自分が通勤するわけではないから、都心部から遠くても広い家が欲しいという
“昭和妻”の言いなりや通勤時間を気にせず妻の実家に近いから。などの理由で郊外に家(マンション)を買ってしまった人には気の毒だが、
いまや明石や加古川、神戸市北区や西区の家(マンション)は資産としての価値が激減している。
売ろうにも売れずローンだけが残る“生涯監獄”となっているのだ。
 それでも「郊外は緑が豊かで環境がいい」とか、「物価が安い」と思うかもしれない。
しかし緑が豊かということは、土地の利用価値が少ないということ。
物価は安いかもしれないが野菜が10円や20円安いくらいでは、ローンの含み損にはとても追いつかない。

 しかもこれから郊外は不便になる。小売りのチェーン店が撤退していく兆しがあるからだ。
現状でも郊外のスーパーは供給過剰だし、決して高所得とはいえない郊外の住人を相手にするのは商売として合理的ではないからだ。
郊外からチェーン店が少なくなると離れた場所に買い物に行かねばならず、いちいちガソリン代やタクシー代、電車賃がかかる。むしろ高くつくのだ。
 また企業は急速に福利厚生を廃止している。全額払われるのが当然だった通勤手当も例えば「一律5000円まで」となる可能性もある。
そうなれば昭和妻を説得してパートに出そうとしても近所に働き口もなく、通勤すればかえって交通費がかかってしまう。

 そして意外な盲点が子供の大学だ。郊外の自宅から通える大学は限られる。下宿させればまた出費が増えてしまう。
「トリレンマ世代」と呼ばれる現在30代の人たちは特に危険だ。彼らは晩婚だから、これから結婚して家を買おうという人が多い。
彼らが定年を迎えるころは、年金支給開始年齢が70歳に引き上げられるだろうから10年間は収入ゼロになる。
 それなのに、そのころ子供が大学に進学する。しかも親の介護問題も起こる。
ということは無収入のところへ、ローン、学費、介護のトリレンマ(三重苦)を抱えることになってしまう。

 もうおわかりだろう。郊外の家ほど高い買い物はない。それでもどうしても郊外に家を持ちたいという人を止めはしない。
このマイナス成長時代に家を持つのは田舎にダムを造るようなもので、いわば“一人公共事業”。ある意味、立派な心がけだからである。