もし生まれるとしたら、どんな子が良いか等、バニェスは考えていなかった。

 「分からない……。
  但、従順な従僕を欲していた訳では無い事だけは確かだ……」

 「そうなの?」

 「私は純粋に、お前と私の性質を併せ持った子を望む。
  力の大きさは問題にしない。
  それが、どうやって生きるのか、どの様な生を選ぶのか、唯それを知りたい」

それを聞いたサティは、自分が目的を持って子を生もうとしている事が、悪い事の様に思えて来た。
望む儘の性質の子が生まれるからこそ、バニェスの態度の方が、真に子の為を思う親としては、
正しいのでは無いかと。
そもそもサティはデーモテールの混沌の海を渡れるだけの、能力を持った存在を生みたかった。
彼女は我が子を、エティーを他の世界と結ぶ、定期便にしたかった。
その為には、余計な心は持たない方が良く、使命に忠実であるべきだと思っていた。

 「……バニェス、もし今抱いている子が無事に生まれたら……。
  私は貴方に新しい命を託そうと思う。
  私の分身となる命を」

 「良いのか?
  私は生まれて来た子を愛せるかも分からないのに?」

 「屹度、大丈夫。
  そう信じてる。
  私と貴方の子だから」

サティの信じると言う台詞に、バニェスは弱かった。