一方で、フェレトリとウィローは口論を続けていた。

 「己の分も弁えず、太陽と月に挑んだ挙句、兄弟と妹が焼け死んだのであろう?
  唯独り生き残った感想を、是非とも聞かせて欲しい物であるなぁ?」

 「兄妹(きょうだい)達は壮大な物と戦い、雄々しく散って行った。
  あんたの様に、人形遊びしながら卑屈に生きる物には解らないでしょうね」

 「そして、貴様は隠れ住んでいると。
  中々笑える結末ではないか」

 「負け様も無い人間相手に敗北を重ねた愚か者には言われたくないわ。
  あんたみたいなのを真の敗者と言うのよ。
  生まれ付いて怯懦(きょうだ)な精神が招いた敗北なのでしょうねェ」

互いに「昔」を知る者同士、罵り合いは容赦の無い物になる。

 「……貴様も兄妹の後を追わせてくれようか?
  生憎と火は扱い慣れぬ故、死に様が『焼死』でない事は許してくれ給え」

 「はぁ、自分が勝つ積もりなの?
  人間に負ける様な奴(の)が、私には楽勝みたいな、頭悪過ぎて笑えて来るわ。
  燃え尽きるのは、あんたの方だよ」

地の利はウィローにあるのを、フェレトリは気付いていない。

 「妹が居た頃の貴様は、我より強かったであろうになぁ。
  それこそ月に並ぶ程の……っと、及ばぬから負けたのであったな。
  何とも残酷な事よ。
  半身と半霊を失い、弱体化した貴様を誰が恐れる」

 「御託は良いから、掛かって来たら?」

 「愚か者程、早死にしたがる。
  今生最後の会話なのだから、愉しみ給えよ」

 「最後じゃないから、惜しむ事も無いわ。
  それとも、あんたにとって最後なの?
  だったら諄々(ぐだぐだ)引き延ばすのも解るわ。
  どうぞ御存分に」

 「情けを掛けた積もりなのであるが、悔いは無いと見える!」

長々と無意味な会話を続けた後、フェレトリが仕掛けた。