サティは箱舟の中で小さく笑った。
バニェスは立腹して言う。

 「何が可笑しい!!」

 「いえ、貴方から、そんな言葉が聞けるとは思っていなくて……」

 「ああ、そうだろう。
  貴様は私より下位の存在だからな。
  高位の物の寵愛を受けるのは、望外であろう!」

堂々と威張るバニェスが、サティには微笑ましく映っていた。

 「でも、1番じゃないんだね……」

 「それは貴様とて、そうであろう!
  貴様は己の命より、大事な物があるのか!?」

 「ある」

 「それは何だ!?」

 「魂の故郷である、このエティー。
  そして私が生まれ育ったファイセアルスも」

 「その為なら死ねると言うのか?」

 「今まで、そうだった筈だよ。
  だから、貴方とも戦った」

 「そ、そうなのか……」

サティの淡々とした物言いに、バニェスは己が卑小な存在に思えた。