黒騎士と漆黒の獣は、無防備なビシャラバンガを見て、一気に距離を詰め、襲い掛かった。

 「ギャニャーーーーッ!!
  ビシャラバンガーー!!」

ニャンダコーレはビシャラバンガの背に爪を立てたが、彼は微動だにしない。
その儘、黒騎士の剣を左の肩口に受け、右の首には漆黒の獣の牙が立つ。

 「コレ、離れろっ!!」

ニャンダコーレはビシャラバンガの首に食い付いた漆黒の獣の目を、自らの鋭い爪で引っ掻いたが、
少しも怯ませられなかった。

 「くっ、やはり打撃は通じないのか、コレ……!」

 「狼狽えるなと言っているだろう、ニャンダコーレ」

ビシャラバンガの声は変わらず落ち着いている。
見れば、黒騎士の剣は振り抜かれる事無く、肩口で止まっている。
漆黒の獣の牙も同じだ。
深く突き立っているが、食い破る様な事は無い。
出血も心做しか少ない。
ビシャラバンガは大きな両の手の平で、確りと黒騎士と漆黒の獣の頭を掴んだ。

 「行くぞ!!
  見ろ、これが己の技だ!」

ビシャラバンガの背中から、魔力の翼が生える。

 「コ、コレが翼!!」

ニャンダコーレは目を見張り、直ぐに彼の背中から飛び降りて、数身の距離を取った。