バニェスは小声で唸り、心変わりした理由を問う。

 「何故、急に考えを変えたのだ?」

 「貴方は私を愛していると言ってくれた」

 「それだけの事で?

 「どうしたの?
  怖くなった?
  取り消すなら良いよ。
  少し残念だけど」

何の気無しにサティが言った事を、バニェスは挑発と受け取って意地を張った。

 「何が怖い物か!
  見縊ってくれるな!
  約束だぞ、違えるなよ!
  お前は私に子を預けるのだ!!」

 「ええ、私達の子をお願いね」

サティは優しく言ったが、本当はバニェスは不安だった。
自分が真面に子を生めるのか、失敗したらサティに失望されるのでは無いか……。
勢いでも何でも受けると言った以上は、止めたいとは言えない。
サティはバニェスに助言する。

 「どんな子にするか、どんな子が良いのか、今から考えておいて。
  中々決められないとか、不安な事があるなら、ウェイルさんとかバーティに聞くと良いよ。
  私も良い子が生まれる様に協力する」

正直な所、バニェスには彼女の助言が有り難かった。
しかし、高位貴族の自尊心が邪魔をして、素直に礼を言えない。

 「心配は無用だ。
  この大伯爵の子なのだから、立派な子になるに決まっていよう!」

バニェスは強がって見栄を張る。
それをサティは微笑ましく思うのだった。