クローテルは残る2人の兵士の傷も治しました。
兵士たちは本来は彼に礼を言うべきところでしたが、それよりも恐れが先に立ちました。

 「あ、あなたは一体……」

マルコ王子も彼を怪しみます。

 「クローテル殿、あなたは本当に人間なのか……?
  こうもきせきを見せつけられると、あなたを聖君や神王と呼ぶ事さえおそれ多い様に思う」

 「大げさですよ……。
  とにかく今は出来る事をしましょう。
  この城は危険です、王子はみなさんを連れて脱出を。
  私が道を開きます」

 「分かった。
  だが、公爵は放っておくのか?」

 「みなさんを安全なところまで送り届けるのが先です」

とにかく今は頼れるのがクローテルだけなので、王子は反対しませんでした。

 「みなの者、クローテル殿に続け!
  ……レタート、何をしている!
  それでも十騎士の後継者か!」

マルコ王子の一行は脱出を決めましたが、レタートだけは正気に返りません。
クローテルは怒るマルコ王子を抑えて、レタートに歩みよりました。

 「レタート殿、ベルをお借りします」

レタートが抱えているベルにクローテルが触れると、ひとりでにベルがゆれて鳴り出します。