日本が異世界に転移した第1(84)章
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四号車
浅井二尉は車両内部を姿勢を低くして移動し、司令車まで後一両のところまで来ていた。
持っている武器はマカロフ拳銃一丁と途中で取り外した座席。
四号車の屋根に連結部からよじ登る。
司令車は先程から爆発にさらされていたが意外に破損は少ない。
だが破城槌やてつはうが交互に叩きつけられて、穴が空くのは時間の問題だろう。
屋根の上から先ず右側のケンタウルスを始末することに決めた。
ケンタウルスの腰に紐で括りつけられたてつはうに、9mmマカロフ弾を三発命中させてあたり爆発させる。
そのまま破城槌を持っていた四頭に銃口を向けて発砲する。
重量物を持っていたケンタウルス達は回避行動も取れずに3頭を射殺、1頭が地面に倒れ伏す。
予備のマガジンに交換して、てつはうを持っていた2頭も始末した。
「残り6発・・・」
浅井の存在に気がついた左側のケンタウルス達が矢やてつはうを放ってくるが、屋根まで持ち込んだ座席を盾に移動し、司令車両の屋根に飛び付く。
だが幾つかのてつはうに仕込まれていた土器の破片が、座席の隙間から背中や足に当たる。
「痛・・・」
幸い刺さりはしなかったようだ。
叫びたいのを我慢して、手近にいた破城槌を持ったケンタウルス2頭に残りの弾丸を全部叩き込んで射殺する。
半分は八つ当たりだ。
槍に持ち変えたケンタウルスが屋根の上で転がる浅井を狙うが、屋根の扉を開いた平田が散弾銃で槍持ちを射殺し、岡島が浅井を車内に引き摺って中に入れる。
「状況は?」
ようやく一息付けるが休む暇はない。
「機関車両に8頭にこちらは四頭、最後尾車両に25頭までは確認できてます。」
司令車両には各車両からの内線から報告が来ている。
「こちらは悪い知らせだ。拳銃の弾がもう無い。」
岡島と平田は顔を見合せて苦笑する。
「ご安心をこちらも弾切れです。
でも預かってたものがありましたよね?」
「ああ、そいつを取り来た。」
機関車両
「おやっさん弾切れです。」
「俺も・・・」
「自分もです・・・」
機関助手達は猟銃を置いて、スコップを持つ。
「馬鹿野郎、撃ちすぎだ。」
だが大沢ももう二発しか持ち合わせていない。
まだ、この機関車両を攻撃してくるケンタウルスは7頭もいる。
だが司令車両の屋根から再び飛び出した浅井の手には、出発前に鉄道公安官に渡して預けていたAK−74が握られていた。
司令車から炭水車に移り、一頭ずつ撃ち殺していく。
「大丈夫ですか?」
「若ぇのを一人、死なせちまったよ・・・」
大沢が矢が数本刺さった機関助手の一人を床に寝かせて、他の二人は泣きはらした目をしている。 「おまえさん自衛隊だな、援軍かい?」
「自衛隊だが乗客です。」
「そうか、まだ続くんだな。」
車掌の二人もこちらに合流してくる。
「お前ら全員、シャベルとツルハシを持て!!」
「おやっさん、さすがにそれは無茶だ!!」
平田が大沢を止めにはいる。
銃弾が残っているのは浅井だけだ。
ケンタウルスにシャベルやツルハシで勝てるとは思えなかった。
「勘違いするな、俺達の相手はあれだ!!」
大沢が指を指した方向は線路の先、石や木が積まれたバリケードがそこにあった。
「機関車さえ動けば馬なんざ引き離せる。
援軍の到着なんか待ってられねぇ!!」
途端にシャベルを持って駆け出し、助手達もそれに続く。
「浅井さん、我々も行きます。
乗客を前の車両に誘導して下さい。」
「わかりました。
なるべく連中から見えないバリケードの向こう側から崩してください。
ああ、そうだ。
救援の連絡から何分たちました?」
「25分。」
車掌達と浅井も反対方向に走り出す。
ケンタウルス達は途中の車両のドアや窓を一つ一つ破壊していたが中には侵入出来ないでいた。
「狭ぇ・・・」
外部の扉を破壊して内部に入ろうとしたが、下半身の馬の巨体では壁に体を擦りながら進むことになる。
天井も低く、弓を縦にも横にも構えられない。
客室に通じる内部扉はさらに小さく、大柄なケンタウルスでは嵌まって動けなくなる者が続出した。
窓ガラスも強化ガラスで、頑丈でどうにか割っても破片で手を切る者がやはり続出した。
全ての車両がブラインドを締めていた為にどの車両に乗客がいるのかを確かめる必要があったのだ。
最後尾車両に一度は到達したが、もう一度分散して探索に当たっている。
「くそ、ラチが明かないな。」
族長トルイは予想以上の被害と時間のかかりように苛立ちを見せていた。
「族長!!
一番後ろの扉からなら直接中に入れるし、破城槌が使えるぞ。」
「でかした!!
さっさと破壊して、矢を叩き込め!!」
乗客達は最後尾にある10号車両を放棄して、九号車両に移動していた。
ケンタウルス達に見付からないように身を屈めてである。
10号車両の後尾連結部入り口は外部に剥き出しになっていたので破城槌で破壊された。
ケンタウルス達は麻痺毒を塗った矢を入り口から放つ。
応戦が無いのを確認すると、客室に侵入に成功する。
だがボックスシート、4人掛けの向かい合わせ式の座席の通路はやはりケンタウルス達には狭かった。
それでも一頭ずつ中に入り、通路を進むが、反対側のドアが開いた瞬間、鉄道公安官の建川と久田が猟銃で撃ってきた。逃げ場の無い先頭のケンタウルスは体に穴を開けて絶命し、後続のケンタウルスの進路を塞ぐ。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています