やはり守られてばかりでは行けないと、彼は気を強く持ち直した。

 (俺にも何か出来る事は……)

新たに生み出された血の巨獣は、巨体を揺らしてラントロック目掛けて突進する。
ウィローは光線で巨獣を迎撃するが、一瞬では仕留め切れない。
ラントロックは咄嗟の判断で、ウィローの背後に回った。
約5極の間、光線を浴びせ続けられて、漸く巨獣は消滅する。
しかし、倒した所で無意味なのだ。
血の獣は実体を持たないので、魔力の供給を受ければ復活する。
フェレトリの強大な能力を以ってすれば、完全復活も10極程度で十分。
対するウィローの消耗は激しいし、巨獣も1体だけではない。
凌ぎ切れなくなるのは目に見えている。
ラントロックは覚悟を決めて、ウィローに樹液の入った器を差し出した。

 「ウィローさん、俺が化け物を何とかします」

 「正気!?
  奴に魅了は効かないよ」

 「やってみなくちゃ分からないでしょう。
  それに、今の俺は足手纏いにしかならない。
  どう仕様も無くなったら、降参します。
  元々奴の狙いは俺達なんですから」

ラントロックは最後には降伏すれば良いと甘く考えていたが、ウィローは違った。
高位の悪魔貴族は約束を守る律儀な所はあるが、決して感情的にならない訳では無い。
ラントロック等が降伏しても、腹の虫が治まらなければ、殺されてしまうかも知れない。

 「でも……!」

 「他に手は無いでしょう!」

彼の言う通り、ウィローに妙案は無い。