死ぬ前に善いことをします。
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「毎日毎日会社と家の往復の繰り返し。あなたはこの
まま人生を終えるのですか!?」
「人生を変えるにはまず行動をしましょう」
「私はこのビジネスを始めて2年で月収1千万円まで成
長することができました。あなたにもきっとできま
す」
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「高崎君!聞いてるのか!!!」
「あ、はい...」
「まったく、君もこの会社に入って3年目だろう。
正直、君の後輩たちの方が仕事ができるぞ。情けな
いとは思わんかね?」
「はい...申し訳ございません。以後気を付けます」
「もういい戻りなさい。まったく、なんだって人事部
はあんなやつを採用したのか...」 兎にも角にもずっと電車に乗っているわけにはいかないので、適当な駅で降りた。
本来降りるはずの駅のから5駅離れた「仁淀」という駅だ。
改札を出ると膨大な量の着信履歴に気づいた。
機内モードにしていたから電話に気づかなかったのだ、と自分に言い聞かせる。
いっそホームにでも飛び込んでしまおうかと思ったが、それはかなりの人に迷惑がかかると思ったのでやめた。
とりあえず、駅周辺をブラブラと歩くことにした。
初めて降りる駅だからか、ちょっとした旅行をしている気分になった。
もうかれこれ2時間ほどこの町を歩いた。
田舎過ぎず、かといって都会過ぎず良い街だった。 一番人に迷惑をかけずに死ぬにはどうしたらいいだろうか
そんなことを考えていたら、ふと目に留まった。
「ホームレス」だ。
この街にもホームレスはいるのかぁと思い、いつもならお得意の上を見ず下だけを見る戦法で
自己を肯定できるのだろうが今回はそうはいかないらしい
いつもなら横目に立ち去っているのだろう。
しかし俺は今死のうと思っている。
なら、死ぬ前に何かいいことでもしておこうかとそのホームレスに弁当を買ってやることにした。
財布には2千円入っている。俺はスーパーに行き599円のから揚げ弁当を買った。
ついでにお茶とデザートにアップルパイも買ってやった。
我ながら親切だと思った。
そして俺はホームレスの目の前まで歩き、何か手遊びをしている彼に声をかけた。
「これ、どうぞ」
「あぁ」
彼は力なく言った。
見たところ、年齢は50か60のあたりだろうか。
髪も髭も伸び散らかしていて、境目が分からなくなっていた。
しかしどうも返事が鈍い。俺は少し声のボリュームを上げた。
「僕はもう死のうと思います。ですが、最後に善いことをしようと思いました。これを食べてく
ださい」
彼は少しの間じっと僕を見た。
そして、さっきより少しだけ大きな声で
「あぁ、そうかい」
そう言った。 ホームレスは弁当に手をつける前に、
ふと顔を上げ、「ワシの名は秋田、秋田与平」と名乗った
秋田与平は割り箸をパキリと割ると、弁当の白米と唐揚げと福神漬けを一気に喰らい尽くすと、アップルパイを一口で平らげ、お茶飲み干し、満足そうに大きなゲップを吐いた
秋田与平を名乗るホームレスは突き出した腹をさすりながら、 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています