彼女は仕方無く樹液の入った器を受け取り、従った。

 「解った、死なないで」

ウィローにとってラントロックは他人では無い。
知人の息子であり、その死を見たくはないと思うのは、当然の感情だ。
仮令、悪魔であっても。

 「勿論」

力強く応えるラントロックに、ウィローは彼の父親であるワーロックの俤を見た。

 (口先では否定しても、血は争えない。
  魂は受け継がれるのね)

魔法資質が有ろうと、使う魔法が違おうと、心の形は似通ってしまうのだ。
ウィローから少し距離を取るラントロックの耳に、フェレトリの声が響く。

 「どうした、トロウィヤウィッチ。
  観念したのか?
  そなたの相手は後でしてやる。
  大人しくしておれ」

フェレトリは脅威にならないラントロックを無視して、ウィローを集中して仕留めに掛かる。

 「そうは行かない!」

ラントロックはウィローの明かりに近付こうとする巨獣に向かって行った。
巨獣は彼の事等、全く眼中に無い様で、明かりだけを真っ直ぐ睨んでいる。