】
 ※原作ギルガメッシュ戦後よりの参戦です。
 ※臣下を引きつれ優勝しギラーミンと戦い勝利しようと考えています。 本当にライダーと臣下達のみ残った場合ギラーミンがそれを認めるかは不明です。
 ※レナ・チョッパー・グラハムの力を見極め改めて臣下にしようとしています。
 ※『○』同盟の仲間の情報を聞きました。
 ※自分は既に受肉させられているのではと考えています。
 ※ブケファラス召喚には制限でいつもより魔力を消費します。
 ※北条沙都子もまずは同盟に勧誘して、見極めようとしています。
 ※現在の魔力残量では『王の軍勢』をあと一度しか発動できません
 ※別世界から呼ばれたということを信じました。
 ※会場のループを知りました。
 ※オープニングの映像資料を確認しました。
0583オレはここに在り ◆hqLsjDR84w 垢版2013/11/19(火) 13:51:21.06ID:Tl1UHFf5
 
 
 ◇ ◇ ◇


「ブラック兄さん!
 シルバー兄さんがいないんだッ! いったいどこに――!」

「死んだよ」

「な……!?」

「始末された、と言うべきだな。
 ギラーミンのいう『上のヤツら』に。
 我々に指示を下している殺し合いの首謀者に、な」

「ど、どうして――ッ!?」

「どうして? 本当に分からないのか?
 シルバーがルールを破ったから、以外にないだろう?
 参加者への干渉は一度きり、こんなわかりやすく簡単なルールも覚えられないのか?」

「違う!」

「なに?」

「どうして、兄さんはそんなに平然としていられるのかッ! それを訊いてるんだッ!」

「…………ふふ」

「なっ、なにを笑ってるんだよ!」

「さあね。
 模倣品のお前もまた、まだまだ『真理』を見極められんのだな、と思っただけさ」

「……ッ! 兄さん!!」

「――砂はすでに流れ始めているんだ、グリーン」





【キース・シルバー(クローン)@ARMS 死亡確認】
0585オレはここに在り ◆hqLsjDR84w 垢版2013/11/19(火) 13:51:59.44ID:Tl1UHFf5
 
 
 
【アイテム紹介】


【約束された勝利の剣@Fate/Zero】

 概念空間【第三の湖】に置いてあった。
 このロワに参加していないセイバー(アーサー王)の宝具。
 生前、アーサー王が湖の乙女から授かった聖剣で、見た感じは鍔がゴールドで柄がブルーの西洋剣。
 普通に斬っても相当強い上、真名を解放したら凄まじい勢いの魔力を放出する。わかりやすく言うと、ビームを出す。


【かいふくのくすり@ポケットモンスターSPECIAL】

 概念空間【第三の湖】にて、参加者No.58【ミュウツー】を確認したら出現した。
 体力が全快するだけでなく、状態異常までなかったことにするすっごい薬。
 通常2ターンかかるところを1ターンで済ませられるので、シナリオクリアではすごく頼りになる。



【備考】
※ミュウツーが参加者No.58なのは、五十音に並べたら五十八番目だからです。もしも数え間違っていたら指摘してください。
※ちなみにライダーとアーチャーは、イスカンダルとギルガメッシュとした場合の順番です。
※エリアE−5が『約束された勝利の剣』で崩壊した上、サイコウェーブで現在進行形でヤバいです。細かい破壊具合は後続の書き手に任せます。
0588携帯 ◆hqLsjDR84w 垢版2013/11/19(火) 13:57:28.77ID:7tgT8/wr
最後にさるがきました。

投下完了です。
誤字、脱字、その他ありましたら、指摘してください。
支援感謝!
0589創る名無しに見る名無し垢版2013/11/19(火) 14:13:07.89ID:IyR9N7hm
投下乙です!
ミュウツーが制限やら首輪やらと一緒に今までの柵まで解放して破壊者に成り切ったのか、これは強い
ただでさえエクスカリバー強いのにじこさいせいやサイコウェーブなどのチート能力まで取り戻したこいつを果たして二人は止められるのか!
っていうか美琴はまずブケファラスに慣れないとどうしようもないぞ!w
シルバーはミュウツーのために、そしてきっとミュウツーを通して自分自身のために命を投げ出したのか……クローンにもクローンの意地があった
0590創る名無しに見る名無し垢版2013/11/19(火) 16:15:55.05ID:cDm6PfSH
投下乙!
おおう、カツラさんはそういうことだったのか……
クローンであるシルバーといい、ここで繋がったな
そして繋がったといえばアルルゥ関係でライダーとミュウツーが出会ってしまったか
本気ミュウツーを果たして終わらせてやることができるのか
或いはそれさえも知ったこっちゃないと御坂が頑張るか
続き期待。 しかしブケファラスがなんか可愛く思えたw
0591創る名無しに見る名無し垢版2013/11/20(水) 00:20:45.78ID:7bl/as8L
投下乙です!
制限やしがらみから解き放たれたミュウツー。
もう戻れないとはいえ、悲しい選択過ぎる……
そしてその場所に向かうのはアルルゥのことで因縁の深いライダー組……
これは非常に続きが気になりますね!
こうなることを知って干渉を行ったであろうシルバーにも敬礼!
0592創る名無しに見る名無し垢版2013/12/08(日) 21:43:45.11ID:B9X+1ySF
投下乙!
湖の謎はそうきたかー!今まで出なかったからな
ミュウツーの覚悟は重いな……題名とすごくマッチしてていい
制限も解除されたし、覚悟も完了してるしこれはやばそうだ
主催陣営にも動きがあって先が気になる
0593創る名無しに見る名無し垢版2014/01/27(月) 21:41:26.78ID:s2Iwy06K
頑張れ、ライダー、美琴。
死ぬな、負けるな。
0600 ◆SqzC8ZECfY 垢版2014/08/04(月) 22:21:17.24ID:ggPLFTLR
予約すれのほうにも書きましたが推敲のためあと30分ほどいただけるとありがたいです
0605 ◆SqzC8ZECfY 垢版2014/08/04(月) 23:02:06.29ID:ggPLFTLR
「AAAALaLaLaLaLaLaLie――――ッ!!!!」


瓦礫に砂塵吹きすさぶ町並みに大英雄の咆哮が響き渡る。
そしてイスカンダルと御坂美琴を乗せてアスファルトを踏み砕く神馬ブケファラスの蹄音。
その進む先は竜巻の如き豪風、その中心。
待ち構える怪物の名はミュウツー。
台風の語源となった神話の怪物テュポーンのように、旋風巻き起こるそのど真ん中で立ちはだかる。
轟ッ――――と風がさらに力を増す。
人をやすやすと吹き飛ばすその威力は、神馬の突撃すら風のみで踏みとどまらせる力を持つ。

「ぬう!」
「おっさん、どいて!」

増幅された豪風に対して、踏みとどまるブケファラス。
手綱を引くイスカンダル。
そしてその背から顔を出す御坂美琴。

「何をする気――」
「ぶっぱなす!」

イスカンダルが問う間に、青白い火花を帯びたコインが、一直線に空間を貫いた。
美琴の代名詞たる超電磁砲だ。
一筋の閃光が道路上を渡って疾走、音速の壁を越えた衝撃波が空間を揺さぶる。
だが、それをミュウツーは風の壁で跳ね返す。

「んならあッ!」

あっさりと弾かれた。だがそれにショックを受けるほど、今の美琴のメンタルは弱くない。
今度はコインを三枚ほど取り出し、連射。
またも青白い火花とソニックブームの衝撃音がビル街に轟いた。


ガォガォガォン――!


直撃音。だがその音質に違和感。
三つの音が一つに重なった甲高い反射音。
そこから一瞬遅れてあちこちのビルが破砕、瓦礫をばらまく。
本体には当たっていない。
いったいどうすれば届くというのか。
だが――、

「弱まった!」
「よし、行けぇブケファラスよ!」

主たるイスカンダルの命令に神馬は大きく嘶き、そしてわずかの時間、弱まった逆風の中を再び駆けだす。
牽制に何度も超電磁砲を放ち、風の威力を殺しながら美琴がさけんだ。
0608 ◆SqzC8ZECfY 垢版2014/08/04(月) 23:03:43.92ID:ggPLFTLR
「正直、そろそろ電池切れだわ。一気にケリつけるわよ!」
「ふん、心得た!」

激戦続きで、美琴の能力の根源である電気はとっくの昔に枯渇しつつある。
それでも真紅から譲り受けた支給品である改造スタンガンからの補給で、どうにかここまでもたせる事ができた。
だがそれがいつまでもつか、と美琴は考える。相手は風だけで近寄ることすらままならない力を持っている。
しかも自分の必殺技であるはずの超電磁砲すらあっさり弾き返し、連射が牽制程度にしかならない。

(――あの白い外見といい、アイツを思い出すわね……ったく)

学園都市第一位。
因縁の相手。
妹達を一万人以上も虐殺した白髪の殺戮鬼。
怒りのままに、殺す気で撃った超電磁砲を跳ね返され、手も足も出ず。
一方通行――――、

「――それでも今のあたしは、止まってなんかいられないのよ!」

相手に手を出させないよう、間断なく三連射。
超電磁砲はもともと連射にむかず、三点バーストを繰り返すのはきついが、そこは多少の無理でどうにかこなす。
しかし電力の枯渇は間近だ。それだけはどうにもならない。

「頼んだわよ、おっさん」
「おうよ!」

敵との相対距離は30メートルほど。
ここが間合いだ。ついに届いた。
ブケファラスが飛ぶように駆け走る。
神馬は強烈な向かい風を切り裂き、一足飛びで白い怪物へ肉迫する。

「我が名はイスカンダル――!!」

大音声で名乗り、象剣ファンクフリードの一撃を大上段から振るう。
怪物がそれを真っ向から受け止める。
強烈な衝撃が、怪物の足元に位置するアスファルトに蜘蛛の巣状のひびを生んだ。
そのときイスカンダルは見た。
怪物がその手に持つ、風に包まれた不可視の刀身――黄金の聖剣。
紛れも無い、騎士王が伝説を刻んだ幾多の戦場で共にあった、約束された勝利の剣。
かつて真っ向勝負で自らの戦車を打ち砕いた、兵を、軍を、城すら打ち砕く、その名はエクスカリバー。

「貴様がなぜそれを持っているかは知らん! だが――!」

間髪入れず二撃目。
もう一方の手に持つ槍、破魔の紅薔薇。
0611 ◆SqzC8ZECfY 垢版2014/08/04(月) 23:06:10.15ID:ggPLFTLR
怪物はそれをいつの間にか手にした巨大なスプーンで受け止めた。

「やるのぉ!」
「……!」

膠着状態だ。
だが、イスカンダルは感じていた。
黄金の剣が青白く輝きを帯びた風を纏っていることに。
今までの旋風とは別の、殴りつけるような圧を帯びた風が生まれ始めていたことに。
そして結論を得た。
いかに竜巻でも美琴の超電磁砲を跳ね返すなど不可能だ。
跳ね返したものの正体は、これだ。
いや、竜巻と青い剣風の合わせ技。

『爆ぜろ、風王結界』
「ぐぉ……!!」

跳ね返される――と、イスカンダルは予感した。
ブケファラスの巨体が浮き上がり、足元定かでない感覚。
一瞬後に馬ごと吹き飛ばされるであろう、と。

「――!!」

だが、その一瞬に予測を打ち破ったのは美琴だった。
その手に構えるのは、いつのまにかイスカンダルの荷物から取り出した、無骨なスーツケース。
ケースの横っ腹に空いた大穴を怪物に向けている。
その大穴は砲口だ。
真紅の鉄杭――クリムゾンネイルを放つ砲口だ。
その凶悪な砲口が火花を散らす。
美琴の電磁力だ。
大砲の弾よりも巨大な鉄杭が、美琴の力でさらに加速するクリムゾンネイル・レールガン――!!

「いっけぇぇ――――――――ッッ!!!!」

その炸裂音は爆撃。
弾頭が音速を超えた衝撃波がさらに上乗せされる。
イスカンダルはとっさに美琴を抱きかかえ、ブケファラスにしがみつく。
感覚がおかしくなるほどの轟音を至近距離でくらい、神馬は大きくよろめいた。
だが主人をその背から振り落とすような真似はしない。
爆心地と呼べる場所から10メートルほど後ずさり、なんとか踏みとどまった。

「無茶なことをしおって……!」

イスカンダルは顔をしかめた。
砂塵が巻き起こり、視界を遮る。敵はどうなったのか確認できない。
0614 ◆SqzC8ZECfY 垢版2014/08/04(月) 23:07:48.82ID:ggPLFTLR
では味方はどうかというと――、

「ぎぃっ……!」
「脱臼か!? バカモノめ! だから無茶だと――」

撃った瞬間の強烈な反動で、美琴の手首の間接が外れていた。
魔人の武具たるクリムゾンネイルを、身体的には一般人の枠をでない美琴が撃てば、こうなるのは自明の理。
だがイスカンダルが驚愕するのはここからだった。
外れた関節が見る間に元どおりになっていく。

「まさか貴様も不死身とやらなのか……」
「いやぁ私もよく分かんないけどね……今、この状況なら丁度いいじゃない。ほら――」

美琴が顎で敵の方を指し示した。
見れば砂塵は晴れ、その向こうに敵の姿がある。
美琴の撃ち放った必殺の鉄杭は、怪物の肩部分を大きく抉り取っていた。
だがその傷もまるでフィルムを逆再生するように塞がってしまう。
常識を超えた再生能力をあちらも持っているということだ。

「どいつもこいつも……!」
「……ま、だから丁度いいってわけよ。これ、借りてくわね」

プケファラスから飛び降り、そして地に落ちていたクリムゾンネイルのスーツケースを担ぐように持ち上げ、敵へと一歩踏み出す美琴。
怪我をしても治らない人間は前衛で戦わなくてもいい。
自分ならばいくら傷ついても何とかなるだろう。
そう考えて、美琴はイスカンダルの前に出る。
だがもちろん、それを黙って良しとする征服王ではない。

「待てぃ!! 貴様が考えていることぐらい察しがつくが、余がそんなつまらん考えに乗ると思うか!!」
「……別にどうだっていいでしょ。あたしが勝手にやるのよ。だからアンタもそんなに戦いたければ好きに……」
「無論、そのつもりだ。だが暫し待て。余はどうしてもあやつに聞かねばならんことがある」

王の威厳を漂わせた重い声だった。
自分のみならず、誰かの命運を背負って放つ言葉だ。イスカンダル個人ではなく、アレクサンダー大王としての言葉。
その声を無視できずに立ち止まる美琴の横にブケファラスの轡を並べ、そして征服王は再生をほとんど終えた敵をまっすぐに睨む。

「我が名はマケドニアの征服王イスカンダルなり――!!」

相手はその名乗りに応えない。
ただ聖剣とスプーンを構え、そして再び風を生む。
その風に砂塵が舞う。
ブケファラスのたてがみが風に踊り、イスカンダルのマントがはためく。
その姿がまるで歴史映画のようだ、と美琴は思った。

「我が盟友、獣の耳をもつわらべを、アルルゥを殺したのは貴様に相違ないか!!」
「――ッ!!」

怪物がその言葉を聞いて、大きく揺れ動いたのを美琴は見た。
イスカンダルは巌のような迫力を保ったまま動じず、さらに問う。

「相違ないのか? 余はその答えをどうあっても聞かねばならん。どうなのだ!!」
『………………そのとおりだ』

先刻と同じ、聴覚を無視してテレパシーで頭に届く声。
怪物はやや俯き加減で、初めてイスカンダルの問いに応える。
0616 ◆SqzC8ZECfY 垢版2014/08/04(月) 23:09:17.79ID:ggPLFTLR
「ならば更に問う。なぜ一度は攫っておきながら殺した。その理由を語る気はあるか?」
『………………ない』

美琴が見上げれば、イスカンダルの表情には大きな険があった。
この偉丈夫は怒っている。その怒りがさらに声を重くする。

「理由を語り、その行動を悔いるならば事情を聞いてやらんでもない。だがそうではないと。そう答えればどうなるかも分かっているのだな」
『語る気はない。「オレが」そう決めたからだ。それは何があっても揺らがない』
「よかろう――」

イスカンダルが発した最後の言葉は死刑宣告だ。裁判は終わった。
あとはその剣を振りかざし、首を落とすだけ。そう決めた審判の一声だった。
こいつは王だ。たった独り、だがその独りの王だ。
王は王である限り、独りであっても、万民の王であっても、その意思を揺るがすことはできない。

「ならば名乗れ!! かつて盟約を交わしたアルルゥの死に報い、その魂を安んじるために、このイスカンダルが貴様を討ち果たす!
 アルルゥを殺した貴様は何者だ! 揺らがぬ決意があるのなら、それに懸けて堂々たる名乗りを上げてみよ! 名乗れ、怨敵よ!!」
『オレは…………オレの名は…………ミュウツーだ!!』

怪物が名乗った。
同時に旋風が巻き起こる。
僅かに青白い輝きを帯びた白銀の旋風が、再び竜巻となって、砂塵を、瓦礫を舞い上げる。

「うわぁ!」
「捕まれ美琴よ!」
「ご、ごめん! 助かった!」
「構わん。お主も盟友だからな」

吹き飛ばされかけた美琴を抱えてブケファラスの背に乗せてから、イスカンダルは確固たる意思をこめて巨大な竜巻を睨んだ。
相手は聖剣を携えた竜巻の怪物。災害の権化たる神話の竜そのもの。
稲妻の姫を抱き、王は大いなる勇気と、そして亡き友との誓いをもって竜退治に挑む。


「ミュウツーよ! 改めて名乗ろうぞ! 我が名は――――征服王イスカンダル!!!!」


◆◆◆
0621 ◆SqzC8ZECfY 垢版2014/08/04(月) 23:11:23.52ID:ggPLFTLR
青銀の暴風がビル街の瓦礫を巻き上げ、そして地に叩きつける。
ミュウツーの操る風は、もはや災害そのものだった。
その風に挑む二人と一頭は、時折ビルに身を隠しながら、常に移動し、反撃のチャンスを伺う。
イスカンダルがクリムゾンネイルの銃身を支え、美琴が加速させる鉄杭のレールガンは、敵の強力な暴風に阻まれて届かない。
もっと近い位置から撃たなくては、先刻のようにはいかない。
だが近づけない。
かといって、ぼやぼやしているとたちまち瓦礫の雨を叩きつけられる。
圧倒的な暴風のせいで機動力も十全とはいかない。

「このままでは埒があかんぞ、美琴よ!」
「わかってる!」

この瓦礫の雨と竜巻を超えて、再びミュウツーへと近づかなければならない。
策はある。だが電力が足りない。
充電用のスタンガンのスイッチを押す。
しかし、既に十分な電力は残っていなかった。
美琴は舌打ちして、スタンガンをアスファルトに投げ捨てる。

「作戦に必要な電力がもうないのよ。チャンスは一度、あってもギリギリ二度が限界だわ」
「博打だな」
「ええ」
「だが、この状況では是非もなかろう」

それが一かバチかの作戦でも、できないならばともかく、できるならばやるしかない。
そのチャンスを、この手でモノにするしかないのだ。

「そうよね。じゃあ、いくわよ」
「おう。美琴よ、思うように埒を開けよ」

合図とともに二人を乗せたブケファラスが駆け出した。
たちまち突風と瓦礫の雨が降り注ぐ。
まともに眼すら開けていられない暴風域の只中で、美琴はイスカンダルの背から、風の向こうのミュウツーを見る。
竜巻の壁がまるで空間を歪めている様で、はっきりと敵の姿を可視化できないほどだ。
この嵐を超えていかに近づくか。

「いくわよ!」
「おお!」

イスカンダルがクリムゾンネイルを構える。
彼の膂力ならば美琴のように脱臼することはないだろう。美琴の仕事は砲身に手を沿え、電磁力で加速させてやるだけでいい。

「1、2、3、二発発射!」

美琴の合図とともにイスカンダルが引き金を引く。
二発の鉄杭が火花と放電に伴うオゾン臭を撒き散らして突貫する。
それは竜巻の中心に届くかに思えた。
0624 ◆SqzC8ZECfY 垢版2014/08/04(月) 23:12:55.99ID:ggPLFTLR
だが。


――轟!


竜巻の中心が爆ぜた。
そして鉄杭が跳ね飛ばされて一発は近くのビル壁へ、もう一発はアスファルトへ突き刺さる。
ミュウツーの反撃。
路上に止めてあった乗用車が、まるで冗談のように宙を舞い、数台まとめて降り注ぐ。
だがその間にブケファラスは移動し、すでに次弾の発射準備が完了していた。

「1、2、3、もっかい二発発射!」

またも電磁加速されたクリムゾンネイルが二発。
またも竜巻の爆発。
またも赤い鉄杭がビル壁や地面に突き刺さる。

「いくわよ、ありったけ――!!」

崩れかけたビルの屋上に飛び移り、そこから残弾を全てミュウツーへ向けて撃ち下ろす。
文字通りの鉄杭の雨。
美琴の超電磁砲の連射限界は、確認してある限りは八発。
その八発を一気にぶちかました。
それを敵は爆発的な暴風で押し返す。
二つがぶつかり合う音は、風の爆烈音。
うねるように、または跳ねるように、鉄杭は風に跳ね返され、周囲に突き刺さる。

一発目――逸れて地面へ。

二発目――またも逸れて地面へ。

三発目――跳ね返されてビル壁に突き刺さる。

四発目――逸れて地面へ。

五発目――跳ね返されてそのまま飛んでいった。

六発目――逸れて地面へ。

七発目――わずかに逸れてそのまま敵の背後へ。

そして――八連射のラスト一発がついに壁を貫く。

「やった……!」

美琴は声を絞り出し、小さくガッツポーズ。
正真正銘の限界までの連射で、美琴の疲労はいよいよ極限に達しようとしている。
0627 ◆SqzC8ZECfY 垢版2014/08/04(月) 23:14:17.00ID:ggPLFTLR
そしてイスカンダルも美琴の様子を見て、それを察していた。
ここが勝機。絶対に逃してはならない。

「よくやった! あとは任せよ、美琴! 良き臣民の働きには応えてやらねばな!」
「ちょ、誰が臣民……!」
「AAAALaLaLaLaLaLaLie――――ッ!!!!」

美琴を置いて、五階建てビルの屋上から、イスカンダルは神馬の手綱を握りしめ、一切の躊躇を見せることなく竜巻のど真ん中に飛び込んだ。
暴風のガードは相当に弱まっている。
その証拠に、先ほどまでは見えなかった敵の姿がはっきりと確認できる。
クリムゾンネイルに右肩のあたりを抉られ、だがたちどころに再生しつつあるミュウツーの姿だ。
動かぬ右手の代わりに左手でスプーンを前に突き出し、迎撃の構え。
そんな不完全な状態で征服王の渾身の一撃を防げるものではない。

「どおりゃっ!」
『――ッ!』

ファンクフリードの一撃でミュウツーの体勢が大きく揺らいだ。
イスカンダルはそこを狙って容赦なく第二撃を打ち込む。
――が、そこでミュウツーの背中から、予測の外の斬撃が襲う。

「なんとぉッ!」

間一髪、破魔の紅薔薇で受けた。
それは尻尾で掴んだエクスカリバーだった。
千切れかけた右手から尻尾へと受け渡し、背中ごしに一撃。
かろうじて肩口を掠めただけで凌いだイスカンダルは獰猛な笑みを浮かべた。

「やるのォ、貴様! 強いではないか!」
『……!』

黄金の剣と紅の槍の鍔迫り合い。
純粋な力ではイスカンダルが勝るようだ。
徐々に押し込んでいく。
だが、ミュウツーには風の加護がある。

『爆ぜろ、風王――なに!?』

エクスカリバーの爆風で吹き飛ばそうと真名を開放しかけ、そこでミュウツーの表情が歪む。
それを見てイスカンダルがニヤリと笑った。
爆風が発生しない。
イスカンダルがそれを封じたのだ。

「ランサーとセイバーの戦いを見ておいたのが、こんな所で役立つとは僥倖、僥倖!」

鍔迫り合いの体勢のまま、さらにぐいぐいと押し込む。
破魔の紅薔薇の能力は魔力封じ。
この力で、聖剣が発生させる魔力の風を抑え込んでいるのだ。
0630 ◆SqzC8ZECfY 垢版2014/08/04(月) 23:16:06.91ID:ggPLFTLR
かつて第四次聖杯戦争で、本来の槍の持ち主であるディルムッドが、まさにこのエクスカリバーの風を封じたのをイスカンダルは見ていた。
それがここで生きるとは――――イスカンダルは戦いの流れがこちらに来ていると踏む。
ここで押し込む。そして押し切る。
距離を取られては、また竜巻の壁に阻まれる。
道を切り開いてくれた美琴はもう限界だ。故に次はない。
ここで絶対に逃がしてはならない。
とことんまで押し込み、このまま甲冑組み打ちの間合いで叩き伏せるのみ――

「ぬぅん!」
「ガブッ……!」

イスカンダルは鍔迫り合いから、槍を握ったままの左手を捻り、そのまま敵の顔面に叩き込んだ。
テレパシーではなく、顎を殴られて物理的に発した悲鳴を、ミュウツーが上げる。
さらに右手のファンクフリードを振り上げ、そのまま押しつぶす構えだ。
だがそこで尻尾に足をとられる。

「むう!」
『ガアッ!』

そのまま馬から引きずり下ろされる。
敵は主人のいないブケファラスを切り捨てようと聖剣を振りかざす。

「下がれ、ブケファラス!」

イスカンダルの命令によって、神馬は霊体化して姿を消した。
間一髪、何もなくなった空間を黄金の剣閃が切り裂いたのはその直後。
眼前の獲物を殺し損ねたミュウツーの眼がギロリと、地を這うイスカンダルに向く。
砂塵まみれの偉丈夫は、自分を地に伏せたその尻尾を決して離さぬよう握り締めながら立ち上がった。

「やる。やるな、貴様。流石に強いわい」
『……』

至近距離。
野獣のような笑みの征服王。
一方、全く表情を変えず、視線で純粋に殺意のみを叩きつける怪物の眼光。

「そこまでの強さがありながら、なぜわざわざアルルゥを殺めたのだ」
『……』
「争いを望まぬ子だった。か弱い童だった。貴様ほどの漢が殺さなくてはならん理由はなかったはずだ」
『……』

イスカンダルの瞳は笑っていない。
怒りと悲しみをこめた眼で、まっすぐにミュウツーを見極めようとしている。

「本当に貴様が殺したのか。今、余の心中には疑問が渦巻いている。貴様があの童を殺すような奸物だとはどうにも考えられん」
『オレだ。オレが殺した。貴様がどう思っていようが、それが真実だ』
「なにか理由があるのか。あの時、殺そうと思えば攫うことなどせず殺せた。なぜ攫った。なぜ殺した。真実は何だ」
『……』
0633 ◆SqzC8ZECfY 垢版2014/08/04(月) 23:18:24.15ID:ggPLFTLR
命のやりとりの中で、王の眼は戦いとは別のものを見ていた。
ミュウツーがアルルゥを殺したという場面を誰かが見ていたわけではない。
ただミュウツーがそうだと言った。それだけだ。

『オレが、アルルゥを殺すようには思えないだと? ……なぜそう思う。今、この瞬間にも、オレは貴様を殺そうと考えているぞ?』
「余には、貴様が殺戮を楽しむような輩には見えん。ならば戦いには理由があるはずだ。戦いにもならぬ童を殺すのならば、なおのこと」
『それを聞いてどうするというのだ。聞いたところでどうにもなるまい!』
「あるのだな、理由が」

イスカンダルは握っていた尻尾を離す。
全身に纏っていた殺気が霧消する。

「もし、貴様が本当に殺したとしてもだ。理由があってやむなく殺したのであれば、貴様を倒したところでアルルゥの弔いにはならん」
『貴様……!』

殺気をこめて睨むミュウツーに、征服王は雄大にひとつ頷き、そしてその大きな手を差し出した。

「貴様の理由とやらを話せ。それを明らかにせねば、余が戦う理由はないからのう」
『そんなことは関係ない! アルルゥをどんな理由で殺そうと、オレが今、貴様らを皆殺しにすることとは関係ないんだッ!!!!』


◆◆◆
0635 ◆SqzC8ZECfY 垢版2014/08/04(月) 23:19:26.91ID:ggPLFTLR
.

――ああ。


オレに理由なんてないんだ。


オレがミュウツーとして生まれたことにあるのは他人の都合、他人の理由だけだ。


自分の理由なんてない。


ギラーミンどもの都合で踊らされただけだ。


流されて、考えず、流されて、考えまいとして。


そのツケを今更オレに払えなんて言うのか。


レッドもイエローもいなくなった。


もうオレの居場所なんてどこにもない。


それでもオレにツケを払えっていうのか。


生まれようとして生まれたわけじゃない。


戦いたくて戦ったわけじゃない。


流されたくて流されたわけじゃない。


殺したくて殺したわけじゃない。


こんなところにいたくて、オレは生きてるわけじゃない。


だから、せめて、オレはオレの終わりを自分で決める。


それだけは、それだけは、オレから奪わないでくれ。


――――すまない、アルルゥ。


◆◆◆
0638 ◆SqzC8ZECfY 垢版2014/08/04(月) 23:21:01.95ID:ggPLFTLR
.

『――オレは、』
「む?」

いくばくかの沈黙があった。
征服王は怪物の言葉をただ、待った。
ビルの上からそれを見下ろす満身創痍の美琴も、固唾を呑んで見守った。
そしてついに解き放たれた声。


『オレはいでんしポケモン、ミュウツー』


『戦うために作り上げられた戦闘生命体』


『改造されて、兵器として生まれてきたオレは生物ですらない』


『だから戦うために理由なんかいらない』


『殺すために理由なんかいらない』


『戦う』


『殺す』


『しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね』


この時点でイスカンダルも、美琴も理解していた。
ミュウツーは怪物になったのだと。
怪物は人と言葉を交わさない。
人の意を解さない。
それほどまでの殺意。
それほどまでの狂気。
追い詰められた獣。


『しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね
 しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね
 しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね
 しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね
 しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね
 しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね しね
 目の前にいる、モノ、全て、しんでしまえ――――――――!!!!』


◆◆◆
0642 ◆SqzC8ZECfY 垢版2014/08/04(月) 23:23:05.84ID:ggPLFTLR
.

出会ったときの最初の一声は――――、


「ミャー」


…………だった。


「あんた、私のクローンなわけ?」
「はい」


気味の悪い都市伝説。
超能力者量産計画。
学園都市ならば、そんな馬鹿げた科学技術が実現できないとはいいきれない。
いつか自分と同じ遺伝子を持つクローンが目の前に現れるんじゃないか。
下らない噂と一蹴しながら、心のどこかでそういうことを考えて怯えていた。
でも、実物が現れてみると、こんなあっさりな感じで――――、

「そこの双子、姉妹ゲンカはよくねーぞ」
「コイツは妹じゃないっ!」
「オイオイ冗談でもそんなこと言うもんじゃないぞ」

アイスクリーム屋のおじさんに姉妹と間違われて、アイスをもらったり。

「オイッ」
「何のことでしょう? と、ミサカはチョコミントの爽やかな余韻を楽しみつつシラを切ります」

そのアイスを盗み食いされたり。

「うん。鏡で見るより分かりやすいし客観視できるわね。こうして見ると結構アリって気も……」
「いやいや、ねーだろ。とミサカは、ミサカの素体のセンスに愕然とします」
「なっ何おう!」

缶バッジ取り合って。




「それにコレは――――お姉様に頂いた、初めてのプレゼントですから」




これじゃまるで本当の姉妹みたいじゃない。
0644 ◆SqzC8ZECfY 垢版2014/08/04(月) 23:24:23.95ID:ggPLFTLR
『「妹達」を運用した絶対能力者への進化法』
『二万体の「妹達」との戦闘シナリオをもって絶対能力者への進化を達成する』
『第9982次実験』
『開始時刻』
『八月十五日』
『21:00』


悪ふざけにも程があるわ。
私を殺すとか、代わりにクローンを使うとか、レベル6進化計画とか――――、




「――――さようなら、お姉様」




別れ際の言葉が頭から消えなくて、杞憂であって欲しいと願いながら追いかけた。
人気のない、寂れたビル街の狭間に存在する裏路地。
橋を降りてコンテナ置き場へ。
そこで見たものは――――、


「何で……何でこんな計画に加担したの?」
「アァ? 何だイキナリ」
「答えて! それだけの力があって……無理やりやらされてるわけじゃないんでしょ!
 こんなイカレた計画に協力する理由は何!? あの子に恨みでもあったわけ?」
「……理由? 理由ねェ。そりゃあ――」


イカレた最強の能力者。
不吉な気配を漂わせるアルビノの白髪。
顔面をばっくり裂いたような狂った笑み。
学園都市第一位。
そして――――、


「何よ……それ……絶対的な力? ムテキ? そんな……そんな事でッ……アンタはッ! そんなッ!」


まるで子供が無邪気に虫の足をもぐように。
そして飽きたら無造作に捨てるように。
付け根から引きちぎられていた。
コンテナ置き場の砂利の上にどうでもいいみたいに捨てられていた。
血塗れの。
あの子の。
脚。




「そんなモノのために、あの子を殺したのか――――ッ!!!!」




◆◆◆
0648創る名無しに見る名無し垢版2014/08/04(月) 23:27:14.20ID:zRJb46vY
 
0649創る名無しに見る名無し垢版2014/08/04(月) 23:27:34.62ID:1AjUFURs
 
0650 ◆SqzC8ZECfY 垢版2014/08/04(月) 23:28:28.45ID:ggPLFTLR
.

…………アンタ達……何なの……?


おかしいよ……何でこんな計画に付き合ってるの?


殺されちゃうのよ?


こんなの……ワケわかんない…………


――――何でよ!!


生きてるんでしょ!?


命があるんでしょ!?


アンタ達にも……あの子にもッ!!




「ミサカは計画のために作られた模造品です」




「作り物の身体に借り物の心、単価にして十八万円の――――」




「実験動物ですから」




◆◆◆
0652 ◆SqzC8ZECfY 垢版2014/08/04(月) 23:29:20.60ID:ggPLFTLR
【御坂美琴@とある魔術の禁書目録】
[状態]:だいぶ再生した
    多大な喪失感、大きな動揺、≪体内:全て遠き理想郷(アヴァロン)@Fate/Zero≫
[装備]:薔薇の指輪@ローゼンメイデン、ナース服、コイン。
[道具]:基本支給品一式(食料一食、水1/5消費)、病院で調達した包帯や薬品類
    コイン入りの袋(装備中の物と合わせて残り59枚)、タイム虫めがね@ドラえもん、首輪(ジョルノ)
    真紅のローザミスティカ@ローゼンメイデン、蒼星石のローザミスティカ@ローゼンメイデン
    ARMS『騎士(ナイト)』@ARMS、真紅の左腕(損傷大)、不思議の国のアリス@現実他、いくつかの本、ナースキャップ
[思考・状況]
 0:アイツと戦う
 0:そん次、ライダーの同盟者と合流。
 1:首輪を解体できそうな人物(第一候補はグラハム)を探す。
 2:一人でも多くの人を助ける、アイツの遣り残した事をやり遂げる。
 3:人は絶対に殺したくない。
 4:自分と関わり、死んでしまった者達への自責の念。
 5:上条当麻に対する感情への困惑。
 6:ライダーと行動する。
【備考】
 ※参加者が別世界の人間、及び参加時期が違う事を聞きました。
 ※会場がループしていると知りました。
 ※真紅と情報交換し、ローゼンメイデンの事などについて大雑把に聞きました。
 ※あすかと情報交換し、スクライドの世界観について大雑把に聞きました。
 ※地下空間の存在を知りました。地下にループ装置があるのではと推察しています。
 ※会場は『○』の形に成っているという仮説を立てています。
 ※全て遠き理想郷(アヴァロン)が体内にあることを知りません。
 ※ラッドの事を『原石』(天然の能力者)かも知れないと考えています。
 ※参加者についての情報は以下の通りです。
  協力できそうな人物:レナ、沙都子、梨花、ゾロ、チョッパー、アルルゥ、佐山、小鳥遊、グラハム、ウルフウッド
  直接出会った危険人物:ゼロ、ラズロ(リヴィオ)、メイド(ロベルタ)、宇宙人(ミュウツー)
  要注意人物:白仮面の男(ハクオロ)、ヴァッシュ、水銀燈(殺し合いに乗っているようであれば彼女を止める)
 ※首輪の機能について、以下のように考えています。
  確実に搭載されているだろう機能:「爆弾」「位置情報の発信機」「爆破信号の受信機」「脈拍の測定器」
  搭載されている可能性がある機能:「盗聴器」「翻訳機」
 ※首輪は何らかの力によって覆われていて、破魔の紅薔薇にはその力を打ち消す効果があると考えています。
0653創る名無しに見る名無し垢版2014/08/04(月) 23:29:42.54ID:zRJb46vY
  
0654 ◆SqzC8ZECfY 垢版2014/08/04(月) 23:30:12.66ID:ggPLFTLR
◆◆◆




――――オマエはこれより戦いの神になる……




――――オマエは最も多くの死を振りまき……




――――ついには屍の山の頂上で息絶える……




――――地獄からの使者となろう!!!!




◆◆◆
0657 ◆SqzC8ZECfY 垢版2014/08/04(月) 23:31:17.01ID:ggPLFTLR
【E−5 /2日目 黎明】

【ミュウツー@ポケットモンスターSPECIAL】
[状態]:全快、首輪解除、制限解除
[装備]:約束された勝利の剣@Fate/Zero
[道具]:基本支給品×3<アルルゥ、仗助、ミュウツー>、どこでもドア@ドラえもん(残り1回)、
    第一の湖の鍵(E−)第二の湖の鍵(−5)
    不明支給品(0〜1)<仗助>、ひらりマント@ドラえもん
    トウカの刀@うたわれるもの、サカキのスピアー@ポケットモンスターSPECIAL、機殻剣『V−Sw(ヴィズィ)』@終わりのクロニクル
[思考・行動]
 1:戦って死ぬ。不退転。
【備考】
※3章で細胞の呪縛から解放され、カツラの元を離れた後です。
 念の会話能力を持ちますが、信用した相手やかなり敵意が深い相手にしか使いません。
※V−Swは本来出雲覚にしか扱えない仕様ですが、なんらかの処置により誰にでも使用可能になっています。
 使用できる形態は、第1形態と第2形態のみ。第2形態に変形した場合、変形できている時間には制限があり(具体的な時間は不明)、制限時間を過ぎると第1形態に戻り、
 理由に関わらず第1形態へ戻った場合、その後4時間の間変形させる事はできません。
 第3形態、第4形態への変形は制限によりできません。
※概念空間の存在を知りました。
※首輪解除による制限解除により、支給品に課せられた制限まで解除されるかは後続の書き手に任せます。



【ライダー(征服王イスカンダル)@Fate/Zero】
[状態]:魔力消費(中)、腹部にダメージ(小)、全身に傷(小)および火傷(小)、腕に○印
[装備]:包帯、象剣ファンクフリード@ONE PIECE、破魔の紅薔薇@Fate/Zero、
    エレンディラのスーツケース(残弾30%)@トライガン・マキシマム
[道具]:基本支給品一式×3、無毀なる湖光@Fate/Zero
    イリアス英語版、各作品世界の地図、ウシウシの実・野牛(モデル・バイソン)@ワンピース
    探知機(故障中)、
[思考・状況]
 0:ミュウツーと戦う。
 0:そん次、グラハム、沙都子との合流地点へ向かう。
 1:バトルロワイアルで自らの軍勢で優勝。
 2:首輪を外すための手段を模索する。
 3:北条沙都子を守る。
 4:サーヴァントの宝具を集めて戦力にする。
 5:有望な強者がいたら部下に勧誘する。
【備考】
 ※原作ギルガメッシュ戦後よりの参戦です。
 ※臣下を引きつれ優勝しギラーミンと戦い勝利しようと考えています。 本当にライダーと臣下達のみ残った場合ギラーミンがそれを認めるかは不明です。
 ※レナ・チョッパー・グラハムの力を見極め改めて臣下にしようとしています。
 ※『○』同盟の仲間の情報を聞きました。
 ※自分は既に受肉させられているのではと考えています。
 ※ブケファラス召喚には制限でいつもより魔力を消費します。
 ※北条沙都子もまずは同盟に勧誘して、見極めようとしています。
 ※現在の魔力残量では『王の軍勢』をあと一度しか発動できません
 ※別世界から呼ばれたということを信じました。
 ※会場のループを知りました。
 ※オープニングの映像資料を確認しました


【改造スタンガン@現実】
真紅から美琴に渡った。リミッターをはずしており、生命に危険なレベルまで電力を上げることができる。
電池切れでE-5に捨てられた。
0658創る名無しに見る名無し垢版2014/08/04(月) 23:32:11.64ID:zRJb46vY
    
0659 ◆SqzC8ZECfY 垢版2014/08/04(月) 23:32:19.53ID:ggPLFTLR
投下終了です。お待たせしてすいませんでした。

タイトルは「ポケットモンスター ゴールデンソード&シルバーストーム」です。
0660創る名無しに見る名無し垢版2014/08/04(月) 23:33:56.21ID:zRJb46vY
投下乙!!
おもしれえええええええええええ!
続き読みてえええええええええええええ!
久々に動いたのはわかってるし、まず続きが来たことを喜ぶべきなのもわかってるけど、なにより続き読みてえええええええ!!
ミュウツーと御坂がいちいちグサグサ来るし、そんななか征服王はひたすら征服王だし、おもしれー!
0661創る名無しに見る名無し垢版2014/08/04(月) 23:40:52.98ID:tGFbGV7N
投下乙!
ミュウツーのいでんしポケモン設定をここでそう活かすかー!クローン妹がいる美琴の心境やいかに!
イスカンダルは相変わらず豪快で、なおかつ他者を見る目があるなあ
しかし、流石に獣と化したミュウツーに勧誘は無理ぽ。追い詰められた獣がどれだけ暴れるのか楽しみで仕方ない
0662創る名無しに見る名無し垢版2014/08/09(土) 19:09:05.60ID:lT7t5vvk
投下乙! 面白いぞー!
美琴といでんしポケモンの邂逅は何を生み出すのか!?
っていうかもうポケモンじゃなく普通のモンスターだよ!

作者に多大な敬意と感謝をこめて、改めて投下乙!
0663創る名無しに見る名無し垢版2014/08/10(日) 01:16:48.09ID:Sminryj/
風王結界ってセイバー個人の魔術であってエクスカリバーとは全く関係ないんじゃなかったっけ
0664創る名無しに見る名無し垢版2014/08/10(日) 21:27:42.11ID:VmSCIy+L
投下乙!
ここでおしまいとかまじかー!
クリムゾンネイル・レールガンが地味に好き
タイトルのセンスもいいなぁ
0665 ◆SqzC8ZECfY 垢版2014/08/10(日) 21:53:12.83ID:mznzTd1D
>>663
ググってみても諸説あってハッキリしないのですが、風王結界の由来が、マーリンによる透明になる魔法らしいことからエクスカリバー由来ではなさそうですね。
直ちに修正にかかります
0666 ◆UcWYlNNFZY 垢版2014/08/12(火) 00:14:09.75ID:45RRnpNU
お待たせしました。投下始めます
0668護りえなかった事と救い得なかった事と ◆UcWYlNNFZY 垢版2014/08/12(火) 00:17:07.56ID:45RRnpNU
「そんなものか」

放送を聴いたリヴィオが呟いた言葉はそれだけだった。
ミュウツーと分かれて、廃坑にある小屋で放送を聞いていた。
けれど、何も特別な感想を持つこともない。
頭がすげ変わっただけのことだ。
それだけで殺し合いに大きな影響はない。
盤面の更に上にいる者が変わっただけで、駒は変わることはないのだから。
取り除かれた駒の数も順当に落ちているとしかいえないだろう。
同盟者の一人が死んだ所で、リヴィオそのものはやることは変わらない。
同盟は殆ど消滅したに近いが、ミュウツーがまだ居る。
彼を意識しながら、戦えばいいだけだ。
為すべき事を為せばいい。

それ、即ち、生きる事に繋がる。

その為には、いや、リヴィオがリヴィオ・ザ・ダブルファングである為には、やるべきことがある。
人間台風、ヴァッシュ・ザ・スタンピードの抹殺。
心のそこから決めた、ひとつの思い。
何もかも護ろうとして、何かも諦めていない。
あの真紅の男。
あぁ、そうだ。何もかも手放さないで、理想を語る人間。
なのに、彼は、もう既に取りこぼしているではないか。
彼自身の盟友を護れてないではないか。

「護りたいもの、大切な友達を護れてない癖に、貴方は下らない理想を言ってるのでしょうね」

ニコラス・D・ウルフウッドは、ヴァッシュにとっても唯一無二の盟友ではなかったのだろうか。
自分の使命すらも放り投げて、助けにいくぐらいの。
それなのに、彼は護りきれなかった。
ウルフウッドの話を聞く限りだと、この殺し合いでも出会えてすらなかっただろう。
何が、友達だ。
そんな人すら、護れないのに。


「あぁ……なんだ、そういうことか」

あの男が護れないから、ウルフウッドもまた護れなかったのか。
リヴィオは納得したように、冷めた言葉を口にする。
護るというのは、どんなに大変なことで、そしてどんなに身勝手で、どんなに重いことだろう。
そんなのに縛られて、あの人は逝った。
不死身の人間の理想に縛られて、護れずに逝った。
何かを切り捨てられずに、逝った。
あこがれていた男は、きっとそんな「護る」事に囚われて逝ったのか。
0669護りえなかった事と救い得なかった事と ◆UcWYlNNFZY 垢版2014/08/12(火) 00:18:11.89ID:45RRnpNU
ヴァッシュは、あの男は、護ろうとしていた。
世界の人を、大切な仲間を、身内を、全部、全部。
護りきれてないのに。
護れていないのに。
大切な友達すら失わせて。


ギリっと、リヴィオは歯をかみ締めた。


誰かを護ること。


そんなこと、出来る訳がないだろう。
そんなの、この世界では、無理だ。
いつだって、生き残るに必死で。
いつだって、死ぬ事に怯えて。
他人を護ることが、自分の救いになるなんてこと。


絶対に、あり得てはいけない。



救いになるというなら。




なぜ、ニコラス・D・ウルフウッドは死んだ?


あんな、疲れた表情で、なぜ逝った?



不相応な生き方をして、大切な少女を護れず、何故、逝った?





「……そんなものは――――救いになりえないんですよ。ヴァッシュ・ザ・スタンピード」



だから、そんなものは、救いにならない。
誰も殺さずに護るなんてできやしない。
きっと、このように死んでしまう。
貴方がそんなことをいえるのは、死なないからだ。
絶対的な力を持ってるからだ。
0670護りえなかった事と救い得なかった事と ◆UcWYlNNFZY 垢版2014/08/12(火) 00:19:26.17ID:45RRnpNU
そんなモノが。


今を生きるので、精一杯な人間を惑わすな。




あぁ。


だから、殺そう。



護るという言葉すら、もう聞きたくない。



この世界に、愛も平和もない。



そんなものが救いになるなら…………






ウルフウッドは死ななかったのだから。




そんなものが救いとなるというなら。





ヴァッシュ・ザ・スタンピードは、ニコラス・D・ウルフウッドを護れてないといけないだろう?




護れてないじゃないか。
0671護りえなかった事と救い得なかった事と ◆UcWYlNNFZY 垢版2014/08/12(火) 00:19:58.84ID:45RRnpNU
救えてないじゃないか。



大切な友達すら。




「だから、俺は…………」





ふと、目に入ったものがあった。
小屋の壁に掛かっていた黒い外套と、黒い帽子だった。
今の自分の服が余りにも血まみれだった事に気付き、それを羽織る事にする。
血塗れで感付かれても面倒だから。
休憩は終わりだと、リヴィオは小屋をでて、思い走り出す。






「――貴方を殺すんです、大切な友達すら、護れなかった貴方を、ね」




護りえなかったもの。
それが、ウルフウッドを狂わし、死に至らしめたというなら。


ヴァッシュ・ザ・スタンピードはきっと、ニコラス・D・ウルフウッドを殺したのだろう。


だというなら、自分は、俺は、僕は、




「――――誰が、この力を何かを護る為につかってやるものか」




もう誰かを護る事は、絶対にないのだろう。








◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
0672護りえなかった事と救い得なかった事と ◆UcWYlNNFZY 垢版2014/08/12(火) 00:21:19.06ID:45RRnpNU
あの時、護った事を思い出した。
高いところから落ちそうになった少女を護った、記憶。
誰かに頼りにされた、唯一の記憶。
けれど、それは、もう遠い昔で。




きっと、もう、それは、二度と思い出すことはないだろう。







今、偶然にも誰かを護る決意をしたリヴィオと同じ姿をした、リヴィオが居る。



けれど、それは近いようで、絶対的に遠いモノ。



ニコラス・D・ウルフウッドが救い。
ヴァッシュ・ザ・スタンピードが頼りにした男。



そんなものには、何処にも無く、遠いモノで。
何もかも正反対になってしまったモノ。




そんな、モノが、そこには在った。
0673護りえなかった事と救い得なかった事と ◆UcWYlNNFZY 垢版2014/08/12(火) 00:24:01.08ID:45RRnpNU
【H−3 南部/2日目 深夜】
【リヴィオ・ザ・ダブルファング@トライガン・マキシマム】
【状態】:ラズロ帰還、両手両足にダメージ、筋肉断裂、全身にダメージ(大)、背中のロボットアーム故障
【装備】:黒衣の外套、パ二ッシャー@トライガン・マキシマム(弾丸数35% ロケットランチャーの弾丸数1/2) ラズロのパ二ッシャー(弾丸数35% ロケットランチャーの弾丸数0/2)@トライガン・マキシマム
【道具】:支給品一式×9(食料一食、水1/2消費)、スチェッキン・フル・オートマチック・ピストル(残弾20発)@BLACK LAGOON、
     M94FAカスタム・ソードカトラス×2@BLACK LAGOON、.45口径弾×19、.45口径エンジェルアーム弾頭弾×2@トライガン・マキシマム
     ココ・ジャンボ@ジョジョの奇妙な冒険、.45口径弾24発装填済みマガジン×2、.45口径弾×24(未装填)
     天候棒(クリマ・タクト)@ワンピース、ミリィのスタンガン(残弾7発)@トライガン・マキシマム
     三代目鬼徹@ワンピース、コルト・ローマン(6/6)@トライガン・マキシマム
     投擲剣・黒鍵×4@Fate/zero、レッドのMTB@ポケットモンスターSPECIAL、コルト・ローマンの予備弾35、グロック26(弾、0/10発)@現実世界、
     謎の錠剤入りの瓶@BLACK LAGOON(残量 50%)、パ二ッシャーの予備弾丸 1回分、キュプリオトの剣@Fate/Zero
     詩音の首輪、包帯、デザートイーグル50AE(0/8)
【思考・状況】
0:このまま南下する
1:覚悟は決まった。参加者の排除。特にヴァッシュ・ザ・スタンビート。
【備考】
※原作10巻第3話「急転」終了後からの参戦です。
※ウルフウッドの死体はそのままです
0674創る名無しに見る名無し垢版2014/08/13(水) 15:22:17.16ID:WqdSrdTk
投下おつです。
そーだよなー、ヴァッシュは守れてないし、ウルフウッドは救えていないんだよなあ。
最悪のIFからやってきたリヴィオに出会ったらヴァッシュはどうなるんだろうか。
0676創る名無しに見る名無し垢版2014/08/23(土) 22:43:12.97ID:gS/RTRt1
投下乙!
リヴィオの覚悟の描写が素晴らしい…素晴らしい
参戦時期のちょっとしたズレがここまで正反対なキャラになるとは
一つ一つのセリフがとてもリヴィオらしくて好きだな
0677創る名無しに見る名無し垢版2016/08/31(水) 04:52:47.24ID:cOHXDcjI
a
0678創る名無しに見る名無し垢版2017/07/10(月) 04:20:08.01ID:ugHrL6M5
☆ 日本人の婚姻数と出生数を増やしましょう。そのためには、☆
@ 公的年金と生活保護を段階的に廃止して、満18歳以上の日本人に、
ベーシックインカムの導入は必須です。月額約60000円位ならば、廃止すれば
財源的には可能です。ベーシックインカム、でぜひググってみてください。
A 人工子宮は、既に完成しています。独身でも自分の赤ちゃんが欲しい方々へ。
人工子宮、でぜひググってみてください。日本のために、お願い致します。☆☆
0679創る名無しに見る名無し垢版2017/12/27(水) 10:30:29.40ID:C1Z7QFDy
家で不労所得的に稼げる方法など
参考までに、
⇒ 『武藤のムロイエウレ』 というHPで見ることができるらしいです。

グーグル検索⇒『武藤のムロイエウレ』"

EP8BNMAEZP
0680創る名無しに見る名無し垢版2018/05/21(月) 08:38:32.31ID:tRZnwP6O
知り合いから教えてもらったパソコン一台でお金持ちになれるやり方
参考までに書いておきます
グーグルで検索するといいかも『ネットで稼ぐ方法 モニアレフヌノ』

I7BAO
0681創る名無しに見る名無し垢版2018/07/03(火) 19:17:31.68ID:f1dClnnX
4MX
0682創る名無しに見る名無し垢版2018/10/17(水) 18:57:14.36ID:ZU7x6aHX
中学生でもできるネットで稼げる情報とか
暇な人は見てみるといいかもしれません
いいことありますよーに『金持ちになる方法 羽山のサユレイザ』とはなんですかね

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