ウィローはモールの木から、近くのモールの木まで歩く。
そこで樹液を補充して、又違うモールの木を目指す。

 (思った通りだ、モールの木で結界を作ってあるんだ!)

モールの木は屋敷を囲う様に配置してあるのだと、ラントロックは察した。
しかし、彼でも解る事が、フェレトリに解らない訳が無い。

 「成る程、そう言う事をする訳か……。
  残念ながら、見過ごしてはやれぬなぁ」

フェレトリは血を集めて数体の獣を造り、ウィロー等に差し向けた。

 「行けぃ、我が下僕よ」

犬に似た獣の荒い息遣いと唸り声に、ラントロックは狼狽して身を竦める。

 「だから、心配するなと」

ウィローが呆れた風に言った途端、獣が地を駆ける音がする。
ラントロックは音源を顧みた。
瞬間、赤黒い猟犬の様な怪物が、彼に躍り掛かる。

 (噛まれる!)

身を守ろうとする彼だったが、その必要は無かった。
直径1手の光線が静かに走り、猟犬を貫いたのだ。
光を浴びた猟犬は、瞬く間に霧に紛れて消える。

 「こんな化け物なら何体召喚しようが、見ての通りだよ。
  あんたは黙って私に付いて来なさい」

ウィローは強気に言って、ラントロックを安心させる。