侮辱されたと感じた彼はワーロックに血の魔法を掛ける事にした。
旧い魔法使いや悪魔にとって、格下に侮辱される事は耐え難い。
これが未だ多対一なら逃げる言い訳も立つが、無能1人に恐れを成したとあっては己の恥。
策略があるなら見抜かなければならないが、それが判らないと言うのも恥。
罠かも知れないと感じていても、やらなければならない。
そう言う風に運命付けられている。
それが旧い魔法使いの宿命にして宿痾なのだ。

 「後悔するなよ!」

ヴァールハイトは自らの血液を魔力に反応させた。

 (来る!)

ワーロックは自分の体の中で血液が反応するのを感じる。
否、実際には感じていない。
それが判る程、彼の魔法資質は鋭敏では無い。
そう錯覚しているだけだ。
しかし、錯覚が実際の感覚と重なっていれば、そこには何の違いも無い。
そしてワーロックは自らの意識が、魔力によって改変されて行くのを感じる。
ヴァールハイトはワーロックに告げた。

 「私は敵では無い。
  お前は私を信頼している。
  私に隠し事は出来ない。
  何を企んでいるのか、洗い浚い吐いてくれ」

信頼を刷り込んでいるのだ。