ユージンがランの口を借りて喋った。
「椿、もしかしてぼくが出たら学校行きたくなっちゃってない? 学校行きたくないのは、実は勉強嫌いなぼくの……」
「ユゥ兄ィ、うざい」椿は遮った。「学校行きたくないのは、純粋にあたしの意思だから」
「なんで?」ランが聞いた。「いじめ?」
椿は首を横に振った。
「楽しくないの?」
椿はさっきよりは弱いが、また首を横に振った。
ランは椿を捕まえたまま、優しい声で言った。
「椿が答えたくなかったら答えなくていい。でもオレ、心配なんだ。理由を教えてくれ」
すると椿は、弱々しい声で間を置いて答えた。
「あたし、何も出来ないからだよ」
「そんなことは……」
「何も出来ないの」
「いや、椿……」
「何も出来ないの、ラン兄ィがいないと」