勿論、班員の態度は偽りの物だ。
余り詳細を語ると、正体を怪しまれる。
飽くまで彼女は徒の清掃員。

 「それだけじゃないの!
  その人はファラド先生の事務所に出入りしてる秘書と、密会してたのよ」

エイムラクは漸く興味を示した。

 「ファラド先生ってぇと、中央運営委員の?」

 「そう、そうなのよ!
  怪しいでしょう?」

 「密会……ねぇ」

彼は暫し思案して、浮かんだ疑問を口にする。

 「何で、そこまで知ってんだい、小母ちゃん?」

 「偶々よ、偶々、本当に偶々見掛けたんだから!
  怪しい人を見付けたら、後を追ってみたくなるじゃない?
  そしたら何と!」

 「そいつは偶々とは言わねえよ。
  追跡したんじゃねえか」

演技で興奮気味に語る班員に、エイムラクは呆れ顔をした後、急に表情を引き締めた。

 「危ねえ事は止してくんなよ。
  好奇心で斃(くたば)っちまったら、悔やんでも悔やみ切れねえぞ」

 「大丈夫よぉ〜!
  小母さんの事、心配してくれてるの?」

 「そんなんじゃねえ、素人が出張ると碌な事にならねえってんだ」

班員が茶化すと、エイムラクは外方を向いて照れ隠し。