〈8月25日・金曜日 相変わらず、新聞報道は「東芝メモリ」の売却先の記事一色だ。会社の命運を左右する重大案件であることはわかるが、
誤報ばかり。少なくとも、上司や同僚の話を総合すると、新聞社の記事は正確とはいえないのではないか。社内では、綱川智社長が、東芝メ
モリ社長を兼務する成毛康雄副社長を説得できずに意見が対立していると囁かれている。東芝メモリ買収に名乗りを上げている米国のウエスタン
デジタルとうちとの溝は深く、“訴訟合戦”的な色合いを強めているが、そのほとんどを成毛副社長が主導しているのだという。〉

〈8月31日・木曜日 東芝メモリの売却先を発表する予定だったが、結局何も発表されなかった。新聞には、毎日のように“迷走”の文字が躍る。
そもそも、うちが「東芝メモリ」の有力な売却先と考えていたのは、去年シャープを買収した台湾の鴻海精密工業だと聞いている。綱川社長が
その話を経産省と、メインバンクへ持って行ったら、こっぴどく叱責されたのだとか。経産省が鴻海にバツを付けた理由は、報じられているよ
うな技術の海外流出の防止よりも、シャープ買収で鴻海に面子を潰されたからだ、と。綱川社長が、シャープと違い経産省の意向を無視しなか
ったのはなぜなのか。〉