それから何度も血の獣が襲って来たが、ウィローが悉く返り討ちにした。
次第にラントロックも慣れて、襲撃を一々恐れなくなった。

 (この儘、無事に結界を張れるのか?)

だが、順調な中でもラントロックは安心出来なかった。
フェレトリが手を拱いて見ているだけの訳が無いと思っているのだ。
その予感は現実になった。

 「どうかな、偽りの月の片割れよ。
  多少は消耗したか?」

フェレトリの挑発的な言動にも、ウィローは無反応だ。
言い返す余裕も無いのかと、ラントロックは彼女を心配した。

 「猟犬共で禿(ち)び禿(ち)び削るのも飽きて来たな。
  貴様も雑魚を追い散らしてばかりでは、面白く無かろう。
  どれ、もう少し骨のある奴を用意してやろうか」

獣の気配が消えたかと思うと、今度は熊の様な一回り大きな獣が現れる。
それも1体や2体では無い。

 「ウィローさん……」

ラントロックが不安気な声を出すと、ウィローは重々しく口を開いた。

 「一寸、今度は厳しいかも。
  ……御免ね」

何故謝るのかと、ラントロックは衝撃を受ける。