0375創る名無しに見る名無し
2018/01/13(土) 18:26:16.30ID:WtSa/prQ(こいつの仲間か……?)
単なる通行人にしては、気配を周囲に溶け込ませて、存在感を消している所が怪しい。
他の執行者であれば、彼に気付かなかったかも知れないが、それだけエイムラクは「優秀」だった。
しかし、この者の正体は親衛隊内部調査班の班員である。
エイムラクの警戒は全く無駄な物。
寧ろ、彼に気を取られている分、危険な状況にある。
エイムラクの知覚の鋭敏さは、班員の想定外だった。
馬車が十字路を左折しようとした所で、懸念されていた事態が発生する。
少年が馬車の進路に飛び出して来たのだ。
御者は慌てて馬を止め、手元のブレーキを引いて車輪を固定するが、間に合わない。
「うわっ!!」
「あぁーーーーっ!?」
少年が短い叫び声を上げた後、御者が大声で叫ぶ。
エイムラクとトレンカントは急ブレーキで、前倒(の)めりになった。
エイムラクは前面の壁板に手を突いて堪えるが、トレンカントは気を失った儘なので、
勢い良く頭を打ち付ける。
少年は馬の左側面に接触し、馬車の車体にも当たって、撥ね倒される。
馬車が衝撃で少し揺れる。
幸い、曲がり角で馬も馬車も速度を落としていたが、ブレーキを止めるのが僅かに遅かった。
気絶しているとは言え、指名手配犯を乗せていると言う事実に、御者は必要以上の緊張感を、
感じていたのだ。
体を強く打った少年は、瀕死でこそ無い物の、路上に倒れて痛みに呻いている。
事故だ、事故だと周囲の人間が騒ぎ立て、人集りが出来る。