ヘイロンはアパートに帰って母の世話をすると、再び外へ出た。
黒い手袋をきつく締め、帽子のように黒いマスクを被ると、駅で拾った自転車に乗って走り出した。

待ち合わせの場所へ行くと相棒は既に待っていた。
「アラン、待ったか?」
ヘイロンが聞くと、アランは小さな身体をくねらせて答えた。
「今来たとこだよ、ヘイロン」
「今日の依頼は何だ?」
「クルマにギザギザコインで傷つけた先輩への報復」
「なんだそりゃ。いくらで受けた?」
「800円」
「そんな安いの、受けるな!」
「だって他に仕事なかったし、俺は金額とかどうでもいいからさ」
「俺はどうでもよくねぇんだ。せめて1000円まで釣り上げろよ」
「最初は500円スタートだったんだぜ? これでも頑張ったんだ。誉めてよ」
「しょうがねぇ、行くぞ。案内しろ」
「わぁい」
喜びの声を上げると、アランと呼ばれた小男は、ヘイロンの自転車の後ろに立って乗った。