『ハハハ、まさか質問に答えないとはね!』

「ハハハじゃないわ、全てそなたのシナリオ通りだろう?
馬鹿正直に最初に提示されたどの選択肢を選んでも鬱展開にしかならぬからな。
エンターテイメント型の劇を好むそなたが都合よく解決する追加選択肢を作らぬはずがない。
いい加減無意味な茶番劇はやめて普通に戦わぬか」

『全く……今代の勇者は情緒がなくて困る。
こういうのは土壇場で活路を見出すから燃えるのであって最初から余裕綽綽でやられると……』

「やかましいわ!」

『仕方がない、次に行こう――”常闇の牢獄”』

次の瞬間、辺りは闇に包まれた。夜の闇より昏い漆黒。上下左右の間隔も無い、音も聞こえない。
唯一聞こえて来るのは頭の中に響く全の竜の声だけだ。

「これは……何の試練だ……!?」

『単純なことさ、いつまで耐えられるか根競べだ――
ちなみに一説によると感覚を遮断した闇の中に3日もすれば発狂するらしい。
降参ならいつでも受け付けるよ』

「流石に形振り構わなくなってきたな……。
何、すぐに終わるだろう。こちらには闇の勇者シノノメ殿も光の勇者ラテ殿もおるからな」

『それはどうかな? 彼女らはまだ指輪の真の力を引き出せていないからね――
テネブラエとルクスは……果たして彼女らを認めるかな?』

意味深な言葉を最後に、それっきり全の竜の声は聞こえなくなった。
テネブラエとルクスは、それぞれ闇の竜と光の竜の本体の名前だが、真の力を引き出すにはそれらと対話する必要があるということだろうか。
もちろんその言葉の真意やそれ以前に真偽自体も不明で、単に不安を煽るために言っただけかもしれない。
そんなことを考えながらティターニアは、状況に変化が起こるのを待つことにした。