魔法資質が増大している感覚がある。
周囲半通程度の魔力の流れが直観的に理解出来る……が、それは激しい頭痛を引き起こした。
胸と頭の痛みに耐え兼ね、潜入者は両目を瞑り、呻き続ける。
頭の中に明瞭に浮かぶ周囲の魔力の流れは、潜入者の脳が処理可能な限界を超えていた。
脳も心臓も、今にも破裂しそうに痛い。

 「た、助けてくれ……ダスト……」

潜入者は堪らずダストマンに助けを求めたが、何もしてはくれなかった。

 「ダ、ダストマン……!」

見殺しにする積もりかと、潜入者は怒りを感じたが、それも一瞬の事。
余りの痛みに、怒りも長続きしない。

 「大丈夫だ、ブロー。
  落ち着け」

 (これが落ち着いていられるかー!
  この野郎、俺は地獄の苦しみを味わってるんだぞっ!!
  伝わる訳が無いよな、所詮は他人事なんだから!)

その内、潜入者は俯(うつぶ)せに倒れ、気を失った。
再び目覚めた場所は気絶する前と同じ屋上で、ダストマンの姿は無かった。

 「ダストマン……?
  どこへ行った?」

潜入者は素早く体を起こして、立ち上がる。
軽い頭痛はする物の、他に不調らしい不調は無く、妙に体が軽い、頭も冴えている。
空を見れば、太陽が傾き始めている。
気絶している間に、1角は経過したのだろうと、彼は当たりを付ける。