時は少し遡り、闇が結界を覆った直後。
ラントロックも闇の中に囚われていた。
彼と戯れていた鼠達は、再びフェレトリの支配下に帰って、闇の一部と化している。
この闇は霧化した血液が作り出した物なのだ。

 (所詮は仮初めの命、主には逆らえないのか……)

血の霧は光を遮り、薄暮を深夜の闇に変える。
結界から脱出しようにも、「外」の方向も判らない。

 (魅了する所の話じゃないや。
  くっ、こんなの初めて見るぞ!
  砦に居た時は、実力を隠していた?)

ラントロックは血の霧を掻き分けながら、闇雲に「外」を探した。
彼の魔法資質は全方位にフェレトリの気配を感じ取っている。
丸で彼女の「内部」に囚われている様。

 (フェレトリも俺の存在を解ってる筈。
  何時攻撃されても不思議じゃない。
  どうにかならないか?
  誰かの助けを……。
  ネーラさんやフテラさんの能力なら……。
  駄目だ、攻略出来るイメージが思い浮かばない!)

当ても無く歩き回った彼は、偶然モールの木に辿り着いた。

 (これはモールの木!!
  魔除けの効果、魔力を通さない!)

危機的状況の中、これを利用出来ないかと直感したラントロックは、知恵を絞る。

 (考えろ!
  フェレトリを封じる方法は無いか?)