ウィローはラントロックに指示する。

 「その樹液を垂らしながら、私の後に付いて来なさい。
  使い切らない様に、少しずつ、少しずつだよ。
  だからって、途切れさせても行けない」

ラントロックは頷き、フェレトリを威嚇する様に周囲を照らしながら移動するウィローの後を歩く。
モールの樹液を地面に垂らしつつ。
当然、それを見逃すフェレトリでは無かった。

 「小賢しい事を考えておるな?」

風の唸りにも似た、彼女の恐ろしい声が響く。
四方八方から反響して聞こえる声に、恐怖心を揺さ振られるラントロックを、ウィローは禁(いさ)めた。

 「恐れるな。
  私が側に居る限り、手出しはさせない」

ウィローの強気な言葉にも、ラントロックは安心は出来なかったが、怯えを隠す為に強がった。

 「誰が恐れてるってんですか……」

それを聞いた彼女は小さく笑って一言。

 「なら良いんだけどね」

血の霧は明かりを避ける様に、ウィローに道を譲る。
ラントロックは周囲に広がる赤黒い闇を警戒しながら、彼女の後に続く。