貴彦は毎朝駅で同じ電車に乗り合わせるその女性のことが気になっていた。
柔らかそうな栗色の髪に触れたい、くすぐったそうなその睫毛に唇で触れたい。
美しいその瞳を噛んで引きずり出して、コリコリと音を立てて味わってみたい。
リップクリームごとその可愛い唇をめくって噛みちぎり、柔らかく溶ける肉を舌の上で楽しみたい。
その衣服で隠された下にはどんなに感動的な美食があるのだろう。
そして彼女にも是非自分を食べさせたい。
でもいきなり話しかけたら変な人だと思われるかな。
貴彦は話しかける勇気もなく、毎朝先に降りて行く彼女の後ろ姿をただ見送るだけだった。