それでもビシャラバンガには未だ試していない事がある。
最後の巨人魔法、『翼ある者<プテラトマ>』だ。
魔力の翼で相手の魔力を吸収すると同時に、自分の魔力として放出する魔法。
「溜める」と「放つ」が基本の巨人魔法の究極。
それによって黒騎士の魔力を枯渇させられるのでは無いかと、ビシャラバンガは考えていた。

 「……ニャンダコーレ、奥の手を使う」

 「コレ、奥の手とは?」

 「翼だ、翼を使う。
  翼が見えたら、俺から離れろ。
  2体同時に仕留める」

ビシャラバンガは背後を一瞥した。
復活した漆黒の獣が、接近している。

 「……ビシャラバンガ、コレ、無理はするな」

 「多少は無理をしないと勝てない相手だろう。
  肉を切らせて骨を断つ。
  とにかく、他に妙案が無いなら大人しく見ていろ」

ビシャラバンガは全身の力を抜いて、棒立ちになった。
これにニャンダコーレは慌てる。

 「コ、コレ、どう言う積もりなのだ!?
  ビシャラバンガ!」

 「喧しいぞ、狼狽えるな。
  心静かに待つのだ」

ビシャラバンガは魔力を纏ってもいない。