ワーロックはヴァールハイトの目を見詰めた儘、少しも動かなかった。
自らの内を巡る魔力が、意識を塗り替えて行く瞬間を静かに観察する。
それは自分を客観的に見る、第二の自分が居るかの様に。
彼の劣った魔法資質が、ヴァールハイトの魔力の流れを掌握する。

 「私は敵では無い。
  お前は私を信頼している。
  私に隠し事は出来ない……」

ワーロックはヴァールハイトの言葉を繰り返した。
その言葉はヴァールハイトに返って行き、彼に同じ言葉を繰り返させる。

 「私は敵では無い。
  お前は私を信頼している……」

2人は互いの目を真剣に見詰め合って、どちらも逸らそうとしない。
傍目には、どちらが魔法に掛かっているか判らない。
先に動きを見せたのはワーロックだった。
彼は口の端に笑みを浮かべる。
ヴァールハイトは焦りを感じる。

 「何故、効かない……?
  お前は何者だ?
  魔導師会の者か、それとも旧い魔法使いか!?」

 「どちらでも無い。
  私は新しい魔法使い」

堂々と答えたワーロックに、彼は動揺して蒼褪める。