X



トップページ創作発表
1002コメント230KB
日本が異世界に転移した第1(84)章
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
0002始末記
垢版 |
2018/06/12(火) 02:38:18.32ID:gG5qxPam
まあ、私が被害担当スレ作っても問題ないでしょう
では、続き投下
0003始末記
垢版 |
2018/06/12(火) 02:39:20.34ID:gG5qxPam
モンスターや海賊がいる世界では、武道系の部活が実戦を意識した傾向に全国的になりつつある。
また、彼等の中には大陸で冒険者に憧れ、夢見ている者も少数ながらいて嬉々として参戦していた。

「やりすぎだろう
いつの時代だよ、まったく・・・」
「地域によっては、大筒まで再現したところもあるそうですよ。」
「マジか?
・・・我々が来た意味無くなりそうだから早く参戦しよう。」

宮迫警部は市民の自警ぶりにドン引きしながらも県警SATを率いて、平戸城に群がるハーピーの駆除に加わった。
すでに掃討は時間の問題だった。


北サハリン船籍貨物船『ナジェージダ・アリルーエワ』

福岡、佐賀、長崎3県で起きた騒動はラジオで逐一、状況が報道されていた。
ナルコフ船長はこのまま日本の領海に留まるのは危険と判断し、船を外洋に向けて航行させていた。
死者は高麗で12名、日本で28名と発表された。
負傷者は両国で3800名を越える。
大半が自衛官や警官というから大変な戦果と言えた。

「まあ、今回は上手くいった方かな?」

今回は実験的な意味が強く、モンスターを使ったテロでは効果的だった。
モンスターを輸送するには、ホワイト中佐による時間凍結の魔法が必要なのは難点だ。
合流した帝国軍残党にも魔術の使い手はいるが、ホワイト中佐の魔法は大陸の魔術とは系統が違うらしい。
ホワイト中佐一人に支えられる現体制は不安定だった。
ナルコフや残党軍の指揮官達はどこかで、落とし所を望んでいるが、ホワイト中佐は違う。
どこかでホワイト中佐を切る必要はあると思うが、ロシアマフィアの幹部だったナルコフも地球側同盟国並びに都市に帰属を望めば投獄は免れない身だ。

「まあ、もう少し付き合ってはやるがな。」

感慨に耽っていると、レーダーにこの船を追跡してくる艦影が映し出されとの報告に眉を潜める。

追跡艦はこちらに停船せよと、無線で警告を送ってきている。

高麗国のフリゲート『大邱』であった。
『大邱』、転移前の巨済の大宇 造船所で起工されていた艦だ。
高麗国独立まで建造が凍結され、最近までは西方大陸派遣艦隊で活躍していた。
しかし、百済サミット並びに高麗・北サハリン襲撃事件を期に、高麗国防衛の穴埋めとして呼び戻されたばかりだった。
速度で老朽貨物船の『ナジェージダ・アリルーエワ』が振り切ることは無理だった。

「『海洋結界』はすでに抜けている。
13番コンテナを海中に投下しろ。」

コンテナは国際規格の三倍の大きさだ。
いざという時の切り札はまだ残してある。

「しっかし、あんなものどっから拾って来たんだ?」



フリゲート『大邱』

『大邱』のブリッジでは緊急接近する物体に、Mk 45 5インチ砲で狙いを付けるべく待ち受けていた。

「敵は海中か?」

艦長は近くまで来ている筈なのに姿を見せない敵に苛立ちを見せている。
小型の水中生物の相手はやりずらい。
0004始末記
垢版 |
2018/06/12(火) 02:43:32.79ID:gG5qxPam
その生物に至近距離まで接近され艦の真下を通過された。
水柱が艦の後方に立つと共に後部の飛行甲板に『ソレ』が降り立った。
臨検の乗員が小銃を構えて、『それ』に狙いを定めるが、あまりの悪臭に嘔吐する者が続出した。
全長9メートル程の個体は一見小型の竜に見えた。
しかし、その肉体は明らかに腐食していた。


田助港

炎上する貨物船の鎮火をすべく、巡視船からの放水が始まっていた。
すでに市内のハーピーは駆逐し、港に到着した消防車も消火に参加している。
貨物船は巨大な船倉に幾つかのコンテナが積載されていたらしく、そこにハーピーや卵が積載されていたと、推定されていた。
だが同時にコンテナでは無く、船倉に直接眠らされていたモノが目を覚ました。
脆くなった甲板をぶち破り、頭部を外に覗かせたそれは、巡視船の姿を見た瞬間、咆哮を放った。
魔力の籠められた咆哮を聞いた人間達は、その場に立ち尽くして気の弱い者は意識を失っていく。

「防衛フェリー『かもづる』通信途絶!!」
「特別警備隊、第1から4小隊も連絡が取れません!!」
「ミサイル艇『しらたか』、『おおたか』、通信途絶!!」

混乱は自衛隊だけではない


平戸警察署

「現場に派遣した警官、誰も連絡が取れません!!」
「無線機、個人携帯、何でもいいから連絡を取ってみろ!!」

署に残った婦警達が、知ってる限りの現場に派遣された警官達の個人携帯に電話を掛けているが誰も出ない。

「署長、海保からも田助港の巡視船『ちくご』が連絡が取れないと。
ハゲ島を探索していた『あまみ』が向かってますが、こっちの警官も向かわせて欲しいと・・・」

それどころでは無いのだが、警察にはまだ手駒があった。

「県警SATと水上警備艇を田助港に向かわせろ。
それと江迎署の警官隊を平戸港まで移動する様に要請しろ。」

ようやく事態が終息したと終わったらまだ一波乱が起きそうな展開に、署長はうんざりとしていた。
「署長、大村の陸上自衛隊の第21普通科連隊。
県警機動隊が平戸大橋を通過しました。」

それだけでは無い。

「目達原の第3対戦車ヘリコプター隊が作戦行動を開始する為に、住民の避難活動を要請して来ました。」

避難活動はとっくに終わっている。
それよりも強力な火力を持った部隊が、続々と到着したことに署員達は色めき立つ。



現地ではかろうじて意識を失っていなかった警官や海上保安官、自衛官達が抵抗を続けていた。
貨物船から出てきたモンスターは、いつの間にか識者がアンデット・ドラゴンと命名されている。

「識者って誰だよ!!」
「知らん!!」

田口一曹は、遺体収容の為に『かもづる』船内の冷凍倉庫にいたのが幸いした。
0005始末記
垢版 |
2018/06/12(火) 02:48:22.78ID:gG5qxPam
竜の咆哮は届かず、冷凍倉庫で他の隊員や乗員が倒れていたのに気が付いた。
タラップから船外に出ると、外も同様な状況の様だった。
そして、貨物船の甲板には巨大なモンスターがいる。
桟橋に倒れている隊員達を保護しつつ、同様に無事だった隊員とモンスターに対して発砲する。
他にも無事だった自衛官、警官、海上保安官も港や船から銃火器を発砲してそれに続く。
アンデット・ドラゴンの名称は、ヘッドフォンをしていて無事だった報道関係者から聞いたものだった。
特別警備隊は船内の活動が本来の任務なので、重火器を装備してないのは痛かった。
幸いなことに、アンデット・ドラゴンは手近なハーピーの死体を食い漁っているので、歩みは遅く人間に被害はまだ無い。
肉体が腐っている為か、翼をはばかせて飛ぶことは出来ないようだ。

「ここを通すな!!」

田口一曹は銃を持った者達を桟橋に集めて、前進を阻止すべく攻撃する。
その中には89式小銃を拾ってきた平戸署の副署長も混じっている。
だが頑健な鱗は健在であり、銃弾では貫くことが出来ない。
絶望的な戦いだが彼らの耳にはヘリコプターのローター音が届くと希望が湧いてくる。
戦っている者達だけでは無く、竜の咆哮で恐慌に陥っている者達が再び銃を手に取り始めた。


8機のAH-1 コブラは田助港に向かい、識者に命名されたアンデット・ドラゴンを包囲するように飛行する。
桟橋では車両でバリケードを作り、銃器で抵抗が続けられている。

『騎兵隊の到着だ。
味方に当てるなよ?
全機、攻撃を開始せよ。』

M197旋回式3銃身20mm機関砲から合計6480発が撃ち込まれ、アンデット・ドラゴンは細切れになり、桟橋まで粉砕されていた。

「や、やり過ぎだ・・・」

機関砲による弾雨を背後に、港に走りながら退避していた田口一曹は叫びながらも事件が終わったことに安堵していた。


平戸市田助港

事態が解決した平戸では、援軍の到着した第21普通科連隊や県警機動隊の隊員達が街中で打ち捨てられたハーピーの死体の回収が行われていた。
同時にハーピーの歌やアンデット・ドラゴンの咆哮で、心身喪失した隊員や警官達の回収もだ。
唐津からの報告では、同様の状態に陥った者達が回復しているとの報告もあがっている。
平戸の回収者達も直に回復すると、安堵の空気が漂っていた。
佐世保特別警備隊の田口一曹は。戦い続けたこともあり、休憩を兼ねて桟橋を散策していた。
粉砕されたアンデット・ドラゴン周辺を見て違和感に気がついた。

「ハーピーが喰われてる?」

アンデット・ドラゴンとの戦いの最中にハーピーが食われているのは何度も目撃した。
落ち着いて思い出してみると、アンデット・ドラゴンは海上に漂うハーピーの死体も喰っていたのだ。
海上には『海洋結界』が存在したはずだ。
海上に墜落したハーピーは、『海洋結界』に触れて狂死している。
その死体が喰われているのだ。

「アンデットだからか?
いや、実験は行われたからそんな筈はないはずだ。」

アンデットに『海洋結界』が効果があることを横須賀の研究所が行い、実証された筈だ。
食い散らされたハーピーの数は無数に打ち捨てられている。

「『海洋結界』が効かないモンスターがいる?」

自らが辿り着いた答えに戦慄し、上官の元に具申すべく駆け出していった。
0006始末記
垢版 |
2018/06/12(火) 02:56:51.61ID:gG5qxPam
翌日の東京市ヶ谷
防衛省

「最終的な自衛官の殉職者は13名。
警察官、海上保安庁も23名の殉職者を出してしまいました。
また、民間人の死者も28名。
負傷者は官民合わせて五千人を越えます。」

統合司令の哀川陸将が、乃村利正防衛大臣に報告する。
会議室には防衛省、自衛隊、警察、海上保安庁幹部が集まっていた。

「『歌』や『咆哮』で意識を失っていた者達の容態は?」
「一晩寝たら概ね回復の傾向にあります。
最も王国や子爵の話によると、この世界の人間なら30分もあれば回復するものだとか。
やはり我々はこの世界の人間より魔力に対する耐性は無いようです。」

その反面で、民間人の中でもこの世界に来てから生まれた子供達には影響は少なかったことが実証された。

「ハーピー達は『海洋結界』に守られる我が国の海からは餌が調達出来ないことから、避難の完了した地域に展開した警官や自衛官が狙われました。
武器を持った者に優先的に襲いかかったおかげで、被害は最小限に済んだと言えるでしょう。」

哀川陸将軍の言葉に警察幹部が反発を覚える。

「最小限ですと?
うちは平戸署が死傷者多数で、機能停止。
海保も巡視船2隻が港の突っ込んで中破だぞ。
あの帝国との戦争以来最大の被害なんだ。
だいたい自衛隊は高麗にハーピーを討伐に向かったんじゃなかったのか!!
なぜ、日本に奴等が飛来する羽目になったんだ!!
そして、あの貨物船はいったいなんだったんだ!!」

確かにハーピーやアンデット・ドラゴンを積載した貨物船には謎が多かった。
その点に関しては海保の幹部が立ち上がる。

「あの貨物船は海保並びに全国の港湾局に日本に立ちよった記録がありませんでした。
つまり、転移当時日本領海或いは近海の公海を航行中に転移に巻き込まれた1隻と考えられます。」

転移当時、日本政府は日本近海を飛行、或いは航行していた船舶に国籍問わずにあらゆる通信体で、日本に留まるように呼び掛けた。
自衛隊や海保も総動員でエスコートに参加していたので、覚えている者も多い。
このエスコート任務には在日米軍も加わっている。
しかし、人工衛星が全て失われ、通信や捜索可能な範囲に大きく制限が掛かってしまった。
また、異世界転移を戯れ言と日本政府の警告を無視した船舶も多かった。
脛に傷を持つ船などは、むしろ速度を上げて逃げ去っていった。

「そうした船の1隻か・・・
なるほど、『長征7号』の例もある。
我々が把握している以上に多いんだろな、そういった行方不明船は。」

乃村大臣の言葉に海保と警察の両幹部が席に座る。

「貨物船の詳細については、各捜査機関に任せるとしてだ。
最後に出てきたアンデット・ドラゴン、あれはまずい。
ハーピーもだが、船舶にモンスターを積載して日本や大陸領土に突入させてくるテロは絶対に防がないといけない。
それとな、気になる報告だが、こいつは海上に墜ちたハーピーの死骸を食ってたそうだ。」

会議室の面々は驚愕の声をあげる。

「今、子爵殿と王国大使館で検証してもらっているが、どうやら竜種には『海洋結界』が効果が薄いという結果が出そうだ。」
「そんな・・・、だから隅田川に水竜の群れが侵入出来たのか・・・」
0007始末記
垢版 |
2018/06/12(火) 03:00:59.44ID:gG5qxPam
警視庁が総力を結集して退治した『隅田川水竜襲撃事件』を思いだし、警察幹部は冷や汗を垂らす。

「『海洋結界』は年々、範囲が狭まっている。
いずれその効果が消滅することを前提に我々は防衛体制を整えなければならない。
今回の責任問題を我々に追及してくる声もあるが、我々の予算要求に尽く抵抗してくる財務省に今回の件を被ってもらう。
関係各機関はその方向で情報統制を進めてくれ。」

与党右派と野党日本国民戦線の主張通りに軍備増強の口実になるだろう。
会議の結論を述べて、解散となった。
それぞれの担当者には被災地域に対する支援や地元組織の再建など、仕事が山積みなのだ。
大臣秘書の白戸昭美が執務室で資料を渡してきた。
白戸は既に乃村の次男と入籍を済ませているが、夫婦別姓で名字は変えていない。

「高麗側の被害です。
民間人の死者48名、国防警備隊の殉職者19名。
御自慢の新鋭フリゲート『大邱』が中破してドック入りしました。
不審船の『大邱』にも小型のアンデットドラゴンが襲いかかったようです。
どうにか始末出来たようですが、甚大な損害が出ていたそうです。」

冗談抜きで帝国との戦争以来の損害だった。
実際のところ、日本本国ではともかく、高麗国の鳥島諸島において、ハーピーの駆除作戦はいまだに続いている。
幾つかの無人島に巣を作られた形跡があり、住みつかれたようだ。
ハーピーが空を飛んで、無人島から無人島にと、逃げ回っているので、人員の足りない国防警備隊だけでは手に負えないのだ。

「こちらに来るほど数が増えなければいい。
連中にも少しは苦労してもらおう。」
「海棲亜人による襲撃事件も加えると、ろくな目にあってないから少し可哀想な気がしますが・・・」

息子の嫁の言葉に話題を変えることにした。

「府中の子爵様の報告も来てるな。
あのアンデット・ドラゴンの作成には、人間の魂千体以上必要だそうだ。。
いったいどんな奴の仕業だろうな。」
「会議の場では、誰もテロリストの正体に付いて口に出しませんでしたね。」

テロ集団が従来の帝国残党軍と違い、高い技術力を有していることから、地球人の集まりであることは明白だ。
その事の公表は地球系同盟国並びに独立都市の足並みを乱す可能性がある。
薄々は誰もが勘づいており、はみだし者達の行き着く先となっている。

「今はまだ泳がす。
連中も地盤固めの為に王国と度々衝突してるようだからな。
王国を消耗させ、手に負えなくなった時に、一気呵成に叩き潰す。
精々我々にとっての良い当て馬になってくれることを望むよ。」

国民を満足に食べさせられない日本は、その敵意を向けれる外敵を欲している。
西方大陸で活躍する派遣隊が活躍するニュースだけでは足りないのだ。

「それは亡国への道かも知れませんよ?」

白戸の言葉に乃村は肩を竦める。

「ああ、だから我々も第二の日本を造るまでの時間を稼ぐ必要があるのだ。」



大陸西部
ブライバッハ子爵領

現ホラティウス侯爵に成り済ました元アメリカ空軍チャールズ・L ・ホワイト中佐は、解放軍兵士たちともに、ホラティウス侯爵領から幾つもの領地を経由して、ブライバッハ子爵領の海に面した崖道を歩いていた。
ブライバッハ子爵は、帝国残党軍を支援する門閥貴族の一人で、有るものを何年も王国や日本から隠していた。
0008始末記
垢版 |
2018/06/12(火) 03:33:46.73ID:gG5qxPam
「この地域は十数年も立入禁止にしている。
領民でもほとんど知られていない。」

案内を自らがするブライバッハ子爵にホワイト元中佐は、興味深く尋ねる。
偽装された崖にある洞窟に入るのだから、警戒も怠っていない。

「乗員が何百人もいた筈だが?」
「500人ほどいたかな?
大多数は歓迎の宴で毒殺したよ。
立て籠った連中も人質をとって、投降したところで始末した。
その後に日本との戦争が始まったので隠蔽して沈黙を守っていたが、帝国が滅んだ以上、あれはとんだ不良物件だ。
持ち去ってくれると助かる。」

やがて、広い空間に入る。
そこに仮設された桟橋に係留された大型の『艦』をみて、ホワイト中佐は感嘆の声をあげる。

「素晴らしい。
まさかこれほどのモノとは・・・」

ミストラル級強襲揚陸艦『ディズミュド』。
乗員を失ったその艦は静かにその艦体に錆を浮かせて、停泊していた。
乗員の手配、長年放置されていたことからの整備など、数々の問題が浮き上がっているが、ホワイト中佐の中では崩壊する地球系の都市が脳裏を占めていた。
0009始末記
垢版 |
2018/06/12(火) 03:34:05.58ID:gG5qxPam
では投下完了
0088始末記
垢版 |
2018/06/12(火) 21:21:28.11ID:gG5qxPam
大陸南部
ハイライン侯爵家が南部に港町を建設する計画は周辺地域に降って湧いた好景気をもたらしていた。
旧ノディオンの商人リュードは侯爵家の要請もあり、王都で開いていた店を畳んでハイライン侯爵領に向かっていた。
資産と家族の人数はそれなりにあるので馬車を七台仕立ててることとなった。
同様にハイライン侯爵領に向かう旧ノディオン住民達と合流し、馬車15台の大規模なキャラバンのようだ。
いずれも商人ばかりだから間違いでもない。
安全の為に傭兵も20人ばかりを雇っている。
いずれも十代から二十代の傭兵達なので、3人いる娘や妻や3人の妾に手を出さないか心配である。
だが三十代、四十代の傭兵など信用ならないから仕方がない。
この年代の傭兵は腕も悪いし、度胸も無い連中ばかりなのだ。
最近は街道もだいぶ整備された。
日本の連中が年貢や鉱物資源を輸送する為に整備したのだ。
街道の横には煙を立てて動く列車の線路が敷かれている。
この線路に沿えば日本の軍隊のいる治安のよい町や村に通じているわけだ。
だからといって完全に安全というわけではない。
南部地域は元々亜人の諸部族が多く住んでおり、帝国は彼等の族長に辺境貴族の称号を与えて支配領域の保障を与えていたのだが帝国は滅び王国にその力はない。
亜人達は各部族内部でも分裂や権力闘争が起こっているらしい。
王国の後ろ楯である日本も介入する様子は全くみせずに放置している。
そんなことを考えていると、リュードの近くで後方を警戒していた傭兵が胸を矢で貫かれて馬車から転がり落ちていく。
リュードは指揮を執る傭兵隊長にかわり大声を張り上げる。

「敵襲!!」

馬車のスピードを上げ、傭兵達は各々持ち場で警戒をして武器を抜き放つ。
だが森の中から放たれた数本の野矢が傭兵二人の命を奪う。

「山賊か?」

森の木々の間から馬車に並走して矢を射ってくるのは・・・

「ケンタウルスか!!」

森から街道に30騎ばかりが唸り声を上げながら躍り出てくる。

「まずい、女達を守れ!!」

傭兵隊長が叫んだ瞬間に体に矢を数本生やして馬車から転がり落ちる。
ケンタウルスの目的は女と酒だ。
なぜか人間の若い娘に目が無い彼等は、発情した顔を剥き出しにして襲い掛かってくる。
傭兵達も弓矢で応戦するが、その数をまた一人一人と減らしていく。

「冗談じゃ無い。
後払いの料金は少なく済むが、全滅されちゃ意味はない。
急げ、馬車のスピードを上げろ!!」

馬車の壁に貼られた『時刻表』によればそろそろ遭遇するはずだ。
馬車が1台横転し、亭主が刺され女房がケンタウルスに抱えられている。
助ける余裕はない。

「もうすぐ・・・もうすぐだ!!」

また、1台の馬車が車輪に槍を差し込まれて横転する。
あの馬車には年頃の姉妹を乗せていたはずだ。
後ろで怯える娘達を同じ目に合わすわけにはいかない。
その時、リュードが求めていた汽笛の音が聞こえてくる。

「来たぞ、日本の装甲列車だ!!
おいお前!!
馬で先導して救援を求めろ。」
0089創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/06/12(火) 21:24:17.74ID:gG5qxPam
予めこちらの状況を知らせる為に馬に乗っていた傭兵の一人に命じる。
馬に鞭を入れて煙を上げる汽車に向かって走らせる。
ただ汽車は線路の上以外は動くことが出来ない。
だが装甲列車の機関車から、筒状の何かを口に着けた車掌がこのまま街道を走り抜けろという声が伝わってきた。
なんと大きな声だと驚くが、馬を操る手を止めるわけにはいかない。
キャラバンと機関車が対抗車線側にすれ違い、ケンタウルスの群れがそれに続く。


大陸東部
新京特別区
西区
許忠信は転移前は中華人民共和国国家安全部第十局(対外保防偵察局)に所属し、日本国内で外国駐在組織人員及び留学生監視・告発、域外反動組織活動の偵察などの任務に携わっていた。
転移後、新香港に移住したが日本後に堪能なことと、転移前の経歴を買われて新香港武装警察公安部の一員として、新京で中華料理店の皿洗いとして情報収集の活動を行っている。
先日、新京で林修光主席が遭遇した日本人の尾行を7人の同僚と行っていた。

「主任、李と田のチームが撒かれました。」
「くそ、またか・・・」

尾行対象は明らかに尾行を意識した行動を取っている。
唐突に建物の中に入り別の入り口から出ていったり、階段を登ったかと思えばそのまま降りてきたりを繰り返したりしてこちらの尾行チームが二組も撒かれたのだ。
尾行対象はハイライン侯爵家令嬢ヒルデガルドの従者斉藤光夫。
まだ、新京大学の四年生である。
今も学生街の一角の複雑な路地を歩いて、許と新人の王成明の尾行を受けている。

「他の連中との合流は無理だな。
まったく、どこまで行く気だ。」

ぼやいていると斉藤はビルの地下に入っていく。
何やら地下街になっているようだが、この時間はほとんどの店が閉まっているのは看板から伺える。

「一人ずつ入るぞ、先に行け。」
情報機関の人間として、些か不安を感じさせる王成明は転移前は日本に留学していた学生だった。
相当な日本被れだったが日本通だったこともあり、公安部にスカウトされたが情報部員としては三流もいいところだった。
王がビルの入って数分後、許も地下街に入る階段を降りていく。
たがその行く手を塞ぐ男がいる。
左目に眼帯、十字架を首から掛け、黒いパーカーにはドクロと羽がプリントしてあり、指には一つずつ指輪が嵌めている。
ズボンも黒いジーンズで靴は黒い安全靴だ。

「待ちな・・・あんたは同胞じゃない・・・ここから先を行く招待状は持ってないだろう?」

許は警戒して、背中のホルダーに隠した拳銃を使うか迷う。
しかし、黒い男は左腕を前へ伸ばし、鼻筋へ左手人差し指を合わせる、右肩をあげ右手をピーンと伸ばすという奇妙なポーズを取っている。
あまりに奇妙な動きに対応を躊躇してしまう。
許は中国人だ。
黒目黒髪で基本的に日本人とは見分けはつきにくい。

『だが一瞬で同胞では無いと見破られた。
こいつはただ者ではない。
王は通れたのか?
あいつどうしたんだろう・・・』

「我が左手に刻印されし、暗黒の炎に抱かれて灰となるか。
封印されし、左目に封印されし魔眼の魔力に魅入られるか・・・選ぶがいい・・・」

許は一目散に階段を掛け上がって逃げ出していった。

『奴は何を言った?
魔力だと、そんな馬鹿な・・・ついに日本人も魔力を手にいれたというのか?』

現在までに転移してきた人間で、魔法が使えるようになった事例は1例しか確認できていない。
0090始末記
垢版 |
2018/06/12(火) 21:28:13.88ID:gG5qxPam
在日米軍のパイロットで、皇都空爆を行ったB−52の編隊長だった男だ。
現在は行方不明で暗黒神の大神官となっているらしい。
まずはこの場を退き、本部に連絡してこの男を観測する準備を整えねばならない。

「行ったか・・・何者だ?」

黒い服の男の後ろから二人の男が現れる。
斉藤とこの場の取り仕切っている後藤だ。

「いや、それより黒川さん何してるんですか?」

後藤が床に目をやると、黒ずくめの男が苦悶の表情で転がりまわっている。

「中学時代の多感な自分を再現して身悶えして転がってるだけだ。
ほっといてやれ。」

「・・・まあ、それはいいとして・・・斉藤さんつけられましたね?
当局の奴等でしょうか・・・」
「それはそこの彼に聞けばいいさ。」

二人が振り返ると数人の男達に拘束された王成明がパイプ椅子に座らされている。

「き、貴様らはいったい何者だ!!」

斉藤が苦笑いしながら答える。

「何者?
おかしなことを聞くね。我々は君の同胞だよ。」

怯える王に後藤が扉を開けて部屋の中に招待する。

「ようこそ、我々の世界へ・・・」

数日後、行方不明だった王成明から郵送辞表が届けられた。
『僕は自分が行くべき世界を見つけました。』
と、書かれていたので新たな異世界転移かと物議を醸しだした。



大陸南部
ケンタウルス自治伯領
ケイトレン氏族トルイの町
ケンタウルス族は大陸において、大族長が自治伯爵として帝国に任命され、その武力を背景にそれぞれの氏族の縄張りを統合して自治伯領として存在していた。
大族長は世襲ではなく族長選挙によって選ばれる。
帝国が滅び王国にその統治機構が変わってもその盟約は存在したが、問題は王国がケンタウルス族を武力を背景に抑えることが出来なくなりつつあることになった。
このトルイの町のケンタウルス人口は五千人、人間は主に奴隷が千人ほど。
町は当然ケンタウルスに優しいバリアフリー完備だ。
族長の名前は町の名前そのままのトルイ。
後継者が跡を継げば町の名前は代わる。
その族長トルイは怒り心頭で客人を待っていた。

「遅い、エリクソンはまだか!?」

召し使いの人間の女達は投げ飛ばされる杯に怯えきっている。
トルイはケンタウルス族の中ではこれでも理知的な方だ。
人間の商人と組み獣の革や工作物に使える骨。
この地域の特産物である病気によくキノコやニンジンを各氏族から集め、商人に高値で売り付けて利益を得る。
周辺の鉱山で奴隷に採掘させている鉱物資源。
狩猟部族であるケンタウルスが町を築いていることからもその辣腕ぶりが伺えるだろう。
そして各氏族の族長には安値で卸した酒や奴隷女をあてがい機嫌を取ることにも長けている。
0091創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/06/12(火) 21:31:55.03ID:gG5qxPam
そんなトルイが怒っているのは館の庭に並べられていた町の若衆の遺体30体ばかりが原因である。
遺体のほとんどは体に穴を開けられ、原形を留めていない者も多い。
若衆の遺族代表は館の中に。
他の遺族も館を取り囲んで騒ぎ立てていた。
そこに商人エリクソンがやってくる。
場所が場所だけに馬車が使えない。
うっかり使ったらケンタウルス族の中には襲ってきたり、嫁に欲しいとか言い出すものがいる。
少し高価だが地龍に車を曳かせた龍車で館の門を潜り、トルイのもとに参上する。
ケンタウルス自治伯領との折衝や交易の独占権を持つ帝国貴族シルベール伯爵は商場(あきないば)を割り当てて、そこで交易を行う権利を商人に与えて運上金を得ていた。
エリクソンはその一人でこのトルイの町の交易の独占権を持つ商人だった。

「これはまた・・・派手にやられましたなあ・・・」

事前に聞いてはいたが、勇猛なケンタウルス族がここまで一方的にやられるとは思ってもいなかった。

「貴様のいう通りにキャラバンを襲ったらこの様だ。
まさか貴様、我々を嵌めたのではないか?」

エリクソンは首を振って否定する。
確かに長年の商売敵のリュードに対する恨みからケンタウルス族を煽ったの間違いないが、失敗は望んでいない。

「冗談じゃない。
あのへんはあんたらが詳しいというから、襲撃を一任したんじゃないか。
日本の装甲列車が通る時に襲うとは思ってなかったしな。」

確かに若衆達が襲撃したのは予定より早い時間だった。
襲撃は夕暮れの予定だったが、昼日中に襲っている。
若い女の姿に興奮して暴走する若衆の姿がトルイにも目が浮かぶようだった。

「判った信じよう。」

トルイか手を挙げると、遺族達が退室していく。
エリクソンは安心してない。
トルイがこの程度でことを納める筈が無いからだ。

「貴様のことは信じるが、今回の件で族長会議での面目は丸潰れだ。
次の大族長を選ぶ会議での不利になる。
失った倍の日本人の首か、女を手に入れねばこの町での立場まで弱くなる。
貴様もそれでは不味かろう。」
「何をお考えで?」
「また列車を襲う。
ただし今回は装甲列車じゃなくて襲いやすいのだ。
一週間やるから考えろ。」

さても厄介なことになったとエリクソンは苦虫を潰していた。


大陸東部
新京特別区から海岸に沿って南に50キロ。
車両が通れるように舗装された道路の終点に大陸総督秋月春種が、秘書官の秋山や護衛のSPを引き連れて視察に訪れていた。
一行は先に完成していた市役所庁舎ビルの会議室に入る。
窓から見える光景はほとんど原野の土地でブルドーザやショベルカーが、整地作業を行っている。
会議室ではレーザーポインターでプロジェクターに映し出された画像や動画を解説する責任者の朝比奈順一部長の話を聞いている。

「市役所や駐屯地、港湾、電気、ガス、水道、通信、病院のインフラ設備も完成しております。
第一期の団地も現在は内装工事中。
病院、駅、学校に関しては、来年着工になります。」
0092創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/06/12(火) 21:35:08.29ID:gG5qxPam
「まあ、上出来だろう。
最初の住民は新京からの異動組に単身赴任で来てもらうから家族はいない。
インフラ設備の職員や自衛官、警察官、役所の職員。
2月いっぱいはそれで済むはずだ。」

秋月の言葉に全員が頷く。
新京特別区の住民は来年の1月をもって、人口が二百万人を越える。
大半が団地や寮住まいだが、こちらの大陸で財を成した者が一軒家を建築する光景も珍しくもなくなった。
中には新京を飛び出して大陸の他の町に住民に混じって生活の居を移した者もいる。
だが日本本土からの移民希望者は新京の住民の20倍はいる。
そこで新京の開発も一段落した頃から新都市開発を進めていたのだ。
官民合わせて異動組が2月から3月に生活を始める。
その後は家族を呼び寄せて、彼等の穴を新着の移民で埋めていく。

「民間からの工場やスーパーの建築、一軒家の購入の要望も殺到しています。
新京からの引越し組も考慮して、移民組第一期の居住は6月あたりになります。」

秋山は新京からの要望も合わせた話を語る。
移民の問題は現時点で問題はない。
秋月は次の問題を提起する。

「次の案件は・・・これは大事だな。
この市の名前は何にするか一般公募か・・・」
「名称、由来、構想・・・まあ、新市民に夢と希望を抱かせる誤魔化しですな。」

秋山は容赦がない。
秋月はスルーして話を進める。

「大々的に募集してくれ。
締め切りは今月中だ。」
「手配致します。
ところでこの新都市開発計画とは関係無いのですがもう一件よろしいでしょうか?
例のアンフォニーの代官が決まりました。」

秋月は総督府執務室に飾られたマーマン王のホルマリン漬けを思いだしてうんざりした声で話を続けるよう促す。
わざわざ代官の任命に総督府が関与することは少ない。
わざわざこの場で議題にあげるのは、代官当人に大きな問題を抱えているからだ。


「どうも日本人のようなんです。」

秋月秘書官も困惑したように説明をはじめた。


大陸中央部
旧皇室領現子爵領
マッキリー
第四分遣隊分屯地
マッキリー子爵は帝国解体時は、男爵に過ぎなかったが日本との和平に尽力して昇爵と加増を勝ち得た人物である。
その子爵領では金、銀、銅、石炭、ニッケル、ボーキサイトが採掘されて大陸総督府が管理している。
ニッケル、ボーキサイトについては現在は唯一の鉱脈であり、重要視されている。
その為に混成部隊である第四分遣隊は300名と各分遣隊の中でも最大規模であり、1機ではあるが唯一汎用ヘリコプターMi−8、ヒップが配備されている。
石炭が採掘出来ることから、新京と王都を繋ぐ東西線東部方面の中間地点としての賑わいも見せている。

「浅井治久二尉、入ります。」

入室して敬礼すると、分屯地司令の朝倉三等陸佐の答礼を受ける。
0093創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/06/12(火) 21:50:53.43ID:gG5qxPam
「浅井二尉、二年間のお勤めご苦労だった。
君が補佐官だったおかげで任務は楽をさせてもらえた。
昇進は来年になるが先に一つ派遣任務を司令部から命令された。」

浅井二尉は一等陸尉に昇進後、来年創設される第七分遣隊90名の指揮官となる。
この分屯地には研修の一環として赴任していた。

「現在、建設中の第六分屯地のアンフォニーに新たな代官が任命され赴任する。
新領地ということもあり、現在新京で留学中のハイライン侯爵令嬢も視察として同行することになり、このマッキリーを列車で通過する。
貴官もこれに同行し一連の行動を視察せよ。
また、これは第六分遣隊の進捗状況を貴官の参考にする為でもある。」
「はっ、浅井二尉命令謹んで拝命致します。
また、この度のご配慮感謝致します。
第四分屯地での毎日は大変勉強になりました。
マディノの地でも精励していきたいと思います。」

二人は握手をかわし、朝倉は浅井に椅子に座るよう促す。

「しかし、代官の視察ですか。
たぶん監視せよと総督府あたりからの指示なのは判りますが、問題のある人物なのですか?」
「詳細はこちらにも伝えられていない。
総督府はよほど知られたくないらしいが、機密にも指定されていない。
民間絡みじゃないのかな?
とにかく明後日の1000時にマッキリー駅、王都行き『よさこい3号』で、令嬢を伴って乗車している。
これに同行せよ。」


明後日
昨晩の送別会で散々に酒を飲まされた浅井二尉であったが、習慣から朝6時に起床して身なりを整え分屯地を後にすることにした。
分屯地の受付では、カラシニコフ小銃を持った歩哨や警衛、受付の隊員達から

「浅井二等陸対し・・・捧げ銃!!」

の敬礼を受けて、少し涙目になってしまった。
駅には一時間早く到着して汽車を待っていた。
汽車は定刻通りに停車する。
鉄道公安官にAK−74を初めとする護身用の武器をほとんど預け、自身はマカロフ PM拳銃と予備の弾装1個を携帯して列車に乗り込む。
座席は指定席だ。
令嬢と新任代官は同じ車両に乗るよう手配されているのだ。
青と黒を基調とした騎乗服に身を包み、ポニーに結んだブロンドドの髪を靡かせている美少女だった。
歳は十代半ば。
透けるような白い肌を持ち、ぴっちりとした軍服が彼女の均整の取れたスタイルを強調している。

「レディ・ヒルデガルドさんですね。
お初に御目にかかります。
自分は陸上自衛隊二等陸尉、浅井治久と申します。アンフォニーまで同行を命じられました。
よろしくお願いします。」

貴族令嬢への敬称『レディ』と日本人風に『さん』付けしている完全に失敗な挨拶だが、浅井は気が付かずに握手を求める。
だがその手は若いリクルートスーツを着た男に握られる。

「お初に御目にかかります。
この度、アンフォニー領の代官として着任することとなった斉藤光夫と申します。
道中、短い間ですが宜しくお願いします。」

丁寧な挨拶だが目が笑ってない。
同時に周囲から敵意が一斉に向けられるのを感じた。
周辺の座席の若い男達が一斉にこちらを見てるのだ。
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

ニューススポーツなんでも実況