【優良企業】アンパンマンショップ【時給500円】 [無断転載禁止]©2ch.net
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「そう云われると恐れ入るが、とにかくあの時は弱ったよ。 おまけにまた乗った船が、ちょうど玄海へかかったとなると、恐ろしいしけを食ってね。―― 「ええ、私はもう船も何も、沈んでしまうかと思いましたよ。」 お蓮は田宮の酌をしながら、やっと話に調子を合わせた。 が、あの船が沈んでいたら、今よりは反って益かも知れない。―― 「それがまあこうしていられるんだから、御互様に仕合せでさあ。―― お蓮さんに丸髷が似合うようになると、もう一度また昔のなりに、返らせて見たい気もしやしないか?」 ないと云えば昔の着物は、一つもこっちへは持って来なかったかい?」 「着物どころか櫛簪までも、ちゃんと御持参になっている。 いくら僕が止せと云っても、一向御取上げにならなかったんだから、――」 牧野はちらりと長火鉢越しに、お蓮の顔へ眼を送った。 お蓮はその言葉も聞えないように、鉄瓶のぬるんだのを気にしていた。 その内に一つなりを変えて、御酌を願おうじゃありませんか?」 「そうして君も序ながら、昔馴染を一人思い出すか。」 「さあ、その昔馴染みと云うやつがね、お蓮さんのように好縹緻だと、思い出し甲斐もあると云うものだが、――」 田宮は薄痘痕のある顔に、擽ったそうな笑いを浮べながら、すり芋を箸に搦んでいた。…… その晩田宮が帰ってから、牧野は何も知らなかったお蓮に、近々陸軍を止め次第、商人になると云う話をした。 辞職の許可が出さえすれば、田宮が今使われている、ある名高い御用商人が、すぐに高給で抱えてくれる、―― 「そうすりゃここにいなくとも好いから、どこか手広い家へ引っ越そうじゃないか?」 牧野はさも疲れたように、火鉢の前へ寝ころんだまま、田宮が土産に持って来たマニラの葉巻を吹かしていた。 お蓮は意地のきたない犬へ、残り物を当てがうのに忙しかった。 牧野の口調や顔色では、この意外な消息も、満更冗談とは思われなかった。 牧野は険しい眼をしながら、やけに葉巻をすぱすぱやった。 お蓮は寂しい顔をしたなり、しばらくは何とも答えなかった。 そうそう、田宮の旦那が御見えになった、ちょうどその明くる日ですよ。」 お蓮に使われていた婆さんは、私の友人のKと云う医者に、こう当時の容子を話した。 始めは毎日長火鉢の前に、ぼんやり寝ているばかりでしたが、その内に時々どうかすると、畳をよごすようになったんです。 御新造は何しろ子供のように、可愛がっていらしった犬ですから、わざわざ牛乳を取ってやったり、宝丹を口へ啣ませてやったり、随分大事になさいました。 犬の病気が悪くなると、御新造が犬と話をなさるのも、だんだん珍しくなくなったんです。 「そりゃ話をなさると云っても、つまりは御新造が犬を相手に、長々と独り語をおっしゃるんですが、夜更けにでもその声が聞えて御覧なさい。 何だか犬も人間のように、口を利いていそうな気がして、あんまり好い気はしないもんですよ。 それでなくっても一度なぞは、あるからっ風のひどかった日に、御使いに行って帰って来ると、―― その御使いも近所の占い者の所へ、犬の病気を見て貰いに行ったんですが、―― このスレッドは1000を超えました。
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