フィッグはバニェスには解らない物が解っていた。
それがバニェスには気に入らないので、何とか理解しようとする。

 「愛とは存在価値を認める事ならば……。
  結局、貴様はマクナク公を愛していたのか、いなかったのか?
  どちらなのだ?」

 「愛される為に愛していた……と言うべきだろうか?
  しかし、それは真実の愛では無い。
  恐らく、嘗ての私はマクナク公を超える物が現れれば、そちらに靡いた事だろう。
  それこそ下等な連中と同様に。
  愛と言っても、その程度の物だったのだ」

 「……今は違うのか?」

 「どうかな……?
  マクナク公を敬愛する気持ちは変わらない。
  だが、昔の様に絶対的な物を仰ぐ気持ちでは無い」

 「新たな『絶対的な物』を探しているのか?
  今度こそ揺るがぬ物を」

 「そうかも知れんし、そうでは無いかも知れん。
  一つ言える事は、能力の強弱は本質では無いと思っている」

 「貴様の言う事は解らん……。
  丸で掴み所の無い、幻の様だ」

 「……私は未だ真に愛すべき物を見付けていない。
  それは愛を知らないのと、同じ事なのかも知れん……」

 「何だ、真面目に聞いて損したぞ。
  結局、貴様にも解らんのだな」

時間の無駄だったなと、バニェスは全身の羽毛を寝かせて落胆した。
フィッグは申し訳無さそうに言う。

 「気を持たせる様な事を言って悪かったな」