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死ぬ前に善いことをします。
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0001旅坊主
垢版 |
2020/03/24(火) 20:49:13.85ID:04ETID4v
「毎日毎日会社と家の往復の繰り返し。あなたはこの

 まま人生を終えるのですか!?」



「人生を変えるにはまず行動をしましょう」



「私はこのビジネスを始めて2年で月収1千万円まで成

 長することができました。あなたにもきっとできま

 す」

.

.

.

「高崎君!聞いてるのか!!!」



「あ、はい...」



「まったく、君もこの会社に入って3年目だろう。

 正直、君の後輩たちの方が仕事ができるぞ。情けな

 いとは思わんかね?」



「はい...申し訳ございません。以後気を付けます」



「もういい戻りなさい。まったく、なんだって人事部

 はあんなやつを採用したのか...」
0002旅坊主
垢版 |
2020/03/24(火) 20:51:07.66ID:04ETID4v
『情けない』

そんな感情はもうとっくに消えた。

入社したての頃は息巻いていた。



どんな仕事も自ら進んでやった。

しかし、全て空回りした。

最初は上司も叱ってくれた。

いつしかその叱りも呆れに変わっていった。

怒られているうちが華とはよく言ったものだ。


小学校の卒業文集には、自分の将来の夢を書く欄があった。

サッカー選手、モデル、宇宙飛行士

それぞれが思い思いの夢を恥じらいもなく自由に書いていた。


しかし、気付くのだ。

自分は凡人だと。

凡人でも努力すれば必ず報われる。

そんなことは綺麗事だ。

世の中才能があって、なおかつ努力しているやつが腐るほどいる。

そんな奴らには勝てないのだ。

そして多くの人が、結局「平凡」な人生を歩むのだ。

いやしかし、俺はその「平凡」にすらなれていないのかもしれない。
0003旅坊主
垢版 |
2020/03/24(火) 20:51:34.01ID:04ETID4v
カチ.カチ.カチ



気がつけば時計は22時を指していた。



他の人はもう帰ってしまったらしい。



荷物をまとめてパソコンの電源を落とす。



最寄りの駅まで歩く。



この街は社会の縮図だ。



金持ちは煌びやかなネオンが自分を照らすスポットライトだと言わんばかりの顔で歩いている。



少し裏路地に入ると、そのスポットライトから逃げるようにずっと地面とにらめっこをしている人たちがいる。



いわゆる「ホームレス」だ。



自分に価値がないと思った時、俺はホームレスを見る。



俺はまだ社会に貢献していると実感できるからだ。



たいそう性格が悪いのは自覚している。



自分より下を見ることでしか自己を肯定することができないのだ。



上を見ると...この先は言わずもがなだろう。



ネオンの光を避けるように俺は早足で駅に向かった。
0004旅坊主
垢版 |
2020/03/24(火) 20:52:20.55ID:04ETID4v
今日もいつも通りに行くはずだった。

6時15分に目覚ましの音で目を覚まし、普段通りのルーティンをこなし7時半ちょうどに家を出る。

最寄り駅までは歩いて15分だ。7時38分発の電車に乗り込み6駅先の会社の最寄り駅まで適当に時間を潰す。この時間を有意義に使おうとは思わない。



気が付くと、本来降りるはずの駅をもう3駅も通り過ぎていた。



これが寝過ごしていたとかならまだいいのだが、どうやら意図的に降りなかったのだからどうやらコトは厄介らしい。いや寝過ごしでも厄介なのだが。


どうやら俺は限界だったらしい。逆に3年続いたのを褒めるべきだろう。



石の上にも3年なのだ。3年続けて俺は「無理」という結論に至ったのだ。
0005旅坊主
垢版 |
2020/03/24(火) 20:53:34.91ID:04ETID4v
兎にも角にもずっと電車に乗っているわけにはいかないので、適当な駅で降りた。

本来降りるはずの駅のから5駅離れた「仁淀」という駅だ。

改札を出ると膨大な量の着信履歴に気づいた。

機内モードにしていたから電話に気づかなかったのだ、と自分に言い聞かせる。

いっそホームにでも飛び込んでしまおうかと思ったが、それはかなりの人に迷惑がかかると思ったのでやめた。

とりあえず、駅周辺をブラブラと歩くことにした。

初めて降りる駅だからか、ちょっとした旅行をしている気分になった。

もうかれこれ2時間ほどこの町を歩いた。

田舎過ぎず、かといって都会過ぎず良い街だった。
0006旅坊主
垢版 |
2020/03/24(火) 20:56:04.21ID:04ETID4v
一番人に迷惑をかけずに死ぬにはどうしたらいいだろうか

そんなことを考えていたら、ふと目に留まった。

「ホームレス」だ。

この街にもホームレスはいるのかぁと思い、いつもならお得意の上を見ず下だけを見る戦法で

自己を肯定できるのだろうが今回はそうはいかないらしい

いつもなら横目に立ち去っているのだろう。

しかし俺は今死のうと思っている。

なら、死ぬ前に何かいいことでもしておこうかとそのホームレスに弁当を買ってやることにした。

財布には2千円入っている。俺はスーパーに行き599円のから揚げ弁当を買った。

ついでにお茶とデザートにアップルパイも買ってやった。

我ながら親切だと思った。

そして俺はホームレスの目の前まで歩き、何か手遊びをしている彼に声をかけた。

「これ、どうぞ」

「あぁ」

彼は力なく言った。

見たところ、年齢は50か60のあたりだろうか。

髪も髭も伸び散らかしていて、境目が分からなくなっていた。

しかしどうも返事が鈍い。俺は少し声のボリュームを上げた。

「僕はもう死のうと思います。ですが、最後に善いことをしようと思いました。これを食べてく

 ださい」

彼は少しの間じっと僕を見た。

そして、さっきより少しだけ大きな声で

「あぁ、そうかい」

そう言った。
0007創る名無しに見る名無し
垢版 |
2020/03/24(火) 23:45:54.97ID:X45abkza
ウンコ
0008創る名無しに見る名無し
垢版 |
2020/05/22(金) 08:34:32.01ID:Ww2BWDcv
ホームレスは弁当に手をつける前に、
ふと顔を上げ、「ワシの名は秋田、秋田与平」と名乗った
秋田与平は割り箸をパキリと割ると、弁当の白米と唐揚げと福神漬けを一気に喰らい尽くすと、アップルパイを一口で平らげ、お茶飲み干し、満足そうに大きなゲップを吐いた
秋田与平を名乗るホームレスは突き出した腹をさすりながら、
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