0355創る名無しに見る名無し
2018/01/07(日) 18:33:33.69ID:OBQ3v2eI内部調査班は治安維持部内に潜入している班員を通じて、エイムラクに働き掛ける。
「エイムラクさん、一寸良いかい?」
「どしたんで?
掃除の小母ちゃん」
「あんたを見込んで頼みがあるんだよ」
「へぇ、とにかく言ってみな」
エイムラクは堂々とした態度で、清掃員に扮した班員に応えた。
彼は班員の正体を知らない。
唯、長年清掃員として勤めているだけの、普通の小母さんだと思い込んでいる。
班員は内緒の噂話をする小母さんの如く、声を潜めて話し始める。
「この間ね、怪しい人を見掛けたのよ。
ベールを被って顔を隠した……」
「そりゃ大体の女は、そうじゃねぇか?
小母ちゃんだって、そうじゃねぇか」
ここはグラマー地方だ。
素顔の露出を避ける為に、ベールを被る女性は珍しくない。
男性でも砂嵐を防ぐ為に、フード付きのコートを着込んで、マスクやゴーグルを付ける。
見様によっては、街中怪しい人物だらけだ。
「それが本当に怪しいのよぉ。
何て言うか、窃々(こそこそ)してて。
人目を避ける感じで、独りでホテルに入って行ったの」
「旅行者か何かだろう……」
エイムラクは班員の話に取り合わなかった。
彼女の判断には主観的な要素が多く、個人的な印象の域を出ない。